説明

自動二輪車乗員保護装置

【課題】エアバッグおよびエアバッグジャケット等複数の保護装置を統合して管理し、衝撃の形態や大きさに応じて保護装置を作動させる。
【解決手段】自動二輪車1にエアバッグ14を設けるとともに乗員が装着するエアバッグジャケット16を統合的に管理する。通常衝突判定部214はGセンサ17〜19の出力に応じて衝突の大きさと方向に応じてエアバッグ14および/またはエアバッグジャケット16を作動させる。衝突予知部213は車車間通信装置23で得た他車情報と車速センサ20やGPSアンテナ22から入力された自車情報とによって衝突を予知したならば通常衝突判定部214に代えて待機時衝突判定部215を起動する。待機時衝突判定部215は予め衝突態様を判断してGセンサ17〜19の出力を判定するしきい値を、迅速に衝突判定できるように通常衝突判定部214で判定する場合と違えた値とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動二輪車乗員保護装置に関し、特に、車体に加わる衝撃の状況に応じてエアバッグおよびエアバッグジャケットの作動判定を行うことができる自動二輪車乗員保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、衝撃検出時に膨張展開して乗員が受ける衝撃を軽減させるエアバッグ装置を備えた自動二輪車が開発されている。例えば、特開2005−153613号公報には、運転者の上半身に対応する上部エアバッグ装置と、運転者の下半身に対応する下部エアバッグ装置とを備えた自動二輪車が提案されている。また、特開2006−218971号公報には、乗員が着用するエアバッグジャケットも提案されている。
【特許文献1】特開2005−153613号公報
【特許文献2】特開2006−218971号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
自動二輪車用エアバッグ装置はGセンサによる衝撃検知に基づいてエアバッグを作動させるか否かを判断するのが一般的である。また、走行中に車体に対して該車体に搭乗している乗員が所定量以上移動したか否かによってエアバッグジャケットを作動させるか否かを決定することも検討されている。
【0004】
エアバッグおよびエアバッグジャケットの作動判定を統合的に管理し、車体に加わる衝撃の状況に応じて適宜エアバッグおよびエアバッグジャケットを使い分けできる。
【0005】
本発明の目的は、エアバッグおよびエアバッグジャケットを含む乗員保護装置において、エアバッグおよびエアバッグジャケットを統合管理して車体に加わる衝撃の状況に応じて両者を適宜作動させることができる自動二輪車乗員保護装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明は、乗員に対する外部からの衝撃を緩和する自動二輪車乗員保護装置において、乗員シートとステアリングハンドルとの間で膨張展開するように配置されたエアバッグと、乗員が着用するエアバッグジャケットと、外部から自動二輪車に対して与えられた衝撃に応答して出力を生じる複数の衝撃センサと、衝突予知手段と、前記衝撃センサの出力に基づいて得られる減速度および衝撃度がそれぞれのしきい値以上か否かで衝突と判定する衝突判定手段とを具備し、前記衝突判定手段が、衝突判定時に前記複数の衝撃センサ毎の出力に応じて前記エアバッグおよびエアバッグジャケットの少なくとも一方を作動させるとともに、前記衝突予知手段で衝突が予知されたか否かで、衝突待機判定モードか通常衝突判定モードかを選択し、これら各判定モードに応じて前記減速度および衝撃度のそれぞれのしきい値を切り替えるように構成された点に第1の特徴がある。
【0007】
また、本発明は、前記衝突待機判定モードが、前記複数の衝撃センサ毎の出力に応じて正突、斜突、側突、および追突待機判定モードのうち、少なくとも正突待機判定モードを含む複数の判定モードを含んでいる点に第2の特徴がある。
【0008】
また、本発明は、前記衝突予知手段が、車車間通信装置で複数の他車から発信された情報および自車情報に基づいて予定時間内に自車との接触位置に至ると予測される他車を特定するように構成されている点に第3の特徴がある。
【0009】
また、本発明は、前記複数の他車から発信された情報が、該他車の位置、速度、および針路であり、前記自車情報が自車の速度である点に第4の特徴がある。
【0010】
また、本発明は、前記他車から発信された情報が、該他車の車重をさらに含み、前記衝突待機判定モードに含まれる各判定モードは、自車と他車との相対速度および該他車の車重に応じて区別される高速衝突モードと低速衝突モードとをさらに含んでいる点に第5の特徴がある。
【0011】
さらに、本発明は、前記衝突予知手段が、前記車車間通信装置に加えて路車間通信装置で検出される情報に基づいて衝突の予知をするように構成されている点に第6の特徴がある。
【発明の効果】
【0012】
第1の特徴を有する本発明によれば、自動二輪車が衝撃を受けて衝撃センサが所定の減速度および衝撃度を示すしきい値以上の出力を生じたときに、エアバッグおよびエアバッグジャケットが作動する。また、複数の衝撃センサ毎の出力に応じて判断される衝撃の態様に応じてエアバッグおよびエアバッグジャケットの少なくとも一方を作動させる。さらに、所定時間以内の衝突が予知された場合は、通常衝突判定モードから衝突待機判定モードに切り替えて、衝撃センサに対する判定のしきい値を切り替える。これによって、衝突が予知できた場合は、その予知された衝突の態様に応じて適切に保護装置を作動させることができる。
【0013】
第2の特徴を有する本発明によれば、自動二輪車に加わる衝撃の方向を複数に区別し、それぞれに応じて適切に保護装置を作動させることができる。
【0014】
第3及び第4の特徴を有する本発明によれば、車車間通信装置で得られた情報により、例えば自車から死角となる他車に関しても自車に与える影響を予知し、適切に保護装置を作動させることができる。
【0015】
第5の特徴を有する本発明によれば、車重と相対速度とによって自車が受ける衝撃の大きさを予想判定できるので、その衝撃の大きさに応じて適切に保護装置を作動させることができる。
【0016】
第6の特徴を有する本発明によれば、路車間通信装置から得られる情報も加えてより一層高い精度で衝突を予知し、適切に保護装置を作動させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。図2は、本発明の一実施形態に係る乗員保護装置とそてのエアバッグ装置(エアバッグモジュール)を備えた自動二輪車の左側面図であり、エアバッグジャケットを着用した乗員が搭乗している自動二輪車の図である。自動二輪車1は、フレームボディ2を有し、フレームボディ2の前部には操舵方向に回動自在に支持されたステアリングステム3が設けられる。ステアリングステム3の上部にはハンドル4が設けられ、ステアリングステム3の下部には前輪5を支持するフロントフォーク6が連結される。フレームボディ2のほぼ中央部には、枢軸7によってスイングユニット8が上下揺動自在に支持される。スイングユニット8は、エンジン、変速装置、および減速装置を備えている。スイングユニット8の後端はリヤクッション9によってフレームボディ2の後部に連結されている。スイングユニット8の出力軸10には駆動輪である後輪11が連結される。フレームボディ2の中央部から後部にかけた領域の上部には乗員シート12が配置される。乗員シート12は運転者席12aとその後方の同乗者席12bとからなる。
【0018】
フレームボディ2の前部にはエアバッグモジュール13が設けられる。エアバッグモジュール13はインフレータとエアバッグとを備え、予め設定した条件下でインフレータに点火され、発生するガスによってエアバッグが膨出展開する。図1では、展開した状態のエアバッグ14を示す。エアバッグ14は運転者席12aに着座した乗員15の前方で膨張展開するように設定される。乗員15は膨張空気室を備えたエアバッグジャケット16を着用している。エアバッグジャケット16は乗員15の上半身に適合する形状を有するエアバッグと該エアバッグにガスを導入するインフレータを有する周知のものを使用できる。
【0019】
エアバッグ14とエアバッグジャケット16を作動させる衝撃を検出するための衝撃検出手段としての加速度センサ17がフロントフォーク6に設けられている。車体側面(両側面)と車体後部にもそれぞれ加速度センサ18、19が設けられる。加速度センサ18は、フレームボディ2の中央下部の左右両側、例えばフレームボディ2を構成するロアチューブ2aに取り付けられ、加速度センサ19は、例えば車体後部のテールライトユニット内に収容される。
【0020】
各加速度センサ17〜19の出力は図示しないエアバッグ用電子制御装置(ECU)に入力され、エアバッグモジュール13およびエアバッグジャケット16の作動判断に供される。エアバッグモジュール13とエアバッグジャケット16のインフレータ(図示しない)には、前記ECUからの点火信号を入力可能なように図示しないハーネスが設けられる。
【0021】
図1は、本実施形態に係る乗員保護装置のシステム構成図である。乗員保護装置は、エアバッグ14、エアバッグジャケット16、加速度センサ(Gセンサ)17、18、19、車速センサ20、ECU21、GPSアンテナ22および車車間通信装置23を備える。車車間通信装置23は、同様の車車間通信装置を搭載している他の車両が所定距離内に接近した場合に、該他の車両との間で通信ネットワークを開設し、所定の情報を送受する。車車間通信装置23は車車間通信アンテナおよび車車間通信モデム(2.4ギガヘルツ無線通信機)からなる。
【0022】
ECU21は、通信開設部210、自車情報算出部211、他車情報抽出部212、衝突予知部213、通常衝突判定部214、待機時衝突判定部215、および保護装置作動指令部216を含み、これら各部の機能はマイクロコンピュータ(CPU)およびメモリによって実現される。
【0023】
通信開設部210は、車車間通信装置23で受信した無線電波に基づいて所定距離内にいる他の車両を特定し、これら他車との双方向通信を開始する。自車情報算出部211は、GPSアンテナ22で受信したGPS信号に基づいて走行中の自車の位置、方位、進路等を算出するとともに、車速センサ20の検出信号から車速を算出し、これらを自車情報として車車間通信装置23から発信する。他車情報抽出部212は、車車間通信装置23の受信情報によって他車から送信された自車情報(つまり自車から見れば他車情報)を抽出する。
【0024】
自車情報および他車情報は属性IDと情報部分とからなる。属性IDには、自車の重量や車体形状をそれぞれ示す重量IDおよび車種IDをさらに含む。車重は例えば1000kg以上250kg毎に区分して重量IDで表す。例えば、車重1000kg未満は重量ID「0」、車重1000kg以上1250kg未満は重量ID「1」、車重1250kg以上1500kg未満は重量ID「2」等とする。また、車種IDについては、例えばセダン形状は車種ID「0」、コンパクト形状は車種ID「1」、小型ミニバン形状は車種ID「2」等とする。
【0025】
衝突予知部213は、自車情報および他車情報に基づいて自車と他車とが近い将来(例えば1秒後)に衝突する可能性の有無を判断する。この衝突可能性は双方通信を開設したすべての車両について判断する。そして、衝突可能性が高い車両、つまり、より短時間のうちに衝突の可能性がある他車から順に順位を付け、順位の高い他車を予定数選択し、衝突候補として抽出する。そして、この衝突候補を対象に待機時衝突判定部215で衝突の詳細なモードを判定する。すなわち、衝突角度や自車と他車との相対速度および他車の重量によって加わる衝撃の程度を判定する。
【0026】
保護装置作動指令部216は自車情報および他車情報に基づいて衝突角度や衝撃の程度によって決定された判定モードに応じてエアバッグ14、エアバッグジャケット16の両方またはいずれか一方を作動させるかの選択および作動タイミングを決定する。作動タイミングは、衝撃センサである加速度センサ17〜19から生じる出力で衝突か否かを判定するしきい値に応じて決定される。加速度センサ17〜19の出力による減速度および衝撃度がそれぞれのしきい値を超えたときにエアバッグ14用のインフレータ14aおよびエアバッグジャケット16用のインフレータ16aに保護装置作動指示部216から点火指示が入力される。
【0027】
通常衝突判定部214は、車車間通信装置を備えていない車両や障害物等との衝突判定を行う。車車間通信装置を備えていない車両や障害物への接近は予め予測できないので、待機時衝突判定部215で判定した衝突モードとは異なる基準で他車や障害物への衝突の有無を判定し、保護装置作動指令部216を動作させる。
【0028】
衝突モード判定には、通常衝突判定モードと衝突待機判定モードとがあり、通常衝突判定モードには、正面衝突判定、側面衝突判定、斜突判定、および追突判定とがある。また、衝突待機判定モードには高速正突待機判定モード、低速正突待機判定モード、高速斜突待機判定モード、低速斜突待機判定モード、高速追突待機判定モード、および低速追突待機判定モードが設定される。
【0029】
上記各判定モード毎に、エアバッグ14やエアバッグジャケット16を作動させるための減速度および衝撃度のしきい値と、作動タイミングを設定する。なお、「減速度」は加速度センサによって検出された加速度の積分、「衝撃度」は加速度から抽出される衝突の激しさ指数である。つまり、加速度データを全積分または区間積分して所定の短時間に車両が減速した度合を演算した値が減速度である。衝撃度は加速度データの周波数解析等によって演算した高周波振動や極短時間のエネルギ量である。
【0030】
減速度と衝撃度のしきい値の一例は次の通りである。
【0031】
「通常衝突判定モード」
通常衝突判定モードの正面衝突判定では加速度センサ17によって検出された減速度が100を超えたらエアバッグ14を作動させ、エアバッグ14の作動から0.1秒後にエアバッグジャケット16を作動させる。通常衝突判定モードの側面衝突判定では左右の加速度センサ18の一方で検出された減速度が100を超えたらエアバッグジャケット16を作動させる。また、通常衝突判定モードの斜突判定では加速度センサ17で検出された減速度が100を超えたらエアバッグ14を作動させ、かつその0.1秒以内に加速度センサ18で検出された衝撃度が所定値50を超えたらエアバッグジャケット16を作動させる。さらに、通常衝突判定モードの追突判定では、加速度センサ19で検出された減速度が所定値100を超えたらエアバッグジャケット16を作動させる。
【0032】
「高速正突待機判定モード」
高速正突待機判定モードの正面衝突判定および斜突判定では加速度センサ17で検出された減速度が50を超えたらエアバッグ14およびエアバッグジャケット16を同時に作動させる。側面衝突および追突判定は通常衝突判定モードと同じしきい値で衝突判定する。
【0033】
「低速正突待機判定モード」
低速正突待機中判定モードの正面衝突判定および斜突判定では加速度センサ17で検出された減速度が80を超えたらエアバッグ14を作動させ、エアバッグ14が作動してから0.1秒後にエアバッグジャケット16を作動させる。側面衝突および追突判定は通常衝突判定モードと同じしきい値で衝突判定する。
【0034】
「高速斜突待機判定モード」
高速斜突待機判定モードの正面衝突判定、斜突判定、側面衝突判定では加速度センサ17で検出された減速度が50を超えたらエアバッグ14およびエアバッグジャケット16を同時に作動させる。また、左右の加速度センサ18の一方で検出された加速度データに基づく衝撃度が50を超えたらエアバッグ14およびエアバッグジャケット16を同時に作動させる。追突判定は通常衝突判定モードと同じしきい値で衝突判定する。
【0035】
「低速斜突待機判定モード」
低速斜突待機判定モードの正面衝突判定、斜突判定、側面衝突判定では加速度センサ17で検出された減速度が80を超えたらエアバッグ14を作動させる。また、エアバッグ14の作動から0.1秒後にエアバッグジャケット16を作動させる。また、左右の加速度センサ18の一方で検出された加速度データに基づく衝撃度が50を超えたらエアバッグおよびエアバッグジャケット16を同時に作動させる。追突判定は通常衝突判定モードと同じしきい値で衝突判定する。
【0036】
「高速追突待機判定モード」
高速追突待機判定モードの追突判定では加速度センサ19で検出された減速度が50を超えたらエアバッグジャケットを作動させる。正面衝突、側面衝突、および斜突判定は通常衝突判定モードと同じしきい値で衝突判定する。
【0037】
「低速追突待機判定モード」
低速斜突待機判定モードの追突判定では加速度センサ19で検出された減速度が80を超えたらエアバッグジャケットを作動させる。正面衝突、側面衝突、および斜突判定は通常衝突判定モードと同じしきい値で衝突判定する。
【0038】
なお、上記衝突判定のための減速度および衝撃度のしきい値は一例であり、これに限定されない。要は、予測された衝突の激しさや衝突方向によって最適な保護装置を最適のタイミングで作動させればよい。上記しきい値の設定例から分かるように、衝突速度が高速で衝突程度が激しいと予測された場合はエアバッグ14やエアバッグジャケット16を早期に膨張展開または膨張させるために減速度や衝撃度のしきい値を低くして高速衝突に対応できるようにする。
【0039】
また、エアバッグ14に多段インフレータが設けられている場合は、衝突の激しさに応じてインフレータを多段で動作させるか遅延時間を設けず同時に複数のインフレータを同時点火させるかを選択することができる。低速衝突や衝突相手の他車が小型軽量であれば多段でインフレータに点火する。また、側面への衝突の場合はエアバッグ14よりもエアバッグジャケット16を先に作動させるし、斜めからの衝突の場合はエアバッグ14およびエアバッグジャケット16を同時に作動させる。さらに、正面からの衝突の場合は、先にエアバッグ14を作動させ、その後所定の遅延時間をもってエアバッグジャケット16を作動させる。
【0040】
上記判定モードの切り替え動作をフローチャートを参照して説明する。図3および図4は判定モード切り替えのフローチャートである。まず図3において、ステップS1では通常衝突判定モードで衝突判定、つまり加速度センサ17〜19を監視する。ステップS2では、加速度センサ17〜19の出力により通常衝突判定モードのしきい値を使って衝突したか否かを判定する。ステップS2が肯定ならば、ステップS3に進み、衝突の態様に応じて保護装置つまりエアバッグ14および/またはエアバッグジャケット16を作動させる。
【0041】
ステップS2が否定、つまり衝突と判定されなかった場合は、ステップS4に進んで、他車情報として他車の進行方向および速度を読み込み、かつ、自車の速度および自車と他車との距離を読み込む。ステップS5ではステップS4で読み込んだ他車情報と自車情報とに基づき、所定時間後、例えば1秒後に衝突の可能性が有るかどうかを判断する。ステップS5が肯定ならば通常衝突判定モードから衝突待機判定モードへ切り替えが行われ、ステップS6に進む。衝突の可能性があると判断されない場合はステップS5からステップS1に戻る。
【0042】
図4において、衝突待機判定モードに移行して、ステップS6で衝突待機判定を開始し、ステップS7では、予想される衝突角度により、正面衝突(正突)、側面衝突(側突)、追突および斜め衝突(斜突)のいずれかになるかが判定される。
【0043】
正突と判定されれば正突待機判定モードが選択されてステップS8に移行する。ステップS8では他車の速度、他車の重量、および自車の速度を読み込む。ステップS9では、ステップS8で読み込んだ情報から衝突のエネルギを推定し、その衝突のエネルギが所定値以上か否かで、激しい衝突か緩やかな衝突かを判断する。激しい衝突ならば、ステップS10に進んで高速正突待機判定モードで加速度センサ17〜19の出力を監視する。緩やかな衝突ならば、ステップS11に進んで低速正突待機判定モードで加速度センサ17〜19の出力を監視する。
【0044】
ステップS7で側突または追突と判定されれば、側突・追突待機判定モードが選択されてステップS12に移行する。ステップS12では他車の速度、他車の重量、および自車の速度を読み込む。ステップS13では、ステップS12で読み込んだ情報から衝突のエネルギを推定し、その衝突のエネルギが所定値以上か否かで、激しい衝突か緩やかな衝突かを判断する。激しい衝突ならば、ステップS14に進んで高速側突・追突待機判定モードで加速度センサ17〜19の出力を監視する。緩やかな衝突ならば、ステップS15に進んで低速側突・追突待機判定モードで加速度センサ17〜19の出力を監視する。
【0045】
また、ステップS7で斜突と判定されれば、斜突待機判定モードが選択されてステップS16に移行する。ステップS16では他車の速度、他車の重量、および自車の速度を読み込む。ステップS17では、ステップS16で読み込んだ情報から衝突のエネルギを推定し、その衝突のエネルギが所定値以上か否かで、激しい衝突か緩やかな衝突かを判断する。激しい衝突ならば、ステップS18に進んで高速斜突待機判定モードで加速度センサ17〜19の出力を監視する。緩やかな衝突ならば、ステップS19に進んで低速斜突待機判定モードで加速度センサ17〜19の出力を監視する。
【0046】
ステップS20では、加速度センサ17〜19の出力に基づいて衝突が発生したか否かが判断される。ステップS20が肯定ならば、ステップS21に進み、衝突の態様に応じて保護装置つまりエアバッグ14および/またはエアバッグジャケット16を作動させる。衝突が発生しなかった場合は、図示しないメインルーチンへ戻る。
【0047】
上述のように、本実施形態によれば、エアバッグとエアバッグジャケットを統合管理するとともに車車間通信による衝突の予知を行い、予知された衝突の状況に応じたそれぞれの作動判定値に基づいて作動判定を行う。なお、衝突および衝突程度の予知手段として車車間通信装置による情報取得の例を示したが、車車間通信に限らず、路車間通信による走行支援サービス(AHS)から障害物情報、路面情報、他車情報を得たり、レーダを使用した測距装置で他車や障害物と自車との距離情報を得たり、カメラで撮像された画像を解析したりして衝突予知をするシステムを併せて使用することもできる。
【0048】
車車間通信装置を搭載して相互に走行情報を交信可能にし、該走行情報により自車両の走行に影響を与えることが予想される他車両を特定する車両の例が特開2002−183889号公報に記載されている。本実施形態でも、この車車間通信装置と同様の車車間通信を利用して自車量の走行位置、走行速度、方位、針路等の情報を発信し、他車からの情報を受信することができる。
【0049】
また、路車間通信の例としては、道路周辺に設けられた情報発信手段との間の路車間通信 により得た情報および他車との間の車車間通信により得た情報に基づいて自車を自動走行させる走行制御手段を備えた自動走行車両が特開平10−320691号公報に記載されている。
【0050】
なお、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、衝突待機判定モードは、正突、側突、斜突、および追突のすべてを含むものに限らず、少なくとも正突を含む複数のモードで衝突の判定ができるようにすればよい。すなわち、側突、斜突および追突の各待機判定モードの一つまたは二つを省略することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の一実施形態に係る自動二輪車乗員保護装置のシステム構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る自動二輪車保護装置を備えた自動二輪車の側面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る自動二輪車乗員保護装置の要部処理を示すフローチャート(その1)である。
【図4】本発明の一実施形態に係る自動二輪車乗員保護装置の要部処理を示すフローチャート(その2)である。
【符号の説明】
【0052】
1…自動二輪車、 2…フレームボディ、 14…エアバッグ、 16…エアバッグジャケット、 17〜19…加速度センサ、 20…車速センサ、 21…ECU、 22…GPSアンテナ、 23…車車間及び路車間通信装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員に対する外部からの衝撃を緩和する自動二輪車乗員保護装置において、
乗員シートとステアリングハンドルとの間で膨張展開するように配置されたエアバッグと、
乗員が着用するエアバッグジャケットと、
外部から自動二輪車に対して与えられた衝撃に応答して出力を生じる複数の衝撃センサと、
衝突予知手段と、
前記衝撃センサの出力に基づいて得られる減速度および衝撃度がそれぞれのしきい値以上であるか否かで衝突と判定する衝突判定手段とを具備し、
前記衝突判定手段が、衝突判定時に前記複数の衝撃センサ毎の出力に応じて前記エアバッグおよびエアバッグジャケットの少なくとも一方を作動させるとともに、前記衝突予知手段で衝突が予知されたか否かで、衝突待機判定モードか通常衝突判定モードかを選択し、これら各判定モードに応じて前記減速度および衝撃度のそれぞれのしきい値を切り替えるように構成されたことを特徴とする自動二輪車乗員保護装置。
【請求項2】
前記衝突待機判定モードが、前記複数の衝撃センサ毎の出力に応じて正突、斜突、側突、および追突待機判定モードのうち、少なくとも正突待機判定モードを含む複数の判定モードを含んでいることを特徴とする請求項1記載の自動二輪車乗員保護装置。
【請求項3】
前記衝突予知手段が、車車間通信装置で複数の他車から発信された情報および自車情報に基づいて予定時間内に自車との接触位置に至ると予測される他車を特定するように構成されていることを特徴とする請求項1記載の自動二輪車乗員保護装置。
【請求項4】
前記衝突予知手段が、車車間通信装置で複数の他車から発信された情報および自車情報に基づいて予定時間内に自車と衝突する他車を特定するように構成されていることを特徴とする請求項2記載の自動二輪車乗員保護装置。
【請求項5】
前記複数の他車から発信された情報が、該他車の位置、速度、および針路であり、前記自車情報が自車の速度であることを特徴とする請求項3または4記載の自動二輪車乗員保護装置。
【請求項6】
前記他車から発信された情報が、該他車の車重をさらに含み、前記衝突待機判定モードに含まれる各判定モードは、自車と他車との相対速度および該他車の車重に応じて区別される高速衝突モードと低速衝突モードとをさらに含んでいることを特徴とする請求項4記載の自動二輪車乗員保護装置。
【請求項7】
前記衝突予知手段が、前記車車間通信装置に加えて路車間通信装置で検出される情報に基づいて衝突の予知をするように構成されていることを特徴とする請求項3記載の自動二輪車乗員保護装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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