説明

自動二輪車

【課題】自動二輪車の制限された搭載スペースであっても、より多くの情報を表示し得る画像表示装置を搭載した自動二輪車を提供することである。
【解決手段】画像表示装置10と車両情報検出部70を有する自動二輪車100であって、画像表示装置10は、ライダーの第1の姿勢ポジション(I)と当該ライダーの第2の姿勢ポジション(II)に応じて、それぞれ、第1の情報表示と第2の情報表示を映し出す液晶表示部12を含み、液晶表示部12は、第1の情報表示として、少なくとも前記車両情報検出部70により検出された車両情報を表示することを特徴とする、自動二輪車100である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動二輪車、特に、画像表示装置が搭載された自動二輪車に関する。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車の中には、ハンドル周りに小型の画像表示装置を搭載し、該画像表示装置の画面に車速をはじめとするメイン情報を表示させたものがある。ライダーは走行中画像表示装置の画面に視線を移すことにより、画面から車速等の情報を得ることができる。また、車速などのメイン情報以外にも、例えばナビゲーションのマップや車両周辺の映像等といったサブ情報を画面に表示させることもできる。このような種々の車両情報を映し出す画像表示装置として、例えば特許文献1にはナビゲーションシステムの表示部に車両周囲の映像を切り替えて映し出す画像表示装置が開示されている。
【特許文献1】特開2001−151015
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、自動二輪車では、ハンドルの近傍に種々の計器等を配置する必要があるため画像表示装置の搭載スペースは小さく制限されており、加えて車両の前影投影面積を縮小化する観点(即ち走行時の空気抵抗を低減して車両の加速力等を高める観点)とヘッドパイプ周りを軽量化する観点(即ちハンドル周りを軽くしてハンドルの操作性を高める観点)から、大型で重量な画像表示装置をハンドルの近傍に搭載するのは非常に難しい。小型で軽量な画像表示装置を使用すれば上記問題を解決することは可能であるが、画像表示装置が小型化されると画面サイズも必然的に小さくなるので、表示し得る情報エリア(即ち情報を映し出す面積)は制限されてしまう。
【0004】
その一方で、近年自動二輪車の中には、IT技術の採用により車々間通信装置や路車間通信装置等を備えた車両が登場しており、そのような車両ではさらに多様な情報(例えば他車接近に対する警告マーク等)を画像表示装置の画面に映し出す必要がある。それらの装置を備えた車両では、画像表示装置の小さな画面サイズでは十分な情報エリアが確保できず、それゆえ近年画像表示装置の大型化への要求は大きなものになっている。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、自動二輪車の制限された搭載スペースであっても、より多くの情報を表示し得る画像表示装置を搭載した自動二輪車を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の自動二輪車は、画像表示装置と、車両情報を検出する車両情報検出部とが搭載された自動二輪車であって、前記画像表示装置は、ライダーの第1の姿勢ポジションと当該ライダーの第2の姿勢ポジションに応じて、それぞれ、第1の情報表示と第2の情報表示を映し出す液晶表示部を含み、前記液晶表示部は、前記第1の情報表示として、少なくとも前記車両情報検出部により検出された車両情報を表示することを特徴とする。
【0007】
ある好適な実施形態において、前記液晶表示部には、前記第1の情報表示及び前記第2の情報表示として、同一内容からなる複数の車両情報が、それぞれ表示比率を変えて映し出されることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の自動二輪車は、画像表示装置と、車両情報を検出する車両情報検出部と
が搭載された自動二輪車であって、前記自動二輪車は、第1のミラーを備え、前記画像表示装置は、第1の情報表示と第2の情報表示を映し出す液晶表示部を含み、前記液晶表示部には、前記第1の情報表示として、少なくとも前記車両情報検出部により検出された車両情報が表示され、前記第1のミラーには、前記第2の情報表示が映し出されることを特徴とする。
【0009】
ある好適な実施形態において、前記第1のミラーは、前記画像表示装置の上方に設置されている。
【0010】
ある好適な実施形態では、前記液晶表示部は、前記第1の情報表示として、少なくとも車速を含む車両情報を表示することを特徴とする。
【0011】
ある好適な実施形態において、前記液晶表示部は、前記第2の情報表示として、警告情報、ナビゲーション情報および車体後方画像情報からなる群から選択される少なくとも1つのサブ情報を表示することを特徴とする。
【0012】
ある好適な実施形態では、前記車両情報検出部は、車々間通信装置、路車間通信装置、ナビゲーション装置および撮像装置からなる群から選択される少なくとも1つの装置をさらに含む。
【0013】
ある好適な実施形態において、前記画像表示装置は、さらに第3の情報表示を映し出す液晶表示部を含み、前記画像表示装置の上方または下方には、第2のミラーが設置されており、前記第2のミラーには、前記第3の情報表示が映し出されることを特徴とする。
【0014】
ある好適な実施形態では、前記第2のミラーは、前記画像表示装置の下方に設置されている。
【0015】
画像表示装置が搭載された自動二輪車の情報表示方法であって、1つの画像表示装置において、ライダーの第1の姿勢ポジションと当該ライダーの第2の姿勢ポジションに応じて、それぞれ、第1の情報表示と第2の情報表示を映し出し、前記第1の姿勢ポジションと、前記第2の姿勢ポジションとは、前記ライダーの顔の位置において上下方向に差異があることを特徴とする。
【0016】
また、画像表示装置が搭載された自動二輪車の情報表示方法であって、前記画像表示装置の上方又は下方には、ミラーが設置されており、前記画像表示装置の画面には、第1の情報表示として、少なくとも車両情報が表示され、前記ミラーには、第2の情報表示が映し出されることを特徴とする。
【0017】
ある好適な実施形態では、前記第2の情報表示は、警告情報、ナビゲーション情報および車体後方画像情報からなる群から選択される少なくとも1つのサブ情報である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の自動二輪車は、画像表示装置として、ライダーの第1の姿勢ポジションと当該ライダーの第2の姿勢ポジションに応じて、それぞれ、第1の情報表示と第2の情報表示を映し出す液晶表示部を備えているので、ライダーは、液晶表示部の同一画面であっても姿勢を変化させること(即ち画面に対するライダーの視線角度を変えること)により、異なる情報表示(第1の情報表示または第2の情報表示)を選択的に視認することができる。
【0019】
上記構成では、1つの画像表示装置を搭載するだけで、典型的な画像表示装置の2倍の情報エリア(即ち情報を表示し得る面積)を確保することができる。2倍の情報エリアを表示できるにもかかわらず搭載される画像表示装置は1つでよいので、2つの画像表示装置を別々に搭載するよりも車両の重量を軽減することができ、画像表示装置の搭載スペースも小さくすることができる。
【0020】
また、本発明の自動二輪車では、画像表示装置として、第1の情報表示と第2の情報表示を映し出す液晶表示部を備えており、該液晶表示部の上方または下方にはミラーが設置されている。そして液晶表示部には第1の情報表示が表示され、ミラーには第2の情報表示が映し出される。
【0021】
上記構成であっても、1つの画像表示装置(及び1つのミラー)を搭載するだけで典型的な画像表示装置の2倍の情報エリアを確保することができる。したがって、2つの画像表示装置を別々に搭載するよりも車両の重量を軽減することができ、さらにコストも低減できる。
【0022】
加えて、重量および/または搭載スペースの都合上画像表示装置の設置が困難な場所であっても、軽量で厚さの薄いミラーであれば容易に配置することができるので、情報を表示可能なスペースのレイアウトの自由度を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら、本発明による実施の形態を説明する。以下の図面においては、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明している。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。
【0024】
まず、図1を参照しながら、本実施形態に係る自動二輪車100(以後、車両)の基本的な車両構成を説明する。図1は、側面から見たときの自動二輪車100の外観を模式的に示す外観側面図である。
【0025】
本実施形態の自動二輪車100は、ライダーが着座するシート80と、シート80の前方に取り付けられたハンドル82と、ハンドル82の左右に設けられた左右一対のバックミラー84と、ハンドル82の前下方に配置されたフロントタイヤ86と、フロントタイヤ86の上方に配置された画像表示装置10とから構成されている。シート80に着座したライダーは、ハンドル82を操縦してフロントタイヤ86の向きを変え車両の進行方向を決定する。その際、ライダーは、ハンドル82の左右に配置されたバックミラー84で後方視認を行いながら走行する。
【0026】
また、自動二輪車100には、車両情報検出部70が搭載されている。車両情報検出部70は、種々の車両の情報を検出する部位の総称のことであり、例えば車速を検出するための後輪回転数検出センサ(図示せず)等を含む。図示した自動二輪車100には、車両情報検出部70の一つとして、車々間通信装置50が搭載されている。車々間通信装置50は、交差点での出会い頭衝突防止等を実現するために他車との間で車両の位置や速度等の情報をやりとりする装置である。なお、車々間通信装置50用のアンテナ52は、シート80の後方に設置されている。
【0027】
自動二輪車100には、車両情報検出部70として、車々間通信装置50以外にも、路車間通信装置、ナビゲーション装置および撮像装置からなる群から選択される少なくとも1つの装置をさらに搭載することもできる。図示した例では、撮像装置40(例えばCCDカメラ)が車両情報検出部70として車両後部のグラブバーに搭載されている。撮像装置40は、車両後方の画像を撮影する役割を持つ。
【0028】
車両情報検出部70により検出された種々の車両情報(例えば撮像装置40で撮影された画像の情報(車体後方画像情報)やアンテナ52から受信した他車の位置情報(即ち他車接近の警告情報))は、車両に搭載された制御装置60を介して画像表示装置10へと出力される。即ち、制御装置60は、画像表示装置10の画面12に種々の車両情報を映し出す制御を実行する。
【0029】
本実施形態の画像表示装置10は、シート80に着座したライダーが視認し易い位置(図示した例ではハンドル82の前方に位置するバイザー部)に取り付けられている。そして、画像表示装置10の画面12には、種々の情報を映し出すことができる。
【0030】
画像表示装置10は、液晶表示部12(即ち液晶の画面12)を有している。液晶表示部12(画面12)には、ライダーの第1の姿勢ポジション(I)と当該ライダーの第2の姿勢ポジション(II)に応じて、それぞれ第1の情報表示と第2の情報表示が映し出される。つまり、本実施形態の液晶表示部12は、2方向に光を分離することにより1つの画面で異なる内容を同時に表示可能な、所謂デュアルビュー液晶表示画面12である。
【0031】
なお、ここでいうライダーの姿勢ポジションとは、自動二輪車100に乗車したライダーがとる姿勢のことをいう。図示した例では、ライダーの第1の姿勢ポジション(I)は、立ち姿勢(ライダーが上体を起してシート80に着座した姿勢)である。また、ライダーの第2の姿勢ポジション(II)は、伏せ姿勢(ライダーが身を屈めてシート80に着座した前屈姿勢)である。
【0032】
第1の姿勢ポジション(I)と第2の姿勢ポジション(II)(ここでは立ち姿勢と伏せ姿勢)とでは、ライダーの顔の位置において上下方向に差異があるので、ライダーが液晶表示部12を見る角度(即ち画面12に対するライダーの視線の角度)はそれぞれ相違する。そして、液晶表示部12は、ライダーが画面12を見る角度に応じて、異なる内容(即ち第1の情報表示または第2の情報表示)を映し出すように構成されている。
【0033】
具体的には、ライダーが第1の姿勢ポジション(I)をとったとき、液晶表示部12は、第1の情報表示として、少なくとも車両情報検出部70により検出された車両情報を表示することができる。本実施形態では、ライダーが立ち姿勢の時には、液晶表示部12には少なくとも車速を含むメイン情報の画面が表示される。なお、メイン情報には、車速以外にも例えばフューエルの残量や水温などの情報も含まれる。
【0034】
また、ライダーが第2の姿勢ポジション(II)をとったとき、液晶表示部12は、第2の情報表示として、少なくとも1つのサブ情報を表示することができる。本実施形態では、ライダーが伏せ姿勢の時には、例えばCCDカメラ40を用いて撮影された車体後方画像情報の画面が表示される。なお、サブ情報には、車体後方画像情報以外にも、ナビゲーション情報(例えばナビゲーションによる周辺マップの情報)、車々間通信装置や路車間通信装置による警告情報(例えば他車接近に対する警告アイコン等)、及び、赤外線カメラによるナイトビューの情報等も含まれる。なお、液晶表示部12に第1の情報表示と第2の情報表示とをそれぞれ映し出す制御は、制御装置60により実行される。
【0035】
本実施形態の自動二輪車100は、画像表示装置10として、ライダーの第1の姿勢ポジション(I)とライダーの第2の姿勢ポジション(II)に応じて、それぞれ、第1の情報表示と第2の情報表示を映し出す液晶表示部12を含んでいるので、ライダーは、姿勢ポジションを変えて画面12を見る角度を変えることによって、異なる情報表示(第1の情報表示または第2の情報表示)を選択的に視認することができる。
【0036】
上記構成では、1つの画像表示装置10を搭載するだけで典型的な画像表示装置(非デュアルビュー液晶表示画面)の2倍の情報エリア(情報を映し出す面積)を確保することができる。典型的な画像表示装置では表示可能な情報エリアが足りず、ライダーは必要に応じて複数の情報表示(特にナビゲーションマップや車体後方画像などのサブ情報)を切り替えて画面に表示する必要があるが、上記構成では、表示可能な情報エリアは2倍となるので、複数の車両情報を画面に固定して表示することができ、それゆえライダーが情報表示を切り替える手間を省くことができる。
【0037】
また、典型的な画像表示装置の2倍の情報エリアを表示できるにもかかわらず、搭載される画像表示装置10は1つでよいので、2つの画像表示装置を別々に搭載するよりも自動二輪車100の重量を軽減することができ、画像表示装置10の搭載スペースも小さくすることができる。
【0038】
なお、本実施形態では、第1の情報表示として車速を含むメイン情報が表示されているが、ライダーが第1の姿勢ポジション(I)をとったとき、液晶表示部12は、第1の情報表示として、少なくとも車両情報を表示すればよい。ここでいう車両情報とは、車両に関する種々の情報のことであり、上述したメイン情報(車速等の車両の走行状態を表す情報)及びサブ情報(ナビゲーションマップ等の車両周辺の状況を表す情報)をいずれも含む情報のことである。
【0039】
本実施形態においては、ライダーが第1の姿勢ポジション(I)をとる時には、液晶表示部12は、第1の情報表示として、メイン情報に代えてサブ情報を表示することも可能である。この構成では、第1及び第2の情報表示として、それぞれ内容の異なるサブ情報が映し出される。このとき、車速等のメイン情報は、車両に別途設けられたメータ表示部にハード固定される。なお、第1の情報表示は、メイン情報のみから構成されてもよいし、サブ情報のみから構成されてもよく、あるいはメイン情報とサブ情報とを混在させてもよい。また、メイン情報の一部(例えば車速の情報)をハード固定し、その他のメイン情報(例えばフューエル残量の情報)を、液晶表示部12に表示することも可能である。
【0040】
また、液晶表示部12には、第1及び第2の情報表示として、それぞれ、ライダーの姿勢ポジションに応じて好適な情報を表示するのが好ましい。例えば、ライダーが伏せ姿勢をとる時には車体後方画像の情報を映し出すのが好ましい。これにより、ライダーは高速走行時に伏せ姿勢となった場合であっても、バックミラー84を視認せずとも視線を画面12に移すことにより車両の後方確認を容易に行うことができる。
【0041】
なお、液晶表示部12には、第1及び第2の情報表示として同一の車両情報を表示しつつ、それぞれ情報の内容(例えば情報のスケール)を変えて映し出すこともできる。例えば、第1の情報表示としてナビゲーションマップを表示し、第2の情報表示としてさらに拡大されたナビゲーションマップを表示することもできる。
【0042】
さらに、液晶表示部12には、第1及び第2の情報表示として同一内容からなる複数の車両情報を、それぞれ表示比率を変えて映し出すこともできる。一例を挙げると、第1及び第2の情報表示として、いずれも車速の情報とナビゲーションマップの情報とを表示しつつ、第1の情報表示では車速の情報の方を大きく表示し、第2の情報表示ではナビゲーションマップの情報の方を大きく表示させることも可能である。
【0043】
なお、図1に示した例では、ライダーの第1の姿勢ポジション(I)は立ち姿勢であり、第2の姿勢ポジション(II)は伏せ姿勢であるが、各姿勢ポジションにおけるライダーの顔の位置に上下方向の差異があれば、異なる情報表示を画面12に映し出すことができ、それゆえ第1及び第2の姿勢ポジションは立ち姿勢と伏せ姿勢とだけに限らない。例えば、ライダーの第2の姿勢ポジションをスタンディング姿勢(即ちシート80から腰を浮かして起立した姿勢)とすることもできる。
【0044】
また、本実施形態では、1つの画面で2つの内容を表示可能なデュアルビュー液晶表示画面12を使用したが、そのような構成のものだけに限定されず、例えば1つの画面で3つの内容を同時に表示可能な3方向液晶表示画面を車両に搭載することもできる。この場合、ライダーは3つの姿勢ポジション(例えば、立ち姿勢と伏せ姿勢とスタンディング姿勢)の変化によって、3つの異なる情報表示を選択的に見ることができる。つまり、この構成では1つの画像表示装置を搭載するだけで典型的な画像表示装置の3倍の情報エリアを確保することができる。
【0045】
次に、図2を参照しながら本実施形態の画像表示装置10の構成について詳述する。図2は、本実施形態の画像表示装置10の基本的な構成を模式的に示す断面模式図である。
【0046】
画像表示装置10は、2枚のガラス板(13及び14)の間に、液晶及びRGBカラーフィルタから構成された液晶画素層11を挟み込み、該液晶画素層11に電圧をかけることによって光の透過量を制御して映像を表示する機構を有している。なお、符号15及び16は入出射する光方向を制御する偏光フィルタを表し、符号17は画面12の明度を調整するバックライトを表す。
【0047】
また、画像表示装置10の液晶表示部12は、バックライト17からの光の進行方向を2方向(即ちライダーの第1の姿勢ポジション(I)及び第2の姿勢ポジション(II)の各方向)に分離することにより、ライダーの姿勢ポジションに応じて異なる情報表示を同一の画面に表示することができる。本実施形態では、上記2方向に光を分離する手段として視差バリア方式が採用されている。
【0048】
視差バリア方式では、液晶画素層11において、第1の姿勢ポジション(I)側用のRGB画素(即ち第1の情報表示を構成する各画素)と、第2の姿勢ポジション(II)側用のRGB画素(即ち第2の情報表示を構成する各画素)とが交互に並べて配置される。そして、ガラス板13と偏向フィルタ15との間には光を遮断するバリア18が形成され、該バリア18にはスリット状の孔19が一定の間隔で開口される。この孔19は、ライダーが第1の姿勢ポジション(I)側から見ると第2の姿勢ポジション(II)側用の各画素が見えないように(同様にライダーが第2の姿勢ポジション(II)側から見ると第1の姿勢ポジション(I)側用の各画素が見えないように)、サイズやスリッド間隔等を調整して形成される。
【0049】
上記構成では、第1の姿勢ポジション(I)側から画面12を見たライダーの視線は、第1の姿勢ポジション(I)側用のRGB画素のみを捉えるので、ライダーは第1の情報表示だけを視認することができる。一方、第2の姿勢ポジション(II)側から画面12を見たライダーの視線は、第2の姿勢ポジション(II)側用のRGB画素のみを捉えるので、ライダーは第2の情報表示だけを視認することができる。
【0050】
なお、本実施形態において、上記構成を実現する液晶表示部12の具体的な構成の一例を示すと次の通りである。本実施形態では、立ち姿勢におけるライダーの頭の位置と伏せ姿勢におけるライダーの頭の位置との間隔は30cm程度であり、また、画像表示装置10の画面12からライダーの頭の位置までの距離は45cm〜55cm程度であるため、液晶表示部12は、45°以上の2方向に光を分離できるようにスリット状の孔19の大きさ等が調整されて構成されている。なお、上述した画像表示装置10
の構成は、設定され得るライダーの姿勢ポジションや画像表示装置10の配置などの諸条件にあわせて適宜変更することができる。
【0051】
続いて、本発明の別の実施形態を説明する。まず、図3及び図4を参照しながら、別の実施形態に係る自動二輪車200の基本的な車両構成を説明する。図3は、側面から見たときの自動二輪車200の外観を模式的に示す外観側面図であり、図4は、自動二輪車200のシートに上体を起して着座したライダー(つまり立ち姿勢のポジションにおけるライダー)から見たハンドル82周辺の構成を示す模式図である。
【0052】
自動二輪車200では、第1のミラー30を備え、該第1のミラー30に映る反射像の一部として第2の情報表示が映し出される点において上述の自動二輪車100とは異なる。従って、自動二輪車100と同一の構成部材には同一の符号を付し、その重複した説明を省略する。
【0053】
図3及び図4に示すように、自動二輪車200は、ハンドル82の前方に画像表示装置10を備えている。この画像表示装置10は、第1の情報表示と第2の情報表示を映し出す液晶表示部12(所謂デュアルビュー液晶画面)を含み、ここでは、自動二輪車100に搭載した液晶表示部12と同じものを使用することができる。
【0054】
液晶表示部12(液晶画面12)には、第1の情報表示として、少なくとも車両情報検出部70により検出された車両情報が表示される。第1の情報表示は、上述した自動二輪車100における第1の情報表示と同じ種々の車両情報を含み、図4に示した例では、第1の情報表示として、車速のメイン情報やナビゲーションマップのサブ情報が映し出されている。これにより、シート80に着座したライダーは、走行時に立ち姿勢のまま画面12に視線を移すことにより、画面12から種々の車両情報を得ることができる。
【0055】
また、画像表示装置10の上方または下方には、第1のミラー30が設置されている。本実施形態の第1のミラー30は、軽量化の観点からアクリルから構成された略矩形の板状部材であり、画像表示装置10の上方に取り付けられている。第1のミラー30の反射面(即ち反射像を映す面)は、(ライダーから見た)反射像の一部に画像表示装置10の画面12の像が含まれるように、該画面12と所定の角度をなして、車両後方(図示した例では車両の斜め下後方)に向けて形成されている。なお、ここで示したように、第1のミラー30を画像表示装置10よりも上方に配置することにより、ライダーが視認し易い位置に第1のミラー30を設置することができる。
【0056】
この第1のミラー30には第2の情報表示が映し出される。つまり、ライダーは第1のミラー30を介して画面12を見ることにより(即ち第1のミラー30に反射像として映った画面12を見ることにより)、第2の情報表示を視認することができる。
【0057】
なお、本実施形態において第1のミラー30に映し出される第2の情報表示は、上述した自動二輪車100における第2の情報表示と同じ情報(即ち少なくとも1つのサブ情報を含む情報)である。図4に示した例では、第2の情報表示として、図中の左から順に、車々間通信装置や路車間通信装置による警告情報(他車接近に対する警告アイコン)、ナビゲーションによる車両の進行方向を示唆する矢印情報、及び、車体後方画像の情報が表示されている。これにより、シート80に着座したライダーは、走行時に立ち姿勢のまま第1のミラー30に視線を移すことにより種々の車両情報を得ることができる。なお、第2の情報表示は、反射像の一部として第1のミラー30に映し出されるため、画像表示装置10の画面12上では予め上下及び左右を反転した画像に変換されて表示される。
【0058】
上記構成では、1つの画像表示装置10(及び1つのミラー30)を搭載するだけで典型的な画像表示装置の2倍の情報エリアを確保することができるので、2つの画像表示装置10を別々に搭載するよりも車両の重量を軽減することができ、しかも製造コストも低く抑えることができる。
【0059】
また、重量および/または搭載スペースの都合上画像表示装置10の設置が困難な場所であっても、軽量で厚さの薄い第1のミラー30であれば容易に配置することができるので、情報表示スペース(即ち情報を表示し得る空間)のレイアウトの自由度を高めることができる。
【0060】
例えば、ハンドル82よりも上方のスペースにミラー30を配置することにより、ライダーは少ない視線移動で種々の車両情報を見ることができる。ハンドル82よりも上方のスペースは、ハンドル周りを軽くしてハンドルの操作性を高める観点から重量な画像表示装置を設置することは困難であったが、軽量なミラーであればハンドル周りの重量をあまり増加させずに配置できるので、ハンドル操作に悪影響を与える心配をしなくてもよい。
【0061】
ここまで示した例では第1のミラー30を画像表示装置10よりも上方に配置したが、画像表示装置10の下方に配置することもできる。第1のミラー30を画像表示装置10の下方に配置することにより、画像表示装置10の画面12に直接光(例えば太陽光)が当たるのを回避することができ、それゆえ表示内容を見やすくできるというメリットが得られる。
【0062】
なお、上述した実施形態では、1つの画面で2つの内容を表示可能なデュアルビュー液晶表示画面(即ち第1の情報表示と第2の情報表示を映し出すことができる液晶表示部12)を搭載したものを示したが、そのような構成のものに限定されず、1つの画面で3つの内容を同時に表示可能な3方向液晶表示画面(即ち第1の情報表示と第2の情報表示に加えて、さらに第3の情報表示を映し出すことができる液晶表示部12)を搭載することもできる。このとき、画像表示装置10の上方または下方には、第1のミラー30だけでなく第2のミラー32を設置することができる。
【0063】
例えば、図5及び図6には、ミラー30が画像表示装置10の上方に設置され、第2のミラー32が液晶表示装置10の下方に設置された自動二輪車300の例を示している。図5に示すように、第2のミラー32の反射面は、第2のミラー32に映った反射像に画像表示装置10の画面12が含まれるように、該画面12とは所定の角度をなして形成されている。第2のミラー32には第3の情報表示が映し出される。つまり、ライダーは第2のミラー32を介して画面12を見ることにより(即ち第2のミラー32に反射像として映った画面12を見ることにより)、第3の情報表示を視認することができる。
【0064】
上記構成では、1つの画像表示装置(及び2つのミラー)を搭載するだけで典型的な画像表示装置の3倍の情報エリアを確保することができるので、種々の車両情報を画像を切り替えることなく表示することができる。例えば、図6に示すように、ライダーは画面12に視線を移すことにより車速等のメイン情報を確認でき、また第1のミラー30に視線を移すことによりナビゲーションマップ等の情報を確認でき、あるいは第2のミラー32に視線を移すことにより車体後方画像の情報を確認することが可能となる。
【0065】
なお、第1のミラー30及び第2のミラー32は、画像表示装置10に対して上下のレイアウト順序は問わない。即ち、第1のミラー30及び第2のミラー32は、それぞれ画像表示装置10に対して上方または下方に配置されるのであれば、両ミラー(30,32)を画像表示装置10よりも上方に配置してもよいし、あるいは両ミラー(30,32)を画像表示装置10よりも下方に配置することもできる。両ミラー(30,32)を画像表示装置10よりも下方に配置した場合には、画像表示装置の画面12は下向きになるため、該画面12に直接光(例えば太陽光)が当たるのを回避することができ、それゆえ表示内容を見やすくできる。
【0066】
以上、本発明を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、勿論、種々の改変が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明によれば、自動二輪車の制限された搭載スペースであっても、より多くの情報を表示し得る画像表示装置を搭載した自動二輪車を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】側面から見たときの自動二輪車100の外観を模式的に示す外観側面図。
【図2】本実施形態の画像表示装置10の基本的な構成を模式的に示す断面模式図。
【図3】側面から見たときの自動二輪車200の外観を模式的に示す外観側面図。
【図4】自動二輪車200のシート80に上体を起して着座したライダーから見たハンドル82周辺の構成を示す模式図。
【図5】側面から見たときの自動二輪車300の外観を模式的に示す外観側面図。
【図6】自動二輪車300のシート80に上体を起して着座したライダーから見たハンドル82周辺の構成を示す模式図。
【符号の説明】
【0069】
10 画像表示装置
11 液晶画素層
12 液晶表示部(画面)
13 ガラス板
15 偏向フィルタ
17 バックライト
18 バリア
19 孔
30 第1のミラー
32 第2のミラー
40 撮像装置
50 車々間通信装置
52 アンテナ
60 制御装置
70 車両情報検出部
80 シート
82 ハンドル
84 バックミラー
86 フロントタイヤ
100 自動二輪車
200 自動二輪車
300 自動二輪車
I 第1の姿勢ポジション
II 第2の姿勢ポジション

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像表示装置と、
車両情報を検出する車両情報検出部と
が搭載された自動二輪車であって、
前記画像表示装置は、ライダーの第1の姿勢ポジションと当該ライダーの第2の姿勢ポジションに応じて、それぞれ、第1の情報表示と第2の情報表示を映し出す液晶表示部を含み、
前記液晶表示部は、前記第1の情報表示として、少なくとも前記車両情報検出部により検出された車両情報を表示することを特徴とする、自動二輪車。
【請求項2】
前記液晶表示部には、前記第1の情報表示及び前記第2の情報表示として、同一内容からなる複数の車両情報が、それぞれ表示比率を変えて映し出されることを特徴とする、請求項1に記載の自動二輪車。
【請求項3】
画像表示装置と、
車両情報を検出する車両情報検出部と
が搭載された自動二輪車であって、
前記自動二輪車は、第1のミラーを備え、
前記画像表示装置は、第1の情報表示と第2の情報表示を映し出す液晶表示部を含み、
前記液晶表示部には、前記第1の情報表示として、少なくとも前記車両情報検出部により検出された車両情報が表示され、
前記第1のミラーには、前記第2の情報表示が映し出されることを特徴とする、自動二輪車。
【請求項4】
前記第1のミラーは、前記画像表示装置の上方に設置されている、請求項3に記載の自動二輪車。
【請求項5】
前記液晶表示部は、前記第1の情報表示として、少なくとも車速を含む車両情報を表示することを特徴とする、請求項1または3に記載の自動二輪車。
【請求項6】
前記液晶表示部は、前記第2の情報表示として、警告情報、ナビゲーション情報および車体後方画像情報からなる群から選択される少なくとも1つのサブ情報を表示することを特徴とする、請求項1または3に記載の自動二輪車。
【請求項7】
前記車両情報検出部は、車々間通信装置、路車間通信装置、ナビゲーション装置および撮像装置からなる群から選択される少なくとも1つの装置をさらに含む、請求項1または3に記載の自動二輪車。
【請求項8】
前記画像表示装置は、さらに第3の情報表示を映し出す液晶表示部を含み、
前記画像表示装置の上方または下方には、第2のミラーが設置されており、
前記第2のミラーには、前記第3の情報表示が映し出されることを特徴とする、請求項3に記載の自動二輪車。
【請求項9】
前記第2のミラーは、前記画像表示装置の下方に設置されている、請求項8に記載の自動二輪車。
【請求項10】
画像表示装置が搭載された自動二輪車の情報表示方法であって、
1つの画像表示装置において、ライダーの第1の姿勢ポジションと当該ライダーの第2の姿勢ポジションに応じて、それぞれ、第1の情報表示と第2の情報表示を映し出し、
前記第1の姿勢ポジションと、前記第2の姿勢ポジションとは、前記ライダーの顔の位置において上下方向に差異があることを特徴とする、自動二輪車の情報表示方法。
【請求項11】
画像表示装置が搭載された自動二輪車の情報表示方法であって、
前記画像表示装置の上方又は下方には、ミラーが設置されており、
前記画像表示装置の画面には、第1の情報表示として、少なくとも車両情報が表示され、
前記ミラーには、第2の情報表示が映し出されることを特徴とする、自動二輪車の情報表示方法。
【請求項12】
前記第2の情報表示は、警告情報、ナビゲーション情報および車体後方画像情報からなる群から選択される少なくとも1つのサブ情報である、請求項10または11に記載の自動二輪車の情報表示方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−114654(P2008−114654A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−297934(P2006−297934)
【出願日】平成18年11月1日(2006.11.1)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】