説明

自動二輪車

【課題】車両の直進安定性及び操縦安定性並びに車体フレームの強度及び剛性を確保しつつ、エンジンの整備性を向上できること。
【解決手段】車両前部に位置するフレームヘッド部12に、車体後方に延びる一対のメインチューブ13の前端部が結合された車体フレーム11と、この車体フレーム11に搭載されたエンジン17と、このエンジン17の上部に配置されてエンジン17に吸気を導くエアボックス18とを有し、フレームヘッド部12は、ステアリングシャフト支持するシャフト支持部19と、このシャフト支持部19に固着されると共にメインチューブ13の前端部が結合される箱形状のボックス部20とを備える自動二輪車であって、フレームヘッド部12のボックス部20には、車両平面図において、エンジン17のシリンダヘッド36に設けられた点火プラグ44の軸線Pと略重なる領域に窪み54が設けられたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動二輪車に係り、特に車体フレームのフレームヘッド部の構造を改良した自動二輪車に関する。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車では、吸気効率を向上させるために、特許文献1に記載のように、アッパカウルの先端の開口部から走行風を取り込み、この走行風(空気)を、ダクトを経て車体フレームのフレームヘッド部(ヘッドボックス)に導き、このフレームヘッド部内においてシャフト支持部(中空柱状部)を迂回させてフレームヘッド部の後端からエアクリーナへ導く吸気通路構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−71968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上述の吸気通路構造では、フレームヘッド部に吸気通路を確保し、且つフレームヘッド部の強度及び構成を確保する必要があるため、このフレームヘッド部が大型化してしまう。従って、例えばシリンダアッセンブリが大きく前傾したエンジンでは、シリンダヘッドに設けられた点火プラグの軸線の延長線上にフレームヘッド部が位置してしまい、点火プラグ、及びこの点火プラグに装着されたプラグキャップの着脱の際にフレームヘッド部が妨げとなって、エンジンの整備性が損なわれる恐れがある。
【0005】
この課題を解決するために、エンジンの搭載位置を後方に移動させるか、またはフレームヘッド部のシャフト支持部周囲を小型化する必要があるが、この場合には以下の課題が生ずる。
【0006】
まず、エンジンの搭載位置を後方に移動させた場合には、前輪の荷重分担比率が低下して、車両の直進安定性及び操縦安定性が損なわれる恐れがある。次に、フレームヘッド部を小型化した場合には、このフレームヘッド部の強度及び剛性が低下して操縦安定性が損なわれたり、必要な吸気通路面積を確保できなくなる恐れがある。
【0007】
本発明の目的は、上述の事情を考慮してなされたものであり、車両の直進安定性及び操縦安定性並びに車体フレームの強度及び剛性を確保しつつ、エンジンの整備性を向上できる自動二輪車を提供することにある。
【0008】
また、本発明の他の目的は、車両の直進安定性及び操縦安定性、エンジンの吸気効率、並びに車体フレームの強度及び剛性を確保しつつ、エンジンの整備性を向上できる自動二輪車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、車両前部に位置するフレームヘッド部に、車両後方に延びる一対のメインチューブの前端部が結合された車体フレームと、この車体フレームに搭載されたエンジンと、このエンジンの上部に配置されて前記エンジンに吸気を導くエアボックスとを有し、前記フレームヘッド部が、ステアリングシャフトを支持するシャフト支持部と、このシャフト支持部に固着されると共に前記メインチューブの前端部が結合される箱形状のボックス部と、を備える自動二輪車であって、前記フレームヘッド部の前記ボックス部には、車両平面視において、前記エンジンのシリンダヘッドに設けられた点火プラグの軸線と略重なる領域に窪みが設けられたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、エンジンのシリンダヘッドと車体フレームが近接した自動二輪車においても、車体フレームにおけるフレームヘッド部のボックス部に設けられた窪みを利用することで、エンジンを車体フレームに搭載したままで点火プラグ、及びこの点火プラグに装着されるプラグキャップの取り付け及び取り外しが実施できる。このため、エンジンの整備性を向上させることができると共に、エンジンの搭載位置を後方へ移動する必要がないので、前輪の荷重分担比率が適正化されて車両の直進安定性及び操縦安定性を確保できる。また、エンジンの整備性を向上させるためにフレームヘッド部を小型化する必要がないので、このフレームヘッド部の強度及び剛性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る自動二輪車を示す左側面図。
【図2】図1の自動二輪車における車体フレーム等を示す左側面図。
【図3】図1の自動二輪車におけるエンジン及びエアボックスを示す左側面図。
【図4】図2の車体フレーム、エアボックス及びエアダクトを示し、エアボックスのボックスカバーを取り外して示す平面図。
【図5】図4のV−V線に沿う断面図。
【図6】図1の自動二輪車の車体フレーム及びエンジンを示す平面図。
【図7】図6のVII−VII線に沿う断面図。
【図8】図7のVIII−VIII線に沿う断面図。
【図9】図2の車体フレームのフレームヘッド部周りを示す左側面図。
【図10】図9のX−X線に沿う断面図。
【図11】図9のXI矢視斜視図。
【図12】図11のフレームヘッド部に整流部材を装着させた状態を示す斜視図。
【図13】図12の整流部材を装着した図10に対応する断面図。
【図14】図12及び図13の整流部材を示し、(A)が表面側斜視図、(B)が裏面側斜視図。
【図15】図13のXV−XV線に沿う断面図。
【図16】図13のXVI−XVI線に沿う断面図。
【図17】図13のXVII−XVII線に沿う断面図。
【図18】図12のフレームヘッド部にエアダクト及びエアボックスのボックスボディを装着した、図5のXVIII矢視図。
【図19】図5のXIX部の拡大断面図。
【図20】エアダクトの変形形態を斜め上方から目視して示す斜視図。
【図21】図20のエアダクトを斜め下方から目視して示す斜視図。
【図22】図20及び図21のエアダクトが装着された車体フレームなどを示す、図5に対応する断面図。
【図23】図22のXXIII部の拡大断面図。
【図24】フレームヘッド部の変形形態を示す、図10に対応する断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための実施形態を図面に基づき説明する。但し、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではない。図1は、本発明に係る自動二輪車を示す左側面図である。また、図2は、図1の自動二輪車における車体フレーム等を示す左側面図である。この実施形態において、前後、左右、上下の表現は、車両乗車時の運転者を基準にしたものである。
【0013】
図1に示す自動二輪車10は、いわゆるスポーツ型の自動二輪車である。この自動二輪車10では、図1及び図2に示すように、車両前部上方に位置するフレームヘッド部12に、車両斜め下後方に延びる左右一対のメインチューブ13の前端部が結合され、これらの各メインチューブ13の後端部に左右一対のピボットブラケット14が結合され、更に、これらの各ピボットブラケット14の上部に左右一対のシートレール15が車両後斜め上方へ向けて延設されて、車体フレーム11が構成される。
【0014】
メインチューブ13の上方に燃料タンク16が、メインチューブ13の下方にエンジン17がそれぞれ配置される。このエンジン17は、左右のメインチューブ13に挟まれ且つピボットブラケット14の前方に位置づけられて、これらのメインチューブ13及びピボットブラケット14に懸架される。また、図3に示すように、エンジン17の上部には、このエンジン17に吸気(空気)を導くエアボックス18が配置されている。このエアボックス18は、図1に示す燃料タンク16の下方に位置づけられている。
【0015】
図4〜図7に示すように、フレームヘッド部12は、図示しないステアリングシャフト(後述)を軸支する円筒形状のシャフト支持部19と、このシャフト支持部19の周囲に固着されて車両後方へ延びる箱形状のボックス部20とを有して構成される。このボックス部20にメインチューブ13の前端部が結合される。
【0016】
前記ステアリングシャフトは、シャフト支持部19に回転自在に支持され、図1に示すように、このステアリングシャフトを備えるステアリングシャフト部21の上部にハンドル22が、側部に左右一対のフロントフォーク23がそれぞれ設置される。これらのフロントフォーク23の下部に前輪24が、回転自在に軸支されている。このハンドル22の操作によって、前輪24がステアリングシャフトを中心に左右に操舵される。
【0017】
ピボットブラケット14は、車幅方向に平行に延びるピボット(揺動軸)25を備え、このピボット25にスイングアーム26が、上下方向に揺動可能に枢支されている。このスイングアーム26の後部に後輪27が軸支される。この後輪27は、エンジン17の後部との間に掛け渡されたドライブチェーン28により回転駆動される。
【0018】
車両全体を覆う外装部品は、車両前部を覆うフロントカウル29Aと、このフロントカウル29Aの下部に接続されて車両側部を覆うサイドカウル29Bと、シートレール15を覆うリアカウル29Cと、を有して構成される。
【0019】
エンジン17は、図2及び図3に示すようにV型エンジン(本実施の形態ではV型4気筒エンジン)であり、クランクケース31の前後に前側シリンダアッセンブリ32F、後側シリンダアッセンブリ32RがV型に配置されて構成される。具体的には、クランクケース31におけるクランクケース上半体としてのアッパケース33の上部にシリンダブロック35、38が前後して一体に設けられ、シリンダブロック35にシリンダヘッド36、ヘッドカバー37が順次結合されて前側シリンダアッセンブリ32Fが構成され、シリンダブロック38にシリンダヘッド39、ヘッドカバー40が順次結合されて後側シリンダアッセンブリ32Rが構成される。
【0020】
クランクケース31のアッパケース33の下面に、クランクケース下半体であるロアケース34が結合され、このロアケース34の下面に、エンジンオイルを貯留するオイルパン41が結合されている。また、クランクケース31には、アッパケース33とロアケース34との合せ面42の位置にクランクシャフト43が配置される。
【0021】
シリンダブロック35、38のシリンダ30(図7)内で図示しないピストンが昇降し、このピストンに連結された前記クランクシャフト43がクランクケース31に回転自在に支承され、シリンダヘッド36及びヘッドカバー37内と、シリンダヘッド39及びヘッドカバー40内に動弁装置(不図示)が配置され、シリンダヘッド36、39に点火プラグ44(図7)が装着されてエンジン14が構成される。
【0022】
図2及び図3に示すように、このように構成されたエンジン14の前側シリンダアッセンブリ32Fと後側シリンダアッセンブリ32Rとの間のスペースを含むエンジン14の上部に、エアボックス18が配置されている。このエアボックス18は、ボックスボディ45の上部にボックスカバー46が装着され、ボックスボディ45の下部の左右両側にサイドカバー47が接合されて構成される。このサイドカバー47は、前側シリンダアッセンブリ32Fのシリンダヘッド36及びヘッドカバー37、並びに後側シリンダアッセンブリ32Rのシリンダヘッド39及びヘッドカバー40にもそれぞれ接合される。
【0023】
ボックスボディ45の前方には、図2〜図5に示すようにエアダクト48が接続され、このエアダクト48は、フレームヘッド部12のボックス部20に形成された吸気通路50(後に詳説)に接続される。また、エアボックス18内には、図示しない燃料噴射装置などの燃料供給装置が配置されている。車両走行時の走行風(空気)は、フレームヘッド部12の吸気通路50からエアダクト48を経てエアボックス18内に導入される。この空気は、エアボックス18内の燃料供給装置からの燃料と混合されて、図3に示すエンジン17におけるシリンダヘッド36、39の吸気ポート51(図7)に供給される。また、エンジンからの排気は、シリンダヘッド36、39の排気ポート52から、図示しないエキゾーストパイプなどを経て排出される。
【0024】
フレームヘッド部12のボックス部20における前記吸気通路50は、図7及び図9〜図11に示すように、ボックス部20における車両前方の前方開口部53からシャフト支持部19の両側方または一側方(本実施形態では両側方)を迂回してボックス部20の後端中央へ至るまで、車両略前後方向に貫通して設けられている。そして、この吸気通路50を構成するボックス部20の一部に窪み54が形成されている。
【0025】
吸気通路50は、図6に示す車両平面図において、エンジン17の前側シリンダアッセンブリ32Fにおけるシリンダヘッド36に設けられた点火プラグ44(図7)の軸線Pと略重なる領域に設けられる。本実施形態の点火プラグ44は、各点火プラグ44毎にイグニッションコイル55が設置されるダイレクトイグニッションタイプの点火プラグである。従って、各点火プラグ44に対応してシリンダヘッド36、39に装着されるプラグキャップ56にイグニッションコイル55が一体に設けられている。これらの点火プラグ44及びプラグキャップ56を着脱する際には、工具などを回転させるための大径の工具スペースが必要になる。前記窪み54は、特に図8に示すように、内部に吸気通路50が形成されて大型化されたフレームヘッド部12のボックス部20に、上記工具スペースを確保するために設けられたものである。
【0026】
このフレームヘッド部12のボックス部20に形成された窪み54には、図12、図13及び図15に示すように、この窪み54を閉塞して吸気通路50内に流れる吸気を整流する整流部材57が嵌合されており、この整流部材57は、スクリュー49やボルトなどの固定手段を用いてフレームヘッド部12のボックス部20に着脱可能に固定される。
【0027】
整流部材57は樹脂または金属製であり、図14に示すように、舌片部57Aと固定部57Bを備えてなる。舌片部57Aの裏面には、側縁に沿って嵌合用突部58が設けられ、この嵌合用突部58が、図16に示すようにフレームヘッド部12のボックス部20における窪み54に嵌合する。また、図14に示す固定部57Bには取付穴59が形成され、図17に示すように、この取付穴59にスクリュー49が挿通されて、整流部材57がフレームヘッド部12のボックス部20に固定される。
【0028】
整流部材57の取付穴59にスクリュー49を挿通または取り外し易くするために、図12及び図15に示すように、フレームヘッド部12のボックス部20は、整流部材57が固定される下側後端部60が、上側後端部61よりも車両後方へ延出されて、下側後端部60が上方に露出して構成される。
【0029】
フレームヘッド部12のボックス部20には、このボックス部20の窪み54に整流部材57が嵌合して装着された状態で、ボックス部20の下側後端部60及び上側後端部61を有してなる後方開口部67に、図5及び図18に示すようにエアダクト48が挿入される。従って、フレームヘッド部12のボックス部20における吸気通路50は、エアダクト48を介してエアボックス18に接続される。このとき、整流部材57の一部(即ち整流部材57における段差部62(後述)の後方側の固定部57B)がエアダクト48により覆われ、下方に押圧されてボックス部20に保持される。
【0030】
図14に示すように、整流部材57には、舌片部57Aと固定部57Bとの境界に段差部62が設けられと共に、この段差部62に隣接して固定部57B側の表面に、シール溝64が形成されている。段差部62は、図12、図13及び図15に示すように、整流部材57がフレームヘッド部12のボックス部20に装着された状態で、このボックス部20における吸気通路50の内壁面に形成された略長円形状の段差部63に連続するように形成される。これらの段差部62及び63に、図18及び図19に示すように、エアダクト48の先端面48Aが当接して、エアダクト48の内面が、ボックス部20における吸気通路50の内壁面及び整流部材57の舌片部57Aの表面に滑らかに連続する。
【0031】
整流部材57のシール溝64は、図12、図13及び図15に示すように、整流部材57がフレームヘッド部12のボックス部20に装着された状態で、このボックス部20における吸気通路50の内壁面に、段差部63と平行に形成された略長円形状のシール溝65に連続するように形成される。これらのシール溝64及び65に、ゴムなどの弾性体からなるリング形状のシール部材66が、図5及び図19に示すように嵌合される。このシール部材66によって、フレームヘッド部12のボックス部20及び整流部材57とエアダクト48との隙間が封じられると共に、シール部材66の弾性力によってエアダクト48及び整流部材57がフレームヘッド部12のボックス部20に保持される。
【0032】
以上にように構成されたことから、本実施の形態によれば、次の効果(1)〜(7)を奏する。
【0033】
(1)図7に示すように、エンジン17の前側シリンダアッセンブリ32Fにおけるシリンダヘッド36と車体フレーム11のフレームヘッド部12が近接し、更に、このフレームヘッド部12のボックス部20に吸気通路50が形成された自動二輪車10においても、フレームヘッド部12のボックス部20に設けられた窪み54を利用することで、エンジン17を車体フレーム11に搭載したままで、エンジン17の前側シリンダアッセンブリ32Fにおけるシリンダヘッド36に設けられた点火プラグ44、及びこの点火プラグ44に装着されるプラグキャップ56の取り付け及び取り外しが実施できる。このため、エンジン17の整備性を向上させることができると共に、エンジン17の搭載位置を後方へ移動する必要がないので、前輪24の荷重分担比率が適正化されて車両の直進安定性及び操縦安定性を確保できる。
【0034】
(2)フレームヘッド部12のボックス部20に、エンジン17の整備性を向上させるための窪み54が設けられたので、エンジン17の整備性を向上させるために車体フレーム11のフレームヘッド部12を小型化する必要がない。この結果、フレームヘッド部12の設計自由度が増し、このフレームヘッド部12の強度及び剛性を確保できる。
【0035】
(3)フレームヘッド部12のボックス部20に吸気通路50が形成された場合でも、この吸気通路50を構成するフレームヘッド部12のボックス部20に、エンジン17の整備性を向上させるための窪み54が設けられたので、エンジン17の整備性を向上させるためにフレームヘッド部12を小型化する必要がない。この結果、フレームヘッド部12の設計自由度が増し、このフレームヘッド部12の吸気通路面積を適正化できるので、エンジン17の吸気効率を確保できる。
【0036】
(4)図5及び図18に示すように、フレームヘッド部12のボックス部20に吸気通路50が設けられ、この吸気通路50を構成するボックス部20の一部に形成された窪み54が整流部材57により閉塞されている。従って、窪み54の存在によっても、吸気通路50の内壁面が円滑になり、吸気通路50内を流れる吸気(空気)が整流部材57によって整流化され乱されることがないので、吸気効率を向上させることができる。
【0037】
(5)図12及び図13に示すように、整流部材57が固定手段(スクリュー49など)を用いてフレームヘッド部12のボックス部20に着脱自在に固定されたので、整流部材57の脱落を防止できると共に、整流部材57の取り外しも容易に実施できる。
【0038】
(6)更に、図5及び図19に示すように、整流部材57の一部がエアダクト48により覆われ、ボックス部20に押圧されて保持されるので、この観点からも整流部材57の万一の脱落を防止できる。
【0039】
(7)図15及び図19に示すように、フレームヘッド部12のボックス部20における吸気通路50の内壁面と整流部材57に連続して形成されたシール溝65、64にシール部材66が嵌合され、このシール部材66によりボックス部20及び整流部材57とエアダクト48との隙間が封じられる。このため、ボックス部20の表面粗さが大きな場合でも、ボックス部20及び整流部材57とエアダクト48との接続部の密閉性を向上させることができる。更に、このシール部材66の弾性力によって、エアダクト48と整流部材57をフレームヘッド部12のボックス部20に確実に保持することができる。
【0040】
以上、本発明を上記実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々変形することができる。例えば、上記実施形態においては、シール部材66は、フレームヘッド部12のボックス部20及び整流部材57に設けられるものを述べたが、エアダクト48において、ボックス部20及び整流部材57に重なる部分の外周面に設けられてもよい。
【0041】
また、図20〜図22に示すように、フレームヘッド部12のボックス部20に形成された窪み54を閉塞する整流部材70は、エアダクト48に一体に構成されてもよい。この整流部材70は、前記実施形態の整流部材57の舌片部57Aに相当する。このように整流部材70がエアダクト48に一体に構成された場合にも、前記実施形態の効果(1)〜(4)と同様な効果を奏する他、整流部材70をフレームヘッド部12のボックス部20に固定するための固定手段(スクリュー49など)が必要ないので、点火プラグ44及びプラグキャップ56を着脱するエンジン17の整備性を向上させることができる。
【0042】
この整流部材70が一体化されたエアダクト48では、図23に示すように、フレームヘッド部12のボックス部20に形成されたシール溝65に嵌合されるシール部材66によって、エアダクト48とボックス部20との密閉性が確保される。但し、このシール部材66は、エアダクト48におけるボックス部20と重なる外周部分に設けられてもよい。
【0043】
更に、図24に示すように、フレームヘッド部12のボックス部20に設けられる吸気通路80は、ボックス部20におけるシャフト支持部19の両側方または一側方(本実施形態では両側方)に略斜め前方に指向して形成された前方開口部81から、ボックス部20の後端中央に至るまで車両略前後方向に貫通して形成されてもよい。この場合にも、この吸気通路80を構成するボックス部20の一部、つまり前記実施形態と同様に、図6に示す車両平面図において、エンジン17の前側シリンダアッセンブリ32Fにおけるシリンダヘッド36に設けられた点火プラグ44(図7)の軸線Pと略重なる領域に窪み54が形成される。そして、この窪み54も整流部材57により閉塞される。従って、本実施形態においても、前記実施形態の効果(1)〜(7)と同様な効果を奏する。
【符号の説明】
【0044】
10 自動二輪車
11 車体フレーム
12 フレームヘッド部
13 メインチューブ
17 エンジン
18 エアボックス
19 シャフト支持部
20 ボックス部
44 点火プラグ
48 エアダクト
49 スクリュー(固定手段)
50 吸気通路
53 前方開口部
54 窪み
56 プラグキャップ
57 整流部材
64、65 シール溝
66 シール部材
70 整流部材
80 吸気通路
81 前方開口部
P 軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前部に位置するフレームヘッド部に、車両後方に延びる一対のメインチューブの前端部が結合された車体フレームと、この車体フレームに搭載されたエンジンと、このエンジンの上部に配置されて前記エンジンに吸気を導くエアボックスとを有し、
前記フレームヘッド部が、ステアリングシャフトを支持するシャフト支持部と、このシャフト支持部に固着されると共に前記メインチューブの前端部が結合される箱形状のボックス部と、を備える自動二輪車であって、
前記フレームヘッド部の前記ボックス部には、車両平面視において、前記エンジンのシリンダヘッドに設けられた点火プラグの軸線と略重なる領域に窪みが設けられたことを特徴とする自動二輪車。
【請求項2】
前記フレームヘッド部のボックス部には、車両正面前方の開口部からシャフト支持部の側方を迂回して前記ボックス部の後端へ至るまで車両略前後方向に貫通する吸気通路が設けられ、この吸気通路を構成する前記ボックス部の一部に窪みが形成されたことを特徴とする請求項1に記載の自動二輪車。
【請求項3】
前記フレームヘッド部のボックス部には、シャフト支持部の側方に略斜め前方に指向する開口部が形成されると共に、この開口部から前記ボックス部の後端に至るまで車両略前後方向に貫通する吸気通路が設けられ、この吸気通路を構成する前記ボックス部の一部に窪みが形成されたことを特徴とする請求項1に記載の自動二輪車。
【請求項4】
前記フレームヘッド部のボックス部に形成された窪みには、この窪みを閉塞して吸気通路内に流れる吸気を整流する整流部材が嵌合されたことを特徴とする請求項2または3に記載の自動二輪車。
【請求項5】
前記整流部材は、フレームヘッド部のボックス部に固定手段を用いて着脱可能に固定されることを特徴とする請求項4に記載の自動二輪車。
【請求項6】
前記フレームヘッド部のボックス部がエアダクトを介してエアボックスに接続され、前記エアダクトにより整流部材の一部が覆われて保持されることを特徴とする請求項4または5に記載の自動二輪車。
【請求項7】
前記フレームヘッド部のボックス部及び整流部材には、吸気通路に臨んでシール溝が連続して形成され、このシール溝にシール部材が嵌合され、このシール部材により、前記ボックス部及び前記整流部材とエアダクトとの隙間が封じられるよう構成されたことを特徴とする請求項6に記載の自動二輪車。
【請求項8】
前記フレームヘッド部のボックス部がエアダクトを介してエアボックスに連結され、前記ボックス部の窪みに嵌合する整流部材が前記エアダクトに一体に構成されたことを特徴とする請求項4に記載の自動二輪車。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate