説明

自動供給装置および自動供給システム

【課題】複数のセンサの干渉を防止して正常に対象物を検出することができ、かつ、製造コストを抑制した自動供給装置および自動供給システムを提供する。
【解決手段】自動供給装置は、連立して配置される複数の容器に対応して設けられ、ドップラセンサと、ドップラセンサからのドップラ信号に基づいて対象物を検出する検出部と、検出部の結果に基づいて流体を供給する供給部と、ドップラセンサを制御するセンサ制御部と、通常動作中の検出周期、および、通常動作開始後に最初に電波の送受信を行うタイミングを決定する固有期間を予め記憶する記憶部とを備え、電波の送信を行わず受信のみを行うリセット動作を通常動作の開始前に実行し、リセット動作中に、他の容器の自動供給装置から送信されたマスタ信号を受信し、マスタ信号の受信時点から通常動作を開始し、ドップラセンサはマスタ信号の受信時を起点として固有期間の経過時に最初の電波の送受信を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動供給装置および自動供給システムに係わり、例えば、マイクロ波ドップラセンサを用いた便器洗浄装置および便器洗浄システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来からマイクロ波ドップラセンサ(以下、単にセンサともいう)が自動洗浄装置に用いられている。マイクロ波ドップラセンサを備えた自動洗浄装置は、マイクロ波により尿流または人体等の対象物を検知し、小便器を自動で洗浄する。マイクロ波は陶器を透過するので、マイクロ波ドップラセンサは、便器内に内蔵させることができる。このため、センサ本体がユーザに見えないので、マイクロ波ドップラセンサを備えた自動洗浄装置は外観上好ましい。また、ドップラセンサは、ドップラ効果を利用して尿流を検知することができる。従って、ユーザが用を足していない場合には、便器の洗浄を省略することができる。このため、マイクロ波ドップラセンサを備えた自動洗浄装置は節水の観点でも好ましい。
【0003】
しかし、公共施設のトイレでは、通常、同一空間に複数の便器が連立して配置される場合が多い。このような場合、互いに隣接する便器からのマイクロ波が干渉し合い、それにより、センサが正常に尿流や人体等の対象物を検出することができないという問題が生じる。
【0004】
このような問題に対処するために、複数のパルスからなるブロック信号を無作為(ランダム)の時間間隔で送信する手法が提案されている(特許文献1)。また、センサとは異なる特殊な通信手段(例えば、ZigBee)を用いて、マイクロ波の干渉を回避するために異なるタイミングで検出を行う手法も提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−35971号公報
【特許文献2】特許3714155号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1のようにセンサがブロック信号を無作為の時間間隔で送信する場合、ランダムな時間間隔を設定したとしても、隣接する複数のセンサがブロック信号を同じタイミングで送信する場合が依然として生じる。この場合、隣接する複数のセンサからのマイクロ波が干渉するため、やはりセンサが正常に対象物を検出することができないという問題が依然として生じる。
【0007】
また、特許文献2の技術では、センサとは異なる通信手段を別途設ける必要が生じるため、洗浄装置および洗浄システムの製造コストが上昇してしまう。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、複数のセンサの干渉を防止することによってセンサが正常に対象物を検出することができ、かつ、製造コストの上昇を抑制した自動供給装置および自動供給システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る実施形態に従った自動供給装置は、連立して配置される複数の容器の各々に対応して設けられ、対応する前記容器に流体を供給する自動供給装置であって、電波を送信し、該電波の反射波を受信し、送信した電波および受信した電波に基づいてドップラ信号を生成するドップラセンサと、前記ドップラ信号に基づいて、前記電波を反射する対象物を検出する検出部と、前記検出部の結果に基づいて、流体を供給しあるいは流体の供給を停止する供給部と、前記ドップラセンサによる電波の送受信を制御するセンサ制御部と、前記対象物の動きを検出する通常動作中に前記ドップラセンサが電波を繰り返し送受信する所定の検出周期、および、前記通常動作開始後に前記ドップラセンサが最初に電波の送受信を行うタイミングを決定する固有期間を予め記憶する記憶部とを備え、電波の送信を行わず受信のみを行うリセット動作を前記通常動作の開始前に実行し、前記リセット動作中に、他の容器の自動供給装置から送信されたマスタ信号を受信し、前記マスタ信号の受信時点から前記通常動作を開始し、前記ドップラセンサは前記マスタ信号の受信時を起点として前記固有期間の経過時に最初の電波の送受信を行うことを特徴とする。
【0010】
これにより、マスタ信号を送信した自動供給装置および該マスタ信号を受信した自動供給装置は、同時に通常動作にエンターすることができ、かつ、各自動供給装置が対象物の検出のために相対的に異なるタイミングでマイクロ波を送信することができる。その結果、連立して配置された各自動供給装置のマイクロ波が干渉せず、複数の自動供給装置間の誤動作を防止することができる。また、この自動供給装置は、特殊な通信手段等の付加的な手段を必要としないので、低コストで製造することができる。
【0011】
電源投入後、任意のタイミングで電波を送信しそれ以外の期間において送信を行わず受信のみを行う初期動作期間において、電波を送信する前に受信した他の自動供給装置からの送信電波の数を固有番号nとした場合に、前記記憶部は、所定の単位時間を前記固有番号nに基づいた値で乗算した結果値を前記固有期間として記憶することを特徴とする。
【0012】
複数の自動供給装置は、同時に通常動作にエンターし、その後、各固有期間の経過後にマイクロ波を送信することができる。これによって、複数の自動供給装置は、対象物の検出のために相対的に異なるタイミングでマイクロ波を送信することができる。その結果、連立して配置された各自動供給装置のマイクロ波が干渉せず、複数の自動供給装置間の誤動作を防止することができる。
【0013】
前記自動供給装置は、前記固有番号nの値が或る特定値以外である場合に、前記リセット動作において前記マスタ信号を受信することを特徴とする。前記自動供給装置は、前記固有番号nの値が或る特定値である場合に、前記リセット動作において前記マスタ信号を送信することを特徴とする。
【0014】
これにより、マスタまたはスレーブとしての自動供給装置を固有番号nまたは(n+1)に基づいて自動的に決定され得る。マスタからのマスタ信号をスレーブが受信することによって、洗浄システム内の各自動供給装置を同時にリセットし、同期させることができる。
【0015】
前記初期動作期間中に受信した他の自動供給装置からの送信電波の総数をNとした場合に、前記記憶部は、前記通常動作における前記検出周期を(N+1)で割り算した値を、前記所定の単位時間として記憶することを特徴とする。
【0016】
洗浄システム内の各洗浄装置は、検出周期(ΔTtr)内において、ほぼ等しい時間間隔(ΔTtr/(N+1))で順番にマイクロ波を送信することができる。これにより、複数の洗浄装置がマイクロ波を重複して送信する可能性を可及的に低くできる。
【0017】
前記自動供給装置は、前記リセット動作を前記通常動作中に定期的に実行し、前記リセット動作中に受信した前記マスタ信号の受信時点から前記通常動作を再度開始し、前記ドップラセンサは前記マスタ信号の受信時を起点として前記固有期間の経過後に電波の送受信を行うことを特徴とする。
【0018】
これにより、洗浄システムにおいて各洗浄装置の発振子(クロック)が互いにずれている場合であっても、定期的にリセット動作を実行することによって、複数の洗浄装置がマイクロ波を重複して送信する可能性を排除することができる。
【0019】
前記リセット動作は、対象物を検出するための前記複数の自動供給装置による電波の送受信ごとに実行されることを特徴とする。
【0020】
これにより、複数の洗浄装置がマイクロ波を重複して送信する可能性を完全に排除することができる。
【0021】
前記自動供給装置は、前記初期動作期間においてマニュアルで電波を送信するために設けられたスイッチをさらに備えたことを特徴とする。
【0022】
これにより、各洗浄装置の固有番号nまたは(n+1)および洗浄装置の総数(N+1)をマニュアルで決定するので、洗浄装置の処理およびプログラムを簡略化できる。
【0023】
本発明に係る実施形態に従った自動供給システムは、連立して配置される複数の容器の各々に対応して設けられ、前記複数の容器に流体を供給する複数の自動供給装置から構成された自動供給システムであって、各自動供給装置は、電波を送信し、該電波の反射波を受信し、送信した電波および受信した電波に基づいてドップラ信号を生成するドップラセンサと、前記ドップラ信号に基づいて、前記電波を反射する対象物を検出する検出部と、前記検出部の結果に基づいて、流体を供給しあるいは流体の供給を停止する供給部と、前記ドップラセンサによる電波の送受信を制御するセンサ制御部と、前記対象物の動きを検出する通常動作中に前記ドップラセンサが電波を繰り返し送受信する所定の検出周期、および、前記通常動作開始後に前記ドップラセンサが最初に電波の送受信を行うタイミングを決定する固有期間を予め記憶する記憶部とを備え、当該自動供給システムは、他の容器の自動供給装置を同期させるマスタ信号を送信する或る自動供給装置をマスタ装置とし、前記マスタ装置以外の自動供給装置をスレーブ装置として含み、前記マスタ装置は、前記マスタ信号を送信するリセット動作を前記通常動作の開始前に実行し、前記スレーブ装置は、前記リセット動作中に電波の送信を行わず受信のみを行い、前記マスタ装置は、前記マスタ信号の送信時点から前記通常動作を開始し、該マスタ信号として前記対象物を検出する最初の電波を送信するか、あるいは、該マスタ信号の送信時を起点として前記固有期間の経過後に最初の電波の送受信を行い、前記スレーブ装置は、前記マスタ信号の受信時点から前記通常動作を開始し、前記マスタ信号の受信時を起点として前記固有期間の経過後に最初の電波の送受信を行い、前記固有期間は前記複数の自動供給装置の各々において異なることを特徴とする。
【0024】
これにより、マスタ信号を送信した自動供給装置および該マスタ信号を受信した自動供給装置は、同時に通常動作にエンターすることができ、かつ、各自動供給装置が対象物の検出のために相対的に異なるタイミングでマイクロ波を送信することができる。その結果、自動供給システム内の各自動供給装置のマイクロ波が干渉せず、複数の自動供給装置間の誤動作を防止することができる。また、この自動供給システムは、特殊な通信手段等の付加的な手段を必要としないので、低コストで製造することができる。
【0025】
電源投入後、任意のタイミングで電波を送信しそれ以外の期間において送信を行わず受信のみを行う初期動作期間において、電波を送信する前に受信した他の自動供給装置からの送信電波の数を固有番号nとした場合に、前記記憶部は、所定の単位時間を固有番号nに基づいた値で乗算した結果値を前記固有期間として記憶し、或る特定の固有番号nを有する前記自動供給装置が前記マスタ装置に設定され、前記特定の固有番号n以外の固有番号nを有する前記自動供給装置が前記スレーブ装置に設定されることを特徴とする。
【0026】
この自動供給システム内の複数の自動供給装置は、同時に通常動作にエンターし、その後、各固有期間の経過後にマイクロ波を送信することができる。これによって、複数の自動供給装置は、対象物の検出のために相対的に異なるタイミングでマイクロ波を送信することができる。その結果、自動供給システム内の各自動供給装置のマイクロ波が干渉せず、複数の自動供給装置間の誤動作を防止することができる。
【0027】
前記初期動作期間中に受信した他の自動供給装置からの送信電波の総数をNとした場合に、前記記憶部は、前記通常動作における前記検出周期をN+1で割り算した値を、前記所定の単位時間として記憶することを特徴とする。
【0028】
この自動供給システム内の各洗浄装置は、検出周期(ΔTtr)内において、ほぼ等しい時間間隔(ΔTtr/(N+1))で順番にマイクロ波を送信することができる。これにより、複数の洗浄装置がマイクロ波を重複して送信する可能性を可及的に低くできる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る第1の実施形態に従った自動供給システムとしての洗浄装置システムSを示す図。
【図2】第1の実施形態に従った小便器Aの断面および洗浄装置7を示す図。
【図3】センサモジュール10の構成を示すブロック図。
【図4】連立して設けられた複数の洗浄装置7の初期動作を示すタイミング図。
【図5】連立して設けられた複数の洗浄装置7A〜7Cの通常動作を示すタイミング図。
【図6】洗浄装置7Aの初期動作を示すフロー図。
【図7】マスタとしての洗浄装置7Bのリセット動作および通常動作を示すフロー図。
【図8】スレーブとしての洗浄装置7A、7Cのリセット動作および通常動作を示すフロー図。
【図9】図9は、マスタとしての洗浄装置7Bのリセット動作および通常動作を示すフロー図。
【図10】スレーブとしての洗浄装置7A、7Cのリセット動作および通常動作を示すフロー図。
【図11】本発明に係る第2の実施形態に従った洗浄装置7A〜7Cの通常動作を示すフロー図。
【図12】本発明に係る第2の実施形態に従った洗浄装置7A〜7Cの通常動作を示すフロー図。
【図13】本発明に係る第3の実施形態に従った洗浄装置のセンサモジュール10の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態を説明する。本実施形態は、本発明を限定するものではない。
【0031】
(第1の実施形態)
図1は、本発明に係る第1の実施形態に従った自動供給システムとしての洗浄システムSを示す図である。洗浄システムSは、トイレブース内に連立して配置された複数の小便器Aを含む。各小便器Aは、それぞれに対応する自動供給装置としての洗浄装置7を備えている。複数の洗浄装置7は、対応する小便器Aとともに並列して配置され、洗浄システムSを構成している。
【0032】
各洗浄装置7は、マイクロ波ドップラセンサ(以下、単にセンサともいう)を備え、対象物としての人体の動きおよび/または尿流の検出を行う。洗浄装置7は、人体の動きおよび/または尿流を検出すると、対応する小便器Aに水を供給し、それにより小便器Aの洗浄を行う。
【0033】
マイクロ波ドップラセンサは、マイクロ波により尿流または人体等の対象物を検知する。マイクロ波は、上述のように陶器を透過するので、センサ自体は、小便器A内に内蔵可能であり、図1に示すように便器の表面には現れていない。また、マイクロ波ドップラセンサは、ドップラ効果を利用しているので、対象物の動きを検知することができる。従って、センサは、人体の動きおよび/または尿流の検出に適しており、ユーザが用を足していない場合には、小便器Aの洗浄を省略できる。
【0034】
マイクロ波とは電波の周波数による分類の一つである。一般的には波長100マイクロメートル〜1メートル、周波数300メガヘルツ〜3テラヘルツの電波(電磁波)を指す。この範囲の電波には、デシメートル波(UHF)、センチメートル波(SHF)、ミリメートル波(EHF)、サブミリ波が含まれる。
【0035】
マイクロ波ドップラセンサは、ドップラ効果を利用して式1に基づいて対象物の動きを検出する。
基本式:ΔF=FS―Fb=2×FS×ν/c (式1)
ΔF:ドップラ周波数(ドップラ信号S3の周波数)
FS:送信周波数(送信信号S1の周波数)
Fb:反射周波数(受信信号S2の周波数)
ν:検出対象物の移動速度
c:光速(300×10m/s)
【0036】
送信部22から送信された周波数FSのマイクロ波は、速度νで移動している対象物に反射する。反射波は、相対運動によるドップラ周波数シフトを受けているため、その周波数はFbとなる。差分検出部26は、送信波と反射波との周波数差ΔFをドップラ信号S3として出力する。マイクロコンピュータ30は、ドップラ信号S3に基づいて、人体の接近、人体の離反、および、尿流を検出する。
【0037】
例えば、対象物の速度νが約0.7m/s以下であるときに、ドップラ信号の周波数は、50Hz以下となる。対象物の速度νが約1.4〜2.6m/sであるときに、ドップラ信号の周波数は、100〜180Hzとなる。従って、マイクロコンピュータ30は、ドップラ信号の周波数が50Hz以下のときに、人体を検出したものと判断し、ドップラ信号の周波数が100〜180Hzのときに、尿流を検出したものと判断することができる。
【0038】
尚、本実施形態による洗浄装置7および洗浄システムSは、小便器Aに適用されている。しかし、洗浄装置7および洗浄システムSは、大便器および手洗い器等のように複数連立して配置され流体を供給する任意の容器に対して適用可能である。
【0039】
図2は、第1の実施形態に従った小便器Aの断面および洗浄装置7を示す図である。小便器Aは、ボール部2と、給水路3と、排水路5と、洗浄装置7とを備えている。給水路3は、ボール部2の上部に接続されており、ボール部2内へ洗浄水を供給する。排水路5は、ボール部2の底部に接続されており、ボール部2内の汚水を排水する。
【0040】
洗浄装置7は、マイクロ波ドップラセンサおよび制御回路を含むセンサモジュール10と、給水部としてのバルブ4とを含む。バルブ4は、給水路3の中途に設けられ、例えば、ソレノイドコイルに通電することによって給水路3の開/閉状態を切替える電磁バルブでよい。バルブ4は、センサモジュール10の制御を受けて、ボール部2へ洗浄水を供給し、あるいは、その洗浄水の供給を停止するように構成されている。
【0041】
センサは、対象物および/またはその動作を検出するために、図2に示すように小便器Aの上部に配置され、ボール部2を含む斜め下方に向けて電波を送信するように配置されている。勿論、センサの配置は、これに限定されず、対象物および/またはその動作を正確に検知することができる位置であれば、小便器A内のいずれの位置でもよい。
【0042】
図3は、センサモジュール10の構成を示すブロック図である。センサモジュール10は、マイクロ波ドップラセンサ20と、マイクロコンピュータ30とを含む。マイクロ波ドップラセンサ20は、電波としてマイクロ波をボール部2に向けて送信し、そのマイクロ波の反射波を受信し、そして、送信したマイクロ波(送信波)および受信したマイクロ波(受信波)に基づいてドップラ信号を生成するように構成されている。より詳細には、マイクロ波ドップラセンサ20は、マイクロ波を送信する送信部22と、そのマイクロ波の反射波を受信する受信部24と、その送信波と受信波との周波数差を検出する差分検出部26とを備えている。送信部22および受信部24は、マイクロコンピュータ30の制御を受けて、それぞれ送信動作および受信動作を行う。差分検出部26は、送信波と受信波との周波数差に基づいてドップラ信号を生成し、そのドップラ信号をマイクロコンピュータ30へ送信する。
【0043】
マイクロコンピュータ30は、送信コントローラ31と、受信コントローラ32と、ドップラ信号処理部33と、メモリ34と、カウンタ35と、タイマ36とを備えている。検出部としてのドップラ信号処理部33は、差分検出部26からのドップラ信号に基づいて、対象物および/または対象物の動作を検出する。そして、ドップラ信号処理部33は、その検出結果に応じてバルブ4を制御し、ボール部2へ洗浄水を供給し、あるいは、その供給を停止する。
【0044】
送信コントローラ31は、送信部22を制御し、送信部22から所定のタイミングでマイクロ波を送信させる。また、受信コントローラ32は、受信部24を制御し、マイクロ波の反射波を受信させる。
【0045】
本実施形態による洗浄装置7は、送信部22のみが送信動作を1度だけ実行し、かつ受信部24が受信動作を停止している送信モード(以下、Tモードという)と、受信部24のみが受信動作を実行し、かつ送信部22が送信動作を停止している受信モード(以下、Rモードという)と、送信部22および受信部24がそれぞれ送信動作および受信動作を実行する送受信モード(以下、TRモードという)とを有する。
【0046】
TRモードは、通常動作において対象物および/またはその動作を検出する際に実行されるモードである。通常動作においては、送信部22および受信部24がマイクロ波の送受信を繰り返し実行することによって、対象物の有無や対象物の動作を検出する。洗浄装置7は、TRモードを繰り返し実行し、対象物を検出した場合に洗浄水を供給してボール部2の洗浄を行う。
【0047】
TモードおよびRモードは、電源投入直後に実行される初期動作と、通常動作開始時に実行されるリセット動作と、において実行されるモードである。初期動作において、各洗浄装置7は、1度だけTモードを実行し、それ以外の初期動作の期間中、送信動作を行わず、Rモードを維持する。尚、初期動作期間中、バルブ4は、閉状態に維持されている。また、洗浄システムSの電源は、AC電源であり、洗浄システムS内の複数の洗浄装置7に対して同時に投入される。
【0048】
洗浄システムS内の各洗浄装置7は、初期動作中に1度だけTモードをランダムに実行する。各洗浄装置7のカウンタ35は、初期動作中に受信した電波数Nをカウントする。これによって、各洗浄装置7は、洗浄システムS内の洗浄装置7の個数を把握することができる。また、各洗浄装置7のカウンタ35は、自己がTモードになる前に受信した電波数nをカウントする。これによって、各洗浄装置7は、自己がTモードになった順番(電波を送信した順番)を把握することができる。(N+1)は、洗浄システムS内の洗浄装置7の総数に該当する。(n+1)は、初期動作において電波を送信した順番に該当する。尚、自己の洗浄装置7を総数および順番に含めるために、Nおよびnに1を加算している。
【0049】
メモリ34は、洗浄システムSにおいて連立する洗浄装置7の総数(N+1)、初期動作において電波を送信した順番(n+1)、通常動作中に電波を送受信する検出動作の周期ΔTtr等の情報を格納する。以下、Nを「総数カウント」と呼び、nを「順番カウント」と呼ぶ。また、(N+1)を総数と呼び、(n+1)を固有番号と呼ぶ。
【0050】
タイマ36は、マイクロ波の送信のタイミングを計時する。例えば、タイマ36は、初期動作開始時(電源投入時)に計時を開始し、各洗浄装置7がTモードを実行するタイミングを計る。また、タイマ36は、電源投入後、初期動作の終期を計る。さらに、タイマ36は、通常モードにおいて、繰り返し送信されるマイクロ波の送信タイミングを計る。
【0051】
図4は、連立して設けられた複数の洗浄装置7の初期動作を示すタイミング図である。尚、図4では、洗浄システムS内に3つの洗浄装置7が含まれているものと仮定している。しかし、洗浄システムS内の洗浄装置7の個数は限定せず、任意でよい。
【0052】
t0において洗浄装置7A〜7Cに同時に電源が投入される。洗浄装置7A〜7Cは、電源投入時t0から所定の期間ΔTintだけ初期動作を実行する。初期動作期間ΔTintにおいて、洗浄装置7A〜7Cは、1度だけTモードを実行し、それ以外の期間において、Rモードに設定される。初期動作期間ΔTintは、Tモードにおいてマイクロ波を送信する期間(例えば、2μs)に対して充分に長い期間(例えば、1分)である。
【0053】
洗浄装置7A〜7Cは、それぞれ時点t2、t1、t3においてTモードを実行する。時点t0から時点t2、t1、t3までの期間ΔTta〜ΔTtcは、それぞれ洗浄装置7A〜7Cの各マイクロコンピュータ30によって個別にランダムに設定される。即ち、期間ΔTta〜ΔTtcは、それぞれ0〜ΔTintの範囲内においてランダムに設定された数値であり、洗浄装置7A〜7Cのそれぞれに対して固有の期間である。
【0054】
マイクロコンピュータ30が乱数発生部を内蔵している場合には、電源投入時に乱数発生部が0〜ΔTintの範囲内のランダム値を発生し、そのランダム値を期間ΔTta〜ΔTtcとしてメモリ34に格納すればよい。代替的に、期間ΔTta〜ΔTtcは、出荷前に予め設定され、洗浄装置7A〜7Cの各メモリ34に格納しておいてもよい。
【0055】
ここで、複数の洗浄装置7が重複してTモードを実行する可能性について説明する。初期動作は、ユーザの使用開始前に実行されるので、通常動作において検出動作を実行する周期ΔTtr(例えば、2ms)に比べて長い時間(例えば、1分)に設定することができ、かつ、任意に設定することができる。しかも、電源導入後に1回だけ実行される動作である。従って、初期動作中に複数の洗浄装置7がTモードを重複して実行する可能性は非常に小さい。
【0056】
一方、特許文献1に示す技術においてブロック信号間の間隔を長期間にすると、検出周期が長くなってしまう。また、ブロック信号間の間隔は、ブロック信号の生成ごとに繰り返しランダムに決定される。このため、本実施形態によるTモードが重複する可能性は、特許文献1のブロック信号が重複する可能性と比較すると非常に小さい。従って、各洗浄装置7は、初期動作中に重複することなくTモードにエンターし、それぞれが異なるタイミングでマイクロ波を送信することができる。
【0057】
電源投入後、期間ΔTtbの経過時(t1)において、最初に洗浄装置7BがTモードを実行する。このとき、洗浄装置7Aおよび7Cは、Rモードであり、洗浄装置7Bからの電波を受信する。洗浄装置7Aおよび7Cの各カウンタ35は、それぞれ洗浄装置7Bからの電波をカウントする。
【0058】
初期動作において、ドップラ信号処理部33はドップラ信号を無効としてバルブ4の切換えを行わない。従って、初期動作では、差分検出部26は、通常のドップラ信号を送信する必要は必ずしも無く、カウンタ35で計数可能な任意の信号を送信すればよい。
【0059】
t1において、洗浄装置7Bは、Tモードを実行した後、Rモードになる。ここで、洗浄装置7Bのカウンタ35の値はゼロである。従って、洗浄装置7Bの順番カウントnはゼロに決定され、洗浄装置7Bの固有番号(n+1)は1となる。尚、後述する変形例2のように、n自体を固有番号としてもよい。
【0060】
洗浄装置7Bのメモリ34は、固有番号1を格納する。その後、洗浄装置7Bのカウンタ35は、総数(N+1)を得るために、受信数のカウントを継続する。
【0061】
本実施形態では、初期動作において最初にTモードを実行した洗浄装置7Bをマスタとし、それ以外の洗浄装置7Aおよび7Cをスレーブとする。マスタとスレーブとの区別は、マイクロコンピュータ30が固有番号(n+1)の値に基づいて判断する。本実施形態では、固有番号1(n=0)の洗浄装置7Bをマスタとする。後述するように、マスタとしての洗浄装置7Bは、初期動作期間の終了後、図5に示す通常動作を開始させる役目を果たす。
【0062】
次に、t2(電源投入後、期間ΔTtaの経過時)において、洗浄装置7AがTモードを実行する。このとき、洗浄装置7Bおよび7Cは、Rモードであり、洗浄装置7Aからの電波を受信する。洗浄装置7Bおよび7Cの各カウンタ35は、洗浄装置7Aからの電波をカウントする。よって、洗浄装置7Bのカウンタ35の値は1となり、洗浄装置7Cのカウンタ35の値は2となる。
【0063】
洗浄装置7Aは、t2においてTモードを実行した後、Rモードになる。ここで、洗浄装置7Aの順番カウントnは1に決定され、洗浄装置7Aの固有番号(n+1)は2となる。従って、洗浄装置7Aは、スレーブとして機能する。
【0064】
洗浄装置7Aのメモリ34は、固有番号2を格納する。その後、洗浄装置7Aのカウンタ35は、総数(N+1)を得るために、受信数のカウントを継続する。
【0065】
次に、t3(電源投入後、期間ΔTtcの経過時)において、洗浄装置7CがTモードを実行する。このとき、洗浄装置7Aおよび7Bは、Rモードであり、洗浄装置7Cからの電波を受信する。洗浄装置7Aおよび7Bのカウンタ35は、洗浄装置7Cからの電波をカウントする。洗浄装置7Aおよび7Bのカウンタ35の値はともに2となる。
【0066】
洗浄装置7Cは、t3においてTモードを実行した後、Rモードになる。ここで、洗浄装置7Cの順番カウントnは2に決定される。洗浄装置7Cの固有番号(n+1)は3となる。従って、洗浄装置7Cはスレーブとして機能する。t3の時点で、洗浄装置7Cのメモリ34は、固有番号3を格納する。
【0067】
その後、t4まで洗浄装置7A〜7Cは、Rモードを継続する。そして、電源投入後、初期動作期間ΔTintが経過した時点t4で、洗浄装置7A〜7Cは、初期動作を終了する。
【0068】
このように、洗浄装置7A〜7Cの固有番号(n+1)は、それぞれ“2、1、3”に決定される。また、初期動作終了時点における洗浄装置7A〜7Cのカウンタ35の総数カウントNは、全て2である。従って、連立する洗浄装置の総数(N+1)が3個であることが分かる。この総数(N+1)の情報は、全ての洗浄装置7A〜7Cに共有される。即ち、初期動作によって、各洗浄装置7A〜7Cは、連立する洗浄装置の総数(N+1)、および、自己の固有番号(n+1)を生成し、これらの情報をそれぞれのメモリ34に格納することができる。
【0069】
図5は、連立して設けられた複数の洗浄装置7A〜7Cのリセット動作および通常動作を示すタイミング図である。洗浄システムSは、初期動作後、通常動作の開始前にリセット動作を実行する。リセット動作では、初期動作後、スレーブとしての洗浄装置7Aおよび7CがRモードを継続しており、マスタとしての洗浄装置7Bが初期動作後の任意の時点でTモードを実行する。それにより、マスタとスレーブとの間の同期を取る。
【0070】
リセット動作は、マスタとしての洗浄装置7Bが、初期動作後の任意の時点t10でTモードを実行することにより開始される。洗浄装置7Bは、このときマイクロ波をマスタ信号として1度だけ送信する。洗浄装置7Bは、マスタ信号の送信をトリガとして通常状態にエンターする。
【0071】
スレーブとしての洗浄装置7Aおよび7Cは、初期動作後、Rモードを維持する。t10において洗浄装置7Bからのマスタ信号を受信すると、洗浄装置7Aおよび7Cは、そのマスタ信号をトリガとしてRモードを終了し、通常動作を開始する。
【0072】
洗浄装置7A〜7Cは、隣接して配置されているので、洗浄装置7A、7Cによるマスタ信号の受信は、洗浄装置7Bによるマスタ信号の送信とほぼ同じタイミングとなる。従って、洗浄装置7Aおよび7Cは、ほぼ同時に通常動作にエンターすることができる。
【0073】
通常状態に入ると、洗浄装置7A〜7Cは、それぞれ単位時間Tuniに固有番号(n+1)を乗算した固有期間Tuni×(n+1)の経過時点(t11〜t13)において、最初の検出を行う。即ち、洗浄装置7A〜7Cは、それぞれt10から固有期間Tuni×(n+1)の経過後に最初のTRモードを実行する。固有期間Tuni×(n+1)は、通常動作開始後に洗浄装置7A〜7Cの各マイクロ波ドップラセンサ20が最初に電波の送受信を行うタイミングを決定する期間であり、固有数値(n+1)とともにメモリ34に格納されている。
【0074】
例えば、単位時間Tuniを100μsとした場合、洗浄装置7A〜7Cの固有期間は、それぞれ200μs、100μsおよび300μsとなる。洗浄装置7Bは、Tモードの実行時(t10)から固有期間100μsの経過後(T11)に、TRモードを実行し、マイクロ波の送受信を実行する。洗浄装置7Aは、マスタ信号の受信時(t10)から固有期間200μsの経過後(t12)に、TRモードを実行し、マイクロ波の送受信を実行する。洗浄装置7Cは、マスタ信号の受信時(t10)から固有期間300μsの経過後(t13)に、TRモードを実行し、マイクロ波の送受信を実行する。
【0075】
その後、洗浄装置7A〜7Cは、所定の検出周期ΔTtr(例えば、2ms)でTRモードを繰り返し実行する。検出周期ΔTtrは、洗浄装置7A〜7Cにおいて共通である。従って、洗浄装置7A〜7Cの各TRモードは、固有番号(n+1)順に単位時間Tuniずつずらされた状態を維持しつつ、繰り返し実行される。その結果、洗浄装置7A〜7Cは、TRモードを同時に実行することがない。このように、複数の洗浄装置7A〜7C間において、マイクロ波が干渉することを防止できる。
【0076】
単位時間Tuniは、通常動作においてTRモードを実行する検出周期ΔTtrを、洗浄システムSに含まれる洗浄装置の総数(N+1)で割り算した値(ΔTtr/(N+1))でよい。これにより、洗浄システムSに含まれる各洗浄装置は、検出周期ΔTtr内において、ほぼ等しい時間間隔で順番にTRモードを実行することができる。よって、複数の洗浄装置において検出周期ΔTtrが多少ずれたとしても、複数の洗浄装置は、マイクロ波を重複して送信する可能性をさらに低くできる。
【0077】
尚、上記割り算ΔTtr/(N+1)は、マイクロコンピュータ30内で演算され、その結果としての単位時間Tuinはメモリ34に格納される。この割り算の結果は、勿論、近似値でよい。
【0078】
また、最初のリセット動作以降の通常動作において、洗浄装置7A〜7Cは、それぞれ個別に検出周期ΔTtrを計時して、TRモードを繰り返し実行する。従って、洗浄装置7A〜7Cは、最初のリセット動作後、それぞれ独立して検出動作を実行する。
【0079】
図6は、洗浄装置7Aの初期動作を示すフロー図である。まず、洗浄装置7A〜7Cに電源を投入する(S10)。洗浄装置7Aは、初期動作を開始し、カウンタ35の数値が0にクリアされる(S20)。また、期間ΔTtaが予め設定されていない場合、マイクロコンピュータ30が期間ΔTtaを生成する(S30)。より詳細には、マイクロコンピュータ30が0〜ΔTintの範囲内の乱数を発生し、その乱数を期間ΔTtaとして用いる。期間ΔTtaが予め設定されている場合には、ステップS30は省略してよい。
【0080】
タイマ36が計時を開始する(S40)。ここで、タイマ36が計時している時点をtとする。時点tは、Tモードを実行するために用いられる期間ΔTta、および、初期動作の終点を決定する初期動作期間ΔTintを計時するために用いられる。タイマ36の計時の開始と同時に、洗浄装置7Aは、Rモードにエンターする。
【0081】
マイクロコンピュータ30は、タイマ36の時点tと期間ΔTtaとを比較する。そして、時点tが期間ΔTtaに達していない場合(S50のNO)、洗浄装置7AはRモードを継続する。
【0082】
洗浄装置7Aが他の洗浄装置7B、7Cから電波を受信していない場合(S80のNO)、さらに、マイクロコンピュータ30は、タイマ36の時点tと期間ΔTintとを比較する。時点tが期間ΔTintに達していない場合(S90のNO)、ステップS50へ戻る。
【0083】
もし、洗浄装置7Aが他の洗浄装置7B、7Cから電波を受信した場合(S80のYES)、マイクロコンピュータ30はカウンタ35の値に1を加算する。次に、マイクロコンピュータ30は、タイマ36の時点tと期間ΔTintとを比較する。時点tが期間ΔTintに達していない場合(S90のNO)、ステップS50へ戻る。
【0084】
このように、時点tが期間ΔTtaに達するまで洗浄装置7Aは、Rモードで受信状態を継続し、カウンタ35が他の洗浄装置7B、7Cからの受信電波をカウントし続ける。これは、ステップS50のNO、S80およびS90のNOからなるループを繰り返し実行している状態である。
【0085】
ステップS50において、時点tが期間ΔTtaに達すると(S50のYES)、マイクロコンピュータ30は、メモリ34に既に固有番号が格納されているかを確認する。固有番号を確認するためには、メモリ34にフラグを設ければよい。固有番号が既に格納されている場合には、そのフラグを立てる。それによって、マイクロコンピュータ30は、固有番号の有無を確認することができる。
【0086】
メモリ34内に固有番号が格納されていない場合(S60のNO)、洗浄装置7Aは、Tモードにエンターし、電波を送信する(S61)。さらに、この時点におけるカウンタ35の値nに1を足した(n+1)を固有番号としてメモリ34に保存する(S65)。そして、上記フラグを立てる。
【0087】
Tモードの実行後、洗浄装置7Aは、Rモードに再度エンターする(S70)。その後、洗浄装置7Aは、時点tが期間ΔTintに達するまでRモードを継続する。従って、ステップS80〜S90を実行し、ステップS50へ戻る。このとき、既に時点tは期間ΔTtaを超えている(S50のYES)。しかし、ステップS60において、固有番号が既にメモリ34に格納されている(S60のYES)。従って、洗浄装置7AはTモードに再度エンターすることなく、ステップS80の受信動作を繰り返す。即ち、洗浄装置7Aは、1度Tモードを実行した後、ステップS50のYES、S60のYES、S80〜S90からなるRモードのループを繰り返し実行する。
【0088】
ステップS90において、時点tが初期動作期間ΔTintに達すると(S90のYES)、マイクロコンピュータ30は、カウンタ35の値Nに1を足した(N+1)を洗浄装置の総数としてメモリ34へ格納する。さらに、タイマ36が停止し(S95)、初期動作が終了する。
【0089】
洗浄装置7B、7Cの初期動作は、図6に示す動作と基本的に同様であり、期間ΔTtaに代えて期間ΔTtbまたはΔTtcを用いればよい。
【0090】
ここで、マスタとしての洗浄装置7Bとスレーブとしての洗浄装置7A、7Cとの相違は、固有番号が1であるか否か違いだけである。従って、洗浄装置7Bと洗浄装置7A、7Cとは、リセット動作において異なるものの、初期動作および通常動作については同じである。
【0091】
図7は、マスタとしての洗浄装置7Bのリセット動作および通常動作を示すフロー図である。図6の初期動作の実行後、洗浄装置7Bは、リセット動作(図5のt10)を行う。まず、洗浄装置7Bは、Tモードにエンターする(S100)。Tモードにおいて、洗浄装置7Bは電波を送信するとともに、タイマ36が計時を開始する(S110)。このときの洗浄装置7Bによる電波の送信は、全スレーブ(洗浄装置7A、7C)にとって通常状態の始点を示すトリガとなる。
【0092】
マイクロコンピュータ30は、タイマ36の時点tと固有期間Tuni×1とを比較する(S120)。時点tが固有期間Tuni×1に達するまでタイマ36は、計時を継続する(S120のNO)。
【0093】
時点tが固有期間Tuni×1に達すると(S120のYES)、タイマ36は計時を停止し、かつ、洗浄装置7BはTRモードを実行する(S130)。洗浄装置7Bの送信部22は電波を送信し、受信部24はその電波の反射波を受信する(S140)。TRモードにおける電波の送受信は、対象物および/または対象物の動きを検出するために実行する通常動作である。このとき、センサモジュール10は、ドップラ信号に応じてバルブ4の開/閉状態を切り替え、あるいは、バルブ4の開/閉状態を維持する。
【0094】
TRモードの実行直後、タイマ36は、時点tをリセットしてから計時を再度開始する(S150)。マイクロコンピュータ30は、タイマ36の時点tと検出周期ΔTtrとを比較する(S160)。時点tが検出周期ΔTtrに達するまでタイマ36は、計時を継続する(S160のNO)。
【0095】
時点tが検出周期ΔTtrに達すると(S160のYES)、ステップS130に戻る。即ち、タイマ36は計時を停止し、かつ、洗浄装置7BはTRモードを実行する(S130)。
【0096】
その後、通常動作において、洗浄装置7Bは、検出周期ΔTtrごとにTRモードを繰り返し実行する(S130〜S160)。これにより、洗浄装置7Bは、対象物が検出されたときに遅滞なく洗浄を開始し、対象物が検出されなくなったときに遅滞なく洗浄を停止することができる。
【0097】
図8は、スレーブとしての洗浄装置7A、7Cのリセット動作および通常動作を示すフロー図である。図6の初期動作の実行後、洗浄装置7A、7Cは、リセット動作(図5のt10)を行う。まず、洗浄装置7A、7Cは、Rモードにエンターする(S200)。Rモードにおいて、洗浄装置7A、7Cは、マスタ(洗浄装置7B)からの電波を待機する(S210のNO)。マスタ(7B)からの電波を受信すると、タイマ36が計時を開始する(S220)。洗浄装置7Bからの電波は、洗浄装置7A、7Cにとって通常状態の始点を示すトリガとなる。
【0098】
マイクロコンピュータ30は、タイマ36の時点tと固有期間Tuni×(n+1)とを比較する(S225)。時点tが固有期間Tuni×(n+1)に達するまでタイマ36は、計時を継続する(S225のNO)。
【0099】
時点tが固有期間Tuni×(n+1)に達すると(S225のYES)、タイマ36は計時を停止し、かつ、洗浄装置7A、7CはTRモードを実行する(S230)。以降のステップS230〜S260の動作は通常動作であり、図7のステップS130〜S160を参照して説明した動作と同様である。即ち、洗浄装置7A、7Cは、それぞれ検出周期ΔTtrごとにTRモードを繰り返し実行する(S230〜S260)。これにより、洗浄装置7Aおよび7Cも、対象物が検出されたときに遅滞なく洗浄を開始し、対象物が検出されなくなったときに遅滞なく洗浄を停止することができる。
【0100】
このように本実施形態では、各洗浄装置7A〜7Cが異なる固有番号(n+1)を有し、固有番号(n+1)に基づいて最初のTRモードのタイミングをシフトさせている。よって、各洗浄装置は、互いに異なるタイミングで最初のTRモードを実行する。その後、各洗浄装置は、最初のTRモードを基準として検出周期ΔTtrごとにTRモードを実行するので、その後のTRモードは時間的にシフトされた状態を維持しながら繰り返し実行される。TRモードの実行が各洗浄装置7A〜7Cにおいて時間的にシフトされているので、隣接する複数の洗浄装置7が同時にマイクロ波を送信することを防止できる。その結果、本実施形態による洗浄装置および洗浄システムは、複数のセンサのマイクロ波の干渉を防止することができ、正常に対象物を検出することができる。
【0101】
本実施形態では、各洗浄装置においてマイクロ波の送信タイミングがずれているので、各洗浄装置においてマイクロ波の周波数を相違させる必要がない。また、本実施形態では初期動作において乱数を発生させるが、その後の通常動作では各洗浄装置は、乱数を発生する必要が無い。従って、本実施形態は、TRモードの実行周期ごとに無作為のタイミングでマイクロ波を送信する必要がない。また、本実施形態は、特許文献1とは異なりブロック信号ごとに乱数を生成する必要もない。
【0102】
さらに、洗浄システムS内の各洗浄装置においてマイクロ波の送信および受信は同期化されているので、ドップラ信号の生成処理、および、対象物の判定処理を各洗浄装置において共通化することができる。これにより、各洗浄装置の制御を簡素化することができる。
【0103】
さらに、本実施形態は、特殊な通信手段等の付加的な手段を必要としないので、構成が比較的簡素であり、低コストで製造することができる。
【0104】
各洗浄装置においてマイクロ波の送信タイミングをずらすためには、洗浄システムS内の全洗浄装置が同時に通常動作にエンターする必要がある。つまり、少なくとも通常動作の開始時に、洗浄システムS内の全洗浄装置を同期させる必要がある。本実施形態では、固有番号(n+1)が特定値(例えば、1)である洗浄装置をマスタとして、固有番号(n+1)が該特定値以外の洗浄装置をスレーブとして設定している。マスタが通常動作の開始のトリガとなるマスタ信号を送信することによって、それを受信したスレーブおよびマスタが同期する。このようなリセット動作を通常動作の開始前に実行することによって、洗浄システムS内の各洗浄装置は、同時に通常動作にエンターすることができ、かつ、相対的に異なるタイミングでマイクロ波の送受信をすることができる。
【0105】
本実施形態において、洗浄装置7Bがマスタとして機能した。これは、固有番号が1の洗浄装置をマスタとするように設定したからである。しかし、いずれの固有番号(n+1)をマスタするかは任意でよい。即ち、固有番号(n+1)の値が或る特定の値である洗浄装置をマスタとし、固有番号(n+1)の値が該特定値以外である洗浄装置をスレーブとするようにプログラム上において条件設定すればよい。この条件は、洗浄システムS内の全ての洗浄装置において等しく適用されるので、マスタとスレーブとの間において洗浄装置の構成上およびプログラム上の相違は無い。従って、全ての洗浄装置7A〜7Cは、同じ工程で製造され得る。
【0106】
(第1の実施形態の変形例1)
上記第1の実施形態では、初期動作後にリセット動作を1回だけ実行し、その後、洗浄装置7A〜7Cは、それぞれ独立して検出周期ΔTtrごとにTRモードを実行している。この場合、洗浄装置7A〜7Cの各マイクロコンピュータ30の発振子(クロック)がずれていると、洗浄装置7A〜7Cのタイマ36のずれの原因となる。タイマ36がずれていると、洗浄装置7A〜7CのTRモードの実行が検出周期ΔTtrごとに次第にずれて最終的に重複する可能性がある。
【0107】
このような可能性を排除するために、本変形例による洗浄装置7A〜7Cは、リセット動作(S100〜S120またはS200〜S225)を通常動作中に定期的に実行する。
【0108】
例えば、図9および図10に示すように、タイマ36は、ステップ110において計時(t2)を開始し、t2を用いてリセット動作を行う(図9のS100〜S120、図10のS200〜S225)。リセット動作自体は、図7のS100〜S120、図8のS200〜S225を参照して説明したとおりである。
【0109】
ここで、タイマ36は、ステップS130、S230でt2を停止せず、そのまま計時を続行する。時点t2が所定期間ΔTm(例えば、1時間、あるいは、24時間)に達するまで、洗浄装置7A〜7Cは周期ΔTtrごとにTRモードを繰り返し実行する(図9のS130〜S170のNO、図10のS230〜S270のNO)。
【0110】
TRモードを繰り返し実行している通常動作期間では、タイマ36は、t2とは別にt1の計時を開始し(図9のS150、図10のS250)、その後、t1を用いて検出周期ΔTtrを計る(図9のS160、図10のS260)。そして、t1が周期ΔTtrを超えるごとに、洗浄装置7A〜7CはTRモードを実行する。この間、タイマ36は、ステップS150、S250において、t1の計時のみリセットし、t2の計時はリセットしない(図9のS150、図10のS250)。即ち、タイマ36は、t2の計時を継続する。尚、ΔTmは、ΔTtrよりも長い期間であり、予めメモリ34に格納しておく。
【0111】
そして、時点t2が所定期間ΔTmに達すると(図9のS170のYES、図10のS270のYES)、タイマ36はt1およびt2の計時を停止し(S180、S280)、洗浄装置7A〜7Cはリセット動作を実行する(図9のS100〜S120、図10のS200〜S225)。これにより、TRモードを実行するタイミング(Tuni×(n+1))が再設定され、洗浄装置7A〜7Cは、互いに異なるタイミングでTRモードを実行する。その後、洗浄装置7A〜7Cは、通常動作を再開し、検出周期ΔTtrごとにTRモードを繰り替えし実行する。
【0112】
リセット動作を実行する周期(ΔTm)を適切に設定することによって、洗浄装置7A〜7Cの発振子(クロック)が互いにずれている場合であっても、洗浄装置7A〜7CのTRモードの実行が重複する可能性を排除することができる。
【0113】
(第1の実施形態の変形例2)
第1の実施形態では、図5に示すように、洗浄システムSは、マスタとしての洗浄装置7BがTモードになった時点t10において通常動作にエンターしている。しかし、第2の変形例では、図5の括弧で示すように、洗浄システムSは、洗浄装置7BがTRモードを実行した時点(t10)において通常動作にエンターしている。即ち、洗浄装置7BがTRモードにおいて対象物を検出するために最初に電波を送受信するとき、スレーブとしての洗浄装置7A、7Cは、洗浄装置7Bからのマイクロ波をマスタ信号として受信する。
【0114】
この場合、洗浄装置7A〜7Cの固有番号は順番カウントnとなる。従って、マスタとしての洗浄装置7Bの固有番号nは0であり、固有期間(Tuni×n)も0となる。その結果、洗浄装置7Bは、通常動作にエンターした時点t10においてTRモードを実行し、その後、t10からΔTmの周期で繰り返しTRモードを実行する。
【0115】
また、スレーブとしての洗浄装置7A、7Cの固有番号nはそれぞれ1および2となる。洗浄装置7A、7Cの固有期間(Tuni×n)は、それぞれTuni×1およびTuni×2となる。その結果、洗浄装置7Aは、通常動作にエンターした時点t10から固有期間Tuni×1だけ経過した時点においてTRモードを実行し、その後、ΔTmの周期で繰り返しTRモードを実行する。洗浄装置7Cは、通常動作にエンターした時点t10から固有期間Tuni×2だけ経過した時点においてTRモードを実行し、その後、ΔTmの周期で繰り返しTRモードを実行する。
【0116】
このように、第2の変形例では、洗浄装置7Bは、初期動作後の任意の時点で最初にTRモードを実行し、このTRモードにおいて送信されたマイクロ波によってスレーブとの間の同期を取る。つまり、第2の変形例では、TRモードにおいて送信されたマイクロ波を、対象物の検出だけでなく、マスタ信号としても利用している。
【0117】
このような第2の変形例であっても、マスタとしての洗浄装置7Bは、スレーブとしての洗浄装置7A、7Cと同期をとることができる。さらに、第2の変形例は、第1の実施形態の効果をも得ることができる。
【0118】
(第2の実施形態)
図11および図12は、本発明に係る第2の実施形態に従った洗浄装置7A〜7Cの通常動作を示すフロー図である。第2の実施形態による洗浄装置7A〜7Cの構成および初期動作は、第1の実施形態によるそれらと同様である。
【0119】
図9および図10を参照して説明した形態では、洗浄装置7A〜7Cは所定の期間ΔTmごとにリセット動作を実行した。一方、第2の実施形態による洗浄装置7A〜7Cは、通常動作において、TRモードの実行周期(ΔTtr)ごとにリセット動作を実行する。従って、洗浄装置7A〜7Cは、それぞれがTRモードを1度ずつ実行するごとに、リセット動作を実行する。
【0120】
図11を参照してマスタとしての洗浄装置7Bの動作を説明する。洗浄装置7Bは、まず、リセット動作を実行する。ここで、ステップS300〜S320の動作は、それぞれ図7のステップS100〜S120の動作と同様である。これにより、洗浄装置7Bは電波を他のスレーブ(洗浄装置7A、7C)へ送信するとともに、タイマ36が計時をリセットしてから開始する(S310)。
【0121】
尚、Tuni×(n+1)は、検出周期ΔTtrよりも小さいため、時点tがTuni×1に達していない場合(S320のNO)、当然に時点tは、ΔTtrにも達していない(S370のNO)。従って、時点tがTuni×1に達するまで、洗浄装置7Bは、計時を実行する。
【0122】
時点tがTuni×1に達すると(S320のYES)、マイクロコンピュータ30は、TRフラグが立っているか否かを判定する(S330)。TRフラグは、その検出周期においてTRモードを既に実行しているか否かを示すフラグである。TRフラグはメモリ34に格納すればよい。
【0123】
TRフラグが立っていない場合(S330のNO)、洗浄装置7Bは、TRモードを実行する(S340)。洗浄装置7Bの送信部22は電波を送信し、受信部24はその電波の反射波を受信する(S350)。これにより、対象物および/または対象物の動きを検出する。
【0124】
次に、TRフラグを立てる(S360)。このとき、メモリ34内に割り当てられたTRフラグビットの論理を反転させる。
【0125】
次に、マイクロコンピュータ30は、時点tと検出周期ΔTtrとを比較する(S370)。時点tが検出周期ΔTtrに達していない場合(S370のNO)、ステップS330に戻る。この時点で洗浄装置7Bは、すでにTRモードを実行しており、TRフラグが立っている(S330のYES)。よって、時点tが検出周期ΔTtrに達するまで、S330のYES、S370のNOからなるループを繰り返し実行する。
【0126】
時点tが検出周期ΔTtrに達すると(S370のYES)、計時を停止し、さらに、TRフラグをリセットする(S380)。そして、ステップS300へ戻り、洗浄装置7Bは、リセット動作を実行する。即ち、洗浄装置7Bは、TRモードを実行する検出周期ΔTtrの経過ごとにリセット動作を実行する。
【0127】
図12を参照して、スレーブとしての洗浄装置7A、7Cの通常動作を説明する。
【0128】
洗浄装置7A、7Cは、まず、リセット動作を実行する。ここで、ステップS400〜S440の動作は、それぞれ図8のステップS200〜S240の動作と同様である。これにより、洗浄装置7A、7Cは、マスタとしての洗浄装置7Bに同期して通常動作にエンターする。洗浄装置7A〜7Cは、互いに異なるタイミングでTRモードを実行する。ただし、ステップS430においてタイマ36は計時を継続する。
【0129】
ステップS440においてTRモードを実行した洗浄装置7Aは、最後にTRモードを実行する他のスレーブ洗浄装置(即ち、固有番号の最も大きい洗浄装置)7Cがその周期においてTRモードを実行する時点(ΔTtr−Tuni)まで待機する(S450)。そのために、タイマ36は、計時を継続する。
【0130】
タイマ36の時点tがΔTtr−Tuniを過ぎると、ステップS400へ戻り、スレーブとしての洗浄装置7A、7CはRモードとなる。尚、或る周期において最後にTRモードになる洗浄装置7Cは、通常動作開始からΔTtr−Tuniの経過時点でTRモードになるので、待機することなくその直後にステップS400へ戻る。従って、スレーブとしての全ての洗浄装置7A、7Cがそれぞれその周期においてTRモードを実行した後、全て同時にRモードになる。
そして、ステップS410において、洗浄装置7A、7Cは、マスタ信号を待機する。再度、マスタ信号を受信すると、タイマ36は、計時をリセットしてから開始する(S420)。
【0131】
ここで、洗浄装置7A〜7Cは検出周期ΔTtrごとにリセット動作を実行するため、洗浄装置7A、7Cは、検出周期ΔTtrごとにマスタ信号を受信する。よって、洗浄装置7A、7Cは、マスタ信号をトリガとして通常動作を実行すれば、自ずと検出周期ΔTtrごとにTRモードを実行することになる。従って、スレーブ側の洗浄装置7A、7Cは、検出周期ΔTtrの経過を判断する必要が無く、TRモードの実行後、ステップS410においてマスタ信号の受信を待機すればよい。
【0132】
第2の実施形態による洗浄装置7A〜7Cは、TRモードの実行周期(ΔTtr)ごとにリセット動作を実行する。従って、洗浄装置7A〜7Cからのマイクロ波の重複(干渉)を完全に無くすことができる。また、洗浄装置7A〜7Cの発振子(クロック)がずれている場合であっても、洗浄装置7A〜7Cのマイクロ波の重複する可能性を排除することができる。第2の実施形態は、さらに、第1の実施形態の効果をも得ることができる。
【0133】
(第3の実施形態)
図13は、本発明に係る第3の実施形態に従った洗浄装置のセンサモジュール10の構成を示す図である。第3の実施形態によるセンサモジュール10は、送信コントローラ31に接続されたスイッチ40をさらに備えている。スイッチ40は、管理者等が手でオン/オフすることができるように構成されている。管理者等の設定者がスイッチ40を押したときに、スイッチ40は、送信コントローラ31を介して送信部22に電波を送信させる。即ち、スイッチ40は、任意のタイミングで洗浄装置にTモードを実行させることができる。第3の実施形態のその他の構成は、対応する第1の実施形態の構成と同様でよい。
【0134】
第1および第2の実施形態では、初期動作においてTモードにエンターする時点を決定する期間ΔTta〜ΔTtcは、ランダムに設定されている。あるいは、期間ΔTta〜ΔTtcは、出荷前に予め設定されており、メモリ34内に格納されている。従って、洗浄装置7A〜7Cの固有番号(n+1)および洗浄装置の総数(N+1)は、電源投入後、自動的に決定される。
【0135】
一方、第3の実施形態では、各洗浄装置の固有番号(n+1)および洗浄装置の総数(N+1)は、洗浄装置が設置された後、設定者によって設定される。例えば、トイレブース内に洗浄装置7A〜7Cが設置された後、洗浄装置7A〜7Cに電源が投入される。このとき、洗浄装置7A〜7Cは、初期動作にエンターし、全てRモードとなる。次に、設定者が洗浄装置7A〜7Cのスイッチ40を或る順番でオンさせる。このとき、送信部22がその順番で電波を送信し、固有番号(n+1)および総数(N+1)が決定される。初期動作期間の経過後、リセット動作および通常動作は、第1または第2の実施形態のそれらと同様でよい。
【0136】
このように、スイッチ40は、初期動作において各洗浄装置7A〜7CがTモードにエンターするタイミングを決定するために設けられている。従って、第3の実施形態では、マイクロコンピュータ30は、初期動作において乱数を発生させる必要はない。また、期間ΔTta〜ΔTtcをメモリ34に予め格納させておく必要もない。
【0137】
ただし、設定者は、電源投入後、初期動作期間ΔTintの間に全ての洗浄装置のスイッチ40を押す必要がある。さらに、管理者等は、全洗浄装置の各スイッチ40を時間的にずらして順番に押す必要があり、複数のスイッチ40を同時に押してはらない。
【0138】
第3の実施形態による洗浄装置では、各洗浄装置の固有番号(n+1)および洗浄装置の総数(N+1)がマニュアルで決定される。従って、各洗浄装置は、初期動作期間ΔTintの計時を必要とするが、ΔTta〜ΔTtcの計時を不要とする。従って、第3の実施形態では、洗浄装置の処理およびプログラムを簡略化できる。
【0139】
また、設定者が、各洗浄装置の固有番号(n+1)を決定するので、設定者は、マスタおよびスレーブの洗浄装置を把握することができる。複数の洗浄装置において誤動作が生じる場合には、設定者は、任意の時期に電源を入れ直し、再度、スイッチ40を順番に押して、各洗浄装置の固有番号(n+1)および洗浄装置の総数(N+1)を再設定することができる。
【0140】
第3の実施形態はリセット動作および通常動作は、第1または第2の実施形態のそれらと同様であるので、第3の実施形態は、第1または第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0141】
第1の実施形態の変形例2は、第1の実施形態の変形例1、第2の実施形態または第3の実施形態に組み合わせることができる。即ち、第1の実施形態の変形例1、第2の実施形態または第3の実施形態において、固有番号として順番カウンタnを用いてよい。この場合、各洗浄装置7A〜7CによるTRモードの実行タイミングが全体的にTuniだけ早まるが、各洗浄装置のマイクロ波の重複(干渉)を防止することができる。よって、第1の実施形態の変形例2を、第1の実施形態の変形例1、第2の実施形態または第3の実施形態に組み合わせた場合であっても、各実施形態または変形例の効果を得ることができる。
【0142】
尚、上記実施形態において、各洗浄装置の固有期間をTuni×(n+1)とした。しかし、固有期間の単位時間Tuniに乗算される数値は、n、n+1の他、2n、0.5nでもよく、順番カウント(固有番号)nに基づいて任意に設定され得る。この場合、洗浄システムS内の各洗浄装置の固有期間は、Tuni×k×n(kは任意係数)となる。このような場合であっても、各洗浄装置がTRモードを実行するタイミングを互いにずらすことができる。
【符号の説明】
【0143】
S…洗浄装置システム
A…便器(容器)
4…バルブ(供給部)
7…洗浄装置(自動供給装置)
10…センサモジュール
20…マイクロ波ドップラセンサ(検出部)
30…マイクロコンピュータ(センサ制御部)
22…送信部
24…受信部
26…差分検出部
31…送信コントローラ(センサ制御部)
32…受信コントローラ(センサ制御部)
33…ドップラ信号処理部
34…メモリ(記憶部)
35…カウンタ
36…タイマ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連立して配置される複数の容器の各々に対応して設けられ、対応する前記容器に流体を供給する自動供給装置であって、
電波を送信し、該電波の反射波を受信し、送信した電波および受信した電波に基づいてドップラ信号を生成するドップラセンサと、
前記ドップラ信号に基づいて、前記電波を反射する対象物を検出する検出部と、
前記検出部の結果に基づいて、流体を供給しあるいは流体の供給を停止する供給部と、
前記ドップラセンサによる電波の送受信を制御するセンサ制御部と、
前記対象物の動きを検出する通常動作中に前記ドップラセンサが電波を繰り返し送受信する所定の検出周期、および、前記通常動作開始後に前記ドップラセンサが最初に電波の送受信を行うタイミングを決定する固有期間を予め記憶する記憶部とを備え、
電波の送信を行わず受信のみを行うリセット動作を前記通常動作の開始前に実行し、
前記リセット動作中に、他の容器の自動供給装置から送信されたマスタ信号を受信し、
前記マスタ信号の受信時点から前記通常動作を開始し、前記ドップラセンサは前記マスタ信号の受信時を起点として前記固有期間の経過時に最初の電波の送受信を行うことを特徴とする自動供給装置。
【請求項2】
電源投入後、任意のタイミングで電波を送信しそれ以外の期間において送信を行わず受信のみを行う初期動作期間において、電波を送信する前に受信した他の自動供給装置からの送信電波の数を固有番号nとした場合に、前記記憶部は、所定の単位時間を前記固有番号nに基づいた値で乗算した結果値を前記固有期間として記憶することを特徴とする請求項1に記載の自動供給装置。
【請求項3】
前記固有番号nの値が或る特定値以外である場合に、前記リセット動作において前記マスタ信号を受信することを特徴とする請求項2に記載の自動供給装置。
【請求項4】
前記固有番号nの値が或る特定値である場合に、前記リセット動作において前記マスタ信号を送信することを特徴とする請求項2に記載の自動供給装置。
【請求項5】
前記初期動作期間中に受信した他の自動供給装置からの送信電波の総数をNとした場合に、前記記憶部は、前記通常動作における前記検出周期を(N+1)で割り算した値を、前記所定の単位時間として記憶することを特徴とする請求項2に記載の自動供給装置。
【請求項6】
前記リセット動作を前記通常動作中に定期的に実行し、
前記リセット動作中に受信した前記マスタ信号の受信時点から前記通常動作を再度開始し、前記ドップラセンサは前記マスタ信号の受信時を起点として前記固有期間の経過後に電波の送受信を行うことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の自動供給装置。
【請求項7】
前記リセット動作は、対象物を検出するための前記複数の自動供給装置による電波の送受信ごとに実行されることを特徴とする請求項6に記載の自動供給装置。
【請求項8】
前記初期動作期間においてマニュアルで電波を送信するために設けられたスイッチをさらに備えたことを特徴とする請求項2に記載の自動供給装置。
【請求項9】
連立して配置される複数の容器の各々に対応して設けられ、前記複数の容器に流体を供給する複数の自動供給装置から構成された自動供給システムであって、
各自動供給装置は、
電波を送信し、該電波の反射波を受信し、送信した電波および受信した電波に基づいてドップラ信号を生成するドップラセンサと、
前記ドップラ信号に基づいて、前記電波を反射する対象物を検出する検出部と、
前記検出部の結果に基づいて、流体を供給しあるいは流体の供給を停止する供給部と、
前記ドップラセンサによる電波の送受信を制御するセンサ制御部と、
前記対象物の動きを検出する通常動作中に前記ドップラセンサが電波を繰り返し送受信する所定の検出周期、および、前記通常動作開始後に前記ドップラセンサが最初に電波の送受信を行うタイミングを決定する固有期間を予め記憶する記憶部とを備え、
当該自動供給システムは、他の容器の自動供給装置を同期させるマスタ信号を送信する或る自動供給装置をマスタ装置とし、前記マスタ装置以外の自動供給装置をスレーブ装置として含み、
前記マスタ装置は、前記マスタ信号を送信するリセット動作を前記通常動作の開始前に実行し、
前記スレーブ装置は、前記リセット動作中に電波の送信を行わず受信のみを行い、
前記マスタ装置は、前記マスタ信号の送信時点から前記通常動作を開始し、該マスタ信号として前記対象物を検出する最初の電波を送信するか、あるいは、該マスタ信号の送信時を起点として前記固有期間の経過後に最初の電波の送受信を行い、
前記スレーブ装置は、前記マスタ信号の受信時点から前記通常動作を開始し、前記マスタ信号の受信時を起点として前記固有期間の経過後に最初の電波の送受信を行い、
前記固有期間は前記複数の自動供給装置の各々において異なることを特徴とする自動供給システム。
【請求項10】
電源投入後、任意のタイミングで電波を送信しそれ以外の期間において送信を行わず受信のみを行う初期動作期間において、電波を送信する前に受信した他の自動供給装置からの送信電波の数を固有番号nとした場合に、前記記憶部は、所定の単位時間を固有番号nに基づいた値で乗算した結果値を前記固有期間として記憶し、
或る特定の固有番号nを有する前記自動供給装置が前記マスタ装置に設定され、
前記特定の固有番号n以外の固有番号nを有する前記自動供給装置が前記スレーブ装置に設定されることを特徴とする請求項9に記載の自動供給システム。
【請求項11】
前記初期動作期間中に受信した他の自動供給装置からの送信電波の総数をNとした場合に、前記記憶部は、前記通常動作における前記検出周期をN+1で割り算した値を、前記所定の単位時間として記憶することを特徴とする請求項9または請求項10に記載の自動供給システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−94375(P2011−94375A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−248866(P2009−248866)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ZIGBEE
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】