説明

自動倉庫

【課題】保守点検時にスタッカクレーンを確実に自動制御不能な状態にし得る装置を設ける。
【解決手段】荷を収容する複数の収容部を有する枠組棚と、枠組棚に対して移動して収容部に荷を搬送するスタッカクレーン3と、スタッカクレーン3を自動制御する制御装置とを有する自動倉庫1であって、スタッカクレーン3には、保守点検用の梯子5が設けられている。梯子5には、梯子5に対する作業者の昇り降りを検知する昇降検知器7が設けられている。制御装置は、昇降検知器7からの検知信号に基づいて作業者が梯子5に昇ったと判断した際にスタッカクレーン3を自動制御不能な状態にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷を収容する複数の収容部を有する枠組棚と、枠組棚に対して移動して収容部に荷を搬送するスタッカクレーンと、スタッカクレーンを自動制御する制御装置とを有する自動倉庫に関する。
【背景技術】
【0002】
荷をスタッカクレーンによって搬送するタイプの自動倉庫、あるいは荷を入出庫用電車によって搬送する自動倉庫(特許文献1参照)などが従来知られている。スタッカクレーンや入出庫用電車は、制御装置によって自動制御されて荷を搬送する。そしてその自動制御は、作業者が保守点検のために自動倉庫内に入り込んだ場合には、作業者の安全性確保のために停止される必要があり、その停止を確実に行うための安全装置も従来知られている。例えば、保守点検用の梯子兼安全索と、その安全索が外されたことを検知する検知装置を有しており、その検知装置からの検知信号に基づいて入出庫用電車を自動制御不能な状態にする安全装置が知られている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平7−109008号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしスタッカクレーンを有するタイプの自動倉庫は、通常、安全索を外したことを検知する装置等を有していないものもある。また上記安全装置は、通常の保守点検用の梯子を有するタイプの自動倉庫に適用することは、容易ではない。そこで本発明は、スタッカクレーンを有するタイプの自動倉庫において、保守点検時にスタッカクレーンを確実に自動制御不能な状態にし得る装置を設けることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記課題を解決するために本発明は、各請求項に記載の通りの構成を備える自動倉庫であることを特徴とする。すなわち請求項1に記載の発明によると、スタッカクレーンには、保守点検用の梯子が設けられている。梯子には、梯子に対する作業者の昇り降りを検知する昇降検知器が設けられている。制御装置は、昇降検知器からの検知信号に基づいて作業者が梯子に昇ったと判断した際にスタッカクレーンを自動制御不能な状態にする。
【0005】
したがって作業者が梯子に昇って作業している場合のみならず、作業者が梯子に昇って枠組棚に入り込んで作業している場合においてもスタッカクレーンが自動制御不能な状態になる。そのため地上から目視によって確認し難い場所で作業者が作業している場合においてスタッカクレーンを確実に自動制御不能な状態にすることができる。かくして自動倉庫の保守点検時における安全性が向上する。
【0006】
請求項2に記載の発明によると、梯子は、作業者の昇降用に上下方向に並設された複数の横板を有している。昇降検知器は、第一の横板に設けられた第一検知器と、第一の横板よりも上方に位置する第二の横板に設けられた第二検知器とを有している。制御装置は、第一検知器と第二検知器からの検知信号を受信する時間差から作業者の昇り降りを判断する。したがって一つのセンサ等によって作業者の昇降を検知する形態に比べて作業者の昇り降りを確実に検知することができる。また昇降検知器を安価な構成にすることもできる。
【0007】
請求項3に記載の発明によると、制御装置は、昇降検知器からの検知信号に基づいて梯子を昇った作業者の数と、梯子を降りた作業者の数とを比較し、昇った作業者の数が降りた作業者の数よりも多い状態ではスタッカクレーンを自動制御不能とする。したがって梯子に昇って枠組棚内に入った作業者が複数人いる場合でも、確実に作業者を検知し、スタッカクレーンが自動制御不能な状態になる。かくして自動倉庫の保守点検時における安全性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の実施の形態を図1〜4にしたがって説明する。図1に示すように自動倉庫1は、一対の枠組棚2と、スタッカクレーン3と、スタッカクレーン3を自動制御するメインコントローラ4を有している。枠組棚2は、複数の収容部2aを有しており、上下に複数段、水平方向に複数列の収容部2aを有している。
【0009】
スタッカクレーン3は、枠組棚2に対して移動して荷10を収容部2aに搬送する装置であって、図1に示すように一対の枠組棚2の間に設けられる。スタッカクレーン3は、走行台3bと、走行台3bの両端部に立設する一対のマスト3aと、一対のマスト3aの上部を連結する連結部3cを有している。走行台3bには、床面に設けられた走行用レール9aに設置される車輪と、車輪に駆動力を与える走行用モータ3eが設けられている。連結部3cには、枠組棚2の上部間に設けられた案内レール9bに走行可能に設置される走行輪が設けられている。したがってスタッカクレーン3は、走行用モータ3eが制御されることで走行用レール9aと案内レール9bに沿って走行する。
【0010】
一対のマスト3aの間には、昇降キャリッジ3dが昇降可能に設けられる。昇降キャリッジ3dには、昇降用モータ3fが設けられており、昇降用モータ3fが制御されることで昇降キャリッジ3dがマスト3aに沿って上下動する。昇降キャリッジ3dには、フォーク装置3gが配設されている。フォーク装置3gは、昇降キャリッジ3dに対して水平方向に移動して荷10を収容部2aに対して搬入または搬出するフォークを有している。
【0011】
自動倉庫1は、図1に示すようにスタッカクレーン3を制御する制御装置としてメインコントローラ4とクレーンコントローラ8とを有している。メインコントローラ(遠隔操作盤)4は、自動倉庫1の入口側に設けられており、作業者によって操作されてクレーンコントローラ8に自動制御の指令を発信する。クレーンコントローラ8は、スタッカクレーン3の下部出口側に設けられており、メインコントローラ4と電気的に接続されている。
【0012】
クレーンコントローラ8は、メインコントローラ4からの自動制御の指令を記憶する記憶部と、自動制御の指令に基づいてスタッカクレーン3を制御する制御部を有している。スタッカクレーン3は、制御装置(メインコントローラ4とクレーンコントローラ8)によって自動制御されることで、走行台3bが走行し、昇降キャリッジ3dが昇降する。そして昇降キャリッジ3dが所定の収容部2aに対応する位置に到達すると、フォーク装置3gがその収容部2aに対して荷10の搬入または搬出を行う。
【0013】
メインコントローラ4は、図1に示すように安全プラグ11が接続される接続部4aを有している。安全プラグ11が接続部4aから抜かれると、メインコントローラ4は、クレーンコントローラ8に停止指令を発信する。クレーンコントローラ8は、停止指令に基づいてスタッカクレーン3を停止させ、自動制御不能な状態にする。したがって保守点検時に安全プラグ11がメインコントローラ4から抜かれると、スタッカクレーン3は、メインコントローラ4を操作しても自動制御されない。
【0014】
図1に示すように自動倉庫1は、保守点検作業用の梯子5を有している。梯子5は、スタッカクレーン3のマスト3aの入口側部に取付けられている。梯子5は、図2に示すようにマスト3aに沿って上下に延出する一対の支柱5aと、一対の支柱5a間に橋渡される複数の横板5bを有している。横板5bは、作業者が昇降する際に手や足をかける部材であって、複数の横板5bが上下略等間隔で並設されている。
【0015】
梯子5には、図2に示すように可動式フック体6と昇降検知器7が設けられている。可動式フック体6は、作業者が墜落することを防止する装置であって、支柱5aに移動可能に取付けられる本体部6aと、作業者が装着する安全帯12に引っ掛けられるフック6bを有している。本体部6aには、作業者が誤って墜落しそうになった際に支柱5aに対して移動不能に作用するストッパ機構が設けられている。
【0016】
昇降検知器7は、梯子5に対して作業者が昇り降りしたことを検知する装置であって、図2に示すように第一検知器7aと第二検知器7bを有している。第一検知器7aは、作業者が飛び降りることが容易でない高さ、例えば地面から1m以上の高さの第一の横板5b1に設けられる。第二検知器7bは、第一の横板5b1よりも上方、例えば一つ上の第二の横板5b2に設けられる。
【0017】
第一検知器7aは、図3,4に示すように接触式のリミットスイッチ7cとプレート7dを有している。リミットスイッチ7cは、横板5bに取付けられる本体部7c1と、本体部7c1の上部に出没可能に設けられる出没ピン7c2を有している。プレート7dは、複数のスプリング7eによって横板5bの上方に並設される。スプリング7eは、例えばコイルスプリングであって、作業者がプレート7dを踏むことで縮む。これによりプレート7dが横板5bに向けて移動し、リミットスイッチ7cの出没ピン7c2を本体部7c1向けて押し、リミットスイッチ7cが電気的に接続された制御装置(メインコントローラ4またはクレーンコントローラ8)に検知信号を出力する。
【0018】
第二検知器7bも第一検知器7aと同様に、リミットスイッチ7cとプレート7dとスプリング7eを有して構成されている。したがって作業者が梯子5を昇る場合には、第一検知器7aが先に検知信号を発信し、その後、第二検知器7bが検知信号を発信する。一方、作業者が梯子5を降りる場合には、第二検知器7bが先に検知信号を発信し、その後、第一検知器7aが検知信号を発信する。そして制御装置(メインコントローラ4またはクレーンコントローラ8)は、これら検知信号を受信し、これら検知信号の受信した時間差から作業者が昇ったのか、降りたのかを判断する。作業者が昇ったと判断した場合、制御装置は、スタッカクレーン3を自動制御不能な状態にする。
【0019】
さらに制御装置は、昇降検知器7からの検知信号に基づいて梯子5に昇った作業者の人数と、降りた人数をカウントする。そして昇った人数と降りた人数の差を計算し、昇った人数が降りた人数よりも多い場合は、スタッカクレーン3を自動制御不能な状態にする。昇った人数と降りた人数とが同じになった場合は、スタッカクレーン3を自動制御可能な状態にする。したがって複数の作業者によって自動倉庫1を保守点検する場合、作業者全員が梯子5から降り、かつ安全プラグ11がメインコントローラ4に接続されないと、スタッカクレーン3を自動制御することができない。
【0020】
以上のように、梯子5には、図2に示すように昇降検知器7が設けられており、制御装置は、昇降検知器7からの検知信号に基づいて作業者が梯子5に昇ったと判断した際にスタッカクレーン3を自動制御不能な状態にする。したがって作業者が梯子5に昇って作業している場合のみならず、作業者が梯子5に昇って枠組棚2に入り込んで作業している場合においてもスタッカクレーン3が自動制御不能な状態になる。そのため地上から目視によって確認し難い場所で作業者が作業している場合においてスタッカクレーン3を確実に自動制御不能な状態にすることができる。かくして自動倉庫1の保守点検時における安全性が向上する。
【0021】
また昇降検知器7は、図2に示すように第一検知器7aと第二検知器7bを有している。制御装置は、第一検知器7aと第二検知器7bからの検知信号を受信する時間差から作業者の昇り降りを判断する。したがって一つのセンサ等によって作業者の昇降を検知する形態に比べて作業者の昇り降りを確実に検知することができる。
【0022】
また制御装置は、昇降検知器7からの検知信号に基づいて梯子5を昇った作業者の数と、梯子5を降りた作業者の数とを比較し、昇った作業者の数が降りた作業者の数よりも多い状態ではスタッカクレーン3を自動制御不能とする。したがって梯子5に昇って枠組棚2内に入った作業者が複数人いる場合でも、確実に作業者を検知し、スタッカクレーン3が自動制御不能な状態になる。かくして自動倉庫1の保守点検時における安全性が向上する。
【0023】
また検知器7a,7bは、リミットスイッチ7cとプレート7dを主体に構成されている(図3,4参照)。したがって検知器7a,7bは、比較的簡易な構成であって、安価に構成され得る。またメンテナンスも容易になる。
【0024】
(他の実施の形態)
本発明は、上記実施の形態に限定されず、以下の形態等であっても良い。
(1)上記実施の形態の昇降検知器7は、接触センサであるリミットスイッチ7cを有する形態であった。しかし圧力センサなどの他の接触式センサ、または磁気センサ、光電センサ、レーダー反射式などの非接触式センサを有する形態であっても良い。
(2)上記実施の形態は、二つの検知器7a,7bを有する昇降検知器7からの検知信号に基づいて制御装置が作業者の昇り降りを判断する構成であった。しかし赤外線等を利用して作業者が近接または離間することを検知し得る非接触式のセンサを有し、そのセンサからの検知信号に基づいて作業者の昇り降りを検知する形態であっても良い。あるいはカメラを有し、そのカメラが出力する画像データに基づいて制御装置が作業者の昇り降りを判断する形態であっても良い。
(3)上記実施の形態のスプリング7eは、作業者が足によってプレート7dを踏んだ場合にプレート7dがリミットスイッチ7cを押す程度のばね力を有する形態であった。しかしスプリング7eは、そのばね力を有しつつ、梯子5を昇降する際に作業者がプレート7dを掴んだ場合、プレート7dがリミットスイッチ7cを押すことを防止する程度のばね力を有している形態であることが好ましい。これにより作業者の昇り降りをさらに確実に検知できるようになる。
(4)上記実施の形態の昇降検知器7は、二つの検知器7a,7bを有する形態であった。しかし昇降検知器が三つ以上の検知器を有し、制御装置がこれら検知器から検出信号の受信時間の差から作業者の昇り降りを判断する形態であっても良い。
(5)制御装置は、上記形態に加えて梯子5に昇っている作業者の人数をメインコントローラ4の表示部に表示する形態であっても良い。これにより保守点検時における作業者の位置等をメインコントローラ4側から確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】自動倉庫の斜視図である。
【図2】梯子近傍における自動倉庫の一部側面図である。
【図3】梯子と非作動時の昇降検知器の一部拡大図である。
【図4】梯子と作動時の昇降検知器の一部拡大図である。
【符号の説明】
【0026】
1…自動倉庫
2…枠組棚
2a…収容部
3…スタッカクレーン
4…メインコントローラ(制御装置)
5…梯子
5b…横板
5b1…第一の横板
5b2…第二の横板
6…可動式フック体
7…昇降検知器
7a…第一検知器
7b…第二検知器
7c…リミットスイッチ
7d…プレート
7e…スプリング
8…クレーンコントローラ(制御装置)
10…荷

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷を収容する複数の収容部を有する枠組棚と、その枠組棚に対して移動して前記収容部に荷を搬送するスタッカクレーンと、そのスタッカクレーンを自動制御する制御装置とを有する自動倉庫であって、
前記スタッカクレーンには、保守点検用の梯子が設けられ、
前記梯子には、前記梯子に対する作業者の昇り降りを検知する昇降検知器が設けられ、
前記制御装置は、前記昇降検知器からの検知信号に基づいて作業者が前記梯子に昇ったと判断した際に前記スタッカクレーンを自動制御不能な状態にすることを特徴とする自動倉庫。
【請求項2】
請求項1に記載の自動倉庫であって、
梯子は、作業者の昇降用に上下方向に並設された複数の横板を有し、
昇降検知器は、第一の横板に設けられた第一検知器と、前記第一の横板よりも上方に位置する第二の横板に設けられた第二検知器とを有し、
制御装置が、前記第一検知器と前記第二検知器からの検知信号を受信する時間差から作業者の昇り降りを判断することを特徴とする自動倉庫。
【請求項3】
請求項1または2に記載の自動倉庫であって、
制御装置は、昇降検知器からの検知信号に基づいて梯子を昇った作業者の数と、前記梯子を降りた作業者の数とを比較し、昇った作業者の数が降りた作業者の数よりも多い状態ではスタッカクレーンを自動制御不能とすることを特徴とする自動倉庫。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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