説明

自動再生式エアフィルタ

【課題】エアフィルタろ材の使用可能期間が長く且つ捕集率の高いろ材を提供する。
【解決手段】装置本体1の前後方向に開口する通風部にその全面を遮るようにフィルタろ材3をセットし、ろ材の圧損抵抗が所定値以上に上昇したら、装置本体の通風部前面側に上下・左右に移動しながらフィルタろ材の捕集ダストを除去するろ材再生装置を付設して構成した自動再生式エアフィルタにおいて、ろ材をポリエステルなどの微細繊維から構成し且つ織毛繊維径が5〜50μmの混紡または50〜80μmの混紡を含めて少なくとも2種のものを使用したことを特徴としたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下街、地下鉄駅構内、デパートおよび工場などの汚染空気をろ過集塵する自動再生式エアフィルタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種の自動再生式エアフィルタは装置本体の前後方向に開口する通風部にその全面を遮るようにエアフィルタろ材をセットし、エアフイルタろ材のろ過面部で前方から送通される汚染空気ろ過集塵を行っている。そしてこうした自動再生式エアフィルタでは比較的含塵濃度の高い地下街や地下鉄駅構内、デパートおよび工場排気ガスなどの汚染空気をろ過集塵する場合、そのガス中のダストやリント量が多いことからエアフィルタろ材のろ過面部の圧損抵抗が直ぐに上昇してろ過効率の低下を招くので、そのエアフィルタろ材の清浄時期を早めてろ過面部の清浄を頻繁に行う必要がある。
【0003】
また処理ガス中に粉塵と一緒にあるいは別々にヒユームが含まれてくる場合には、エアフィルタろ材のろ過面部に湿気を帯びたダストがこびり付き、ダスト捕集容量に達していないにもかかわらず圧損抵抗が急激に上昇することから、エアフィルタろ材再生を頻繁に行わざるを得ないなどそれだけエアフィルタろ材の使用可能期間が短くランニングコストの面で大きな問題があった。
【0004】
さらには、フィルタろ材のろ過面部の清浄を頻繁に行う必要があるためろ材自身の強度を高めねばならず、必然的に繊維径が大きな例えば60〜70μmの比較的太いものを選定せざるを得なかった。このため質量法で60〜70%の捕集率ぐらいしか得られず空調機コイルの汚染防止などを考えた場合必ずしも満足するものではなく、機器の保護による機器の長寿命化、あるいは清浄頻度などを考えればより効率化が要求されている。
このため、自動再生式エアフィルタの後段に中性能エアフィルタなどを設置し機器の保護による機器の長寿命化を果たそうと試みられているが設置場所のスペースの問題あるいは中性能エアフィルタ自身および取り付け費用などの問題があり、自動再生式エアフィルタの高性能化が望まれている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記のような問題点を解決しようとしたもので、まず本発明の目的はエアフィルタろ材の使用可能期間が長く且つ捕集率の高いろ材を提供しようとしたものである。
【0006】
次に、本発明の目的は処理する汚染空気の含塵濃度が高く且つ粉塵やリント、ヒユームなどが混入して来ても、ろ過面部の圧損抵抗の上昇をできるだけ抑えてろ過効率の向上を図るようにしたものである。
【0007】
さらに本発明の目的はエアフィルタろ材の清掃時期を延ばしてランニングコストを安くすると共にエアフィルタろ材の寿命が長寿命となるようにしようとしたものである。
【0008】
さらに、本発明の目的は自動再生式エアフィルタの後段に設置した機器の保護による機器の長寿命化や性能維持などを果たそうとしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の解決手段は装置本体の前後方向に開口する通風部にその全面を遮るようにセットしたエアフィルタろ材を高性能化したことを特徴としたものである。
【0010】
本発明のもう一つ解決手段はエアフィルタろ材をポリエステルなどの微細繊維から構成し且つ織毛繊維径を5〜80μmの合成繊維から編み立てしたことを特徴としたものである
【0011】
本発明のもう一つ解決手段はエアフィルタろ材を繊維径が5〜50μmの混紡または50〜80μmの混紡を含めて少なくとも2種のものを使用したことを特徴としたものである。
【0012】
本発明のもう一つ解決手段はエアフィルタろ材の繊維のパイル長さを12〜18mmに調整したことを特徴としたものである。
【0013】
本発明のもう一つ解決手段はエアフィルタろ材の繊維を基布に植えつけるために編み立織毛で行い、パイルが抜け落ちないようにアクリルなどのバインダで固定するか、または別途電気植毛などでパイルを植え付け固定したことを特徴としたものである。
【0014】
本発明のもう一つ解決手段は固定バインダの中にハロゲン剤などの難燃剤を入れて処理したことを特徴としたものである。
【0015】
ここで、エアフィルタろ材は特に限定されるものではないが、たとえばポリエステル、ポリアミド、ポリエチレン、レーヨン、塩化ビニリデンなどの合成繊維の織布あるいは不織布、ガラス繊維などが使用される。
【0016】
固定バインダは有機系バインダ、無機系バインダを単独あるいは混合して加えて得られる混合バインダにハロゲン剤などの難燃剤を適当量加えて使用される。
【0017】
また基布は網目構造となっており合成繊維が使用される。
【0018】
そしてその作用は次の通りである。すなわち空調機の吸気運転により吸入される気中のダストはエアフィルタろ材で捕集され清浄空気として装置本体を通過する。この際、エアフィルタろ材は捕集率を高性能化しているので、清浄空気中のダストの粒径はより細かなものとなっている上ダスト量もかなり少なくなっている。このため後段に設置した機器の保護による機器の長寿命化を果たすことができるる。
【0019】
このような運転を繰り返すことによりエアフィルタろ材表面にダストが堆積し圧損抵抗の上昇が生じてくる。そして圧損抵抗が一定値に上昇時点でろ材再生装置のろ材再生口はノズル駆動装置によって作動を開始し、エアフィルタろ材の前面を上下、左右に動きエアフィルタろ材に捕集された粉塵やヒユームなどのダストをそのまま残さず出来るだけろ過面部から除去するように吸引除去される。これにてろ過面部の圧損抵抗の急激な上昇が抑えられ吸気運転の吸入を停止することなく行なわれる。
【0020】
さらに、吸引除去された捕集ダストはダスト再生口に接続なおされたフレキシブルホースを経由してサイクロンまたは小型バグ型集塵機などの再生用集塵機で処理される。
【発明の効果】
【0021】
(1)エアフィルタろ材を高性能化したので、ろ過面部の後方を通過した清浄空気中にはダストの粒径はより細かなものとなっている上ダスト量もかなり少なくなっているので後段に設置した機器の保護による機器の長寿命化および熱効率などの性能維持を果たすことができる。
(2)エアフィルタろ材は毛並みに一定の方向性をもたせた空間率が極めて高い立体構造をしている上引っ張り強度が強く伸び縮みのない基布を使用しているので、粉塵保持容量が大きく、しかも捕集物除去での再生使用が可能で長期の使用に耐えることができる。
(3)処理する汚染空気の含塵濃度が高く且つヒユームなどが混入してきても、ろ材のろ過面部に捕集したダストをそのまま残さず、ろ材再生装置により除去して、このろ過面部の圧損抵抗の急激な上昇を抑えることができるので、ろ過効率の向上が図れると共に、このろ材の更新時期を大幅に延ばしてランニングコストを非常に安くできる。
(4)ろ材の再生を吸気運転のまま機械的に出来るようにし、ろ材の交換に際しても労力、時間を要せず、保守管理が非常に簡単である。
(5)地下街や地下鉄駅構内、デパートおよび工場排気ガスなどの比較的粉塵濃度の高い場所でもろ材の交換頻度とか運転経費の面でとかく有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下本発明の自動再生式エアフィルタについて図面を参照して詳細に説明する。
【実施例】
【0023】
まず1は自動再生式エアフィルタの装置本体を示し、この装置本体1は全体が縦型で前後幅の狭いUチャンネル枠状をなし、その中央部が前後方向に大きく開口する通風部とされている。この装置本体1の後面側に網目状の基布2に繊維径15〜40μm長さ15mm程度の繊維を織毛によって織り込んだろ材3が貼り付け固定されている。さらにろ材3の下流側にはろ材3が気流によって吹き飛ばされるのを防止する網目状の金具4すなわちグレーチングが取り付けられている。
【0024】
装置本体1の通風部の前面側に上下、左右に移動しながらろ材3に付着したダスト除去を行うろ材再生装置が付設されている。
【0025】
すなわち、装置本体1の通風部の前面側周囲に再生フレームドライブチェーン正面カバー5が取り付けられ、この再生フレームドライブチェーン正面カバー5が取り付けられ、この再生フレームドライブチェーン正面カバー5の上下左右四隅部にそれぞれメインシャフト6a,テンションスプロケット6b,サブシャフト6c,テンションスプロケット6d、フリーホイル6e,テンションスプロケット6fが設けられ、そのメインシャフト6a,テンションスプロケット6b間と、サブシャフト6c,テンションスプロケット6d間と、フリーホイル6e,テンションスプロケット6f間にそれぞれ再生フレームドライブチエーン7a,7b,再生口ドライブチエーン7cが掛装されている。また再生フレームドライブチェーン正面カバー5の一側上方部に上下動用駆動モーター8が取り付けられ、この上下動用駆動モーター8に再生フレームドライブチエーン7a,7b,再生口ドライブチエーン7cを介して前記メインシャフト6aと同軸の駆動スプロケット(図示せず)が駆動されて、前記再生フレームドライブチエーン7a,7b,再生口ドライブチエーン7cが一連の状態で往復回転するようになっている。そしてその左右に配置する各再生フレームドライブチエーン7a,7bとに両端を連結して再生フレーム9が水平状態に横架されて、この各再生フレームドライブチエーン7a,7bの往復回転により上下動せしめられるようになっている。この再生フレーム9には両端に取り付けたフリーホイル6e,テンションスプロケット6fを介して再生フレームドライブチエーン7a,7b,がその一方のテンションスプロケット6fに連動すべく設けたテンションスプロケット10に往復回転駆動されるようになっている。そしてこの再生フレーム9上にダスト再生口11が前記再生口ドライブチエーン7cと連結した状態で配設されて、このダスト再生口11が再生口ドライブチエーン7cの往復回転により再生フレーム9に案内支持されながら左右方向に移動せしめられる構成となっている。ダスト再生口11はタイマにより起動されるノズル駆動装置(図示せず)によって起動され、ろ材3に捕集されたダストは吸引除去される。そしてダスト再生口11はフレキシブルホース12を介してサイクロンまたは小型バッグなどの再生集塵機(図示せず)に接続されている。
【0026】
次に上述した構成の作動について説明すると、装置本体1の前方から通風部に送通される汚染空気はろ材3のろ過面部によりろ過集塵されて、この汚染空気中のダストはろ過面部に捕集され、清浄化された空気は後方に通過して行く。こうした集塵稼動中に、装置本体1の通風部前面側に付設したろ材再生装置の上下動用駆動モーター8が作動して、前述したように再生フレーム9を適度なスピードで上下動せしめると共にテンションスプロケット10が作動してダスト再生口11を左右方向に移動せしめる。これにてこのダスト再生口11がろ材3のろ過面部に捕集されている粉塵やヒユームなどのダストをそのまま残さず吸引除去される。そして吸引除去されたダストはフレキシブルホース12を介してサイクロンまたは小型バッグなどの再生集塵機(図示せず)で処理される。
【0027】
これにて比較的含塵濃度の高い地下街、地下鉄駅構内、デパートの換気などの汚染空気をろ過集塵してもろ材3のろ過面部の圧損抵抗が急激に上昇することがなくなり、それだけろ材3のランニングコストを大幅に安くできるものである。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は従来の自動再生式エアフィルタに高性能化したエアフィルタろ材を設けたことにより、エアフィルタろ材を通過した清浄空気中のダストの粒径をより細かなものとしさらにダスト量もかなり少なくすることによって、後段に設置した機器の保護による機器の長寿命化および効率化を可能にした実用上甚だ大なるものである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明を示す正面図である。
【図2】図1のA矢視からみた側面図である。
【図3】本発明を示す背面図である。
【符号の説明】
【0030】
1・・・装置本体 2・・・基布2 3・・・ろ材
4・・・グレーチング 5・・・再生フレームドライブチェーン正面カバー
6a・・・メインシャフト 6b・・・テンションスプロケット
6c・・・サブシャフト 6d・・・テンションスプロケット
6e・・・フリーホイル 6f・・・テンションスプロケット
7a,7b・・・再生フレームドライブチエーン
7c・・・再生口ドライブチエーン
8・・・上下動用駆動モーター 9・・・再生フレーム
10・・・テンションスプロケット 11・・・ダスト再生口
12・・・フレキシブルホース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体の前後方向に開口する通風部にその全面を遮るように、エアフィルタろ材をセットしろ材のろ過面部で前方から送通される汚染空気ろ過集塵を行うと共にそのろ過面部の圧損抵抗が所定値以上に上昇したら、装置本体の通風部前面側に上下・左右に移動しながら前記ろ材のろ過面部の捕集ダストを除去してエアフィルタろ材の寿命を延ばすろ材再生装置を付設して構成した自動再生式エアフィルタにおいて、前記エアフィルタろ材を基布に織毛して高効率化したことを特徴とする自動再生式エアフィルタ。
【請求項2】
ろ材はポリエステルなどの微細繊維を採用し織毛繊維径は5〜80μmの合成繊維を採用し編み立てしたことを特徴とする請求項1の自動再生式エアフィルタ。
【請求項3】
ろ材は繊維径が5〜50μmのものを混紡または50〜80μmの採用を含めて少なくとも2種のものを使用したことを特徴とする請求項1の自動再生式エアフィルタ。
【請求項4】
繊維のパイル長さを12〜18mmに調整したことを特徴とする請求項1の自動再生式エアフィルタ。
【請求項5】
繊維を基布に植えつけるために編み立織毛で行い、パイルが抜け落ちないようにアクリルなどのバインダで固定するか、または別途電気織毛などでパイルを植え付け固定したことを特徴とする請求項1の自動再生式エアフィルタ。
【請求項6】
固定バインダの中にハロゲン剤などの難燃剤を入れて処理したことを特徴とする請求項5の自動再生式エアフィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−291771(P2009−291771A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−167902(P2008−167902)
【出願日】平成20年6月2日(2008.6.2)
【出願人】(000193047)進和テック株式会社 (36)
【出願人】(390040888)日本エアー・フィルター株式会社 (45)
【Fターム(参考)】