説明

自動分析装置、および自動分析装置の分注方法

【課題】本発明は、優先搬送ラインや検体ラックの入替をするラック移動手段を備えることなく、簡単な構成で至急検体の分析検査に応えることができる自動分析装置、及び自動分析装置の分注方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、サンプル容器を収容する検体ラックと、前記検体ラックを搬送する主搬送ラインと、前記主搬送ラインに沿って隣接配置され、主搬送ラインより前記検体ラックを引き込み、分析検査を終えた前記検体ラックを主搬送ラインに戻す単数または複数の分析モジュールを有する自動分析装置において、分析を急ぐ至急検体の入るサンプル容器が収容されている前記検体ラックを前記分析モジュール内には引き込まずに分析モジュールに近接する主搬送ライン上に停止させ、至急検体の分注を行う至急分注手段を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液,尿等の生体サンプルに含まれる成分の分析を自動的に実行する自動分析装置に係わる。
【0002】
特に検体ラックに収容されたサンプル容器を分析部に搬送し、該サンプル容器からサンプルを採取して検査し、必要に応じてサンプルを再検査する自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0003】
臨床検査のための自動分析装置では、血液,血漿,血清,尿、その他の体液等の検体(サンプル)に対して、指示された分析項目を自動的に分析検査する。
【0004】
自動分析装置は、サンプルと試薬を混合,反応させた反応液を分析する分析部を有し、その分析部にサンプルを供給する方法としては、サンプル容器を収容した検体ラックを搬送ライン経由で分析部のサンプル吸入位置に位置づける方法がある。
【0005】
これらは、下記の特許文献1,2,3に示される。
【0006】
【特許文献1】特開平9−304396号公報
【特許文献2】特開2004−28588号公報
【特許文献3】特開2003−083994号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この自動分析装置では、分析検査を急ぐ要求がある。上記特許文献1,2においては、分析モジュール内に滞在する検体ラックがあると至急検体(ここで言う至急検体とは、緊急患者検体、分析を急ぐ管理血清、校正を急ぐために分析する標準液検体、再検要検体などを指す)が途中で割り込めず分析結果が遅れてしまう欠点があった。
【0008】
これは、複数の分析モジュールが並ぶ分析モジュール間の追い越しは可能であるが、分析モジュール内に滞在する検体ラックの追い越しが不可能だからである。
【0009】
また、上記特許文献3は、至急検体の分析検査に応えた自動分析装置であるが、分析モジュールが1台のみの装置について記載されているだけで、複数モジュール構成の装置の場合でのラック搬送制御については全く考慮されていない。これに加え、至急検体を優先的に搬送する優先搬送ラインや検体ラックの入替をするラック移動手段を必要とする。
【0010】
本発明は、上記の課題に鑑み、優先搬送ラインや検体ラックの入替をするラック移動手段を備えることなく、簡単な構成で至急検体の分析検査に応えることができる自動分析装置、及び自動分析装置の分注方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、サンプル容器を収容する検体ラックと、前記検体ラックを搬送する主搬送ラインと、前記主搬送ラインに沿って隣接配置され、主搬送ラインより前記検体ラックを引き込み、分析検査を終えた前記検体ラックを主搬送ラインに戻す単数または複数の分析モジュールを有する自動分析装置において、分析を急ぐ至急検体の入るサンプル容器が収容されている前記検体ラックを前記分析モジュール内には引き込まずに分析モジュールに近接する主搬送ライン上に停止させ、至急検体の分注を行う至急分注手段を有することを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、サンプル容器を収容する検体ラックと、前記検体ラックを搬送する主搬送ラインと、前記主搬送ラインに沿って隣接配置され、主搬送ラインより前記検体ラックを引き込み、分析検査を終えた前記検体ラックを主搬送ラインに戻す単数または複数の分析モジュールを有する自動分析装置の分注方法において、分析を急ぐ至急検体の入るサンプル容器が収容されている前記検体ラックを前記分析モジュール内には引き込まずに分析モジュールに近接する主搬送ライン上に停止させ、至急検体の分注を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、優先搬送ラインや検体ラックの入替をするラック移動手段を備えることなく、簡単な構成で至急検体の分析検査に応えることができる自動分析装置、及び自動分析装置の分注方法を提供できる。
【0014】
また、ラック移動手段による緊急の検体ラックの入替が不要であるので、分注が迅速にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下本発明の実施例を図面を用いて説明する。
【0016】
まず、図1を引用して本発明の実施例に係る自動分析装置の全体的な概略から述べる。
【0017】
図示の自動分析装置は、二つの分析部(分析モジュール)6、14を備える。第1の分析部(分析モジュール)6は、検体ラックの流れに対し上流側、第2の分析部(分析モジュール)14は、検体ラックの流れに対し下流側になるよう並べられている。
【0018】
主搬送ライン3は、二つの分析部(分析モジュール)6、14の前を横に延在するように配置される。主搬送ライン3の前側には、分析部(分析モジュール)6、14と並ぶようにラック供給部1が配置される。
【0019】
検体ラックの投入を検知識別する識別装置5を備える識別部4は、主搬送ライン3を臨むように、ラック供給部1と分析部(分析モジュール)6の間に配置される。
【0020】
緊急検体ラック投入部32は、主搬送ライン3の先端に向けて設けられる。ここから、至急の分析が必要な検体を収容する検体ラックは投入される。
【0021】
ラック待機部24は、主搬送ライン3の後側に分析部(分析モジュール)14と並んで配置される。ラック待機部24は、ラック振分機構22,ラック分配機構25,ラック搬出ライン26,ラック引込機構28を有する。
【0022】
ラック収納部23は主搬送ライン3の後端に配置され、ラック押込機構29を有する。ラック待機部24のラック引込機構28により、選別されてラック押込機構29に渡された検体ラックはラック押込機構29により、ラック収納部23内に順に押し込まれる。
【0023】
帰還ライン30は主搬送ライン3と並行に置かれ、帰還ライン30の入口はラック待機部24に、出口は主搬送ライン3の前側につながっている。ラック待機部24から帰還ライン30に乗った検体ラックは、帰還ライン30に搬送されて主搬送ライン3の前側に運ばれる。
【0024】
分析部(分析モジュール)6は、サンプリングエリア8,試薬ディスク11,試薬分注機構12,反応ディスク10、検体分注機構9を有する。サンプリングエリア8は内部搬送ライン、ラック引込機構7、ラック排出機構13を有する。
【0025】
分析部(分析モジュール)14は、サンプリングエリア16,試薬ディスク19,試薬分注機構20,反応ディスク18、検体分注機構17を有する。サンプリングエリア16は内部搬送ライン、ラック引込機構70、ラック排出機構21を有する。
【0026】
検体ラックの搬送から分析に関する概要について述べる。
【0027】
ラック供給部1に並べられた検体ラック2は、主搬送ライン3に移載された後、検体ラック2及び検体ラック2に収容されるサンプル容器に貼り付けられたバーコードラベル等の識別媒体が識別部4で識別装置5により読み取られる。
【0028】
この読み取りで、検体ラック番号及びサンプル容器番号が認識される。識別装置5によって認識された検体ラック番号及びサンプル容器番号は、制御部33に伝達される。
【0029】
制御部33では検体ラック2の種別,各サンプル容器に対し指示されている分析項目の種類等が、検体受付番号と対応させて操作部35から予め指示されている分析情報と照合される。
【0030】
その照合結果に基づいて、検体ラック2の送り先が制御部33によって決定され、記憶部34に記憶され、その後の検体ラック2の処理に利用される。
【0031】
ラック供給部1の上流部には、緊急検体ラック投入部32が備わっている。ラック供給部1に検体ラック2がある状態で緊急検体ラック投入部32に検体ラック2が置かれた場合には、ラック供給部1にある検体ラック2に優先して緊急検体ラック投入部32にある検体ラック2が、主搬送ライン3に移載される。
【0032】
主搬送ライン3に沿って配置される第1の分析部モジュール6,第2の分析モジュール14は、主搬送ライン3から検体ラック2を受け取りサンプリング処理後の検体ラック2を再び搬送ライン3に戻す。
【0033】
第1の分析部モジュール6,第2の分析モジュール14は、サンプリングエリア8,16と、円周上に並べて配置された各反応容器内で各種の分析項目に応じたサンプルと試薬の反応を進める反応ディスク10,18と、各種の分析項目に応じた試薬を試薬吸入位置に位置づけるように動作する試薬ディスク11,19を具備する。
【0034】
また、第1の分析部モジュール6,第2の分析モジュール14は、サンプリングエリア8,16から反応ディスク10,18上の反応容器へサンプル容器内のサンプルを分注する検体分注機構9,17と、試薬ディスク11,19上の試薬ボトルから反応ディスク10,18上の反応容器へ分析項目に応じた試薬を分注する試薬分注機構12,20を具備する。
【0035】
第1の分析部モジュール6によって分析検査される項目が指示されているサンプルを保持する検体ラック2は、ラック取込機構7により主搬送ライン3上からサンプリングエリア8に移載される。
【0036】
移載された検体ラック2は、サンプリングエリア8内のサンプル採取位置に移動され、必要なサンプル容器内に検体分注機構9の分注ノズルが挿入されて反応容器への分注がなされる。
【0037】
同じサンプル容器について2項目以上の検査が指示されている場合、及び同じ検体ラック2上の他のサンプル容器に対し検査項目が指示されている場合は、引き続いてサンプル採取動作が繰り返される。
【0038】
指示されている総ての分析項目に関するサンプルの採取が終了した検体ラック2は、ラック排出機構13の対応位置まで移動され、ラック排出機構13によって主搬送ライン3上へ移載される。
【0039】
一方、反応ディスク10上の反応容器に採取されたサンプルは、試薬分注機構12によって分注された試薬と反応され、所定時間後に測定された各分析項目に対応するデータが制御部33へ出力される。
【0040】
制御部33は、予め設定されている判定規準と分析検査データを照合し、測定データが不適性な場合は、再検査が必要な検体であることを検体ラック番号及びサンプル容器番号と対応させて記憶部34に記憶する。
【0041】
ラック排出機構13によって主搬送ライン3上に移載された検体ラック2に対し、第2の分析のモジュール14に設定されている分析項目を分析検査する必要があるサンプルが収容されているか否かが制御部33によって判断される。
【0042】
検体ラック2上に検査すべきサンプルがあれば該検体ラック2はラック取込機構15の対応位置まで主搬送ライン3によって運ばれる。主搬送ライン3上に停止された検体ラック2はラック取込機構によりサンプリングエリア16内に移動され、次いでサンプル採取位置にて反応ディスク18上の反応容器にサンプルを分注する。
【0043】
必要なサンプル容器のすべてのサンプル採取を終えた検体ラック2は、ラック排出機構21により主搬送ライン3上に移載される。そして、検体ラック2は主搬送ライン3の出口直後にあるラック振分機構22まで搬送される。
【0044】
搬送された検体ラック2の検体ラック番号は記憶部34に記憶されている為、コントロール検体用ラック,標準試料用ラック、及び洗浄液用ラック等の再検査が不要な検体ラック2か、再検査の可能性のある検体ラック2かは制御部33により既に判断されている。
【0045】
検体ラック2は、その判断に基づいて制御部33の制御信号を受けたラック振分機構22により、再検査が不要で有ればラック引込機構28に移送され、ラック引込機構28によりラック収納部23入口に送られ、ラック押込機構29により検体ラック収納部23へ収納される。
【0046】
再検査の可能性が有る検体ラック2は、ラック待機部24へ運ばれ、再検査の要否が決定するまで待機する。
【0047】
第1の分析モジュール6または第2の分析モジュール14の測定結果と制御部33により再検査が必要と判断された検体ラック2は、ラック分配機構25にて搬出ライン26に移送される。
【0048】
そして、搬出ライン26にて帰還ライン30まで運ばれ、帰還ライン30出口に移送され、ラック戻し機構31により検体投入部1にある検体ラック2に優先して搬送ライン3に移載され、前述の手順で再び検査を行う。
【0049】
再検査が不要と判定された検体ラック2は、ラック分配機構25にて搬出ライン26に移送され、搬出ライン26にてラック引込機構28まで搬送され、ラック収納部23入口に引き込まれ、ラック押込機構29にてラック収納部23に収納される。
【0050】
第1回目の分析検査データ及び再検査の分析検査データは、表示部36に表示される。
【0051】
次に本発明の主要部に係る至急分注手段の実施例について、図2を引用して説明する。
【0052】
図2は、図1に示す自動分析装置の第1の分析モジュールのサンプリングエリア付近における検体ラック及び分注機構の構成ないし動作を説明するための図である。
【0053】
この至急分注手段は、第2の分析モジュールにも設けられる。
【0054】
第1の分析部モジュール6のサンプリングエリア8には、内部搬送ラインのガイドレール47が置かれ、図1に示したラック引込機構7、ラック排出機構13により、ガイドレール47への検体ラックの上げ下ろしが行われる。主搬送ライン3の前側には、ガイドレール43が置かれる。
【0055】
至急分注手段は、主搬送ライン3、ガイドレール43、分析モジュール6のサンプリングエリア8に近接するようにして設けられる。
【0056】
検体ラックが分析モジュール6に近接する主搬送ライン3に止められる停止機構100は、連結棒38、ラックストッパピン37、タイミングベルト39、ベルト駆動用モータ40、歯車機構41、歯車駆動用モータ42を有する。
【0057】
連結棒38は、主搬送ライン3に沿って延在するように置かれ、主搬送ライン3の下流側になる連結棒38の先端には、ラックストッパピン37が設けられる。連結棒38は主搬送ライン3の上流側になる先端に歯車機構41のラックが設けられる。
【0058】
歯車機構41のピニオンは歯車駆動用モータ42の回転軸に固定結合される。歯車駆動用モータ42の正回転/逆回転により、歯車機構41を介して連結棒38に動力が伝わる。この動力により、連結棒38は図示の点線・実線の方向(主搬送ライン3に沿う方向)に往復移動する。
【0059】
タイミングベルト39は、ベルト駆動用モータ40と、連結棒38に設けた回転作動歯車にかけわたされる。ベルト駆動用モータ40の正転/逆回転により、タイミングベルト39を介して連結棒38に回転動力が伝わる。この回転動力により、連結棒38は回転し、ラックストッパピン37は図示の矢印方向に回転作動する。
【0060】
ラックストッパピン37が主搬送ライン3側に倒されるように回動することにより、検体ラックは止められる。検体ラックの止め位置は主搬送ライン3の上流下流方向に歯車機構41の調整可能範囲で移動できる。
【0061】
至急分注手段の分注機構は、分析モジュール6内の分注を行う検体分注機構9と兼用にしている。兼用にすることに分注機構の複雑化を回避できる。検体分注機構9のアームが短いときは、少し長いアームにすることにより対応できる。
【0062】
至急分注手段の分注機構を兼ねた検体分注機構9はアームの先端にサンプリングヘッド45を有し、サンプリングヘッド45は垂下するサンプリングプルーブ44を有する。
【0063】
次に至急分注手段の分注機構について、動作の面から述べる。
【0064】
識別装置5で読み取られた検体ラックはガイドレール43の上を移動して主搬送ライン3のベルト上に載せられる。
【0065】
分析の緊急を要する検体ラックはベルト上をそのまま直進し、停止機構100のラックストッパピン37にあたって停止する。
【0066】
停止したあと検体分注機構9を移動させ、サンプリングヘッド45に取り付けられたサンプリングプローブ44を試料容器の中に挿入して試料を吸引し、プローブが上昇移動して反応ディスク10の反応容器に分注される。分注後サンプリングプローブ44は洗浄槽46に戻りプローブ内外の洗浄が行われる。
【0067】
検体ラック15は検体間隔の1ピッチずつ送る必要があり、連結棒38にてラックストッパピン37を間欠送りさせると同時に主搬送ライン3のベルトも回転して検体ラックがストッパピン37にあたった状態でベルト上を検体ラックがすべることにより検体ラックは正確に位置決めされる。
【0068】
連結棒38の送り移動は歯車機構41と歯車駆動用モータ42にて行われる。検体の分注が終わった検体ラックは次の場所へ移動する。
【0069】
この移動は回転タイミングベルト39をベルト駆動用モータ40にて回転させて連結棒38しいてはラックストッパピン37を90度回転させてラックを直進方向に開放し、主搬送ライン3のベルトを回転させて行う。
【0070】
次の停止位置の近くに検体ラックが到達したら、ラックストッパピン37を下げて同じように位置決めする。
【0071】
なお、検体ラックがラックストッパピン37で止められている際に主搬送ライン3のベルトの回転を継続させて検体ラックが主搬送ラインに対して相対移動するように停止させるようにすることも可能である。
【0072】
一方、緊急性を伴わない一般検体はガイドレール43の上を移動して主搬送ライン3のベルト上に載せられてラック取り込み位置まで移動した後、ラック取込機構7でシフト移動し、さらにガイドレール47上を移動してサンプリング位置に位置決めされる。
【0073】
それにサンプリングプローブ44が挿入され試料の反応ディスク10の反応容器への分注が行われる。
【0074】
したがって、サンプリングヘッド45の水平移動距離は至急検体と一般検体で異なる。分注がすべて終わったラックはガイドレール47上を再び移動し、さらにラック搬出機構13でシフト移動して主搬送ライン3のベルト上に載せられる。
【0075】
そして、ベルトが回転して次の分析モジュール(すぐ隣とは限らない)の搬入位置まで移動する。あるいはラック待機部24、あるいはラック収納部23まで送られる。
【0076】
このように、分析モジュール内に一旦引き込まれた検体ラックを主搬送ライン3に戻して分析モジュール間を移動させるようにすると、検体ラックの追い越しが出来るようになり、検体の処理スピードが格段に向上する。
【0077】
検体ラックをスムーズに流すには、主搬送ライン3には常に1ヶの検体ラックしか載せないようなルールにしておいたほうが良い。緊急検体が即座に分析可能となるからである。
【0078】
また、わざわざラック取込機構7やラック排出機構13を設けずに分析モジュール内の搬送ラインを主搬送ラインのように1本にしてやった方が構造が簡単でよい(図示は省略)と思われるが、そうすると一般検体の分析モジュール内での渋滞が頻繁に起き、分析の空きサイクルが多発して処理能力が大幅に低下しまう。
【0079】
検体ラックの追い越しは、多数モジュールが並んだ時には必須の機能である。このことは、高速道路の機能を考えてみるとよく想像がつく。
【0080】
一旦、一般車線と追い越し車線のどちらかの車線に入り込んで、その後の車線変更ができなかったら、一般車線が渋滞してしまうのは容易に想像がつく。
【0081】
また、単に2本の搬送ラインを併走させただけでは、検体ラックの渋滞は解消されない。車線変更が可能か、どうかが重要である。
【0082】
上述したように、緊急の分析が生じたときは、至急分注手段分析の停止機構で、分析の緊急を要する検体ラックを分析モジュールに近接する主搬送ラインに止め、分注機構で分注を行う。これにより、分析モジュール内が検体ラックで渋滞していても容易に緊急の分析に対処することができる。
【0083】
また、緊急の検体ラックを止めて分注を行うところは、既存の主搬送ラインを利用するだけなので、従来例で述べた至急検体を優先的に搬送する優先搬送ラインや検体ラックの入替をするラック移動手段を必要としないので、簡単な構成になる。
【0084】
また、ラック移動手段による緊急の検体ラックの入替も不要なので、迅速な分注ができる。
【0085】
上記実施例では緊急の検体ラックを主搬送ライン上で分注することに関して述べたが、これに加え、次のような時間情報を基にして主搬送ラインでの分注と、分析モジュール内での分注に分散化することも可能である。
【0086】
すなわち、主搬送ラインに投入される検体ラックを認識装置で認識して分析モジュール内で分注するか、主搬送ライン上で分注するかを決める。
【0087】
その判断決定は、前記認識装置が前記検体ラックの投入を認識した時点から前記判断までに経過した経過時間情報、あるいは分析結果を要求されている時刻情報に基づいてする。
【0088】
こうして、分注を分析モジュール内と主搬送ラインに分散化することにより、分析モジュール内搬送ラインの渋滞が緩和され、分析検査に費やす時間が短縮化される。
【0089】
図3は、上記分注の分散化を緊急性が高くない通常分析検査に対しても実施する実施例のフローを示したものである。
【0090】
ステップ301で、検体ラックの投入が検知され、分析結果報告要求時刻の入力が行われる。つづいて、検体番号が識別され(ステップ302)、分析する項目が認識される(ステップ303)。
【0091】
ステップ304で、分析モジュール内の搬送ライン上で分注した場合の分析結果報告予測時刻を予側する。
【0092】
そして、ステップ305で、分析結果報告要求時刻と分析結果報告予測時刻とを比較し、ステップ306で分析結果報告予測時刻が早いと判断されたら分析モジュール内の搬送ライン上で分注される(ステップ307)。
【0093】
逆にステップ306で分析結果報告予測時刻が早くないと判断されたら主搬送ライン上で分注される(ステップ308)。
【0094】
そして、分析モジュールの反応ディスクで分析が行われ(ステップ309)、分析結果報告(ステップ310)が行われる。
【0095】
こうして、通常分析検査の検体ラックに対しても時刻情報を基に分散化することにより、時刻要求に応じた分析検査報告の提供ができる。
【0096】
また、再検査をする検体ラックの分注は、主搬送ライン上で分注することにより、分析モジュール内で分注するものに比べ、再検査報告を早く提供できる。
【0097】
以上述べたように、本発明の実施例によれば、各分析モジュールに滞在する分析中の検体ラックあるいは分析準備中の検体ラックに影響されずに速やかに至急検体を搭載した検体ラックの分析開始が可能な自動分析装置を提供することができた。
【0098】
また、分析モジュール間の検体ラックの追い越しが出来るので分析モジュールへのラック搬送がスムーズに行われ、処理能力の維持をすることができる。特に、分析モジュールが3台〜6台と多数並んだときに威力を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明の実施例に係るもので、自動分析装置の全体構成を示す概略図である。
【図2】本発明の実施例に係るもので、第1分析モジュールのサンプリングエリア及び付近における検体ラック及び分注機構の動作を説明するための図である。
【図3】本発明の実施例に係るもので、主搬送ラインでの分注と分析モジュール内での分注をフローチャートで示す図である。
【符号の説明】
【0100】
1…ラック供給部、2…検体ラック、3…主搬送ライン、4…識別部、5…識別装置、6…第1分析部、7…ラック取込機構、15…緊急ラック、8,16…サンプリングエリア、9,17…検体分注機構、10,18…反応ディスク、11,19…試薬ディスク、12,20…試薬分注機構、13,21…ラック排出機構、14…第2分析部、22…ラック振分機構、23…ラック収納部、24…ラック待機部、25…ラック分配機構、26…搬出ライン、29…ラック押込機構、28…ラック引込機構、30…帰還ライン、31…ラック戻機構、32…緊急検体ラック投入部、33…制御部、34…記憶部、35…操作部、36…表示部、37…ラックストッパピン、38…連結棒、39…タイミングベルト、40…モータ、41…歯車機構、42…モータ、43…ガイドレール、44…サンプリングプローブ、45…サンプリングヘッド、46…サンプリングプローブ洗浄槽、47…ガイドレール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル容器を収容する検体ラックと、
前記検体ラックを搬送する主搬送ラインと、
前記主搬送ラインに沿って隣接配置され、主搬送ラインより前記検体ラックを引き込み、分析検査を終えた前記検体ラックを主搬送ラインに戻す単数または複数の分析モジュールを有する自動分析装置において、
分析を急ぐ至急検体の入るサンプル容器が収容されている前記検体ラックを前記分析モジュール内には引き込まずに分析モジュールに近接する主搬送ライン上に停止させ、至急検体の分注を行う至急分注手段を有することを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
サンプル容器を収容する検体ラックと、
前記検体ラックを搬送する主搬送ラインと、
前記主搬送ラインに沿って隣接配置され、主搬送ラインより前記検体ラックを引き込み、分析検査を終えた前記検体ラックを主搬送ラインに戻す単数または複数の分析モジュールを有する自動分析装置の分注方法において、
分析を急ぐ至急検体の入るサンプル容器が収容されている前記検体ラックを前記分析モジュール内には引き込まずに分析モジュールに近接する主搬送ライン上に停止させ、至急検体の分注を行うことを特徴とする自動分析装置の分注方法。
【請求項3】
請求項2記載の自動分析装置の分注方法において、
前記主搬送ラインに投入される前記検体ラックを認識する認識装置を有し、
前記分析モジュール内で分注するか、前記主搬送ライン上で分注するかの判断は、前記認識装置が前記検体ラックの投入を認識した時点から前記判断までに経過した経過時間情報、あるいは分析結果を要求されている時刻情報に基づいて決定されることを特徴とする自動分析装置の分注方法。
【請求項4】
請求項2記載の自動分析装置の分注方法において、
前記分析モジュール内で分注するか、前記主搬送ライン上で分注するかの判断は、
分析結果報告要求時刻と分析結果報告予測時刻とに基づいて決定されることを特徴とする自動分析装置の分注方法。
【請求項5】
請求項2記載の自動分析装置の分注方法において、
前記分析モジュール内での渋滞による遅れがあるときは、通常の検査対象の前記検体ラックを前記主搬送ライン上で止めて分注を実施することができることを特徴とする自動分析装置の分注方法。
【請求項6】
請求項2記載の自動分析装置の分注方法において、
前記至急検体の分注では、前記主搬送ラインの搬送運転が継続したまま前記検体ラックが主搬送ラインに対して相対移動するように停止していることを特徴とする自動分析装置の分注方法。
【請求項7】
請求項1記載の自動分析装置において、
前記至急分注手段は、前記主搬送ライン上に前記検体ラックを停止させる停止機構、分注機構を含むことを特徴とする自動分析装置。
【請求項8】
請求項7記載の自動分析装置において、
前記分注機構を前記分析モジュールに備わる分注機構を兼用することを特徴とする自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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