説明

自動分析装置

【課題】 自動分析装置の構成の複雑化及び大型化を防いで、恒温水の水質の安定化を図り、もって測定精度を向上させることを可能とする。
【解決手段】 試料を収容する試料容器17から吸引して、反応容器3内に吐出する分注を行うサンプル分注プローブ16と、試薬を収容する試薬容器6から吸引して、反応容器3内に吐出する分注を行う試薬分注プローブ14と、反応容器3を所定の添加剤を含んだ恒温水140を用いて所定の温度に保つ恒温槽120と、混合液130に含まれる所定の成分濃度を測定する測光部13と、を備え、サンプル分注プローブ16又は試薬分注プローブ14は、恒温水140を所定量吸引し、反応容器3内に吐出し、測光部13は、恒温水140に含まれる添加剤の濃度を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、液体に含まれている成分を分析する自動分析装置に係り、特に恒温槽に入っている恒温水の濃度を計測する機能を備えた自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置は生化学検査項目や免疫検査項目等を対象とし、被検体から採取された被検試料等の試料と各検査項目の試薬との混合液の反応によって生ずる色調や濁りの変化を、分光光度計や比濁計の測光部で光学的に測定することにより、試料中の検査項目成分の濃度や酵素の活性等で表される分析データを生成する。
【0003】
この自動分析装置では、被検試料毎に複数の検査項目の中から設定された検査対象の項目の分析を行う。測定の際、反応温度等の反応条件を一定にしたり、反応時間を短縮又は拡張する目的で、反応容器内の試料を人間の体温の約37℃に保つことが行われている。このような自動分析装置においては、混合液の吸光度等を測定する光が必ず恒温槽の中の恒温水を通過しているため、細菌の繁殖や、異物の混入により、恒温水に変質や変色が生ずるため、恒温水自体の光吸収係数が変化し、結果測定値に大幅な誤差を生ずることがあった。そのため、恒温槽中の恒温水には、水質を安定させるために、所定量の添加物が加えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−149954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、恒温水中の添加剤の濃度が所定量以下の場合、添加剤の効果が充分に発揮されない可能性がある。従来の添加剤の添加方式は、濃度に関係なく、一定量の添加剤が加えられるため、無駄な添加剤が恒温水に添加されるという問題がある。添加剤の濃度を測定するための装置を別途追加した場合、装置のコストが上昇し、装置のサイズも大きくする必要がある。
【0006】
実施形態は、前述の問題点を解決するためになされたもので、自動分析装置の構成の複雑化及び大型化を防いで、恒温水の水質の安定化を図り、もって測定精度を向上させることを可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、実施形態の自動分析装置は、試料と試薬を反応容器に分注して、その混合液を測定する自動分析装置において、前記試料を収容する試料容器から吸引して、前記反応容器内に吐出する分注を行う試料分注プローブと、前記試薬を収容する試薬容器から吸引して、前記反応容器内に吐出する分注を行う試薬分注プローブと、前記反応容器を所定の添加剤を含んだ恒温液を用いて所定の温度に保つ恒温槽と、前記混合液に含まれる所定の成分濃度を測定する測定手段と、を備え、前記試料分注プローブ又は前記試薬分注プローブは、前記恒温液を所定量吸引し、前記反応容器内に吐出し、前記測定手段は、前記恒温液に含まれる前記添加剤の濃度を測定することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施形態における自動分析装置の構成を示すブロック図。
【図2】実施形態における自動分析装置が備える分析部の構成を示す斜視図。
【図3】実施形態における恒温槽および反応容器の構成を示す概略図。
【図4】実施形態における自動分析装置において恒温槽内の恒温水に含まれる添加物の濃度を測定する動作を示すフローチャートである。
【図5】実施形態における自動分析装置において恒温槽内の恒温水に含まれる添加物の濃度を制御する動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
【0010】
まず、本実施形態における自動分析装置100の構成につき、図1乃至図3を用いて説明する。
【0011】
図1は、本実施形態における自動分析装置100の構成を示すブロック図である。この自動分析装置100は、各検査項目の標準試料や被検試料等の試料と各検査項目の分析に用いる試薬とを分注し、その混合液を測定して標準データや被検データを生成する分析部24と、分析部24の各ユニットを駆動して測定動作や、測定中以外のときに行う洗浄(測定外洗浄)動作の制御を行う分析制御部25とを備えている。
【0012】
また、自動分析装置100は、分析部24で生成された標準データや被検データを処理して検量データや分析データを生成するデータ処理部30と、データ処理部30で生成された検量データや分析データを印刷出力や表示出力する出力部40と、各種コマンド信号の入力等を行う操作部50と、分析制御部25、データ処理部30、及び出力部40を統括して制御するシステム制御部60とを備えている。
【0013】
図2は、本発明の実施例に係る自動分析装置100が備える分析部24の構成を示す斜視図である。この分析部24は、標準試料や、尿、全血、及び全血から分離された血清又は血漿等の各被検試料を収容する試料容器17と、この試料容器17を保持するサンプルディスク5と、標準試料や被検試料の各試料に含まれる検査項目の成分と反応する1試薬系及び2試薬系の第1試薬を収容する試薬容器6と、この試薬容器6を格納する試薬庫1と、この試薬庫1に格納された試薬容器6を回動可能に保持する試薬ラック1aと、2試薬系の第1試薬と対をなす第2試薬を収容する試薬容器7と、この試薬容器7を格納する試薬庫2と、この試薬庫2に格納された試薬容器7を回動可能に保持する試薬ラック2aと、円周上に配置された複数個(n個)の反応容器3を回転可能に保持する反応ディスク4とを備えている。
【0014】
また、サンプルディスク5に保持された試料容器17内の試料を吸引して反応容器3内へ吐出する分注を行うサンプル分注プローブ16と、サンプル分注プローブ16に試料の吸引及び吐出を行わせるサンプル分注ポンプ16aと、サンプル分注プローブ16を回動及び上下移動可能に保持するサンプル分注アーム10とを備えている。また、サンプル分注プローブ16を純水装置110の純水を洗浄水として用いて洗浄するプローブ洗浄部70と、サンプルディスク5に保持された試料容器17内の試料の液面から例えば1〜2mm程度の液面層をこの液面層とサンプル分注プローブ16の一端部との接触により検出する試料検出器16bとを備えている。
【0015】
また、試薬ラック1aに保持された試薬容器6内の第1試薬を吸引して試料が吐出された反応容器3内に吐出する分注を行う第1試薬分注プローブ14と、この第1試薬分注プローブ14を回動及び上下移動可能に保持する第1試薬分注アーム8と、第1試薬分注プローブ14を純水装置110の洗浄水を用いて洗浄するプローブ洗浄部80と、試薬ラック1aに保持された試薬容器6内の第1試薬の液面層をこの液面層と第1試薬分注プローブ14の一端部との接触により検出する第1試薬検出器14aとを備えている。
【0016】
また、反応容器3内に吐出された試料と第1試薬の混合液を撹拌する第1撹拌子18と、第1撹拌子18を回動及び上下移動可能に保持する第1撹拌アーム20と、混合液の撹拌終了毎に第1撹拌子18を純水装置110の洗浄水を用いて洗浄する洗浄槽18aとを備えている。
【0017】
また、試薬ラック2aに保持された試薬容器7内の第2試薬を吸引して第1試薬が吐出された反応容器3内に吐出する分注を行う第2試薬分注プローブ15と、この第2試薬分注プローブ15を回動及び上下移動可能に保持する第2試薬分注アーム9と、第2試薬分注プローブ15を純水装置110の洗浄水を用いて洗浄するプローブ洗浄部90と、試薬ラック2aに保持された試薬容器7内の第2試薬の液面層をこの液面層と第2試薬分注プローブ15の一端部との接触により検出する第2試薬検出器15aとを備えている。
【0018】
また、反応容器3内の試料、第1試薬、及び第2試薬の混合液を撹拌する第2撹拌子19と、第2撹拌子19を回動及び上下移動可能に保持する第2撹拌アーム21と、混合液の撹拌終了毎に第2撹拌子19を純水装置110の洗浄水を用いて洗浄する洗浄槽19aと、反応容器3内の混合液に光を照射して光学的に測定する測光部13と、測光部13で測定を終了した反応容器3内を洗浄水よりも洗浄力を有する洗剤を含有する洗浄液を用いて洗浄した後に純水装置110の洗浄水を用いて洗浄する反応容器洗浄ユニット12とを備えている。
【0019】
そして、測光部13は、回転移動して光路を横切る反応容器3に光を照射し、反応容器3内の混合液を透過した光を検査項目の波長毎に検出する。そして、検出した検出信号に基づいて、例えば吸光度データで表される標準データや被検データを生成し、生成した標準データや被検データをデータ処理部30に出力する。
【0020】
分析制御部25は、分析部24の各ユニットを駆動する機構を有する機構部26と、機構部26の各機構を制御して分析部24の各ユニットを作動させる制御部27とを備えている。そして、機構部26は、サンプルディスク5、試薬ラック1a、及び試薬ラック2aを夫々回動する機構、並びに反応ディスク4を回転する機構を備えている。また、サンプル分注アーム10、第1試薬分注アーム8、第2試薬分注アーム9、第1撹拌アーム20、及び第2撹拌アーム21を夫々回動及び上下移動する機構を備えている。また、反応容器洗浄ユニット12を上下移動する機構を備えている。また、サンプル分注ポンプ16aを吸引及び吐出駆動する機構、及びプローブ洗浄部70,80,90の各洗浄ユニットを駆動する機構を備えている。
【0021】
制御部27は、機構部26の各機構を制御する制御回路を備え、分析部24のサンプルディスク5、試薬ラック1a、試薬ラック2a、反応ディスク4、サンプル分注アーム10、第1試薬分注アーム8、第2試薬分注アーム9、第1撹拌アーム20、第2撹拌アーム21、反応容器洗浄ユニット12、及びサンプル分注ポンプ16a等の各ユニットや、プローブ洗浄部70,80,90の各ユニットを分析サイクル毎に作動させる。
【0022】
そして、制御部27は、サンプル分注アーム10を回動駆動する回動機構に上死点の高さでサンプル分注プローブ16を移動させ、サンプルディスク5、反応ディスク4、及びプローブ洗浄部70の上方に位置する各上停止位置で停止させる。また、サンプル分注アーム10を上下駆動する上下機構に下移動駆動パルスを供給して、サンプル分注プローブ16を各上停止位置から下に移動させる。そして、サンプルディスク5に保持された試料容器17内の試料の吸引が可能な吸引位置で停止させる。また、反応容器3内に試料を吐出の吐出が可能な吐出位置で停止させる。また、プローブ洗浄部70の洗浄が可能な洗浄位置で停止させる。
【0023】
図1に示したデータ処理部30は、分析部24の測光部13から出力された標準データや被検データを処理して各検査項目の検量データや分析データを生成する演算部31と、演算部31で生成された標準データや分析データを保存するデータ記憶部32とを備えている。
【0024】
演算部31は、測光部13から出力された標準データ及びこの標準データの標準試料に対して予め設定された標準値から、標準値と標準データの関係を表す検量データを検査項目毎に生成し、生成した検量データを出力部40に出力すると共にデータ記憶部32に保存する。
【0025】
また、測光部13から出力された被検データに対応する検査項目の検量データをデータ記憶部32から読み出す。そして、読み出した検量データを用いて測光部13より出力された被検データから、濃度値や活性値で表される分析データを生成する。そして、生成した分析データを出力部40に出力すると共にデータ記憶部32に保存する。
【0026】
データ記憶部32は、ハードディスク等のメモリデバイスを備え、演算部31から出力された検量データを検査項目毎に保存する。また、演算部31から出力された各検査項目の分析データを被検試料毎に保存する。
【0027】
出力部40は、データ処理部30の演算部31から出力された検量データや分析データを印刷出力する印刷部41及び表示出力する表示部42を備えている。そして、印刷部41は、プリンタなどを備え、演算部31から出力された検量データや分析データを予め設定されたフォーマットに従って、プリンタ用紙などに印刷する。
【0028】
表示部42は、CRTや液晶パネルなどのモニタを備え、演算部31から出力された検量データや分析データを表示する。また、自動分析装置100で分析可能な検査項目の分析パラメータである例えば反応容器3内に吐出させる試料量及び試薬量や試料容器17内の試料を吸引させる吸引位置等の設定を行う分析パラメータ設定画面、及びこの分析パラメータ設定画面で設定された検査項目の分析に用いる試薬の情報を設定するための試薬情報設定画面を表示する。また、測定外洗浄を行わせる洗浄条件である分析部24の試料や試薬に接触する分析ユニットを設定するための測定外洗浄条件設定画面を表示する。
【0029】
操作部50は、キーボード、マウス、ボタン、タッチキーパネルなどの入力デバイスを備え、検査項目毎の分析パラメータ、試薬情報、洗浄条件等を設定するための入力操作を行う。
【0030】
システム制御部60は、CPU及び記憶回路を備え、操作部50からの設定操作により入力された各検査項目の分析パラメータ、試薬情報、洗浄条件等の入力情報を記憶回路に記憶した後、これらの入力情報に基づいて、分析制御部25、データ処理部30、及び出力部40を統括してシステム全体を制御する。
【0031】
ここで、反応容器3内の混合液を所定の温度に保つために設けられる恒温槽120について説明する。
【0032】
図3は自動分析装置100における恒温槽120内部の構造を示した概略図である。恒温槽120内部に配置された反応容器3内部の混合液130を所定の温度にするため、恒温槽120内部はヒーター(図示しない)により所定の温度に保たれた恒温水140で満たされている。恒温槽120内の恒温水140は、恒温水供給排出部150によって供給および排出が行われる。混合液130の吸光度測定を行う時、測定に用いられる光は恒温水140を通過する。恒温水140が所定の吸光度以上の場合、混合液130の吸光度を測定することは困難となる。恒温水140は微生物(菌類、細菌類)が繁殖しやすい温度(20℃〜40℃程度)であり、また恒温を保つために頻繁に交換を行えないため、微生物が繁殖しやすい環境となっている。微生物が大量に繁殖した場合、恒温水140の吸光度が増加し混合液130の測定に悪影響を与える。そのため恒温水140に添加剤を加えることで微生物の繁殖を抑制し、恒温水140の吸光度を所定の値以下にする方式が用いられる。現在の添加剤を追加する方式は、恒温水140に所定の量の添加剤を加えるというもので、元の添加剤の濃度を考慮していないため、過分の添加剤を加える可能性があった。本発明は、恒温水140内の添加剤の濃度を測定し、濃度の制御を行なうことで、恒温水140の安定化と過分な添加剤の追加を回避する添加剤濃度の管理方法である。
【0033】
ここで、恒温水140に添加される添加剤の濃度の測定方法について詳しく説明する。
【0034】
反応ディスク4の上部で、尚且つ第1試薬分注プローブ14の回転軌道上に、恒温槽120に収められている恒温水140を分注するための分注孔4aが設けられている。第1試薬分注プローブ14は、この分注孔4aより恒温水140を適量吸引し、反応容器3へ吐出する。
【0035】
次に、第1試薬分注プローブ14は、先ほど反応容器3に分注した恒温水140中の添加剤成分に対し、変色反応を行う添加剤濃度測定用の試薬を、試薬庫1から吸引し、恒温水140を保持している反応容器3に吐出する。恒温水140に添加されている添加剤が、酸性で銅イオンを成分としているものである場合、アンモニアや水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ溶液と反応させることで銅イオンを発生させ、混合液130を緑色に変色させる。
【0036】
このように、混合液130を変色させた後、測光部13は恒温水140を保持している反応容器3に光を照射し、反応容器3内の恒温水140の濃度を測定する。
【0037】
具体的には、例えば、酸性の添加剤にアルカリ性試薬を加えることで発生する変色反応による吸光度の変化を測定するために、赤色〜緑色を吸光する銅イオンの場合、測定波長としては、赤色〜緑色(500nm乃至740nm程度)とする。
【0038】
そして、測光部13により得られた恒温水140内の所望の添加剤の吸光度データはデータ処理部30へ送られ、データ処理部30の演算部31は、添加剤の濃度データを生成し、データ記憶部32に保存する。
【0039】
制御部27は、生成された添加剤の濃度データと、あらかじめ設定されている添加剤の効果が発揮される添加剤の濃度範囲とを比較し、恒温水140の添加剤濃度が、その濃度範囲内にない場合、制御部27は、添加剤の濃度を濃度範囲内に収まるよう制御を行う。例えば、添加剤の濃度が、濃度範囲外であり且つ濃度範囲の下限値よりも添加剤濃度が下回る場合には、制御部27は添加剤の濃度が低すぎる旨の通知を表示画面に表示するよう、表示部42を制御する。表示部42の表示画面に表示されたこの通知内容には、適正な濃度範囲に恒温水140の添加剤濃度を戻すために必要な添加剤の量に関する情報を含んでおり、オペレータは、その情報に基づいて添加剤を恒温水140の中に投入する。また、添加剤の濃度が濃度範囲外であり且つ濃度範囲の上限値を上回る場合には、制御部27は恒温水供給排出部150に供給する純水の量を通知し、恒温水供給排出部150は、通知された量の純水を供給する。
【0040】
尚、前述の構成では、恒温水140の添加剤濃度があらかじめ設定されている添加剤の効果が発揮される添加剤の濃度範囲にない場合、オペレータの操作により、添加剤を恒温水140の中に投入しているが、本実施形態はそれに限定されない。例えば添加剤を自動で恒温水140の中に投入する投入ユニットが自動分析装置100に備えられており、制御部27が生成された添加剤の濃度データと、あらかじめ設定されている添加剤の効果が発揮される添加剤の濃度範囲とを比較し、恒温水140の添加剤濃度が、その濃度範囲内にない場合、制御部27は恒温槽120に収められている恒温水140があらかじめ設定されている添加剤の効果が発揮される添加剤の濃度範囲に含まれるために必要な添加剤の量を算出し、その分の添加剤を追加するよう、前述の投入ユニットに指示し、投入ユニットはその指示に基づいて添加剤の追加投入を実施してもよい。このような構成にすることで恒温水140の添加物濃度の自動調整を行うことが可能となる。
【0041】
尚、本実施例においては、前述のような方法以外にも、BTB溶液や、ハーブティーの一種であるマローブルーの花びらに含まれる成分であるアントシアニンのような、酸性・アルカリ性の指示薬を用いて、恒温水140のPHを測定する方法を用いてもよい。
【0042】
また、恒温水140の添加剤濃度が適正濃度範囲の下限値を下回る場合に恒温水140に添加剤を投入する際、オペレータがマニュアルで添加剤の投入を行うと、添加剤の量に誤差が生じやすくなる。そこで恒温槽120には、制御部27に制御された添加剤投入部160が設けられ、オペレータが操作部50によって入力された設定量だけ、恒温槽120の恒温水140中に投入するようにしてもよい。
【0043】
また、本実施例においては、恒温水140および添加剤濃度測定用の試薬を反応容器3に分注する方法として、第1試薬分注プローブ14を用い、また添加剤濃度測定用の試薬を保管する場所として、試薬庫1を用いているが、本願発明はそれに限らない。例えば、本実施例における第2試薬分注プローブ15を恒温水140および添加剤濃度測定用の試薬を反応容器3に分注する際に用い、また添加剤濃度測定用の試薬を保管する場所として、試薬庫2を用いてもよい。その際、恒温槽120に収められている恒温水140を分注するための分注孔4aは、反応ディスク4の上部で、尚且つ第2試薬分注プローブ15の回転軌道上に設けることとする。
【0044】
以上のように構成された自動分析装置100に関して、恒温槽120に保持されている恒温水140の添加剤濃度の測定に関する動作の一例を、図1乃至図5を参照して説明する。
【0045】
図4は、本発明の実施例に係る自動分析装置100において、恒温水140に含まれる添加剤濃度の測定動作を示すフローチャートである(図4中のステップS11)。
【0046】
測定を開始する前、測定を完了した後、恒温水140を追加する前、恒温水140を追加した後、添加剤を追加する前、添加剤を追加した後、所定の時間毎、オペレータが濃度管理要求を出した時、自動分析装置100は、恒温水140内の添加剤濃度測定を開始する(図4中のステップS12)。
【0047】
第1試薬分注プローブは、反応ディスク4の上部に設けられた恒温水分注用の分注孔4aより、恒温水140を適量吸引し、反応容器3へ吐出する。(図4中のステップS13)。
【0048】
測光部13は、恒温水140に光を照射し、透過した光を受けることで、吸光度測定を行う(図4中のステップS14)。
【0049】
吸光度が所定の値以上の場合(Yesの場合)、恒温水140が混合液130の吸光度測定に影響を与えるため、制御部27はオペレータに対して恒温水の吸光度が所定の範囲を超えており、吸光度測定に影響を及ぼす状態である旨の通知を表示するよう表示部42に指示し、また制御部27は、各ユニットへ、恒温水140内の添加剤濃度測定を終了するよう指示し、測定が終了する(図4中のステップS15)。
【0050】
吸光度が所定の値以下の場合(Noの場合)、第1試薬分注プローブ14は、反応容器3に分注した恒温水140に対し、変色反応を行うよう、試薬を試薬庫1から吸引し、恒温水140を保持している反応容器3に吐出する。(図4中のステップS16)。
【0051】
次に、測光部13は、恒温水140と試薬の混合液130に光を照射し、反応容器3内の恒温水140の濃度を測定する。測光部13により得られた恒温水140内の所望の添加剤の吸光度データは、データ処理部30に送られ、データ処理部30の演算部31は、添加剤の濃度データを生成し、データ記憶部32に保存する(図4中のステップS17)。
【0052】
制御部27は、生成された添加剤の濃度が濃度範囲内である場合(Yesの場合)、添加剤濃度の測定を終了する(図4中のステップS18)。
【0053】
恒温水140の添加剤濃度が、その濃度範囲内にない場合(Noの場合)、その旨の通知を表示するよう表示部42に指示するとともに、制御部27は添加剤の濃度を濃度範囲内に収まるよう制御を行う。
【0054】
次に、前述の恒温水140の添加剤濃度の制御動作について図5を用いて説明を行う。
【0055】
図5は、本発明の実施例に係る自動分析装置100において、恒温水140に含まれる添加剤濃度の測定動作を示すフローチャートである(図5中のステップS21)。
【0056】
前述のとおり、恒温水140中の添加剤濃度が所定の濃度範囲外である場合、制御部27は恒温水140の添加剤濃度の制御を開始する(図5中のステップS22)。
【0057】
添加剤濃度が濃度範囲の上限値よりも添加剤濃度が上回る場合、制御部27は恒温水供給排出部160へ、恒温槽120へ供給する恒温水140の量を通知し、恒温水供給排出部160は通知された量の恒温水140を供給する(図5中のステップS23)。
【0058】
添加剤濃度が、濃度範囲の上限値よりも添加剤濃度が下回る場合、制御部27は添加剤の濃度が低すぎる旨の通知を表示画面に表示するよう、表示部42へ指示する(図5中のステップS24)。
【0059】
図5中のステップS22において恒温水の追加が行われ、又は図5中のステップS23において添加剤の追加がオペレータによって行われた後、その旨をオペレータが操作部50を用いて制御部27へ通知されると、図4中のステップS16の動作が再度測光部13において行われ、反応容器3内の恒温水140の濃度が所定の濃度範囲内に収まっているか、再度判定される。そこで、所定の濃度範囲内に収まっていれば、添加剤濃度の測定を終了する。
【0060】
以上述べた本実施形態によれば、恒温水140内の添加剤濃度を測定することで、自動分析装置100の構成の複雑化及び大型化を防いで恒温水140の水質の安定化を図り、もって測定精度を向上させることが可能となる。
【0061】
また、恒温水140に添加する添加剤を、必要な時に必要な量だけ使用することができるので、添加剤の無駄な添加を回避することが可能となる。
【符号の説明】
【0062】
100 自動分析装置
1、2 試薬庫
3 反応容器
4 反応ディスク
4a 分注孔
5 サンプルディスク
6、7 試薬容器
8 第1試薬分注アーム
9 第2試薬分注アーム
10 サンプル分注アーム
12 反応容器洗浄ユニット
13 測光部
14 第1試薬分注プローブ
15 第2試薬分注プローブ
16 サンプル分注プローブ
17 試料容器
18 第1攪拌子
19 第2攪拌子
20 第1攪拌アーム
21 第2攪拌アーム
24 分析部
25 分析制御部
26 機構部
27 制御部
30 データ処理部
31 演算部
32 データ記憶部
40 出力部
41 印刷部
42 表示部
50 操作部
60 システム制御部
70、80、90 プローブ洗浄部
110 純水装置
120 恒温槽
130 混合液
140 恒温水
150 恒温水供給排出部
160 添加剤投入部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料と試薬を反応容器に分注して、その混合液を測定する自動分析装置において、
前記試料を収容する試料容器から吸引して、前記反応容器内に吐出する分注を行う試料分注プローブと、
前記試薬を収容する試薬容器から吸引して、前記反応容器内に吐出する分注を行う試薬分注プローブと、
前記反応容器を所定の添加剤を含んだ恒温液を用いて所定の温度に保つ恒温槽と、
前記混合液に含まれる所定の成分濃度を測定する測定手段と、を備え、
前記試料分注プローブ又は前記試薬分注プローブは、前記恒温液を所定量吸引し、前記反応容器内に吐出し、
前記測定手段は、前記恒温液に含まれる前記添加剤の濃度を測定することを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
前記添加剤の所定の濃度範囲を記憶する記憶手段と、
前記測定手段により測定された前記恒温液に含まれる前記添加剤の濃度と、前記濃度範囲とを比較し、前記添加剤の濃度が前記濃度範囲外である場合、前記添加剤の濃度を制御する制御手段、と
を備えることを特徴とする請求項1記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記添加剤の濃度が前記濃度範囲の上限を上回る場合、恒温液供給手段に前記恒温槽内に前記恒温液を所定量供給させることを特徴とする請求項2記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記添加剤の濃度が前記濃度範囲の下限を下回る場合、表示手段に、前記添加剤を前記恒温槽内の前記恒温液を追加する旨の表示を行わせることを特徴とする請求項2記載の自動分析装置。
【請求項5】
前記添加剤が、銅イオンを含んでいる場合、前記測定手段は、前記添加剤に対して500nm乃至740nm程度の測定波長を用いることを特徴とする請求項1乃至請求項4記載の自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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