自動合焦機構および顕微鏡装置
【課題】標本に対して精度よく焦点合わせする。
【解決手段】カバーガラス5付きの標本Aに照射される照明光をライン状に集光する照明光学系11と、ライン状に集光された照明光を標本Aに照射し、カバーガラス5からの反射光を集光する対物レンズ13と、対物レンズ13により集光された反射光の光軸に対して傾斜して配置された撮像面36を有し、反射光を撮影して画像情報を検出する検出部15と、検出部15により検出された画像情報における光強度の最も高い位置が反射光の光軸上に位置するように、対物レンズ13とカバーガラス5付きの標本とを光軸方向に相対移動させる合焦調節部17とを備える自動合焦機構10を提供する。
【解決手段】カバーガラス5付きの標本Aに照射される照明光をライン状に集光する照明光学系11と、ライン状に集光された照明光を標本Aに照射し、カバーガラス5からの反射光を集光する対物レンズ13と、対物レンズ13により集光された反射光の光軸に対して傾斜して配置された撮像面36を有し、反射光を撮影して画像情報を検出する検出部15と、検出部15により検出された画像情報における光強度の最も高い位置が反射光の光軸上に位置するように、対物レンズ13とカバーガラス5付きの標本とを光軸方向に相対移動させる合焦調節部17とを備える自動合焦機構10を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動合焦機構および顕微鏡装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、標本のデジタル画像を取得し、モニタ上にその倍率や観察位置を変えて表示することにより、模擬的に顕微鏡観察を行うバーチャルスライド顕微鏡装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。バーチャルスライド顕微鏡装置によれば、対物レンズの光軸に対して直交する方向にステージを移動させながら複数の画像を取得し、これらの画像を繋ぎ合せることにより、スライドガラスのように顕微鏡装置の観察範囲より大きい標本を観察することができるが、顕微鏡周辺の環境変化によるフォーカスドリフトや、標本自身の傾き等により、対物レンズの焦点位置がずれ画質が劣化するという問題がある。特許文献1に記載の顕微鏡装置は、対物レンズの光軸に対して傾けて配置したカメラにより標本の画像の取得し、この画像の解析結果に基づいて対物レンズの焦点位置を制御することとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2005/114293号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の顕微鏡装置は、画像処理により標本の画像のコントラストが高い位置を対物レンズの焦点位置として検出するため、透明な標本や標本から外れた部分では対物レンズの焦点位置を検出することができないという問題がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、標本に対して精度よく焦点合わせすることができる自動合焦機構および顕微鏡装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明は、カバーガラス付きの標本に照射される照明光をライン状に集光する照明光学系と、前記ライン状に集光された照明光を前記標本に照射し、前記カバーガラスからの反射光を集光する対物レンズと、該対物レンズにより集光された前記反射光の光軸に対して傾斜して配置された撮像面を有し、前記反射光を撮影して画像情報を検出する検出部と、該検出部により検出された前記画像情報における光強度の最も高い位置が前記光軸上に位置するように、前記対物レンズと前記カバーガラス付きの標本とを前記光軸方向に相対移動させる合焦調節部とを備える自動合焦機構を提供する。
【0007】
本発明によれば、対物レンズにより照明光がカバーガラス付きの標本に照射されると、検出部の撮像面によりカバーガラスからの反射光が撮影される。この場合において、ライン状の照明光が照射されたカバーガラスからの反射光の光軸に対し、撮像面を傾斜して配置することで、撮像面に入射される反射光の分布は撮像面の傾きに沿って変化することとなる。
【0008】
すなわち、合焦状態においては、反射光の光束における光軸上の集光位置が撮像面に一致し、光軸から離れるに従い集光位置からずれて撮像面に入射される。したがって、画像情報における光強度が反射光の光軸上で最も高くなり、光軸から離れるに従いその光強度は低くなる。また、対物レンズの焦点位置が光軸方向に変動すると、反射光の光束における光軸から離れた集光位置が撮像面に一致する。したがって、画像情報における光強度の最も高い位置が反射光の光軸からずれる。
【0009】
本発明は、合焦調節部により、画像情報における光強度の最も高い位置が反射光の光軸上に一致するように、対物レンズとカバーガラス付きの標本とを光軸方向に相対移動させることで、標本に対して精度よく焦点合わせすることができる。
【0010】
本発明は、カバーガラス付きの標本に照射される照明光をライン状に集光する照明光学系と、前記ライン状に集光された照明光を前記標本に照射し、前記カバーガラスからの反射光を集光する対物レンズと、該対物レンズにより集光された前記反射光の光軸に対して傾斜して配置された撮像面を有し、前記反射光を撮影して画像情報を検出する検出部と、該検出部により検出された前記画像情報における光強度の最も高い位置が前記光軸上から所定の距離だけ離れるように、前記対物レンズと前記カバーガラス付きの標本とを前記光軸方向に相対移動させる合焦調節部とを備える自動合焦機構を提供する。
【0011】
本発明によれば、合焦調節部の作動により、敢えて画像情報における光強度の最も高い位置が光軸上から所定の距離だけ離れるように、対物レンズとカバーガラス付きの標本とを光軸方向に相対移動させることで、標本の深部等、カバーガラスから光軸方向に離れた位置にある標本の部位に合焦位置を合わせることができる。
【0012】
上記発明においては、前記検出部の撮像面が前記反射光の光束の短軸回りに傾斜していることとしてもよい。
【0013】
このように構成することで、検出部の撮像面に入射される反射光の光路長が光束のライン方向に沿って異なるため、対物レンズの焦点位置が光軸方向に変動すると、画像情報における光強度の最も高い位置が反射光の光束のライン方向に移動する。したがって、画像情報における光強度の最も高い位置と反射光の光軸とをそのライン方向に一致させるだけで、標本に対して容易に焦点合わせすることができる。
【0014】
また、上記発明においては、前記反射光の光軸に対する前記撮像面の傾きが以下の式を満たすこととしてもよい。
{(p×tanθ)/β2}<{(1.2×λ)/NA2}
ここで、p:撮像面を構成する受光素子の長さ(μm)
θ:反射光の光軸に対する撮像面の傾き(rad)
β:装置全体の撮像倍率(倍)
NA:対物レンズの開口数
λ:光源の波長(μm)
【0015】
検出部における反射光の光軸方向の分解能((p×tanθ)/β2(μm))を対物レンズの焦点深度((1.2×λ)/NA2)よりも小さくすることで、対物レンズの焦点位置を精度よく調節することができる。
【0016】
また、上記発明においては、前記合焦調節部が、以下の式により前記対物レンズと前記標本との相対移動量を設定することとしてもよい。
(a×p×tanθ)/β2
ここで、a:撮像面に入射される反射光の光束の中心から撮像面における中心の画素までの画素数
【0017】
カバーガラス付きの標本上での実際の焦点位置のずれ量は、撮像面上での反射光の光軸方向のピントずれ量(a×p×tanθ)を装置全体の撮像倍率(β)の2乗で除算した値となる。したがって、このように構成することで、少ない調節回数により標本に対して焦点合わせすることができる。
【0018】
また、上記発明においては、前記カバーガラス付きの標本に対する前記撮像面の傾きが一定の角度となるように、前記カバーガラス付きの標本の傾きを調節する傾き調節部を備えることとしてもよい。
【0019】
検出部の撮像面に対するカバーガラス付きの標本の傾きが小さくなると、撮像面に入射される反射光の分布の変化が小さくなる。すなわち、画像情報における光強度の差が低減する。一方、撮像面に対するカバーガラス付きの標本の傾きが大きくなると、像面に入射される反射光の分布の変化が大きくなる。すなわち、画像情報における光強度の差が増大する。したがって、このように構成することで、傾き調節部の作動により、所望の反射光分布の画像情報を取得することができる。
【0020】
本発明は、上記いずれかの自動合焦機構と、前記標本を載置し、前記光軸方向に移動可能なステージと、前記検出部により取得された前記画像情報に基づいて前記標本の画像を取得する画像取得部とを備える顕微鏡装置を提供する。
【0021】
本発明によれば、精度よく焦点合わせされた状態で、標本の画像を取得することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る自動合焦機構によれば、標本に対して精度よく焦点合わせすることができるという効果を奏する。また、本発明に係る顕微鏡装置によれば、精度よく焦点合わせされた状態で標本の画像を取得することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】(a)は本発明の一実施形態に係る顕微鏡装置の一部を示す図であり、(b)は(a)含む顕微鏡装置をシリンドリカルレンズのパワーがある方向から見た図である。
【図2】(a)合焦時に反射光の光束におけるライン方向の中心が撮像面に入射される様子を示し、(b)は反射光の光束におけるライン方向の一端側が撮像面に入射される様子を示し、(c)は反射光の光束におけるライン方向の他端側が撮像面に入射される様子を示す図である。
【図3】合焦時の撮像面上の反射光分布を示す図である。
【図4】(a)はカバーガラスの手前側で照明光が集光する様子を示し、(b)は(a)のときのカバーガラスから反射光が反射される様子を示している。
【図5】照明光の焦点位置がカバーガラスの手前にある場合の撮像面上の反射光分布を示す図である。
【図6】(a)対物レンズの焦点位置がカバーガラスよりも手前側にある場合に反射光の光束におけるライン方向の中心が撮像面に入射される様子を示し、(b)は同じく反射光の光束におけるライン方向の一端側が撮像面に入射される様子を示し、(c)は同じく反射光の光束におけるライン方向の他端側が撮像面に入射される様子を示す図である。
【図7】(a)はカバーガラスの奥行き側で照明光が集光する様子を示し、(b)は(a)のときのカバーガラスから反射光が反射される様子を示している。
【図8】照明光の焦点位置がカバーガラスの奥行き側にある場合の撮像面上の反射光分布を示す図である。
【図9】(a)は対物レンズの焦点位置がカバーガラスよりも奥行き側にある場合に反射光の光束におけるライン方向の中心が撮像面に入射される様子を示し、(b)は同じく反射光の光束におけるライン方向の一端側が撮像面に入射される様子を示し、(c)は同じく反射光の光束におけるライン方向の他端側が撮像面に入射される様子を示す図である。
【図10】本発明の一実施形態に係る自動合焦機構により標本に焦点合わせする工程を示すフローチャートである。
【図11】反射光のライン方向に並んで配置される2つの受光素子により構成される撮像面を示す図である。
【図12】(a)はカバーガラスの奥行き側で照明光を集光させる様子を示し、(b)は(a)の場合の撮像面上の反射光分布を示す図である。
【図13】(a)はカバーガラスの表面で照明光を集光させる様子を示し、(b)は(a)の場合の撮像面上の反射光分布を示す図である。
【図14】本発明の一実施形態の第1の変形例に係る顕微鏡装置のカバーガラスに対する撮像面の傾きが小さいときの撮像面上の反射光分布を示す図である。
【図15】本発明の一実施形態の第1の変形例に係る顕微鏡装置のカバーガラスに対する撮像面の傾きが大きいときの撮像面上の反射光分布を示す図である。
【図16】(a)は本発明の一実施形態の第2の変形例に係る顕微鏡装置の一部を示す図であり、(b)は(a)を含む顕微鏡装置をシリンドリカルレンズのパワーがある方向から見た図である。
【図17】図16の顕微鏡装置による合焦時における撮像面上の反射光分布を示す図である。
【図18】(a)は合焦時の反射光の光束におけるライン方向の中心が撮像面に入射される様子を示し、(b)は同じく反射光の光束におけるライン方向の一端側が撮像面に入射される様子を示し、(c)は同じく反射光の光束におけるライン方向の他端側撮像面に入射される様子を示す図である。
【図19】(a)は対物レンズの焦点位置がカバーガラスよりも手前側にある場合に反射光の光束におけるライン方向の中心が撮像面に入射される様子を示し、(b)は(a)のときの撮像面上の反射光分布を示す図である。
【図20】(a)は対物レンズの焦点位置がカバーガラスよりも奥行き側にある場合に反射光の光束におけるライン方向の中心が撮像面に入射される様子を示し、(b)は(a)のときの撮像面上の反射光分布を示す図である。
【図21】反射光のライン方向に直交する方向に並んで配置される2つの受光素子により構成される撮像面を示す図である。
【図22】(a)は照明光の光軸に対してカバーガラスが傾いている様子を示し、(b)は(a)のときの撮像面上の反射光分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の一実施形態に係る自動合焦機構および顕微鏡装置について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る顕微鏡装置100は、図1(a),(b)に示されるように、標本Aを載置するステージ1と、照明光を発する光源3と、標本Aの合焦調節を行う自動合焦機構10と、標本Aの画像を取得する観察光学系50とを備えている。
図1(a)は、図1(b)の一部をシリンドリカルレンズ23のパワーがない方向から見た図である。
【0025】
標本Aは、ステージ1上に載置し、薄板状のカバーガラス5により覆うこととする。
ステージ1は、ステージ駆動部2により、照明光の光軸方向および照明光に直交する方向に移動可能となっている。
光源3は、例えば、水銀ランプ、ハロゲンランプ、タングステンランプ、レーザ光源、LED、または、LD等を用いることができる。
【0026】
自動合焦機構10は、光源3から発せられた照明光をライン状に集光する照明光学系11と、ライン状に集光された照明光を標本Aに照射し、カバーガラス5からの反射光を集光する対物レンズ13と、対物レンズ13により集光された反射光を撮影し画像情報を検出する検出部15と、検出部15により検出された画像情報に基づいて対物レンズ13の焦点位置を調節する合焦調節部17とを備えている。
【0027】
照明光学系11は、光源3から射出された照明光を略平行光にするコリメートレンズ21と、略平行光となった照明光をライン状に集光するシリンドリカルレンズ(線状集光素子)23と、シリンドリカルレンズ23の集光位置に配置されたスリット25と、スリット25と標本A面が共役関係になるように、スリット25を通過した照明光を対物レンズ13の入射瞳位置に平行に投影するリレーレンズ27と、所定の波長帯域の光のみを透過させる励起フィルタ29と、励起フィルタ29を通過した照明光および対物レンズ13により集光された反射光を反射するダイクロイックミラー31とを備えている。
【0028】
スリット25は、標本Aおよびカバーガラス5から戻る戻り光に対しては、カバーガラス5からの反射光のみ通過させるようになっている。これにより、回折光等による測定に不要な光の影響を低減し、対物レンズ13の焦点位置を精度よく調節することができる。
【0029】
検出部15は、光源3から発せられコリメートレンズ21を通過した照明光を反射する一方、カバーガラス5からダイクロイックミラー31を介して光路を逆方向に戻る反射光を透過させるビームスプリッタ33と、ビームスプリッタ33を透過した反射光を集光するシリンドリカルレンズ35と、シリンドリカルレンズ35により集光された反射光を撮影することにより画像情報を検出するCCDカメラやCMOSカメラ等のような光検出器37とを備えている。
【0030】
光検出器37は標本Aと共役な位置に配置されている。この光検出器37は、複数(3以上)の受光素子からなる撮像面36(図3参照)を備えており、検出した画像情報に基づいて2次元的な反射光画像を取得するようになっている。撮像面36には、標本A上にライン状に集光される照明光に対応して、略ライン状の反射光が入射されることとなる。この撮像面36は、反射光の光軸に対してその光束の短軸回りに傾斜して配置されている。
【0031】
例えば、反射光の光軸に対する撮像面36の傾きは、以下の式(1)を満たすようになっている。
{(p×tanθ)/β2}<{(1.2×λ)/NA2}・・・(1)
好ましくは、{(p×tanθ)/β2}<{(1.2×λ)/NA2/5}
ここで、p:撮像面36を構成する受光素子の長さ(μm)
θ:反射光の光軸に対する撮像面36の傾き(rad)
β:自動合焦機構10全体の撮像倍率(倍)
NA:対物レンズ13の開口数
λ:光源3の波長(μm)
撮像面36の傾きが上記式(1)を満たすことで、すなわち、光検出部15における反射光の光軸方向の分解能{(p×tanθ)/β2}を対物レンズ13の焦点深度{(1.2×λ)/NA2}よりも小さくすることで、対物レンズ13の焦点位置を精度よく調節することができる。
【0032】
合焦調節部17は、対物レンズ13を光軸方向に移動させるピエゾアクチュエータ41と、光検出器37により取得された反射光画像に基づいて、対物レンズ13の焦点位置が標本Aに一致しているか否かを判別する合焦判別部43と、合焦判別部43により一致していないと判別された場合に、ピエゾアクチュエータ41を駆動制御して対物レンズ13の光軸方向の位置を調節するピエゾ駆動部45とを備えている。
【0033】
合焦判別部43は、画像情報における光強度の最も高い位置が反射光の光軸上にある場合、例えば、反射光画像において反射光の集光点がその光軸上にある場合は、対物レンズ13の焦点位置が標本Aに一致していると判別し、画像情報における光強度の最も高い位置が反射光の光軸からずれている場合、例えば、反射光画像において反射光の集光点がその光軸からずれている場合は、対物レンズ13の焦点位置が標本Aに一致していないと判別するようになっている。
【0034】
ピエゾ駆動部45は、例えば、以下の式(2)により、対物レンズ13の光軸方向の移動量Lを設定するようになっている。
L=(a×p×tanθ)/β2・・・(2)
ここで、a:撮像面36に入射される反射光の光束の中心(すなわち、反射光画像における反射光の集光位置)から撮像面36における中心の受光素子までの画素数
標本位置での実際のピントずれ量は、撮像面36上での光軸方向のピントずれ量(a×p×tanθ)を自動合焦機構10全体の撮像倍率(β)の2乗で除算した値となる。したがって、対物レンズ13の光軸方向の移動量Lを上記式(2)により設定することで、少ない調節回数で標本Aに対して焦点合わせすることができる。
【0035】
観察光学系50は、対物レンズ13およびダイクロイックミラー31を自動合焦機構10と共用するようになっている。対物レンズ13は、照明光が標本Aに照射されて蛍光物質が励起されることにより発生する蛍光を集光するようになっている。また、ダイクロイックミラー31は、対物レンズ13により集光された蛍光を透過させるようになっている。
【0036】
また、観察光学系50は、ダイクロイックミラー31を透過した蛍光を集光して結像させる結像レンズ51と、結像レンズ51により結像された蛍光を撮影し、標本Aの蛍光画像を取得するCCD等の撮像装置(画像取得部)53と、撮像装置53による画像取得を制御する画像取得制御部(図示略)とを備えている。
【0037】
撮像装置53においては、標本A上にライン状に集光される照明光に対応した略ライン状の蛍光画像が取得される。
画像取得制御部は、ステージ駆動部2を作動させ、照明光のライン方向に直交する方向にステージ1を移動させるようになっている。これにより、標本A上において照明光が2次元的に走査される。撮像装置53は、2次元的に走査された照明光の各集光位置において取得したライン状の蛍光画像をステージ1の位置と対応づけて蓄積するようになっている。これにより、標本Aの2次元的な蛍光画像が取得される。
【0038】
次に、このように構成された自動合焦機構10および顕微鏡装置100の作用について以下に説明する。
まず、対物レンズ13の焦点合わせについて説明する。
ステージ1に標本Aを載置し、カバーガラス5により標本Aを覆い、光源3から照明光を発生させる。
【0039】
光源3から発せられた照明光は、コリメートレンズ21により略平行光にされビームスプリッタ33により反射された後、シリンドリカルレンズ23によりライン状に集光される。ライン状に集光された照明光は、スリット25を通過しリレーレンズ27、励起フィルタ29、および、ダイクロイックミラー31を介して対物レンズ13の入射瞳位置に平行にリレーされ、対物レンズ13により標本Aに照射される。
【0040】
カバーガラス5において反射された反射光は、対物レンズ13により集光されダイクロイックミラー31により反射された後、励起フィルタ29、リレーレンズ27、スリット25、シリンドリカルレンズ23を介してビームスプリッタ33を透過し、シリンドリカルレンズ35により集光されて光検出器37により撮影される。
【0041】
この場合において、略ライン状に集光される反射光の光軸に対して撮像面36がその光束の短軸回りに傾斜して配置されているので、撮像面36に入射される反射光の光路長が光束のライン方向に沿って異なることとなる。すなわち、撮像面36上の反射光分布が撮像面36の傾きに沿って変化することとなる。
【0042】
例えば、対物レンズ13の焦点位置がカバーガラス5上にある場合は、図2(a)に示されるように、反射光の光束におけるライン方向の中心Cでは、集光位置が撮像面36に一致する。これに対し、図2(b)に示されるように、反射光の光束におけるライン方向の一端L側では、集光位置よりも手前側が撮像面36に入射される。また、図2(c)に示されるように、反射光の光束におけるライン方向の他端R側では、集光位置よりも奥行き側が撮像面36に入射される。
【0043】
したがって、図3に示すように、撮像面36上の反射光分布は、ライン方向の略中央付近で最も絞られ、中方付近からライン方向に沿って両側に離れるに従い次第に広がる形状となる。すなわち、反射光画像においては反射光の光軸上で光強度が最も高くなり、光軸から離れるに従い光強度は次第に低くなる。図3において、ハッチング部分が反射光の分布を示している。以下、図5、図8、図12(b)、図13(b)、図14、図15、図17、図19(b)、図20(b)および図22(b)において同様である。また、図3において、符合Cは図2(a)の符号Cに対応する位置を示し、符合Lは図2(b)の符号Lに対応する位置を示し、符合Rは図2(c)の符号Rに対応する位置を示している。
【0044】
一方、対物レンズ13の焦点位置が光軸方向に変動すると、撮像面36上の反射光分布の最も絞られた位置が反射光の光束のライン方向に沿って変化する。
例えば、図4(a)に示すように、対物レンズ13の焦点位置がカバーガラス5よりも手前側にある場合は、図5に示すように、撮像面36上の反射光分布は、反射光の光軸からライン方向に若干ずれた位置(図5においては符合L側。)で最も絞られた形状となる。図4(b)はカバーガラス5から反射される反射光の光束を示している。
【0045】
例えば、図6(a)に示されるように、反射光の光束におけるライン方向の中心Cでは、集光位置よりも若干奥行き側が撮像面36に入射される。したがって、若干広がりのある反射光分布となる。図6(b)に示されるように、反射光の光束におけるライン方向の一端L側では、集光位置よりも若干手前側が撮像面36に入射される。したがって、若干広がりのある反射光分布となる。図6(c)に示されるように、反射光の光束におけるライン方向の他端R側では、集光位置よりもさらに奥行き側が撮像面36に入射される。したがって、さらに広がりのある反射光分布となる。図5において、符合Cは図6(a)の符号Cに対応する位置を示し、符合Lは図6(b)の符号Lに対応する位置を示し、符合Rは図6(c)の符号Rに対応する位置を示している。
【0046】
また、図7(a)に示すように、対物レンズ13の焦点位置がカバーガラス5よりも奥行き側にある場合は、図8に示すように、撮像面36上の反射光分布は、対物レンズ13の焦点位置がカバーガラス5よりも手前側にある場合とは逆方向にずれた位置(図8においては符合R側。)で最も絞られた形状となる。図7(b)はカバーガラス5から反射される反射光の光束を示している。
【0047】
例えば、図9(a)に示されるように、反射光の光束におけるライン方向の中心Cでは、集光位置よりも若干手前側が撮像面36に入射される。したがって、若干広がりのある反射光分布となる。図9(b)に示されるように、反射光の光束におけるライン方向の一端L側では、集光位置よりもさらに手前側が撮像面36に入射される。したがって、さらに広がりのある反射光分布となる。図9(c)に示されるように、反射光の光束におけるライン方向の他端R側では、集光位置よりも若干奥行き側が撮像面36に入射される。したがって、若干広がりのある反射光分布となる。図8において、符合Cは図9(a)の符号Cに対応する位置を示し、符合Lは図9(b)の符号Lに対応する位置を示し、符合Rは図9(c)の符号Rに対応する位置を示している。
【0048】
このように、対物レンズ13の焦点位置のずれ量に応じて、撮像面36における反射光分布の最も絞られた位置、すなわち、反射光画像における光強度の最も高い位置が反射光の光束のライン方向に変化する。
【0049】
自動合焦機構10においては、図10のフローチャートに示す手順で合焦調節が行われる。
まず、検出部15により、カバーガラス5からの反射光に基づいて反射光画像が取得されると(ステップS1)、合焦判別部43により、その反射光画像における反射光の集光点(光強度が最も高い点)の位置が検出される(ステップS2)。
【0050】
合焦判別部43により、反射光画像において反射光の集光点が光軸よりも左側にあると判断されると(ステップS3「YES」)、ピエゾ駆動部45により、例えば、対物レンズ13をステージ1に近接させる方向に移動させるようにピエゾアクチュエータ41が制御される。これにより、反射光画像における反射光の集光点が光軸に近接させられる。
【0051】
続いて、ステップS1〜S3が繰り返され、合焦判別部43により、反射光の集光点が光軸よりも左側ではなく右側にあると判断されると(ステップS4「YES」)、ピエゾ駆動部45により、例えば、対物レンズ13をステージ1から遠ざける方向に移動させるようにピエゾアクチュエータ41が制御される。これにより、反射光画像における反射光の集光点が光軸に近接させられる。
【0052】
ステップS1〜S4が繰り返され、合焦判別部43により、反射光画像における反射光の集光点が光軸よりも左側にも右側にも無いと判断されると(ステップS4「NO」)、対物レンズ13の焦点位置が標本Aに一致していることとなり合焦調節が終了する。
【0053】
次に、標本Aの蛍光画像を取得する場合について説明する。
自動合焦機構10により対物レンズ13の焦点位置が標本Aに一致させられた状態で、ステージ駆動部2の作動により、照明光のライン方向に直交する方向にステージ1が移動させられ、標本A上において照明光が2次元的に走査される。
【0054】
撮像装置53により、2次元的に走査された照明光の各集光位置においてライン状の蛍光画像が取得され、取得された蛍光画像とステージ1の位置とが対応づけて蓄積される。これにより、標本Aの2次元的な蛍光画像が取得される。
【0055】
以上説明したように、本実施形態に係る自動合焦機構10および顕微鏡装置100によれば、ライン状に集光される反射光の光軸に対して光検出器37の撮像面36を傾斜して配置し、合焦調節部17により、反射光画像における反射光の集光点の位置が反射光の光軸上に一致するように対物レンズ13の光軸方向の位置を調節することで、標本Aに対して精度よく焦点合わせすることができる。また、精度よく焦点合わせされた状態で、標本Aの画像を取得することができる。
【0056】
本実施形態においては、通常光観察(明視野、暗視野等)を行うこととしてもよい。この場合は、ビームスプリッタ33に代えて、ハーフミラーを用いることとすればよい。
また、本実施形態においては、例えば、標本Aのラマン散乱光観察をすることとしてもよい。この場合は、レーザ波長だけを効率良く透過しその他の波長を透過させないレーザラインフィルタ(図示略)を光源3とビームスプリッタ33との間に配置するとよい。レーザ光は完全な単色光ではなく、レーザ光には発振波長以外に微弱なノイズが含まれる。そのため、ラマン測定を行う場合において微弱なラマン散乱光を効率良く検出するには、レーザ光の迷光を除去することが効果的である。レーザラインフィルタを用いることにより、レーザの純色性を高め、S/Nの高いラマン散乱光を得ることができる。
【0057】
本実施形態において、照明光としてレーザ光を用いる場合は、レーザ光および反射光の光路に偏光ビームスプリッタとλ/4波長板を配置することが好ましい。
この場合、ビームスプリッタ33に代えて偏光ビームスプリッタを配置し、偏光ビームスプリッタ33と対物レンズ13との間、例えば、リレーレンズ27とダイクロイックミラー31との間にλ/4波長板を配置することとすればよい。
【0058】
偏光ビームスプリッタにより反射されたレーザ光は直線偏光になるが、1/4波長板を通過すると、対物レンズ13により円偏光になって標本Aに焦点を結ぶこととなる。このレーザ光がカバーガラス5において反射されると、その反射光は円偏光の回転方向が反転し、1/4波長板を通過すると入射レーザ光に対して垂直の偏光面を持つことになる。
標本Aに円偏光のレーザ光を照射することで、標本Aの偏光特性を抑えて観察することができる。したがって、光検出器37により検出される検出信号(画像情報)にノイズ成分を排除した高S/Nの信号を得ることができ、対物レンズ13の焦点位置を精度よく調節することができる。
【0059】
また、本実施形態においては、撮像面36が3以上の受光素子により構成されていることとしたが、例えば、図11に示すように、反射光の光束のライン方向に並べて配置される2つの受光素子S1,S2により撮像面36が構成されることとしてもよい。この場合、合焦調節部17は、受光素子S1,S2の明るさが明るくなるように対物レンズ13の焦点位置を制御することとしてもよいし、あるいは、受光素子A1の明るさと受光素子A2の明るさが等しくなるように対物レンズ13の焦点位置を制御することとしてもよい。
【0060】
また、本実施形態においては、合焦調節部17が、検出部15により検出された画像情報における光強度の最も高い位置が光軸上から所定の距離だけ離れるように、すなわち、反射光画像において反射光の集光点がその光軸上から所定の距離だけ離れるように、ピエゾアクチュエータ41を駆動制御して対物レンズ13の光軸方向の位置を調節することとしてもよい。
このようにすることで、合焦調節部17により、標本Aの深部等、カバーガラス5から光軸方向に離れた位置にある標本Aの部位に対物レンズ13の焦点位置を合わせることができる。
【0061】
例えば、標本A(例えば、細胞)と培養液とからなる観察体(図示略)をスライドガラス(図示略)とカバーガラス5との間に封入し、図12(a),(b)に示すように、標本Aの内部を深部観察する場合を例示して説明する。観察したい位置とカバーガラス5との距離をオフセットd(μm)として定義する。この値は観察者が決定する。図13(a),(b)はオフセットdを設定しない場合の対物レンズ13の焦点位置を示している。
【0062】
図12(b)において、撮像面36における中心の受光素子をO点、撮像面36における反射光の集光位置をX点とし、観察体の屈折率をnとすると、撮像面36における反射光の集光位置X点から中心の受光素子O点までの画素数aが以下の式(3)を満たすように、対物レンズ13の光軸方向の位置を調節する。
a=β2×(d/n)/(p×tanθ)・・・(3)
合焦調節部17により、撮像面36における中心の受光素子O点と反射光の焦点位置X点とがずれるように対物レンズ12の位置を調節することにより、対物レンズ13のピント位置をカバーガラス5の反射位置から離すことができる。したがって、生体試料の深部観察のように、観察したい位置がカバーガラス5から離れている場合でも、標本Aの画像取得と合焦調節とを同時に行うことができる。
【0063】
図12(a),(b)においては、カバーガラス5の観察体側の面を基準にオフセットを求めることとしたが、カバーガラス5の厚さ(t)および屈折率(n_glass)が分かっている場合は、カバーガラス5の対物レンズ13側の面をオフセットの基準位置としてもよい。
この場合、以下の式(4)を満たすように、対物レンズ13の光軸方向の位置を調節することとすればよい。
a=β2×(d/n+t/n_glass)/(p×tanθ)・・・(4)
カバーガラス5と空気との界面は、カバーガラス5と観察体との界面と比較して反射率が高いので、カバーガラス5の対物レンズ13側の面をオフセットの基準位置とすることで、撮像面36上の反射光分布のコントラストを高くし、対物レンズ13の焦点位置を精度よく調節できる。
【0064】
本実施形態は、以下のように変形することができる。
例えば、第1の変形例としては、標本A上のカバーガラス5に対する撮像面36の傾きが一定の角度となるように、ステージ駆動部(傾き調節部)2が標本Aおよびカバーガラス5の傾きを調節することとしてもよい。この場合、ステージ1の傾きを調節することとすればよい。
【0065】
撮像面36に対するカバーガラス5の傾きが小さくなると、図14に示すように、撮像面36上の反射光分布の変化が低減し、反射光の光束における中央付近からライン方向に離れても広がりが小さくなる。すなわち、反射光画像における光強度の差が低減する。一方、撮像面36に対するカバーガラス5の傾きが大きくなると、図15に示すように、撮像面36上の反射光分布の変化が増大し、反射光の光束における中央付近からライン方向に離れる従い広がりがさらに大きくなる。すなわち、反射光画像における光強度の差が増大する。
【0066】
したがって、ステージ駆動部2の作動により、カバーガラス5に対する撮像面36の傾きが一定の角度となるようにステージ1の傾きを調節することで、所望の反射光分布、例えば、撮像面36の傾きで決まる反射光分布の画像情報を取得することができる。ステージ1の傾きは、例えば、標本Aを交換する度に調節することとしてもよいし、あるいは、メンテナンス時に調節することとしてもよい。
【0067】
また、第2の変形例としては、例えば、図16(a),(b)に示すように、シリンドリカルレンズ35と光検出器37との間の光軸上に、反射光の光束におけるライン方向の半分を遮断するナイフエッジ55を配置することとしてもよい。図16(a)は図16(b)の一部をシリンドリカルレンズ23のパワーがない方向から見た図である。
【0068】
このようにした場合、図17に示すように、撮像面36上の反射光分布は、ライン方向の一端L側の広がりと他端R側の広がりが、ライン方向に直交する方向に沿って互いに逆方向となる。図18(a)は合焦時に反射光の光束におけるライン方向の中心位置が撮像面36に入射される様子を示し、図18(b)は同じくライン方向の一端L側が撮像面36に入射される様子を示し、図18(c)は同じくライン方向の一端R側が撮像面36に入射される様子を示している。また、図19(a)は、対物レンズ13の焦点位置がカバーガラス5よりも手前側にある場合の撮像面36に入射される反射光の光束を示し、図19(b)はそのときの撮像面36上の反射光分布を示している。また、図20(a)は、対物レンズ13の焦点位置がカバーガラス5よりも奥行き側にある場合の撮像面36に入射される反射光の光束を示し、図20(b)はそのときの撮像面36上の反射光分布を示している。
【0069】
このように、撮像面36上の反射光分布は、反射光の光束のライン方向に直交する方向に沿ってライン方向の一端L側と他方R側とで逆方向に広がることで、例えば、図21に示す撮像面36のように、反射光のライン方向に直交する方向に2つの受光素子S1,S2を並べて配置しても、対物レンズ13の焦点位置を調節することができる。
【0070】
本変形例においては、図22(a)に示すように照明光の光軸に対してカバーガラス5が傾いている場合は、例えば、図22(b)に示すように、撮像面36の反射光分布は、反射光の光束におけるライン方向に沿って平行に延びる形状となる。この場合も、変形例1に示すように、ステージ駆動部2により、ステージ1の傾きを調節することとしてもよい。
【0071】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。例えば、本発明を上記の一実施形態および変形例に適用したものに限定されることなく、これらの実施形態および変形例を適宜組み合わせた実施形態に適用してもよく、特に限定されるものではない。また、例えば、上記実施形態においては、対物レンズ13を光軸方向に移動させることとしたが、対物レンズ13と標本Aとを相対移動させることとすればよく、例えば、ステージ1を光軸方向に移動させることにより標本Aの位置を調節することとしてもよい。
【符号の説明】
【0072】
1 ステージ
2 ステージ駆動部(傾き調節部)
5 カバーガラス
10 自動合焦機構
11 照明光学系
13 対物レンズ
15 検出部
17 合焦調節部
36 撮像面
53 撮像装置(画像取得部)
100 顕微鏡装置
A 標本
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動合焦機構および顕微鏡装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、標本のデジタル画像を取得し、モニタ上にその倍率や観察位置を変えて表示することにより、模擬的に顕微鏡観察を行うバーチャルスライド顕微鏡装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。バーチャルスライド顕微鏡装置によれば、対物レンズの光軸に対して直交する方向にステージを移動させながら複数の画像を取得し、これらの画像を繋ぎ合せることにより、スライドガラスのように顕微鏡装置の観察範囲より大きい標本を観察することができるが、顕微鏡周辺の環境変化によるフォーカスドリフトや、標本自身の傾き等により、対物レンズの焦点位置がずれ画質が劣化するという問題がある。特許文献1に記載の顕微鏡装置は、対物レンズの光軸に対して傾けて配置したカメラにより標本の画像の取得し、この画像の解析結果に基づいて対物レンズの焦点位置を制御することとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2005/114293号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の顕微鏡装置は、画像処理により標本の画像のコントラストが高い位置を対物レンズの焦点位置として検出するため、透明な標本や標本から外れた部分では対物レンズの焦点位置を検出することができないという問題がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、標本に対して精度よく焦点合わせすることができる自動合焦機構および顕微鏡装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明は、カバーガラス付きの標本に照射される照明光をライン状に集光する照明光学系と、前記ライン状に集光された照明光を前記標本に照射し、前記カバーガラスからの反射光を集光する対物レンズと、該対物レンズにより集光された前記反射光の光軸に対して傾斜して配置された撮像面を有し、前記反射光を撮影して画像情報を検出する検出部と、該検出部により検出された前記画像情報における光強度の最も高い位置が前記光軸上に位置するように、前記対物レンズと前記カバーガラス付きの標本とを前記光軸方向に相対移動させる合焦調節部とを備える自動合焦機構を提供する。
【0007】
本発明によれば、対物レンズにより照明光がカバーガラス付きの標本に照射されると、検出部の撮像面によりカバーガラスからの反射光が撮影される。この場合において、ライン状の照明光が照射されたカバーガラスからの反射光の光軸に対し、撮像面を傾斜して配置することで、撮像面に入射される反射光の分布は撮像面の傾きに沿って変化することとなる。
【0008】
すなわち、合焦状態においては、反射光の光束における光軸上の集光位置が撮像面に一致し、光軸から離れるに従い集光位置からずれて撮像面に入射される。したがって、画像情報における光強度が反射光の光軸上で最も高くなり、光軸から離れるに従いその光強度は低くなる。また、対物レンズの焦点位置が光軸方向に変動すると、反射光の光束における光軸から離れた集光位置が撮像面に一致する。したがって、画像情報における光強度の最も高い位置が反射光の光軸からずれる。
【0009】
本発明は、合焦調節部により、画像情報における光強度の最も高い位置が反射光の光軸上に一致するように、対物レンズとカバーガラス付きの標本とを光軸方向に相対移動させることで、標本に対して精度よく焦点合わせすることができる。
【0010】
本発明は、カバーガラス付きの標本に照射される照明光をライン状に集光する照明光学系と、前記ライン状に集光された照明光を前記標本に照射し、前記カバーガラスからの反射光を集光する対物レンズと、該対物レンズにより集光された前記反射光の光軸に対して傾斜して配置された撮像面を有し、前記反射光を撮影して画像情報を検出する検出部と、該検出部により検出された前記画像情報における光強度の最も高い位置が前記光軸上から所定の距離だけ離れるように、前記対物レンズと前記カバーガラス付きの標本とを前記光軸方向に相対移動させる合焦調節部とを備える自動合焦機構を提供する。
【0011】
本発明によれば、合焦調節部の作動により、敢えて画像情報における光強度の最も高い位置が光軸上から所定の距離だけ離れるように、対物レンズとカバーガラス付きの標本とを光軸方向に相対移動させることで、標本の深部等、カバーガラスから光軸方向に離れた位置にある標本の部位に合焦位置を合わせることができる。
【0012】
上記発明においては、前記検出部の撮像面が前記反射光の光束の短軸回りに傾斜していることとしてもよい。
【0013】
このように構成することで、検出部の撮像面に入射される反射光の光路長が光束のライン方向に沿って異なるため、対物レンズの焦点位置が光軸方向に変動すると、画像情報における光強度の最も高い位置が反射光の光束のライン方向に移動する。したがって、画像情報における光強度の最も高い位置と反射光の光軸とをそのライン方向に一致させるだけで、標本に対して容易に焦点合わせすることができる。
【0014】
また、上記発明においては、前記反射光の光軸に対する前記撮像面の傾きが以下の式を満たすこととしてもよい。
{(p×tanθ)/β2}<{(1.2×λ)/NA2}
ここで、p:撮像面を構成する受光素子の長さ(μm)
θ:反射光の光軸に対する撮像面の傾き(rad)
β:装置全体の撮像倍率(倍)
NA:対物レンズの開口数
λ:光源の波長(μm)
【0015】
検出部における反射光の光軸方向の分解能((p×tanθ)/β2(μm))を対物レンズの焦点深度((1.2×λ)/NA2)よりも小さくすることで、対物レンズの焦点位置を精度よく調節することができる。
【0016】
また、上記発明においては、前記合焦調節部が、以下の式により前記対物レンズと前記標本との相対移動量を設定することとしてもよい。
(a×p×tanθ)/β2
ここで、a:撮像面に入射される反射光の光束の中心から撮像面における中心の画素までの画素数
【0017】
カバーガラス付きの標本上での実際の焦点位置のずれ量は、撮像面上での反射光の光軸方向のピントずれ量(a×p×tanθ)を装置全体の撮像倍率(β)の2乗で除算した値となる。したがって、このように構成することで、少ない調節回数により標本に対して焦点合わせすることができる。
【0018】
また、上記発明においては、前記カバーガラス付きの標本に対する前記撮像面の傾きが一定の角度となるように、前記カバーガラス付きの標本の傾きを調節する傾き調節部を備えることとしてもよい。
【0019】
検出部の撮像面に対するカバーガラス付きの標本の傾きが小さくなると、撮像面に入射される反射光の分布の変化が小さくなる。すなわち、画像情報における光強度の差が低減する。一方、撮像面に対するカバーガラス付きの標本の傾きが大きくなると、像面に入射される反射光の分布の変化が大きくなる。すなわち、画像情報における光強度の差が増大する。したがって、このように構成することで、傾き調節部の作動により、所望の反射光分布の画像情報を取得することができる。
【0020】
本発明は、上記いずれかの自動合焦機構と、前記標本を載置し、前記光軸方向に移動可能なステージと、前記検出部により取得された前記画像情報に基づいて前記標本の画像を取得する画像取得部とを備える顕微鏡装置を提供する。
【0021】
本発明によれば、精度よく焦点合わせされた状態で、標本の画像を取得することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る自動合焦機構によれば、標本に対して精度よく焦点合わせすることができるという効果を奏する。また、本発明に係る顕微鏡装置によれば、精度よく焦点合わせされた状態で標本の画像を取得することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】(a)は本発明の一実施形態に係る顕微鏡装置の一部を示す図であり、(b)は(a)含む顕微鏡装置をシリンドリカルレンズのパワーがある方向から見た図である。
【図2】(a)合焦時に反射光の光束におけるライン方向の中心が撮像面に入射される様子を示し、(b)は反射光の光束におけるライン方向の一端側が撮像面に入射される様子を示し、(c)は反射光の光束におけるライン方向の他端側が撮像面に入射される様子を示す図である。
【図3】合焦時の撮像面上の反射光分布を示す図である。
【図4】(a)はカバーガラスの手前側で照明光が集光する様子を示し、(b)は(a)のときのカバーガラスから反射光が反射される様子を示している。
【図5】照明光の焦点位置がカバーガラスの手前にある場合の撮像面上の反射光分布を示す図である。
【図6】(a)対物レンズの焦点位置がカバーガラスよりも手前側にある場合に反射光の光束におけるライン方向の中心が撮像面に入射される様子を示し、(b)は同じく反射光の光束におけるライン方向の一端側が撮像面に入射される様子を示し、(c)は同じく反射光の光束におけるライン方向の他端側が撮像面に入射される様子を示す図である。
【図7】(a)はカバーガラスの奥行き側で照明光が集光する様子を示し、(b)は(a)のときのカバーガラスから反射光が反射される様子を示している。
【図8】照明光の焦点位置がカバーガラスの奥行き側にある場合の撮像面上の反射光分布を示す図である。
【図9】(a)は対物レンズの焦点位置がカバーガラスよりも奥行き側にある場合に反射光の光束におけるライン方向の中心が撮像面に入射される様子を示し、(b)は同じく反射光の光束におけるライン方向の一端側が撮像面に入射される様子を示し、(c)は同じく反射光の光束におけるライン方向の他端側が撮像面に入射される様子を示す図である。
【図10】本発明の一実施形態に係る自動合焦機構により標本に焦点合わせする工程を示すフローチャートである。
【図11】反射光のライン方向に並んで配置される2つの受光素子により構成される撮像面を示す図である。
【図12】(a)はカバーガラスの奥行き側で照明光を集光させる様子を示し、(b)は(a)の場合の撮像面上の反射光分布を示す図である。
【図13】(a)はカバーガラスの表面で照明光を集光させる様子を示し、(b)は(a)の場合の撮像面上の反射光分布を示す図である。
【図14】本発明の一実施形態の第1の変形例に係る顕微鏡装置のカバーガラスに対する撮像面の傾きが小さいときの撮像面上の反射光分布を示す図である。
【図15】本発明の一実施形態の第1の変形例に係る顕微鏡装置のカバーガラスに対する撮像面の傾きが大きいときの撮像面上の反射光分布を示す図である。
【図16】(a)は本発明の一実施形態の第2の変形例に係る顕微鏡装置の一部を示す図であり、(b)は(a)を含む顕微鏡装置をシリンドリカルレンズのパワーがある方向から見た図である。
【図17】図16の顕微鏡装置による合焦時における撮像面上の反射光分布を示す図である。
【図18】(a)は合焦時の反射光の光束におけるライン方向の中心が撮像面に入射される様子を示し、(b)は同じく反射光の光束におけるライン方向の一端側が撮像面に入射される様子を示し、(c)は同じく反射光の光束におけるライン方向の他端側撮像面に入射される様子を示す図である。
【図19】(a)は対物レンズの焦点位置がカバーガラスよりも手前側にある場合に反射光の光束におけるライン方向の中心が撮像面に入射される様子を示し、(b)は(a)のときの撮像面上の反射光分布を示す図である。
【図20】(a)は対物レンズの焦点位置がカバーガラスよりも奥行き側にある場合に反射光の光束におけるライン方向の中心が撮像面に入射される様子を示し、(b)は(a)のときの撮像面上の反射光分布を示す図である。
【図21】反射光のライン方向に直交する方向に並んで配置される2つの受光素子により構成される撮像面を示す図である。
【図22】(a)は照明光の光軸に対してカバーガラスが傾いている様子を示し、(b)は(a)のときの撮像面上の反射光分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の一実施形態に係る自動合焦機構および顕微鏡装置について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る顕微鏡装置100は、図1(a),(b)に示されるように、標本Aを載置するステージ1と、照明光を発する光源3と、標本Aの合焦調節を行う自動合焦機構10と、標本Aの画像を取得する観察光学系50とを備えている。
図1(a)は、図1(b)の一部をシリンドリカルレンズ23のパワーがない方向から見た図である。
【0025】
標本Aは、ステージ1上に載置し、薄板状のカバーガラス5により覆うこととする。
ステージ1は、ステージ駆動部2により、照明光の光軸方向および照明光に直交する方向に移動可能となっている。
光源3は、例えば、水銀ランプ、ハロゲンランプ、タングステンランプ、レーザ光源、LED、または、LD等を用いることができる。
【0026】
自動合焦機構10は、光源3から発せられた照明光をライン状に集光する照明光学系11と、ライン状に集光された照明光を標本Aに照射し、カバーガラス5からの反射光を集光する対物レンズ13と、対物レンズ13により集光された反射光を撮影し画像情報を検出する検出部15と、検出部15により検出された画像情報に基づいて対物レンズ13の焦点位置を調節する合焦調節部17とを備えている。
【0027】
照明光学系11は、光源3から射出された照明光を略平行光にするコリメートレンズ21と、略平行光となった照明光をライン状に集光するシリンドリカルレンズ(線状集光素子)23と、シリンドリカルレンズ23の集光位置に配置されたスリット25と、スリット25と標本A面が共役関係になるように、スリット25を通過した照明光を対物レンズ13の入射瞳位置に平行に投影するリレーレンズ27と、所定の波長帯域の光のみを透過させる励起フィルタ29と、励起フィルタ29を通過した照明光および対物レンズ13により集光された反射光を反射するダイクロイックミラー31とを備えている。
【0028】
スリット25は、標本Aおよびカバーガラス5から戻る戻り光に対しては、カバーガラス5からの反射光のみ通過させるようになっている。これにより、回折光等による測定に不要な光の影響を低減し、対物レンズ13の焦点位置を精度よく調節することができる。
【0029】
検出部15は、光源3から発せられコリメートレンズ21を通過した照明光を反射する一方、カバーガラス5からダイクロイックミラー31を介して光路を逆方向に戻る反射光を透過させるビームスプリッタ33と、ビームスプリッタ33を透過した反射光を集光するシリンドリカルレンズ35と、シリンドリカルレンズ35により集光された反射光を撮影することにより画像情報を検出するCCDカメラやCMOSカメラ等のような光検出器37とを備えている。
【0030】
光検出器37は標本Aと共役な位置に配置されている。この光検出器37は、複数(3以上)の受光素子からなる撮像面36(図3参照)を備えており、検出した画像情報に基づいて2次元的な反射光画像を取得するようになっている。撮像面36には、標本A上にライン状に集光される照明光に対応して、略ライン状の反射光が入射されることとなる。この撮像面36は、反射光の光軸に対してその光束の短軸回りに傾斜して配置されている。
【0031】
例えば、反射光の光軸に対する撮像面36の傾きは、以下の式(1)を満たすようになっている。
{(p×tanθ)/β2}<{(1.2×λ)/NA2}・・・(1)
好ましくは、{(p×tanθ)/β2}<{(1.2×λ)/NA2/5}
ここで、p:撮像面36を構成する受光素子の長さ(μm)
θ:反射光の光軸に対する撮像面36の傾き(rad)
β:自動合焦機構10全体の撮像倍率(倍)
NA:対物レンズ13の開口数
λ:光源3の波長(μm)
撮像面36の傾きが上記式(1)を満たすことで、すなわち、光検出部15における反射光の光軸方向の分解能{(p×tanθ)/β2}を対物レンズ13の焦点深度{(1.2×λ)/NA2}よりも小さくすることで、対物レンズ13の焦点位置を精度よく調節することができる。
【0032】
合焦調節部17は、対物レンズ13を光軸方向に移動させるピエゾアクチュエータ41と、光検出器37により取得された反射光画像に基づいて、対物レンズ13の焦点位置が標本Aに一致しているか否かを判別する合焦判別部43と、合焦判別部43により一致していないと判別された場合に、ピエゾアクチュエータ41を駆動制御して対物レンズ13の光軸方向の位置を調節するピエゾ駆動部45とを備えている。
【0033】
合焦判別部43は、画像情報における光強度の最も高い位置が反射光の光軸上にある場合、例えば、反射光画像において反射光の集光点がその光軸上にある場合は、対物レンズ13の焦点位置が標本Aに一致していると判別し、画像情報における光強度の最も高い位置が反射光の光軸からずれている場合、例えば、反射光画像において反射光の集光点がその光軸からずれている場合は、対物レンズ13の焦点位置が標本Aに一致していないと判別するようになっている。
【0034】
ピエゾ駆動部45は、例えば、以下の式(2)により、対物レンズ13の光軸方向の移動量Lを設定するようになっている。
L=(a×p×tanθ)/β2・・・(2)
ここで、a:撮像面36に入射される反射光の光束の中心(すなわち、反射光画像における反射光の集光位置)から撮像面36における中心の受光素子までの画素数
標本位置での実際のピントずれ量は、撮像面36上での光軸方向のピントずれ量(a×p×tanθ)を自動合焦機構10全体の撮像倍率(β)の2乗で除算した値となる。したがって、対物レンズ13の光軸方向の移動量Lを上記式(2)により設定することで、少ない調節回数で標本Aに対して焦点合わせすることができる。
【0035】
観察光学系50は、対物レンズ13およびダイクロイックミラー31を自動合焦機構10と共用するようになっている。対物レンズ13は、照明光が標本Aに照射されて蛍光物質が励起されることにより発生する蛍光を集光するようになっている。また、ダイクロイックミラー31は、対物レンズ13により集光された蛍光を透過させるようになっている。
【0036】
また、観察光学系50は、ダイクロイックミラー31を透過した蛍光を集光して結像させる結像レンズ51と、結像レンズ51により結像された蛍光を撮影し、標本Aの蛍光画像を取得するCCD等の撮像装置(画像取得部)53と、撮像装置53による画像取得を制御する画像取得制御部(図示略)とを備えている。
【0037】
撮像装置53においては、標本A上にライン状に集光される照明光に対応した略ライン状の蛍光画像が取得される。
画像取得制御部は、ステージ駆動部2を作動させ、照明光のライン方向に直交する方向にステージ1を移動させるようになっている。これにより、標本A上において照明光が2次元的に走査される。撮像装置53は、2次元的に走査された照明光の各集光位置において取得したライン状の蛍光画像をステージ1の位置と対応づけて蓄積するようになっている。これにより、標本Aの2次元的な蛍光画像が取得される。
【0038】
次に、このように構成された自動合焦機構10および顕微鏡装置100の作用について以下に説明する。
まず、対物レンズ13の焦点合わせについて説明する。
ステージ1に標本Aを載置し、カバーガラス5により標本Aを覆い、光源3から照明光を発生させる。
【0039】
光源3から発せられた照明光は、コリメートレンズ21により略平行光にされビームスプリッタ33により反射された後、シリンドリカルレンズ23によりライン状に集光される。ライン状に集光された照明光は、スリット25を通過しリレーレンズ27、励起フィルタ29、および、ダイクロイックミラー31を介して対物レンズ13の入射瞳位置に平行にリレーされ、対物レンズ13により標本Aに照射される。
【0040】
カバーガラス5において反射された反射光は、対物レンズ13により集光されダイクロイックミラー31により反射された後、励起フィルタ29、リレーレンズ27、スリット25、シリンドリカルレンズ23を介してビームスプリッタ33を透過し、シリンドリカルレンズ35により集光されて光検出器37により撮影される。
【0041】
この場合において、略ライン状に集光される反射光の光軸に対して撮像面36がその光束の短軸回りに傾斜して配置されているので、撮像面36に入射される反射光の光路長が光束のライン方向に沿って異なることとなる。すなわち、撮像面36上の反射光分布が撮像面36の傾きに沿って変化することとなる。
【0042】
例えば、対物レンズ13の焦点位置がカバーガラス5上にある場合は、図2(a)に示されるように、反射光の光束におけるライン方向の中心Cでは、集光位置が撮像面36に一致する。これに対し、図2(b)に示されるように、反射光の光束におけるライン方向の一端L側では、集光位置よりも手前側が撮像面36に入射される。また、図2(c)に示されるように、反射光の光束におけるライン方向の他端R側では、集光位置よりも奥行き側が撮像面36に入射される。
【0043】
したがって、図3に示すように、撮像面36上の反射光分布は、ライン方向の略中央付近で最も絞られ、中方付近からライン方向に沿って両側に離れるに従い次第に広がる形状となる。すなわち、反射光画像においては反射光の光軸上で光強度が最も高くなり、光軸から離れるに従い光強度は次第に低くなる。図3において、ハッチング部分が反射光の分布を示している。以下、図5、図8、図12(b)、図13(b)、図14、図15、図17、図19(b)、図20(b)および図22(b)において同様である。また、図3において、符合Cは図2(a)の符号Cに対応する位置を示し、符合Lは図2(b)の符号Lに対応する位置を示し、符合Rは図2(c)の符号Rに対応する位置を示している。
【0044】
一方、対物レンズ13の焦点位置が光軸方向に変動すると、撮像面36上の反射光分布の最も絞られた位置が反射光の光束のライン方向に沿って変化する。
例えば、図4(a)に示すように、対物レンズ13の焦点位置がカバーガラス5よりも手前側にある場合は、図5に示すように、撮像面36上の反射光分布は、反射光の光軸からライン方向に若干ずれた位置(図5においては符合L側。)で最も絞られた形状となる。図4(b)はカバーガラス5から反射される反射光の光束を示している。
【0045】
例えば、図6(a)に示されるように、反射光の光束におけるライン方向の中心Cでは、集光位置よりも若干奥行き側が撮像面36に入射される。したがって、若干広がりのある反射光分布となる。図6(b)に示されるように、反射光の光束におけるライン方向の一端L側では、集光位置よりも若干手前側が撮像面36に入射される。したがって、若干広がりのある反射光分布となる。図6(c)に示されるように、反射光の光束におけるライン方向の他端R側では、集光位置よりもさらに奥行き側が撮像面36に入射される。したがって、さらに広がりのある反射光分布となる。図5において、符合Cは図6(a)の符号Cに対応する位置を示し、符合Lは図6(b)の符号Lに対応する位置を示し、符合Rは図6(c)の符号Rに対応する位置を示している。
【0046】
また、図7(a)に示すように、対物レンズ13の焦点位置がカバーガラス5よりも奥行き側にある場合は、図8に示すように、撮像面36上の反射光分布は、対物レンズ13の焦点位置がカバーガラス5よりも手前側にある場合とは逆方向にずれた位置(図8においては符合R側。)で最も絞られた形状となる。図7(b)はカバーガラス5から反射される反射光の光束を示している。
【0047】
例えば、図9(a)に示されるように、反射光の光束におけるライン方向の中心Cでは、集光位置よりも若干手前側が撮像面36に入射される。したがって、若干広がりのある反射光分布となる。図9(b)に示されるように、反射光の光束におけるライン方向の一端L側では、集光位置よりもさらに手前側が撮像面36に入射される。したがって、さらに広がりのある反射光分布となる。図9(c)に示されるように、反射光の光束におけるライン方向の他端R側では、集光位置よりも若干奥行き側が撮像面36に入射される。したがって、若干広がりのある反射光分布となる。図8において、符合Cは図9(a)の符号Cに対応する位置を示し、符合Lは図9(b)の符号Lに対応する位置を示し、符合Rは図9(c)の符号Rに対応する位置を示している。
【0048】
このように、対物レンズ13の焦点位置のずれ量に応じて、撮像面36における反射光分布の最も絞られた位置、すなわち、反射光画像における光強度の最も高い位置が反射光の光束のライン方向に変化する。
【0049】
自動合焦機構10においては、図10のフローチャートに示す手順で合焦調節が行われる。
まず、検出部15により、カバーガラス5からの反射光に基づいて反射光画像が取得されると(ステップS1)、合焦判別部43により、その反射光画像における反射光の集光点(光強度が最も高い点)の位置が検出される(ステップS2)。
【0050】
合焦判別部43により、反射光画像において反射光の集光点が光軸よりも左側にあると判断されると(ステップS3「YES」)、ピエゾ駆動部45により、例えば、対物レンズ13をステージ1に近接させる方向に移動させるようにピエゾアクチュエータ41が制御される。これにより、反射光画像における反射光の集光点が光軸に近接させられる。
【0051】
続いて、ステップS1〜S3が繰り返され、合焦判別部43により、反射光の集光点が光軸よりも左側ではなく右側にあると判断されると(ステップS4「YES」)、ピエゾ駆動部45により、例えば、対物レンズ13をステージ1から遠ざける方向に移動させるようにピエゾアクチュエータ41が制御される。これにより、反射光画像における反射光の集光点が光軸に近接させられる。
【0052】
ステップS1〜S4が繰り返され、合焦判別部43により、反射光画像における反射光の集光点が光軸よりも左側にも右側にも無いと判断されると(ステップS4「NO」)、対物レンズ13の焦点位置が標本Aに一致していることとなり合焦調節が終了する。
【0053】
次に、標本Aの蛍光画像を取得する場合について説明する。
自動合焦機構10により対物レンズ13の焦点位置が標本Aに一致させられた状態で、ステージ駆動部2の作動により、照明光のライン方向に直交する方向にステージ1が移動させられ、標本A上において照明光が2次元的に走査される。
【0054】
撮像装置53により、2次元的に走査された照明光の各集光位置においてライン状の蛍光画像が取得され、取得された蛍光画像とステージ1の位置とが対応づけて蓄積される。これにより、標本Aの2次元的な蛍光画像が取得される。
【0055】
以上説明したように、本実施形態に係る自動合焦機構10および顕微鏡装置100によれば、ライン状に集光される反射光の光軸に対して光検出器37の撮像面36を傾斜して配置し、合焦調節部17により、反射光画像における反射光の集光点の位置が反射光の光軸上に一致するように対物レンズ13の光軸方向の位置を調節することで、標本Aに対して精度よく焦点合わせすることができる。また、精度よく焦点合わせされた状態で、標本Aの画像を取得することができる。
【0056】
本実施形態においては、通常光観察(明視野、暗視野等)を行うこととしてもよい。この場合は、ビームスプリッタ33に代えて、ハーフミラーを用いることとすればよい。
また、本実施形態においては、例えば、標本Aのラマン散乱光観察をすることとしてもよい。この場合は、レーザ波長だけを効率良く透過しその他の波長を透過させないレーザラインフィルタ(図示略)を光源3とビームスプリッタ33との間に配置するとよい。レーザ光は完全な単色光ではなく、レーザ光には発振波長以外に微弱なノイズが含まれる。そのため、ラマン測定を行う場合において微弱なラマン散乱光を効率良く検出するには、レーザ光の迷光を除去することが効果的である。レーザラインフィルタを用いることにより、レーザの純色性を高め、S/Nの高いラマン散乱光を得ることができる。
【0057】
本実施形態において、照明光としてレーザ光を用いる場合は、レーザ光および反射光の光路に偏光ビームスプリッタとλ/4波長板を配置することが好ましい。
この場合、ビームスプリッタ33に代えて偏光ビームスプリッタを配置し、偏光ビームスプリッタ33と対物レンズ13との間、例えば、リレーレンズ27とダイクロイックミラー31との間にλ/4波長板を配置することとすればよい。
【0058】
偏光ビームスプリッタにより反射されたレーザ光は直線偏光になるが、1/4波長板を通過すると、対物レンズ13により円偏光になって標本Aに焦点を結ぶこととなる。このレーザ光がカバーガラス5において反射されると、その反射光は円偏光の回転方向が反転し、1/4波長板を通過すると入射レーザ光に対して垂直の偏光面を持つことになる。
標本Aに円偏光のレーザ光を照射することで、標本Aの偏光特性を抑えて観察することができる。したがって、光検出器37により検出される検出信号(画像情報)にノイズ成分を排除した高S/Nの信号を得ることができ、対物レンズ13の焦点位置を精度よく調節することができる。
【0059】
また、本実施形態においては、撮像面36が3以上の受光素子により構成されていることとしたが、例えば、図11に示すように、反射光の光束のライン方向に並べて配置される2つの受光素子S1,S2により撮像面36が構成されることとしてもよい。この場合、合焦調節部17は、受光素子S1,S2の明るさが明るくなるように対物レンズ13の焦点位置を制御することとしてもよいし、あるいは、受光素子A1の明るさと受光素子A2の明るさが等しくなるように対物レンズ13の焦点位置を制御することとしてもよい。
【0060】
また、本実施形態においては、合焦調節部17が、検出部15により検出された画像情報における光強度の最も高い位置が光軸上から所定の距離だけ離れるように、すなわち、反射光画像において反射光の集光点がその光軸上から所定の距離だけ離れるように、ピエゾアクチュエータ41を駆動制御して対物レンズ13の光軸方向の位置を調節することとしてもよい。
このようにすることで、合焦調節部17により、標本Aの深部等、カバーガラス5から光軸方向に離れた位置にある標本Aの部位に対物レンズ13の焦点位置を合わせることができる。
【0061】
例えば、標本A(例えば、細胞)と培養液とからなる観察体(図示略)をスライドガラス(図示略)とカバーガラス5との間に封入し、図12(a),(b)に示すように、標本Aの内部を深部観察する場合を例示して説明する。観察したい位置とカバーガラス5との距離をオフセットd(μm)として定義する。この値は観察者が決定する。図13(a),(b)はオフセットdを設定しない場合の対物レンズ13の焦点位置を示している。
【0062】
図12(b)において、撮像面36における中心の受光素子をO点、撮像面36における反射光の集光位置をX点とし、観察体の屈折率をnとすると、撮像面36における反射光の集光位置X点から中心の受光素子O点までの画素数aが以下の式(3)を満たすように、対物レンズ13の光軸方向の位置を調節する。
a=β2×(d/n)/(p×tanθ)・・・(3)
合焦調節部17により、撮像面36における中心の受光素子O点と反射光の焦点位置X点とがずれるように対物レンズ12の位置を調節することにより、対物レンズ13のピント位置をカバーガラス5の反射位置から離すことができる。したがって、生体試料の深部観察のように、観察したい位置がカバーガラス5から離れている場合でも、標本Aの画像取得と合焦調節とを同時に行うことができる。
【0063】
図12(a),(b)においては、カバーガラス5の観察体側の面を基準にオフセットを求めることとしたが、カバーガラス5の厚さ(t)および屈折率(n_glass)が分かっている場合は、カバーガラス5の対物レンズ13側の面をオフセットの基準位置としてもよい。
この場合、以下の式(4)を満たすように、対物レンズ13の光軸方向の位置を調節することとすればよい。
a=β2×(d/n+t/n_glass)/(p×tanθ)・・・(4)
カバーガラス5と空気との界面は、カバーガラス5と観察体との界面と比較して反射率が高いので、カバーガラス5の対物レンズ13側の面をオフセットの基準位置とすることで、撮像面36上の反射光分布のコントラストを高くし、対物レンズ13の焦点位置を精度よく調節できる。
【0064】
本実施形態は、以下のように変形することができる。
例えば、第1の変形例としては、標本A上のカバーガラス5に対する撮像面36の傾きが一定の角度となるように、ステージ駆動部(傾き調節部)2が標本Aおよびカバーガラス5の傾きを調節することとしてもよい。この場合、ステージ1の傾きを調節することとすればよい。
【0065】
撮像面36に対するカバーガラス5の傾きが小さくなると、図14に示すように、撮像面36上の反射光分布の変化が低減し、反射光の光束における中央付近からライン方向に離れても広がりが小さくなる。すなわち、反射光画像における光強度の差が低減する。一方、撮像面36に対するカバーガラス5の傾きが大きくなると、図15に示すように、撮像面36上の反射光分布の変化が増大し、反射光の光束における中央付近からライン方向に離れる従い広がりがさらに大きくなる。すなわち、反射光画像における光強度の差が増大する。
【0066】
したがって、ステージ駆動部2の作動により、カバーガラス5に対する撮像面36の傾きが一定の角度となるようにステージ1の傾きを調節することで、所望の反射光分布、例えば、撮像面36の傾きで決まる反射光分布の画像情報を取得することができる。ステージ1の傾きは、例えば、標本Aを交換する度に調節することとしてもよいし、あるいは、メンテナンス時に調節することとしてもよい。
【0067】
また、第2の変形例としては、例えば、図16(a),(b)に示すように、シリンドリカルレンズ35と光検出器37との間の光軸上に、反射光の光束におけるライン方向の半分を遮断するナイフエッジ55を配置することとしてもよい。図16(a)は図16(b)の一部をシリンドリカルレンズ23のパワーがない方向から見た図である。
【0068】
このようにした場合、図17に示すように、撮像面36上の反射光分布は、ライン方向の一端L側の広がりと他端R側の広がりが、ライン方向に直交する方向に沿って互いに逆方向となる。図18(a)は合焦時に反射光の光束におけるライン方向の中心位置が撮像面36に入射される様子を示し、図18(b)は同じくライン方向の一端L側が撮像面36に入射される様子を示し、図18(c)は同じくライン方向の一端R側が撮像面36に入射される様子を示している。また、図19(a)は、対物レンズ13の焦点位置がカバーガラス5よりも手前側にある場合の撮像面36に入射される反射光の光束を示し、図19(b)はそのときの撮像面36上の反射光分布を示している。また、図20(a)は、対物レンズ13の焦点位置がカバーガラス5よりも奥行き側にある場合の撮像面36に入射される反射光の光束を示し、図20(b)はそのときの撮像面36上の反射光分布を示している。
【0069】
このように、撮像面36上の反射光分布は、反射光の光束のライン方向に直交する方向に沿ってライン方向の一端L側と他方R側とで逆方向に広がることで、例えば、図21に示す撮像面36のように、反射光のライン方向に直交する方向に2つの受光素子S1,S2を並べて配置しても、対物レンズ13の焦点位置を調節することができる。
【0070】
本変形例においては、図22(a)に示すように照明光の光軸に対してカバーガラス5が傾いている場合は、例えば、図22(b)に示すように、撮像面36の反射光分布は、反射光の光束におけるライン方向に沿って平行に延びる形状となる。この場合も、変形例1に示すように、ステージ駆動部2により、ステージ1の傾きを調節することとしてもよい。
【0071】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。例えば、本発明を上記の一実施形態および変形例に適用したものに限定されることなく、これらの実施形態および変形例を適宜組み合わせた実施形態に適用してもよく、特に限定されるものではない。また、例えば、上記実施形態においては、対物レンズ13を光軸方向に移動させることとしたが、対物レンズ13と標本Aとを相対移動させることとすればよく、例えば、ステージ1を光軸方向に移動させることにより標本Aの位置を調節することとしてもよい。
【符号の説明】
【0072】
1 ステージ
2 ステージ駆動部(傾き調節部)
5 カバーガラス
10 自動合焦機構
11 照明光学系
13 対物レンズ
15 検出部
17 合焦調節部
36 撮像面
53 撮像装置(画像取得部)
100 顕微鏡装置
A 標本
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カバーガラス付きの標本に照射される照明光をライン状に集光する照明光学系と、
前記ライン状に集光された照明光を前記標本に照射し、前記カバーガラスからの反射光を集光する対物レンズと、
該対物レンズにより集光された前記反射光の光軸に対して傾斜して配置された撮像面を有し、前記反射光を撮影して画像情報を検出する検出部と、
該検出部により検出された前記画像情報における光強度の最も高い位置が前記光軸上に位置するように、前記対物レンズと前記カバーガラス付きの標本とを前記光軸方向に相対移動させる合焦調節部とを備える自動合焦機構。
【請求項2】
カバーガラス付きの標本に照射される照明光をライン状に集光する照明光学系と、
前記ライン状に集光された照明光を前記標本に照射し、前記カバーガラスからの反射光を集光する対物レンズと、
該対物レンズにより集光された前記反射光の光軸に対して傾斜して配置された撮像面を有し、前記反射光を撮影して画像情報を検出する検出部と、
該検出部により検出された前記画像情報における光強度の最も高い位置が前記光軸上から所定の距離だけ離れるように、前記対物レンズと前記カバーガラス付きの標本とを前記光軸方向に相対移動させる合焦調節部とを備える自動合焦機構。
【請求項3】
前記検出部の撮像面が前記反射光の光束の短軸回りに傾斜している請求項1または請求項2に記載の自動合焦機構。
【請求項4】
前記反射光の光軸に対する前記撮像面の傾きが以下の式を満たす請求項1から請求項3のいずれかに記載の自動合焦機構。
{(p×tanθ)/β2}<{(1.2×λ)/NA2}
ここで、p:撮像面を構成する受光素子の長さ(μm)
θ:反射光の光軸に対する撮像面の傾き(rad)
β:装置全体の撮像倍率(倍)
NA:対物レンズの開口数
λ:光源の波長(μm)
【請求項5】
前記合焦調節部が、以下の式により前記対物レンズと前記標本との相対移動量を設定する請求項1から請求項4のいずれかに記載の自動合焦機構。
(a×p×tanθ)/β2
ここで、a:撮像面に入射される反射光の光束の中心から撮像面における中心の画素までの画素数
【請求項6】
前記カバーガラス付きの標本に対する前記撮像面の傾きが一定の角度となるように、前記カバーガラス付きの標本の傾きを調節する傾き調節部を備える請求項1から請求項5のいずれかに記載の自動合焦機構。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の自動合焦機構と、
前記標本を載置し、前記光軸方向に移動可能なステージと、
前記検出部により取得された前記画像情報に基づいて前記標本の画像を取得する画像取得部とを備える顕微鏡装置。
【請求項1】
カバーガラス付きの標本に照射される照明光をライン状に集光する照明光学系と、
前記ライン状に集光された照明光を前記標本に照射し、前記カバーガラスからの反射光を集光する対物レンズと、
該対物レンズにより集光された前記反射光の光軸に対して傾斜して配置された撮像面を有し、前記反射光を撮影して画像情報を検出する検出部と、
該検出部により検出された前記画像情報における光強度の最も高い位置が前記光軸上に位置するように、前記対物レンズと前記カバーガラス付きの標本とを前記光軸方向に相対移動させる合焦調節部とを備える自動合焦機構。
【請求項2】
カバーガラス付きの標本に照射される照明光をライン状に集光する照明光学系と、
前記ライン状に集光された照明光を前記標本に照射し、前記カバーガラスからの反射光を集光する対物レンズと、
該対物レンズにより集光された前記反射光の光軸に対して傾斜して配置された撮像面を有し、前記反射光を撮影して画像情報を検出する検出部と、
該検出部により検出された前記画像情報における光強度の最も高い位置が前記光軸上から所定の距離だけ離れるように、前記対物レンズと前記カバーガラス付きの標本とを前記光軸方向に相対移動させる合焦調節部とを備える自動合焦機構。
【請求項3】
前記検出部の撮像面が前記反射光の光束の短軸回りに傾斜している請求項1または請求項2に記載の自動合焦機構。
【請求項4】
前記反射光の光軸に対する前記撮像面の傾きが以下の式を満たす請求項1から請求項3のいずれかに記載の自動合焦機構。
{(p×tanθ)/β2}<{(1.2×λ)/NA2}
ここで、p:撮像面を構成する受光素子の長さ(μm)
θ:反射光の光軸に対する撮像面の傾き(rad)
β:装置全体の撮像倍率(倍)
NA:対物レンズの開口数
λ:光源の波長(μm)
【請求項5】
前記合焦調節部が、以下の式により前記対物レンズと前記標本との相対移動量を設定する請求項1から請求項4のいずれかに記載の自動合焦機構。
(a×p×tanθ)/β2
ここで、a:撮像面に入射される反射光の光束の中心から撮像面における中心の画素までの画素数
【請求項6】
前記カバーガラス付きの標本に対する前記撮像面の傾きが一定の角度となるように、前記カバーガラス付きの標本の傾きを調節する傾き調節部を備える請求項1から請求項5のいずれかに記載の自動合焦機構。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の自動合焦機構と、
前記標本を載置し、前記光軸方向に移動可能なステージと、
前記検出部により取得された前記画像情報に基づいて前記標本の画像を取得する画像取得部とを備える顕微鏡装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
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【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2012−141452(P2012−141452A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−294260(P2010−294260)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
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