自動吐水制御装置
【課題】 自動吐水制御装置を持つ洗面台で、検知対象物の進入角度、進入位置の如何に関らず、洗面台の上方空間に進入する検知対象物を確実に検知して吐水を行うようにする。
【解決手段】 マイクロ波センサ7はアンテナ51と、アンテナ51を励振して電波ビームを放射させると共に受信した反射電波の信号からドップラ信号を生成するドライバ回路53とを有する。ドライバ回路53はアンテナ51を操作して電波ビームの放射方向をシンクの上方空間領域からシンクの底部領域へ、又はこれとは逆に切替える機能を持つ。コントローラ部9はドライバ回路53からドップラ信号を入力し、手の進入や手洗いの継続などを判断し、この判断結果に応じて水栓機構に接続されるバルブ5の開/閉制御を行ったり、電波ビームの放射方向の切替え指示をドライバ回路53に与えたりする。
【解決手段】 マイクロ波センサ7はアンテナ51と、アンテナ51を励振して電波ビームを放射させると共に受信した反射電波の信号からドップラ信号を生成するドライバ回路53とを有する。ドライバ回路53はアンテナ51を操作して電波ビームの放射方向をシンクの上方空間領域からシンクの底部領域へ、又はこれとは逆に切替える機能を持つ。コントローラ部9はドライバ回路53からドップラ信号を入力し、手の進入や手洗いの継続などを判断し、この判断結果に応じて水栓機構に接続されるバルブ5の開/閉制御を行ったり、電波ビームの放射方向の切替え指示をドライバ回路53に与えたりする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手洗空間及びその近傍領域での対象物の有無に応じて水栓機構の制御を行う自動吐水制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、洗面台において、使い勝手が良く、コストパフォーマンスにも優れた自動吐水制御装置の提供を目的とした提案が行われている。上記提案は、電波センサの使用により陶器を透過した動体検知を行うことで、検知精度の劣化や誤検知の低減を図ると共に、センサ組込みの必要性の無いデザイン性に優れた水栓の使用や、既存の水栓を用いた自動化を可能にすること等を意図している。そのため、上記自動吐水制御装置は、動体検知に必要な電波による信号の発信手段と受信手段とを有する電波センサと、水の吐出を制御する電磁弁と、上記電波センサでのセンシング結果により上記電磁弁を開/閉制御するコントローラと、上記電波センサの感度を調整する調整手段とを備えると共に、上記電波センサを陶器曲面に着脱可能な着脱部をも備えた構成になっている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2003-064741号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、自動水栓使用者の体の大きさは、例えば背が高くて腕が長い大人や、これとは逆に背が低くて腕も短い子供など、多様であり、それ故に、洗面台上方に差し出される手の差出し角度や、洗面台上方における手の差し出し位置も自動水栓使用者によって様々である。しかも、自動水栓使用者が、どの角度から洗面台上方に手を差し出してくるのか、また、洗面台上方のどの位置にまで手を伸ばしてくるのかという点についても、個々の自動水栓使用者によって相違するから、一律には論じられないし、予測が付かない。更に、個々の自動水栓使用者にとってみれば、洗面台や自動水栓の形状・規格・大きさ等が洗面台の設置環境によって様々であり、これから自分が使用しようとする自動水栓付の洗面台において、洗面台上方のどの辺りの位置に手を差し出せば、自動水栓からスムーズな吐水が得られるのか分からない。
【0005】
そのため、上述した提案に係る自動吐水制御装置に限らず、従来の自動吐水制御装置にあっては、電波センサ(例えばドップラ効果を利用するドップラセンサ)から放射される電波の指向方向(指向角度)から外れた位置に、自動水栓使用者の手が差し出された場合には、電波センサが差し出された手を検知しないから、自動水栓使用者が、どんなに長い間、その差し出した手を差し出した位置から動かさずに待っていても吐水が得られないことになる。
【0006】
また、上記電波センサに、ドップラ効果を利用するドップラセンサを採用した場合、手の移動方向に対し直交した電波ビームを送信した場合に、送信波の位相と受信波の位相とが変わらないために、上記ドップラセンサからドップラ出力を得ることができず、それにより吐水が行われないという不具合もある。
【0007】
従って本発明の目的は、自動吐水制御装置を備える洗面台において、物体の進入角度、及び進入位置の如何に関らず、洗面台上方に進入する物体を確実に検知して吐水が行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に従う自動吐水制御装置は、手洗空間及びその近傍領域での物体の有無に応じて水栓機構の制御を行うもので、指向性を持つ電波ビームを放射すると共に、物体から反射した電波ビームを受信する電波センサであって、上記手洗空間が含む洗面台の、上記水栓機構から吐出された水の影響を受けない表面の部位又は該部位の近傍に配置された電波センサと、上記電波センサからの出力信号に基づき、物体の有無を判別して、吐水の開始及び停止を行う吐水制御手段と、を備え、上記電波ビームは、指向性を有する電波ビームであり、その放射方向が上記電波ビームの最大強度を有する方向であって、且つ、上記洗面台に進入しようとする物体だけを検知するために、使用者と対面する方向に沿うX方向の成分、該洗面台の使用者と対面する方向と直交する側面方向に沿うY方向の成分、及び上記X、Y方向の何れとも直交するZ方向の成分を持つ。ここで、上記水栓機構から吐出された水の影響を受けない表面の部位とは、例えば、上記洗面台の表面の上記水栓機構から吐出された水がかかり難い部位、或いは洗浄動作中の手から落下し散乱する飛散水のかかり難い部位を指し、該部位の近傍とは、例えば、上記洗面台の表面の部位に対応する裏面の部位を指す。
【0009】
本発明に係る好適な実施形態では、上記X、Y、Z方向の成分の間に、X方向成分>Y方向成分か、又はZ方向成分>Y方向成分の関係が成立する。
【0010】
上記とは別の実施形態では、上記電波センサが、同時に複数方向に電波ビームを放射することが可能に構成されている。
【0011】
また、上記とは別の実施形態では、上記電波センサからの電波ビームの放射方向が、スキャニングされる。
【0012】
また、上記とは別の実施形態では、上記スキャニングが、上記X方向、又は上記Z方向に対して行われる。
【0013】
更に、上記とは別の実施形態では、上記電波センサから放射される電波ビームを、所望の方向へ反射させるための反射板を更に備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、自動吐水制御装置を備える洗面台において、物体の進入角度、及び進入位置の如何に関らず、洗面台上方に進入する物体を確実に検知して吐水が行えるようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を、図面により詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る自動吐水制御装置を備えた洗面台の一方の側面から見た斜視図、図2は、図1のA−A´線から見た洗面台要部の断面図である。
【0017】
上記洗面台は、図1に示すように、シンク1と、水栓機構3と、バルブ5と、電波センサ7と、コントローラ部9と、を備える。
【0018】
シンク1には、例えば図1で示すように、全体として略矩形状を呈するものが採用されている。シンク1の短辺側の断面形状は、図2で示すように、底部から上部開口に向かって拡がるような略台形状を呈する。シンク1の正面(前面)は、外部側面と内部側面とから成る二重構造を呈しており、該内部側面には、電波センサ7が取付けられる。シンク1の一方の側面には、水栓機構取付部1aが形成されている。
【0019】
水栓機構3は、例えば略円柱形状を呈し、給水管(図示しない)に連通する機構本体3aと、該機構本体3aからやや斜め下方に向かって延び、先端部に吐水口3cを持つ吐水部3bとから成る。水栓機構3は、吐水口3cをシンク1の上方に臨ませた状態で、機構本体3aが水栓機構取付部1aに嵌め込まれることにより、シンク1に立設して取付固定されている。
【0020】
バルブ5は、配水管11の途中の適宜な箇所に接続されている。配水管11は、一端側が機構本体3aを通じて吐水口3cに、他端側が機構本体3aを通じて給水管(図示しない)に夫々連通する。バルブ5は、コントローラ部9からの指示(バルブ制御信号)に従って配水管11を開/閉する。バルブ5が開くことにより、給水管(図示しない)を通じて供給される水が、配水管11を通じて吐水口3cから略下方に向かって吐出される。
【0021】
電波センサ7には、動体(例えば、シンク1の上方空間に進入する手35や、吐水口3cから吐出される水流、或いは水滴)検知のためのマイクロ波センサが採用されている(以下、「電波センサ7」を、「マイクロ波センサ7」と表記する)。マイクロ波センサ7は、シンク1の上方空間への手35の進入を検出するために、手35が進入する空間領域へ斜め上向きに、即ち、図1(及び図2)で示した矢印13方向を放射方向として、電波ビーム(マイクロ波)を放射する。マイクロ波センサ7が放射する電波ビーム13は、或る程度の広がりを持ち、手35の進入が検知できる或る程度広がった空間領域を、水栓機構3の正面のシンク1の内部から上方空間領域にかけて形成する。
【0022】
そして、上記空間領域に手35が進入すると、マイクロ波センサ7から放射された電波ビーム13が手35に反射されて、反射された反射電波をマイクロ波センサ7が受信する。マイクロ波センサ7は、放射される電波ビーム13の励振信号と受信された反射電波の信号とに基づいて、両信号間の周波数差に等しい周波数を持つドップラ信号を生成し、該ドップラ信号を、コントローラ部9へ出力する。
【0023】
本実施形態では、マイクロ波センサ7は、図2で示すような、断面が略くの字状を呈するマイクロ波センサ固定部材15に取付固定された状態で、シンク1の内部側面に取付固定されている。なお、マイクロ波センサ固定部材15は、シンク1の略水平面に取付固定されている。
【0024】
マイクロ波センサ7については、陶器、即ち、シンク1の裏面に直接取り付けることも可能であるが、シンク面の平坦度合のばらつきや出来上がり角度のばらつきにより、センサ設置面が安定しない。そのため、電波ビームの放射角度を正確に設定するには、例えば既述のような断面が略くの字状のマイクロ波センサ固定部材15を、シンク1の略水平面に取付固定し、その後に該マイクロ波センサ固定部材15にマイクロ波センサ7を取付固定する必要がある。
【0025】
コントローラ部9は、マイクロ波センサ7から出力されるドップラ信号に基づいて、手35が上記空間領域に進入したか否か判断し、手35が存在すると判断したら、バルブ開の制御信号を出力することによってバルブ5を開動作させ、水栓機構3から吐水口3cを通じて水を吐水させる。
【0026】
上述した水栓機構3、バルブ5、マイクロ波センサ7、及びコントローラ部9により、本発明の第1の実施形態に係る自動吐水制御装置が構成される。
【0027】
図3は、本発明の第1の実施形態に係る電波センサ、即ち、図1、及び図2で示したマイクロ波センサ7から放射される電波ビーム13の放射方向が含む複数方向の成分に係わる説明図である。
【0028】
図3(A)において、マイクロ波センサ7から放射される電波ビーム13の放射方向は、図3(B)に示すように、X(縦)方向成分15、Y(横)方向成分17、及びZ(高さ)方向成分19の3次元方向の(ベクトル)成分を持つ。
【0029】
洗浄を行おうとする手35は、基本的には、洗面台の正面(電波センサ7の取付面)から進入する場合が最も多いが、手(35)の進入方向は、洗面台(シンク)の形状や設置位置や洗面台の使用者の背の高さなどによって異なり、一律に決められるものではない。マイクロ波センサ7からの電波ビーム13の放射方向を、X方向(成分)、Y方向(成分)、及びZ方向(成分)に分解した際に、これら3つの方向成分を持つ電波ビーム(13)をマイクロ波センサ7から放射することにより、手(35)がどんな方向からシンク(1)の上方空間に進入しても、手の移動方向と電波ビームの放射方向が直交することが無い。そのため、手(35)の有無(手洗い動作の有り無し)を識別し得る検知信号(ドップラ信号)を取得することができる。
【0030】
なお、電波ビーム(13)の放射方向が、図3で示した例えばY(横)方向(成分)のみである場合、シンク1の上方空間への手(35)の進入方向が、図3におけるZX面にのみ含まれる方向であるときには、手(35)の上記進入方向と、電波ビーム(13)の放射方向とが直交することになる。そのため、マイクロ波センサ7から検知信号として得られるドップラ信号は手の凹凸の反射による若干量の反射のみの微量になるので、該ドップラ信号により、手(35)の有無(手洗い動作の有り無し)を識別することは困難である。
【0031】
図4は、本発明の第1の実施形態に係る電波センサ、即ち、図1、及び図2で示したマイクロ波センサ7から放射される電波ビーム13の放射方向と、手(35)の進入方向との関係を示す平面図である。
【0032】
図4(A)において、マイクロ波センサ7から放射される電波ビーム13の放射方向は、図4(B)に示すように、X(縦)方向、Y(横)方向、及びZ(高さ)方向の3次元方向の成分を持っている。よって、図4(A)で示すように、手35が、例えば矢印21方向からシンク1の上方空間に進入するような場合にも、或いは、矢印23方向からシンク1の上方空間に進入するような場合にも、マイクロ波センサ7からのドップラ信号により、手35の有無を識別することが可能である。
【0033】
図5は、本発明の第1の実施形態に係る電波センサ、即ち、図1、及び図2で示したマイクロ波センサ7から放射される電波ビーム13の放射方向と、手洗い動作との関係を示す平面図である。
【0034】
図5において、例えば、マイクロ波センサ7からの電波ビーム13の放射方向がX、Y、Z方向のうちの1方向の成分(例えば、X方向の成分)しか持っていなければ、以下のような不具合が生じる場合がある。
【0035】
即ち、図5(A)で示すように、片手35のみをシンク1の上方空間に進入させて片手35のみの手洗いを行う場合と、図5(B)で示すように、両手35をシンク1の上方空間に進入させて両手35の手洗いを行う場合とでは、電波ビーム13が手35の平に当るか、手35の甲に当るかによって、マイクロ波センサ7が受ける反射波の反射方向が変わることがある。片手35のみの手洗いの場合は、両手35の手洗いの場合に比べると手の厚み方向の面積が違うため、反射信号が小さく、反射波の方向がマイクロ波センサ7の方向と完全に一致しない場合には、信号が得られないことも起り得る。
【0036】
よって、電波ビーム13の放射方向がX、Y、Z方向のうちの1方向の成分(例えば、X方向の成分)しか持っていない場合には、シンク1の上方空間における手の有無、或いは手洗い動作の有り無しを、明確に検知することが不可能になる。
【0037】
しかし、図5(C)で示すように、電波ビーム13の放射方向が、X(縦)方向、Y(横)方向、及びZ(高さ)方向の3次元方向の成分を持っていれば、マイクロ波センサ7は、必ず手3からの反射波を入射して、ドップラ信号を生成することができる。
【0038】
なお、図5において、矢印25、27は、何れもシンク1の上方空間への手35の進入方向を示す。
【0039】
図6は、本発明の第1の実施形態に係る電波センサ、即ち、図1、及び図2で示したマイクロ波センサ7から放射される電波ビーム13の放射方向と、シンク1の上方空間に進入する手35の進入角度との関係を示す図1のA−A´線から見た洗面台要部の断面図である。
【0040】
図6(A)において、洗面台の使用者が、例えば大人のように比較的背の高い使用者である場合には、手35は、矢印29で示すような角度で、シンク1の上方空間に進入する。一方、洗面台の使用者が、例えば子供のように比較的背の低い使用者である場合には、手35は、矢印31で示すような角度で、シンク1の上方空間に進入する。このように、洗面台の使用者の身長の高低によって、シンク1の上方空間への手35の進入角度が相違する場合、マイクロ波センサ7から放射される電波ビーム13の放射方向がX、Y、Z方向のうちの1方向の成分(例えば、X方向の成分)しか持っていなければ、マイクロ波センサ7に入射する反射波が得られないことも起り得る。
【0041】
しかし、図6(B)で示すように、電波ビーム13の放射方向が、X(縦)方向、Y(横)方向、及びZ(高さ)方向の3次元方向の成分を持っていれば、マイクロ波センサ7は、必ず手3からの反射波を入射して、ドップラ信号を生成することができる。
【0042】
ところで、手35の進入角度(進入方向)と、電波ビーム13の放射方向とが同一になると、マイクロ波センサ7へ入射する反射波の電力を最大にして、マイクロ波センサ7における手35の検知感度を大きくすることが可能になる。洗面台の使用者は、シンク1の前面側から後面側(即ち、X方向)に進入するので、電波ビーム13の放射方向についても、X方向成分が強いことが必要である。また、シンク1は、床面から例えば700mm程度の高さに取付けられるため、洗面台の使用者は、図6(A)に示すように、手35をシンク1の前面から下方に差し出すことが多い。従って、電波ビーム13の放射方向のうちのZ成分についても、強いことが求められる。
【0043】
図7は、マイクロ波センサ7から放射される電波ビーム13の放射方向が持つ3次元のベクトル成分と、手35の進入方向を示すベクトル成分との関係を示す説明図である。
【0044】
図7(a)に示すように、手35の進入は、シンク1の正面側から背面側に向かって、且つ、上方から下方に向かって行われる。電波ビーム13の放射方向と、手35の進入方向とが同一のとき、マイクロ波センサ7は、最も強い反射波を得ることができるので、電波ビーム13の放射方向であるX方向、Y方向、及びZ方向の成分を有し、Z方向の成分を強くする(大きくする)ことによって、マイクロ波センサ7に入射する反射波の電力を大きくし、手35の有無の検知精度を向上させることが可能になる。また、図7(b)は、手の進入方向が洗面台の上面と略平行であるために、電波ビーム13の放射方向であるX方向、Y方向、Z方向のうちX方向成分とZ方向成分とを有し、X方向を大きくすると手の有無の検知精度を向上させることが可能である。
【0045】
電波ビーム13の放射方向が持つ3次元方向の(ベクトル)成分において、X(方向)成分>Y(方向)成分、若しくは、Z(成分)>Y(方向)成分の関係が成立する場合に、マイクロ波センサ7に入射する反射波の電力が大きくなる。換言すれば、電波ビーム13の放射方向におけるシンク1の横方向に対応する成分、即ち、Y方向の成分については、手35のシンク1の上方空間への進入に起因する反射波の電力増大への寄与が無い。
【0046】
なお、電波ビーム13の放射方向が持つ3次元方向の(ベクトル)成分同士の大小関係において、シンク1に対するマイクロ波センサ7の設置角度が鉛直に近似している場合には、
【0047】
X(方向)成分≧Z(方向)成分>Y(方向)成分の関係が成立するときにも、マイクロ波センサ7に入射する反射波の電力が大きくすることができる。
【0048】
図8及び図9は、本発明の第1の実施形態に係る自動吐水制御装置を備えた洗面台の、トイレブース内での設置位置を示す要部平面図である。
【0049】
図8に示す例では、上述したシンク1が、トイレブース39内の便器装置37に向かって右側の壁面に密着させた状態で設置されており、マイクロ波センサ7からは、電波ビーム13が、右側の壁面に向かって放射され、洗面台の使用者の手35も、矢印41で示すように、右側の壁面に向かってシンク1の上方空間に差し出される。一方、図9に示す例では、シンク1が、トイレブース43内の便器装置45に向かって左側の壁面に密着させた状態で設置されており、マイクロ波センサ7からは、電波ビーム13が、左側の壁面に向かって放射され、洗面台の使用者の手35も、矢印49で示すように、左側の壁面に向かってシンク1の上方空間に差し出される。
【0050】
このように、シンクのトイレブース内での設置位置が、便器装置に向かって右側の壁面に密着させた状態で設置されているか、或いは、便器装置に向かって左側の壁面に密着させた状態で設置されているかによって、洗面台の使用者の手の、シンクの上方空間への進入方向が異なる。しかし、マイクロ波センサ7から放射される電波ビーム13の放射方向が、X方向、Y方向、及びZ方向の(3次元の)ベクトル成分を持つため、トイレブース内における洗面台の設置位置の如何に拘らず、マイクロ波センサ7は、必ず、手(35)からの反射波を得ることが可能である。
【0051】
図10は、本発明の第1の実施形態に係る自動吐水制御装置の電気回路部分の構成を示すブロック図である。
【0052】
図10に示すように、上述したマイクロ波センサ7は、マイクロ波アンテナ51と、このマイクロ波アンテナ51を励振して電波ビームを放射させると共に受信された反射電波の信号からドップラ信号を生成するドライバ回路53と、を有する。ドライバ回路53は、また、マイクロ波アンテナ51を操作することにより、電波ビームの放射方向を、上述した空間領域(即ち、シンク1の上方空間領域)から上記とは別の空間領域(例えば、シンク1の底部領域)へ、又は上記とは別の空間領域から上述した空間領域へ、夫々切替える機能をも持つ。
【0053】
ドライバ回路53は、コントローラ部9に接続される。コントローラ部9は、ドライバ回路53からドップラ信号を入力し、該ドップラ信号に基づいて、手35の進入や手洗いの継続などを判断し、この判断結果に応じて、既に説明したように水栓機構3に接続されるバルブ5の開/閉制御を行ったり、上記電波ビームの放射方向の切替え指示をドライバ回路53に与えたりする。
【0054】
図11は、本発明の第1の実施形態に係わる電波センサ7の詳細を示すブロック図である。
【0055】
図11において、発振回路55で生成された電磁波は、分岐回路57を通じて送信アンテナ63側と、検波回路59側とに分岐され、送信アンテナ63側に伝送された電磁波は、送信波として送信アンテナ63から空間に放射される。この送信波がドップラセンサ67側に向かって速度Vで移動中の手35に当って反射波になると、該反射波は、ドップラセンサ67側に向かって伝播し、受信アンテナ65によって受信される。受信アンテナ65によって受信された反射波、即ち、電磁波は、分岐回路57を通じて検波回路59に出力され、検波回路59において、上記分岐された送信波の一部を基準波形として、該送信波の一部とミキシングされる。検波回路59からの出力は、下記の(1)式に示すように、物体、即ち、手35の移動速度Vに比例した周波数成分を持つ信号であり、該信号は、物体、即ち、手35とドップラセンサ67との間の距離が近くなるほど大きな振幅変化を得ることができる。
【0056】
δF=│Fs−Fb│=2×Fs×v/c (c>>vのとき)・・・(1)
【0057】
上記(1)式において、δFはドップラ周波数であり、Fsは送信波の周波数であり、Fbは受信波の周波数であり、Vは物体(即ち、手35)の移動速度であり、cは光速(300×1016m/s)である。
【0058】
図12は、例えば、図1、及び図2で示したマイクロ波センサ7からの電波ビーム13の放射方向が、X(縦)方向、Y(横)方向、Z(垂直)方向の3つの(ベクトル)成分を有している場合の、マイクロ波センサ7から出力されるドップラ信号の波形図である。マイクロ波センサ7からの出力信号であるドップラ信号の振幅を観測することができれば、それによってS/N比が得られるので、該ドップラ信号により、手35の有無(手35の手洗い動作の有り無し)を確認することが可能になる。
【0059】
図12において、図12(A)は、手35のシンク1の上方空間への進入方向と、マイクロ波センサ7からの電波ビーム13の放射方向とが同一の場合の、ドップラ信号の波形を示すもので、この場合の振幅の最大値は、略670mvに達している。手35のシンク1の上方空間への進入方向と、マイクロ波センサ7からの電波ビーム13の放射方向とが同一の場合に、マイクロ波センサ7から得られるドップラ信号の振幅が最大になる。よって、充分な大きさのS/N比が得られるので、該ドップラ信号により、手35の有無(手35の手洗い動作の有り無し)を確認することができる。
【0060】
図12(B)は、手35のシンク1の上方への進入方向と、マイクロ波センサ7からの電波ビーム13の放射方向とが同一ではないが、電波ビーム13の放射方向のX方向の成分、Y方向の成分、及びZ方向の成分の何れもが0でない場合の、ドップラ信号の波形を示すもので、この場合の振幅の最大値は、略350mvである。このように、手35のシンク1の上方空間への進入方向と、マイクロ波センサ7からの電波ビーム13の放射方向とが同一でない場合には、図12(A)で示した例と比較して、明らかにドップラ信号の振幅は小さくはなるが、或る程度の大きさのS/N比が得られるので、該ドップラ信号により、手35の有無(手35の手洗い動作の有り無し)を確認することができる。
【0061】
図12(C)は、手35のシンク1の上方空間への進入方向と、マイクロ波センサ7からの電波ビーム13の放射方向とが同一ではなく、電波ビーム13の放射方向のX方向の成分、及びZ方向の成分が0で、Y方向の成分だけが0でない場合の、ドップラ信号の波形を示すもので、この場合の振幅の最大値は、略40mvである。
【0062】
このように、手35のシンク1の上方空間への進入方向と、マイクロ波センサ7からの電波ビーム13の放射方向とが同一でなく、且つ、電波ビーム13の放射方向の2つの方向成分(X方向成分、Z方向成分)が0である場合には、ドップラ信号の振幅はノイズの振幅と略同一レベルになるので、S/N比は略1になる。よって、該ドップラ信号により、手35の有無(手35の手洗い動作の有り無し)を確認することはできない。
【0063】
図13は、本発明の第2の実施形態に係る自動吐水制御装置を備えた洗面台の一方の側面から見た斜視図である。
【0064】
本実施形態では、マイクロ波センサに、スキャニングを行うこと無しに、図13(A)で示すような複数の方向に電波ビームの放射が行える構成のマイクロ波センサ69を備える点で、図1、及び図2で示した本発明の第1の実施形態に係る自動吐水制御装置を備えた洗面台と構成が相違する。その他の構成については、図1、及び図2で示した本発明の第1の実施形態に係る自動吐水制御装置を備えた洗面台と同様である。
【0065】
即ち、マイクロ波センサ69は、図13(A)に示すように、符号71で示す第1の電波ビームと、符号73で示す第2の電波ビームとを、同時に放射する。第1の電波ビーム71、及び第2の電波ビーム73の放射方向は、夫々、図13(B)で示すような、X(方向)、Y(方向)、及びZ(方向)の3次元のベクトル成分を持つのが最良であるが、両電波ビーム併せて3方向の成分を持つように設定すれば良い。
【0066】
このように、本実施形態に係るマイクロ波センサ69は、夫々が、X、Y、及びZの3つのベクトル成分を持つ、放射方向の異なる2つの電波ビーム71、73を同時に放射することができるので、本発明の第1の実施形態に係るマイクロ波センサ7よりも、シンク1の上方空間に進入する手(35)の有無の検知精度を更に向上させることが可能である。
【0067】
図14は、本発明の第2の実施形態に係るマイクロ波センサ69が備えるアンテナの構成を示す斜視図である。
【0068】
上記アンテナは、1つのアンテナで、スキャンすること無しに複数の固定放射方向(放射パターン)を持つ態様のもので、図14に示すように、矩形平板状の基板75と、所定距離を隔てて基板75上に配置されている2個の給電素子77、79と、基板75上に配置されている2つの給電ラインA、Bと、を備える。基板75を構成する材質としては、例えば所定の比誘電率εrと、所定の誘電正接と、所定の厚みを有するガラスエポキシ材が用いられる。給電素子77と給電素子79との間の距離は、例えばλ0/2(λ0は空中を進む電波の波長であり、光速/周波数で表す)に、また、給電ラインAの長さと給電ラインBの長さとの差は、例えばλg/2(λgは比誘電率εrの基板上を進む電波の波長であり、λ0/√εrで表す)(給電素子77、79間の位相差を例えば180degに設定するため)に、夫々設定されている。ここで、アンテナの励振方向をX方向、アンテナアレイ方向をY方向、基板の厚み方向をZ方向とする。
【0069】
図15、及び図16は、図14で示した構成のアンテナから放射される電波ビームの放射パターンを示す説明図である。
【0070】
即ち、図15は、図16においてφ=90°に設定したときの、即ち、図16で示したyz面での、図14で示したアンテナから放射される電波ビームの放射パターンを示している。2つの放射パターンのうちの一方は、中心から時計方向に略25°ずれた位置にあり、他方は、中心から反時計方向に略25°ずれた位置にある。
【0071】
図17は、パッチアンテナにおいて、基板上に配置されている2個の給電素子の配置と、これら2個の給電素子からの電波ビームの放射パターンとの関係を示す説明図、図18は、パッチアンテナにおける給電位相差による電波ビームの放射方向の変化を示す図である。
【0072】
図17に示すように、パッチアンテナの基板(図示しない)上における給電素子81と給電素子83との間隔の大きさにより、給電素子81からの電波ビームの放射方向と、給電素子83からの電波ビームの放射方向との間に角度θの開きが生じる。なお、電波ビームのζ方向の角度と、給電位相差との間には、図18に示すような関係がある。
【0073】
図19は、本発明の第3の実施形態に係る自動吐水制御装置を備えた洗面台の一方の側面から見た斜視図である。
【0074】
本実施形態では、マイクロ波センサに、図19(A)で示すような、鉛直方向への電波ビーム放射のスキャニングと、図19(C)で示すような、水平方向への電波ビーム放射のスキャニングとが行える構成のマイクロ波センサ85を備える点で、上述した本発明の第1、第2の実施形態に係る自動吐水制御装置を備えた洗面台と構成が相違する。その他の構成については、本発明の第1、第2の実施形態に係る自動吐水制御装置を備えた洗面台と同様である。
【0075】
即ち、マイクロ波センサ85は、図19(A)に示すように、鉛直方向に、所定の角度間隔で電波ビーム87放射のスキャニングを行うと共に、図19(C)に示すように、水平方向に、所定の角度間隔で電波ビーム89放射のスキャニングを行う。
【0076】
このように、マイクロ波センサ85が、鉛直方向や水平方向に、電波ビーム放射のスキャニングを行うことにより、夫々の電波ビームの放射方向が、図19(B)で示すように、X、Y、Zの3つのベクトル成分を持つので、たとえ、シンク1の形状の違いやシンク1の設置条件(設置環境)の違いによって、どのような方向から洗面台使用者の手がシンク1の上方空間へ進入した場合でも、該手の進入を確実に検知することが可能である。
【0077】
よって、様々な形状や型式のシンクにも対応可能であるのみならず、シンク1の設置箇所がマイクロ波センサのセンシングの性能によって制約を受けることがなく、汎用性の高い、自動吐水制御装置を備えた洗面台の提供が可能になる。
【0078】
また、上記スキャニングを行っている中で、マイクロ波センサが受ける反射波の電力が最大になる電波ビームの放射方向を選択することができ、該選択により、シンク1の上方空間へ進入する手の検知精度の向上を図ることも可能になる。
【0079】
なお、マイクロ波センサ85からの電波ビーム放射のスキャニングを、図19(A)に示すように鉛直方向にするか、或いは、図19(C)に示すように水平方向にするかは、シンク1の形状や、設置条件により選択することとしても良い。
【0080】
図20は、本発明の第4の実施形態に係る自動吐水制御装置を備えた洗面台の一方の側面から見た斜視図である。
【0081】
本実施形態では、マイクロ波センサ91から放射される電波ビームを反射して、所定方向へ導く反射板93を備える点で、上述した本発明の第1、第2、第3の実施形態に係る自動吐水制御装置を備えた洗面台と構成が相違する。その他の構成については、本発明の第1、第2、第3の実施形態に係る自動吐水制御装置を備えた洗面台と同様である。
【0082】
反射板93は、図20(A)に示すように、水栓機構取付部1aにおける機構本体3aの近傍位置に、マイクロ波センサ91から矢印95方向へ放射される電波ビームを、矢印97方向へ放射方向を変更すべく、設置角度を調整されて設けられている。なお、反射板93には、電波ビ−ムを反射させ得る金属板が採用される。反射板93の設置角度は、図20(B)に示す電波ビームの放射方向が持つX、Y、Zの3つのベクトル成分のうち、シンク1の上方空間への手の進入方向に関連するベクトル成分が増大するような角度に調整することが望ましい。
【0083】
例えば、シンク1の正面方向からシンク1の上方空間に手が進入する場合には、上記X方向の成分が増大するように、反射板93を介してマイクロ波センサ91からの電波ビームの放射方向が調整される。
【0084】
本実施形態によれば、マイクロ波センサ91の設置位置が、シンク1の上方空間に進入する手の進入方向にそぐわない場合や、マイクロ波センサ91が取付けられるシンク1の形状によっては、シンク1の上方空間への手の進入方向が、通常想定される手の進入方向と異なる場合であっても、反射板の設置角度を調整することにより、確実に手を検知することが可能である。
【0085】
図21は、本発明に係る自動吐水制御装置を備えた洗面台と、従来の自動吐水制御装置を備えた洗面台との構成上の違いを示す説明図である。
【0086】
図21において、図21(A)、及び図21(B)は、夫々従来の自動吐水制御装置を備えた洗面台の例を示す説明図であり、図21(C)が、本発明に係る自動吐水制御装置を備えた洗面台の例を示す説明図である。
【0087】
図21(A)で示す従来の例では、電波センサ99の設置位置は、手洗い鉢(シンク)101の下側であり、電波センサ99からの電波ビームの放射方向は、床面に対して垂直方向(即ち、鉛直方向)に設定されている。
【0088】
次に、図21(B)で示す別の従来の例では、電波センサ99は、単独ではなく、水栓機構(図示しない)に連通する給水管(図示しない)の途中に設置される電磁弁ユニット(図示しない)などと一体的に構成されており、電波センサ99からの電波ビームの放射方向は、鉛直方向に設定されている(図21(A)、(B)の構成の詳細については、特開2004−232282号公報を参照)。
【0089】
図21(A)で示す構成の洗面台では、電波センサ99からの電波ビームの放射方向が、鉛直方向に設定されているが故に、水栓機構(図示しない)の吐水口(図示しない)から吐出された水が、手洗い鉢101の最下位置(底面)の排水口103を通じて手洗い鉢101から略完全に排出され終わるまで、電波センサ99が水の検知を継続してしまう。そのため、手105が手洗い鉢101から退出しても、コントローラ部(図示しない)は検知対象物である手105が無くなったと判断することができない。また、電波センサの取付位置が洗面器の下方の後部であり、前方に向かって電波ビームを放射しているため、使用者の手だけでなく、体(上半身)にも電波ビームが到達することになる。その結果、電波ビームの当る面積が手<<体であるにも拘らず、電波センサ"手"間距離≒(>)電波センサ"体"間距離であるために、後者の出力強度の方が大きく、出力差によって検知対象物までの距離を検出する方式では、手の進入だけを検知することができない。従って、使用者が洗面ボールに手を出すよりも洗面ボールに近づいた瞬間に吐水を開始することになり、洗面器に隣接して設置している鏡を利用したり、収納棚を利用する場合に水跳ねのある使い勝手の悪い自動吐水制御装置となる。図21(B)についても、電波センサの設置位置を水栓側に変更した方が良い。
【0090】
また、図21(B)で示す構成の洗面台では、電波センサ99と、手洗い鉢103との間が大きく開いているため、電波センサ99からの電波ビームのうちの、手洗い鉢101の外壁に当って反射する成分が、洗面台使用者107の足に当って反射して電波センサ99に入射するので、コントローラ部(図示しない)が、洗面台使用者107の足の動きを、該洗面台使用者107の手の動作と誤認してしまう虞がある。
【0091】
それに比較して、本発明に係る自動吐水制御装置を備えた洗面台では、図21(C)に示すように、電波センサ99が、手洗い鉢101を構成する陶器内部、或いは手洗い鉢101を支持するカウンタ(図示しない)内部に設置されるので、電波センサ99からの電波ビームのうちの、手洗い鉢101の外壁を透過する成分が、無視できるほど小さいから、洗面台使用者107の足に当って反射した反射波の成分により、コントローラ部(図示しない)が、洗面台使用者107の足の動きを、該洗面台使用者107の手の動作と誤認してしまう虞は無い。
【0092】
図22は、本発明に係る自動吐水制御装置を備えた洗面台と、従来の自動吐水制御装置を備えた洗面台との構成上の違いを示す別の説明図である。
【0093】
図22において、図22(A)は、従来の自動吐水制御装置を備えた洗面台の例を示す説明図、図22(B)は、図22(A)で示した洗面台が備える電波センサからの出力信号のレベルを示す説明図である。また、図22(C)は、本発明に係る自動吐水制御装置を備えた洗面台の例を示す説明図、図22(D)は、図22(C)で示した洗面台が備える電波センサからの出力信号のレベルを示す説明図である。
【0094】
図22(A)で示す従来の例では、電波センサが、送信部111と受信部113とに分離されており、送信部111と、受信部113とは、夫々手洗い鉢115の周縁部の内部側面であって、手洗い鉢115の略中心に位置する排水口117を通る直線上の位置に配置されている。そして、送信部111からの電波ビーム119は、水栓機構(図示しない)の吐水口(図示しない)から吐出される整流水を避けるように、放射方向が2方向に設定されている。この構成において、検知対象物である手121が、送信部111と受信部113との対向している空間領域に進入することにより、受信部113に受信されるべき送信部111からの電波ビーム119が遮断されることで、コントローラ部(図示しない)が、該手121の存在を認識する(図22(A)の構成の詳細については、特開2004−124363号公報を参照)。
【0095】
しかし、上記構成では、受信部113の設置位置が、送信部111から放射される電波ビーム119の進行方向上に限定される上に、手洗い鉢115の上端縁よりも上方に、検知対象物である手121の検知領域を設定することができない。また、電波ビームをどこで遮っても同一の信号を得るために、水栓装置から離れた手を検知して吐水する。また、検知対象物である手121が、大人の手であるか、子供の手であるか、手を揃えているか、指を開いているかによって、送信部111から遮断される電波ビーム119の遮断量が異なるので、コントローラ部(図示しない)は、電波ビ−ム119の遮断量の大きさを基準として検知対象物である手119の有無を判断することができない。因みに、子供の手よりも大人の手の方が、指を開いているよりも手を揃えている方が、送信部111と受信部113との間の空間において送信部111からの電波ビーム119を遮る面積が大きくなるので、電波ビーム119の伝達を阻害する物体として大きく作用する。
【0096】
図22(B)において、符号123で示す波形は、子供の手が送信部111と受信部113との間に存在していないときの受信部113における受信電力を示し、符号125で示す波形は、子供の手が送信部111と受信部113との間に存在しているときの受信部113における受信電力を示す。両者を比較対照すると、受信電力強度の差があまりないことが明らかである。
【0097】
一方、図22(C)で示す本発明に係る自動吐水制御装置を備えた洗面台の例では、電波センサ127が、図示のように、送信部と受信部とが一体化された構成になっている。そのため、電波センサ127からの電波ビーム131の放射方向を調整するだけで、検知対象物である手129の検知領域を、手洗い鉢133内部でも、或いは、手洗い鉢133の上方空間領域でも自在に設定することが可能である。しかも、本発明では、コントローラ部(図示しない)は、電波センサ127に入射する反射波の受信強度のみならず、電波センサ127から出力されるドップラ信号の周波数成分をも考慮して、検知対象物である手の有無等の判断を行うこととしているので、大人の手か子供の手かによって、検知精度が影響を受けることはない。
【0098】
図22(D)において、符号135で示す波形は、子供の手が検知領域に存在しているときの、電波センサ127から出力されるドップラ信号の、オシロスコープで確認した波形であり、符号137で示す波形は、子供の手が検知領域に存在しているときの、電波センサ127から出力されるドップラ信号の、スペクトラムアナライザで確認した波形である。何れの波形とも、振幅が小さくても、手の移動による周波数成分の検知が可能であることを示している。
【0099】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、これらは本発明の説明のための例示であって、本発明の範囲をこれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、他の種々の形態でも実施することが可能である。
【0100】
例えば、複数のマイクロ波センサを、夫々からの電波ビームが異なる方向に放射されるよう、シンクの適宜箇所に設置することにより、放射方向がX、Y、Z方向の成分を多数持った電波ビームを実現することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る自動吐水制御装置を備えた洗面台の一方の側面から見た斜視図。
【図2】図1のA−A´線から見た洗面台要部の断面図。
【図3】本発明の第1の実施形態に係るマイクロ波センサから放射される電波ビームの放射方向が含む複数方向の成分に係わる説明図。
【図4】本発明の第1の実施形態に係るマイクロ波センサから放射される電波ビームの放射方向と、手の進入方向との関係を示す平面図。
【図5】本発明の第1の実施形態に係るマイクロ波センサから放射される電波ビームの放射方向と、手洗い動作との関係を示す平面図。
【図6】本発明の第1の実施形態に係るマイクロ波センサから放射される電波ビームの放射方向と、シンクの上方空間に進入する手の進入角度との関係を示す図1のA−A´線から見た洗面台要部の断面図。
【図7】マイクロ波センサから放射される電波ビームの放射方向が持つ3次元のベクトル成分と、手の進入方向を示すベクトル成分との関係を示す説明図。
【図8】本発明の第1の実施形態に係る自動吐水制御装置を備えた洗面台の、トイレブース内での設置位置を示す要部平面図。
【図9】本発明の第1の実施形態に係る自動吐水制御装置を備えた洗面台の、トイレブース内での設置位置を示す要部平面図。
【図10】本発明の第1の実施形態に係る自動吐水制御装置の電気回路部分の構成を示すブロック図。
【図11】本発明の第1の実施形態に係わる電波センサの詳細を示すブロック図。
【図12】図1、及び図2で示したマイクロ波センサからの電波ビームが、X、Y、Zの3つのベクトル成分を有している場合の、マイクロ波センサから出力されるドップラ信号の波形図。
【図13】本発明の第2の実施形態に係る自動吐水制御装置を備えた洗面台の一方の側面から見た斜視図。
【図14】本発明の第2の実施形態に係るマイクロ波センサが備えるアンテナの構成を示す斜視図。
【図15】図14で示した構成のアンテナから放射される電波ビームの放射パターンを示す説明図。
【図16】図14で示した構成のアンテナから放射される電波ビームの放射パターンを示す説明図。
【図17】パッチアンテナにおいて、基板上に配置されている2個の給電素子の配置と、これら2個の給電素子からの電波ビームの放射パターンとの関係を示す説明図。
【図18】パッチアンテナにおける給電位相差による電波ビームの放射方向の変化を示す図。
【図19】本発明の第3の実施形態に係る自動吐水制御装置を備えた洗面台の一方の側面から見た斜視図。
【図20】本発明の第4の実施形態に係る自動吐水制御装置を備えた洗面台の一方の側面から見た斜視図。
【図21】本発明に係る自動吐水制御装置を備えた洗面台と、従来の自動吐水制御装置を備えた洗面台との構成上の違いを示す説明図。
【図22】本発明に係る自動吐水制御装置を備えた洗面台と、従来の自動吐水制御装置を備えた洗面台との構成上の違いを示す別の説明図。
【符号の説明】
【0102】
1 シンク
1a 水栓機構取付部
3 水栓機構
3a 機構本体
3b 吐水部
3c 吐水口
5 バルブ
7 電波センサ(マイクロ波センサ)
9 コントローラ部
11 配水管
15 マイクロ波センサ固定部材
37、45 便器装置
39、43 トイレブース
51 マイクロ波アンテナ
53 ドライバ回路
55 発振回路
57 分岐回路
59 検波回路
63 送信アンテナ
65 受信アンテナ
67 ドップラセンサ
【技術分野】
【0001】
本発明は、手洗空間及びその近傍領域での対象物の有無に応じて水栓機構の制御を行う自動吐水制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、洗面台において、使い勝手が良く、コストパフォーマンスにも優れた自動吐水制御装置の提供を目的とした提案が行われている。上記提案は、電波センサの使用により陶器を透過した動体検知を行うことで、検知精度の劣化や誤検知の低減を図ると共に、センサ組込みの必要性の無いデザイン性に優れた水栓の使用や、既存の水栓を用いた自動化を可能にすること等を意図している。そのため、上記自動吐水制御装置は、動体検知に必要な電波による信号の発信手段と受信手段とを有する電波センサと、水の吐出を制御する電磁弁と、上記電波センサでのセンシング結果により上記電磁弁を開/閉制御するコントローラと、上記電波センサの感度を調整する調整手段とを備えると共に、上記電波センサを陶器曲面に着脱可能な着脱部をも備えた構成になっている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2003-064741号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、自動水栓使用者の体の大きさは、例えば背が高くて腕が長い大人や、これとは逆に背が低くて腕も短い子供など、多様であり、それ故に、洗面台上方に差し出される手の差出し角度や、洗面台上方における手の差し出し位置も自動水栓使用者によって様々である。しかも、自動水栓使用者が、どの角度から洗面台上方に手を差し出してくるのか、また、洗面台上方のどの位置にまで手を伸ばしてくるのかという点についても、個々の自動水栓使用者によって相違するから、一律には論じられないし、予測が付かない。更に、個々の自動水栓使用者にとってみれば、洗面台や自動水栓の形状・規格・大きさ等が洗面台の設置環境によって様々であり、これから自分が使用しようとする自動水栓付の洗面台において、洗面台上方のどの辺りの位置に手を差し出せば、自動水栓からスムーズな吐水が得られるのか分からない。
【0005】
そのため、上述した提案に係る自動吐水制御装置に限らず、従来の自動吐水制御装置にあっては、電波センサ(例えばドップラ効果を利用するドップラセンサ)から放射される電波の指向方向(指向角度)から外れた位置に、自動水栓使用者の手が差し出された場合には、電波センサが差し出された手を検知しないから、自動水栓使用者が、どんなに長い間、その差し出した手を差し出した位置から動かさずに待っていても吐水が得られないことになる。
【0006】
また、上記電波センサに、ドップラ効果を利用するドップラセンサを採用した場合、手の移動方向に対し直交した電波ビームを送信した場合に、送信波の位相と受信波の位相とが変わらないために、上記ドップラセンサからドップラ出力を得ることができず、それにより吐水が行われないという不具合もある。
【0007】
従って本発明の目的は、自動吐水制御装置を備える洗面台において、物体の進入角度、及び進入位置の如何に関らず、洗面台上方に進入する物体を確実に検知して吐水が行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に従う自動吐水制御装置は、手洗空間及びその近傍領域での物体の有無に応じて水栓機構の制御を行うもので、指向性を持つ電波ビームを放射すると共に、物体から反射した電波ビームを受信する電波センサであって、上記手洗空間が含む洗面台の、上記水栓機構から吐出された水の影響を受けない表面の部位又は該部位の近傍に配置された電波センサと、上記電波センサからの出力信号に基づき、物体の有無を判別して、吐水の開始及び停止を行う吐水制御手段と、を備え、上記電波ビームは、指向性を有する電波ビームであり、その放射方向が上記電波ビームの最大強度を有する方向であって、且つ、上記洗面台に進入しようとする物体だけを検知するために、使用者と対面する方向に沿うX方向の成分、該洗面台の使用者と対面する方向と直交する側面方向に沿うY方向の成分、及び上記X、Y方向の何れとも直交するZ方向の成分を持つ。ここで、上記水栓機構から吐出された水の影響を受けない表面の部位とは、例えば、上記洗面台の表面の上記水栓機構から吐出された水がかかり難い部位、或いは洗浄動作中の手から落下し散乱する飛散水のかかり難い部位を指し、該部位の近傍とは、例えば、上記洗面台の表面の部位に対応する裏面の部位を指す。
【0009】
本発明に係る好適な実施形態では、上記X、Y、Z方向の成分の間に、X方向成分>Y方向成分か、又はZ方向成分>Y方向成分の関係が成立する。
【0010】
上記とは別の実施形態では、上記電波センサが、同時に複数方向に電波ビームを放射することが可能に構成されている。
【0011】
また、上記とは別の実施形態では、上記電波センサからの電波ビームの放射方向が、スキャニングされる。
【0012】
また、上記とは別の実施形態では、上記スキャニングが、上記X方向、又は上記Z方向に対して行われる。
【0013】
更に、上記とは別の実施形態では、上記電波センサから放射される電波ビームを、所望の方向へ反射させるための反射板を更に備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、自動吐水制御装置を備える洗面台において、物体の進入角度、及び進入位置の如何に関らず、洗面台上方に進入する物体を確実に検知して吐水が行えるようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を、図面により詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る自動吐水制御装置を備えた洗面台の一方の側面から見た斜視図、図2は、図1のA−A´線から見た洗面台要部の断面図である。
【0017】
上記洗面台は、図1に示すように、シンク1と、水栓機構3と、バルブ5と、電波センサ7と、コントローラ部9と、を備える。
【0018】
シンク1には、例えば図1で示すように、全体として略矩形状を呈するものが採用されている。シンク1の短辺側の断面形状は、図2で示すように、底部から上部開口に向かって拡がるような略台形状を呈する。シンク1の正面(前面)は、外部側面と内部側面とから成る二重構造を呈しており、該内部側面には、電波センサ7が取付けられる。シンク1の一方の側面には、水栓機構取付部1aが形成されている。
【0019】
水栓機構3は、例えば略円柱形状を呈し、給水管(図示しない)に連通する機構本体3aと、該機構本体3aからやや斜め下方に向かって延び、先端部に吐水口3cを持つ吐水部3bとから成る。水栓機構3は、吐水口3cをシンク1の上方に臨ませた状態で、機構本体3aが水栓機構取付部1aに嵌め込まれることにより、シンク1に立設して取付固定されている。
【0020】
バルブ5は、配水管11の途中の適宜な箇所に接続されている。配水管11は、一端側が機構本体3aを通じて吐水口3cに、他端側が機構本体3aを通じて給水管(図示しない)に夫々連通する。バルブ5は、コントローラ部9からの指示(バルブ制御信号)に従って配水管11を開/閉する。バルブ5が開くことにより、給水管(図示しない)を通じて供給される水が、配水管11を通じて吐水口3cから略下方に向かって吐出される。
【0021】
電波センサ7には、動体(例えば、シンク1の上方空間に進入する手35や、吐水口3cから吐出される水流、或いは水滴)検知のためのマイクロ波センサが採用されている(以下、「電波センサ7」を、「マイクロ波センサ7」と表記する)。マイクロ波センサ7は、シンク1の上方空間への手35の進入を検出するために、手35が進入する空間領域へ斜め上向きに、即ち、図1(及び図2)で示した矢印13方向を放射方向として、電波ビーム(マイクロ波)を放射する。マイクロ波センサ7が放射する電波ビーム13は、或る程度の広がりを持ち、手35の進入が検知できる或る程度広がった空間領域を、水栓機構3の正面のシンク1の内部から上方空間領域にかけて形成する。
【0022】
そして、上記空間領域に手35が進入すると、マイクロ波センサ7から放射された電波ビーム13が手35に反射されて、反射された反射電波をマイクロ波センサ7が受信する。マイクロ波センサ7は、放射される電波ビーム13の励振信号と受信された反射電波の信号とに基づいて、両信号間の周波数差に等しい周波数を持つドップラ信号を生成し、該ドップラ信号を、コントローラ部9へ出力する。
【0023】
本実施形態では、マイクロ波センサ7は、図2で示すような、断面が略くの字状を呈するマイクロ波センサ固定部材15に取付固定された状態で、シンク1の内部側面に取付固定されている。なお、マイクロ波センサ固定部材15は、シンク1の略水平面に取付固定されている。
【0024】
マイクロ波センサ7については、陶器、即ち、シンク1の裏面に直接取り付けることも可能であるが、シンク面の平坦度合のばらつきや出来上がり角度のばらつきにより、センサ設置面が安定しない。そのため、電波ビームの放射角度を正確に設定するには、例えば既述のような断面が略くの字状のマイクロ波センサ固定部材15を、シンク1の略水平面に取付固定し、その後に該マイクロ波センサ固定部材15にマイクロ波センサ7を取付固定する必要がある。
【0025】
コントローラ部9は、マイクロ波センサ7から出力されるドップラ信号に基づいて、手35が上記空間領域に進入したか否か判断し、手35が存在すると判断したら、バルブ開の制御信号を出力することによってバルブ5を開動作させ、水栓機構3から吐水口3cを通じて水を吐水させる。
【0026】
上述した水栓機構3、バルブ5、マイクロ波センサ7、及びコントローラ部9により、本発明の第1の実施形態に係る自動吐水制御装置が構成される。
【0027】
図3は、本発明の第1の実施形態に係る電波センサ、即ち、図1、及び図2で示したマイクロ波センサ7から放射される電波ビーム13の放射方向が含む複数方向の成分に係わる説明図である。
【0028】
図3(A)において、マイクロ波センサ7から放射される電波ビーム13の放射方向は、図3(B)に示すように、X(縦)方向成分15、Y(横)方向成分17、及びZ(高さ)方向成分19の3次元方向の(ベクトル)成分を持つ。
【0029】
洗浄を行おうとする手35は、基本的には、洗面台の正面(電波センサ7の取付面)から進入する場合が最も多いが、手(35)の進入方向は、洗面台(シンク)の形状や設置位置や洗面台の使用者の背の高さなどによって異なり、一律に決められるものではない。マイクロ波センサ7からの電波ビーム13の放射方向を、X方向(成分)、Y方向(成分)、及びZ方向(成分)に分解した際に、これら3つの方向成分を持つ電波ビーム(13)をマイクロ波センサ7から放射することにより、手(35)がどんな方向からシンク(1)の上方空間に進入しても、手の移動方向と電波ビームの放射方向が直交することが無い。そのため、手(35)の有無(手洗い動作の有り無し)を識別し得る検知信号(ドップラ信号)を取得することができる。
【0030】
なお、電波ビーム(13)の放射方向が、図3で示した例えばY(横)方向(成分)のみである場合、シンク1の上方空間への手(35)の進入方向が、図3におけるZX面にのみ含まれる方向であるときには、手(35)の上記進入方向と、電波ビーム(13)の放射方向とが直交することになる。そのため、マイクロ波センサ7から検知信号として得られるドップラ信号は手の凹凸の反射による若干量の反射のみの微量になるので、該ドップラ信号により、手(35)の有無(手洗い動作の有り無し)を識別することは困難である。
【0031】
図4は、本発明の第1の実施形態に係る電波センサ、即ち、図1、及び図2で示したマイクロ波センサ7から放射される電波ビーム13の放射方向と、手(35)の進入方向との関係を示す平面図である。
【0032】
図4(A)において、マイクロ波センサ7から放射される電波ビーム13の放射方向は、図4(B)に示すように、X(縦)方向、Y(横)方向、及びZ(高さ)方向の3次元方向の成分を持っている。よって、図4(A)で示すように、手35が、例えば矢印21方向からシンク1の上方空間に進入するような場合にも、或いは、矢印23方向からシンク1の上方空間に進入するような場合にも、マイクロ波センサ7からのドップラ信号により、手35の有無を識別することが可能である。
【0033】
図5は、本発明の第1の実施形態に係る電波センサ、即ち、図1、及び図2で示したマイクロ波センサ7から放射される電波ビーム13の放射方向と、手洗い動作との関係を示す平面図である。
【0034】
図5において、例えば、マイクロ波センサ7からの電波ビーム13の放射方向がX、Y、Z方向のうちの1方向の成分(例えば、X方向の成分)しか持っていなければ、以下のような不具合が生じる場合がある。
【0035】
即ち、図5(A)で示すように、片手35のみをシンク1の上方空間に進入させて片手35のみの手洗いを行う場合と、図5(B)で示すように、両手35をシンク1の上方空間に進入させて両手35の手洗いを行う場合とでは、電波ビーム13が手35の平に当るか、手35の甲に当るかによって、マイクロ波センサ7が受ける反射波の反射方向が変わることがある。片手35のみの手洗いの場合は、両手35の手洗いの場合に比べると手の厚み方向の面積が違うため、反射信号が小さく、反射波の方向がマイクロ波センサ7の方向と完全に一致しない場合には、信号が得られないことも起り得る。
【0036】
よって、電波ビーム13の放射方向がX、Y、Z方向のうちの1方向の成分(例えば、X方向の成分)しか持っていない場合には、シンク1の上方空間における手の有無、或いは手洗い動作の有り無しを、明確に検知することが不可能になる。
【0037】
しかし、図5(C)で示すように、電波ビーム13の放射方向が、X(縦)方向、Y(横)方向、及びZ(高さ)方向の3次元方向の成分を持っていれば、マイクロ波センサ7は、必ず手3からの反射波を入射して、ドップラ信号を生成することができる。
【0038】
なお、図5において、矢印25、27は、何れもシンク1の上方空間への手35の進入方向を示す。
【0039】
図6は、本発明の第1の実施形態に係る電波センサ、即ち、図1、及び図2で示したマイクロ波センサ7から放射される電波ビーム13の放射方向と、シンク1の上方空間に進入する手35の進入角度との関係を示す図1のA−A´線から見た洗面台要部の断面図である。
【0040】
図6(A)において、洗面台の使用者が、例えば大人のように比較的背の高い使用者である場合には、手35は、矢印29で示すような角度で、シンク1の上方空間に進入する。一方、洗面台の使用者が、例えば子供のように比較的背の低い使用者である場合には、手35は、矢印31で示すような角度で、シンク1の上方空間に進入する。このように、洗面台の使用者の身長の高低によって、シンク1の上方空間への手35の進入角度が相違する場合、マイクロ波センサ7から放射される電波ビーム13の放射方向がX、Y、Z方向のうちの1方向の成分(例えば、X方向の成分)しか持っていなければ、マイクロ波センサ7に入射する反射波が得られないことも起り得る。
【0041】
しかし、図6(B)で示すように、電波ビーム13の放射方向が、X(縦)方向、Y(横)方向、及びZ(高さ)方向の3次元方向の成分を持っていれば、マイクロ波センサ7は、必ず手3からの反射波を入射して、ドップラ信号を生成することができる。
【0042】
ところで、手35の進入角度(進入方向)と、電波ビーム13の放射方向とが同一になると、マイクロ波センサ7へ入射する反射波の電力を最大にして、マイクロ波センサ7における手35の検知感度を大きくすることが可能になる。洗面台の使用者は、シンク1の前面側から後面側(即ち、X方向)に進入するので、電波ビーム13の放射方向についても、X方向成分が強いことが必要である。また、シンク1は、床面から例えば700mm程度の高さに取付けられるため、洗面台の使用者は、図6(A)に示すように、手35をシンク1の前面から下方に差し出すことが多い。従って、電波ビーム13の放射方向のうちのZ成分についても、強いことが求められる。
【0043】
図7は、マイクロ波センサ7から放射される電波ビーム13の放射方向が持つ3次元のベクトル成分と、手35の進入方向を示すベクトル成分との関係を示す説明図である。
【0044】
図7(a)に示すように、手35の進入は、シンク1の正面側から背面側に向かって、且つ、上方から下方に向かって行われる。電波ビーム13の放射方向と、手35の進入方向とが同一のとき、マイクロ波センサ7は、最も強い反射波を得ることができるので、電波ビーム13の放射方向であるX方向、Y方向、及びZ方向の成分を有し、Z方向の成分を強くする(大きくする)ことによって、マイクロ波センサ7に入射する反射波の電力を大きくし、手35の有無の検知精度を向上させることが可能になる。また、図7(b)は、手の進入方向が洗面台の上面と略平行であるために、電波ビーム13の放射方向であるX方向、Y方向、Z方向のうちX方向成分とZ方向成分とを有し、X方向を大きくすると手の有無の検知精度を向上させることが可能である。
【0045】
電波ビーム13の放射方向が持つ3次元方向の(ベクトル)成分において、X(方向)成分>Y(方向)成分、若しくは、Z(成分)>Y(方向)成分の関係が成立する場合に、マイクロ波センサ7に入射する反射波の電力が大きくなる。換言すれば、電波ビーム13の放射方向におけるシンク1の横方向に対応する成分、即ち、Y方向の成分については、手35のシンク1の上方空間への進入に起因する反射波の電力増大への寄与が無い。
【0046】
なお、電波ビーム13の放射方向が持つ3次元方向の(ベクトル)成分同士の大小関係において、シンク1に対するマイクロ波センサ7の設置角度が鉛直に近似している場合には、
【0047】
X(方向)成分≧Z(方向)成分>Y(方向)成分の関係が成立するときにも、マイクロ波センサ7に入射する反射波の電力が大きくすることができる。
【0048】
図8及び図9は、本発明の第1の実施形態に係る自動吐水制御装置を備えた洗面台の、トイレブース内での設置位置を示す要部平面図である。
【0049】
図8に示す例では、上述したシンク1が、トイレブース39内の便器装置37に向かって右側の壁面に密着させた状態で設置されており、マイクロ波センサ7からは、電波ビーム13が、右側の壁面に向かって放射され、洗面台の使用者の手35も、矢印41で示すように、右側の壁面に向かってシンク1の上方空間に差し出される。一方、図9に示す例では、シンク1が、トイレブース43内の便器装置45に向かって左側の壁面に密着させた状態で設置されており、マイクロ波センサ7からは、電波ビーム13が、左側の壁面に向かって放射され、洗面台の使用者の手35も、矢印49で示すように、左側の壁面に向かってシンク1の上方空間に差し出される。
【0050】
このように、シンクのトイレブース内での設置位置が、便器装置に向かって右側の壁面に密着させた状態で設置されているか、或いは、便器装置に向かって左側の壁面に密着させた状態で設置されているかによって、洗面台の使用者の手の、シンクの上方空間への進入方向が異なる。しかし、マイクロ波センサ7から放射される電波ビーム13の放射方向が、X方向、Y方向、及びZ方向の(3次元の)ベクトル成分を持つため、トイレブース内における洗面台の設置位置の如何に拘らず、マイクロ波センサ7は、必ず、手(35)からの反射波を得ることが可能である。
【0051】
図10は、本発明の第1の実施形態に係る自動吐水制御装置の電気回路部分の構成を示すブロック図である。
【0052】
図10に示すように、上述したマイクロ波センサ7は、マイクロ波アンテナ51と、このマイクロ波アンテナ51を励振して電波ビームを放射させると共に受信された反射電波の信号からドップラ信号を生成するドライバ回路53と、を有する。ドライバ回路53は、また、マイクロ波アンテナ51を操作することにより、電波ビームの放射方向を、上述した空間領域(即ち、シンク1の上方空間領域)から上記とは別の空間領域(例えば、シンク1の底部領域)へ、又は上記とは別の空間領域から上述した空間領域へ、夫々切替える機能をも持つ。
【0053】
ドライバ回路53は、コントローラ部9に接続される。コントローラ部9は、ドライバ回路53からドップラ信号を入力し、該ドップラ信号に基づいて、手35の進入や手洗いの継続などを判断し、この判断結果に応じて、既に説明したように水栓機構3に接続されるバルブ5の開/閉制御を行ったり、上記電波ビームの放射方向の切替え指示をドライバ回路53に与えたりする。
【0054】
図11は、本発明の第1の実施形態に係わる電波センサ7の詳細を示すブロック図である。
【0055】
図11において、発振回路55で生成された電磁波は、分岐回路57を通じて送信アンテナ63側と、検波回路59側とに分岐され、送信アンテナ63側に伝送された電磁波は、送信波として送信アンテナ63から空間に放射される。この送信波がドップラセンサ67側に向かって速度Vで移動中の手35に当って反射波になると、該反射波は、ドップラセンサ67側に向かって伝播し、受信アンテナ65によって受信される。受信アンテナ65によって受信された反射波、即ち、電磁波は、分岐回路57を通じて検波回路59に出力され、検波回路59において、上記分岐された送信波の一部を基準波形として、該送信波の一部とミキシングされる。検波回路59からの出力は、下記の(1)式に示すように、物体、即ち、手35の移動速度Vに比例した周波数成分を持つ信号であり、該信号は、物体、即ち、手35とドップラセンサ67との間の距離が近くなるほど大きな振幅変化を得ることができる。
【0056】
δF=│Fs−Fb│=2×Fs×v/c (c>>vのとき)・・・(1)
【0057】
上記(1)式において、δFはドップラ周波数であり、Fsは送信波の周波数であり、Fbは受信波の周波数であり、Vは物体(即ち、手35)の移動速度であり、cは光速(300×1016m/s)である。
【0058】
図12は、例えば、図1、及び図2で示したマイクロ波センサ7からの電波ビーム13の放射方向が、X(縦)方向、Y(横)方向、Z(垂直)方向の3つの(ベクトル)成分を有している場合の、マイクロ波センサ7から出力されるドップラ信号の波形図である。マイクロ波センサ7からの出力信号であるドップラ信号の振幅を観測することができれば、それによってS/N比が得られるので、該ドップラ信号により、手35の有無(手35の手洗い動作の有り無し)を確認することが可能になる。
【0059】
図12において、図12(A)は、手35のシンク1の上方空間への進入方向と、マイクロ波センサ7からの電波ビーム13の放射方向とが同一の場合の、ドップラ信号の波形を示すもので、この場合の振幅の最大値は、略670mvに達している。手35のシンク1の上方空間への進入方向と、マイクロ波センサ7からの電波ビーム13の放射方向とが同一の場合に、マイクロ波センサ7から得られるドップラ信号の振幅が最大になる。よって、充分な大きさのS/N比が得られるので、該ドップラ信号により、手35の有無(手35の手洗い動作の有り無し)を確認することができる。
【0060】
図12(B)は、手35のシンク1の上方への進入方向と、マイクロ波センサ7からの電波ビーム13の放射方向とが同一ではないが、電波ビーム13の放射方向のX方向の成分、Y方向の成分、及びZ方向の成分の何れもが0でない場合の、ドップラ信号の波形を示すもので、この場合の振幅の最大値は、略350mvである。このように、手35のシンク1の上方空間への進入方向と、マイクロ波センサ7からの電波ビーム13の放射方向とが同一でない場合には、図12(A)で示した例と比較して、明らかにドップラ信号の振幅は小さくはなるが、或る程度の大きさのS/N比が得られるので、該ドップラ信号により、手35の有無(手35の手洗い動作の有り無し)を確認することができる。
【0061】
図12(C)は、手35のシンク1の上方空間への進入方向と、マイクロ波センサ7からの電波ビーム13の放射方向とが同一ではなく、電波ビーム13の放射方向のX方向の成分、及びZ方向の成分が0で、Y方向の成分だけが0でない場合の、ドップラ信号の波形を示すもので、この場合の振幅の最大値は、略40mvである。
【0062】
このように、手35のシンク1の上方空間への進入方向と、マイクロ波センサ7からの電波ビーム13の放射方向とが同一でなく、且つ、電波ビーム13の放射方向の2つの方向成分(X方向成分、Z方向成分)が0である場合には、ドップラ信号の振幅はノイズの振幅と略同一レベルになるので、S/N比は略1になる。よって、該ドップラ信号により、手35の有無(手35の手洗い動作の有り無し)を確認することはできない。
【0063】
図13は、本発明の第2の実施形態に係る自動吐水制御装置を備えた洗面台の一方の側面から見た斜視図である。
【0064】
本実施形態では、マイクロ波センサに、スキャニングを行うこと無しに、図13(A)で示すような複数の方向に電波ビームの放射が行える構成のマイクロ波センサ69を備える点で、図1、及び図2で示した本発明の第1の実施形態に係る自動吐水制御装置を備えた洗面台と構成が相違する。その他の構成については、図1、及び図2で示した本発明の第1の実施形態に係る自動吐水制御装置を備えた洗面台と同様である。
【0065】
即ち、マイクロ波センサ69は、図13(A)に示すように、符号71で示す第1の電波ビームと、符号73で示す第2の電波ビームとを、同時に放射する。第1の電波ビーム71、及び第2の電波ビーム73の放射方向は、夫々、図13(B)で示すような、X(方向)、Y(方向)、及びZ(方向)の3次元のベクトル成分を持つのが最良であるが、両電波ビーム併せて3方向の成分を持つように設定すれば良い。
【0066】
このように、本実施形態に係るマイクロ波センサ69は、夫々が、X、Y、及びZの3つのベクトル成分を持つ、放射方向の異なる2つの電波ビーム71、73を同時に放射することができるので、本発明の第1の実施形態に係るマイクロ波センサ7よりも、シンク1の上方空間に進入する手(35)の有無の検知精度を更に向上させることが可能である。
【0067】
図14は、本発明の第2の実施形態に係るマイクロ波センサ69が備えるアンテナの構成を示す斜視図である。
【0068】
上記アンテナは、1つのアンテナで、スキャンすること無しに複数の固定放射方向(放射パターン)を持つ態様のもので、図14に示すように、矩形平板状の基板75と、所定距離を隔てて基板75上に配置されている2個の給電素子77、79と、基板75上に配置されている2つの給電ラインA、Bと、を備える。基板75を構成する材質としては、例えば所定の比誘電率εrと、所定の誘電正接と、所定の厚みを有するガラスエポキシ材が用いられる。給電素子77と給電素子79との間の距離は、例えばλ0/2(λ0は空中を進む電波の波長であり、光速/周波数で表す)に、また、給電ラインAの長さと給電ラインBの長さとの差は、例えばλg/2(λgは比誘電率εrの基板上を進む電波の波長であり、λ0/√εrで表す)(給電素子77、79間の位相差を例えば180degに設定するため)に、夫々設定されている。ここで、アンテナの励振方向をX方向、アンテナアレイ方向をY方向、基板の厚み方向をZ方向とする。
【0069】
図15、及び図16は、図14で示した構成のアンテナから放射される電波ビームの放射パターンを示す説明図である。
【0070】
即ち、図15は、図16においてφ=90°に設定したときの、即ち、図16で示したyz面での、図14で示したアンテナから放射される電波ビームの放射パターンを示している。2つの放射パターンのうちの一方は、中心から時計方向に略25°ずれた位置にあり、他方は、中心から反時計方向に略25°ずれた位置にある。
【0071】
図17は、パッチアンテナにおいて、基板上に配置されている2個の給電素子の配置と、これら2個の給電素子からの電波ビームの放射パターンとの関係を示す説明図、図18は、パッチアンテナにおける給電位相差による電波ビームの放射方向の変化を示す図である。
【0072】
図17に示すように、パッチアンテナの基板(図示しない)上における給電素子81と給電素子83との間隔の大きさにより、給電素子81からの電波ビームの放射方向と、給電素子83からの電波ビームの放射方向との間に角度θの開きが生じる。なお、電波ビームのζ方向の角度と、給電位相差との間には、図18に示すような関係がある。
【0073】
図19は、本発明の第3の実施形態に係る自動吐水制御装置を備えた洗面台の一方の側面から見た斜視図である。
【0074】
本実施形態では、マイクロ波センサに、図19(A)で示すような、鉛直方向への電波ビーム放射のスキャニングと、図19(C)で示すような、水平方向への電波ビーム放射のスキャニングとが行える構成のマイクロ波センサ85を備える点で、上述した本発明の第1、第2の実施形態に係る自動吐水制御装置を備えた洗面台と構成が相違する。その他の構成については、本発明の第1、第2の実施形態に係る自動吐水制御装置を備えた洗面台と同様である。
【0075】
即ち、マイクロ波センサ85は、図19(A)に示すように、鉛直方向に、所定の角度間隔で電波ビーム87放射のスキャニングを行うと共に、図19(C)に示すように、水平方向に、所定の角度間隔で電波ビーム89放射のスキャニングを行う。
【0076】
このように、マイクロ波センサ85が、鉛直方向や水平方向に、電波ビーム放射のスキャニングを行うことにより、夫々の電波ビームの放射方向が、図19(B)で示すように、X、Y、Zの3つのベクトル成分を持つので、たとえ、シンク1の形状の違いやシンク1の設置条件(設置環境)の違いによって、どのような方向から洗面台使用者の手がシンク1の上方空間へ進入した場合でも、該手の進入を確実に検知することが可能である。
【0077】
よって、様々な形状や型式のシンクにも対応可能であるのみならず、シンク1の設置箇所がマイクロ波センサのセンシングの性能によって制約を受けることがなく、汎用性の高い、自動吐水制御装置を備えた洗面台の提供が可能になる。
【0078】
また、上記スキャニングを行っている中で、マイクロ波センサが受ける反射波の電力が最大になる電波ビームの放射方向を選択することができ、該選択により、シンク1の上方空間へ進入する手の検知精度の向上を図ることも可能になる。
【0079】
なお、マイクロ波センサ85からの電波ビーム放射のスキャニングを、図19(A)に示すように鉛直方向にするか、或いは、図19(C)に示すように水平方向にするかは、シンク1の形状や、設置条件により選択することとしても良い。
【0080】
図20は、本発明の第4の実施形態に係る自動吐水制御装置を備えた洗面台の一方の側面から見た斜視図である。
【0081】
本実施形態では、マイクロ波センサ91から放射される電波ビームを反射して、所定方向へ導く反射板93を備える点で、上述した本発明の第1、第2、第3の実施形態に係る自動吐水制御装置を備えた洗面台と構成が相違する。その他の構成については、本発明の第1、第2、第3の実施形態に係る自動吐水制御装置を備えた洗面台と同様である。
【0082】
反射板93は、図20(A)に示すように、水栓機構取付部1aにおける機構本体3aの近傍位置に、マイクロ波センサ91から矢印95方向へ放射される電波ビームを、矢印97方向へ放射方向を変更すべく、設置角度を調整されて設けられている。なお、反射板93には、電波ビ−ムを反射させ得る金属板が採用される。反射板93の設置角度は、図20(B)に示す電波ビームの放射方向が持つX、Y、Zの3つのベクトル成分のうち、シンク1の上方空間への手の進入方向に関連するベクトル成分が増大するような角度に調整することが望ましい。
【0083】
例えば、シンク1の正面方向からシンク1の上方空間に手が進入する場合には、上記X方向の成分が増大するように、反射板93を介してマイクロ波センサ91からの電波ビームの放射方向が調整される。
【0084】
本実施形態によれば、マイクロ波センサ91の設置位置が、シンク1の上方空間に進入する手の進入方向にそぐわない場合や、マイクロ波センサ91が取付けられるシンク1の形状によっては、シンク1の上方空間への手の進入方向が、通常想定される手の進入方向と異なる場合であっても、反射板の設置角度を調整することにより、確実に手を検知することが可能である。
【0085】
図21は、本発明に係る自動吐水制御装置を備えた洗面台と、従来の自動吐水制御装置を備えた洗面台との構成上の違いを示す説明図である。
【0086】
図21において、図21(A)、及び図21(B)は、夫々従来の自動吐水制御装置を備えた洗面台の例を示す説明図であり、図21(C)が、本発明に係る自動吐水制御装置を備えた洗面台の例を示す説明図である。
【0087】
図21(A)で示す従来の例では、電波センサ99の設置位置は、手洗い鉢(シンク)101の下側であり、電波センサ99からの電波ビームの放射方向は、床面に対して垂直方向(即ち、鉛直方向)に設定されている。
【0088】
次に、図21(B)で示す別の従来の例では、電波センサ99は、単独ではなく、水栓機構(図示しない)に連通する給水管(図示しない)の途中に設置される電磁弁ユニット(図示しない)などと一体的に構成されており、電波センサ99からの電波ビームの放射方向は、鉛直方向に設定されている(図21(A)、(B)の構成の詳細については、特開2004−232282号公報を参照)。
【0089】
図21(A)で示す構成の洗面台では、電波センサ99からの電波ビームの放射方向が、鉛直方向に設定されているが故に、水栓機構(図示しない)の吐水口(図示しない)から吐出された水が、手洗い鉢101の最下位置(底面)の排水口103を通じて手洗い鉢101から略完全に排出され終わるまで、電波センサ99が水の検知を継続してしまう。そのため、手105が手洗い鉢101から退出しても、コントローラ部(図示しない)は検知対象物である手105が無くなったと判断することができない。また、電波センサの取付位置が洗面器の下方の後部であり、前方に向かって電波ビームを放射しているため、使用者の手だけでなく、体(上半身)にも電波ビームが到達することになる。その結果、電波ビームの当る面積が手<<体であるにも拘らず、電波センサ"手"間距離≒(>)電波センサ"体"間距離であるために、後者の出力強度の方が大きく、出力差によって検知対象物までの距離を検出する方式では、手の進入だけを検知することができない。従って、使用者が洗面ボールに手を出すよりも洗面ボールに近づいた瞬間に吐水を開始することになり、洗面器に隣接して設置している鏡を利用したり、収納棚を利用する場合に水跳ねのある使い勝手の悪い自動吐水制御装置となる。図21(B)についても、電波センサの設置位置を水栓側に変更した方が良い。
【0090】
また、図21(B)で示す構成の洗面台では、電波センサ99と、手洗い鉢103との間が大きく開いているため、電波センサ99からの電波ビームのうちの、手洗い鉢101の外壁に当って反射する成分が、洗面台使用者107の足に当って反射して電波センサ99に入射するので、コントローラ部(図示しない)が、洗面台使用者107の足の動きを、該洗面台使用者107の手の動作と誤認してしまう虞がある。
【0091】
それに比較して、本発明に係る自動吐水制御装置を備えた洗面台では、図21(C)に示すように、電波センサ99が、手洗い鉢101を構成する陶器内部、或いは手洗い鉢101を支持するカウンタ(図示しない)内部に設置されるので、電波センサ99からの電波ビームのうちの、手洗い鉢101の外壁を透過する成分が、無視できるほど小さいから、洗面台使用者107の足に当って反射した反射波の成分により、コントローラ部(図示しない)が、洗面台使用者107の足の動きを、該洗面台使用者107の手の動作と誤認してしまう虞は無い。
【0092】
図22は、本発明に係る自動吐水制御装置を備えた洗面台と、従来の自動吐水制御装置を備えた洗面台との構成上の違いを示す別の説明図である。
【0093】
図22において、図22(A)は、従来の自動吐水制御装置を備えた洗面台の例を示す説明図、図22(B)は、図22(A)で示した洗面台が備える電波センサからの出力信号のレベルを示す説明図である。また、図22(C)は、本発明に係る自動吐水制御装置を備えた洗面台の例を示す説明図、図22(D)は、図22(C)で示した洗面台が備える電波センサからの出力信号のレベルを示す説明図である。
【0094】
図22(A)で示す従来の例では、電波センサが、送信部111と受信部113とに分離されており、送信部111と、受信部113とは、夫々手洗い鉢115の周縁部の内部側面であって、手洗い鉢115の略中心に位置する排水口117を通る直線上の位置に配置されている。そして、送信部111からの電波ビーム119は、水栓機構(図示しない)の吐水口(図示しない)から吐出される整流水を避けるように、放射方向が2方向に設定されている。この構成において、検知対象物である手121が、送信部111と受信部113との対向している空間領域に進入することにより、受信部113に受信されるべき送信部111からの電波ビーム119が遮断されることで、コントローラ部(図示しない)が、該手121の存在を認識する(図22(A)の構成の詳細については、特開2004−124363号公報を参照)。
【0095】
しかし、上記構成では、受信部113の設置位置が、送信部111から放射される電波ビーム119の進行方向上に限定される上に、手洗い鉢115の上端縁よりも上方に、検知対象物である手121の検知領域を設定することができない。また、電波ビームをどこで遮っても同一の信号を得るために、水栓装置から離れた手を検知して吐水する。また、検知対象物である手121が、大人の手であるか、子供の手であるか、手を揃えているか、指を開いているかによって、送信部111から遮断される電波ビーム119の遮断量が異なるので、コントローラ部(図示しない)は、電波ビ−ム119の遮断量の大きさを基準として検知対象物である手119の有無を判断することができない。因みに、子供の手よりも大人の手の方が、指を開いているよりも手を揃えている方が、送信部111と受信部113との間の空間において送信部111からの電波ビーム119を遮る面積が大きくなるので、電波ビーム119の伝達を阻害する物体として大きく作用する。
【0096】
図22(B)において、符号123で示す波形は、子供の手が送信部111と受信部113との間に存在していないときの受信部113における受信電力を示し、符号125で示す波形は、子供の手が送信部111と受信部113との間に存在しているときの受信部113における受信電力を示す。両者を比較対照すると、受信電力強度の差があまりないことが明らかである。
【0097】
一方、図22(C)で示す本発明に係る自動吐水制御装置を備えた洗面台の例では、電波センサ127が、図示のように、送信部と受信部とが一体化された構成になっている。そのため、電波センサ127からの電波ビーム131の放射方向を調整するだけで、検知対象物である手129の検知領域を、手洗い鉢133内部でも、或いは、手洗い鉢133の上方空間領域でも自在に設定することが可能である。しかも、本発明では、コントローラ部(図示しない)は、電波センサ127に入射する反射波の受信強度のみならず、電波センサ127から出力されるドップラ信号の周波数成分をも考慮して、検知対象物である手の有無等の判断を行うこととしているので、大人の手か子供の手かによって、検知精度が影響を受けることはない。
【0098】
図22(D)において、符号135で示す波形は、子供の手が検知領域に存在しているときの、電波センサ127から出力されるドップラ信号の、オシロスコープで確認した波形であり、符号137で示す波形は、子供の手が検知領域に存在しているときの、電波センサ127から出力されるドップラ信号の、スペクトラムアナライザで確認した波形である。何れの波形とも、振幅が小さくても、手の移動による周波数成分の検知が可能であることを示している。
【0099】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、これらは本発明の説明のための例示であって、本発明の範囲をこれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、他の種々の形態でも実施することが可能である。
【0100】
例えば、複数のマイクロ波センサを、夫々からの電波ビームが異なる方向に放射されるよう、シンクの適宜箇所に設置することにより、放射方向がX、Y、Z方向の成分を多数持った電波ビームを実現することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る自動吐水制御装置を備えた洗面台の一方の側面から見た斜視図。
【図2】図1のA−A´線から見た洗面台要部の断面図。
【図3】本発明の第1の実施形態に係るマイクロ波センサから放射される電波ビームの放射方向が含む複数方向の成分に係わる説明図。
【図4】本発明の第1の実施形態に係るマイクロ波センサから放射される電波ビームの放射方向と、手の進入方向との関係を示す平面図。
【図5】本発明の第1の実施形態に係るマイクロ波センサから放射される電波ビームの放射方向と、手洗い動作との関係を示す平面図。
【図6】本発明の第1の実施形態に係るマイクロ波センサから放射される電波ビームの放射方向と、シンクの上方空間に進入する手の進入角度との関係を示す図1のA−A´線から見た洗面台要部の断面図。
【図7】マイクロ波センサから放射される電波ビームの放射方向が持つ3次元のベクトル成分と、手の進入方向を示すベクトル成分との関係を示す説明図。
【図8】本発明の第1の実施形態に係る自動吐水制御装置を備えた洗面台の、トイレブース内での設置位置を示す要部平面図。
【図9】本発明の第1の実施形態に係る自動吐水制御装置を備えた洗面台の、トイレブース内での設置位置を示す要部平面図。
【図10】本発明の第1の実施形態に係る自動吐水制御装置の電気回路部分の構成を示すブロック図。
【図11】本発明の第1の実施形態に係わる電波センサの詳細を示すブロック図。
【図12】図1、及び図2で示したマイクロ波センサからの電波ビームが、X、Y、Zの3つのベクトル成分を有している場合の、マイクロ波センサから出力されるドップラ信号の波形図。
【図13】本発明の第2の実施形態に係る自動吐水制御装置を備えた洗面台の一方の側面から見た斜視図。
【図14】本発明の第2の実施形態に係るマイクロ波センサが備えるアンテナの構成を示す斜視図。
【図15】図14で示した構成のアンテナから放射される電波ビームの放射パターンを示す説明図。
【図16】図14で示した構成のアンテナから放射される電波ビームの放射パターンを示す説明図。
【図17】パッチアンテナにおいて、基板上に配置されている2個の給電素子の配置と、これら2個の給電素子からの電波ビームの放射パターンとの関係を示す説明図。
【図18】パッチアンテナにおける給電位相差による電波ビームの放射方向の変化を示す図。
【図19】本発明の第3の実施形態に係る自動吐水制御装置を備えた洗面台の一方の側面から見た斜視図。
【図20】本発明の第4の実施形態に係る自動吐水制御装置を備えた洗面台の一方の側面から見た斜視図。
【図21】本発明に係る自動吐水制御装置を備えた洗面台と、従来の自動吐水制御装置を備えた洗面台との構成上の違いを示す説明図。
【図22】本発明に係る自動吐水制御装置を備えた洗面台と、従来の自動吐水制御装置を備えた洗面台との構成上の違いを示す別の説明図。
【符号の説明】
【0102】
1 シンク
1a 水栓機構取付部
3 水栓機構
3a 機構本体
3b 吐水部
3c 吐水口
5 バルブ
7 電波センサ(マイクロ波センサ)
9 コントローラ部
11 配水管
15 マイクロ波センサ固定部材
37、45 便器装置
39、43 トイレブース
51 マイクロ波アンテナ
53 ドライバ回路
55 発振回路
57 分岐回路
59 検波回路
63 送信アンテナ
65 受信アンテナ
67 ドップラセンサ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
手洗空間及びその近傍領域での物体の有無に応じて水栓機構の制御を行う自動吐水制御装置において、
指向性を持つ電波ビームを放射すると共に、物体から反射した電波ビームを受信する電波センサであって、前記手洗空間が含む洗面台の、前記水栓機構から吐出された水の影響を受けない表面の部位又は該部位の近傍に配置された電波センサと、
前記電波センサからの出力信号に基づき、物体の有無を判別して、吐水の開始及び停止を行う吐水制御手段と、
を備え、
前記電波ビームは、指向性を有する電波ビームであり、その放射方向が前記電波ビームの最大強度を有する方向であって、且つ、前記洗面台に進入しようとする物体だけを検知するために、使用者と対面する方向に沿うX方向の成分、該洗面台の使用者と対面する方向と直交する側面方向に沿うY方向の成分、及び前記X、Y方向の何れとも直交するZ方向の成分を持つ自動吐水制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の自動吐水制御装置において、
前記X、Y、Z方向の成分の間に、X方向成分>Y方向成分か、又はZ方向成分>Y方向成分の関係が成立する自動吐水制御装置。
【請求項3】
請求項1記載の自動吐水制御装置において、
前記電波センサが、同時に複数方向に電波ビームを放射することが可能に構成されている自動吐水制御装置。
【請求項4】
請求項1記載の自動吐水制御装置において、
前記電波センサからの電波ビームの放射方向が、スキャニングされる自動吐水制御装置。
【請求項5】
請求項4記載の自動吐水制御装置において、
前記スキャニングが、前記X方向、又は前記Z方向に対して行われる自動吐水制御装置。
【請求項6】
請求項1記載の自動吐水制御装置において、
前記電波センサから放射される電波ビームを、所望の方向へ反射させるための反射板を更に備える自動吐水制御装置。
【請求項1】
手洗空間及びその近傍領域での物体の有無に応じて水栓機構の制御を行う自動吐水制御装置において、
指向性を持つ電波ビームを放射すると共に、物体から反射した電波ビームを受信する電波センサであって、前記手洗空間が含む洗面台の、前記水栓機構から吐出された水の影響を受けない表面の部位又は該部位の近傍に配置された電波センサと、
前記電波センサからの出力信号に基づき、物体の有無を判別して、吐水の開始及び停止を行う吐水制御手段と、
を備え、
前記電波ビームは、指向性を有する電波ビームであり、その放射方向が前記電波ビームの最大強度を有する方向であって、且つ、前記洗面台に進入しようとする物体だけを検知するために、使用者と対面する方向に沿うX方向の成分、該洗面台の使用者と対面する方向と直交する側面方向に沿うY方向の成分、及び前記X、Y方向の何れとも直交するZ方向の成分を持つ自動吐水制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の自動吐水制御装置において、
前記X、Y、Z方向の成分の間に、X方向成分>Y方向成分か、又はZ方向成分>Y方向成分の関係が成立する自動吐水制御装置。
【請求項3】
請求項1記載の自動吐水制御装置において、
前記電波センサが、同時に複数方向に電波ビームを放射することが可能に構成されている自動吐水制御装置。
【請求項4】
請求項1記載の自動吐水制御装置において、
前記電波センサからの電波ビームの放射方向が、スキャニングされる自動吐水制御装置。
【請求項5】
請求項4記載の自動吐水制御装置において、
前記スキャニングが、前記X方向、又は前記Z方向に対して行われる自動吐水制御装置。
【請求項6】
請求項1記載の自動吐水制御装置において、
前記電波センサから放射される電波ビームを、所望の方向へ反射させるための反射板を更に備える自動吐水制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図10】
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【図12】
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【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2006−219889(P2006−219889A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−33840(P2005−33840)
【出願日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(000010087)東陶機器株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(000010087)東陶機器株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
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