説明

自動変速機のシフト操作装置

【課題】自動変速機のシフト操作装置において、シフトセレクトスイッチの故障検出やフォールトトレラント性を向上することにある。
【解決手段】シフトセレクトスイッチは、検知範囲を同じとするセットとして複数のセンサを備え、且つこれらセンサ全部に同じ処理を並列に実行させるようセットとして構成され、変速制御装置は、一つ以上の変速レンジの選択に関る異常時の判定条件を行った場合に、シフトセレクトスイッチの各センサの出力電圧に対して選択された変速レンジを判定する範囲を正常時の範囲より狭く又は広くなるように範囲変更し、選択された変速レンジの判定を一回以上行うよう制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動変速機のシフト操作装置に係り、特に運転者により選択された変速レンジに応じて変速動作を行う自動変速機のシフト操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、運転者により選択された変速レンジに応じて変速動作を行う自動変速機を搭載したものがある。このような自動変速機は、電気制御に基づくモータ駆動によりマニュアルシフトバルブを操作して変速レンジの選択を行う、いわゆるシフトバイワイヤシステムで制御される。
このシフトバイワイヤシステムにおいては、シフト操作装置のシフトレバーのシフト操作位置(ポジション)を電気的に検出するシフトセレクトスイッチからのシフト要求信号又は変速制御装置(ECU)からの制御信号により、自動変速機に組み付けられたアクチュエータ等を動作させて自動変速機の変速レンジを切り換えている。
シフトセレクトスイッチには、ゲート式のシフトレバーで、シフト操作位置(ポジション)としての、例えば、パーキングポジション「P」、リバースポジション「R」、ニュートラルポジション「N」、ドライブポジション「D」、セカンドポジション「2」、ローポジション「L」に対応し、オン/オフする6個のスイッチを設けたものがある。
また、シフトセレクトスイッチには、H型のシフトレバーで、シフトレバーの上下方向と左右方向との操作量をアナログ電圧で出力するように、スイッチを縦方向と横方向との検出用に2個使用し、且つ、信号出力電圧の故障検出やフォールトトレラント性の確保のため、メイン電圧回路とサブ電圧回路との2系統(二重系)でアナログ電圧を出力するものがある。
【0003】
従来、信号補正装置及び信号補正方法には、基準信号の第1の時刻と第2の時刻との間の変化に基づいて測定信号を補正し、この場合、1信号の温度等によるドリフトを補償するものがある。
自動変速機のセレクトアシスト装置には、セレクトレバーがレンジ停留位置の場合に、トルクセンサのDC成分の零点ズレを補正するものがある。
自動変速機のセレクトアシスト装置には、トルクセンサの初期値の零点に対する出力値とトルクセンサの補償した零点に対する出力値とのいずれか小さい出力値を、トルクセンサの出力値として出力するものがある。
【特許文献1】特開2000−298145号公報
【特許文献2】特開2005−3132号公報
【特許文献3】特開2005−163975号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来、メイン電圧回路とサブ電圧回路との2系統(二重系)でアナログ電圧を出力するシフトセレクトスイッチにおいては、2系統の信号電圧値が正常ならば略同じ値であり、そして、2系統の信号電圧差が一定以上の場合、故障の有無は判断できるが、どちらの信号電圧が正しいか判定が困難、つまり、レバー操作判定が困難となる。このため、この信号を利用する制御を停止することとなり、変速レンジの切り換えが限定されたり、変速レンジの切り換えができなくなってしまうという不都合があった。
【0005】
そこで、この発明の目的は、シフトセレクトスイッチに故障が生じた場合でも正常に処理を続行できる、いわゆるフォールトトレラントシステムを構築できる自動変速機のシフト操作装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、運転者により操作されるシフト操作装置に人為的な選択操作を検知するシフトセレクトスイッチを設け、このシフトセレクトスイッチが出力する電圧に基づいて人為操作により選択された変速レンジを判定する変速制御装置を設けた自動変速機のシフト操作装置において、前記シフトセレクトスイッチは、検知範囲を同じとするセットとして複数のセンサを備え、且つこれらセンサ全部に同じ処理を並列に実行させるようセットとして構成され、前記変速制御装置は、一つ以上の変速レンジの選択に関る異常時の判定条件を行った場合に、前記シフトセレクトスイッチの前記各センサの出力電圧に対して選択された変速レンジを判定する範囲を正常時の範囲より狭く又は広くなるように範囲変更し、選択された変速レンジの判定を一回以上行うよう制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明の自動変速機のシフト操作装置は、一つ以上の変速レンジの選択に関る異常時の判定条件を行った場合に、シフトセレクトスイッチの出力電圧に対して選択された変速レンジを判定する範囲を正常時の範囲より狭く又は広くなるように範囲変更し、選択された変速レンジの判定を一回以上行うよう制御することにより、シフトセレクトスイッチの故障検出やフォールトトレラント性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
この発明は、シフトセレクトスイッチの故障検出やフォールトトレラント性を向上する目的を、一つ以上の変速レンジの選択に関る異常時の判定条件を行った場合に、シフトセレクトスイッチの出力電圧に対して選択された変速レンジを判定する範囲を正常時の範囲より狭く又は広くなるように範囲変更し、選択された変速レンジの判定を一回以上行うよう制御して実現するものである。
以下、図面に基づいてこの発明の実施例を詳細且つ具体的に説明する。
【実施例】
【0009】
図1〜図17は、この発明の実施例を示すものである。
図1において、1は車両に搭載されたエンジン、2はこのエンジン1に連結した自動変速機(図面上では「AT」と表記する)、3は運転者の人為操作によって変速レンジを選択するシフト操作装置、4は自動変速機2を電気的に制御するシフトバイワイヤシステムである。
自動変速機2は、例えば、パーキングレンジ「P」、リバースレンジ「R」、ニュートラルレンジ「N」、ドライブレンジ「D」等の各変速レンジに対応する前進用及び後進用の変速歯車列を有する変速ギヤ部5を内部に備えている。
シフト操作装置3には、シフトレバー6と、このシフトレバー6の操作状態を人為的な選択操作として検知するシフトセレクトスイッチ(図面上では「シフトセレクトSW」と表記する)7とが設けられている。シフトレバー6は、この実施例では、上下方向及び左右方向に操作されるものであるが、車種によっては縦方向及び横方向への操作がなされる場合がある。シフトセレクトスイッチ7は、シフトレバー6の操作やスイッチ操作等で、運転者が要求するシフト要求信号(パーキングポジション「P」信号、リバースポジション「R」信号、ニュートラルポジション「N」信号、ドライブポジション「D」信号等)を出力する。
シフトバイワイヤシステム4は、電気制御に基づくモータ駆動により自動変速機2を制御し、変速レンジの選択を行わせるものであり、シフトセレクトスイッチ7が出力するシフト要求信号としての出力電圧に基づいて人為操作により選択された変速レンジを判定する変速制御装置8を備えている。
この変速制御装置8は、シフトセレクトスイッチ7からのシフト要求信号により目標変速レンジを設定し、後述するアクチュエータ13を制御して変速レンジの選択を行うものであり、シフトセレクトスイッチ7に連絡したシフト制御手段(図面上では「シフトECU」と表記する)9と、自動変速機制御手段(図面上では「AT制御ECU」と表記する)10とを備えている。
シフト制御手段9には、変速レンジ判定手段8Aが設けられているとともに、電力を供給するバッテリ11が接続している。自動変速機制御手段10には、自動変速機2内のシフトソレノイド12が連絡している。
【0010】
また、シフト制御手段9には、自動変速機2に組み付けられたアクチュエータ(図面上では「ACT」と表記する)13が連絡している。このアクチュエータ13は、シフト制御手段9からの制御信号である変速レンジ信号に基づいて駆動されるモータ14と、このモータ14に連結したギヤ機構15と、自動変速機2のマニュアルシフトシャフト16の回転角を検知する角度センサ17とを備え、マニュアルシフトシャフト16をモータ14で回転させ、角度センサ17で検出した回転角度信号をシフト制御手段9に出力する。なお、このシフト制御手段9に出力する回転角度信号としては、モータ14の出力軸の回転角度や、ギヤ機構15の減速ギヤの回転角度も用いることも可能である。
アクチュエータ13には、モータ14の駆動により回転されるマニュアルシフトシャフト16の一端部が連結している。このマニュアルシフトシャフト16の他端部は、自動変速機2内のデテント機構18に連結している。このデテント機構18は、マニュアルシフトシャフト16が回転されることで動作して、自動変速機2内のマニュアルバルブ19を駆動制御し、要求された変速レンジになるように油圧回路を切り換える。
マニュアルシフトシャフト16には、該マニュアルシフトシャフト16の回転をモータ14による変速レンジ信号として検知し、その変速レンジ信号をシフト制御手段9及び自動変速機制御手段10に出力するシフト(インヒビタ)スイッチ(図面上では「シフトSW」と表記する)20が取り付けられている。このシフトスイッチ20は、マニュアルシフトシャフト16の回転に同期して回転し、現在の変速レンジ信号(パーキングレンジ「P」信号、リバースレンジ「R」信号、ニュートラルレンジ「N」信号、ドライブレンジ「D」信号等)をシフト制御手段9及び自動変速機制御手段10に出力する。そして、このシフト制御手段9は、自動変速機2の油圧回路が要求された変速レンジに切り換わるように、バッテリ11の電力をアクチュエータ13のモータ14に供給し、このモータ14を駆動してマニュアルシフトシャフト16を回転させる。一方、自動変速機制御手段10は、シフトソレノイド12を制御し、変速ギヤ部5を、要求された変速レンジに対応した噛み合い状態に切り換えるとともにスロットル開度、車速、エンジン負荷等に応じた噛み合い状態に切り換え、さらに、その変速レンジ情報を後述のエンジン制御手段24に送信する。
つまり、シフトバイワイヤシステム4は、基本的に、シフトセレクトスイッチ7からのシフト要求信号に基づいて自動変速機2内のマニュアルバルブ19を駆動制御して、油圧回路で変速レンジの切り換えを行う。自動変速機制御手段10においては、シフトスイッチ20から入力した変速レンジ信号に応じた制御信号を自動変速機2のシフトソレノイド12に出力し、このシフトソレノイド12を駆動制御し、変速ギヤ部5の切り換えを行わせてシフトチェンジを行う。
【0011】
変速制御装置8のシフト制御手段9及び自動変速機制御手段10は、車両システム21の車両LAN22に接続している。
この車両LAN22は、CAN等の通信システムからなり、車両情報としての、エンジン回転数、ストップランプスイッチのオン/オフ、パーキングブレーキのオン/オフ等の情報を、送受信する。
また、この車両LAN22には、車両制御手段(ECU)23と、エンジン制御手段(ECU)24と、コンビネーションメータ25と、インフォメーションディスプレイ26とが接続している。
車両制御手段23には、イグニションスイッチ27とパーキングブレーキ装置28のパーキングブレーキスイッチ29とが連絡するとともに、無線式の電子キー30が連絡する。
エンジン制御手段24は、エンジン1の制御を行い、車両情報を送信する。
コンビネーションメータ25は、シフトインジケータ25Aの他に、シフト警告灯、警報ブザー等を制御する。
インフォメーションディスプレイ26は、シフト制御手段9又は車両制御手段23等からの要求により、必要なインフォメーションの表示を行うものであり、ナビゲーション装置としても兼用できるものである。
イグニションスイッチ27は、電源状態の切替信号(「OFF」、「ACC」、「ON」、「ST」)を車両制御手段23に出力する。
パーキングブレーキ装置28は、手動式又は電動式のものであり、駐車時、後輪にブレーキをかけるものであり、電動式の場合には、車両制御手段23によりパーキングブレーキスイッチ29にブレーキONの要求信号を受けると、自動的にブレーキをONとする。
電子キー30は、ドア開閉、キーコード送信を行うリモートコントローラである。
車両制御手段23は、イグニションスイッチ27からの信号等により、電源状態の切替信号(「OFF」、「ACC」、「ON」、「ST」)を切り替え、また、パーキングブレーキ状態を送信し、さらに、電子キー30との通信を行い、ドア開閉等を行う。
【0012】
図2に示すように、シフトレバー6は、人の手で、一定のレバー操作パターンに沿って操作されるものであり、この実施例では、左側のホームポジション「Home」から右側のニュートラルポジション「N」へ操作されることで、上下操作が可能となり、上下方向に一直線状に並んだリバースポジション「R」又はドライブポジション「D」へ移動可能となり、つまり、このニュートラルポジション「N」から上側へ操作されることで、リバースポジション「R」に移動し、一方、このニュートラルポジション「N」から下側へ操作されることで、ドライブポジション「D」に移動する。
また、シフトレバー6は、モーメンタリ式のものであり、リバースポジション「R」やドライブポジション「D」から手を離せば、ニュートラルポジション「N」を経由してホームポジション「Home」に自動的に戻るものである。
【0013】
この実施例において、前記シフトセレクトスイッチ7は、検知範囲を同じとするセットとして複数のセンサを備え、且つこれらセンサ全部に同じ処理を並列に実行させるようセットとして構成される。
即ち、図2に示すように、シフトセレクトスイッチ7は、図2において上下方向及び左右方向で各変速レンジ(例えば、リバースレンジ「R」、ニュートラルレンジ「N」、ドライブレンジ「D」)を検出するように、2系統出力電圧仕様の上下センサ31と左右センサ32とを備える。上下センサ31によるレンジ判定数は、リバースレンジ「R」、ニュートラルレンジ「N」、ドライブレンジ「D」の3個とした。左右センサ32によるレンジ判定数は、ホームレンジ「Home」、ニュートラルレンジ「N」の2個とした。
なお、シフトレバー6が縦方向及び横方向に操作される場合には、上下センサ31と左右センサ32とを、縦センサと横センサとにすることが可能である。また、上下センサ31によるレンジ判定数がリバースレンジ「R」、ニュートラルレンジ「N」、ドライブレンジ「D」の3個としたが、これ以外の場合も同様である。
【0014】
上下センサ31は、図2に示すように、シフトレバー6の上下方向の操作を検知するものであり、シフトレバー6の上下方向の動作によってシフトセレクトスイッチ7内のメイン電圧回路とサブ電圧回路とにおける2系統の第1の出力電圧1(以下「電圧1」という)と第2の出力電圧2(以下「電圧2」という)とを、シフト制御手段9に出力する。
また、図2に示すように、シフト制御手段9においては、シフトレバー6のリバースポジション「R」をリバースレンジ「R」として判定する高側の基準電圧(基準値)Vh(電圧1に対するVh1、電圧2に対するVh2)が設定され、また、シフトレバー6のニュートラルポジション「N」をニュートラルレンジ「N」として判定する中間側の基準電圧(基準値)Vm(電圧1に対するVm1、電圧2に対するVm2)が設定され、そして、シフトレバー6のドライブポジション「D」をドライブレンジとして判定する低側の基準電圧(基準値)Vl(電圧1に対するVl1、電圧2に対するVl2)が夫々設定されている。
更に、シフト制御手段9においては、図3に示すように、リバースレンジ「R」を所定範囲で判定するために、前記高側の基準電圧Vhの上下で正常時R範囲が最大限度値Vhh以下で一定に設定され、また、ニュートラルレンジ「N」を所定範囲で判定するために、前記中間側の基準電圧Vmの上下で正常時における±A範囲が一定に設定され、そして、ドライブレンジ「D」を判定するために、前記低側の基準電圧Vlの上下で正常時D範囲が最小限度値Vll以上で一定に設定されている。前記最大限度値Vhhと前記最小限度値Vllとは、故障時における上限電圧と下限電圧とである。
上下センサ31は、図8の出力電圧パターンで示すように、2系統の電圧1及び電圧2を、シフトレバー6の上下方向の操作により、最大限度値Vhh以下且つ最小限度値Vll以上の範囲内で、正常時には略同じ電圧波形で出力する。
また、シフト制御手段9においては、図3に示すように、リバースレンジ「R」を所定範囲で判定するために、前記高側の基準電圧Vhの上下では、誤判定を小さくすべく前記正常時R範囲よりも狭い±B範囲が設定されているとともに、判定不能となるケースを少なくすべく前記正常時R範囲よりも広い±C範囲が設定されている。
更に、シフト制御手段9においては、図3に示すように、ニュートラルレンジ「N」を所定範囲で判定するために、前記中間側の基準電圧Vmの上下では、前記正常時における±A範囲よりも狭い±AA範囲が設定されている。
更にまた、シフト制御手段9においては、図3に示すように、ドライブレンジ「D」を所定範囲で判定するために、前記低側の基準電圧Vlの上下では、前記高側の基準電圧Vhの場合と同様に、前記正常時R範囲よりも狭い±B範囲が設定されているとともに、判定不能となるケースを少なくするために、前記正常時R範囲よりも広い±C範囲が設定されている。
【0015】
左右センサ32は、図2に示すように、シフトレバー6の左右方向の操作を検知するものであり、シフトレバー6の左右方向の動作によってシフトセレクトスイッチ7内のメイン電圧回路とサブ電圧回路とにおける2系統の第1の出力電圧1(以下「電圧1」という)と第2の出力電圧2(以下「電圧2」という)とを、シフト制御手段9に出力する。
図2に示すように、シフト制御手段9においては、ホームレンジ「Home」を判定するために、高側の基準電圧(基準値)Ve(電圧1に対するVe1、電圧2に対するVe2)が設定され、また、ニュートラルレンジ「N」を判定するために、低側の基準電圧(基準値)Vr(電圧1に対するVr1、電圧2に対するVr2)が夫々設定されている。
また、図4に示すように、シフト制御手段9においては、ホームレンジ「Home」を所定範囲で判定するために、前記高側の設定電圧Veの上下では、正常時Home範囲が最大限度値Veh以下で一定に設定され、また、ニュートラルレンジ「N」を所定範囲で判定するために、前記低側の設定電圧Vrの上下では、正常時N範囲が最小限度値Vrl以上で一定に設定されている。前記最大限度値Vehと前記最小限度値Vrlとは、故障時の上限電圧と下限電圧とである。
よって、左右センサ32は、図14の出力電圧パターンで示すように、2系統の電圧1及び電圧2を、シフトレバー6の左右方向の操作により、前記最大限度値Veh以下且つ前記最小限度値Vrl以上の範囲内で、正常時には略同じ電圧波形で出力する。
【0016】
なお、図8、図14において、正常時の電圧波形の例を示したが、これらの電圧波形は、波形形状と、セットとなった電圧波形同士との関係を示すものであり、上下センサ31における図8の電圧波形と左右センサ32における図14の電圧波形とが時間的に整合しているわけではない。例えば、ホームレンジ「Home」からドライブレンジ「D」を選択する場合、左右センサ32の出力電圧、上下センサ31の出力電圧(三角波、往復)、そして、左右センサ32の出力電圧の順となる。よって、時間的に整合を採れば、図8の三角波は、図14の台形波の短辺の範囲に収まるようになる。
【0017】
図4に示すように、シフト制御手段9においては、ホームレンジ「Home」を所定範囲で判定するために、前記高側の設定電圧Veの上下では、誤判定を小さくするために、前記正常時Home範囲よりも狭い第1の±E範囲が設定されているとともに、この第1の±E範囲よりもさらに狭い第2の±EE範囲が設定される。
また、シフト制御手段9においては、図4に示すように、ニュートラルレンジ「N」を所定範囲で判定するために、前記低側の設定電圧Vrの上下では、前記正常時N範囲よりも狭い±E範囲が設定されているとともに、判定不能となるケースを少なくするために、前記正常時N範囲よりも広い±F範囲が設定されている。
【0018】
即ち、変速制御装置8は、一つ以上の変速レンジの選択に関る異常時の判定条件を行った場合に、上下センサ31、左右センサ32の出力電圧に対して選択された変速レンジを判定する範囲を正常時の範囲より狭く又は広くなるように範囲変更し、選択された変速レンジの判定を一回以上行うよう制御する。
前記変速レンジの選択に関る異常時の判定条件とは、シフトセレクトスイッチ7の出力電圧を様々な条件で判定する手順をいう。これは、シフトセレクトスイッチ7の出力電圧の値が正常ならば、変速レンジの選択につながるが、シフトセレクトスイッチ7の出力電圧の値が異常(つまり、故障)ならば、直ちに変速レンジの判定から外れてしまうためである。
また、変速制御装置8は、上下センサ31、左右センサ32の出力電圧がいずれも所定の正常範囲に収まり、且つ互いの出力電圧が所定値以上の差を含む(異常の)場合に、変速レンジの選択に関る異常の判定条件を、セットのうち一つがいずれかのレンジ判定範囲に入る条件、セットのうち全部がいずれかのレンジ選択方向の値をとる条件、セットの2つが基準値に対して互いに逆選択方向の値をとる条件とし、これら条件のうち一つ以上の判断を行って選択された変速レンジの判定を行うように制御する。
更に、変速制御装置8は、変速レンジの選択に関る異常の判定条件について判定を行った場合に、セットのうち全部が、予め設定した規程時間内に、基準値を中心とする範囲から外れる方向に向けて変化を開始するとともに、基準値を中心とする範囲内に戻って停止することを監視する(図13、図17参照)。
【0019】
よって、この実施例のシフトセレクトスイッチ7においては、シフトレバー6のシフト操作位置(ポジション)の変化に対応する電圧として出力する上下センサ31と左右センサ32とを備え、この出力電圧の変化により、人為的な操作を操作方向や操作量を検知することができる。そして、一つの軸周りについての一つの両操作方向(正逆両方向)に対して二重系としている。また、人為的な操作方向を、略平面的な範囲を操作可能な方向となるように、交差する二つの軸周りについての二つの両操作方向(夫々正逆両方向)として、夫々に対して二重系としている。上下センサ31と左右センサ32との検知方向を操作方向に一致させており、方向成分の検知より検出精度を重視している。
また、シフトレバー6のシフトポジションは、一直線状に並んだゲートに、ドライブポジション(前進ポジション「D」、後退ポジション「R」)及びニュートラルポジション「N」を配置している。そして、そのゲートから交差する方向に延出するゲートを備え、そのゲート上にホームレンジ「Home」を配置している。人為操作による一回の変速レンジの選択は、シフトレバー6をホームポジション「Home」から所望のポジションに移動させ、短時間のうちにホームポジション「Home」ヘ戻るまでの一連の動作を基本とする。
これにより、この実施例においては、シフトセレクトスイッチ7の一部が故障しても正常に処理を続行するシステム、すなわちフォールトトレラントシステムを構築することができる。
【0020】
次に、通常操作時においてドライブレンジ「D」に操作する流れを、図5のフローチャートに基づいて説明する。
図5に示すように、通常操作時でシフトレバー6をホームポジション「Home」からドライブポジション「D」へシフト操作する場合には、変速制御装置8のプログラムがスタートすると(ステップA01)、先ず、図2において人の手でシフトレバー6を左位置から右側のニュートラルポジション「N」に移動すると、シフトセレクトスイッチ7ではホームポジション「Home」信号からニュートラルポジション「N」信号に変化し(ステップA02)、そして、図2においてシフトレバー6をニュートラルポジション「N」から下方に移動すると、シフトセレクトスイッチ7ではニュートラルポジション「N」信号からドライブポジション「D」信号に変化し(ステップA03)、さらに、シフトレバー6から手を離すと、図2においてシフトレバー6が自動的に下位置からニュートラルポジション「N」に戻り、シフトセレクトスイッチ7ではドライブポジション「D」信号からニュートラルポジション「N」信号に変化し(ステップA04)、そして、図2においてシフトレバー6が自動的にニュートラルポジション「N」から左側のホームポジション「Home」に戻り、シフトセレクトスイッチ7ではニュートラルポジション「N」信号からホームポジション「Home」信号に変化する(ステップA05)。
そして、シフト制御手段9は、シフト要求信号のドライブポジション「D」信号を受信後、目標シフトポジションのドライブポジション「D」の有効/無効の判定を実施し(ステップA06)、目標シフトポジションのドライブポジション「D」が有効時には、アクチュエータ13のモータ14を駆動制御して、マニュアルシフトシャフト16を回転させ、角度センサ17からの回転角度信号により目標シフトポジションに切り換える(ステップA07)。
このマニュアルシフトシャフト16の回転に同期して、シフトスイッチ20は、その変速レンジ信号を自動変速機制御手段10に出力する(ステップA08)。
この自動変速機制御手段10は、シフトスイッチ20からの変速レンジ信号を入力後、自動変速機2のシフトソレノイド12を駆動して油圧回路を切り換え、変速ギヤ部5を制御してシフトチェンジを完了させ、そして、現在のシフトポジション(変速レンジ)情報をコンビネーションメータ25に送信する(ステップA09)。
このコンビネーションメータ25は、そのシフトポジション(変速レンジ)情報を受信し、シフトインジケータ25Aで「D」を表示させる(ステップA10)。
【0021】
次いで、シフトレバー6のドライブポジション「D」/リバースポジション「R」への操作時の上下センサ31の故障検出の流れを、図6のフローチャートに基づいて説明する。
図6に示すように、変速制御装置8のプログラムがスタートすると(ステップB01)、先ず、上下センサ31からの電圧1又は電圧2が、Vm±Aの範囲外か否かを判断し(ステップB02)、このステップB02がNOの場合には、この判断を継続し、このステップB02がYESの場合には、上下センサ31の電圧1又は電圧2が、正常範囲内(Vhh、Vllでない)か否かを判断し(ステップB03)、このステップB03がYESの場合には、上下センサ31の電圧1と電圧2との電圧差が、電圧差>所定値(VA1)か否かを判断し(ステップB04)、このステップB04がNOの場合には、前記ステップB02に戻り、このステップB04がYESの場合には、上下センサ31の電圧1又は電圧2の一方がVm±Aの範囲内、上下センサ31の電圧1又は電圧2の他方がVm±Aの範囲外か否かを判断する(ステップB05)。
このステップB05における出力電圧の判断においては、図9の出力電圧波形のパターン1(規定変化1)に示すように、予想原因として、検出又は電圧出力回路の異常等であり、出力電圧にあっては、故障側の出力が、Vm±Aの範囲内での電圧変化となる。
更に、判定根拠として、正常側の出力電圧では、以下のようになる。
(1)、正常時のレンジ範囲よりも狭い範囲で反転することで、信号の信頼性がある。
(2)、信号がVm±AA範囲(通常のA範囲よりも狭い範囲)で、変化開始/停止することで、シフトレバー6の操作の実施の確率は高く、1系統の信号の信頼性も向上する。
【0022】
前記ステップB05がYESの場合には、シフト制御手段9では、Vm±Aの範囲外の出力電圧が、VI又はVh±Bの範囲で反転してVm±Aの範囲内で停止することを検出する(規定変化1)(図9参照)(ステップB06)。
そして、上下センサ31の電圧1又は電圧2の一方が、図9の出力電圧波形のパターン1(規定変化1)になった否かを判断し(ステップB07)、このステップB07がYESの場合には、シフト制御手段9では、ドライブレンジ「D」(基準値:Vl)又はリバースレンジ「R」(基準値:Vh)に操作したと判定する(ステップB08)。
【0023】
一方、前記ステップB05がNOの場合には、上下センサ31の電圧1及び電圧2の電圧変化が同じ方向(増加/減少)か否かを判断する(ステップB09)。
このステップB09における出力電圧の判断においては、図10の出力電圧波形のパターン2(規定変化2)に示すように、予想原因として、電圧出力回路の異常等であり、出力電圧にあっては、故障側の出力が、正常時よりも一定の割合で小さい電圧となる。
更に、判定根拠として、正常側の出力電圧では、以下のようになる。
(1)、正常時のレンジ範囲よりも狭い範囲で反転することで、信号の信頼性がある。
(2)、規定時間内に2系統信号がVm±A範囲で、変化開始/停止することで、シフトレバー6の操作の実施の確率は高い。
(3)、2系統出力電圧が同じレンジ方向に安定変化していることで、対象レンジに操作した可能性は高い。これは、不安定な電圧変化の場合(図12参照)、規定時間内に2系統信号がVm±A範囲にならない場合(図13参照)には、規定変化でなく、判定不能となる。
前記ステップB09がYESの場合には、シフト制御手段9では、2つの出力電圧の両方が、規定時間内にVm±A範囲を外れ、VI又はVh±Cの範囲で反転してVm±Aの範囲内で規定時間内に停止することを検出する(規定変化2)(図10参照)(ステップB10)。但し、1つの信号がVm±Aの範囲内で停止するまでに、Vm基準で逆方向に変化するような不安定な変化が見られる場合は、図12に示すように、規定変化と判定しない(ステップB10)。
そして、上下センサ31の電圧1又は電圧2の両方が、規定変化2となったか否かを判断し(ステップB11)、このステップB11がYESの場合には、シフト制御手段9では、ドライブレンジ「D」(基準値:V1)又はリバースレンジ「R」(基準値:Vh)に操作したと判定する(ステップB12)。
【0024】
一方、前記ステップB09がNOの場合には、上下センサ31の電圧1及び電圧2の電圧変化が逆の方向(増加/減少)か否かを判断する(ステップB13)。
このステップB13における出力電圧の判断においては、図11の出力電圧波形のパターン3(規定変化3)に示すように、予想原因として、電圧出力回路の異常等であり、出力電圧にあっては、故障側の出力が、逆方向への安定な電圧変化となる。
更に、判定根拠として、正常側の出力電圧では、以下のようになる。
(1)、正常時のレンジ範囲よりも狭い範囲で反転することで、信号の信頼性がある。
(2)、規定時間内に2系統信号がVm±A範囲で、変化開始/停止することで、シフトレバー6の操作の実施の確率は高い。
前記ステップB13がYESの場合には、シフト制御手段9では、1つの出力電圧が、VI又はVh±Bの範囲、もう一方の出力電圧が、Vm±A〜VI又はVh±Bの間で反転してVm±Aの範囲内で規定時間内に停止することを検出する(規定変化3)(図11参照)(ステップB14)。
そして、上下センサ31の電圧1又は電圧2の両方が、規定変化3となったか否かを判断し(ステップB15)、このステップB15がYESの場合には、シフト制御手段9では、ドライブレンジ「D」(基準値:V1)又はリバースレンジ「R」(基準値:Vh)に操作したと判定する(ステップB16)。
しかし、前記ステップB03がNOの場合、前記ステップB07がNOの場合、前記ステップB11がNOの場合、前記ステップB13がNOの場合、そして、前記ステップB15がNOの場合には、シフト制御手段9では、上下センサ31によるレンジ判定不能と判定する(ステップB17)。
即ち、この図6においては、
(1)、1つの信号がニュートラルポジション「N」となる出力電圧(Vm)で、もう一方の信号がリバースポジション「R」又はドライブポジション「D」の出力電圧
(2)、2つの出力電圧が、共に、リバースポジション「R」又はドライブポジション「D」方向の出力電圧
(3)、1つの信号がリバースポジション「R」方向の出力電圧、もう一方の信号がドライブポジション「D」方向の出力電圧
(4)、上記(1)〜(3)以外の信号状態
そして、上記(1)〜(4)より変速レンジを判定する。図3に示すように、各変速レンジの判定電圧範囲を、場合により分けている。
【0025】
次に、シフトレバー6のホームポジション「Home」からニュートラルポジション「N」への操作時の左右センサ32の故障検出の流れを、図7のフローチャートに基づいて説明する。
図7に示すように、変速制御装置8のプログラムがスタートすると(ステップC01)、先ず、左右センサ32の電圧1又は電圧2が、Ve±Eの範囲外か否かを判断し(ステップC02)、このステップC02がNOの場合には、この判断を継続し、このステップC02がYESの場合には、左右センサ32の電圧1又は電圧2が、正常範囲内(Veh、VrIでない)か否かを判断し(ステップC03)、このステップC03がYESの場合には、左右センサ32の電圧1と電圧2との電圧差が、電圧差>所定値(VA2)か否かを判断し(ステップC04)、このステップC04がNOの場合には、前記ステップC02に戻り、このステップC04がYESの場合には、左右センサ32の電圧1又は電圧2の一方が、Ve±Eの範囲内、左右センサ32の電圧1又は電圧2の他方が、Ve±Eの範囲外か否かを判断する(ステップC05)。
このステップC05における出力電圧の判断においては、図15の出力電圧波形のパターン1(規定変化1)に示すように、予想原因として、検出又は電圧出力回路の異常等であり、出力電圧にあっては、故障側の出力が、Ve±Eの範囲内での電圧変化となる。
更に、判定根拠として、正常側の出力では、以下のようになる。
(1)、正常時のレンジ範囲よりも狭い範囲で反転することで、信号の信頼性がある。
(2)、信号がVe±EE範囲(通常時E範囲よりも狭い範囲)で、変化開始/停止することで、シフトレバー6の操作の実施の確率は高く、1系統の信号の信頼性も向上する。
前記ステップC05がYESの場合には、シフト制御手段9では、Vr±Eの範囲で反転してVr範囲内で停止することを検出する(規定変化1)(図15参照)(ステップC06)。
そして、左右センサ32の出力電圧1又は出力電圧2の一方が、規定変化1になった否かを判断し(ステップC07)、このステップC07がYESの場合には、シフト制御手段9では、ニュートラルレンジ「N」(基準値:Vr)に操作したと判定する(ステップC08)。
【0026】
一方、前記ステップC05がNOの場合には、左右センサ32の電圧1及び電圧2の電圧変化が同じ方向(増加/減少)か否かを判断する(ステップC09)。
このステップC09における出力電圧の判断においては、図16の出力電圧波形のパターン2(規定変化2)に示すように、予想原因として、電圧出力回路のゲイン異常等であり、出力電圧にあっては、故障側の出力が、正常時よりも一定の割合で小さい電圧となる。
更に、判定根拠として、正常側の出力では、以下のようになる。
(1)、正常時のレンジ範囲よりも狭い範囲で反転することで、信号の信頼性がある。
(2)、規定時間内に2系統信号がVe±E範囲で、変化開始/停止することで、シフトレバー6の操作の実施の確率は高い。
(3)、2系統出力電圧が同じレンジ方向に安定変化していることで、対象レンジに操作した可能性は高い。これは、規定時間内に2系統信号がVe±E範囲にならない場合(図17参照)には、規定変化でなく、判定不能となる。
前記ステップC09がYESの場合には、シフト制御手段9では、2つの出力電圧の両方が、規定時間内にVe±Fの範囲で反転してVe範囲内で規定時間内に停止することを検出する(規定変化2)(図16参照)(ステップC10)。
そして、左右センサ32の電圧1又は電圧2の両方が、規定変化2となったか否かを判断し(ステップC11)、このステップC11がYESの場合には、シフト制御手段9では、ニュートラルレンジ「N」(基準値:Vr)に操作したと判定する(ステップC12)。
しかし、前記ステップC03がNOの場合、前記ステップC07がNOの場合、前記ステップC09がNOの場合、そして、前記ステップC11がNOの場合には、シフト制御手段9では、左右センサ32によるレンジ判定不能と判定する(ステップC13)。
即ち、この図7においては、
(1)、1つの信号がホームポジション「Home」となる出力電圧(Ve)で、もう一方の信号がニュートラルポジション「N」の出力電圧
(2)、2つの電圧が共にニュートラルポジション「N」方向の出力電圧
(3)、上記(1),(2)以外の信号状態
そして、上記の(1)〜(3)より変速レンジを判定する。
左右センサ32においては、上下センサ31と同様に、図4に示すように、各変速レンジの判定電圧範囲を、場合により分けている。
【0027】
以上この発明の実施例について説明してきたが、上述の実施例の構成を請求項毎に当てはめて説明する。
先ず、請求項1に係る発明において、変速制御装置8は、一つ以上の変速レンジの選択に関る異常時の判定条件を行った場合に、シフトセレクトスイッチ7の上下センサ31、左右センサ32の出力電圧に対して選択された変速レンジを判定する範囲を正常時の範囲より狭く又は広くなるように範囲変更し、選択された変速レンジの判定を一回以上行うよう制御する。
これにより、シフトセレクトスイッチ7の上下センサ31、左右センサ32の故障判定において、シフトセレクトスイッチ7の故障検出の精度が上がり、また、フォールトトレラント性を確保できる。ここで、フォールトトレラント性とは、完全に機能を保ったまま処理を続行することよりも、障害の重大性に応じて機能を低下させながらも処理を続行することである。また、正常時と故障時とでは、変速レンジを判定する判断基準を変更して、フォールトトレラント性をより向上できる。
また、請求項2に係る発明において、変速制御装置8は、シフトセレクトスイッチ7の上下センサ31、左右センサ32の出力電圧がいずれも所定の正常範囲に収まり、且つ互いの出力電圧が所定値以上の差を含む(異常の)場合に、変速レンジの選択に関る異常の判定条件を、セットのうち一つがいずれかのレンジ判定範囲に入る条件、セットのうち全部がいずれかのレンジ選択方向の値をとる条件、セットの2つが基準値に対して互いに逆選択方向の値をとる条件とし、これら条件のうち一つ以上の判断を行って選択された変速レンジの判定を行うように制御する。
これにより、上下センサ32の故障判定においては、故障発生後も、変速レンジの判定を行うので、変速機能を可能な限り長く維持でき、また、変速レンジの判定を行うと同時に、故障の判定を行うことになるので、故障の検知を早くでき、検知精度も高くでき、更に、車両の走行を可能にでき、工場等でのサービスを受け易くできる。
更に、請求項3に係る発明において、変速制御装置8は、変速レンジの選択に関る異常の判定条件について判定を行った場合に、セットのうち全部が、予め設定した規定時間内に、基準値を中心とする範囲から外れる方向に向けて変化を開始するとともに、基準値を中心とする範囲内に戻って停止することを監視する。
これにより、上下センサ31又は左右センサ32の故障の判定において、規定時間を設けているので、曖昧なシフト操作等での判断を排除でき、また、一回のレンジ選択操作であっても、増減反転により、複数回の動作を検知するので判定精度が向上し、更に、短時間の選択操作をするタイプのシフト操作装置に好適である。
【0028】
なお、この発明においては、上述の実施例に限定されず、種々応用改変が可能であることは勿論である。
例えば、シフトレバーの操作パターンは、図2に示す操作パターン以外でも、2系統の出力電圧がある場合は同様である。
また、2系統の出力電圧の変化が正常状態で逆方向になる場合(1つは電圧増加で、もう一方は電圧減少)も、判定電圧を対応することで同様である。
また、図9、図15に示すように、一方の基準電圧がVm、Ve範囲内としたが、上下限電圧(Vhh、Vll、Veh、Vrl)(図2参照)でも同様である。
【産業上の利用可能性】
【0029】
シフトセレクトスイッチの出力電圧に対して選択された変速レンジを判定する範囲を正常時の範囲より狭く又は広くなるように範囲変更し、選択された変速レンジの判定を一回以上行うよう制御することを、他の装置にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】シフト操作装置のシステム構成図である。
【図2】シフトレバーのシフト操作パターン及び各基準電圧(基準値)を示す図である。
【図3】シフトレバーのシフト操作位置(ポジション)との相関において上下センサの出力電圧の各判定電圧範囲を示す図である。
【図4】シフトレバーのシフト操作位置(ポジション)との相関において左右センサの出力電圧の各判定電圧範囲を示す図である。
【図5】シフトレバーをドライブポジション「D」に操作した場合の変速レンジの切り換え制御のフローチャートである。
【図6】上下センサの2系統の出力電圧に電圧差が発生した場合を判定するフローチャートである。
【図7】左右センサの2系統の出力電圧に電圧差が発生した場合を判定するフローチャートである。
【図8】上下センサの正常時における出力電圧パターンを示す図である。
【図9】上下センサの規定変化1としての出力電圧パターン1を示す図である。
【図10】上下センサの規定変化2としての出力電圧パターン2を示す図である。
【図11】上下センサの規定変化3としての出力電圧パターン3を示す図である。
【図12】上下センサの判定不能時における出力電圧パターン4を示す図である。
【図13】上下センサの判定不能時で規定時間を設定した出力電圧パターン5を示す図である。
【図14】左右センサの正常時における出力電圧パターンを示す図である。
【図15】左右センサの規定変化1としての出力電圧パターン1を示す図である。
【図16】左右センサの規定変化2としての出力電圧パターン2を示す図である。
【図17】左右センサの判定不能時で規定時間を設定した出力電圧パターン3を示す図である。
【符号の説明】
【0031】
1 エンジン
2 自動変速機
3 シフト操作装置
4 シフトバイワイヤシステム
6 シフトレバー
7 シフトセレクトスイッチ
8 変速制御装置
9 シフト制御手段
10 自動変速機制御手段
11 バッテリ
12 シフトソレノイド
13 アクチュエータ
14 モータ
16 マニュアルシフトシャフト
17 角度センサ
19 マニュアルバルブ
20 シフトスイッチ
21 車両システム
22 車両LAN
23 車両制御手段
24 エンジン制御手段
27 イグニションスイッチ
31 上下センサ
32 左右センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者により操作されるシフト操作装置に人為的な選択操作を検知するシフトセレクトスイッチを設け、このシフトセレクトスイッチが出力する電圧に基づいて人為操作により選択された変速レンジを判定する変速制御装置を設けた自動変速機のシフト操作装置において、前記シフトセレクトスイッチは、検知範囲を同じとするセットとして複数のセンサを備え、且つこれらセンサ全部に同じ処理を並列に実行させるようセットとして構成され、前記変速制御装置は、一つ以上の変速レンジの選択に関る異常時の判定条件を行った場合に、前記シフトセレクトスイッチの前記各センサの出力電圧に対して選択された変速レンジを判定する範囲を正常時の範囲より狭く又は広くなるように範囲変更し、選択された変速レンジの判定を一回以上行うよう制御することを特徴とする自動変速機のシフト操作装置。
【請求項2】
前記変速制御装置は、前記シフトセレクトスイッチの前記各センサの出力電圧がいずれも所定の正常範囲に収まり、且つ互いの出力電圧が所定値以上の差を含む場合に、変速レンジの選択に関る異常の判定条件を、セットのうち一つがいずれかのレンジ判定範囲に入る条件、セットのうち全部がいずれかのレンジ選択方向の値をとる条件、セットの2つが基準値に対して互いに逆選択方向の値をとる条件とし、これら各条件のうち一つ以上の判断を行って選択された変速レンジの判定を行うように制御することを特徴とする請求項1に記載の自動変速機のシフト操作装置。
【請求項3】
前記変速制御装置は、変速レンジの選択に関る異常の判定条件について判定を行った場合に、セットのうち全部が、予め設定した規定時間内に、前記基準値を中心とする範囲から外れる方向に向けて変化を開始するとともに、前記基準値を中心とする範囲内に戻って停止することを監視することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の自動変速機のシフト操作装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−120062(P2009−120062A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−296869(P2007−296869)
【出願日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】