説明

自動変速機油用の摩擦調整剤としての第二級および第三級アミン

主要量の潤滑粘性のあるオイル;RNRで表わされる第二級または第三級アミン(ここで、RおよびRは、少なくとも6個の炭素原子のアルキル基であり、そしてRは、水素、ヒドロカルビル基、ヒドロキシル含有アルキル基、またはアミン含有アルキル基である);および分散剤の組成物は、特に、自動変速機の摩擦成分として、酸化的および機械的な応力付加中にて、高い静止摩擦係数および耐久性のある正スロープを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
本発明は、自動変速機油、トラクション油、連続可変変速機(CVT)油、デュアルクラッチ自動変速機油、農業用トラクター油、およびエンジン潤滑剤のような流体用の添加剤に関する。
【背景技術】
【0002】
自動変速機の市場では、重量を軽くしつつ変速機の能力を高めることが望まれていることによって、急速なエンジンの変化が進んでおり、クラッチ保持性能の向上に伴う高い静止摩擦係数を示す自動変速機油が望まれている。同時に、μ/v(摩擦係数対滑り速度)曲線において、正のスロープ特性の保持を改善することが望まれている。市場では、これらの特性を規定するための使用される新しい試験が存在する。静止トルクは、Toyota SAE#2摩擦試験のような試験で測定でき、また、正スロープの保持は、JASO LVFA(Japan Automotive Standards Organization、Low Velocity Friction Apparatus)のような手順により測定でき、この手順では、μ/vのスロープは、酸化的および機械的な老化中にて、定期的に測定される。
【0003】
この性能を達成するのに使用される摩擦調整剤技術が記載されている特許が存在している(例えば、特許文献1)。高い静止摩擦係数と耐久性のある正スロープとを組み合わせた要件は、しばしば、伝統的なATF 摩擦調整剤技術(これは、この特許文献において、極めて詳細に記載されている)とは両立しない。よく使われている摩擦調整剤の多くは、静止摩擦係数が低く、満足のいく使用に耐えるほどに十分に耐久性のある正スロープを有さない。正のmu/vまたは耐シャダー(anti−shudder)特性を保持する技術を記載している別の特許文献には、特許文献2が挙げられる。これらは、金属清浄剤と摩擦調整剤の組み合わせとを使用し得る。
【0004】
特許文献3(Adamsら、2004年1月22日)は、(a)カルボン酸とアミノアルコールとの反応から誘導された摩擦調整剤(この摩擦調整剤は、少なくとも2個のヒドロカルビル基を含有する)、および(b)分散剤の組成物を開示しており、これは、自動変速機において、良好な摩擦特性を与える。
【0005】
特許文献4は、種々の生成物(これらは、種々のイミダゾリンまたは以下の構造のオキサゾリンであり得る)を含有する潤滑油を開示している:
【0006】
【化1】

ここで、RおよびRは、それぞれ、CHOCOR、CHOHまたはHを表わし、これらの生成物は、カルボン酸(またはその反応性誘導体)とアミノアルコールの縮合(例えば、2モルのイソステアリン酸と1モルのトリス−ヒドロキシメチルアミノメタン(THAM)との縮合)により、調製される。
【特許文献1】米国特許第5,750,476号明細書
【特許文献2】米国特許第5,858,929号明細書
【特許文献3】国際公開第04/007652号パンフレット
【特許文献4】米国特許第4,886,612号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、特に、自動変速機で使用するために、その摩擦システムの酸化的および機械的な応力付加中にて、高い静止摩擦係数を得るために、また、耐久性のある正スロープを維持するために、新規かつ比較的に簡単で安価な摩擦調整剤を開発するという問題を解決する。これは、以下でさらに記述するように、少なくとも6個の炭素原子の少なくとも2個のアルキル基を有する第二級または第三級アミンを含有する摩擦調整剤を使用することにより、達成される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の要旨)
本発明は、変速機を潤滑させるのに適当な組成物を提供し、該組成物は、以下を含有する:
(a)主要量の潤滑粘性のあるオイル;
(b)次式で表わされる第二級または第三級アミン
NR
ここで、RおよびRは、それぞれ別個に、少なくとも6個の炭素原子のアルキル基であり、そしてRは、水素、ヒドロカルビル基、ヒドロキシル含有アルキル基、またはアミン含有アルキル基である;および
(c)分散剤。
【0009】
本発明は、さらに、変速機を潤滑させる方法を提供し、該方法は、そこに、上記組成物を供給する工程を包含する。
【0010】
本発明は、さらに、変速機用の潤滑剤を調製するために潤滑粘性のあるオイルで希釈するのに適当な濃縮物を提供し、該濃縮物は、以下を含有する:(a)濃縮物形成量の潤滑粘性のあるオイル;(b)上記のような第二級または第三級;および(c)分散剤。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(発明の詳細な説明)
種々の好ましい特徴および実施態様は、非限定的な例によって、以下で記述する。
【0012】
本発明の1成分は、潤滑粘性のあるオイルであり、これは、潤滑組成物には主要量で、また、濃縮物には濃縮物形成量で、存在できる。適当なオイルには、天然および合成の潤滑油およびそれらの混合物が挙げられる。完全に調合した潤滑剤では、この潤滑粘性のあるオイルは、一般に、主要量(すなわち、50重量%より多い量)で、存在している。典型的には、この潤滑粘性のあるオイルは、この組成物の75〜95重量%の量、しばしば、80重量%より多い量で、存在している。
【0013】
本発明の潤滑剤および作動液を製造する際に有用な天然油には、動物油および植物油だけでなく、鉱物性潤滑油(例えば、液状の石油オイル、およびパラフィンタイプ、ナフテンタイプまたは混合したパラフィン−ナフテンタイプであって、かつ溶媒処理された鉱物性潤滑油または酸処理された鉱物性潤滑油;これらは、水素化分解プロセスおよび水素化仕上げプロセスにより、さらに精製され得る)が挙げられる。
【0014】
合成潤滑油には、炭化水素油およびハロ置換炭化水素油(例えば、重合したオレフィンおよびインターポリマー化したオレフィン(これらはまた、ポリアルファオレフィンとして、知られている);ポリフェニル;アルキル化ジフェニルエーテル;アルキル−またはジアルキルベンゼン;およびアルキル化ジフェニルスルフィド;およびそれらの誘導体、類似物および同族体)が挙げられる。また、アルキレンオキシド重合体およびそれらの誘導体(この誘導体では、その末端水酸基は、エステル化またはエーテル化などにより修飾され得る)も、含まれる。また、ジカルボン酸と種々のアルコールとのエステル、またはC〜C12モノカルボン酸およびポリオールまたはポリオールエーテルから製造されるエステルも、含まれる。他の合成油には、シリコンベース油、リン含有酸の液状エステル、および重合体テトラヒドロフランが挙げられる。
【0015】
未精製油、精製油および再精製油(これは、上で開示のタイプの天然油または合成油のいずれか、およびこれらのいずれかの2種またはそれ以上の混合物である)は、本発明の潤滑剤中で使用できる。未精製油とは、天然原料または合成原料から、さらに精製処理することなく、直接得られるものである。精製油は、1種またはそれ以上の特性を改良するべく、1段またはそれ以上の精製段階でさらに処理された。それらは、例えば、水素化でき、酸化に対する安定性を改良した潤滑粘性のあるオイルが得られる。
【0016】
一実施態様では、この潤滑粘性のあるオイルは、API第II族、第III族、第IV族または第IV族オイル(合成油、またはそれらの混合物を含めて)である。これらは、API Base Oil Interchangeability Guidelinesにより確立された分類である。第II族オイルおよび第III族オイルの両方は、<0.03パーセントのイオウおよび>99パーセントの飽和物を含有する。第II族オイルは、80〜120の粘度指数を有し、そして第III族オイルは、>120の粘度指数を有する。ポリアルファオレフィンは、第IV族として分類される。このオイルはまた、スラックワックスまたはフィッシャー−トロプシュ合成ワックスのようなワックスの水素異性化から誘導されたオイルであり得る。第V族は、「他の全て」(第I族(これは、>0.03%のSおよび/または<90%の飽和物を含有し、そして80〜120の粘度指数を有する)を除いて)を包含する。
【0017】
好ましい実施態様では、この潤滑粘性のあるオイルの少なくとも50重量%は、ポリアルファオレフィン(PAO)である。典型的には、これらのポリアルファオレフィンは、4個〜30個、または4個〜20個、または6個〜16個の炭素原子を有するモノマーから誘導される。有用なPAOの例には、1−デセンから誘導されたものが挙げられる。これらのPAOは、100℃で、1.5〜150mm/s(cSt)の粘度を有し得る。PAOは、典型的には、水素化された物質である。
【0018】
本発明のオイルは、単一の粘度範囲のオイル、または高い粘度範囲のオイルと低い粘度範囲のオイルとの混合物を包含できる。好ましい実施態様では、このオイルは、100℃で、1または2〜8または10mm/sec(cSt)の動粘度を示す。この全体的な潤滑組成物は、好ましくは、100℃での粘度が1または1.5〜10または15または20mm/secであり−40℃でのブルックフィールド(ASTM−D−2983)が20または15Pa−s(20,000cPまたは15,000cP)、好ましくは、10Pa−s未満、さらに、5Pa−s以下であるように、オイルおよび他の成分を使用して調合される。
【0019】
成分(b)は、第二級または第三級アミンであり、これは、摩擦調整剤として、働くことができる。このアミンは、少なくとも2個の置換基であるヒドロカルビル基(例えば、アルキル基)を含有する。このアミンは、次式で表わされる:
NR
ここで、RおよびRは、それぞれ別個に、少なくとも6個の炭素原子(例えば、8個〜20個、または10〜18個または12個〜16個の炭素原子)のアルキル基であり、そしてRは、水素、ヒドロカルビル基、ヒドロキシル含有アルキル基、またはアミン含有アルキル基である。このようなアミンの市販の例には、Armeen 2C(商標)、これは、2個のC12アルキル基を有すると考えられている。
【0020】
一実施態様では、このアミンは、ジ−ココアルキルアミンまたは同族アミンを含む。ジ−ココアルキルアミン(またはジ−ココアミン)は、上式のR基の2個が主にC12基(これは、ヤシ油から誘導される)であり、そして残りのR基がHである第二級アミンである。
【0021】
別の実施態様では、上記構造のRは、−CH−CHOH−Rであり、ここで、Rは、水素またはアルキル基(例えば、メチル基、または1個〜26個の炭素原子、または6個〜20個の炭素原子、または12個〜18個の炭素原子、または14個〜16個の炭素原子、または14個の炭素原子のアルキル基)である。このような物質は、第二級アミン(例えば、ジ−ココアルキルアミン)とエポキシド(例えば、プロピレンオキシド(Rがメチルである場合))との反応により、調製できる。得られた生成物は、それゆえ、さらに具体的には、以下の構造で表わすことができる:
N−CH−CHOH−CH
ここで、RおよびRは、上記のように、別個に、8個〜20個の炭素原子のアルキル基である。このジアルキルアミンとエポキシドとの反応は、圧力下にて、塩基性触媒の存在下にて、引き起こされ得る。別の実施態様では、Rは、アミノプロピル基(例えば、−CH−CH−CH−NH)であり、そして得られた生成物は、第二級アミン(例えば、ジココアルキルアミン)とアクリロニトリルとの反応に続いて還元により、調製できる。
【0022】
本発明の組成物中の成分(b)の量は、一般に、自動変速機におけるシャダー(すなわち、変速機油の摩擦特性のバランスが不十分であるとき、シフティング中に観察される性能欠陥)を阻止または低減するのに適当な量である。有効な量は、仕上げ流体調合物の0.01〜10.0重量パーセントであり得る。代わりの量には、0.02パーセント〜5パーセント、または0.1パーセント〜3パーセント、または0.1〜2パーセント、または0.5〜1.5パーセントが挙げられる。濃縮物では、これらの量は、それに比例して、多くなる。
【0023】
成分(c)は、分散剤である。それは、(b)の摩擦調整剤のいくつかがある程度の分散剤特性を示し得る場合には、「(b)の種以外のもの」として、記述され得る。「カルボン酸分散剤」の例は、以下を含む多くの米国特許に記載されている:第3,219,666号、第3,316,177号、第3,340,281号、第3,351,552号、第3,381,022号、第3,433,744号、第3,444,170号、第3,467,668号、第3,501,405号、第3,542,680号、第3,576,743号、第3,632,511号、第4,234,435号、Re第26,433号、および第6,165,235号。
【0024】
コハク酸イミド分散剤は、カルボン酸分散剤の1種であるが、ヒドロカルビル置換無水コハク酸(またはそれらの反応性等価物(例えば、酸、酸ハロゲン化物またはエステル))と上記アミンとを反応させることにより、調製される。そのヒドロカルビル置換基は、平均して、少なくとも8個、または20個、または30個、または35個から350個まで、または200個まで、または100個までの炭素原子を含有する。一実施態様では、このヒドロカルビル基は、ポリアルケンから誘導される。このようなポリアルケンは、少なくとも500のM(数平均分子量)により、特徴付けることができる。一般に、このポリアルケンは、500、または700、または800、または900から、5000まで、または2500まで、または2000まで、または1500までのMにより、特徴付けられる。他の実施態様では、Mは、500から、または700から、または800から、1200まで、または1300までで変わる。一実施態様では、その多分散性(M/M)は、少なくとも1.5である。
【0025】
これらのポリアルケンには、2個〜16個または6個または4個の炭素原子を有する単独重合体およびインターポリマーが挙げられる。これらのオレフィンは、モノオレフィン(例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテンおよび1−オクテン);またはポリオレフィン性モノマー(例えば、ジオレフィン性モノマー(例えば、1,3−ブタジエンおよびイソプレン))であり得る。重合体の一例には、ポリブテンがある。ある場合には、このポリブテンの約50%は、イソブチレンから誘導される。これらのポリアルケンは、通常の手順により、調製できる。
【0026】
一実施態様では、これらのコハク酸アシル化剤は、ポリアルケンと過剰の無水マレイン酸とを反応させて置換コハク酸アシル化剤を提供することにより、調製され、ここで、各当量の置換基に対するコハク酸基の数は、少なくとも1.3個、例えば、1.5個、または1.7個、または1.8個である。1置換基あたりのコハク酸基の最大数は、4.5個、または2.5個、または2.1個、または2.0個を超えない。その置換基がこのようなポリオレフィンから誘導された置換コハク酸アシル化剤の調製は、米国特許第4,234,435号で記載されている。
【0027】
この置換コハク酸アシル化剤は、アミン(上記アミンを含めて)およびヘビーアミン生成物(これは、アミン静止ボトムスとして知られている)と反応できる。このアシル化剤と反応されるアミンの量は、典型的には、1:2〜1:0.75のCO:Nのモル比を生じる量である。もし、このアミンが第一級アミンであるなら、そのイミドへの完全な縮合が起こり得る。変化する量のアミン生成物(例えば、アミド酸)もまた、存在し得る。もし、この反応が、むしろ、アルコールとであるなら、得られる分散剤は、エステル分散剤である。もし、アミン官能基およびアルコール官能基の両方が存在しているなら、別個の分子であろうと同じ分子(上記縮合アミンのように)であろうと、アミド、エステルおよび多分、イミド官能基の混合物が存在できる。これらは、いわゆるエステル−アミド分散剤である。
【0028】
「アミン分散剤」は、比較的高分子量の脂肪族または脂環族ハロゲン化物とアミン(好ましくは、ポリアルキレンポリアミン)との反応生成物である。それらの例は、例えば、以下の米国特許に記載されている:第3,275,554号、第3,438,757号、第3,454,555号、および第3,565,804号。
【0029】
「マンニッヒ分散剤」は、アルキル基が少なくとも30個の炭素原子を含有するアルキルフェノールと、アルデヒド(特に、ホルムアルデヒド)およびアミン(特に、アミン縮合物およびポリアルキレンポリアミン)との反応生成物である。以下の米国特許に記載の物質は、例示である:第3,036,003号、第3,236,770号、第3,414,347号、第3,448,047号、第3,461,172号、第3,539,633号、第3,586,629号、第3,591,598号、第3,634,515号、第3,725,480号、第3,726,882号、および第3,980,569号。
【0030】
「後処理分散剤」もまた、本発明の一部である。それらは、カルボン酸分散剤、アミン分散剤またはマンニッヒ分散剤を、以下のような試薬で後処理することにより得られる:尿素、チオ尿素、二硫化炭素、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、炭化水素置換無水コハク酸、ニトリル、エポキシド、ホウ素含有化合物(例えば、ホウ酸(「ホウ酸塩化分散剤」を生じるために)、リン含有化合物(例えば、リン含有酸または無水物)、あるいは2,5−ジメルカプトチアジアゾール(DMTD)など。この種の代表的な物質は、以下の米国特許に記載されている:第3,200,107号、第3,282,955号、第3,367,943号、第3,513,093号、第3,639,242号、第3,649,659号、第3,442,808号、第3,455,832号、第3,579,450号、第3,600,372号、第3,702,757号、および第3,708,422号。
【0031】
分散剤の混合物もまた、使用できる。
【0032】
本発明の組成物中の成分(c)の量は、一般に、0.3〜10重量パーセントである。他の実施態様では、成分(c)の量は、ブレンドした最終流体調合物の0.5〜7パーセントまたは1〜5パーセントである。濃縮物では、これらの量は、それに比例して、多くなる。
【0033】
変速機油(特に、自動変速機油(ATF))で通常使用される他の成分もまた、典型的には、存在している。
【0034】
しばしば使用される1つの成分は、粘度調整剤である。粘度調整剤(VM)および分散剤粘度調整剤(DVM)は、周知である。VMsおよびDVMsの例には、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリオレフィン、スチレン−マレイン酸エステル共重合体、および類似の重合体物質(単独重合体、共重合体およびグラフト重合体を含めて)がある。
【0035】
市販のVMs、DVMsおよびそれらの化学型の例には、以下が挙げられる:ポリイソブチレン(例えば、BP Amoco製のIndopol(商標)またはExxonMobil製のParapol(商標));オレフィン共重合体(例えば、Lubrizol製のLubrizol 7060、7065および7067およびUniroyal製のTrilene(商標)CP−40およびCP−60);水素化スチレン−ジエン共重合体(例えば、Shell製のShelivis(商標)40および50、およびLubrizol製のLZ(登録商標)7341、7351および7441);スチレン/マレエート共重合体(これは、分散剤共重合体である)(例えば、Lubrizol製のLZ(登録商標)3702、2751および3703);ポリメタクリレート(その一部は、分散特性を有する)(例えば、RohMax製のAcryloid(商標)およびViscoplex(商標)シリーズであるもの、Texaco製のTLA(商標)シリーズ、ならびにLubrizol製のLZ 7702(商標)およびLZ 7720(商標));オレフィン−グラフト−ポリメタクリレートポリマー(例えば、Rohm GmbH製のViscoplex(商標)2−500および2−600);および水素化ポリプレン星形重合体(例えば、Shell製のShellvis(商標)200および260)。粘度調整剤の最近の要約は、米国特許第5,157,088号、第5,256,752号および第5,395,539号で見られる。これらのVMsおよび/またはDVMsは、15重量%までのレベルで、完全に調合した組成物に取り込まれる。好ましい量は、1〜12%または3〜10%である。
【0036】
本発明で使用される組成物で使用され得る別の成分は、補助摩擦調整剤である。摩擦調整剤は、当業者に周知である。摩擦調整剤の有用なリストは、米国特許第4,792,410号に含まれている。米国特許第5,110,488号は、摩擦調整剤として有用な脂肪酸の金属塩(特に、亜鉛塩)を開示している。摩擦調整剤のリストには、以下が含まれる:
(i)脂肪亜リン酸エステル
(ii)脂肪酸アミド
(iii)脂肪エポキシド
(iv)ホウ酸塩化脂肪エポキシド
(v)上記成分(b)以外の脂肪アミン
(vi)グリセロールエステル
(vii)ホウ酸塩化グリセロールエステル
(viii)アルコキシル化脂肪アミン
(ix)ホウ酸塩化アルコキシル化脂肪アミン
(x)脂肪酸の金属塩
(xi)硫化オレフィン
(xii)脂肪イミダゾリン
(xiii)カルボン酸とポリアルキレンポリアミンとの縮合生成物
(xiv)サリチル酸アルキルの金属塩
(xv)アルキルリン酸のアミン塩
およびそれらの混合物。
【0037】
これらの種類の摩擦調整剤の各々の代表例は、公知であり、そして市販されている。例えば、(i)脂肪亜リン酸エステルは、一般に、式(RO)PHOを有する。好ましい亜リン酸ジアルキルは、前出の式で示されているように、典型的には、少量の式(RO)(HO)PHOの亜リン酸モノアルキルと共に存在している。これらの構造では、「R」との用語は、好都合には、アルキル基と呼ばれる。もちろん、このアルキルが実際にはアルケニルであり、それゆえ、本明細書中で使用する「アルキル」および「アルキル化」との用語がそのリン酸エステル内の飽和アルキル基以外のものを包含することは、可能である。この亜リン酸エステルは、その亜リン酸エステルを実質的に親油性にするのに十分なヒドロカルビル基を有するべきである。好ましくは、このヒドロカルビル基は、実質的に分枝していない。多くの適当な亜リン酸エステルは、市販されており、そして米国特許第4,752,416号で記載されているように合成され得る。この亜リン酸エステルは、R基の各々にて、8個〜24個の炭素原子を含有することが好ましい。好ましくは、この脂肪亜リン酸エステルは、その脂肪ラジカルにて、12個〜22個の炭素原子、さらに好ましくは、16個〜20個の炭素原子を含有する。一実施態様では、この脂肪亜リン酸エステルは、オレイル基から形成され得、それゆえ、各脂肪ラジカルにて、18個の炭素原子を有する。
【0038】
(iv)ホウ酸塩化脂肪エポキシドは、カナダ特許第1,188,704号から公知である。これらの油溶性ホウ素含有組成物は、80℃〜250℃の温度で、少なくとも1種のホウ酸または三酸化ホウ素を次式を有する少なくとも1種の脂肪エポキシドと反応させることにより、調製される:
【0039】
【化2】

ここで、R、R、RおよびRの各々は、水素または脂肪族ラジカルであるか、それらのいずれか2個は、それらが結合するエポキシ炭素原子と一緒になって、環状ラジカルを形成する。この脂肪エポキシドは、好ましくは、少なくとも8個の炭素原子を含有する。
【0040】
これらのホウ酸塩化脂肪エポキシドは、2種の物質の反応を含むそれらの調製方法により、特徴付けることができる。試薬Aは、三酸化ホウ素または以下を含めた種々の形状のホウ酸のいずれかであり得る:メタホウ酸(HBO)、オルトホウ酸(HBO)およびテトラホウ酸(H)。ホウ酸、特に、オルトホウ酸が好ましい。試薬Bは、上式を有する少なくとも1種の脂肪エポキシドであり得る。この式では、これらのR基の各々は、最も多くの場合、水素、または少なくとも1個がヒドロカルビルである脂肪族ラジカル、または少なくとも6個の炭素原子を有する脂肪族ラジカルである。試薬Aと試薬Bとのモル比は、一般に、1:0.25〜1:4である。1:1〜1:3が好ましく、約1:2は、特に好ましい比である。このホウ酸塩化脂肪エポキシドは、単に、2種の試薬をブレンドすることにより、そして80〜250℃、好ましくは、100〜200℃で、反応を起こすのに十分な期間にわたって、加熱することにより、調製できる。もし望ましいなら、この反応は、実質的に不活性で通常液状の有機希釈剤の存在下にて、起こり得る。この反応中にて、水が発生し、蒸留により除去され得る。
【0041】
(iii)非ホウ酸塩化脂肪エポキシドは、上記「試薬B」と対応しているが、また、摩擦調整剤として有用である。
【0042】
ホウ酸塩化アミンは、一般に、米国特許第第4,622,158号から公知である。ホウ酸塩化アミン摩擦調整剤((ix)ホウ酸塩化アルコキシル化脂肪アミンを含めて)は、好都合には、上記ホウ素含有化合物と対応するアミンとの反応により、調製される。このアミンは、単純脂肪アミンまたはヒドロキシ含有第三級アミンであり得る。これらのホウ酸塩化アミンは、上記ホウ素含有反応物をアミン反応物に加えることにより、そして得られた混合物を、攪拌しつつ、50〜300℃、好ましくは、100℃〜250℃または150℃〜230℃で加熱することにより、調製できる。この反応は、その反応混合物から副生成物である水が発生しなくなるまで(このことは、この反応の完結を示す)、継続される。
【0043】
これらのホウ酸塩化アミンを調製する際に有用なアミンには、「ETHOMEEN」の商標で知られている市販のアルコキシル化脂肪アミンがあり、これらは、Akzo Nobelから入手できる。これらのETHOMEEN(登録商標)物質の代表例には、ETHOMEEN(登録商標)C/12(ビス[2−ヒドロキシエチル]ココアミン);ETHOMEEN(登録商標)C/20(ポリエチレン[10]ココアミン);ETHOMEEN(登録商標)S/12(ビス[2−ヒドロキシエチル]ソヤミン);ETHOMEEN(登録商標)T/12(ビス[2−ヒドロキシエチル]−タロアミン);ETHOMEEN(登録商標)T/15(ポリエチレン−[5]タロアミン);ETHOMEEN(登録商標)0/12(ビス[2−ヒドロキシエチル]オレイルアミン);ETHOMEEN(登録商標)18/12(ビス[2−ヒドロキシエチル]オクタデシルアミン);andETHOMEEN(登録商標)18/25(ポリオキシエチレン[15]オクタデシルアミン)。脂肪アミンおよびエトキシ化脂肪アミンはまた、米国特許第4,741,848号で記載されている。
【0044】
この(viii)アルコキシル化脂肪アミンおよび(v)脂肪アミンそれ自体(例えば、オレイルアミン)は、一般に、本発明では、摩擦調整剤として有用である。このようなアミンは、市販されている。
【0045】
グリセロールのホウ酸塩化および非ホウ酸塩化脂肪酸エステルの両方は、摩擦調整剤として使用できる。(vii)グリセロールのホウ酸塩化脂肪エステルは、反応水を除去しつつ、グリセロールの脂肪酸エステルをホウ酸でホウ酸塩化することにより、調製される。好ましくは、各ホウ素がその反応混合物中に存在している1.5個〜2.5個の水酸基と反応するのに十分なホウ素が存在している。この反応は、60〜135℃の範囲の温度で、任意の適当な有機溶媒(例えば、メタノール、ベンゼン、キシレン、トルエンまたはオイル)の存在下または非存在下にて、実行され得る。
【0046】
(vi)グリセロールの脂肪酸エステルそれ自体は、当該技術分野で周知の種々の方法により、調製できる。これらのエステルの多く(例えば、グリセロールモノオレエートおよびグリセロールタロエート)は、商業規模で、製造されている。有用なエステルは、油溶性であり、好ましくは、C〜C22脂肪酸またはそれらの混合物(例えば、天然産物で見られるもの、および以下で詳細に記述するもの)から調製される。グリセロールの脂肪酸モノエステルが好ましいが、モノエステルおよびジエステルの混合物は、使用され得る。例えば、市販のグリセロールモノオレエートは、45重量%〜55重量%のモノエステルおよび55重量%〜45重量%のジエステルを含有し得る。
【0047】
脂肪酸は、上記グリセロールエステルを調製する際に使用できる;それらはまて、(x)金属塩、(ii)アミドおよび(xii)イミダゾリンを調製する際に使用でき、それらのいずれかはまた、摩擦調整剤として使用できる。好ましい脂肪酸には、6個〜24個の炭素原子、好ましくは、8個〜18個の炭素原子を含有するものがある。これらの酸は、分枝または直鎖、飽和または不飽和であり得る。適当な酸には、2−エチルヘキサン酸、デカン酸、オレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、パルミトレイン酸、リノール酸、ラウリン酸およびリノレン酸、および以下の天然産物に由来の酸が挙げられる:獣脂、パーム油、オリーブ油、落花生油、とうもろこし油および牛足油。特に好ましい酸は、オレイン酸である。好ましい金属塩には、亜鉛塩およびカルシウム塩が挙げられる。例には、オーバーベース化カルシウム塩および塩基性オレイン酸亜鉛塩錯体(これは、Znオレエートで表わすことができる)がある。好ましいアミドには、アンモニアと第一級または第二級アミン(例えば、ジエチルアミンおよびジエタノールアミン)との縮合により調製されるものがある。脂肪イミダゾリンは、酸とジアミンまたはポリアミン(例えば、ポリエチレンポリアミン)との縮合生成物である。これらのイミダゾリンは、一般に、以下の構造により表わされる:
【0048】
【化3】

ここで、Rは、アルキル基であり、そしてR’は、水素またはヒドロカルビル基または置換ヒドロカルビル基(−(CHCHNH)n−基を含めて)である。好ましい実施態様では、この摩擦調整剤は、C〜C24脂肪酸とポリアルキレンポリアミンとの縮合生成物、特に、イソステアリン酸とテトラエチレンペンタミンとの生成物である。カルボン酸およびポリアルキレンアミン(xiii)の縮合生成物は、一般に、イミダゾリンまたはアミドであり得る。
【0049】
硫化オレフィン(xi)は、摩擦調整剤として使用される周知の市販物質である。特に好ましい硫化オレフィンは、米国特許第4,957,651号および第4,959,168号の詳細な教示に従って調製されるものである。ここで、以下からなる群から選択される2種またはそれ以上の反応物の共硫化した混合物が記載されている:(1)多価アルコールの少なくとも1種の脂肪酸エステル、(2)少なくとも1種の脂肪酸、(3)少なくとも1種のオレフィン、および(4)一価アルコールの少なくとも1種の脂肪酸エステル。
【0050】
反応物(3)、このオレフィン成分は、少なくとも1種のオレフィンを含有する。このオレフィンは、好ましくは、脂肪族オレフィンであり、これは、通常、4個〜40個の炭素原子、好ましくは、8個〜36個の炭素原子を含有する。末端オレフィン、すなわち、α−オレフィン、特に、12個〜20個の炭素原子を有するものが好ましい。これらのオレフィンの混合物は、市販されており、このような混合物は、本発明での使用が考慮される。
【0051】
これらの反応物の2種またはそれ以上の共硫化混合物は、適当な反応物の混合物をイオウ源と反応させることにより、調製される。硫化する混合物は、10〜90重量部の反応物(1)、または0.1〜15重量部の反応物(2);または10〜90重量部、しばしば、15〜60重量部、さらに多くの場合、25〜35重量部の反応物(3)、または10〜90重量部の反応物(4)を含有できる。本発明の混合物は、反応物(3)と、反応物(1)、(2)および(4)の群の少なくとも1種の他のメンバーとを含有する。この硫化反応は、一般に、高温で、攪拌しつつ、必要に応じて、不活性雰囲気で、不活性溶媒の存在下にて、行われる。本発明の方法で有用な硫化剤には、元素イオウ(これは、調製される)、硫化水素、ハロゲン化イオウ+硫化ナトリウム、および硫化水素とイオウまたは二酸化イオウとの混合物が挙げられる。典型的には、しばしば、1モルのオレフィン結合あたり、0.5〜3モルのイオウが使用される。
【0052】
サリチル酸アルキルの金属塩(xiv)には、長鎖(例えば、C12〜C16)アルキル置換サリチル酸のカルシウム塩および他の塩が挙げられる。
【0053】
アルキルリン酸のアミン塩(xv)には、リン酸のオレイルエステルおよび他の長鎖エステルと下記アミンとの塩が挙げられる。このことに関して有用なアミンは、第三級脂肪族第一級アミン(Primene(登録商標))である。この補助摩擦調整剤は、成分(a)に加えて、使用できる。この補助摩擦調整剤の量は、一般に、この潤滑組成物の0.1〜1.5重量パーセント、好ましくは、0.2〜1.0または0.25〜0.75パーセントである。しかしながら、いくつかの実施態様では、この補助摩擦調整剤の量は、0.2パーセント未満または0.1重量パーセント未満、例えば、0.01〜0.1パーセントで、存在している。一実施態様では、ジヒドロキシエチルタロアミン(これは、ENT−12(商標)として、市販されている)の量は、特に、これらの低い量またはそれ未満に制限される。
【0054】
本発明の組成物はまた、清浄剤を含有できる。本明細書中で使用する清浄剤には、有機酸の金属塩がある。この清浄剤の有機酸部分は、スルホン酸塩、カルボン酸塩、フェネート、サリチル酸塩である。この清浄剤の金属部分は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属である。好ましい金属には、ナトリウム、カルシウム、カリウムおよびマグネシウムがある。典型的には、これらの清浄剤は、オーバーベース化されており、このことは、中性金属塩を形成するのに必要な量よりも化学量論的に過剰な金属が存在することを意味する。
【0055】
好ましいオーバーベース化有機塩には、有機物質から形成される実質的に親油性のスルホン酸塩がある。有機スルホン酸塩は、潤滑剤および清浄剤の技術分野において、周知の物質である。このスルホン酸塩化合物は、平均して、約10個〜約40個の炭素原子、好ましくは、約12個〜約36個の炭素原子、さらに好ましくは、約14個〜約32個の炭素原子を含有するべきである。同様に、これらのフェネート、オキシレートおよびカルボン酸塩は、実質的に親油性である。
【0056】
本発明では、これらの炭素原子は、芳香族立体配置またはパラフィン性立体配置のいずれかにできるものの、アルキル化芳香族物質を使用するのが好ましい。ナフタレンベースの物質は使用され得るものの、一般に好まれる芳香族物質は、ベンゼン部分である。
【0057】
それゆえ、最も好ましい組成物は、オーバーベース化モノスルホン化アルキル化ベンゼンであり、好ましくは、モノアルキル化ベンゼンである。典型的には、アルキルベンゼン部分は、スティルボトム原料(still bottom sources)から得られ、モノ−またはジアルキル化されている。本発明では、このモノアルキル化芳香族物質は、全体的な特性について、このジアルキル化芳香族物質よりも優れていると考えられている。
【0058】
本発明では、このモノアルキル化塩(ベンゼンスルホン酸塩)を得るためには、モノアルキル化芳香族物質(ベンゼン)の混合物を使用するのが望ましい。その組成物の相当部分がアルキル基の原料としてプロピレンの重合体を含有する混合物は、その塩の溶解性を助ける。一官能性(例えば、モノスルホン化)物質を使用すると、その潤滑剤からの塩の沈殿を少なくしつつ、これらの分子が架橋するのが回避される。
【0059】
この塩は、「オーバーベース化されている」のが好ましい。「オーバーベース化する」とは、この塩のアニオンを中和するのに必要な量よりも化学量論的に過剰な金属が存在することを意味する。オーバーベース化に由来の過剰な金属は、この潤滑剤を構成し得る酸を中和する効果を有する。第二の利点には、このオーバーベース化塩が、動摩擦係数を上げることがある。典型的には、大体、当量基準で、約30:1までの比、好ましくは、5:1〜18:1の比で、このアニオンを中和するのに必要な量よりも過剰な金属が存在する。
【0060】
潤滑組成物中で使用されるオーバーベース化塩の量は、典型的には、オイルを含まない基準で、約0.025〜約3%、好ましくは、0.1〜1.0%である。このオーバーベース化塩は、通常、オイルを含まない基準で、10〜600のTBN範囲を有する約50%オイル中で、構成される。ホウ酸塩化および非ホウ酸塩化オーバーベース化清浄剤は、米国特許第5,403,501号および第4,792,410号に記載されており,これらの内容は、それに関連した開示について、本明細書中で参考として援用されている。
【0061】
本発明の組成物はまた、0.002〜1.0重量パーセントの量で、少なくとも1種のリン含有酸、リン含有酸塩、リン含有酸エステルまたはそれらの誘導体(イオウ含有類似物を含めて)を含有できる。これらのリン含有酸、リン含有酸塩、リン含有酸エステルまたはそれらの誘導体には、リン酸、亜リン酸、リン含有酸エステルまたはそれらの塩、亜リン酸エステル、リン含有アミド、リン含有カルボン酸またはエステル、リン含有エーテル、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0062】
一実施態様では、このリン含有酸、エステルまたは誘導体は、有機または無機のリン含有酸、リン含有酸エステル、リン含有酸塩、またはそれらの誘導体であり得る。これらのリン含有酸には、リン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸およびチオリン酸(モノチオリン酸だけでなく、ジチオリン酸を含めて)、チオホスフィン酸およびチオホスホン酸が挙げられる。1群のリン含有化合物には、次式で表わされるアルキルリン酸モノアルキル第一級アミン塩がある:
【0063】
【化4】

ここで、R、R、Rは、アルキルまたはヒドロカルビル基であるか、あるいは、RおよびRの1個は、Hであり得る。これらの物質は、ジアルキルおよびモノアルキルリン酸エステルの1:1の混合物であり得る。この種の化合物は、米国特許第5,354,484号で記載されている。
【0064】
85%リン酸は、完全に調合した組成物に添加するのに好ましい物質であり、これは、その組成物の重量を基準にして、0.01〜0.3重量パーセント、好ましくは、0.03〜0.2または0.1重量パーセントのレベルで、含有できる。
【0065】
本発明の組成物には、前記の必要な成分または仕様と適合するという条件で、必要に応じて、他の物質が含有できる。このような物質には、酸化防止剤が挙げられ、これには、ヒンダードフェノール酸化防止剤、第二級芳香族アミン酸化防止剤、硫化フェノール酸化防止剤、油溶性銅化合物、リン含有酸化防止剤、有機スルフィド、ジスルフィドおよびポリスルフィドが含まれる。他の任意の成分には、シール膨潤組成物(例えば、イソデシルスルホランまたはフタル酸エステル)が挙げられ、これらは、シールを柔軟に保つように設計されている。また、流動点降下剤(例えば、アルキルナフタレン、ポリメタクリレート、酢酸ビニル/フマル酸ビニルまたは/マレイン酸ビニル共重合体、およびスチレン/マレエート共重合体)も、許容できる。別の物質には、耐摩耗剤(例えば、ジアルキルジチオリン酸亜鉛)がある。これらの任意の物質は、当業者に公知であり、一般に、市販されており、公開されたヨーロッパ特許出願第761,805号で、さらに詳細に記載されている。また、腐食防止剤、染料、流動化剤、臭気マスキング剤および消泡剤のような公知の物質も、含有される。有機ホウ酸エステルおよび有機ホウ酸塩もまた、含有できる。
【0066】
上記成分は、十分に調合された潤滑剤の形態、またはそれより少ない量の潤滑油内の濃縮物の形態であり得る。もし、それらが濃縮物で存在しているなら、それらの濃度は、一般に、最終ブレンドでさらに希薄な形態なおけるそれらの濃度と直接比例している。
【実施例】
【0067】
以下の成分を使って、潤滑剤調合物を調製する:
【0068】
【化5】

【0069】
【化6】

a.テレフタル酸(TPA)で処理された分散剤であって、これはまた、必要に応じて、ジメルカプトチアジアゾール、無機リン含有酸、および/またはホウ素でも処理されている
b.DMTD=ジメルカプトチアジアゾール
c.2−エチルヘキシルおよび水素化タロアルキル基を有する第二級アミン
d.通例存在している他の物質(例えば、粘度指数向上剤または消泡剤)を少量で含有し得る。
【0070】
特定の調合物を調製し、そして以下のようにして試験する:
2および4mm/s(cSt、100℃)のオイルの合成基油ブレンド中にて、調合物を調製するが、これらは、市販の粘度指数向上剤、分散剤、スルホン酸カルシウム清浄剤、酸化防止剤、ホウ素含有摩擦調整剤およびリン含有摩擦調整剤を含有する。この基油調合物に、各場合において、指定したアミン物質の1種を加える。
【0071】
これらの調合物の静止摩擦係数を、μT(すなわち、SAE#2試験手順からの安定化係数)によって、報告する。少なくとも0.12または少なくとも0.15(例えば、0.15〜0.19)のμTの値が望ましい。Japanese Automobile Standard,JASO M−348−95、「自動変速機油の摩擦特性の試験方法」で記載された試験手順により、摩擦対速度の平均スロープ(40℃、24kg負荷、6〜11時間の試験)を測定する。6〜11時間にわたる正スロープ(例えば、0.0033または0.0040より高いスロープ)が望ましい。
【0072】
【化7】

これらの結果は、摩擦調整剤(a)を、そのベース調合物に存在している分散剤(b)と併用すると、JASO LVFAスクリーン試験のスロープを正にしつつ、高いレベルの静止摩擦μTが得られることを示している。
【0073】
上で引用した各文献の内容は、本明細書中で参考として援用されている。実施例を除いて、他に明らかに指示がなければ、物質の量を特定している本記述の全ての数値量、反応条件、分子量、炭素原子数などは、「約」という用語により修飾されることが分かる。他に指示がなければ、本明細書中で言及した各化学物質または組成物は、その異性体、副生成物、誘導体、および市販等級の物質中に存在すると通常考えられているような他のこのような物質を含有し得る、市販等級の物質であると解釈されるべきである。しかしながら、各化学成分の量は、他に指示がなければ、市販等級の物質に通例存在し得る溶媒または希釈油を除いて、提示されている。同様に、本発明の各要素の範囲および量は、他の要素のいずれかの範囲または量と併用できる。本明細書中で示した上限および下限の量、範囲および比は、別個に組み合わされ得ることが分かる。本明細書中で使用する「本質的になる」との表現には、問題の組成物の基本的で新規な特性に著しく影響を与えない物質が含まれていてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変速機を潤滑させるのに適当な組成物であって、該組成物は、以下を含有する:
(a)主要量の潤滑粘性のあるオイル;
(b)次式で表わされる第二級または第三級アミン
NR
ここで、RおよびRは、それぞれ別個に、少なくとも6個の炭素原子のアルキル基であり、そしてRは、水素、ヒドロカルビル基、ヒドロキシル含有アルキル基、またはアミン含有アルキル基である;および
(c)分散剤。
【請求項2】
およびRが、それぞれ別個に、約8個〜約20個の炭素原子のアルキル基であり、そしてRが、水素である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記第二級または第三級アミンが、ジ−ココアルキルアミンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
が、−CH−CHOH−Rであり、ここで、Rが、水素またはアルキル基である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
が、1個〜約26個の炭素原子のアルキル基である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
が、メチルである、請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
(b)の前記アミンが、次式で表わされる、請求項1に記載の組成物:
N−CH−CHOH−CH
ここで、RおよびRは、それぞれ別個に、約8個〜約20個の炭素原子のアルキル基である、組成物。
【請求項8】
(b)の前記アミンが、ジ−ココアルキルアミンとプロピレンオキシドとの反応生成物を含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
(b)の前記アミンの量が、約0.01〜約10重量パーセントである、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記分散剤が、コハク酸イミド分散剤を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記分散剤の量が、約0.3〜約10重量パーセントである、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
さらに、清浄剤、酸化防止剤、シール膨潤剤、耐摩耗剤、および摩擦調整剤からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤を含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
さらに、有機ホウ酸エステル、有機ホウ酸塩、有機リンエステル、有機リン塩、無機リン含有酸、および無機リン塩からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤を含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
請求項1に記載の成分を混合することにより調製される、組成物。
【請求項15】
潤滑粘性のあるオイルで希釈して変速機用潤滑剤を調製するための濃縮物であって、該濃縮物は、以下を含有する:
(a)濃縮物形成量の潤滑粘性のあるオイル;
(b)次式で表わされる第二級または第三級アミン
NR
ここで、RおよびRは、それぞれ別個に、少なくとも6個の炭素原子のアルキル基であり、そしてRは、水素、ヒドロカルビル基、ヒドロキシル含有アルキル基、またはアミン含有アルキル基である;および
(c)分散剤。
【請求項16】
変速機を潤滑させる方法であって、該方法は、そこに、以下を含有する潤滑剤を供給する工程を包含する:
(a)主要量の潤滑粘性のあるオイル;
(b)次式で表わされる第二級または第三級アミン
NR
ここで、RおよびRは、それぞれ別個に、少なくとも6個の炭素原子のアルキル基であり、そしてRは、水素、ヒドロカルビル基、ヒドロキシル含有アルキル基、またはアミン含有アルキル基である、方法。
【請求項17】
前記変速機が、自動変速機である、請求項14に記載の方法。

【公表番号】特表2008−517107(P2008−517107A)
【公表日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−537039(P2007−537039)
【出願日】平成17年10月17日(2005.10.17)
【国際出願番号】PCT/US2005/037897
【国際公開番号】WO2006/045044
【国際公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(591131338)ザ ルブリゾル コーポレイション (203)
【氏名又は名称原語表記】THE LUBRIZOL CORPORATION
【住所又は居所原語表記】29400 Lakeland Boulevard, Wickliffe, Ohio 44092, United States of America
【Fターム(参考)】