説明

自動扉装置に適用される扉ロック機構

【課題】扉を任意位置でロックすることができると共に扉ロック時に停電が発生しても扉ロックが解除されることなく維持される、比較的安価に製造ずることができる扉ロック機構を提供する。
【解決手段】自己保持形ソレノイド(16)を使用すると共に自己保持形ソレノイドの可動鉄芯(20)の回転を阻止するための構成(被拘束手段28及び拘束手段30)を付設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扉を開閉動せしめるための電動モータを備えた自動扉装置に適用され、扉を任意の位置にロックする扉ロック機構に関する。
【背景技術】
【0002】
周知の如く、閉位置と開位置との間を往復直線動或いは旋回動自在に装着された扉と、電動モータと、扉と電動モータとの間に介在せしめられた伝動手段とを備えた自動扉装置が広く実用に供されている。典型的伝動手段は被駆動ベルト車、従動ベルト車及びこれらのベルト車に巻きかけられた無端ベルトを含んでいる。扉は無端ベルトに連結されており、無端ベルトの移動に応じて開閉動せしめられる。被駆動ベルト車は減速手段を介して電動モータの回転軸に連結されている。
【0003】
下記特許文献1には、上述した形態の自動扉装置に適用され、扉を任意の位置にロックする扉ロック機構が開示されている。この扉ロック機構は、電動モータの回転軸に連結された被制動部材と共に電磁コイルを備えており、電磁コイルが付勢されると被制動部材が電磁コイルに吸着され、これによって電動モータの回転軸の回転が阻止され、従って扉の移動が阻止される。
【特許文献1】実願昭61−72627号(実開昭62−187077号)のマイクロフィルム
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示されている扉ロック機構には、(1)扉ロック時に停電が発生すると電磁コイルの付勢が解除されて扉ロックが解除され、従って防犯上問題がある、(2)電磁コイルが比較的高価である故に製造コストが高価である、という解決すべき課題がある。
【0005】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その種たる技術的課題は、扉ロック時に停電が発生しても扉ロックが解除されることなく維持される、比較的安価に製造ずることができる新規且つ改良された扉ロック機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は鋭意検討の結果、自己保持形ソレノイドを使用すると共に自己保持形ソレノイドの可動鉄芯の回転を阻止するための構成を付設することによって上記主たる技術的課題を達成することができることを見出した。
【0007】
即ち、本発明によれば、上記主たる技術的課題を達成する扉ロック機構として、扉を開閉動せしめるための電動モータを備えた自動扉装置に適用される扉ロック機構にして、
該電動モータの回転軸に連結された被制動部材と、自己保持形ソレノイドの可動鉄芯に連結された制動部材と、該制動部材に付設された被拘束部材と、該被拘束部材の回転を阻止する拘束部材とを含み、該自己保持形ソレノイドの該可動鉄芯が延出状態と後退状態とのいずれか一方に設定されると該制動部材が該被制動部材に押圧されて該電動モータの回転軸の回転が阻止され、該自己保持形ソレノイドの該可動鉄芯が該延出状態と該後退状態との他方に設定されると該制動部材が該被制動部材から離隔されて該電動モータの該回転軸の回転が許容される、ことを特徴とする扉ロック機構が提供される。
【0008】
好ましくは、該自己保持形ソレノイドはばね手段によって該可動鉄芯が該延出状態に保持され永久磁石によって該可動鉄芯が該後退状態に保持される形態であり、該可動鉄芯が該延出状態に設定されると該制動部材が該被制動部材に押圧される。該被拘束部材には該制動部材を該被制動部材に押圧された状態から該被制動部材から離隔された状態に移動せしめるための手動操作手段が接続されているのが好適である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の扉ロック機構においては、扉ロック時、即ち制動部材が被制動部材に押圧されている時に停電が発生しても、自己保持型ソレノイドの自己保持特性によって扉ロック状態が維持され続ける。電磁コイルに比べて自己保持形ソレノイドは安価であり、製造コストを充分安価にすることができる。火災発生等の緊急時には手動操作手段を手動操作することによって扉ロック状態を解除することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明に従って構成された扉ロック機構の好適実施形態を図示している添付図面を参照して、更に詳細に説明する。
【0011】
図1を参照して説明すると、本発明の扉ロック機構が適用される自動扉装置は、そのケーシングが所定位置に固定された電動モータ2を備えており、この電動モータ2の回転軸4は減速手段を含む適宜の伝動手段(図示していない)を介して扉(図示していない)に駆動連結されている。
【0012】
本発明に従って構成された扉ロック機構は上記電動モータ2の回転軸4に連結された被制動部材6を含んでおり。図示の実施形態における被制動部材6は円板形状であり、電動モータ2の回転軸4に螺合等の適宜の方式で固定されている。被制動部材6の表面(図71において右側面)には同心状の2条の円環溝8及び10が形成されている。円環溝8及び10には合成ゴムの如き高摩擦係数を有する高摩擦リング12及び14が装着されている。高摩擦リング12及び14の直径は円環溝8及び10の深さよりも幾分大きく、高摩擦リング12及び14は被制動部材6の表面から部分的に突出している。
【0013】
本発明に従って構成された扉ロック機構は、更に、自己保持形ソレノイド16を含んでいる。かかる自己保持形ソレノイド16のケーシング18は所定位置に固定されている。ソレノイド16の可動鉄芯20は上記被制動部材6の表面に対向して位置せしめられており、その先端部には制動部材22が固定されている。図示の制動部材22の主部は被制動部材6の対応した円板形状であり、その裏面(図1において右側面)にはソレノイド16の可動鉄芯20に螺合されている雌螺条が形成されている円筒形状の連結部が一体に形成されている。図示のソレノイド16は、そのケーシング18内に配設されている永久磁石(図示していない)によって可動鉄芯20が図1に実線で示す後退状態に自己保持される形態のものであり、可動鉄芯20が後退状態に設定されている時には、制動部材22の表面は被制動部材6の表面から1mm程度でよい間隙をおいて離隔されている。ソレノイド16のケーシング18の前端部に配設されている受板24と制動部材22の主部の裏面との間において可動鉄芯20の周囲には圧縮コイルばねから構成されているばね手段26が配設されている。ソレノイド16が延出状態に設定されると、図1に実線で図示する如く、制動部材22の表面が被制動部材6に配設された高摩擦リング12及び14に押圧され、かかる状態がばね手段26によって自己保持される。所望ならば、被制動部材6の表面に高摩擦リング12及び14を配設することに代えて或いはこれに加えて制動部材22の表面に高摩擦リングを配設することもできる。
【0014】
図1と共に図2を参照して説明を続けると、上記制動部材22の主部の裏面には、図1において上方に延出する被拘束部材28が固定されている。図示の被拘束部材28は横断面形状がコ字状である。被拘束部材28に関連せしめて、拘束部材30が所定位置に固定されている。図示の拘束部材30は縦断面形状がコ字状であり、その上面壁には矩形状の開口32が形成されている。開口32の図1において紙面に垂直な方向の寸法は被拘束部材28の幅(図1において紙面に垂直な方向の寸法)と実質上同一であり、開口32の図1において左右方向の寸法は被拘束部材28の前後方向長さ(図1において左右方向長さ)よりも幾分大きく設定されている。被非拘束部材28は拘束部材30の開口32を通って上方に延出せしめられており、従って被拘束部材28は図1において左右方向には幾分移動可能であるが図1において紙面に垂直な方向には実質上移動することができない。かくして、被拘束部材28と拘束部材30との協働によって、制動部材22及びこの制動部材22が固定された可動鉄芯20の回転が阻止されている。被拘束部材28の先端部には貫通孔34が形成されており、この貫通孔34には連動ワイヤ36の一端部が連結されている。連動ワイヤ36の他端部は手動操作手段(図示していない)に連結されている。手動操作手段は旋回自在に装着された手動操作レバーから構成することができる。
【0015】
上述したとおりの扉ロック機構の作用を要約して説明すると、次のとおりである。自動扉装置の通常運転時には、ソレノイド16は図1に実線で示す後退状態に設定され、かかる後退状態に自己保持される。ソレノイド16が図1に実線で示す後退状態に設定されている時には、制動部材22の表面は被制動部材6の表面から離隔せしめられており、扉ロック機構は非作用状態である。開閉扉を適宜の位置、例えば閉位置にロックする場合には、開閉扉を閉位置に位置せしめた後に電動モータ2を除勢し、しかる後にソレノイド16を一時的に付勢して延出状態に切り替える。かくすると、図1に二点鎖線で示す如く、制動部材22の表面が被制動部材6の高摩擦リング12及び14に押圧される。制動部材22に固定された被拘束部材28が拘束部材30によって拘束されている故に、制動部材22の回転は阻止されており、従って被制動部材6及びこの被制動部材6が固定されている電動モータ2の回転軸4の回転も確実に阻止される。電動モータ2の回転軸4は増力手段として機能する減速手段を含む伝動手段を介して開閉扉に連結されているので、開閉扉は充分確実に閉位置にロックされる。扉ロック中に停電が発生してもソレノイヅ16は自己保持形であるので、扉ロックが毀損されることはない。扉ロックを解除するためには、ソレノイド16を一次的に付勢して後退状態に設定し、制動部材22の表面を被制動部材6の表面から離隔せしめればよい。他方、扉ロック中の火災発生等の非常事態が発生し、扉ロックを解除する必要が生じた場合には、連動ワイヤ36を介して被拘束部材28に連結されている手動操作手段を手動操作して被拘束部材28を図2において右方に移動せしめ、これによって可動鉄芯20を図1において右方に移動せしめてソレノイド16を後退状態に手動で切り替えればよい。
【0016】
添付図面を参照して本発明に従って構成された扉ロック機構の好適実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形乃至修正が可能である。例えば、図示の実施形態においては、ソレノイド16が延出状態に設定された時に扉ロックが確立されるが、所望ならばソレノイドが後退状態に設定された時に扉ロックガが確立されるように構成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に従って構成された扉ロック機構の好適実施形態を示す断面図。
【図2】図1に示す扉ロック機構の一部を示す部分斜面図。
【符号の説明】
【0018】
2:電動モータ
4:電動モータの回転軸
6:被制動部材
16:自己保持形ソレノイド
20:可動鉄芯
22:制動部材
26:ばね手段
28:被拘束部材
30:拘束部材
36:連動ワイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扉を開閉動せしめるための電動モータを備えた自動扉装置に適用される扉ロック機構にして、
該電動モータの回転軸に連結された被制動部材と、自己保持形ソレノイドの可動鉄芯に連結された制動部材と、該制動部材に付設された被拘束部材と、該被拘束部材の回転を阻止する拘束部材とを含み、該自己保持形ソレノイドの該可動鉄芯が延出状態と後退状態とのいずれか一方に設定されると該制動部材が該被制動部材に押圧されて該電動モータの回転軸の回転が阻止され、該自己保持形ソレノイドの該可動鉄芯が該延出状態と該後退状態との他方に設定されると該制動部材が該被制動部材から離隔されて該電動モータの該回転軸の回転が許容される、ことを特徴とする扉ロック機構。
【請求項2】
該自己保持形ソレノイドはばね手段によって該可動鉄芯が該延出状態に保持され永久磁石によって該可動鉄芯が該後退状態に保持される形態であり、該可動鉄芯が該延出状態に設定されると該制動部材が該被制動部材に押圧される、請求項2記載の扉ロック機構。
【請求項3】
該被拘束部材には該制動部材を該被制動部材に押圧された状態から該被制動部材から離隔された状態に移動せしめるための手動操作手段が接続されている、請求項1又は2記載の扉ロック機構。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2009−197391(P2009−197391A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−36850(P2008−36850)
【出願日】平成20年2月19日(2008.2.19)
【出願人】(592018283)
【出願人】(591288263)サニー株式会社 (8)
【Fターム(参考)】