説明

自動演奏装置および自動演奏プログラム

【課題】複数パートのうち、いずれかのパートがミュートするように設定された場合でも適切に自動演奏を行うことができる自動演奏装置および自動演奏プログラムを提供する。
【解決手段】ノートイベントのパートが、ミュートするように設定されているかリズムパートであれば(S23:Yes)、演奏ポインタを次のイベントに進め(S24)、S21の処理に戻る。演奏ポインタが示すノートイベントのパートがミュートするように設定されていないかリズムパートでなければ(S23:No)、そのノートイベントが最も早いノートイベントであり、演奏ティックを演奏ポインタが示すイベントの時刻とし、演奏フラグを1として(S27)、タイマ割込を許可し(S28)、このノート検索処理を終了する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動演奏装置および自動演奏プログラムに関し、特に複数パートのうちいずれかのパートがミュートするように設定された場合にも適切に演奏を行うことができる自動演奏装置および自動演奏プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動演奏装置において、曲の先頭に無音区間がある場合には、その無音区間を読み飛ばし、楽音を発生するように指示する最初のノートオン情報から演奏を開始するものが開示されている。このことにより、使用者が演奏の開始を指示した場合に、直ぐに発音が開始され、無音となることがないので、使用者は、安心して演奏を聴くことができる。
【0003】
特許3213081号公報(特許文献1)には、小節単位で無音区間を読み飛ばし、最初のノートオン情報の小節の先頭から自動演奏を開始する自動演奏装置が開示されている。
【特許文献1】特許3213081号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、複数のパートにより構成される演奏情報を自動演奏する場合に、使用者により、いずれかのパートが発音しないように設定されて演奏を行う場合があり、その場合には、使用者が所望するように演奏が開始されない場合があった。
【0005】
ところで、あるパートが発音しないように設定されて自動演奏を行う場合、2つのモードがある。一つは、あるパート(複数のパートでもよい)をミュート(無音とする、または音量レベルを下げる)することにより、ミュートされないパートの演奏だけを聞くというミュートモードであり、他の一つは、あるパート(複数のパートでもよい)の演奏練習を行うために、そのパートをミュートするというマイナスワンモードである。
【0006】
ミュートモードでは、例えば、あるパートが、他のパートより早く演奏を開始するように演奏情報が設定されていて、そのパートがミュートするように指定された場合には、演奏の開始を指示されても、その指定されたパートの演奏が発音されないため、他のパートの演奏が始まるまで無音になり、使用者に不安を与えるという問題点があった。
【0007】
また、マイナスワンモードでは、あるパートがミュートするように指定され、他のパートに遅れてそのミュートされたパートが始まるように演奏情報が設定されている場合には、そのミュートされたパートが始まるまで使用者は、待たされ、演奏を開始するタイミングを取るのが困難になるという問題点があった。
【0008】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、複数のパートのうち、いずれかのパートがミュートするように設定された場合でも適切に自動演奏を行うことができる自動演奏装置および自動演奏プログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1記載の自動演奏装置は、複数のパートにより構成される演奏情報を記憶する記憶手段を備え、その記憶手段に記憶された複数パートの演奏情報に基づいて自動演奏を行うものであり、前記複数のパートのいずれかのパートを指定するミュートパート指定手段と、自動演奏の開始を指示する演奏開始指示手段と、前記記憶手段に記憶された演奏情報の演奏位置を示す演奏位置指示手段と、前記演奏開始指示手段により自動演奏の開始が指示された場合に、前記演奏位置指示手段により指示される演奏位置以降であって、前記ミュートパート指定手段により指定されたパート以外のパートにおいて時間的に最も早く発音の開始を指示する演奏情報が記憶された記憶位置を検索する検索手段と、前記ミュートパート指定手段により指定されたパートをミュートし、その検索手段により検索された記憶位置に基づいて自動演奏を開始する自動演奏開始手段とを備えている。なお、ミュートするとは、全く楽音が発生されないようにする場合と、音量レベルを小さくして発音する場合とを含むものである。
【0010】
請求項2記載の自動演奏装置は、請求項1記載の自動演奏装置において、前記複数パートは、打楽器音を演奏するリズムパートを含むものであり、前記検索手段は、前記リズムパートと、前記ミュートパート指定手段により指定されたパートとを除くパートにおいて時間的に最も早く発音の開始を指示する演奏情報が記憶された記憶位置を検索するものである。
【0011】
請求項3記載の自動演奏装置は、複数のパートにより構成される演奏情報を記憶する記憶手段を備え、その記憶手段に記憶された複数パートの演奏情報に基づいて自動演奏を行うものであり、前記複数のパートのいずれかのパートを指定するマイナスワンパート指定手段と、自動演奏の開始を指示する演奏開始指示手段と、前記記憶手段に記憶された演奏情報の演奏位置を示す演奏位置指示手段と、前記演奏開始指示手段により自動演奏の開始が指示された場合に、前記演奏位置指示手段により指示される演奏位置以降であって、前記マイナスワンパート指定手段により指定されたパートにおいて時間的に最も早く発音の開始を指示する演奏情報が記憶された記憶位置を検索する検索手段と、前記マイナスワンパート指定手段により指定されたパートをミュートし、その検索手段により検索された記憶位置に基づいて自動演奏を開始する自動演奏開始手段とを備えている。
【0012】
請求項4記載の自動演奏装置は、請求項1から3のいずれかに記載の自動演奏装置において、前記自動演奏開始手段は、前記検索手段により検索された位置より前の所定の位置から自動演奏を開始するものである。
【0013】
請求項5記載の自動演奏プログラムは、複数のパートにより構成される演奏情報を記憶する記憶手段を備え、その記憶手段に記憶された複数のパートの演奏情報に基づいて自動演奏を行う自動演奏装置において実行されるものであって、前記複数のパートのいずれかのパートを指定するミュートパート指定ステップと、自動演奏の開始を指示する演奏開始指示ステップと、前記記憶手段に記憶された演奏情報の演奏位置を示す演奏位置指示ステップと、前記演奏開始指示ステップにより自動演奏の開始が指示された場合に、前記演奏位置指示ステップにより指示される演奏位置以降であって、前記ミュートパート指定ステップにより指定されたパート以外のパートにおいて時間的に最も早く発音の開始を指示する演奏情報が記憶された記憶位置を検索する検索ステップと、前記ミュートパート指定ステップにより指定されたパートをミュートし、その検索ステップにより検索された記憶位置に基づいて自動演奏を開始する自動演奏開始ステップとを備えている。
【0014】
請求項6記載の自動演奏プログラムは、複数のパートにより構成される演奏情報を記憶する記憶手段を備え、その記憶手段に記憶された複数パートの演奏情報に基づいて自動演奏を行う自動演奏装置において実行されるものであって、前記複数のパートのいずれかのパートを指定するマイナスワンパート指定ステップと、自動演奏の開始を指示する演奏開始指示ステップと、前記記憶手段に記憶された演奏情報の演奏位置を示す演奏位置指示ステップと、前記演奏開始指示ステップにより自動演奏の開始が指示された場合に、前記演奏位置指示ステップにより指示される演奏位置以降であって、前記マイナスワンパート指定ステップにより指定されたパートにおいて時間的に最も早く発音の開始を指示する演奏情報が記憶された記憶位置を検索する検索ステップと、前記マイナスワンパート指定ステップにより指定されたパートをミュートし、その検索ステップにより検索された記憶位置に基づいて自動演奏を開始する自動演奏開始ステップとを備えている。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の自動演奏装置によれば、複数のパートのいずれかのパートがミュートパート指定手段により指定され、演奏開始指示手段により自動演奏の開始が指示される。記憶手段に記憶された演奏情報の演奏位置が演奏位置指示手段により示され、演奏開始指示手段により自動演奏の開始が指示された場合は、演奏位置指示手段により指示される演奏位置以降であって、ミュートパート指定手段により指定されたパート以外のパートにおいて時間的に最も早く発音の開始を指示する演奏情報が記憶された記憶位置が検索手段により検索される。即ち、発音されるパートにおいて、最も早く発音を開始するように指示する演奏情報が検索される。そして、ミュートパート指定手段により指定されたパートがミュートされ、その検索手段により検索された記憶位置に基づいて自動演奏が自動演奏開始手段により開始されるので、ミュートパート指定手段により指定されたパートが、最初に発音を開始するパートであったとしても、演奏の開始が指示された後、無音または小さい音量となることが防止され、適切に自動演奏を行うことができるという効果がある。なお、ミュートされるとは、全く楽音が発生されない場合と、音量レベルを小さくして発音される場合とを含むものである。
【0016】
請求項2記載の自動演奏装置によれば、請求項1記載の自動演奏装置の奏する効果に加え、複数パートは、打楽器音を演奏するリズムパートを含むものであり、検索手段は、リズムパートと、ミュートパート指定手段により指定されたパートとを除くパートにおいて時間的に最も早く発音の開始を指示する演奏情報が記憶された記憶位置を検索するものであるので、リズムパート以外で発音されるパートにおいて最も早く発音を開始するように指示する演奏情報が記憶された記憶位置から発音が開始される。通常、鍵盤の演奏練習を行うことが多いので、リズムパートを除き発音されるパートの演奏を早く聴くことができるという効果がある。
【0017】
請求項3記載の自動演奏装置によれば、複数のパートのいずれかのパートがマイナスワンパート指定手段により指定され、自動演奏の開始が演奏開始指示手段により指示される。記憶手段に記憶された演奏情報の演奏位置が演奏位置指示手段により指示され、演奏開始指示手段により自動演奏の開始が指示された場合に、演奏位置指示手段により指示される演奏位置以降であって、マイナスワンパート指定手段により指定されたパートの発音の開始を指示する演奏情報が時間的に最も早く記憶された記憶位置が検索手段により検索される。即ち、指定されたパートの最も早く発音を開始するように指示する演奏情報が検索される。そして、マイナスワンパート指定手段により指定されたパートがミュートされ、その検索手段により検索された記憶位置に基づいて自動演奏が自動演奏開始手段により開始される。指定されたパートは、演奏練習を行うパートであるので、演奏開始の指示の後、早く演奏を開始することができ、演奏に入るタイミングを取りやすいという効果がある。特に、曲の初めなどで、指定されたパート以外のパートが早く演奏を開始する場合には、演奏を開始するまで、待たされることになり、演奏を開始するタイミングを取りにくいが、請求項3によれば、待たされることがなく、演奏を開始するタイミングを取りやすくすることができる。
【0018】
請求項4記載の自動演奏装置によれば、請求項1から3のいずれかに記載の自動演奏装置の奏する効果に加え、自動演奏開始手段は、検索手段により検索された位置より前の所定の位置から自動演奏を開始するものであるので、練習演奏を開始する位置から演奏が開始される場合に比べ、演奏に入るタイミングを取りやすいという効果がある。
【0019】
請求項5記載の自動演奏プログラムによれば、複数のパートのいずれかのパートがミュートパート指定ステップにより指定され、演奏開始指示ステップにより自動演奏の開始が指示される。記憶手段に記憶された演奏情報の演奏位置が演奏位置指示ステップにより示され、演奏開始指示ステップにより自動演奏の開始が指示された場合は、演奏位置指示ステップにより指示される演奏位置以降であって、ミュートパート指定ステップにより指定されたパート以外のパートにおいて時間的に最も早く発音の開始を指示する演奏情報が記憶された記憶位置が検索ステップにより検索される。即ち、発音されるパートにおいて、最も早く発音を開始するように指示する演奏情報が検索される。そして、ミュートパート指定ステップにより指定されたパートがミュートされ、その検索手段により検索された記憶位置に基づいて自動演奏が自動演奏開始ステップにより開始されるので、ミュートパート指定ステップにより指定されたパートが、最初に発音を開始するパートであったとしても、演奏の開始が指示された後、無音または小さい音量となることが防止され、適切に自動演奏を行うことができるという効果がある。
【0020】
請求項6記載の自動演奏プログラムによれば、複数のパートのいずれかのパートがマイナスワンパート指定ステップにより指定され、自動演奏の開始が演奏開始指示ステップにより指示される。記憶手段に記憶された演奏情報の演奏位置が演奏位置指示ステップにより指示され、演奏開始指示ステップにより自動演奏の開始が指示された場合に、演奏位置指示ステップにより指示される演奏位置以降であって、マイナスワンパート指定ステップにより指定されたパートの発音の開始を指示する演奏情報が時間的に最も早く記憶された記憶位置が検索ステップにより検索される。即ち、指定されたパートの最も早く発音を開始するように指示する演奏情報が検索される。そして、マイナスワンパート指定ステップにより指定されたパートがミュートされ、その検索ステップにより検索された記憶位置に基づいて自動演奏が自動演奏開始ステップにより開始される。指定されたパートは、演奏練習を行うパートであるので、演奏開始の指示の後、早く演奏を開始することができ、演奏に入るタイミングを取りやすいという効果がある。特に、曲の初めなどで、指定されたパート以外のパートが早く演奏を開始する場合には、演奏を開始するまで、待たされることになり、演奏を開始するタイミングを取りにくいが、請求項6によれば、待たされることがなく、演奏を開始するタイミングを取りやすくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、自動演奏装置1の電気的構成を示すブロック図である。自動演奏装置1は、CPU2と、ROM3と、RAM4と、鍵盤5と、操作パネル6と、メモリカード部7と、音源9と、D/A変換器10と、アンプ11と、スピーカ12とを主に設けている。
【0022】
CPU2は、ROM3に記憶された制御プログラムを実行することにより、鍵盤5による演奏を検出して音源9に楽音の発生または停止を指示したり、自動演奏等を行う。また、CPU2は、タイマ2aを内蔵し自動演奏の開始が指示された場合は、テンポに対応する時間間隔(ティック)でCPU2にタイマ割込が発生され、設定されたテンポで自動演奏が行なわれる。
【0023】
ROM3は、制御プログラムの一つとして自動演奏を行う自動演奏プログラム3aを記憶している。この自動演奏プログラム3aにより実行される処理については、図5〜図7に示すフローチャートを参照して後述する。
【0024】
RAM4は、CPU2がROM3に記憶された制御プログラムを実行する際に変数などを一時記憶する書き換え可能なランダムにアクセスできるメモリであり、フラグを記憶するフラグメモリ4aとノートオフイベントを記憶するノートオフバッファ4bとを備えている。フラグメモリ4aに記憶されるフラグは、演奏フラグと、マイナスワンフラグと、パートフラグとである。演奏フラグは、自動演奏が行われているか否かを示すフラグであり、0であれば、自動演奏が停止している状態を示し、1であれば、自動演奏が実行されている状態を示す。
【0025】
マイナスワンフラグは、自動演奏を行うモードがミュートかマイナスワンかを示すフラグであり、0であれば、ミュートモードを、1であれば、マイナスワンモードである。なお、ミュートモードでは、複数のパートのうち指定されたパートがミュート(消音)され、演奏が開始された場合に、ミュートするように指定されたパート(以下、「ミュートパート」と称す)とリズムパート以外のパートにおいて最初に楽音の発生を開始するように指示する演奏情報(以下、発音の開始または停止する演奏情報を「ノートイベント」と称す)が検索され、その検索されたノートイベントの記憶位置に基づいて自動演奏が開始される。
【0026】
一方、マイナスワンモードでは、演奏練習を行うパートがミュートパートとして指定されるが、演奏が開始された場合に、そのミュートパートの最初のノートイベントが検索され、その検索されたノートイベントの記憶位置に基づいて自動演奏が開始される。
【0027】
複数のパートには、左手パート、右手パート、伴奏パート、リズムパートの4つがあり、各パート毎にミュートするか否かが設定される。各パート毎に、パートフラグが設けられ、パートフラグが、0であれば、そのパートの楽音を出力し、パートフラグが1であれば、そのパートの楽音を出力しないものとする。
【0028】
ノートオフバッファ4bには、ノートイベントが処理される場合に、ノートオフイベントとそのノートオフイベントを音源9に出力する時刻とが記憶される。詳細は、後述するが、本実施形態では、ノートイベントは、ノートオンイベント(発音の開始を指示するイベント)を音源9に出力する時刻と、そのノートオンイベントを音源9に出力した時刻からノートオフイベント(発音の停止を指示するイベント)を出力するまでの時間であるデュレーションとからなり、ノートイベントを処理する際に、このノートオフバッファ4bに、ノートオフイベントとそのノートオフイベントを音源9に出力する時刻とが記憶される。ノートオフイベントを音源9に出力する時刻に至った場合には、そのノートオフイベントが音源9に出力され、このノートオフバッファ4bからノートオフイベントとその時刻とが消去される。
【0029】
メモリカード部7は、フラッシュメモリにより構成されるメモリカード8を着脱自在に装着するカードスロットを備えている。メモリカード8には、演奏データを記憶する演奏データメモリ8aが設けられ、メモリカード部7を介してその演奏データを読み込んだり、鍵盤5により演奏されて形成された演奏データを書込むことができる。なお、演奏データについては、図3および図4を参照して後述する。
【0030】
音源9は、所定のサンプリング周期で所定のビット数のデジタル信号により形成される楽音信号を発生し、音源9から出力されたデジタル信号は、D/A変換器10によりアナログ信号に変換され、アンプ11に供給される。アンプ11は、供給されたアナログ信号を増幅し、スピーカ12を駆動し、スピーカ12は、楽音を出力する。
【0031】
次に、図2を参照して自動演奏装置1の操作パネル6について説明する。図2は、操作パネル6を示す平面図である。操作パネル6には、LCDにより構成される表示器21と、リズムボタン22と、伴奏ボタン23と、左手ボタン24と、右手ボタン25と、リセットボタン26と、再生/停止ボタン27と、巻き戻しボタン28と、早送りボタン29と、ミュート/マイナスワンボタン30とが設けられている。
【0032】
表示器21には、各種設定状態や、設定されたパラメータなどが表示される。自動演奏が行われる場合には、自動演奏に関する情報が表示される。図2に示すように、現在演奏されるように設定された曲名、その演奏テンポ、拍子、現在演奏されている小節を示す小節番号などが表示される。
【0033】
9個のボタンは、いずれも自己復帰型のスイッチであり、指などで押下することよりオンされ、離すとオフされる。これらのボタンのうち、リズムボタン22と、伴奏ボタン23と、左手ボタン24と、右手ボタン25と、再生/停止ボタン27と、ミュート/マイナスワンボタン30には、それぞれ、LED22a、23a、24a、25a、27a、30aが設けられる。これらのボタンにより操作されるスイッチはトグル動作を行うものである。
【0034】
リズムボタン22と、伴奏ボタン23と、左手ボタン24と、右手ボタン25とは、それぞれ、リズムパート、伴奏パート、左手パート、右手パートに対応し、そのパートをミュートするか否かを設定する。なお、これら4つのボタンを、パートボタン22〜25と総称する。
【0035】
いずれかのパートがミュートするように設定された場合は、そのパートに対応するボタンに設けられたLEDが点灯され、ミュートしないように設定されたパートに対応するLEDは、消灯される。したがって、パートフラグが1であるパートに対応するパートボタン22〜25のLEDは点灯され、パートフラグが0であるパートボタン22〜25のLEDは消灯される。
【0036】
リセットボタン26が、押下された場合は、自動演奏が行われていれば、自動演奏を停止し、演奏ポインタが、曲の先頭に移動される。演奏ポインタは、演奏データにおいて現在の演奏位置を指示するポインタである。従って、リセットボタン26を押下した後、演奏の開始が指示されると、曲の先頭から演奏が開始される。なお、計時される演奏ティックが演奏ポインタが示すイベントの時刻に達すると、そのイベントが処理され、演奏ポインタは、そのイベントの次に記憶されているイベントに進められる。
【0037】
再生/停止ボタン27が操作された場合は、自動演奏が行われていれば、自動演奏が停止され、自動演奏が停止されていれば、自動演奏が開始される。このボタン27により演奏の停止が指示された場合は、演奏ポインタが移動されない。従って、曲の途中で再生/停止ボタン27が押下されると、一時演奏が停止され、再度再生/停止ボタン27が押下されると、その停止された途中の位置から演奏が再開される。また、自動演奏の再生が行われている場合は、LED27aが点灯され、自動演奏が停止されている場合は、LED27aが消灯される。
【0038】
巻き戻しボタン28が操作された場合は、現在演奏ポインタが示している演奏位置が直前の小節線の位置に戻される。演奏ポインタが小節線を示している場合は、1小節前の小節線の位置に戻される。一方、早送りボタン29が操作された場合は、現在演奏ポインタが示している演奏位置を次の小節線の位置に進められる。演奏ポインタが小節線を示している場合は、1小節次の小節線の位置に進められる。
【0039】
ミュート/マイナスワンボタン30が操作された場合は、自動演奏のモードがミュートモードかマイナスワンモードかに切り替えられ、ボタン30に設けられたLED30aは、ミュートモードが設定された場合に消灯され、マイナスワンモードが設定された場合に点灯される。なお、音量を設定するボリュームや音色を選択するスイッチなどは、本発明とは関係がないので、図示および説明を省略する。
【0040】
次に図3および図4を参照して演奏データについて説明する。図3は、演奏データを示すテーブルであり、図4は、図3に示す演奏データに対応する楽譜である。演奏データは、演奏ティック41と、パート42と、イベント43とにより構成される。
【0041】
演奏データは、図3に示すように、演奏ティック41に対応して、パート42と、イベント43とが記憶される。なお、図3では、説明を分かりやすくするために、各イベントを行毎に表示し、その行に番号を付して示す。
【0042】
演奏ティック41は、イベント43を音源に出力する時刻を示す。ティックは、時間の単位であって、1拍の時間長さを所定の数で除した時間の単位である。この実施形態では、この所定の数を120としている。従って、120ティックが1拍に相当し、4拍子の場合は、1小節が480ティックに相当する。
【0043】
パート42は、上述したリズムパート、伴奏パート、左手パート、右手パートのいずれかを指定する情報であり、その指定されたパート42に対する情報として、イベント43が出力される。パート42は、MIDI規格により規定されるMIDIチャネルにより指定され、音源9に出力される。
【0044】
イベント43は、音源9を制御するデータであって、第1行から第8行までのイベント43は、音色や音量を指示するものである。例えば、1行目に記載された「プログラム トランペット」は、伴奏パートにより形成される楽音の音色をトランペットにするよう指示し、3行目は、左手パートをピアノ1の音色、5行目は、右手パートの音色をピアノ1の音色に、7行目は、リズムパートをジャズセットという音色にするよう指示するものである。また、2行目、4行目、6行目、8行目に記載された「ボリューム 数値」は、それぞれのパート42の音量をその数値に応じて設定するように指示するものである。
【0045】
音源9に出力されるイベント43は、MIDI規格により規定されたフォーマットで出力され、「プログラム」は、MIDI規格のプログラムチェンジ、「ボリューム」は、MIDI規格のコントロールチェンジがそれぞれ用いられる。
【0046】
9行目以降には、楽音の発生および消音を指示するイベント43が記憶されている。これらのイベント43を以下、ノートイベントと称す。ノートイベントは、ノート44とベロシティ45とデュレーション46とから成る。ノート44は、音名を示し、リズムパート以外のパートでは、この音名に対応する音高が指示される。また、リズムパートの場合には、音名により特定されるリズム楽器(スネアドラムやシンバルなど)が指示される。ベロシティ45は、押鍵速度であり1から127の値をとる。この値が大きいほど音量が大きい楽音が発生される。デュレーション46は、鍵を押下している時間であって、ティックを単位とする数値で表される。従って、演奏ティック41により示される時刻に楽音の発生の開始を指示するノートオンイベントが音源9に出力され、その時刻からデュレーション46により示される時間後にノートオフイベントが、音源9に出力される。
【0047】
例えば、9行目に記載されたノートイベントは、演奏ティックが0である時刻に、伴奏パート(トランペット)の楽音を、音高A#4で、ベロシティの値を88として発音を開始し、その時刻から36ティック後に、発音を停止するように指示するものである。なお、曲の終端には、曲の終わりを示すエンドマーク(図示なし)が記憶される。また、図3に示す演奏データには、小節線を示す情報が記載されていないが、小節線を示すマークを記憶するようにしてもよい。なお、図3に示す演奏データでは、最初に音色や音量を制御するイベントが配列され、その後、ノートイベントが順次配列されているが、実際の演奏データでは、これらの音色や音量を制御するイベントとノートイベントとが混在するのが常である。
【0048】
図4は、楽譜の例であって、右手パート、左手パート、伴奏パートを示し、リズムパートは、省略している。右手パートの上に小節番号が付されている。図3に示す演奏データは、この楽譜の第1節の前までの、実際に演奏された演奏のデータの例である。よって、図3に示す演奏データの演奏ティックとデュレーションは、図4に示す楽譜とは、一致しない。
【0049】
図4に示す楽譜によれば、伴奏パートは、第1小節より前の小節から演奏が開始され、右手パートは、第8小節から演奏が開始され、左手パートは、第9小節目から演奏が開始される。上述の通り、各パート毎に、ミュートするか否かの設定を行うことができるので、伴奏パートをミュートするように設定され、曲の最初から演奏が開始された場合は、曲の最初から第7小節まで無音が続くことになり(ここでは、リズムパートは、無視して説明する)、その間、使用者は、故障したのかと不安になる。そこで、本発明では、ミュートパートに指定された以外のパートのうちで、時間的に最も早く演奏を開始する位置を検索し、その位置に基づいて演奏を開始する。上述のように、伴奏パートがミュートパートに指定された場合は、伴奏パートを無視して右手パートと左手パートとから最初に発音するノートイベントが検索される。その結果、右手パートの演奏が開始される第8小節の最初の音符に対応するノートイベントが検出される。演奏を開始する位置は、その検出されたノートイベントに基づいて設定され、そのノートイベントからとしてもよいし、例えば、そのノートイベントの直前の小節線、または更に一つ前の小節線からカウントインを発生して演奏を開始するようにしてもよい。また、そのノートイベントの直前の拍、もしくは複数拍前の位置から演奏を開始するようにしてもよい。
【0050】
また、マイナスワンパートとして、左手パートが選択された場合は、曲の最初から演奏が開始されると、使用者は、曲の最初から第8小節まで待機し、第9小節から演奏を開始することになる。従って、第1小節の前の小節から第8小節までは、使用者は待たされることになり、時間が無駄になるとともに、演奏に入るタイミングを取るのが難しくなる。そこで、本発明では、マイナスワンパートが指定された場合は、マイナスワンパートの最初の音符に対応するノートイベントが検出される。演奏を開始する位置は、その検出されたノートイベントに基づいて設定され、そのノートイベントからとしてもよいし、例えば、そのノートイベントの直前の小節線、または更に一つ前の小節線からとしてもよい。
【0051】
次に、図5〜図7を参照して、ROM3に記憶される自動演奏プログラム3aにより実行される自動演奏処理について説明する。図5は、自動演奏処理のうちのメイン処理、図6は、そのメイン処理の一部であるノート検索処理、図7は、自動演奏処理のうちのタイマ割込処理をそれぞれ示すフローチャートである。これらの処理は、いずれもCPU2により実行される処理である。
【0052】
まず、図5を参照してメイン処理について説明する。このメイン処理は、自動演奏装置1の電源が投入されてから遮断されるまで繰り返し実行される処理である。このメイン処理では、操作パネル6に設けられたボタンの操作が検出され、その操作に応じた処理が行われる。まず、初期設定を行う(S1)。この初期設定では、演奏フラグを0、マイナスワンフラグを0、各パートフラグを0に設定し、ノートオフバッファ4bをクリア(何も記憶されていない状態に設定)し、タイマ割込を禁止する。
【0053】
次に、リセットボタン26が操作されたか否かを判断する(S2)。リセットボタン26が操作された場合は(S2:Yes)、自動演奏が行われていれば、自動演奏を停止し、演奏フラグを0に設定し、演奏ポインタを曲の先頭のイベントに設定する(S3)。なお、自動演奏が行われていない場合は、単に演奏ポインタを曲の先頭のイベントに設定する。また、自動演奏を停止するとは、具体的には、タイマ割込を禁止することである。なお、このとき、ノートオフバッファ4bにノートオフイベントが記憶されている場合は、そのノートオフイベントを音源9へ出力し、そのノートオフイベントをノートオフバッファ4bから消去する。
【0054】
リセットボタン26が操作されなければ(S2:No)、次に、再生/停止ボタン27が操作されたか否かを判断する(S4)。再生/停止ボタン27が操作された場合は(S4:Yes)、演奏フラグが1に設定されているか否かを判断し(S5)、演奏フラグが1に設定されていれば(S5;Yes)、現在、自動演奏が行われていることを示し、自動演奏を停止し、演奏フラグを0にするとともに、再生/停止ボタン27に設けられているLEDを消灯する。
【0055】
一方、演奏フラグが1に設定されていない場合は、自動演奏が停止中であることを示し、演奏を開始する際の処理であるノート検索処理を行う(S7)。このノート検索処理については、図6を参照して後述する。
【0056】
再生/停止ボタン27が操作されなければ(S4:No)、ミュート/マイナスワンボタン30が操作されたか否かを判断する(S8)。ミュート/マイナスワンボタン30が操作された場合は(S8:Yes)、マイナスワンフラグが1であるか否かを判断する(S9)。マイナスワンフラグが1である場合は、現在演奏モードがマイナスワンモードに設定されており、マイナスワンフラグを0に設定して、ミュートモードに変更するとともに、ミュート/マイナスワンボタン30に設けられているLEDを消灯する(S10)。
【0057】
マイナスワンフラグが1でなければ、現在演奏モードがミュートモードに設定されており、マイナスワンフラグを1に設定して、マイナスワンモードに変更するとともに、ミュート/マイナスワンボタン30に設けられているLEDを点灯する(S11)。
【0058】
ミュート/マイナスワンボタン30が操作されなければ(S8:No)、次に、巻き戻しボタン28が操作されたか否かを判断する(S12)。巻き戻しボタン28が操作された場合は(S12:Yes)、演奏ポインタを現在の演奏位置の直前の小節線の位置に移動する(S13)。巻き戻しボタン28が操作されなければ(S12:No)、次に、早送りボタン29が操作されたか否かを判断し(S14)、早送りボタン29が操作された場合は(S14:Yes)、演奏ポインタを現在の演奏位置の直後の小節線の位置に移動する(S15)。
【0059】
早送りボタン29が操作されなければ(S14:No)、次に、パートボタン22〜25のいずれかが操作されたか否かを判断する(S16)。パートボタン22〜25のいずれかが操作された場合は(S16:Yes)、操作されたパートボタンに対応するパートフラグが1であるか否かを判断し(S17)、そのパートフラグが1であれば(S17:Yes)、そのパートは、ミュートするように設定されており、そのパートフラグを0にして、ミュートを解除するとともに、その操作されたパートボタンのLEDを消灯する。操作されたパートボタンに対応するパートフラグが1でなければ(S17:No)、そのパートフラグを1にするとともに、その操作されたパートボタンのLEDを点灯する(S19)。パートボタン22〜25のいずれかが操作されない場合(S16:No)、または、S3、S6、S7、S10、S11、S13、S15、S18、S19のいずれかの処理を終了した場合は、その他の処理を行う(S20)。その他の処理としては、図示しない音量を調整するボリュームや音色を選択するスイッチが操作されたか否かを判断し、操作された場合には、その操作に応じた処理がある。その他の処理(S20)を終了した場合は、S2の処理に戻る。
【0060】
次に、図6を参照して、上記S7のノート検索処理について説明する。このノート検索処理では、現在演奏ポインタにより示されているイベント以降のイベントで、時間的に最も早いノートイベントが検索される。従って、演奏ポインタが曲の先頭に設定されている場合は、曲の先頭から最も早いノートイベントが検出され、演奏ポインタが曲の途中に設定されている場合は、その位置から最も早いノートイベントが検索される。
【0061】
自動演奏モードがミュートモードに設定されている場合には、ミュートするように設定されているパートおよびリズムパート以外のパートで最も早いノートイベントが検索される。一方、自動演奏モードがマイナスワンモードに設定されている場合には、ミュートするように指定されたパートのうち最も早いノートイベントが検索される。なお、ミュートモードにおいても、マイナスワンモードにおいても、ミュートするパートは、複数のパートであってもよい。ノートイベントが検索されると、その検索されたノートイベントから演奏が開始される。
【0062】
図6に示すフローチャートに従って、順次ノート検索処理について説明する。まず、演奏ポインタが示すイベントは、ノートイベントであるか否かを判断する(S21)。演奏ポインタが示すイベントがノートイベントである場合は(S21:Yes)、次に、フラグメモリ4aに記憶されているマイナスワンフラグが1か否かを判断する(S22)。上述の通り、マイナスワンフラグが1の場合は、自動演奏モードがマイナスワンモードであり、マイナスワンフラグが0の場合は、ミュートモードである。
【0063】
マイナスワンフラグが1でなければ、そのノートイベントのパートがミュートするように設定されているか、またはリズムパートであるか否かを判断する(S23)。パートがミュートするように設定されているか否かは、パートに対応するパートフラグを参照することにより判断される。そのノートイベントのパートが、ミュートするように設定されているかリズムパートであれば(S23:Yes)、演奏ポインタを次のイベントに進め(S24)、S21の処理に戻る。
【0064】
一方、S21の判断処理において、演奏ポインタが示すイベントがノートイベントでなければ(S21:No)、演奏ポインタが示すイベントが曲の終わりを示すエンドマークであるか否かを判断する(S25)。演奏ポインタが示すイベントが曲の終わりを示すエンドマークでなければ(S25:No)、そのイベントは、音色や音量をなどを設定するイベントであると判断し、そのイベントを音源9に出力し(S26)、S24の処理に移行する。演奏ポインタが示すイベントが曲の終わりを示すエンドマークであれば(S25:Yes)、検索の結果、ノートイベントが検出されなかったとして、このノート検索処理を終了する。
【0065】
S23の判断処理において、演奏ポインタが示すノートイベントのパートがミュートするように設定されていないかリズムパートでなければ(S23:No)、そのノートイベントが最も早いノートイベントであり、演奏ティックを演奏ポインタが示すイベントの時刻とし、演奏フラグを1として(S27)、タイマ割込を許可し(S28)、このノート検索処理を終了する。
【0066】
タイマ2aは、テンポ値により設定される1拍の時間を120で除したティック時間を計時し、その時間を計時する毎にCPU2にタイマ割込を発生する。そのタイマ割込により起動されるタイマ割込処理については、図7を参照して後述する。
【0067】
S22の判断処理において、マイナスワンフラグが1である場合は(S22:Yes)、演奏モードがマイナスワンモードであり、演奏ポインタが示すノートイベントのパートがマイナスワンパート(ミュートされるパート)に指定されているか否かを判断する(S31)。ノートイベントのパートがマイナスワンパートに指定されている場合は(S31:Yes)、このノートイベントが最も早いノートイベントであり、演奏ティックを演奏ポインタが示すイベントの時刻とし、演奏フラグを1として(S27)、タイマ割込を許可し(S28)、このノート検索処理を終了する。タイマ割込を許可することにより、タイマ2aによる計時毎にタイマ割込処理が起動され、自動演奏が開始される。
【0068】
ノートイベントのパートがマイナスワンパートに指定されていなければ(S31:No)、演奏ポインタを次のイベントに進め(S32)、S21の処理に戻る。
【0069】
以上、ノート検索処理について説明したように、このノート検索処理では、演奏モードがミュートモードの場合には、ミュートされていないパートのうち、現在設定されている演奏ポインタの位置から最も早いノートイベントが検索され、その検索された位置から演奏が開始されることになる。また、演奏モードがマイナスワンモードの場合には、ミュートするように設定されているパートのうち、現在設定されている演奏ポインタの位置から最も早いノートイベントが検索され、その検索された位置から演奏が開始されることになる。従って、ミュートモードにおいては、ミュートされたパートが最も早く発音を開始するように設定されている場合でも、ミュートされないパートの先頭から自動演奏を開始させることができる。
【0070】
一方、マイナスワンモードにおいては、ミュートされるパートは、演奏の練習が行われるパートであり、その演奏が行われるパートの最も早く発音を開始する位置が検出され、その位置から自動演奏が開始されるので、使用者は、演奏の開始を待たされることがなく、すぐに演奏に入ることができる。よって、演奏の開始のタイミングを取りやすい。
【0071】
次に、図7を参照して、タイマ割込処理について説明する。図7は、タイマ割込処理を示すフローチャートである。このタイマ割込処理は、タイマ2aが1ティックを計時する毎に起動され、その時刻に処理すべきイベントが存在する場合は、そのイベントの処理が行われる。この処理により、自動演奏が実行される。以下、フローチャートに従って、順次説明する。まず、現在時刻を示す演奏ティックは、演奏ポインタが示すイベントの時刻か否かを判断する(S41)。演奏ティックが、演奏ポインタが示すイベントの時刻である場合は(S41:Yes)、演奏ポインタが示すイベントがノートイベントか否かを判断する(S42)。演奏ポインタが示すイベントがノートイベントである場合は(S42:Yes)、そのノートイベントのパートがミュートするように設定されているか否かを判断し(S43)、ミュートするように設定されていなければ(S43:No)、そのノートイベントに対応するノートオンイベントを音源9に出力する(S44)とともに、ノートイベントに対応して記憶されているデュレーションの時間と演奏ティックとを加算して、ノートオフイベントを出力する時刻を求め、ノートオフイベントと、その求められた時刻とをRAM4のノートオフバッファ4bに記憶する(S45)。S45の処理を終了した場合は、演奏ポインタを次のイベントに進め(S46)、S41の処理に戻る。
【0072】
S43の判断処理において、ノートイベントのパートがミュートするように設定されている場合は(S43:Yes)、S44およびS45の処理を行わずに、演奏ポインタを次のイベントに進め(S46)、S41の処理に戻る。
【0073】
一方、S42の判断処理において、演奏ポインタが示すイベントがノートイベントでなければ(S42:No)、演奏ポインタが示すイベントが曲の終わりを示すエンドマークであるか否かを判断する(S47)。演奏ポインタが示すイベントが曲の終わりを示すエンドマークでなければ(S47:No)、そのイベントを、音色や音量を設定するイベントであると判断して音源9に出力し(S48)、S46の処理に進む。演奏ポインタが示すイベントが曲の終わりを示すエンドマークであれば(S47:Yes)、演奏フラグを0に設定し、タイマ割込を禁止して(S49)、このタイマ割込処理を終了する。タイマ割込が禁止されることのより自動演奏は、停止される。
【0074】
一方、S41の判断処理において、演奏ティックが演奏ポインタが示すイベントの時刻ではなければ(S41:No)、演奏ティックが、RAM4のノートオフバッファ4bに記憶されたノートオフイベントの時刻のいずれかに一致するか否かを判断し(S51)、一致する場合は(S51:Yes)、そのノートオフイベントを音源9に出力し、そのノートオフイベントと時刻とをノートオフバッファ4bから消去する(S52)。
【0075】
次に、ノートオフバッファ4bにノートオフイベントが記憶されているか否かを判断し(S53)、ノートオフイベントが記憶されていない場合は(S53:No)、次のノートイベント(ただし、ミュートモードの場合は、ミュートされたパートとリズムパートとを除くパートのノートイベントであり、マイナスワンモードの場合は、ミュートされているパートのノートイベントである)を演奏データから検索し、そのノートイベントの時刻から現在の時刻である演奏ティックとの差を算出することにより、次に楽音の発生が開始されるまでの時間を求め、その時間が所定の時間(例えば、1小節)以内であるか否かを判断する(S54)。次に楽音の発生が開始されるまでの時間が所定の時間以内ではない場合は(S54:No)、演奏ポインタをその検索されたイベントに移動し、演奏ティックをその検索されたイベントの時刻に変更する(S56)。なお、S54の処理において、曲の終わりまでに次のノートイベントが見つからない場合は、次の楽音の発生が開始されるまでの時間が所定の時間以内ではないとみなし、S56の処理において、演奏ティックを曲の終わりの時刻に変更するものとする。S56の処理を終了するとS41の処理に戻る。このS53からS56までの処理により所定の時間より長い休符がある場合や、間奏、後奏を飛ばして自動演奏することができる。
【0076】
S51の判断処理において、演奏ティックに一致する時刻のノートオフイベントがノートオフバッファ4bに記憶されていない場合(S51:No)、または、S53の判断処理において、ノートオフバッファ4bにノートオフイベントが記憶されている場合(S53:Yes)、または、S54の判断処理において、次の楽音の発生が開始されるまでの時間が所定の時間以内である場合(S54:Yes)は、演奏ティックを1進め(S55)、このタイマ割込処理を終了する。
【0077】
以上説明したように、本発明による自動演奏装置は、自動演奏を開始するように指示された場合に、適切に演奏データの演奏開始位置を設定して演奏を開始することができる。自動演奏モードが、ミュートモードに設定されている場合は、ミュートするように設定されたパートと、リズムパートを除くパートにおいて、最も早く発音の開始を指示するノートイベントが検索され、その検索された位置に基づいて自動演奏が開始される。
【0078】
自動演奏モードが、マイナスワンモードに設定されている場合は、ミュートするように設定されたパートにおいて、最も早く発音の開始を指示するノートイベントが検索され、その検索された位置に基づいて自動演奏が開始される。
【0079】
なお、各請求項でいうミュートパート指定手段またはミュートパート指定ステップ、またはマイナスワンパート指定手段またはマイナスワンパート指定ステップは、図5に示すフローチャートのS16〜S19の処理が該当し、演奏開始指示手段または演奏開始指示ステップは、図5に示すフローチャートのS4〜S7の処理が該当し、検索手段または検索ステップは、図6に示すフローチャートのS21〜S24およびS31、S32の処理が該当し、自動演奏開始手段または自動演奏開始ステップは、図6に示すフローチャートのS28の処理と、図7に示すフローチャートの処理とが該当する。
【0080】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0081】
例えば、上記実施形態では、ノート検索処理において最も早く発音が開始される演奏位置を検出し、その位置から演奏を開始するものとしたが、いきなりその位置から演奏が開始されると、タイミングを取りにくいので、検索された位置から1小節ほど前の小節線の位置から演奏を開始するようにしてもよい。その場合に、リズムパートなどが演奏されない場合は、カウントインと呼ばれる演奏の開始タイミングを取るためのメトロノームのような発音を行うようにしてもよい。
【0082】
また、上記実施形態では、ミュートするように設定されているパートのノートイベントについては、音源9に出力しないものとしたが、音源9にノートイベントを出力し、そのパートの音量を0または、小さい値に設定するようにしてもよい。
【0083】
また、上記実施形態では、自動演奏装置1は、鍵盤5を内蔵するものとしたが、MIDIインターフェースを内蔵し、MIDI規格に準拠した演奏情報を外部の鍵盤などの機器から入力するようにしてもよい。
【0084】
また、上記実施形態では、自動演奏データに基づいて演奏を行うものとしたが、パート毎に記憶されたオーディオデータ(例えば、PCM形式で記録されたデータ)を再生するようにしてもよい。その場合には、ノートイベントを検索する代わりに、例えば、オーディオデータのレベルが所定値を超えたか否かを検出ことにより演奏を開始する位置を検出することができる。また、あるパートは、自動演奏データとし、他のパートは、オーディオデータとし、同期して自動演奏するようにしてもよい。なお、演奏データとオーディオデータとの同期をとることは、公知の技術である。このようにすることにより、自動演奏では演奏することが困難な人の歌唱やリアルな楽器演奏を行うことが可能になる
また、上記実施形態では、演奏開始手段は、再生/停止ボタン27の操作により演奏の開始を指示するものとしたが、これに加えて、演奏データメモリ8aに複数曲の演奏データを記憶し、一つの曲の演奏を終了したら、所定の順番で指定される別の曲の演奏の開始を指示するようにしてもよい。このとき、曲の前奏、間奏、後奏などのメロディがない部分を飛ばして演奏するようにしてもよい。このようにすることにより、複数曲のメロディ部分だけを連続して聴いたり、練習したりすることができる。また、メロディ部分だけを演奏する場合に、曲の終わまで演奏したら、再度曲の先頭から演奏を開始するようにしてもよい。このようにすると、一つの曲のメロディ部分だけを繰り返し聴いたり、練習したりすることができる。
【0085】
また、上記実施形態では、自動演奏モードとして、ミュートモードとマイナスワンモードがあるものとしたが、いずれかのパートを指定し、そのパートの現在の演奏ポインタが示す位置から最も早いノートイベントを検索し、その検索された位置から、指定されたパート以外のパートをミュートして、指定されたパートのみが発音されるようにしてもよい。このようにすることにより、聴きたいパートの演奏をすばやく聴くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の実施形態による自動演奏装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図2】自動演奏装置の操作パネルを示す平面図である。
【図3】演奏データを示す図である。
【図4】演奏データに対応する楽譜である。
【図5】メイン処理を示すフローチャートである。
【図6】ノート検索処理を示すフローチャートである。
【図7】タイマ割込処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0087】
1 自動演奏装置
2 CPU
2a タイマ
3 ROM
8 メモリカード(記憶手段)
9 音源
22〜25 パートボタン(ミュートパート指定手段またはマイナスパート指定手段)
27 再生/停止ボタン(演奏開始指示手段)
30 ミュート/マイナスワンボタン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のパートにより構成される演奏情報を記憶する記憶手段を備え、その記憶手段に記憶された複数のパートの演奏情報に基づいて自動演奏を行う自動演奏装置において、
前記複数のパートのいずれかのパートを指定するミュートパート指定手段と、
自動演奏の開始を指示する演奏開始指示手段と、
前記記憶手段に記憶された演奏情報の演奏位置を示す演奏位置指示手段と、
前記演奏開始指示手段により自動演奏の開始が指示された場合に、前記演奏位置指示手段により指示される演奏位置以降であって、前記ミュートパート指定手段により指定されたパート以外のパートにおいて時間的に最も早く発音の開始を指示する演奏情報が記憶された記憶位置を検索する検索手段と、
前記ミュートパート指定手段により指定されたパートをミュートし、その検索手段により検索された記憶位置に基づいて自動演奏を開始する自動演奏開始手段とを備えていることを特徴とする自動演奏装置。
【請求項2】
前記複数パートは、打楽器音を演奏するリズムパートを含むものであり、
前記検索手段は、前記リズムパートと前記ミュートパート指定手段により指定されたパートとを除くパートにおいて時間的に最も早く発音の開始を指示するイベント演奏情報が記憶された記憶位置を検索するものであることを特徴とする請求項1記載の自動演奏装置。
【請求項3】
複数のパートにより構成される演奏情報を記憶する記憶手段を備え、その記憶手段に記憶された複数パートの演奏情報に基づいて自動演奏を行う自動演奏装置において、
前記複数のパートのいずれかのパートを指定するマイナスワンパート指定手段と、
自動演奏の開始を指示する演奏開始指示手段と、
前記記憶手段に記憶された演奏情報の演奏位置を示す演奏位置指示手段と、
前記演奏開始指示手段により自動演奏の開始が指示された場合に、前記演奏位置指示手段により指示される演奏位置以降であって、前記マイナスワンパート指定手段により指定されたパートにおいて時間的に最も早く発音の開始を指示する演奏情報が記憶された記憶位置を検索する検索手段と、
前記マイナスワンパート指定手段により指定されたパートをミュートし、その検索手段により検索された記憶位置に基づいて自動演奏を開始する自動演奏開始手段とを備えていることを特徴とする自動演奏装置。
【請求項4】
前記自動演奏開始手段は、前記検索手段により検索された位置より前の所定の位置から自動演奏を開始するものであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の自動演奏装置。
【請求項5】
複数のパートにより構成される演奏情報を記憶する記憶手段を備え、その記憶手段に記憶された複数のパートの演奏情報に基づいて自動演奏を行う自動演奏装置において実行される自動演奏プログラムであって、
前記複数のパートのいずれかのパートを指定するミュートパート指定ステップと、
自動演奏の開始を指示する演奏開始指示ステップと、
前記記憶手段に記憶された演奏情報の演奏位置を示す演奏位置指示ステップと、
前記演奏開始指示ステップにより自動演奏の開始が指示された場合に、前記演奏位置指示ステップにより指示される演奏位置以降であって、前記ミュートパート指定ステップにより指定されたパート以外のパートにおいて時間的に最も早く発音の開始を指示する演奏情報が記憶された記憶位置を検索する検索ステップと、
前記ミュートパート指定ステップにより指定されたパートをミュートし、その検索ステップにより検索された記憶位置に基づいて自動演奏を開始する自動演奏開始ステップとを備えていることを特徴とする自動演奏プログラム。
【請求項6】
複数のパートにより構成される演奏情報を記憶する記憶手段を備え、その記憶手段に記憶された複数パートの演奏情報に基づいて自動演奏を行う自動演奏装置において実行される自動演奏プログラムであって、
前記複数のパートのいずれかのパートを指定するマイナスワンパート指定ステップと、
自動演奏の開始を指示する演奏開始指示ステップと、
前記記憶手段に記憶された演奏情報の演奏位置を示す演奏位置指示ステップと、
前記演奏開始指示ステップにより自動演奏の開始が指示された場合に、前記演奏位置指示ステップにより指示される演奏位置以降であって、前記マイナスワンパート指定ステップにより指定されたパートにおいて時間的に最も早く発音の開始を指示する演奏情報が記憶された記憶位置を検索する検索ステップと、
前記マイナスワンパート指定ステップにより指定されたパートをミュートし、その検索ステップにより検索された記憶位置に基づいて自動演奏を開始する自動演奏開始ステップとを備えていることを特徴とする自動演奏プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−225423(P2008−225423A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−67916(P2007−67916)
【出願日】平成19年3月16日(2007.3.16)
【出願人】(000116068)ローランド株式会社 (175)
【Fターム(参考)】