説明

自動給水装置

【課題】設置されている様々な種類の便器に応じて、最適な便器洗浄に必要な吐水流量を簡単に設定することができ、過不足なく最適な吐水流量で便器への定量吐水を行うことができる自動給水装置を提供する。
【解決手段】本発明の自動給水装置1は、設置されている便器の種類を識別する便器識別情報を設定する便器識別情報設定用リモコン22と、使用者Uの動作を検知する人体センサー4と、吐水される水の通水路14を開閉する電磁弁10と、通水路14内の吐水流量を検知するカウンター16bと、電磁弁を開閉制御するコントローラ20と、を有し、このコントローラ20は、人体センサーが使用者の動作を検知した後に電磁弁を開弁させ、次に、便器識別情報設定用リモコンにより設定された便器識別情報とカウンターが検知した検知情報に基づいて電磁弁を閉弁させるタイミングを決定し、この決定したタイミングに従って電磁弁を閉弁させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動給水装置に係り、特に、使用者の動作に基づいて便器に洗浄水を自動的に吐水する自動給水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、使用者の動作に基づいて、水洗大便器又は水洗小便器等の水洗便器に洗浄水を自動的に吐水する自動給水装置においては、まず、自動給水装置の一部、又は便器やその周辺に設けられているセンサーが便器の使用者(人体)を感知し、この使用者が便器使用後にセンサーから離れると、水道等の給水源から供給された給水から所定量の洗浄水を便器に定量吐水する自動給水装置が知られている。
また、従来の便器洗浄水の定量吐水を行う技術においては、例えば、特許文献1に記載されているように、洗浄水の流量を計測する流量計ユニットを設け、この流量計ユニットが計測した流量値に基づく流量制御によって定量吐水を行うものが知られている。
さらに、特許文献2に記載されているように、発電機を備えた自己発電式の便器洗浄水自動給水装置が知られている。この自動給水装置では、装置の大型化を回避してコストを低減させるために、流量計を個別に設けずに、発電機の出力の波数をカウントして流量を検出することにより、定量吐水を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−146735号公報
【特許文献2】実開昭63−176168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の自動給水装置においては、設置されている便器の製品番号や型式等、様々な種類の便器に応じて、自動給水装置の定量吐水に最適な吐水流量が異なるにもかかわらず、現場での試行錯誤の手作業による面倒な流量調節が強いられるため、設置される便器の種類にかかわらず一定の吐水量に設定した状態で使用していることがほとんどである。したがって、自動給水装置をある種類の便器に設置した場合に定量吐水が実現することができていたとしても、他の種類の便器に設置した場合には必要な洗浄水量が吐水されず、便器の洗浄が損なわれたり、必要以上の洗浄水量が吐水されて節水することができないという問題がある。
また、定量吐水に最適な吐水流量は、自動給水装置に供給される給水圧が一定であることを条件としているが、この給水圧は、自動給水装置が設置される現場によって高低変動するものである。特に、駅やビル等の公共施設に設置されている便器の自動給水装置においては、複数の自動給水装置が連設されているにもかかわらず、大元の給水源は一つであることがほとんどであるため、連設した自動給水装置の各々の使用状況よって、各自動給水装置に供給される給水の圧力が大きく変動してしまい、吐水量の過不足がない最適な定量吐水を行うことが難しいという問題もある。
【0005】
そこで、本発明は、上述した従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、設置されている様々な種類の便器に応じて、最適な便器洗浄に必要な吐水流量を簡単に設定することができ、過不足なく最適な吐水流量で便器への定量吐水を行うことができる自動給水装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は、使用者の動作に基づいて便器に洗浄水を自動的に吐水する自動給水装置であって、設置されている便器の種類を識別する便器識別情報を設定する便器識別情報設定手段と、使用者の動作を検知する動作検知手段と、吐水される水の通水路を開閉する電磁弁と、上記通水路内の吐水流量を検知する吐水流量検知手段と、上記動作検知手段から送信される信号に基づいて上記電磁弁を開閉制御する制御手段と、を有し、上記制御手段は、上記動作検知手段が使用者の動作を検知した後に上記電磁弁を開弁させ、次に、上記便器識別情報設定手段により設定された便器識別情報と上記吐水流量検知手段が検知した検知情報に基づいて上記電磁弁を閉弁させるタイミングを決定し、次に、この決定したタイミングに従って上記電磁弁を閉弁させることを特徴としている。
このように構成された本発明においては、制御手段により電磁弁を開閉制御する際、動作検知手段が使用者の動作を検知すると、動作検知手段から送信される信号を制御手段が受信して電磁弁を開弁させ、次に、便器識別情報設定手段により設定された便器識別情報と吐水流量検知手段が検知した検知情報に基づいて電磁弁を閉弁させるタイミングを決定し、次に、この決定したタイミングに従って電磁弁を閉弁させるため、設置される様々な種類の便器に応じて、最適な便器洗浄に必要な吐水流量を簡単に設定することができる。また、様々な種類の便器の種類に応じて過不足なく最適な吐水流量で便器への定量吐水を行うことができるため、洗浄水不足により便器が汚れやすくなることを防ぐことができると共に、余分な洗浄水量の吐水を防ぎ、節水を実現することができる。
【0007】
本発明において、好ましくは、更に、上記通水路を流れる吐水により回転する羽根車を備えた発電機と、この発電機の羽根車の回転により発電された電力を蓄える蓄電手段と、を有し、上記制御手段は、上記蓄電手段に蓄えられた電力を用いて上記電磁弁を開閉制御し、上記電磁弁を閉弁させるタイミングは、上記吐水流量検知手段が検知した上記発電機の羽根車の回転数と上記便器識別情報設定手段により設定された便器識別情報に基づいて決定される。
このように構成された本発明においては、電磁弁の開閉制御に用いられる電力を発電する発電機の羽根車の回転数を吐水流量検知手段が検知した情報に基づいて通水路内の吐水の瞬間流量を考慮しながら、電磁弁を閉弁させるタイミングを決定することができるため、自動給水装置自体が大型化することなく、様々な種類の便器に応じて最適な定量吐水を行うことができ、便器の種類に応じた節水を実現することができる。
【0008】
本発明において、好ましくは、更に、上記通水路内の給水圧力を測定する給水圧力測定手段を有し、上記電磁弁を閉弁させるタイミングは、上記給水圧力測定手段が測定した測定値、上記便器識別情報設定手段により設定された便器識別情報、及び上記吐水流量検知手段による検知情報に基づいて決定される。
このように構成された本発明においては、便器識別情報及び吐水流量検知手段による検知情報に加えて、給水圧力測定手段が測定した測定値に基づいて電磁弁を閉弁させるタイミングが決定されるため、便器の種類や、給水圧力が異なる様々な現場状況に応じて最適な吐水流量で定量吐水を行うことができる。
【0009】
本発明において、好ましくは、上記制御手段は、上記動作検知手段が使用者の動作を検知した後、上記電磁弁が開弁して吐水が開始した時から第1の所定時間までに上記発電機の羽根車の回転数が増加しているときに上記吐水流量検知手段が検知した上記発電機の羽根車の回転数の増加率、上記第1の所定時間の経過後第2の所定時間までに上記吐水流量検知手段が検知したほぼ一定の上記発電機の羽根車の所定回転数、及び、上記便器識別情報設定手段により設定された便器識別情報に基づいて上記電磁弁を閉弁させるタイミングを決定する。
このように構成された本発明においては、動作検知手段が使用者の動作を検知した後、電磁弁が開弁して吐水が開始した時から第1の所定時間までは、吐水流量検知手段が検知した発電機の羽根車の回転数が増加し、この回転数の増加率が通水路内の給水圧力に大きく依存する。また、第1の所定時間の経過後第2の所定時間までは、吐水流量検知手段が検知した発電機の羽根車の回転数がほぼ一定となって安定し、通水路内の瞬間流量に大きく依存する。したがって、吐水流量検知手段が、吐水開始時から第1の所定時間までの発電機の羽根車の回転数の増加率を検知し、第1の所定時間の経過後第2の所定時間までにほぼ一定の発電機の羽根車の所定回転数を検知することにより、給水圧力、瞬間流量及び便器識別情報に応じた電磁弁の閉弁制御を行うことができるため、より最適な定量吐水を行うことができ、便器の種類に応じた節水効果を向上させることができる。また、吐水流量検知手段が発電機の羽根車の回転数の増加率を検知することにより、給水圧力を検知することができるため、給水圧力を測定するための手段(圧力センサー等)を別途設ける必要がないため、自動給水装置自体が大型化するのを防ぐことができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、上記便器識別情報設定手段は、自動給水装置の本体とは別体に設けられたリモコンである。
このように構成された本発明においては、便器識別情報設定手段が自動給水装置の本体とは別体に設けられたリモコンであるため、自動給水装置を設置した初期にリモコンにより、設置されている便器の種類を識別する便器識別情報を一旦設定してしまえば、リモコンを持ち運ぶことができ、例えば、管理会社が自動給水装置とは別の場所で便器識別情報を管理することができる。したがって、使用者が誤って便器識別情報設定手段を操作して、吐水量を変えてしまい、最適な定量吐水を行うことができなくなるトラブルを防ぐことができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、上記制御手段は、更に、上記吐水流量検知手段が検知した情報に基づいて便器に吐水される総吐水量を算出し、上記便器識別情報設定手段は、上記総吐水量を表示する総吐水量表示手段を備えている。
このように構成された本発明においては、制御手段が、吐水流量検知手段が検知した情報に基づいて便器に吐水される総吐水量を算出し、この算出した総吐水量を便器識別情報設定手段の総吐水量表示手段が表示することにより、自動給水装置の総吐水量を容易に把握することができる。したがって、この総吐水量に基づいて、自動給水装置のメンテナンス時期を判断したり、メンテナンス時期を設定したりすることができる。また、例えば、複数の自動給水装置が連設されている公共の自動給水装置においては、複数のすべての自動給水装置を一斉にメンテナンスする必要がなく、所定以上の総吐水量に達している自動給水装置のみをメンテナンスすればよいため、効率的にメンテナンスを行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の自動給水装置によれば、設置されている様々な種類の便器に応じて、最適な便器洗浄に必要な吐水流量を簡単に設定することができ、過不足なく最適な吐水流量で便器への定量吐水を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態による自動給水装置が適用された水洗大便器を示す概略図である。
【図2】本発明の第1実施形態による自動給水装置を示す正面断面図である。
【図3】図2のIII−IIIに沿った断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態による自動給水装置において吐水時間と発電機の羽根車の回転数との関係を示すグラフの一例である。
【図5】本発明の第1実施形態による自動給水装置において、設置される水洗大便器の種類(便器A〜C)で比較した所定水圧における瞬間流量と吐水量との関係を示すグラフである。
【図6】本発明の第1実施形態による自動給水装置において、設置される水洗大便器の種類(便器A〜C)で比較した所定水圧における瞬間流量と電磁弁開閉時間との関係を示すグラフである。
【図7】本発明の第1実施形態による自動給水装置において、水洗大便器として便器Aを設置した場合に各水圧で比較した瞬間流量と電磁弁開閉時間との関係を示すグラフである。
【図8】本発明の第1実施形態による自動給水装置において、水洗大便器として便器Bを設置した場合に各水圧で比較した瞬間流量と電磁弁開閉時間との関係を示すグラフである。
【図9】本発明の第1実施形態による自動給水装置において、水洗大便器として便器Cを設置した場合に各水圧で比較した瞬間流量と電磁弁開閉時間との関係を示すグラフである。
【図10】本発明の第2実施形態による自動給水装置を示す正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面により、本発明の第1実施形態による自動給水装置を説明する。
図1は本発明の第1実施形態による自動給水装置が適用された水洗大便器を示す概略図である。
【0015】
まず、図1に示すように、符号1は、本発明の第1実施形態による自動給水装置を示し、この自動給水装置1は、トイレ室内に設置された水洗大便器2の上方に設けられ、上流側端部が水道等の給水源(図示せず)に接続されている。
なお、本実施形態の自動給水装置1においては、一例として、水洗大便器に設けた形態について説明するが、水洗大便器の代わりに水洗小便器に設けてもよい。
【0016】
また、自動給水装置1の正面側の一部には、水洗大便器2の使用者Uの動作を検知する動作検知手段である人体センサー4が配置されている。この人体センサー4が、水洗大便器2の正面側に位置する使用者Uの存在(人体)を感知すると、自動給水装置1が作動し、この使用者Uが便器使用後に人体センサー4から離れると、給水源(図示せず)から自動給水装置1に供給された給水から所定量の洗浄水が水洗大便器2に定量吐水されるようになっている。
なお、本実施形態の自動給水装置1においては、水洗大便器2の使用者Uの動作を検知する動作検知手段の一例として、人体センサー4が自動給水装置1の一部に組み込まれた形態について説明するが、他の動作検知手段の形態として、トイレ室内の水洗便器周辺の壁に手をかざすと感知するセンサーを設けてもよいし、タッチスイッチやタッチボタンのようなものを採用し、これらに使用者が触れたり又は押したりすることにより、動作を検知させるようにしてもよい。
【0017】
つぎに、図2及び図3により、本実施形態による自動給水装置1の具体的な構成について説明する。
図2は本発明の第1実施形態による自動給水装置を示す正面断面図であり、図3は図2のIII−IIIに沿った断面図である。
【0018】
図2及び図3に示すように、自動給水装置1の内部には、上流側から、一次側通水路(給水路)6、圧力室8、電磁弁10、ピストンバルブ12、二次側通水路(吐水路)14、発電機16、及びコンデンサ18が設けられている。
【0019】
また、自動給水装置1は、人体センサー4から送信される信号に基づいて電磁弁10を開閉制御する制御手段であるコントローラ20を備えている。
【0020】
さらに、自動給水装置1は、設置されている水洗大便器2の製品番号や型式等、便器の様々な種類を識別する情報(以下「便器識別情報」)を入力して設定する便器識別情報設定手段として、自動給水装置1の本体とは別体に設けられた便器識別情報設定用リモコン22を備えている。
なお、本実施形態では、便器識別情報設定手段の一例として、自動給水装置1の本体とは別体に設けられた便器識別情報設定用リモコン22を採用しているが、便器識別情報を入力が可能な装置を自動給水装置1の本体の一部に組み込んでもよい。
【0021】
また、自動給水装置1においては、自動給水装置1が水洗大便器2に吐水を行う前の状態は、電磁弁10とピストンバルブ12が閉弁し、一次側通水路6及び圧力室8内が給水で満たされ、所定の一次水圧で止水された状態となるようになっている。
【0022】
つぎに、自動給水装置1においては、使用者Uが水洗大便器2に近づき、人体センサー4が使用者Uを感知した後、この使用者Uが便器使用後に人体センサー4から離れると、人体センサー4が非検知状態となり、この非検知状態を示す信号がコントローラ20に送信されるようになっている。
また、この人体センサー4から送信された信号を受信したコントローラ20は、電磁弁10を開弁させる指令信号を電磁弁10に送信し、この指令信号を受信した電磁弁10が所定時間開弁する制御が行われるようになっている。
【0023】
また、自動給水装置1においては、電磁弁10が開弁すると、圧力室8内の水が電磁弁10を介して二次側通水路14へ流れ込み、吐水が開始されるようになっている。そして、圧力室8内のほとんどの水が二次側通水路14へ流れ込むと、圧力室8内に水圧が掛からなくなるため、一次側通水路6側からの一次圧力によってピストンバルブ12が上方に押し上げられ、ピストンバルブ12が開弁し、一次側通水路6内の給水がピストンバルブ12を介して二次側通水路14へ流れ込み、吐水が行われるようになっている。
【0024】
さらに、発電機16は、二次側通水路14の途中に設けられ、この二次側通水路14を流れる吐水により回転する羽根車16aを備えている。この羽根車16aには、回転数をカウントすることにより吐水流量検知手段として機能するカウンター16bが設けられている。
また、発電機16の羽根車16aの回転により発電された電力は、蓄電手段であるコンデンサ18に蓄電されるようになっており、このコンデンサ18に蓄電された電力は、コントローラ20による電磁弁10の開閉制御(詳細は後述する)に用いられるようになっている。
【0025】
さらに、自動給水装置1においては、電磁弁10が所定時間開弁した後、閉弁制御が行われるようになっている。この閉弁制御における電磁弁10を閉弁させるタイミングは、発電機16のカウンター16bが検出した羽根車16aの回転数と便器識別情報設定用リモコン22によって設定された便器識別情報に基づいてコントローラ20が決定するようになっている。
【0026】
また、自動給水装置1においては、コントローラ20が決定した電磁弁10を閉弁させるタイミングに従って電磁弁10が閉弁するようになっている。そして、圧力室8内に水が溜まると、この圧力室8内の水圧によりピストンバルブ12が下方に押し下げられ、ピストンバルブ12が閉弁し、止水が行われるようになっている。
【0027】
さらに、自動給水装置1のコントローラ20は、カウンター16bが検知した情報に基づいて水洗大便器2に吐水される総吐水量を算出するようになっており、便器識別情報設定用リモコン22には、コントローラ20が算出した総吐水量を表示する総吐水量表示モニター24が設けられている。
また、コントローラ20には、製品番号や型式等の便器の様々な種類に応じて予め定められた瞬間流量と吐水量との関係を示すテーブル情報(詳細は後述する図5参照)や、瞬間流量と電磁弁開閉時間との関係を示すテーブル情報(詳細は後述する図6〜図9参照)が記憶されたメモリ26が内蔵されている。
【0028】
つぎに、図4〜図9により、本実施形態の自動給水装置における電磁弁の開閉制御の具体的内容について説明する。
図4は本実施形態による自動給水装置において吐水時間と発電機の羽根車の回転数との関係を示すグラフの一例であり、図4の横軸は吐水が行われている吐水時間tとし、図4の縦軸は発電機の羽根車の回転数Nとし、図4の時刻t0は電磁弁の開弁が開始した時刻を示している。
また、図5は本実施形態による自動給水装置において、設置される水洗大便器の種類(便器A〜C)で比較した所定水圧(0.2MPa)における瞬間流量と吐水量との関係を示すグラフであり、図6は本実施形態による自動給水装置において、設置される水洗大便器の種類(便器A〜C)で比較した所定水圧(0.2MPa)における瞬間流量と電磁弁開閉時間との関係を示すグラフである。
さらに、図7〜図9は本実施形態による自動給水装置において、水洗大便器として便器A、便器B、便器Cをそれぞれ設置した場合における各水圧(0.07MPa、0.2MPa、0.75MPa)で比較した瞬間流量と電磁弁開閉時間との関係を示すグラフである。
【0029】
まず、電磁弁10の開閉制御を行う前提として、設置された水洗大便器2に関する製品番号や型式等の便器識別情報を便器識別情報設定用リモコン22に入力設定する。
例えば、設置されている水洗大便器2の種類が便器Aである場合には、便器識別情報設定用リモコン22に便器識別情報として便器Aの製品番号を入力すると、この便器識別情報設定用リモコン22からコントローラ20に信号が送信される。そして、この信号を受信したコントローラ20が、メモリ26に記憶されている情報の中から、図5〜図7に示す「便器A」に関するテーブル情報を選択する。
同様に、便器識別情報設定用リモコン22に便器Bの製品番号を入力した場合には、コントローラ20が、図5、図6及び図8に示す「便器B」に関するテーブル情報を選択し、便器Cの製品番号を入力した場合には、図5、図6及び図9に示す「便器C」に関するテーブル情報を選択する。
【0030】
つぎに、設置されている水洗大便器2の種類に応じて予め定められた図5〜図9に示すテーブル情報が選択されている状態で、使用者Uが水洗大便器2を使用する際に、人体センサー4が使用者Uを感知した後、便器使用後の使用者Uが人体センサー4から離れると、人体センサー4が非検知状態となり、この非検知状態を示す信号がコントローラ20に送信される。そして、この信号を受信したコントローラ20が電磁弁10に信号を送信し、電磁弁10の開弁動作が開始されると同時に自動給水装置1から水洗大便器2への吐水が開始される(時刻t0)。
【0031】
つぎに、図4に示すように、時刻t0で電磁弁10が開弁して吐水が開始された後、時刻t1(例えば、0.4秒)までにカウンター16bが検知した発電機16の羽根車16aの回転数Nは、ほぼ一定の増加率で増加し、時刻t1以後、羽根車16aの回転数Nがほぼ一定(N=N0)となって安定する。
ここで、時刻t0〜t1までの回転数Nが増加している区間については、コントローラ20が回転数Nの増加率k(時刻t0からt1までの回転数Nの傾き)を算出し、この増加率kに比例関係で対応する水圧(給水圧)が測定される。
【0032】
例えば、設置されている水洗大便器2が便器Aである場合、発電機16の羽根車16aのカウンター16bの出力値に基づいて、コントローラ20が、図4に示す時刻t0〜t1までの回転数Nの増加率kを測定し、この増加率kに対応する水圧が0.2MPaであるという結果が得られたとすると、図5及び図6の「便器A」に関するデータ情報と図7に示す「水圧0.2MPa」に関するデータ情報が選択される。
【0033】
つぎに、図4に示すように、回転数Nが安定してほぼ一定となっている時刻t1〜t2(例えば、0.4秒〜0.5秒)の間の区間について、一定の回転数N0を決定し、予め定められた回転数N0と瞬間流量Qとの関係を表すテーブル情報に基づいて、瞬間流量Qを設定する。
ここで、例えば、時刻t1〜t2の区間の回転数N0が2000回転と決定された場合には、予め定められた回転数N0と瞬間流量Qとの関係を表すテーブル情報に基づいて瞬間流量Qが80L/minに設定され、回転数N0が3200回転と決定された場合には、瞬間流量Qが100L/minに設定され、回転数N0が4200回転と決定された場合には、瞬間流量Qが120L/minに設定され、回転数N0が5800回転と決定された場合には、瞬間流量Qが150L/minに設定される。
【0034】
つぎに、時刻t1〜t2の区間で瞬間流量Qが決定されると、コントローラ20により、図5において設置されている水洗大便器2の種類に応じた吐水量が決定される。同時に、図6〜図9に示すデータ情報に基づいて、設置されている水洗大便器2の種類に応じた電磁弁10の開閉時間T、すなわち、図4に示す時刻t0で電磁弁10の開弁動作が開始してから時刻t3で電磁弁10の閉弁動作が開始するまでの時間(T=t3−t0)が決定され、電磁弁10を時刻t3で閉弁させるタイミングが決定される。
そして、この決定された電磁弁10を閉弁させるタイミングに従って、時刻t3でコントローラ20が電磁弁10を閉弁させると、再び圧力室8内に水が溜まり、この圧力室8内の水圧によりピストンバルブ12が下方に押し下げられ、時刻t4でピストンバルブ12が閉弁し、止水が完了する。
なお、図5に示すように、瞬間流量Qが80L/min〜100L/minにおいて、便器A、B、Cとも、吐水量(L)に変化がないが、これは、瞬間流量が少ない場合には、便器に応じた必要な洗浄水量を吐水することにより、便器の洗浄が損なわれないようにすることもできるが、節水の観点から、瞬間流量が少ない場合は、洗浄水量である吐水量を増やすのではなく、図6〜図9に示すように、電磁弁開閉時間を延ばし、吐水時間を延ばす事により、便器の洗浄が損なわれないようにしている。
【0035】
上述した本発明の第1実施形態による自動給水装置1によれば、コントローラ20により電磁弁10を開閉制御する際、人体センサー4が使用者Uの動作を検知すると、この人体センサー4から送信される信号をコントローラ20が受信して電磁弁10を開弁させ、次に、便器識別情報設定用リモコン22により設定された、設置されている水洗大便器2の製品番号や型式等の便器識別情報と、発電機16の羽根車16aのカウンター16bが検知した検知情報に基づいて電磁弁10を閉弁させるタイミング(電磁弁10の開閉時間T)を決定し、次に、この決定したタイミングに従って電磁弁10を閉弁させるため、設置される水洗大便器2が異なる便器識別情報を有する様々な種類の水洗大便器に応じて、最適な便器洗浄に必要な吐水量を簡単に設定することができる。また、様々な種類の便器の種類に応じて過不足なく最適な吐水流量で便器への定量吐水を行うことができるため、洗浄水不足により便器が汚れやすくなることを防ぐことができると共に、余分な洗浄水量の吐水を防ぎ、節水を実現することができる。
【0036】
また、本実施形態による自動給水装置1によれば、電磁弁10の開閉制御に用いられる電力を発電する発電機16の羽根車16aの回転数Nをカウンター16bが検知した情報に基づいて二次側通水路14内の吐水の瞬間流量を考慮しながら、電磁弁10を閉弁させるタイミング(電磁弁10の開閉時間T)を決定することができるため、自動給水装置自体が大型化することなく、様々な種類の便器に応じて最適な定量吐水を行うことができ、便器の種類に応じた節水を実現することができる。
【0037】
また、本実施形態による自動給水装置1によれば、図4に示すように、人体センサー4が使用者Uの動作を検知した後、電磁弁10が時刻t0で開弁して吐水が開始した時から時刻t1までは、カウンター16bが検知した発電機16の羽根車16aの回転数Nが増加し、この回転数Nの増加率kが通水路6,14内の給水圧力に大きく依存する。また、時刻t1後、時刻t2までは、カウンター16bが検知した発電機16の羽根車16aの回転数Nがほぼ一定(N=N0)となって安定し、通水路6,14内の瞬間流量に大きく依存する。したがって、カウンター16bが、時刻t0の吐水開始時から時刻t1までの発電機16の羽根車16aの回転数Nの増加率kを検知することにより測定した給水圧力と、時刻t1からt2までにほぼ一定の発電機16の羽根車16aの所定回転数N0を検知することにより定めた、便器識別情報に応じた瞬間流量に基づいて閉弁制御を行うことができるため、より最適な定量吐水を行うことができ、便器の種類に応じた節水効果を向上させることができる。また、発電機16の羽根車16aの回転数Nの増加率kを検知することにより、給水圧力を検知することができるため、給水圧力を測定するための圧力センサー等を別途設ける必要がないため、自動給水装置自体が大型化するのを防ぐことができる。
【0038】
さらに、本実施形態による自動給水装置1によれば、便器識別情報設定リモコン22が自動給水装置1の本体とは別体に設けられているため、自動給水装置1を設置した初期に、設置されている便器の種類を識別する便器識別情報を一旦便器識別情報設定リモコン22に設定してしまえば、このリモコン22を持ち運ぶことができ、例えば、管理会社が自動給水装置1とは別の場所で便器識別情報を管理することができる。したがって、使用者Uが誤って便器識別情報設定リモコン22を操作して、吐水量を変えてしまい、最適な定量吐水を行うことができなくなるトラブルを防ぐことができる。
【0039】
また、本実施形態による自動給水装置1によれば、自動給水装置1のコントローラ20が、カウンター16bが検知した情報に基づいて水洗大便器2に吐水される総吐水量を算出するようになっており、便器識別情報設定用リモコン22には、コントローラ20が算出した総吐水量を表示する総吐水量表示モニター24が設けられているため、自動給水装置1の総吐水量を容易に把握することができる。したがって、この総吐水量に基づいて、自動給水装置1のメンテナンス時期を判断したり、メンテナンス時期を設定したりすることができる。また、例えば、複数の自動給水装置が連設されている公共の自動給水装置においては、複数のすべての自動給水装置を一斉にメンテナンスする必要がなく、所定以上の総吐水量に達している自動給水装置のみをメンテナンスすればよいため、効率的にメンテナンスを行うことができる。
【0040】
つぎに、図10を参照して、本発明の第2実施形態による便器洗浄装置を説明する。
図10は、本発明の第2実施形態による自動給水装置を示す正面断面図である。ここで、図10において、本発明の第1実施形態による自動給水装置1の部分と同一の部分については同一の符号を付し、それらの説明は省略する。
【0041】
図10に示すように、本発明の第2実施形態による自働給水装置30は、ピストンバルブ12と発電機16との間の二次側通水路14に設けられた給水圧力測定手段である圧力センサー32を備え、この圧力センサー32が二次側通水路14内の給水圧を測定することができるようになっている点が、第1実施形態による自動給水装置1とは異なっている。
また、電磁弁10を閉弁させるタイミングは、圧力センサー32が測定した給水圧、便器識別情報設定用リモコン22により設定された便器識別情報、及び、発電機16の羽根車16aの回転数をカウントするカウンター16bが検知した情報に基づいて、コントローラ20により決定されるようになっている。
【0042】
上述した本発明の第2実施形態による自働給水装置30によれば、便器識別情報設定用リモコン22により設定された便器識別情報及びカウンター16bによる検知情報に加えて、圧力センサー32が測定した給水圧の測定値に基づいて電磁弁10を閉弁させるタイミングが決定されるため、便器の種類や、給水圧力が異なる様々な現場状況に応じて最適な吐水流量で定量吐水を行うことができる。
【符号の説明】
【0043】
1 自動給水装置
2 水洗大便器
4 人体センサー(動作検知手段)
6 一次側通水路
8 圧力室
10 電磁弁
12 ピストンバルブ
14 二次側通水路
16 発電機
16a 羽根車
16b カウンター(吐水流量検知手段)
18 コンデンサ(蓄電手段)
20 コントローラ(制御手段)
22 便器識別情報設定用リモコン(便器識別情報設定手段)
24 総吐水量表示モニター(総吐水量表示手段)
26 メモリ
30 自動給水装置
32 圧力センサー(給水圧力測定手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の動作に基づいて便器に洗浄水を自動的に吐水する自動給水装置であって、
設置されている便器の種類を識別する便器識別情報を設定する便器識別情報設定手段と、
使用者の動作を検知する動作検知手段と、
吐水される水の通水路を開閉する電磁弁と、
上記通水路内の吐水流量を検知する吐水流量検知手段と、
上記動作検知手段から送信される信号に基づいて上記電磁弁を開閉制御する制御手段と、
を有し、上記制御手段は、上記動作検知手段が使用者の動作を検知した後に上記電磁弁を開弁させ、次に、上記便器識別情報設定手段により設定された便器識別情報と上記吐水流量検知手段が検知した検知情報に基づいて上記電磁弁を閉弁させるタイミングを決定し、次に、この決定したタイミングに従って上記電磁弁を閉弁させることを特徴とする自動給水装置。
【請求項2】
更に、上記通水路を流れる吐水により回転する羽根車を備えた発電機と、この発電機の羽根車の回転により発電された電力を蓄える蓄電手段と、を有し、上記制御手段は、上記蓄電手段に蓄えられた電力を用いて上記電磁弁を開閉制御し、上記電磁弁を閉弁させるタイミングは、上記吐水流量検知手段が検知した上記発電機の羽根車の回転数と上記便器識別情報設定手段により設定された便器識別情報に基づいて決定される請求項1記載の自動給水装置。
【請求項3】
更に、上記通水路内の給水圧力を測定する給水圧力測定手段を有し、上記電磁弁を閉弁させるタイミングは、上記給水圧力測定手段が測定した測定値、上記便器識別情報設定手段により設定された便器識別情報、及び上記吐水流量検知手段による検知情報に基づいて決定される請求項1又は2に記載の自動給水装置。
【請求項4】
上記制御手段は、上記動作検知手段が使用者の動作を検知した後、上記電磁弁が開弁して吐水が開始した時から第1の所定時間までに上記発電機の羽根車の回転数が増加しているときに上記吐水流量検知手段が検知した上記発電機の羽根車の回転数の増加率、上記第1の所定時間の経過後第2の所定時間までに上記吐水流量検知手段が検知したほぼ一定の上記発電機の羽根車の所定回転数、及び、上記便器識別情報設定手段により設定された便器識別情報に基づいて上記電磁弁を閉弁させるタイミングを決定する請求項2記載の自動給水装置。
【請求項5】
上記便器識別情報設定手段は、自動給水装置の本体とは別体に設けられたリモコンである請求項1乃至4の何れか1項に記載の自動給水装置。
【請求項6】
上記制御手段は、更に、上記吐水流量検知手段が検知した情報に基づいて便器に吐水される総吐水量を算出し、上記便器識別情報設定手段は、上記総吐水量を表示する総吐水量表示手段を備えている請求項1乃至5の何れか1項に記載の自動給水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−36642(P2012−36642A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−177790(P2010−177790)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】