説明

自動給送装置、該自動給送装置を備えた記録装置

【課題】 インクジェットプリンタ等の記録装置において、許容範囲を超える記録デューティで被記録材に記録が実行されることに起因した紙ジャムを未然に防止する。
【解決手段】 腰が強い記録紙P1は、ねじりコイルばね79のばね力に抗して切換部材77を押動して符号Bで示した方向へ変位させながら給送経路75を進行することができる。したがって、腰が強い記録紙P1は、給送用ローラ74の回転により、給送経路75を通じてインクジェットプリンタ50の内部へ給送されて記録が実行される。他方、腰が弱い記録紙は、ねじりコイルばね79のばね力に抗して切換部材77を押動することができないため、切換部材77によって排出トレイ78の排出案内面781へ案内され、そのまま給送用ローラ74の回転により排出トレイ78のトレイ部782へ排出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録装置に被記録材を給送するための自動給送装置、該自動給送装置を備えた記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタ等の記録装置において使用される被記録材には、例えば、普通紙、写真用紙等の様々な種類の被記録材がある。このうち、主にデジタル写真プリント等に使用される写真用紙等の被記録材は、比較的厚みがあるとともに腰が強く、表面にコーティング等が施されているためインク等が内部に浸透しにくい構造になっているのが一般的である。そのため、写真用紙等の被記録材は、記録面にドットを多数形成して高詳細で画質の高い記録を実行すべくインク等を記録面に大量に噴射しても、そのインク等によって被記録材が撓んでしまったり変形してしまったりする虞がほとんどない。つまり、写真用紙等の被記録材は、上記構造であることによって、高画質モードによる記録デューティ(記録面の全領域に対するドット形成領域の割合)の高いデジタル写真プリントに好適であるというメリットがある反面、普通紙等の被記録材より高価であるというデメリットがある。
【0003】
他方、主に文書等の記録に使用される普通紙等の被記録材は、比較的厚みがないとともに腰が弱く、表面にコーティング等がほとんど施されていないためインク等が内部に浸透しやすい構造になっているのが一般的である。そのため、普通紙等の被記録材は、写真用紙等の被記録材より安価であるというメリットがある反面、インク等を大量に噴射すると被記録材が撓んでしまったり変形してしまったりするため、高画質モードによる記録デューティの高いデジタル写真プリントに不向きであるというデメリットがある。
【0004】
このようなことから、インクジェットプリンタ等の記録装置においては、記録を実行する被記録材の種類や記録モード等に応じて記録制御の内容を変更する機能を備えたものが公知である。例えば、給送された被記録材の腰を検出可能な機構を設けて被記録材の腰を検出し、腰の弱い被記録材である場合には紙押さえ板で被記録材をプラテンに当接させることによって、いわゆるコックリングによる被記録材の浮き上がりを抑制することが可能なインクジェット記録装置が公知である(例えば、特許文献1を参照)。
【特許文献1】特開2001−341918号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年のインクジェットプリンタ等の記録装置においては、いわゆる写真専用機と呼ばれるデジタル写真プリント機能に特化したものが登場している。このような記録装置は、機能的に写真用紙等の被記録材にしか対応しておらず、普通紙等の被記録材が使用されることは予定していない。つまり、写真専用機においては、常に、写真用紙等の被記録材に最適な高画質モードで記録デューティの高い記録が実行されることになる。そのため、例えば不慣れなユーザが誤って普通紙等の被記録材を使用して記録を実行してしまうと、被記録材の許容範囲を超える記録デューティで記録が実行されることとなる結果、記録装置内部で被記録材に大きな撓みや変形が生じてしまい、いわゆる紙ジャムが高い確率で発生してしまうことになる。
【0006】
また、写真専用機の場合は、特にスタンドアロンでデジタル写真プリントを行う際の良好な操作性を確保するために、カラー液晶表示パネルや多数の操作ボタン類が筐体の上面に配設されているのが一般的である。このような記録装置は、構造上、記録装置の内部にアクセスするための開閉蓋を筐体の上面に設けることができないことが多い。したがって、このような記録装置において紙ジャムが発生したときには、ユーザは、被記録材の給送口又は排出口から紙ジャムした被記録材を手で引っ張り出すしかない。そのため、その紙ジャムの程度や発生位置によっては、紙ジャムした被記録材を引っ張り出す際に、その一部が記録装置内部の手が届かない部分に残留してしまい、もはやユーザの手で取り出すことができない状態になってしまう可能性がある。そうなると、その記録装置は、メーカ修理に出さなければ機能を回復することができない状態になってしまう。
【0007】
本発明は、このような状況に鑑み成されたものであり、その課題は、インクジェットプリンタ等の記録装置において、許容範囲を超える記録デューティで被記録材に記録が実行されることに起因した紙ジャムを未然に防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するため、本発明の第1の態様は、主給送路と、前記主給送路から分岐する副給送路と、被記録材を給送するための給送手段と、前記主給送路と前記副給送路との分岐部分に配設され、前記主給送路の一部を構成する第1変位位置と前記給送手段により給送される被記録材を前記副給送路へ案内する第2変位位置とをとり得るように変位可能に支持される給送路切換部材と、前記給送路切換部材を前記第2変位位置へ付勢する付勢手段と、を備えた自動給送装置である。
【0009】
主給送路と副給送路との分岐部分に変位可能に支持される給送路切換部材は、給送手段により給送される被記録材を副給送路へ案内する第2変位位置へ付勢されている。給送手段により給送される被記録材が写真用紙等の腰が強い被記録材である場合には、その被記録材は、腰が強いため、付勢手段による付勢力に抗して給送路切換部材を第1変位位置へ変位させながら主給送路を進行することができる。したがって、写真用紙等の腰が強い被記録材は、主給送路を通じて給送されることになる。
【0010】
他方、給送手段により給送される被記録材が普通紙等の腰が弱い被記録材である場合には、その被記録材は、腰が弱いため、付勢手段による付勢力に抗して給送路切換部材を第1変位位置へ変位させることができない。したがって、普通紙等の腰が弱い被記録材は、給送路切換部材によって副給送路へ案内され、副給送路を通じて給送されることになる。
【0011】
すなわち、本発明の第1の態様に記載の自動給送装置は、給送される被記録材の腰を利用した被記録材の自動選別機構を備えている。したがって、例えば前記の写真専用機においては、主給送路から給送された被記録材にのみ記録を実行するようにすれば、常に写真用紙等の腰が強い被記録材にのみ記録を実行することができるので、普通紙等の腰が弱い被記録材に高画質モードで記録デューティの高い記録が実行されることを確実に回避することができる。このとき、副給送路へ給送された普通紙等の腰が弱い被記録材は、記録を実行することなくそのまま機外へ排出等されるようにすれば良い。
【0012】
また、例えば二つの記録実行手段が別個独立して記録装置に設けられている場合には、一方の記録実行手段を主給送路から被記録材が給送される高画質モードによるデジタル写真プリント専用とし、他方の記録実行手段を副給送路から被記録材が給送される文書等のテキスト記録又は低画質モードの記録専用とすることも可能になる。このようにしても普通紙等の腰が弱い被記録材に高画質モードで記録デューティの高い記録が実行されることを確実に回避することができる。
【0013】
これにより、本発明の第1の態様に記載の自動給送装置によれば、インクジェットプリンタ等の記録装置において、許容範囲を超える記録デューティで被記録材に記録が実行されることに起因した紙ジャムを未然に防止することができるという作用効果が得られる。
【0014】
本発明の第2の態様は、前述した第1の態様に記載の自動給送装置において、前記副給送路へ案内された被記録材は、前記給送手段により外部へ排出される、ことを特徴とした自動給送装置である。
このような特徴によれば、副給送路へ案内された腰が弱い被記録材を記録装置の手前で外部へ排出することができる。すなわち、腰が弱い普通紙等の被記録材が記録装置へ給送されないようにすることができる。したがって、許容範囲を超える記録デューティで被記録材に記録が実行されることに起因した紙ジャムをより確実に防止することができる。また、副給送路へ案内された被記録材は、給送手段を利用して外部へ排出されるので、副給送路へ案内された被記録材を排出するための手段を別個に設ける必要がない。したがって、本発明に係る自動給送装置をより低コストに実現することができる。
【0015】
本発明の第3の態様は、前述した第2の態様に記載の自動給送装置において、前記給送手段は、駆動力源の回転駆動力が伝達されて回転する給送用ローラを有し、前記副給送路は、前記給送用ローラの外周面に沿って設けられている、ことを特徴とした自動給送装置である。
このように、給送用ローラの外周面に沿って副給送路を設けることによって、副給送路の被記録材を給送用ローラの外周面に当接させることが可能になる。それによって、副給送路に案内された腰が弱い普通紙等の被記録材を、給送用ローラの回転力でそのまま外部へ排出することが可能になる。
【0016】
本発明の第4の態様は、前述した第1〜第3の態様のいずれかに記載の自動給送装置において、前記給送路切換部材は、所定の大きさ以下の被記録材が通過可能な孔部が設けられている、ことを特徴とした自動給送装置である。
【0017】
例えば名刺サイズの被記録材等、比較的小さいサイズの被記録材の場合には、普通紙等の腰が弱い被記録材であっても、高画質モードで記録デューティの高い記録を実行したときに生ずる撓み量や変形量は比較的小さい。つまり、所定の大きさ以下の被記録材は、普通紙等の腰が弱い被記録材であっても、高画質モードで記録デューティの高い記録を実行したときに紙ジャムが生ずる可能性は低いと考えられる。
【0018】
そのため、本発明の第4の態様に記載の自動給送装置は、所定の大きさ以下の被記録材が通過可能な孔部が給送路切換部材に設けられている。それによって、所定の大きさ以下の被記録材は、その腰の強弱にかかわらず、第2変位位置にある給送路切換部材の孔部を通過して主給送路へ進入することができる。すなわち、普通紙等の腰が弱い被記録材については、さらに被記録材の大きさに応じて、主給送路又は副給送路のいずれかに振り分けることができる。したがって、腰が弱い被記録材であっても紙ジャムが生ずる可能性が低い所定の大きさ以下の被記録材については、記録を実行することが可能になる。
【0019】
本発明の第5の態様は、前述した第1〜第4の態様のいずれかに記載の自動給送装置において、少なくとも前記主給送路又は前記副給送路のいずれかに被記録材の検出器が配設されている、ことを特徴とした自動給送装置である。
少なくとも主給送路又は副給送路のいずれかに被記録材の検出器を設けることによって、給送手段により給送される被記録材がどちらの給送路へ給送されているのかを識別することが可能になる。また、給送された被記録材の腰の強弱を間接的に特定することもできる。したがって、被記録材が給送された給送路及びその給送された被記録材の腰の強弱に応じて、適切な給送制御や記録制御を実行することが可能になる。
【0020】
本発明の第6の態様は、前述した第1〜第5の態様のいずれかに記載の自動給送装置と、前記自動給送装置により給送された被記録材に記録を実行する手段と、を備えた記録装置である。
本発明の第6の態様に記載の記録装置によれば、自動給送装置により給送された被記録材に記録を実行する手段を備えた記録装置において、前述した第1〜第5の態様のいずれかに記載の発明による作用効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
<インクジェットプリンタの概略構成>
まず、本発明に係る「記録装置」としてのインクジェットプリンタ50の概略構成について、図1及び図2を参照しながら説明する。
図1は、インクジェットプリンタ50の概略構成を図示した要部側面図であり、図2は、その要部平面図である。
【0023】
本発明に係る「記録装置」としてのインクジェットプリンタ50は、「被記録材」としての記録紙Pをインクジェットプリンタ50の内部へ給送するための自動給送装置70を備えている。また、インクジェットプリンタ50は、プラテン53に支持されている記録紙Pを搬送方向Yへ搬送する手段として、搬送駆動ローラ51及び搬送従動ローラ52を備えている。さらに、インクジェットプリンタ50は、プラテン53に支持されている記録紙Pの記録面にインクを噴射して記録を実行する手段として記録ヘッド62を備えている。さらに、インクジェットプリンタ50は、記録実行後の記録紙Pを搬送方向Yへ搬送し排出する手段として、排出駆動ローラ54及び排出従動ローラ55を備えている。
【0024】
自動給送装置70は、ホッパ71、左エッジガイド72、右エッジガイド73、給送用ローラ74、給送経路75及び分離パッド76を備えている。
【0025】
ホッパ71は、記録紙Pが積重されて載置される。ホッパ71は、給送用ローラ74へ向けて揺動可能に自動給送装置70の基体に軸支されている。左エッジガイド72及び右エッジガイド73は、幅方向X(搬送方向Yと交差する方向)へ摺動可能にホッパ71に支持されており、ホッパ71に載置された記録紙Pのサイズに応じて幅方向Xにおける載置位置を規制する。給送用ローラ74は、自動給送装置70の基体に軸支された給送用ローラ軸741に一体に形成されており、図示していない給送用モータの回転駆動力で給送用ローラ軸741が回転することによって回転する。
【0026】
ホッパ71に載置された記録紙Pは、給送用ローラ74へ向けてホッパ71が揺動することによって、給送用ローラ74の外周面に当接した状態となる。そして、記録紙Pは、給送用ローラ74の回転によって、給送経路75を通じて、搬送駆動ローラ51と搬送従動ローラ52とが当接する部分へ向けて給送される。このとき、公知の分離パッド76によって記録紙Pの重送が防止される。
【0027】
搬送駆動ローラ51は、表面に高摩擦被膜が施されており、図示していない搬送用モータの回転駆動力が伝達されて回転する。搬送従動ローラ52は、従動回転可能に軸支され、図示していないばね等の付勢手段によって、搬送駆動ローラ51の外周面に当接した状態で付勢されている。自動給送装置70により給送された記録紙Pは、搬送駆動ローラ51と搬送従動ローラ52とで挟持され、搬送駆動ローラ51の駆動回転によりプラテン53上を搬送方向Yへ搬送される。
【0028】
記録ヘッド62は、キャリッジ61の底部に配設されている。記録ヘッド62のヘッド面には、インクを噴射するための多数の噴射ノズル(図示せず)が配設されている。キャリッジ61は、記録ヘッド62のヘッド面とプラテン53上の記録紙Pの記録面とが略平行となる状態を維持しつつ幅方向Xへ往復動可能に、キャリッジガイド軸56に支持されている。キャリッジ61は、図示していないキャリッジ駆動用モータの回転軸に配設された駆動プーリ(図示せず)と従動プーリ(図示せず)との間に掛架された無端ベルト(図示せず)が連結されており、キャリッジ駆動用モータの回転駆動力が無端ベルトを介して伝達されて幅方向Xへ往復動する。
【0029】
プラテン53は、記録紙Pの搬送方向Yに沿って形成された多数のプラテンリブを有している。プラテン53上を搬送される記録紙Pは、このプラテンリブの頂面で裏面側から支持される。記録紙Pは、このプラテン53に支持された領域において、記録ヘッド62のヘッド面からのインク噴射により記録面にドットが形成されて記録が実行される。記録ヘッド62のヘッド面と記録紙Pの記録面との間隔は、プラテンリブの頂面によって適正な間隔に規定される。
【0030】
プラテン53上を搬送される記録紙Pは、キャリッジ61が幅方向Xへ往復動しながら記録ヘッド62のヘッド面から記録紙Pの記録面にインクを噴射してドットを形成する動作と、搬送駆動ローラ51の駆動回転により所定の搬送量で搬送方向Yへ搬送する動作とが交互に繰り返されることによって、記録面への記録が実行される。インク噴射後の記録紙Pは、排出駆動ローラ54と排出従動ローラ55とで挟持され、排出駆動ローラ54の駆動回転により搬送方向Yへ搬送されて排出される。これらの一連の記録制御は、マイコン制御回路を有する制御装置(図示せず)により実行される。
【0031】
尚、当該実施例のインクジェットプリンタ50は、いわゆる写真専用機であり、機能的に写真用紙等の記録紙Pにしか対応しておらず、普通紙等の記録紙Pが使用されることは予定していないプリンタである。つまり、インクジェットプリンタ50においては、常に、写真用紙等の記録紙Pに最適な高画質モードで記録デューティの高い記録が実行される。そのため、普通紙等の記録紙Pを給送して記録を実行してしまうと、記録紙Pの許容範囲を超える記録デューティで記録が実行されることとなる結果、インクジェットプリンタ50の内部で記録紙Pに大きな撓みや変形が生じてしまい、いわゆる紙ジャムが高い確率で発生してしまうことになる。
【0032】
<本発明に係る自動給送装置70の構成>
つづいて、本発明に係る自動給送装置70の構成について、図3〜図6を参照しながら説明する。
図3は、本発明に係る自動給送装置70の全体を図示した要部斜視図であり、図4は、その要部平面図である。図5及び図6は、自動給送装置70の給送経路75の近傍を拡大図示した要部斜視図である。
【0033】
本発明に係る自動給送装置70は、前記の構成要素(ホッパ71、左エッジガイド72、右エッジガイド73、給送用ローラ74、給送経路75及び分離パッド76)の他に、切換部材77、排出トレイ78及びねじりコイルばね79を備えている。
【0034】
排出トレイ78は、排出案内面781とトレイ部782とで構成されている。排出案内面781は、「主給送路」としての給送経路75から分岐する「副給送路」を構成する。トレイ部782は、排出案内面781に沿って排出された記録紙Pが積重される。また、排出案内面781の端部には、複数の凹部783が形成されている。
【0035】
「給送路切換部材」としての切換部材77は、幅方向Xに長尺な矩形板形状の部材である。この切換部材77の幅方向Xの長さは、少なくとも当該インクジェットプリンタ50で記録を実行可能な記録紙Pの最大幅(幅方向Xの長さ)以上に設定されている。切換部材77の幅方向Xの両端には、腕部771が延設されている。腕部771の端部には、軸部772が設けられている。切換部材77の先端には、排出案内面781の凹部783と凹凸係合可能な形状及び配置で複数の凸部773が形成されている。また、切換部材77の略中心部分には、孔部774が形成されている。
【0036】
切換部材77は、軸部772を揺動軸として揺動可能に自動給送装置70の基体701に支持されており、給送経路75(主給送路)と排出案内面781(副給送路)との分岐部分で変位する。切換部材77は、軸部772に配設された「付勢手段」としてのねじりコイルばね79のばね力によって、符号Aで示した揺動方向へ付勢されており、給送経路75の上流部751の底部に当接した状態で位置決めされている。この状態においては、上流部751から排出案内面781(副給送路)への一連の案内面が切換部材77を介して構成される(図5)。このとき、切換部材77の凸部773と排出案内面781の凹部783とが凹凸係合することによって、切換部材77と排出案内面781との間の隙間に記録紙Pの先端が進入してしまうことが防止される。他方、切換部材77を符号Bで示した揺動方向へ揺動させた状態においては、上流部751から給送経路75への一連の給送路(主給送路)が切換部材77を介して構成される(図6)。
【0037】
すなわち、切換部材77は、給送経路75(主給送路)の一部を構成する「第1変位位置」(図6に図示した変位位置)と、給送用ローラ74の回転により給送される記録紙Pを排出トレイ78の排出案内面781(副給送路)へ案内する「第2変位位置」(図5に図示した変位位置)とをとり得るように揺動可能に支持されている。そして、切換部材77は、ねじりコイルばね79のばね力で、「第2変位位置」へ付勢されている。
【0038】
また、切換部材77の孔部774は、幅方向Xの寸法が所定の大きさに設定されている。つまり、幅方向Xの寸法が所定の大きさ以下の記録紙Pだけが孔部774を通過することができる。例えば、当該実施例における孔部774の幅方向Xの寸法は、KGサイズの幅方向Xの長さ(約102mm)より小さく、L判サイズの幅方向Xの長さ(約89mm)より大きな寸法に設定されている。それによって、切換部材77の孔部774は、KGサイズの記録紙Pが通過することはできないが、L判サイズの記録紙Pが通過することはできることになる。
【0039】
<本発明に係る自動給送装置70の動作>
つづいて、本発明に係る自動給送装置70の動作について、図7〜図9を参照しながら説明する。
【0040】
図7は、本発明に係る自動給送装置70の要部側断面図であり、写真用紙等の腰が強い記録紙P1を給送している状態を図示したものである。
記録紙P1は、例えば写真用紙等の腰が強いKGサイズの記録紙Pである。記録紙P1は、給送用ローラ74が符号Cで示した回転方向へ回転することによって、給送経路75の上流部751を給送される。このとき、記録紙P1は、腰が強いため、ねじりコイルばね79のばね力に抗して切換部材77を押動して符号Bで示した方向へ変位させながら給送経路75を進行することができる。したがって、腰が強い記録紙P1は、給送用ローラ74の回転により、給送経路75(主給送路)を通じてインクジェットプリンタ50の内部へ給送されて記録が実行される。
【0041】
図8は、本発明に係る自動給送装置70の要部側断面図であり、普通紙等の腰が弱い記録紙P2を給送している状態を図示したものである。
記録紙P2は、例えば普通紙等の腰が弱いKGサイズの記録紙Pである。記録紙P2は、給送用ローラ74が符号Cで示した回転方向へ回転することによって、給送経路75の上流部751を給送される。このとき、記録紙P2は、腰が弱いため、ねじりコイルばね79のばね力に抗して切換部材77を押動することができない。したがって、腰が弱い記録紙P2は、切換部材77によって排出トレイ78の排出案内面781(副給送路)へ案内され、そのまま給送用ローラ74の回転により排出トレイ78のトレイ部782へ排出される。つまり、腰が弱い記録紙P2は、インクジェットプリンタ50の内部へ給送されず、記録が実行されないことになる。
【0042】
図9は、本発明に係る自動給送装置70の要部側断面図であり、所定の大きさ以下の記録紙P3を給送している状態を図示したものである。
記録紙P3は、例えばKGサイズより小さいL判サイズの記録紙Pである。記録紙P3は、給送用ローラ74が符号Cで示した回転方向へ回転することによって、給送経路75の上流部751を給送される。このとき、記録紙P3は、横幅が孔部774の幅方向Xの寸法より小さいため、切換部材77の孔部774を通過して給送経路75へ進入することができる。したがって、記録紙P3は、その腰の強弱にかかわらず、常に、給送経路75を通じてインクジェットプリンタ50の内部へ給送されて記録が実行される。
【0043】
以上説明したように、本発明に係る自動給送装置70は、給送される記録紙Pの腰を利用して、腰の強弱で自動的に記録紙Pを選別して給送することができる。ここで、どの程度の腰の強さを基準として記録紙Pの給送路を切り換えるかは、ねじりコイルばね79のばね力を調整することで自由に設定することができる。そして、腰が強い記録紙P1は、給送経路75を通じてインクジェットプリンタ50の内部へ給送されて記録が実行される。他方、普通紙等の腰が弱い記録紙P2は、インクジェットプリンタ50の内部へ給送されずに排出トレイ78へ排出される。したがって、写真専用機としてのインクジェットプリンタ50において、写真用紙等の腰が強い記録紙P1にのみ記録を実行することができ、普通紙等の腰が弱い記録紙P2に高画質モードで記録デューティの高い記録が実行されることを確実に回避することができる。
【0044】
このようにして、本発明に係る自動給送装置70によれば、インクジェットプリンタ等の記録装置において、許容範囲を超える記録デューティで記録紙Pに記録が実行されることに起因した紙ジャムを未然に防止することができる。
【0045】
また、本発明に係る自動給送装置70において、切換部材77の孔部774は必須の構成要素ではないが、上記実施例のように設けるのが好ましい。それによって、所定の大きさ以下の記録紙P3は、その腰の強弱にかかわらず、インクジェットプリンタ50の内部へ給送されて記録が実行されることになる。したがって、腰が弱い記録紙Pであっても紙ジャムが生ずる可能性が低い所定の大きさ以下の記録紙P3については、記録を実行することが可能になる。
【0046】
さらに、本発明に係る自動給送装置70において、排出トレイ78の排出案内面781は、上記実施例のように給送用ローラ74の外周面に沿って設けるのが好ましい。それによって、給送用ローラ74の回転力で排出案内面781の記録紙Pを排出トレイ78へ排出することが可能になる。さらには、記録紙Pを給送用ローラ74の外周面に押圧する従動ローラ等を排出案内面781に設けても良い。それによって、給送用ローラ74の回転力で、排出案内面781の記録紙Pをより確実に排出トレイ78へ排出することが可能になる。
【0047】
<他の実施例>
本発明に係る自動給送装置70は、上記実施例に加えて、給送経路75(分岐部分より下流側)又は排出案内面781のいずれかに、記録紙Pを検出可能な検出器を設けても良い。あるいは、切換部材77の揺動位置を検出可能な検出器を設けても良い。このような検出器を設けることによって、給送用ローラ74の回転により給送される記録紙Pがどちらの給送路を給送されているのかを識別することが可能になる。また、給送された記録紙Pの腰の強弱を間接的に特定することもできる。したがって、記録紙Pが給送された給送路及びその給送された記録紙Pの腰の強弱に応じて、適切な給送制御や記録制御を実行することが可能になる。例えば、記録紙Pが排出案内面781を通じて排出トレイ78へ排出される場合は、エラー表示をしたり、記録紙Pの再給送を行ったりすることができる。
【0048】
また、本発明に係る自動給送装置70は、二つの記録実行手段を別個独立してインクジェットプリンタ50に設け、給送される記録紙Pを腰の強弱に応じていずれかの記録実行手段へ振り分けることもできる。例えば、インクジェットプリンタ50の一方の記録実行手段を「主給送路」から記録紙Pが給送される高画質モードによるデジタル写真プリント専用とし、他方の記録実行手段を「副給送路」から記録紙Pが給送される文書等のテキスト記録又は低画質モードの記録専用とすることも可能になる。
【0049】
尚、本発明は、上記実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】インクジェットプリンタの概略構成を図示した要部側面図。
【図2】インクジェットプリンタの概略構成を図示した要部平面図。
【図3】本発明に係る自動給送装置の全体を図示した要部斜視図。
【図4】本発明に係る自動給送装置の要部平面図。
【図5】自動給送装置の給送経路の近傍を拡大図示した要部斜視図。
【図6】自動給送装置の給送経路の近傍を拡大図示した要部斜視図。
【図7】本発明に係る自動給送装置の側断面図(腰が強い記録紙を給送)。
【図8】本発明に係る自動給送装置の側断面図(腰が弱い記録紙を給送)。
【図9】本発明に係る自動給送装置の側断面図(所定サイズ以下の記録紙を給送)。
【符号の説明】
【0051】
50 インクジェットプリンタ、51 搬送駆動ローラ、52 搬送従動ローラ、53 プラテン、54 排出駆動ローラ、55 排出従動ローラ、56 キャリッジガイド軸、70 自動給送装置、71 ホッパ、72 左エッジガイド、73 右エッジガイド、74 給送用ローラ、75 給送経路(主給送路)、76 分離パッド、77 切換部材、78 排出トレイ、79 ねじりコイルばね、774 孔部、781 排出案内面(副給送路)、P、P1〜P3 記録紙、X 幅方向、Y 搬送方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主給送路と、
前記主給送路から分岐する副給送路と、
被記録材を給送するための給送手段と、
前記主給送路と前記副給送路との分岐部分に配設され、前記主給送路の一部を構成する第1変位位置と前記給送手段により給送される被記録材を前記副給送路へ案内する第2変位位置とをとり得るように変位可能に支持される給送路切換部材と、
前記給送路切換部材を前記第2変位位置へ付勢する付勢手段と、を備えた自動給送装置。
【請求項2】
請求項1に記載の自動給送装置において、前記副給送路へ案内された被記録材は、前記給送手段により外部へ排出される、ことを特徴とした自動給送装置。
【請求項3】
請求項2に記載の自動給送装置において、前記給送手段は、駆動力源の回転駆動力が伝達されて回転する給送用ローラを有し、
前記副給送路は、前記給送用ローラの外周面に沿って設けられている、ことを特徴とした自動給送装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の自動給送装置において、前記給送路切換部材は、所定の大きさ以下の被記録材が通過可能な孔部が設けられている、ことを特徴とした自動給送装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の自動給送装置において、少なくとも前記主給送路又は前記副給送路のいずれかに被記録材の検出器が配設されている、ことを特徴とした自動給送装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の自動給送装置と、
前記自動給送装置により給送された被記録材に記録を実行する手段と、を備えた記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−6522(P2010−6522A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−166443(P2008−166443)
【出願日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】