説明

自動製パン機

【課題】組み立て時のベルトの張り具合のばらつきに関係なく、パン生地の練り状態を常に一定に保つことができる自動製パン機を提供する。
【解決手段】ヒータ3を有する焼成室2内に着脱自在に装着されるパン焼き型4と、パン焼き型4内に回転自在に設けられた練り羽根7を、ベルト6を介して回転駆動するモータ5と、ヒータ3やモータ5を制御すると共に調理シーケンス等のデータを記憶した制御装置15とを備え、制御装置15に、ベルト6の張り具合の情報を予め記憶させておくもので、ベルト6の張り具合が、強い場合にはパン生地の練りが強すぎ、弱い場合には、パン生地の練りが弱くなるので、制御装置15に記憶されたベルト6の張り具合に応じて、モータ5の駆動時間や、回数などを変えるようにすれば、ベルト6の張り具合のばらつきに関係なく、パン生地の練り状態を常に一定に保つことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般家庭で使用する自動製パン機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の自動製パン機は、季節や時間経過による調理庫内の汚れによる出来映えへの影響をなくし、一定の出来映えを確保するため季節、調理物の種類、保存状態、使用回数等の情報から加熱出力パターンを補正して、常に一定の出来映えを確保するようにしていた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図4は、上記特許文献1に記載された自動製パン機の制御ブロック図である。
【0004】
図4において、従来の自動製パン機は、使用回数判定手段40により、自動製パン機の使用回数の情報から加熱出力パターン補正手段38で補正が加えられ、加熱出力パターン決定手段32により、加熱出力パターンの電力、調理時間を減少させ、使用回数が増えることで調理庫(図示せず)内が汚れ、壁面の反射率が変化し、庫内温度が上がりやすくなるのを防ぎ、使い続けても一定のでき映えになるようにしていた。
【特許文献1】特開2006−174899号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載された従来の自動製パン機は、経年変化の庫内温度を一定の温度に補正するものであり、自動製パン機の調理庫内に配され製パン材料を混練する練り羽根を回転駆動するベルトの張り具合によりパンの出来映えが変わる点については、何ら考慮されていなかった。
【0006】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、自動製パン機のベルトの張り具合の変化によりパンの出来映えが変わる事が無く、常に一定の調理性能を有する自動製パン機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記従来の課題を解決するために、本発明の自動製パン機は、ヒータを有する焼成室と、前記焼成室内に着脱自在に装着されるパン焼き型と、前記パン焼き型内に回転自在に設けられた練り羽根と、ベルトを介して前記練り羽根を回転駆動するモータと、前記焼成室内の温度を検知する温度検知装置と、前記温度検知装置で検知した温度に従って、前記ヒータや前記モータを制御すると共に調理シーケンス等のデータを記憶した制御装置とを備え、前記制御手段に、前記ベルトの張り具合の情報を予め記憶させておくようにしたもので、ベルトの張り具合が強い場合には、モータ駆動のトルクが強くなり、パン生地の練りが強すぎてしまい、また、ベルトの張り具合が弱い場合には、モータ駆動のトルクが弱くなり、パン生地の練りが弱くなってしまうので、制御装置に記憶されたベルトの張り具合に応じて、例えば、モータの駆動時間や、回数などを変えるようにすれば、自動製パン機の組み立て時に生じるベルトの張り具合のばらつきに関係なく、パン生地の練り状態を常に一定に保つことができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の自動製パン機は、組み立て時に生じるベルトの張り具合のばらつきに関係なく、パン生地の練り状態を常に一定に保つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
第1の発明は、ヒータを有する焼成室と、前記焼成室内に着脱自在に装着されるパン焼き型と、前記パン焼き型内に回転自在に設けられた練り羽根と、ベルトを介して前記練り羽根を回転駆動するモータと、前記焼成室内の温度を検知する温度検知装置と、前記温度検知装置で検知した温度に従って、前記ヒータや前記モータを制御すると共に調理シーケンス等のデータを記憶した制御装置とを備え、前記制御手段に、前記ベルトの張り具合の情報を予め記憶させておくようにしたもので、ベルトの張り具合が強い場合には、モータ駆動のトルクが強くなり、パン生地の練りが強すぎてしまい、また、ベルトの張り具合が弱い場合には、モータ駆動のトルクが弱くなり、パン生地の練りが弱くなってしまうので、制御装置に記憶されたベルトの張り具合に応じて、例えば、モータの駆動時間や、回数などを変えるようにすれば、自動製パン機の組み立て時に生じるベルトの張り具合のばらつきに関係なく、パン生地の練り状態を常に一定に保つことができる。
【0010】
第2の発明は、特に、第1の発明の制御手段に記憶されたベルトの張り具合が、強い場合は、モータの断続的な駆動時間を短くし、弱い場合は、前記モータの断続的な駆動時間を長くするようにしたもので、組み立て時のベルトの張り具合のばらつきに関係なく、パン生地の練り状態を常に一定に保つことができる。
【0011】
第3の発明は、特に、第1の発明の制御手段に記憶されたベルトの張り具合が、強い場合は、モータの駆動時間を短くし、弱い場合は、前記モータの駆動時間を長くするようにしたもので、組み立て時のベルトの張り具合のばらつきに関係なく、パン生地の練り状態を常に一定に保つことができる。
【0012】
第4の発明は、特に、第1の発明の制御手段に記憶されたベルトの張り具合が、強い場合は、モータの駆動回数を少なくし、弱い場合は、前記モータの駆動回数を多くするようにしたもので、組み立て時のベルトの張り具合のばらつきに関係なく、パン生地の練り状態を常に一定に保つことができる。
【0013】
第5の発明は、特に、第1〜4のいずれか一つの発明のベルトの張り具合を、練り羽根を回転駆動したときのモータの回転数より検知するようにしたもので、ベルトの張り具合を自動で検知できるようになって、より簡単にベルトの張り具合を記憶させることができる。
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照にしながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0015】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における自動製パン機の概略図、図2は、同自動製パン機による食パンの調理シーケンスを示すものである。
【0016】
図1において、本実施の形態における自動製パン機の自動製パン機本体1は、内部にヒータ3と、着脱自在のパン焼き型4を有する焼成室2を備えている。7は、パン焼き型4の内部に回転自在に設けられパン生地を捏ね上げる練り羽根、5は、ベルト6とプーリー5a、5bを介して練り羽根7を回転させるモータ、8は、焼成室2内の温度を検知するサーミスタなどからなる温度検知装置、9は、モータ5を駆動制御するモータ制御装置、10は、ヒータ3を駆動制御するヒータ制御装置、12は、使用者がメニューコースの選択等を行う際に操作する入力装置で、13は、選択されたメニューコースやでき上がり時刻等を表示する液晶表示(以下LCDと呼ぶ)を搭載した表示装置、14は、I、II、IIIを選択する切り替えスイッチになっていて、ベルト5の張り具合の情報を入力するベルト情報入力装置、15は、温度検知装置8、モータ制御装置9、ヒータ制御装置10、入力装置12で、表示装置13、ベルト情報入力装置14を制御するマイクロコンピュータを搭載した制御装置である。
【0017】
ベルト6の張り具合が強い場合には、モータ5による駆動トルクが強くなり、パン生地の練りが強すぎてしまい、逆に、ベルト6の張り具合が弱い場合には、モータ5による駆動トルクが弱くなり、パン生地の練りが弱くなってしまう。そこで、本実施の形態では、自動製パン機の最終組み立て時に、テンションゲージなどの治具(図示せず)を用いてベルト6の張り具合を測定し、その張り具合が標準であれば、IIを、張り具合が強めであればIを、弱めであればIIIを、それぞれベルト情報入力装置14で選択し、それを制御装置15に記憶させておくようにしている。
【0018】
次に、図2を用いて、本実施の形態における自動製パン機の動作、作用について説明する。
【0019】
最初に、制御装置15に記憶されたベルト6の張り具合が、IIの場合、すなわち、張り具合が標準の場合について、図2(a)を用いて説明する。
【0020】
調理準備として、まず、パン焼き型4内に、パン材料として、強力粉と薄力粉、食塩、砂糖、粉ミルク、ドライイースト、卵、水をセットする。
【0021】
調理がスタートすると、まず、ねかし工程(1)に移行する。ねかし工程(1)では、温度検知装置8が検知した温度が27℃未満の場合には、ヒータ制御装置10を通電率10%で駆動して、ヒータ3に通電する。温度検知装置8の検知温度が27℃以上の場合には、ヒータ制御装置10をオフし、ヒータ3へ通電しない。
【0022】
45分が経過すると、次の練り工程(2)に移行する。練り工程(2)では、モータ制御装置9を駆動して、モータ5を回転させ、ベルト6を介して、練り羽根7を回転することで生地を練り上げる。モータ制御装置9の駆動は、表1に示すようにパターン1の0.1sオン−0.5sオフ100回を行い、続いて、パターン2、3、4、5と順次駆動していく。こうして、15分が経過すると、次の発酵工程(3)に移行する。
【0023】
【表1】

【0024】
発酵工程(3)では、ねかし工程(1)と同様に温度検知装置8の検知温度に応じて、ヒータ制御装置10の制御を行う。40分経過すると、次のガス抜き工程(4)に移行する。ガス抜き工程(4)では、モータ制御装置9を表4に示すパターンで駆動して、1分経過すると、次の発酵工程(5)、ガス抜き工程(6)、成型発酵工程(7)、焼き上げ工程(8)と順次移行して、調理シーケンスが終了する。
【0025】
【表4】

【0026】
そして、ベルト情報入力装置14で、Iが、すなわち、ベルト6の張り具合が強いと設定され、記憶されている場合は、図2(b)の調理シーケンスが実行される。
【0027】
図2(b)の調理シーケンスは、ねかし工程(1)の工程時間が48分と、3分長く設定され、練り工程(2)の工程時間が12分と、逆に3分短く設定されている。また、練り工程(2)のモータ制御装置9の駆動は、表2に示すようにオン時間が短く設定されている。また、ガス抜き工程(4)のモータ制御装置9の駆動は、表5に示すように回数が24回と少なく設定されている。
【0028】
【表2】

【0029】
【表5】

【0030】
このように、ベルト6の張り具合が強い設定の場合には、モータ制御装置9の駆動でより強く生地が練り上げられるので、練り工程においては、モータ制御装置9のオン時間を短くするとともに、練り工程の時間を短くすることで、調理性能を、自動製パン器のばらつきによらず一定の生地状態にすることができる。また、ガス抜き工程のモータ制御装置9の駆動回数を減らすことで、ガス抜き動作においても、ベルト6の張り具合にかかわらず一定の調理性能にすることができる。
【0031】
また、ベルト情報入力装置14の設定がIIIで、ベルトの張り状態が弱い場合には、図2(c)の調理シーケンスが実行される。図2(c)の調理シーケンスは、ねかし工程(1)の工程時間が42分と短く設定され、練り工程(2)の工程時間が18分と長く設定されている。また、練り工程(2)のモータ制御装置9の駆動は、表3に示すようにオン時間が長く設定されている。また、ガス抜き工程(4)のモータ制御装置9の駆動回数は、表6に示すように、36回と多く設定されている。
【0032】
【表3】

【0033】
【表6】

【0034】
このように、ベルト6の張り具合が弱い設定の場合には、モータ制御装置9の駆動でより弱く生地が練り上げられるので、練り工程においては、モータ制御装置9のオン時間を長くするとともに、練り工程の時間を長くすることで、調理性能を製品のばらつきによらず一定の生地状態にすることができる。また、ガス抜き工程のモータ制御装置9の駆動回数を増やすことで、ガス抜き動作においても、ベルト6の張り具合にかかわらず一定の調理性能にすることができる。
【0035】
尚、この実施の形態1での調理シーケンスは、本体構成によって決まるもので、上記数値に限定されるものではない。
【0036】
(実施の形態2)
図3は、本発明の第2の実施の形態における自動製パン機の概略図を示すものである。なお、上記第1の実施の形態と同一の構成部品には同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0037】
本実施の形態では、図3に示すように、モータ5の回転数を検知する回転数検知装置16を設け、自動製パン機の組立完了時に、パン焼き型4内を空の状態にして、モータ5を連続回転させ、その時のモータ5の回転数を回転数検知装置16で検知し、その結果より、ベルト6の張り具合を判断し、それを制御装置に15に記憶させておくものである。
【0038】
例えば、モータ5の連続回転時の回転数が270回/1分より少ない場合には、ベルト6の張り具合が弱いと判断し、回転数が330回/1分より多い場合には、ベルト6の張り具合が強いと判断し、それ以外の回転数のときは、標準と判断し、それを制御装置15に記憶設定しておくことで、実際のベルト6の張り具合にかかわらず、常に調理性能を一定に保つことができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
以上のように、本発明にかかる自動製パン機は、ベルトの張り具合に関係なく常に一定のパン生地の練り状態が得られ、使用勝手の良いもので、自動製パン機に限らず、もちつき機や製麺機など、調理物を、ベルトを介してモータで回転させる各種機器に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施の形態1における自動製パン機の概略図
【図2】(a)同自動製パン機による調理シーケンスを示す図(ベルトの張り具合が標準)(b)同自動製パン機による調理シーケンスを示す図(ベルトの張り具合が強め)(c)同自動製パン機による調理シーケンスを示す図(ベルトの張り具合が弱め)
【図3】本発明の実施の形態2における自動製パン機の概略図
【図4】従来の自動製パン機の制御ブロック図
【符号の説明】
【0041】
1 本体
2 焼成室
3 ヒータ
4 パン焼き型
5 モータ
6 ベルト
7 練り羽根
8 温度検知装置
9 モータ制御装置
10 ヒータ制御装置
12 入力装置
13 表示装置
14 ベルト情報入力装置
15 制御装置
16 回転数検知装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒータを有する焼成室と、前記焼成室内に着脱自在に装着されるパン焼き型と、前記パン焼き型内に回転自在に設けられた練り羽根と、ベルトを介して前記練り羽根を回転駆動するモータと、前記焼成室内の温度を検知する温度検知装置と、前記温度検知装置で検知した温度に従って、前記ヒータや前記モータを制御すると共に調理シーケンス等のデータを記憶した制御装置とを備え、前記制御装置に、前記ベルトの張り具合の情報を予め記憶させておくようにした自動製パン機。
【請求項2】
制御手段に記憶されたベルトの張り具合が、強い場合は、モータの断続的な駆動時間を短くし、弱い場合は、前記モータの断続的な駆動時間を長くするようにした請求項1に記載の自動製パン機。
【請求項3】
制御手段に記憶されたベルトの張り具合が、強い場合は、モータの駆動時間を短くし、弱い場合は、前記モータの駆動時間を長くするようにした請求項1に記載の自動製パン機。
【請求項4】
制御手段に記憶されたベルトの張り具合が、強い場合は、モータの駆動回数を少なくし、弱い場合は、前記モータの駆動回数を多くするようにした請求項1に記載の自動製パン機。
【請求項5】
ベルトの張り具合を、練り羽根を回転駆動したときのモータの回転数より検知するようにした請求項1〜4のいずれか1項に記載の自動製パン機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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