説明

自動調心性単列玉軸受

【課題】 自動調心玉軸受において、単列深溝玉軸受との置換を容易にし、且つ従来の自動調心玉軸受に比べて転がり抵抗を少なくすることで、安定した回転性能を発揮する自動調心性単列玉軸受を提供することである。
【解決手段】 外輪軌道面の円弧形状部21aが軸受の中心と一致した中心を有する円の一部とし、その外輪軌道と内輪軌道との間に複数の玉を単列で均等配置することにより、内輪は外輪に対して所定の範囲で傾斜自在となり、且つ回転トルクを小さくすることが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動調心性単列玉軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一般産業機械の軸受に数多く用いられてきている単列深溝玉軸受は、軸の撓みが発生した場合、両軸心の平行誤差および角度誤差を補償できないため、軸振れや偏荷重による寿命低下等の問題があった。
【0003】
その対策として、図1に断面図で示すような自動調心機能を持つ転がり軸受を用いることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。すなわち、外輪W1の軌道面W11の断面形状が円弧状であり、その曲率中心が軸受中心と一致しているので、内輪W2、玉B、保持器Rは外輪W1に対して多少の傾きが生じても回転することができるというものである。
【0004】
【特許文献1】特開平10−298582号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の自動調心玉軸受は、回転安定性の観点から玉を複列配置しているが、このことにより軸受軌道輪厚さが大となり重量も増加するため、機械設備の小型化が困難であるという問題がある。
【0006】
また、上記理由により単列深溝玉軸受から自動調心玉軸受に置換する場合、単に軸受の交換に止まらず、軸や軸受ケース等の部材までもが交換の対象となるため、コスト増加を来たし、容易に単列深溝玉軸受からの置換が出来ないという問題がある。
【0007】
さらにまた、従来の自動調心玉軸受に置換した場合、玉数が増えることにより転がり抵抗が増し、軸受の回転トルクが大きくなるという問題もある。
【0008】
本発明は、既存の単列深溝玉軸受との置換を容易にし、且つ従来の自動調心玉軸受に比べて転がり抵抗を少なくすることで、安定した回転性能を発揮する自動調心性単列玉軸受を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の問題を解決するため、本発明の自動調心性単列玉軸受は、図2に断面図で示すように、外輪軌道面の円弧形状部21aが軸受の中心と一致した中心を有する円Sの一部とし、その外輪軌道と内輪軌道との間に複数の玉を単列で均等配置することにより、内輪は外輪に対して所定の範囲で傾斜自在となり、且つ回転トルクを小さくすることが可能である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、従来の自動調心玉軸受に比べ、玉を単列に配置することでラジアル負荷に対する耐力は低下するものの軸受の小型化が図られ、単列深溝玉軸受からの置換が容易となり、また、回転トルクを減少させることにより、特にフィルム洗浄装置等の低荷重域の使用条件下で、安定した回転性能を得ることができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照し説明する。
【0012】
図3は、本発明自動調心玉軸受の軸平行断面図(a)およびその外輪の軌道面の拡大図(b)である。図4は本発明品が軸の傾きに対して調心作用している時の軸平行断面図である。
【0013】
自動調心性単列玉軸受1の外輪2の軌道面21の断面形状は軸受の中心と一致した中心を有する円弧部21aと両端の直線部21bで形成されている。外輪2と内輪3の厚さは、置換対象の単列深溝軸受と同一にする。内輪3の軌道面31の断面には円弧状の凹部が形成され、軌道面21、31の間には複数の玉4が単列で周方向に装填されており、且つ保持器5により均等配置されている。
【0014】
玉4の配置が単列であることから玉軸受の小型化が図られ、また、単列深溝玉軸受と置換する場合、従来の複列自動調心玉軸受とは異なり単に軸受の交換のみでよいため、大幅なコスト削減が可能となる。
【0015】
本軸受外輪の断面における円弧形状部21aは、図4おける負荷P1が軸6に作用した時、内輪が外輪に対して傾斜自在となるよう設けられており、両端直線部21bは負荷P1が軸6に作用した時の玉4の脱落防止のために設けられている。この作用により、軸の撓みを吸収し、安定した回転性能を発揮することが可能となる。
【0016】
外輪2、内輪3には通常、軸受鋼もしくはステンレス鋼を、玉4には軸受鋼を、保持器5にはスチールを使用するが、使用環境に応じ外輪2、内輪3にはセラミックスを、玉4にはステンレス鋼やセラミックス、保持器5には固体潤滑複合材料などの材料を適宜用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】従来の自動調心性単列玉軸受の断面図である。
【図2】本発明自動調心性単列玉軸受の外輪軌道面形状と軸受との関係を示す断面図である。
【図3】本発明自動調心性単列玉軸受の一実施形態を示す断面図(a)およびその外輪軌道断面の拡大図(b)である。
【図4】本発明自動調心性単列玉軸受に、軸の撓みが作用した場合の軸平行断面図である。
【符号の説明】
【0018】
1 自動調心性単列玉軸受
2 外輪
21 外輪軌道面
21a その中心が軸受中心と一致した円弧部
21b 直線部
3 内輪
31 内輪軌道面
4 玉
5 保持器
6 軸
P1 ラジアル荷重
W1 外輪
W11 外輪の軌道面
W2 内輪
B 玉
R 保持器
S 軸受の中心と一致した中心を有する円

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸受内輪が外輪に対し所定の範囲で傾斜自在である自動調心玉軸受であって、玉を単列配置することにより、単列深溝玉軸受と互換性を持たせたことを特長とする自動調心性単列玉軸受。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−25331(P2010−25331A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−210159(P2008−210159)
【出願日】平成20年7月22日(2008.7.22)
【出願人】(000238016)冨士ダイス株式会社 (14)
【出願人】(398014045)株式会社南海精工所 (1)
【Fターム(参考)】