説明

自動調整式手摺装置

【課題】手摺の形状等をユーザに適したものに調整するにあたり、その調整の手間を無くすことができる自動調整式手摺装置を提供する。
【解決手段】高さ及び太さが調整可能な手摺20と、手摺20の調整を行なう電動モータ32,41〜43と、手摺20を使用するユーザに携帯され、ユーザを特定する個人識別情報が記憶され、個人識別情報及び嗜好情報を含むユーザ信号を送信可能なスマートキーKと、スマートキーKから送信されたユーザ信号を受信可能な通信機34とを備える。そして、通信機34により受信したユーザ信号に含まれている情報に基づき、制御装置33は電動モータ32,41〜43を駆動させる。これにより、手摺20に近づいたユーザのスマートキーKからユーザ信号が送信され、そのユーザ信号の情報に基づき、手摺20の高さ及び太さが自動で調整される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形状及び位置の少なくとも一方を自動で調整する自動調整式手摺装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、建物内のあらゆる場所に歩行や各種動作を補助するための手摺が設けられるようになってきており、手摺の設置場所の例としては、廊下、階段、玄関土間と玄関フロアとの間の段差、トイレ、浴室、洗面所、ベッド等が挙げられる。また、手摺のユーザとしては、自立歩行可能な下肢障害者又は下肢衰弱者(以下単に下肢弱者と記載する。)、高齢者等が挙げられる。
【0003】
そして、ユーザの使い勝手に応じて手摺の形状や位置を調整可能としたものが特許文献1,2等にて開示されている。例えば、特許文献1記載の手摺は、手摺の太さが調整可能に構成されている。また、特許文献2記載の手摺は、手摺の高さが調整可能に構成されている。
【特許文献1】特開2003−32228号公報
【特許文献2】特開平9−221896号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1,2記載の手摺は、いずれも手動で調整する構造であるため、その調整が手間である。特に、建物内に複数のユーザが居る場合には、ユーザが手摺を使う度に調整することは極めて煩わしく現実的ではない。
【0005】
本発明は、手摺の形状等をユーザに適したものに調整するにあたり、その調整の手間を無くすことができる自動調整式手摺装置を提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために、以下の手段を採用した。
【0007】
すなわち、第1の発明では、形状及び位置の少なくとも一方が調整可能な手摺と、前記手摺の調整を行なうアクチュエータと、前記手摺を使用するユーザに携帯され、ユーザを特定する個人識別情報が記憶され、前記個人識別情報を少なくとも含むユーザ信号を送信可能な携帯型送信機と、前記携帯型送信機から送信された前記ユーザ信号を受信可能な受信機と、前記受信機により受信した前記ユーザ信号に含まれている情報に基づき、前記アクチュエータを駆動させるよう制御する制御装置と、を備えることを特徴とする。
【0008】
これによれば、ユーザが手摺に近づくと、ユーザが携帯している携帯型送信機から送信されるユーザ信号を受信機が受信する。すると、受信したユーザ信号に含まれている情報に基づき、手摺の形状及び位置の少なくとも一方がアクチュエータにより自動で調整されることとなる。したがって、本発明に係る自動調整式手摺装置を用いれば、例えば建物内に複数のユーザが居る場合であっても、各々のユーザが手摺を使用する毎に自動で調整がなされるので、手摺の高さや太さをユーザが調整する手間を無くすことができ、利便性を向上できる。
【0009】
調整される手摺の形状の具体例としては、第2の発明のように、前記手摺の長手方向の形状、前記手摺の断面形状及び前記手摺の太さの少なくとも一つが挙げられる。また、手摺の長手方向の形状とは、図6に例示されるように直線的に延びる手摺の形状が蛇行する形状となるように調整されることが挙げられる。
【0010】
調整される手摺の位置の具体例としては、第3の発明のように、前記手摺の高さ位置、前記手摺の壁面からの水平位置、及び前記手摺の傾斜角度の少なくとも一つが挙げられる。
【0011】
また、第4の発明では、前記手摺は、第1手摺、第2手摺及び第3手摺の少なくとも3つに長手方向に分割されて構成されており、前記第2手摺は、前記第1手摺及び前記第3手摺の間に位置してこれらの手摺とともに使用される使用位置と、前記第1手摺及び前記第3手摺の間から退避した退避位置とに、移動可能であり、前記制御装置は、前記ユーザ信号に含まれている情報に基づき、前記第2手摺の使用有無を判定し、その判定結果に応じて前記使用位置と前記退避位置とに切り換えるよう、前記アクチュエータを駆動させることを特徴とする。
【0012】
これによれば、図1に例示されるように手摺21,23が途切れた部分に第2手摺22が配置される場合に適用すれば、手摺を使用しない健常者が通行する時には退避位置に移動させることにより、健常者にとって広い通行スペースとなるようにできる。また、手摺を使用する下肢弱者が通行する時には使用位置に移動させることにより、下肢弱者にとって途切れのない手摺にでき、利便性に富む。
【0013】
また、第5の発明では、前記個人識別情報に対する前記手摺の調整内容が予め設定されており、受信した前記ユーザ信号に含まれている前記個人識別情報に対応する、予め設定された前記調整内容に基づき、前記制御装置は前記アクチュエータを駆動させることを特徴とする。よって、調整内容を変更するにあたり、個人識別情報に対して予め設定されている手摺の調整内容を変更すればよい。
【0014】
また、第6の発明では、前記ユーザ信号には、前記携帯型送信機に記憶された前記調整内容に関する付加情報が含まれており、前記制御装置は前記付加情報の内容に応じて前記アクチュエータを駆動させることを特徴とする。よって、調整内容を変更するにあたり、付加情報の内容を変更すればよい。
【0015】
また、第7の発明では、前記付加情報には、ユーザの身体特性情報及び嗜好情報の少なくとも一方が含まれていることを特徴とする。これにより、ユーザの身長等の身体特性情報により画一的に調整内容を設定するようにもできるし、同じ身長であってもユーザの嗜好に合わせて調整内容を設定するようにもできる。
【0016】
また、第8の発明では、複数の前記個人識別情報に対して優先順が予め登録されており、前記受信機が複数の前記ユーザ信号を同時に受信して、複数の前記個人識別情報が認識された場合には、前記制御装置は、優先順位の高い個人識別情報に対応する前記ユーザ信号に基づき前記アクチュエータを駆動させることを特徴とする。これによれば、ユーザの優先順にあわせて手摺が自動調整されるので、好適である。優先順位の具体例としては、自立歩行可能な下肢障害者、自立歩行可能な下肢衰弱者、健常者の順が挙げられる。
【0017】
また、第9の発明では、前記受信機が複数の前記ユーザ信号を同時に受信して、複数の前記個人識別情報が認識された場合には、前記制御装置は、各々の前記ユーザ信号に基づく調整量の平均値となるように前記アクチュエータを駆動させることを特徴とする。これによれば、複数ユーザの平均値で手摺が自動調整されるので、好適である。
【0018】
また、第10の発明では、前記手摺をユーザが使用している最中に前記受信機が他の前記ユーザ信号を受信した場合であっても、前記制御装置は、前記アクチュエータの駆動内容を変更させることなく維持させることを特徴とする。これによれば、ユーザが手摺を使用している最中に、他のユーザが手摺に近づいてきたことにより他のユーザに合わせて手摺が再調整されてしまうことを回避でき、使用中のユーザに対して利便性を向上でき、好適である。
【0019】
また、第11の発明では、ユーザ毎の使用実績を記録し、前記使用実績に基づき次回に使用する可能性の高いユーザを推定し、所定時間前記手摺が使用されない場合には、前記制御装置は、前記推定されたユーザに適した調整状態となるように前記アクチュエータを予め駆動させておくことを特徴とする。これによれば、次回に使用するユーザが手摺に近づいてきた時には既にそのユーザに適した調整状態になっているので、手摺が調整される時間を待たずにそのユーザは調整済みの手摺を使用することができ、利便性を向上できる。
【0020】
また、第12の発明のように、携帯型送信機は、スマートキー、携帯電話、ICタグ及びICカードのいずれかであることが望ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を具体化した各実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0022】
[第1の実施形態]
図1は、建物内の通路のレイアウトを示した模式図であり、2つの縦通路11及び横通路12が交差している。本実施形態では、本発明に係る自動調整式手摺装置を、このような通路11,12に設置された手摺20に適用したものである。なお、これらの通路11,12は水平に延びる平坦な通路である。
【0023】
手摺20は、通路11の壁面11aに沿って水平方向に延びる円柱又は円筒形状であり、第1手摺21、第2手摺22及び第3手摺23の3つに長手方向に分割されて構成されている。第2手摺22は、第1手摺21及び第3手摺23の間に位置してこれらの手摺とともに使用される使用位置(図1に示す2点鎖線位置)と、第1手摺21及び第3手摺23の間から上方に退避した退避位置(図1に示す実線位置)とに、上下方向に移動可能となっている。
【0024】
図2は、第2手摺22の構造を示す斜視図であり、第2手摺22の両端には、壁面11aに向けて延びる一対の脚柱22a,22bが備えられている。一方、壁面11aには一対のガイドレール30が取り付けられており、これらのガイドレール30の開口部31に脚柱22a,22bの先端は挿入配置されている。そして、脚柱22a,22bはガイドレール30にスライド移動可能に係合している。
【0025】
そして、壁面11a内部には、図1に示すアクチュエータとしての電動モータ32が設置されており、この電動モータ32の駆動が制御装置33に制御されることにより、第2手摺22の高さ位置は使用位置と退避位置とに切り換え移動する。
【0026】
図3は、第1手摺21、第2手摺22及び第3手摺23の構造を示す断面図であり、各手摺21,22,23の構造は共通であるため、以下、第1手摺21についてのみ説明する。手摺21は、図示しない支柱を介して壁面11aに固定されて支持されている本体部21aを備えている。本体部21aは金属の剛体であり、円筒形状に形成されている。
【0027】
また、手摺21は、本体部21aの外周側に位置する弾性部21bを備えている。弾性部21bは長手方向に延びるスリット21cが形成された略円筒形状である。また、弾性部21bは径方向に弾性変形可能であり、図3(a)は径方向に縮小した状態、図3(b)は径方向に拡大した状態を示している。
【0028】
弾性部21bの内周面には、本体部21aに向けて延びる雄ねじ部21dが回転可能に取り付けられており、雄ねじ部21dは、本体部21aに形成された雌ねじ部21eに締結されている。また、第1〜第3手摺21,22,23のそれぞれには、各雄ねじ部21dを回転させるアクチュエータとしての電動モータ41,42,43が設けられている(図1参照)。
【0029】
そして、図3(a)の状態において、制御装置33の制御により電動モータ41が駆動すると、雄ねじ部21dが回転することにともない弾性部21bの中心が本体部21aの中心から離れる向きに移動することとなり、その結果、図3(b)に示すように弾性部21bは径方向に拡大する。つまり、手摺21の太さが太くなる。このように、制御装置33により電動モータ41,42,43の駆動を制御することで、第1手摺21、第2手摺22及び第3手摺23の太さを調節することができる。
【0030】
自動調整式手摺装置は、手摺20を使用するユーザに携帯されるスマートキーK(携帯型送信機)と、スマートキーKと無線により送受信可能な通信機34(受信機)とを備えて構成されている。スマートキーKが有するEEPROM等の書き換え可能メモリには、ユーザを特定する個人識別情報と、個人識別情報とは別の嗜好情報(付加情報)とが記憶されている。
【0031】
通信機34は、第2手摺22の近傍に設置されており、リクエスト信号を常時出力している。そして、スマートキーKが通信機34との通信可能エリアに進入してリクエスト信号を受信すると、スマートキーKは、個人識別情報及び嗜好情報を含むユーザ信号を通信機34に送信する。そして、通信機34により受信されたユーザ信号は制御装置33に出力される。
【0032】
制御装置33はユーザ信号を受信すると、個人識別情報が予め登録されている識別情報と一致しているか否かを判定することで、そのスマートキーKが予め登録されたキーであるかの認証を行なう。そして、認証がなされれば、ユーザ信号に含まれている付加情報に基づき、第2手摺22を使用するか否かを判定する。つまり、第2手摺22を使用するユーザは、付加情報としてその旨を予めスマートキーKに記憶させておく。そして、第2手摺22を使用すると判定されれば、制御装置33は第2手摺22を使用位置に移動させるように電動モータ32を駆動させる。一方、第2手摺22を使用しないと判定されれば、制御装置33は第2手摺22を退避位置に移動させるように電動モータ32を駆動させる。
【0033】
また、制御装置33は、上記認証がなされた場合には、ユーザ信号に含まれている付加情報に基づき、第1手摺21、第2手摺22及び第3手摺23の太さがユーザに適した太さになるよう、電動モータ41,42,43を駆動させる。つまり、手摺20を使用するユーザは、各手摺21,22,23の好みの太さを、付加情報として予めスマートキーKに記憶させておく。
【0034】
ここで、制御装置33には複数の個人識別情報に対して、自立歩行可能な下肢障害者、自立歩行可能な下肢衰弱者、健常者の順で優先順が予め登録されている。そして、通信機34が複数のユーザ信号を同時に受信して、複数の個人識別情報が認識された場合には、制御装置33は、優先順位の高い個人識別情報に対応するユーザ信号に基づき、第2手摺22の高さ位置及び各手摺21,22,23の太さを自動調整する。これにより、例えば下肢障害者と健常者とが同時に手摺20に近づいた場合であっても、下肢障害者が手摺20を使用することを優先して第2手摺22が使用位置に移動するよう制御されることとなる。
【0035】
また、手摺20をユーザが使用している最中に通信機34が他のユーザ信号を受信した場合であっても、制御装置33は、第2手摺22の高さ位置及び各手摺21,22,23の太さを変更させることなく維持させる。これによれば、ユーザが手摺20を使用している最中に、他のユーザが手摺20に近づいてきたことにより他のユーザに合わせて第2手摺22の高さ位置及び各手摺21,22,23の太さが変更されてしまうことを回避でき、使用中のユーザに対して利便性を向上できる。
【0036】
また、制御装置33は、ユーザ毎の使用実績を記録し、使用実績に基づき次回に使用する可能性の高いユーザを推定し、所定時間手摺20が使用されない場合には、推定されたユーザの嗜好情報に応じた調整状態となるように、第2手摺22の高さ位置及び各手摺21,22,23の太さを予め調整する。これによれば、次回に使用するユーザが手摺20に近づいてきた時には既にそのユーザに適した調整状態になっているので、手摺20が調整される時間を待たずにそのユーザは調整済みの手摺20を使用することができ、利便性を向上できる。
【0037】
以上により、本実施形態によれば、手摺20を使用する旨をスマートキーKに記憶させた下肢弱者等のユーザが手摺20に近づき、スマートキーKが通信機34との通信可能範囲に進入すると、嗜好情報を取得した制御装置33により電動モータ32の駆動が制御され、第2手摺22が使用位置に自動で移動することとなる。また、制御装置33により電動モータ41,42,43の駆動が制御され、第1手摺21、第2手摺22及び第3手摺23の太さが嗜好情報に記憶されたユーザの嗜好に合った太さになるよう、自動で太さが調整される。したがって、本実施形態に係る自動調整式手摺装置を用いれば、各々のユーザが手摺20を使用する毎に、第2手摺22の高さ位置及び各手摺21,22,23の太さが自動で調整されるので、手摺20の高さや太さをユーザが調整する手間を無くすことができ、利便性を向上できる。
【0038】
[第2の実施形態]
本実施形態に係る自動調整式手摺装置は、各手摺21,22,23の断面形状を、ユーザの嗜好に合わせて自動調整するものである。
【0039】
図4は、本実施形態の第1手摺21、第2手摺22及び第3手摺23の構造を示す断面図であり、各手摺21,22,23の構造は共通であるため、以下、第1手摺21についてのみ説明する。なお、図4では図示を省略しているが、本実施形態においても上記各実施形態と同様の制御装置33、通信機34及びスマートキーKを備えている。
【0040】
本実施形態は、上記第1の実施形態の弾性部21bに替えて、上側拡大部211、下側拡大部212、内側拡大部213及び外側拡大部214を備えている。これらの拡大部211〜214は断面円弧形状であり、金属の剛体にて形成されている。
【0041】
上側拡大部211の内周面には、本体部21aに向けて延びる雄ねじ部211aが回転可能に取り付けられており、雄ねじ部211aは、本体部21aに形成された雌ねじ部21eに締結されている。また、下側拡大部212の内周面には、本体部21aに向けて延びる雄ねじ部212aが回転可能に取り付けられており、雄ねじ部212aは、本体部21aに形成された雌ねじ部21fに締結されている。
【0042】
内側拡大部213及び外側拡大部214は、弾性体としてのばね部材215により本体部21aに結合されており、ばね部材215の弾性力により上側拡大部211及び下側拡大部212に押し付けられている。
【0043】
そして、図4(a)に示す状態において、制御装置33により図示しない電動モータを駆動させて雄ねじ部211aを回転させると、上側拡大部211が本体部21aから離れる向きに移動することとなり、その結果、図4(b)に示すように上側拡大部211は径方向上側に拡大する。この時、内側拡大部213及び外側拡大部214は、上側拡大部211により上方に押されて移動する。つまり、手摺21の上側部分の太さが太くなる。
【0044】
また、図4(a)に示す状態において、制御装置33により図示しない電動モータを駆動させて雄ねじ部212aを回転させると、下側拡大部212が本体部21aから離れる向きに移動することとなり、その結果、図4(c)に示すように下側拡大部212は径方向下側に拡大する。この時、内側拡大部213及び外側拡大部214は、下側拡大部212により下方に押されて移動する。つまり、手摺21の下側部分の太さが太くなる。
【0045】
以上により、本実施形態によれば、制御装置33により電動モータの駆動を制御することで、手摺20の太さを調節することができるとともに、手摺20の断面形状を図4(b)、(c)の如く変化させることができる。よって、上側部分を太くした断面形状、及び下側部分を太くした断面形状のいずれを使用するかを、嗜好情報としてスマートキーKに記憶させておけば、ユーザの嗜好に合わせて断面形状を自動で調整することができる。
【0046】
[第3の実施形態]
上記第1の実施形態では、第2手摺22を平行に移動させて高さ位置を調整可能に構成されているのに対し、本実施形態では、図5に示すように、第2手摺22を回転させて回転位置(傾斜角度)を調整可能に構成されている。より具体的には、一対の脚柱22a,22bのうち一方の脚柱22aは壁面に回転可能に取り付けられ、他方の脚柱22bはガイドレール30にスライド移動可能に係合している。
【0047】
なお、本実施形態の場合には、通路11ではなく、トイレ、浴室、洗面所、ベッド等に設置された手摺に用いて好適である。
【0048】
[第4の実施形態]
上記各実施形態では、水平に延びる平坦な通路11に設置された手摺20に本発明を適用しているのに対し、本実施形態では、図6に示すように階段13に設置された手摺50に本発明を適用している。なお、図6では図示を省略しているが、本実施形態においても上記各実施形態と同様の制御装置33、通信機34及びスマートキーKを備えている。
【0049】
図6は手摺50及び階段13を側方から見た模式図であり、この手摺50は長手方向の形状が変更可能である。つまり、図中の実線に示す直線形状と、二点鎖線に示すように上下方向に波打たせた蛇行形状とに変形可能である。そして、手摺50に内蔵された図示しないアクチュエータを駆動させることにより、直線形状と蛇行形状とに変形可能である。
【0050】
以上により、本実施形態によれば、制御装置33によりアクチュエータの駆動を制御することで、手摺50の長手方向の形状を直線形状と蛇行形状とに変化させることができる。よって、いずれの形状を使用するかを嗜好情報としてスマートキーKに記憶させておけば、ユーザの嗜好に合わせて手摺50の長手方向形状を自動で調整することができる。
【0051】
[第5の実施形態]
上記第4の実施形態では、手摺50内部に複数のアクチュエータを内蔵させて手摺50を直線形状と蛇行形状とに変化させているのに対し、本実施形態では、図7に示すように、予め蛇行した形状の手摺51を用いて、手摺51を軸中心J周りに回転させることで、蛇行の向きを変化させている。
【0052】
より具体的に説明すると、図7(a)は手摺51及び階段13を側方から見た模式図であり、図7(b)は(a)のI矢視図である。そして、制御装置33により電動モータ44(アクチュエータ)を駆動させて手摺51を図7(a)(b)の実線位置に回転させると、手摺51は上方視において左右方向に蛇行することとなる。一方、手摺51を図7(a)(b)の二点鎖線位置に回転させると、手摺51は側方視において上下方向に蛇行することとなる。
【0053】
以上により、本実施形態によれば、制御装置33により電動モータ44の駆動を制御することで、手摺51の蛇行向きを変化させることができる。よって、いずれの蛇行向きを使用するかを嗜好情報としてスマートキーKに記憶させておけば、ユーザの嗜好に合わせて手摺51の蛇行向きを自動で調整することができる。
【0054】
[他の実施形態]
本発明は以上説明した実施の形態に限らず、例えば以下に別例として示した形態で実施することもできる。そして、以下に説明する各実施形態の特徴的制御内容及び構成をそれぞれ任意に組み合わせるようにしてもよい。
【0055】
・ユーザ信号に含まれる付加情報として、手摺20,50,51に設けられた発光装置の駆動内容を記憶させるようにしてもよい。例えば、第2手摺22を使用するユーザのユーザ信号を受信した場合には第2手摺22に設けられた発光装置を点滅又は点灯させるようにして好適である。また、第2手摺22が移動中の時には発光装置を点滅させ、使用位置に位置する時には発光装置を点灯させるようにすることが望ましい。
【0056】
・上記実施形態では、制御装置33は、ユーザ毎の使用実績に基づき次回に使用する可能性の高いユーザを推定し、推定されたユーザの嗜好情報に応じた調整状態となるように、手摺20の高さ及び太さを予め調整しているが、この変形例として、予め登録された優先順の最も順位の高いユーザの嗜好情報に応じた調整状態となるように手摺20を予め調整するようにしてもよい。
【0057】
・嗜好情報を登録させるにあたり、建物内の場所、時間帯、用途別のそれぞれに応じて異なる嗜好情報を登録可能にして好適である。
【0058】
・複数のユーザのユーザ信号が受信された場合に、最初に手摺20を使用したユーザのユーザ信号を優先して制御装置33が制御するようにして好適である。最初に手摺20を使用したユーザの判別方法としては、例えば手摺20に最初に触れたユーザを検出する方法、或いは、設定距離以内に最初に近づいたユーザを検出する方法、等が挙げられる。
【0059】
・手摺20,50,51の高さ、太さ、傾斜角度、断面形状を調整することに加え、壁面11aからの水平位置を調整するようにしてもよい。
【0060】
・上記実施形態では、ユーザ信号に含まれる付加情報として嗜好情報を用いているが、ユーザの身長、年齢、障害の種類、有無等の身体的特徴に関する情報を用いるようにしてもよい。
【0061】
・上記実施形態では、優先順位を予め設定登録しているが、手動操作によりその都度優先順位を変更可能に構成してもよい。
【0062】
・少なくとも一人のユーザが手摺20を使用している最中には、他のユーザのユーザ信号を認識した場合であっても手摺20を動かして再調整することを禁止してもよい。なお、手摺20を使用しているか否かは、手摺20に接触しているか否かを検出するセンサを設ければよい。
【0063】
・また、あるユーザが手摺20の使用を終了した後、所定時間(例えば数秒)が経過した場合、或いはそのユーザが所定距離以上離れた場合に、手摺20を動かして再調整することを許可するように構成して好適である。
【0064】
・上記第2手摺22は、通常時には退避位置に移動させるようにしてもよい。すなわち、第2手摺22を使用するユーザがその使用を終了して所定時間(例えば数秒)が経過すると、第2手摺22を自動で退避位置に移動させればよい。
【0065】
・上記実施形態では、ユーザ信号に含まれる付加情報に応じてユーザが自立歩行可能な下肢障害者、下肢衰弱者及び健常者のいずれかであるかを判別しているが、どのユーザが自立歩行可能な下肢障害者、下肢衰弱者及び健常者のいずれであるかを予め制御装置33等に登録しておき、個人識別情報に応じて上記判別を行なうようにしてもよい。換言すれば、ユーザの付加情報を、スマートキーKに記憶させてもよいし、スマートキーKの外部(例えば制御装置33)に記憶させてもよい。
【0066】
・上記実施形態では、携帯型送信機としてスマートキーを採用しているが、携帯電話、ICタグ又はICカードを採用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の第1の実施形態に関し、自動調整式手摺装置が通路に適用されている状態を示す模式図。
【図2】図1に記載の第2手摺の構造を示す斜視図。
【図3】図1に記載の第1手摺の構造を示す断面図。
【図4】本発明の第2の実施形態に関し、第1手摺の構造を示す断面図。
【図5】本発明の第3の実施形態に関し、第2手摺の構造を示す斜視図。
【図6】本発明の第4の実施形態に関し、手摺及び階段を側方から見た模式図。
【図7】本発明の第5の実施形態に関し、(a)手摺及び階段を側方から見た模式図、(b)は(a)のI矢視図。
【符号の説明】
【0068】
20,50,51…手摺、32,41,42,43,44…電動モータ(アクチュエータ)、K…スマートキー(携帯型送信機)、33…制御装置、34…通信機(受信機)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
形状及び位置の少なくとも一方が調整可能な手摺と、
前記手摺の調整を行なうアクチュエータと、
前記手摺を使用するユーザに携帯され、ユーザを特定する個人識別情報が記憶され、前記個人識別情報を少なくとも含むユーザ信号を送信可能な携帯型送信機と、
前記携帯型送信機から送信された前記ユーザ信号を受信可能な受信機と、
前記受信機により受信した前記ユーザ信号に含まれている情報に基づき、前記アクチュエータを駆動させるよう制御する制御装置と、
を備えることを特徴とする自動調整式手摺装置。
【請求項2】
調整される前記手摺の形状とは、前記手摺の長手方向の形状、前記手摺の断面形状及び前記手摺の太さの少なくとも一つであることを特徴とする請求項1に記載の自動調整式手摺装置。
【請求項3】
調整される前記手摺の位置とは、前記手摺の高さ位置、前記手摺の壁面からの水平位置、及び前記手摺の傾斜角度の少なくとも一つであることを特徴とする請求項1又は2に記載の自動調整式手摺装置。
【請求項4】
前記手摺は、第1手摺、第2手摺及び第3手摺の少なくとも3つに長手方向に分割されて構成されており、
前記第2手摺は、前記第1手摺及び前記第3手摺の間に位置してこれらの手摺とともに使用される使用位置と、前記第1手摺及び前記第3手摺の間から退避した退避位置とに、移動可能であり、
前記制御装置は、前記ユーザ信号に含まれている情報に基づき、前記第2手摺の使用有無を判定し、その判定結果に応じて前記使用位置と前記退避位置とに切り換えるよう、前記アクチュエータを駆動させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の自動調整式手摺装置。
【請求項5】
前記個人識別情報に対する前記手摺の調整内容が予め設定されており、
受信した前記ユーザ信号に含まれている前記個人識別情報に対応する、予め設定された前記調整内容に基づき、前記制御装置は前記アクチュエータを駆動させることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の自動調整式手摺装置。
【請求項6】
前記ユーザ信号には、前記携帯型送信機に記憶された前記調整内容に関する付加情報が含まれており、
前記制御装置は前記付加情報の内容に応じて前記アクチュエータを駆動させることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の自動調整式手摺装置。
【請求項7】
前記付加情報には、ユーザの身体特性情報及び嗜好情報の少なくとも一方が含まれていることを特徴とする請求項6に記載の自動調整式手摺装置。
【請求項8】
複数の前記個人識別情報に対して優先順が予め登録されており、
前記受信機が複数の前記ユーザ信号を同時に受信して、複数の前記個人識別情報が認識された場合には、前記制御装置は、優先順位の高い個人識別情報に対応する前記ユーザ信号に基づき前記アクチュエータを駆動させることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の自動調整式手摺装置。
【請求項9】
前記受信機が複数の前記ユーザ信号を同時に受信して、複数の前記個人識別情報が認識された場合には、前記制御装置は、各々の前記ユーザ信号に基づく調整量の平均値となるように前記アクチュエータを駆動させることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の自動調整式手摺装置。
【請求項10】
前記手摺をユーザが使用している最中に前記受信機が他の前記ユーザ信号を受信した場合であっても、前記制御装置は、前記アクチュエータの駆動内容を変更させることなく維持させることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の自動調整式手摺装置。
【請求項11】
ユーザ毎の使用実績を記録し、
前記使用実績に基づき次回に使用する可能性の高いユーザを推定し、
所定時間前記手摺が使用されない場合には、前記制御装置は、前記推定されたユーザに適した調整状態となるように前記アクチュエータを予め駆動させておくことを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の自動調整式手摺装置。
【請求項12】
前記携帯型送信機は、スマートキー、携帯電話、ICタグ及びICカードのいずれかであることを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載の自動調整式手摺装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−261148(P2008−261148A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−104480(P2007−104480)
【出願日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】