説明

自動販売機の粉末原料の供給装置

【課題】 粉末原料の圧縮を防止し、それにより、微量の粉末原料を安定して精度良く供給することができる自動販売機の粉末原料の供給装置を提供する。
【解決手段】 吐出部6を有する容器2と、回転軸11と、その外周面上に、長さ方向に沿って設けられた螺旋状のオーガ12と、を有し、一端部が吐出部6に挿入された回転自在のオーガスクリュー3と、これを回転させる駆動機構4と、を備え、オーガ12は、吐出部6から遠い部分に設けられ、オーガスクリュー3の回転に伴い、所定量よりも大きな量の粉末原料を吐出部6側に搬送する第1オーガ部12aと、吐出部6に近い部分に設けられ、オーガスクリュー3の回転に伴い、所定量の粉末原料を、吐出部6側に搬送するとともに、吐出部6を介して供給する第2オーガ部12bと、第1オーガ部12aと第2オーガ部12bの間に配置された切欠部13と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カップ式飲料を販売する自動販売機の粉末原料の供給装置に関し、特に、微量の粉末原料を供給する自動販売機の粉末原料の供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の粉末原料の供給装置として、特許文献1に開示されたものが知られている。図4に示すように、この供給装置51は、粉末原料(図示せず)を収容する容器52と、容器52の前面下端部に、前方に突出するように形成された円筒状の吐出部53と、この吐出部53に着脱自在に嵌め込まれた円筒状のアダプタ54と、容器52内の底部に設けられ、粉末原料を吐出部53側に搬送するための回転自在のオーガスクリュー55と、このオーガスクリュー55を回転させるためのモータ56を備えている。
【0003】
オーガスクリュー55は、前後方向に延びる回転軸57と、その外周面の全体に、所定のピッチで連続的に設けられた螺旋状のオーガ58で構成されている。このオーガ58は、回転軸57の後部に設けられた第1オーガ部58aと、この第1オーガ部58aに連続し、回転軸57の前部に設けられた第2オーガ部58bで構成されている。第1オーガ部58aの径は、第2オーガ部58bよりも大きい。オーガスクリュー55の前端部はアダプタ54に挿入されており、第2オーガ部58bがアダプタ54の内周面に隙間なく嵌合している。また、容器52内には、第1オーガ部58aに噛み合う第1歯車59と、この第1歯車59に噛み合う第2歯車60が配置されている。
【0004】
この供給装置51では、購入者によって飲料が選択されると、販売信号に基づいてモータ56が駆動され、これに伴い、オーガスクリュー55が所定の角度、回転する。このオーガスクリュー55の回転によって、オーガスクリュー55の後部では、第1オーガ部58aによって粉末原料が前方に搬送され、一方、オーガスクリュー55の前部では、第2オーガ部58bによって、第1オーガ部58aよりも少ない所定量の粉末原料が、前方に搬送されるとともに、アダプタ54とオーガスクリュー55の前端部との間に形成された隙間を介して、吐出部53から飲料用のカップ(図示せず)に供給される。このように、より多量の粉末原料を供給するための容器52の吐出部53に、吐出部53よりも小さな内径を有するアダプタ54を取り付けることによって、オーガスクリュー55の同じ回転角度によって、微量の所定量の粉末原料を供給することができる。また、オーガスクリュー55の回転に伴い、第1歯車59および第2歯車60が回転することによって、容器52内の粉末原料が攪拌される。
【0005】
この供給装置1のオーガスクリュー55では、吐出部53から遠い第1オーガ部58aによる粉末原料の搬送量が、吐出部53に近い第2オーガ部58bによる粉末原料の搬送量よりも大きい。このため、第1オーガ部58aとの境界付近の第2オーガ部58bにおいて、粉末原料が圧縮される。その結果、飲料の販売回数が進むにつれて、粉末原料の密度が次第に増大することによって、粉末原料の供給量が所定量よりも多くなり、粉末原料を精度良く供給することができなくなる。また、粉末原料の密度の増大に伴って、モータ56の負荷が増大するとともに、それが極端な場合には、モータ56でオーガスクリュー55を駆動できなくなり、粉末原料の供給が不可能になってしまう。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、容器内における粉末原料の圧縮を防止し、それにより、微量の粉末原料を安定して精度良く供給することができる自動販売機の粉末原料の供給装置を提供することを目的とする。
【0007】
【特許文献1】特開2000−99821号公報
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するため、請求項1に係る発明は、粉末原料を所定量ずつ供給する自動販売機の粉末原料の供給装置であって、吐出部を有し、粉末原料を収容する容器と、容器内に設けられ、水平に延びる回転軸と、その外周面上に、回転軸の長さ方向に沿って一体に設けられた螺旋状のオーガと、を有し、一端部が吐出部に挿入された回転自在のオーガスクリューと、粉末原料の供給時に、オーガスクリューを所定の角度、回転させる駆動機構と、を備え、オーガは、オーガスクリューの吐出部から遠い部分に設けられ、オーガスクリューの回転に伴い、所定量よりも大きな量の粉末原料を吐出部側に搬送する第1オーガ部と、オーガスクリューの吐出部に近い部分に設けられ、オーガスクリューの回転に伴い、所定量の粉末原料を、吐出部側に搬送するとともに、吐出部を介して吐出し、供給する第2オーガ部と、第1オーガ部と第2オーガ部の間に配置され、第1オーガ部および第2オーガ部がいずれも設けられていない切欠部と、を有していることを特徴とする。
【0009】
この自動販売機の粉末原料の供給装置によれば、容器に収容された粉末原料の供給時に、駆動機構による駆動によってオーガスクリューが所定の角度、回転する。この回転に伴い、オーガスクリューの吐出部から遠い部分では、第1オーガ部によって、所定量よりも大きな量の粉末原料が吐出部側に押し出され、搬送される。一方、オーガスクリューの吐出部に近い部分では、第2オーガ部によって、所定量の粉末原料が、吐出部側に押し出され、搬送されるとともに、オーガスクリューの一端部と吐出部との間に形成された隙間を介して、吐出部から吐出され、供給される。
【0010】
本発明では、オーガスクリューの第1オーガ部と第2オーガ部との間に切欠部が設けられていて、この切欠部では、粉末原料の強制的な押し出し作用が行われないので、第1オーガ部から搬送された粉末原料の一部をオーガスクリューの径方向に逃がすことができる。その結果、切欠部付近での粉末原料の圧縮を防止でき、飲料の販売回数が進んだ場合でも、粉末原料の密度が増大するのを防止できるので、粉末原料の供給量を一定に保つことができ、微量の粉末原料を安定して精度良く供給することができる。
【0011】
また、粉末原料の密度の増大を防止することによって、駆動機構の負荷の増大を防止できるとともに、オーガスクリューを安定して良好に駆動することができる。
【0012】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の自動販売機の粉末原料の供給装置において、吐出部に着脱自在に嵌め込まれ、オーガスクリューの一端部が挿入される筒状のアダプタをさらに備えていることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、容器の吐出部にアダプタを取り付けるだけで、より少ない所望の量の粉末原料を供給することができる。このように、既存の容器をそのまま使用することができ、それにより、製造コストを削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照しながら、詳細に説明する。図1および図2は、本発明を適用した、カップ式飲料を販売する自動販売機の粉末原料の供給装置を示している。両図に示すように、この供給装置1は、粉末原料(図示せず)を収容する容器2と、容器2内に設けられ、粉末原料を搬送するための回転自在のオーガスクリュー3と、オーガスクリュー3を回転させるためのモータ4(駆動機構)などを備えている。
【0015】
容器2は、原料搬送部2aと、原料搬送部2aの上側にフック2c,2cを介して着脱自在に取り付けられ、上下方向に延びる本体部2bで構成されており、全体として、上下方向に長く、左右方向(図1(a)の左右方向)の幅が狭い箱状に形成されている。本体部2bの上面は、前下がりに傾斜しており、蓋5で覆われている。この蓋5は、後端部において、軸5aを介して本体部2bに回動自在に取り付けられており、蓋5を開いた状態で、粉末原料が容器2に投入される。図2に示すように、原料搬送部2aの前面は、後ろ下がりに傾斜しており、上端部よりも後ろ側に位置する前面の下端部に、前方に突出する円筒状の吐出部6が設けられている。この吐出部6には、アダプタ7が着脱自在に取り付けられている。
【0016】
アダプタ7は、前後方向に延びる円筒状の本体部7aと、本体部7aの上部の後端部に設けられた突起7bと、本体部7aの下部の後端部から後方に延びる延出部7cで構成されている。このアダプタ7は、その本体部7aが吐出部6にぴったり嵌め込まれた状態で、吐出部6に着脱自在に取り付けられている。突起7bは、本体部7aを吐出部6に嵌め込んだ際に、吐出部6の上部の後端部に係合し、アダプタ7を前後方向に位置決めする役割を果たす。また、吐出部6の前面とアダプタ7の前面が面一になっている。さらに、吐出部6の先端部には、吐出された粉末原料を下方に導くための屈曲した管8が取り付けられている(図1参照)。
【0017】
オーガスクリュー3は、原料搬送部2a内の底部に設けられており、前後方向に水平に延びる回転軸11と、その外周面上に、回転軸11の長さ方向に沿って一体に設けられた螺旋状のオーガ12で構成されている。オーガ12は、オーガスクリュー3の中央部から後部にわたって設けられた第1オーガ部12aと、オーガスクリュー3の前部に設けられた第2オーガ部12bを有している。第1オーガ部12aのピッチは、第2オーガ部12bと同じで、径は、第2オーガ部12bよりも大きい。また、第1オーガ部12aと第2オーガ部12bの間には、切欠部13が設けられている。具体的には、この切欠部13では、回転軸11の外周面に、第1および第2オーガ部12a,12bがいずれも設けられておらず、両オーガ部12a,12bが、約360度分、切り欠かれている。
【0018】
オーガスクリュー3の前端部は、アダプタ7に挿入されており、第2オーガ部12bが、アダプタ7の本体部7aの内周面に隙間なく嵌合するとともに、延出部7cに接している。さらに、第1オーガ部12aの前端部は、アダプタ7の延出部7cのすぐ後ろ側に位置しており、また、オーガスクリュー3の前面とアダプタ7の前面は面一になっている。
【0019】
モータ4は、容器2の下端部の後方に配置され、オーガスクリュー3の後端部に軸4aを介して連結されており、販売時に、制御部(図示せず)からの販売信号によって、所定の方向に所定の角度、回転する。
【0020】
オーガスクリュー3の第1オーガ部12aの上方には、第1歯車14が設けられている。この第1歯車14は、軸14aを介して、原料搬送部2aに回転自在に取り付けられるとともに、第1オーガ部12aに噛み合っている。第1歯車14の斜め上方前側には、第2歯車15が設けられている。この第2歯車15は、軸15aを介して、原料搬送部2aに回転自在に取り付けられるとともに、第1歯車14に噛み合っている。
【0021】
以上の構成の供給装置1では、購入者によって飲料が選択されると、制御部からの販売信号によりモータ4が駆動されることによって、オーガスクリュー3が所定の方向に所定の角度、回転する。この回転に伴い、オーガスクリュー3の後部では、第1オーガ部12aによって、供給すべき所定量(例えば1〜2g)よりも大きな量の粉末原料が前方に押し出され、搬送される。一方、オーガスクリュー3の前部では、第2オーガ部12bによって、所定量の粉末原料が前方に押し出され、搬送される。この所定量の粉末原料は、オーガスクリュー3の前端部とアダプタ7の本体部7aとの間に形成された隙間を介して、吐出部6から管8を介して吐出され、カップ(図示せず)に供給される。また、オーガスクリュー3の回転に伴い、これと順に噛み合う第1歯車14および第2歯車15が回転することによって、容器2内の粉末原料が攪拌される。
【0022】
本実施形態によれば、オーガスクリュー3の第1オーガ部12aと第2オーガ部12bとの間に切欠部13が設けられていて、この切欠部13では、粉末原料の強制的な押し出し作用が行われないので、第1オーガ部12aから搬送された粉末原料の一部をオーガスクリュー3の径方向(主として上方)に逃がすことができる。その結果、切欠部13付近での粉末原料の圧縮を防止でき、飲料の販売回数が進んだ場合でも、粉末原料の密度が増大するのを防止できるので、粉末原料の供給量を一定に保つことができ、微量の粉末原料を安定して精度良く供給することができる。また、粉末原料の密度の増大を防止することによって、モータ4の負荷の増大を防止できるとともに、オーガスクリュー3を安定して良好に駆動することができる。
【0023】
図3は、粉末原料の供給回数と1回あたりの供給量との関係を、実施形態の供給装置1と従来の供給装置について示している。この従来の供給装置は、オーガスクリューの第1オーガ部と第2オーガ部が互いに連続した、前述したタイプのものである。同図から明らかなように、従来の装置では、飲料の販売回数が進むにつれて、粉末原料の供給量が次第に増大している。これは、前述したように、第1オーガ部との境界付近の第2オーガ部で粉末原料が圧縮され、その密度が増大するためである。これに対して、実施形態の供給装置1では、飲料の販売回数が進んだ場合でも、粉末原料の供給量は増大せず、ほぼ一定に保たれている。すなわち、オーガスクリュー3の第1オーガ部12aと第2オーガ部12bとの間に切欠部13を設けたことにより、前述した効果が得られることが確認された。
【0024】
また、容器2の吐出部6に、アダプタ7を取り付けるだけで、より少ない所定量の粉末原料を供給することができる。したがって、既存の容器2を使用することができ、それにより、製造コストを削減することができる。
【0025】
なお、本発明は、説明した実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、本実施形態では、より多量の粉末原料を供給するための吐出部6を有する既存の容器2にアダプタ7を取り付けることにより、より少ない微量の粉末原料を供給するようにしているが、アダプタ7を用いずに、アダプタ7と同じ内径の吐出部を有する容器を用いてもよい。その他、本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜、変更することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の供給装置の(a)正面図および(b)側面図である。
【図2】供給装置の要部を示す側断面図である。
【図3】粉末原料の供給回数と1回あたりの供給量との関係を、実施形態の供給装置と従来の供給装置について示すグラフである。
【図4】従来の供給装置を示す側断面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 供給装置
2 容器
3 オーガスクリュー
4 モータ(駆動機構)
6 吐出部
7 アダプタ
11 回転軸
12 オーガ
12a 第1オーガ部
12b 第2オーガ部
13 切欠部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末原料を所定量ずつ供給する自動販売機の粉末原料の供給装置であって、
吐出部を有し、前記粉末原料を収容する容器と、
当該容器内に設けられ、水平に延びる回転軸と、その外周面上に、前記回転軸の長さ方向に沿って一体に設けられた螺旋状のオーガと、を有し、一端部が前記吐出部に挿入された回転自在のオーガスクリューと、
前記粉末原料の供給時に、前記オーガスクリューを所定の角度、回転させる駆動機構と、を備え、
前記オーガは、
前記オーガスクリューの前記吐出部から遠い部分に設けられ、前記オーガスクリューの回転に伴い、前記所定量よりも大きな量の粉末原料を前記吐出部側に搬送する第1オーガ部と、
前記オーガスクリューの前記吐出部に近い部分に設けられ、前記オーガスクリューの回転に伴い、前記所定量の粉末原料を、前記吐出部側に搬送するとともに、前記吐出部を介して吐出し、供給する第2オーガ部と、
前記第1オーガ部と前記第2オーガ部の間に配置され、前記第1オーガ部および第2オーガ部がいずれも設けられていない切欠部と、
を有していることを特徴とする自動販売機の粉末原料の供給装置。
【請求項2】
前記吐出部に着脱自在に嵌め込まれ、前記オーガスクリューの一端部が挿入される筒状のアダプタをさらに備えていることを特徴とする、請求項1に記載の自動販売機の粉末原料の供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−115158(P2007−115158A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−308205(P2005−308205)
【出願日】平成17年10月24日(2005.10.24)
【出願人】(000237710)富士電機リテイルシステムズ株式会社 (1,851)
【Fターム(参考)】