説明

自動貫入試験機

【課題】試験荷重変更時、慣性の影響による荷重変動を小さくして、フィードバックにより荷重制御を安定して実現可能な自動貫入試験機を提供する。
【解決手段】
上記課題に鑑みて提供された自動貫入試験機1は、貫入ロッド4と、立設された支柱に沿って昇降可能な昇降台3と、この昇降台3に設けられ、貫入ロッド4を保持するチャック5と、この昇降台3を昇降操作するように設けられる昇降用モータと、貫入ロッド3の先端にかかる荷重を検出するロードセル22と、前記昇降用モータ8の出力トルクを調整して試験荷重を負荷する制御装置10とを備え、この制御装置10が、昇降用モータ10の出力トルクを徐々に増加して目標の試験荷重を負荷するとともに、ロードセル22による検出値をフィードバックしながら昇降用モータ8の出力トルクを必要に応じて補正して目標の試験荷重を負荷する構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤の事前調査として地盤の硬軟を判定するのに利用する自動貫入試験機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、地盤の硬軟を判定する試験の一例として非特許文献1に示すスウェーデン式サウンディング試験方法が知られている。この試験方法では、先端にスクリューポイントを備える貫入ロッドを地面に垂直に突き立て、この状態で貫入ロッドの後端に錘を載せる。そして、50N,150N,250N,500N,750N,1KNの6段階で荷重を加えて荷重のみで所謂自沈貫入を行う荷重段階と、最大荷重1KNにおいてもロッドが貫入しない場合に、その荷重下でロッドないしスクリューポイントを回転させて所謂回転貫入を行う回転段階との2段階で構成される。
【0003】
そこで、前述の試験を自動で行う自動貫入試験機としては、特許文献1に示すものがある。この自動貫入試験機は、立設された支柱に沿って昇降可能な昇降台と、この昇降台に設けられ、貫入ロッドを支持するチャックと、前記昇降台を昇降操作する昇降用駆動手段とから構成されている。また、前記昇降台にはパウダブレーキが設けてある。このパウダブレーキの制動力によって昇降台にかかる荷重を調整し、貫入ロッドに段階的に試験荷重を負荷するように構成されている。
【0004】
また、前記チャックの外周には荷重検出手段として歪みゲージが貼付けられており、貫入ロッドにかかる実荷重を検出するように構成されている。この検出信号をフィードバックしながら、パウダーブレーキの制動力を調整して貫入ロッドに試験荷重を負荷するように構成されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】日本工業規格A1221(スウェーデン式サウンディング試験方法)
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−95931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記自動貫入試験機においては、目標の試験荷重を負荷すべく、これに対応するパウダーブレーキの制動力を急激に増加すると、慣性の影響により衝撃荷重が発生する。これでは、フィードバックに荷重制御が安定せず、適正に試験荷重を負荷することができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の自動貫入試験機は、上記課題に鑑みて創成されたものであり、地中に貫入する貫入ロッドと、立設された支柱に沿って昇降可能な昇降台と、この昇降台に設けられ、貫入ロッドを保持する保持手段と、この昇降台を昇降操作するように設けられる昇降用駆動手段と、前記貫入ロッドの先端にかかる荷重を検出する荷重検出手段と、前記昇降用駆動手段の出力トルクを調整して試験荷重を負荷する制御手段とを備える自動貫入試験機において、前記制御手段が、昇降用駆動手段の出力トルクを徐々に増加して目標の試験荷重を負荷するとともに、前記荷重検出手段による検出値をフィードバックしながら昇降用駆動手段の出力トルクを必要に応じて補正して目標の試験荷重を負荷する構成である。
【0009】
また、前記制御手段が、昇降用駆動手段の出力トルクをサインカーブ軌跡となるように増加して目標の試験荷重を負荷する構成であることが望ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の自動貫入試験機によれば、昇降用駆動手段の出力トルクを急激に増加させて試験荷重を負荷するのではなく、徐々に出力トルクを増加させて目標の試験荷重に近づけるよう荷重指令が発せられる。このように昇降用モータを制御すれば、慣性の影響による急激な荷重増加(衝撃荷重の発生)が低減されることになり、フィードバックによる荷重制御を安定して行うことができる。
【0011】
また、昇降用駆動手段の出力トルクをサインカーブ軌跡となるように増加して試験荷重を負荷するように制御手段が構成されている。この構成により、荷重の変動が小さくなり、前述した衝撃荷重の発生が特に低減されるから、益々安定したフィードバックによる荷重制御を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の自動貫入試験機の斜視図である。
【図2】本発明の自動貫入試験機の側面図である。
【図3】図2のA−A線拡大断面図である。
【図4】本発明の自動貫入試験機のチャック部分の拡大断面図である。
【図5】本発明の自動貫入試験機の動作状態を示す図である。
【図6】本発明の自動貫入試験機の昇降用モータの駆動制御パターンを時系列的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1において、1は自動貫入試験機であり、支柱2に沿って昇降可能な昇降台3を有している。この昇降台3には、所定重量の錘3aと、チャック用モータ6と、ロッド4aの先端にスクリューポイント4bを備える貫入ロッド4と、この貫入ロッド4の保持手段の一例であってこのチャック用モータ6の駆動を受けて回転可能なチャック5と、昇降台3を昇降操作させるための昇降用駆動手段の一例である昇降用モータ8とが載荷されている。
【0014】
また、この昇降台3は、図2に示すように、支柱2に沿って垂直に配された案内チェーン2aに沿って回転するスプロケット7を有し、このスプロケット7が案内チェーン2aに沿って回転することで昇降するように構成されている。この昇降台3および昇降台3に載荷された前述の総重量により、前記貫入ロッド4には1KNの荷重が負荷できるように構成されている。
【0015】
図3に示すように、前記スプロケット7は、遊星歯車機構11を介して伝達軸12と一体に回転するように連結されている。また、前記昇降用モータ8の正逆転可能な駆動軸8aには、駆動歯車13、中間歯車14および伝達歯車15が当該昇降用モータ8の駆動に伴い回転自在に設けられている。そして、これら歯車列および一方向クラッチ16を介して前記伝達軸12が連結されている。具体的には、前記伝達歯車15は、円柱を成し、その周面に外歯を備える構成である。そして、この伝達歯車15の内部には、一方向クラッチ16が当該伝達歯車15と一体に回転するよう圧入されるとともに、伝達軸12に回転自在に支持されている。この一方向クラッチ16の作用によって、スプロケット7には、昇降台3を上昇させる方向にのみ昇降用モータ8の駆動が伝達されるように構成されている。
【0016】
前記伝達軸12の先端には、ロータリエンコーダ17が設けてあり、スプロケット7の回転に伴うパルス信号を出力できるように構成されている。そして、詳細を後述する制御装置10が当該ロータリエンコーダ17の発するパルス信号を処理し、貫入ロッド4の貫入量、貫入速度等を求める。
【0017】
図4および図5に示すように、前記チャック5は、昇降台3に設けられるチャック用モータ6に無端チェーン6aが連結されて回転可能に構成されている。また、このチャック5は、貫入ロッド4が挿入可能な中空の円筒21を有する。この円筒21の上部には、貫入ロッド4の側面に穿設された凹状の係合溝4cに嵌合可能な鋼球20が同一面上に3個、等分配置されている。この鋼球20は、ばね21aで常時上方に付勢されたスリーブ21bにより、常時当該円筒21の内孔へ突出する位置に支持されており、貫入ロッド4の係合溝4cに係合してこれを保持するように構成されている。なお、スリーブ21bをばね21aの付勢に抗して押下げると、鋼球20は動作可能となり、貫入ロッド4の保持を解くことができる。
【0018】
また、前記チャック5の円筒21には、荷重検出手段の一例であるワッシャ型のロードセル22が挿入されている。このロードセル22には、円筒21を回転自在に支持する軸受けを介して貫入ロッド4にかかるスラスト荷重が伝達される。このスラスト荷重により、ロードセル22が歪み、これに貼付けられた歪みゲージ(図示せず)が当該ロードセル22の微小変化量である歪みを電気信号として検出して制御装置10に送信するように接続されている。これにより、貫入ロッド4にかかる荷重を検出することが可能となる。
【0019】
前記制御装置10は、自動貫入試験機1の動作を制御するものであり、昇降用モータ8を貫入状況に応じて駆動制御するように構成されている。そこで、図6は、時系列的に昇降用モータ8の駆動制御パターンを、ロードセル22による検出値とともに示したものである。
【0020】
まず、図6に示すように、上昇位置にある昇降台3を下降させて貫入ロッド4の先端が地中に貫入するまでの段階では、昇降用モータ8を速度制御により駆動する。下降開始時には、図4に示すように、貫入ロッド4はチャック5に吊り下げられた状態である。したがって、この場合、貫入抵抗(スラスト荷重の作用する方向)を正(+)とすれば、ロードセル22は貫入ロッド4の自重を負(−)の値として示す。なお、ロードセル22により貫入ロッド4の重さが検出されていない状態では、昇降台3の下降を開始することができないように構成されている。これにより、貫入ロッド4が装着されていないにもかかわらず、誤って試験を開始する事態を防ぐことができる。
【0021】
そして、昇降台3の下降開始から貫入ロッド4の先端が地表に当接するまでは、昇降台3を高速で下降させるよう昇降用モータ8へ駆動指令が発せられる。
【0022】
続いて、貫入ロッド4の先端が地表に当接すると、係合溝4cの上端に位置していた鋼球20が転動して、図5に示すように、係合溝4cの下端へ向かう。この転動時には、ロードセル22による検出値は、図6に示すように、零を示す。このように、マイナスから零への荷重変動をロードセル22が検出すると、昇降用モータ8へは減速指令が発せられ、昇降台3は低速で下降する。この構成により、貫入ロッド4の先端が地表に当接する際、貫入ロッド4にかかる衝撃が低減され、詳細を後述するフィードバック制御が安定する。
【0023】
前記昇降台3が係合溝4cの長さ分下降すると、鋼球20が係合溝4cの下端に到達して転動を完了する。転動完了後も、昇降台3の下降を継続すると、貫入ロッド4には貫入抵抗が徐々に作用し、ロードセル22による検出値が上昇する。このように、零からプラスへの荷重変動をロードセル22が検出すると、昇降用モータ8を荷重制御に切り替えて、目標の試験荷重(50N)を負荷するよう昇降用モータ8の出力トルクを調整する。
【0024】
ところで、地表には窪み、あるいは貫入ロッド4の自重にも耐えられない軟弱な地盤が存在し、試験ポイント毎に地表の状況が異なる。このような場合、貫入ロッド4の先端が地表に到達しても、貫入ロッド4を抗することができない。このため、鋼球20の転動開始、あるいは転動完了のタイミングが試験ポイント毎に異なる。
【0025】
そこで、本発明の自動貫入試験機1によれば、前述のように、鋼球20と係合溝4cの係合状況(転動開始、あるいは転動完了)により発生する荷重変動に基づいて、昇降用モータ8へ減速指令、あるいは荷重制御への切り替え指令を発するよう構成されている。そのため、地表が如何なる状況であっても、特段の設計変更をすることなく、所望の位置で昇降用モータ8へ各種指令を発することが可能となる。
【0026】
荷重制御段階では、段階的に50N,150N,250N,500N,750N,1KNの試験荷重が負荷される。そこで、制御装置10にはこれら試験荷重に対応する出力トルクで昇降用モータ8が駆動するように、予め荷重指令が設定されている。
【0027】
また、本発明の自動貫入試験機1においては、荷重制御段階では、ロードセル22による検出値を常時フィードバックして、実荷重と、目標の試験荷重とを比較するように構成されている。比較の結果、これらに差があれば、昇降用モータ8の出力トルクを増減する荷重指令を発して、目標の試験荷重が実際に負荷される。
【0028】
さらに、最初の試験荷重50Nを負荷する段階では、ロードセル22による検出値がプラスに転じると、即座に目標の試験荷重となるよう昇降用モータ8の出力トルクを調整するのではなく、ロードセル22による検出値が予め設定された閾値を上回ってから荷重制御段階に移行して試験荷重を負荷する。
【0029】
前記閾値設定の目的としては、鋼球20が係合溝4cを転動する際、摩擦の影響により、転動完了前にロードセル22による検出値がプラスに転じることがある。特に、係合溝4cに土が付着している場合には、鋼球20がこれを乗り越える際、一時的に当該検出値が上昇する。これでは、鋼球20の転動完了前に、意に反して、荷重制御へ移動することになる。転動完了前に荷重制御に移行すると、昇降台3が転動可能な残りの係合溝4c間を急速に下降する。そのため、鋼球20が係合溝4cの下端に接触し、衝撃荷重が発生する。衝撃荷重は余りにも目標荷重に対してかけ離れており、このように瑕疵ある検出値に基づいてフィードバック制御すると、安定したフィードバックに荷重制御が行えず、適正に試験荷重を負荷することができない。
【0030】
そこで、前記閾値は、目標荷重の50Nに対して、例えば10Nに予め設定されている。そして、ロードセル22による検出値が当該閾値を上回るまで速度制御を継続し、閾値を超えると昇降用モータ8を荷重制御(トルク制御)に切り替える。この構成により、衝撃荷重の発生が皆無となり、安定したフィードバック制御が可能となる。
【0031】
また、荷重制御段階では、昇降用モータ8の出力トルクを急激に増加させて試験荷重を負荷するのではなく、徐々に出力トルクを増加させて目標の試験荷重に近づけるよう荷重指令が発せられる。このように昇降用モータ8を制御すれば、慣性の影響による急激な荷重増加(衝撃荷重の発生)が抑えられ、フィードバックによる荷重制御を安定して行うことができる。
【0032】
なお、目標の試験荷重に近づけるべく荷重を徐々に増加する段階では、サインカーブ軌跡を描くように荷重指令が発せられることが望ましい。この制御により、荷重の変動が小さくなり、前述した衝撃荷重の発生が特に低減されるから、益々安定したフィードバックによる荷重制御を実現することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 自動貫入試験機
2 支柱
2a 案内チェーン
3 昇降台
3a 錘
4 貫入ロッド
4a ロッド
4b スクリューポイント
4c 係合溝
5 チャック
6 チャック用モータ
6a 無端チェーン
7 スプロケット
8 昇降用モータ
8a 駆動軸
10 制御装置
11 遊星歯車機構
12 伝達軸
13 駆動歯車
14 中間歯車
15 伝達歯車
16 一方向クラッチ
20 鋼球
21 円筒
21a ばね
21b スリーブ
22 ロードセル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に貫入する貫入ロッドと、立設された支柱に沿って昇降可能な昇降台と、この昇降台に設けられ、貫入ロッドを保持する保持手段と、この昇降台を昇降操作するように設けられる昇降用駆動手段と、前記貫入ロッドの先端にかかる荷重を検出する荷重検出手段と、
前記昇降用駆動手段の出力トルクを調整して試験荷重を負荷する制御手段とを備える自動貫入試験機において、
前記制御手段が、昇降用駆動手段の出力トルクを徐々に増加して目標の試験荷重を負荷するとともに、前記荷重検出手段による検出値をフィードバックしながら検出昇降用駆動手段の出力トルクを必要に応じて補正して目標の試験荷重を負荷する構成であることを特徴とする自動貫入試験機。
【請求項2】
前記制御手段が、昇降用駆動手段の出力トルクをサインカーブ軌跡となるように増加して目標の試験荷重を負荷する構成であることを特徴とする請求項1に記載の自動貫入試験機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−77490(P2012−77490A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−222260(P2010−222260)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000227467)日東精工株式会社 (263)
【Fターム(参考)】