説明

自動車のトランクボックス構造

【課題】トランク8にトランクボックス41を配設する場合に、そのトランクボックスの荷物収容容積が小さくても、水濡れ荷物を置くためのスペースを拡大して、水濡れ荷物から流れ出た水雫によりトランク8のフロアが濡れるのを防止する。
【解決手段】トランクボックス41の開口を覆う閉位置と、トランク8内における該閉位置よりも前側に位置して該開口を開く開位置との間で設置位置を変更可能な開閉ボード45と、開閉ボード45を、上記開位置において、該開閉ボード45の上面が後方に向かって下側に傾斜しかつ該開閉ボード45の後端が上記トランクボックスの前端(傾斜面部41jの前端)よりも後方に位置する特定状態に保持するボード保持部51とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車後部のトランクに配設されるトランクボックス構造に関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車後部のトランクに、上側に開口を有するトランクボックスが配設されることは知られている。例えば特許文献1では、トランクボックスに、スペアタイヤが収容されているとともに、そのスペアタイヤの上側に、乗員が自由に荷物を収容できるようになっている。このトランクボックスの開口は、ボードにより覆われている。このボードは、その前端部の回動軸回りに回動することで、上記開口を開閉することが可能になっている。
【0003】
また、特許文献2には、ボードを、トランクボックスの開口を開く開位置に回動させたときに、そのボードの後端部の背面に設けたホックと、後席シートのシートバックに取り付けたストラップに設けたホックとを互いに係合することによって、ボードを開位置に保持するようにすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−137392号公報
【特許文献2】特開2005−7936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近時においてはSUV(Sport Utility Vehicle:スポーツ多目的車)等の自動車が増えつつあり、このような自動車のトランクには、水に濡れた荷物(スイムウエアやマリンスポーツ用品等)が積まれる場合が多くある。
【0006】
そこで、トランクにトランクボックス(特に防水性のもの)を配設して、そのトランクボックス内に水濡れ荷物を収容するようにすれば、トランクのフロアが水に濡れるようなことはなくなる。
【0007】
しかし、水濡れ荷物が多数ある場合や、トランクボックスの荷物収容容積に比べて大きい水濡れ荷物がある場合には、水濡れ荷物をトランクボックスに完全に収容することができず、このため、トランクボックスに収容しきれない水濡れ荷物をトランクのフロアに置いたり、大きい水濡れ荷物をトランクボックスにその一部がはみ出した状態で置いたりすることになる。この場合、フロアに置いた水濡れ荷物やトランクボックスからはみ出た水濡れ荷物から流れ出た水雫がトランクのフロアに落下して、該フロアを濡らしてしまう。
【0008】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、トランクにトランクボックスを配設する場合に、そのトランクボックスの荷物収容容積が小さくても、水濡れ荷物を置くためのスペースを拡大して、水濡れ荷物から流れ出た水雫によりトランクのフロアが濡れるのを防止しようとすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、この発明では、自動車のトランクボックス構造として、自動車後部のトランクに配設され、上側に開口を有するトランクボックスと、上記トランクボックスの上記開口を覆う閉位置と、上記トランク内における該閉位置よりも前側に位置して該開口を開く開位置との間で設置位置を変更可能な開閉ボードと、上記開閉ボードを、上記開位置において、該開閉ボードの上面が後方に向かって下側に傾斜しかつ該開閉ボードの後端が上記トランクボックスの前端よりも後方に位置する特定状態に保持するボード保持部と、を備える構成とした。
【0010】
上記の構成により、開位置に設置されかつボード保持部により特定状態に保持された開閉ボード上に水濡れ荷物を置いた場合、その水濡れ荷物から流れ出た水雫は、開閉ボード上を後方のトランクボックスへと流れる。このため、開閉ボード上に水濡れ荷物を置いても、その水濡れ荷物から流れ出た水雫によりフロアが濡れるようなことはない。したがって、水濡れ荷物を置くためのスペースがトランクボックスの前側へ拡大し、水濡れ荷物が多数ある場合でも、トランクボックスの荷物収容容積に比べて大きい水濡れ荷物がある場合でも、トランクのフロアが濡れないように水濡れ荷物をトランクに収容することができるようになる。
【0011】
上記ボード保持部は、上記トランクの前方に位置するシートのシートバックの背面に設けられていて、該シートの使用状態で上記開閉ボードを上記特定状態に保持する構成としてもよい。
【0012】
このことにより、トランクの前方に位置するシートのシートバックの背面にボード保持部を設けることで、開閉ボードの前端を適切な高さ位置(開閉ボードの上面の、上記開口に対する傾斜角が適切な角度になる高さ位置)に容易に保持することができるようになる。また、シートバックにより、水濡れ荷物が開閉ボードの前端から前側にはみ出して置かれるのを防止することができ、これにより、そのはみ出した水濡れ荷物から流れ出た水雫によりトランクのフロアが濡れるのを防止することができる。
【0013】
上記シートは、上記シートバックをシートクッション側に前倒することで折り畳み可能に構成され、上記ボード保持部は、上記シートの使用状態及び折り畳み状態のいずれの状態においても、上記開閉ボードを上記特定状態に保持することが可能に構成されていることが好ましい。
【0014】
こうすることで、シートの形態を変更することができて乗員の利便性が向上するとともに、その形態に関係なく、水濡れ荷物を置くためのスペースをトランクボックスの前側へ拡大することができる。
【0015】
上記シートの折り畳み状態において上記ボード保持部により上記特定状態に保持された開閉ボードの位置は、上記シートの使用状態において上記ボード保持部により上記特定状態に保持された開閉ボードの位置よりも前側にあることが好ましい。
【0016】
このことにより、水濡れ荷物を置くためのスペースを、シートに制限されることなく、より一層前側へ拡大することができる。
【0017】
上記ボード保持部は、上記シートのシートバックの背面に設けられる代わりに、上記トランクの左右両側の側壁に設けられていてもよい。
【0018】
これにより、特に開閉ボードを閉位置に設置して、水に濡れていない通常の荷物をトランクに収容する場合に、トランクのフロアの上面や、折り畳み状態にあるシートの上面(シートバックの背面)等にボード保持部が存在せず、通常の荷物をトランクに収容する場合の自由度を増大させることができる。
【0019】
上記ボード保持部は、上記各側壁に形成されかつ上記開閉ボードが載置される載置面を有し、上記載置面は、後方に向かって下側に傾斜しており、上記載置面に、前後方向に延びる溝状部が形成されていることが好ましい。
【0020】
こうすることで、開閉ボードの側面とトランクの側壁との間に水雫が入り込んだとしても、その水雫は、載置面上及び該載置面に形成された溝内を後方へと流れる。これにより、その水雫を、開閉ボード上の水雫と同様に、トランクボックスへと流すようにすることができる。この結果、開閉ボードの側面とトランクの側壁との間に入り込んだ水雫により、トランクのフロアが濡れるのを防止することができる。また、開閉ボードを載置面に載置することで、該開閉ボードの上面を後方に向かって下側に容易に傾斜させることができる。
【0021】
上記ボード保持部により上記特定状態に保持された開閉ボードの上面における前端部及び/又は左右両側の端部に、上方に突出しかつ当該端部に沿って延びる立壁部が形成されていることが好ましい。
【0022】
このことで、自動車の減速時やカーブ走行時における前方や側方への加速度により、開閉ボード上の水雫が開閉ボードの前方や側方へ流れ出ようとしても、立壁部により、その流出を防止することができる。また、自動車を下り斜面や横斜面に駐車したとしても、開閉ボード上の水雫が開閉ボードの前方や側方へ流れ出ることはない。さらに、立壁部は、開閉ボード上に荷物を置く際に該荷物を開閉ボードからはみ出して置かせないようにする効果もある。
【0023】
上記ボード保持部により上記特定状態に保持された開閉ボードの上面には、前後方向に延びる突起リブ又は溝が形成されていることが好ましい。
【0024】
この突起リブにより、開閉ボードの軽量化を図りつつ、大量の水を含んでかなり重くなった水濡れ荷物を支持するのに十分な剛性を確保することができるようになる。また、突起リブ又は溝が前後方向に延びているので、開閉ボード上に置かれた水濡れ荷物から流れ出た水雫を、トランクボックスへと効果的に導くことができる。
【0025】
上記トランクボックス構造においては、上記開閉ボードを、上記ボード保持部により上記特定状態に保持された状態と、該ボード保持部を介さずに上記トランクのフロアの上面に載置された状態とに切り替えて、上記開位置に設置可能に構成されていることが好ましい。
【0026】
これにより、開閉ボードを、開位置において、トランクのフロアの上面に載置することで、開閉ボードの上面を水平にすることができる。この場合、ボード保持部により特定状態に保持する場合に比べてトランクの荷物収容スペースを増大することができる。この結果、水に濡れていない通常の荷物をトランクに収容する場合の自由度を増大させることができる。
【発明の効果】
【0027】
以上説明したように、本発明の自動車のトランクボックス構造によると、開閉ボードを、開位置において、該開閉ボードの上面が後方に向かって下側に傾斜しかつ該開閉ボードの後端がトランクボックスの前端よりも後方に位置する特定状態に保持するボード保持部を備えたことにより、水濡れ荷物を置くためのスペースをトランクボックスの前側へ拡大することができ、水濡れ荷物が多数ある場合でも、トランクボックスの荷物収容容積に比べて大きい水濡れ荷物がある場合でも、トランクのフロアが濡れないように水濡れ荷物をトランクに収容することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態1に係るトランクボックス構造が適用された自動車の後部を示す概略断面図である。
【図2】上記自動車の後部の車体構成を示す斜視図である。
【図3】上記自動車のトランクにおいて開閉ボードが閉位置に設置された状態を示す斜視図である。
【図4】フロアボードを拡大して示す、前後方向に沿って切断した断面図である。
【図5】フロアボード及びトランクボックスを示す斜視図である。
【図6】フロアボードとトランクボックスの前側フランジ部との接続の変形例を示す図4相当図である。
【図7】開閉ボードを示す斜視図である。
【図8】図7のVIII−VIII線断面図である。
【図9】係合フックと開閉ボードの長孔との係合状態を示す断面斜視図である。
【図10】図5のX−X線断面図である。
【図11】開閉ボードのヒンジ軸と軸受部とを詳細に示す斜視図である。
【図12】ボード保持部のボード保持フックと開閉ボードの係合凹部との係合状態を示す斜視図(開閉ボードについては断面斜視図)である。
【図13】開閉ボードがボード保持部により開位置で特定状態に保持されて該開閉ボード上に水濡れ荷物を置いた場合を示すトランクの斜視図である。
【図14】開閉ボードが、シートの折り畳み状態においてボード保持部により特定状態に保持された状態を示す図1相当図である。
【図15】開閉ボードが、シートの折り畳み状態においてボード保持部により特定状態に保持された状態を示すトランクの斜視図である。
【図16】シートの折り畳み状態においてボード保持部のボード保持フックと開閉ボードの係合凹部との係合状態を示す斜視図(開閉ボードについては断面斜視図)である。
【図17】実施形態2において、開閉ボードが閉位置に設置された状態を示すトランクの斜視図である。
【図18】実施形態2において、開閉ボードがボード保持部により開位置で特定状態に保持された状態を示すトランクの斜視図である。
【図19】図18のXIX−XIX線断面図である。
【図20】実施形態3において、開閉ボードを取り除いた状態を示すトランクの斜視図である。
【図21】実施形態3において、開閉ボードが閉位置に設置された状態を示すトランクの斜視図である。
【図22】実施形態3において、開閉ボードがボード保持部により開位置で特定状態に保持された状態を示すトランクの斜視図である。
【図23】図21のXXIII−XXIII線断面図である。
【図24】図22のXXIV−XXIV線断面図である。
【図25】実施形態4において、開閉ボードが閉位置に設置された状態を示すトランクの斜視図である。
【図26】実施形態4において、開閉ボードがボード保持部により開位置で特定状態に保持された状態を示すトランクの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0030】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係るトランクボックス構造が適用された自動車1の後部を示す。この自動車1は、ハッチバックタイプであって、該自動車1の後面の開口部2(図2参照)を閉じるリフトゲート3が設けられている。このリフトゲート3は、その上端部において、ヒンジ軸4回りに回動可能に支持されている。このヒンジ軸4は、ルーフパネル5の後端部におけるリヤヘッダー6の後端部に相当する部分に設けられている。このようにリフトゲート3は、ヒンジ軸4回りの回動により、上記開口部2を開閉する。このリフトゲート3は、上部にウインド開口3bを有する本体部3aと、該ウインド開口3bに設けられたウインドガラス3cと、ウインド開口3bの上縁に設けられたリヤスポイラー3dとを有している。本発明が適用される自動車1はハッチバックタイプに限らず、トランクを備えた自動車1であれば、どのようなタイプであってもよい。尚、本明細書でいう前、後、左及び右は、それぞれ自動車1の前、後、左及び右のことである。
【0031】
上記自動車1の後部における後席シート7の後側にトランク8(トランクルーム)が配設されている。そして、上記リフトゲート3を開くことによって、トランク8が上記開口部2を通じて後方に開放され、トランク8に対して開口部2を介して荷物の出し入れが可能になる。トランク8の上方には、トランク8と乗員室10とを区画するトノボード9(図1にのみ示す)が配設されている。このトノボード9の左右両端部は、後述の左右のホイルハウストリム25の上部に形成された段部25a(図3参照)にそれぞれ載置固定されるようになっている。
【0032】
図2に示すように、上記トランク8の左右両側の側壁は、左右のホイールハウスインナパネル11(後述のホイルハウストリム25を含む)でそれぞれ構成されている。各ホイールハウスインナパネル11は、その車幅方向外側に配設されたホイールハウスアウタパネル12と共に、後輪13のホイールハウスを構成する。各ホイールハウスアウタパネル12の車幅方向外側が、自動車1の車体の側部を構成するサイドアウタパネル14により覆われ、このサイドアウタパネル14のホイールハウスに対応する部分とホイールハウスアウタパネル12との下端部が互いに結合されている。
【0033】
上記トランク8の後壁の下部は、リヤエンドパネル15(図1及び図2参照)により構成されている。このリヤエンドパネル15の上端は、上記開口部2の下縁とされていて、リフトゲート3の本体部3aの下端部に設けられた不図示のラッチ機構と係合するストライカー16を有している。このリヤエンドパネル15の上端及びその近傍部は、リヤエンドメンバ17により補強されている。また、トランク8の後壁の上部は、リフトゲート3の本体部3aにおけるウインド開口3bよりも下側部分により構成されている。
【0034】
上記リヤエンドパネル15の後方には、リヤバンパー19が配設されている。このリヤバンパー19のレインフォースメント19a(図1にのみ示す)が、左右のリヤサイドフレーム20(図1及び図2参照)に、該各リヤサイドフレーム20の後端に設けたクラッシュカン21(図1にのみ示す)を介して固定されている。
【0035】
左側のサイドアウタパネル14の後端部における下部(リヤバンパー19の左側端部により覆われる部分)には、乗員室10及びトランク8内の空気を車外へ排出するエキストラクタを取り付けるためのエキストラクタ取付孔22(図1及び図2参照)が形成されている。このエキストラクタ取付孔22はトランク8と連通しており、このことで、エキストラクタはトランク8に配設されることになる。このエキストラクタは、その構成の詳細な説明や図示は省略するが、可撓性のシート部材からなる遮断弁を有している。この遮断弁は、エキストラクタ取付孔22を介して車内から車外への空気の排出を許容する一方、車外から車内への空気の流入を遮断するワンウェイ構造(逆止弁)に構成されている。
【0036】
図3に示すように、上記各ホイールハウスインナパネル11の車幅方向内側(トランク8側)には、ホイールハウスインナパネル11を覆うホイルハウストリム25が取り付けられている。このホイルハウストリム25は、上記エキストラクタ取付孔22を覆うが、トランクルーム8からエキストラクタ取付孔22への空気の流通は可能になされている。また、上記リヤエンドパネル15の前側(トランク8側)には、リヤエンドパネル15を覆うトランクエンドトリム26(図1及び図3参照)が取り付けられている。さらに、リフトゲート3の本体部3aにおけるウインド開口3bよりも下側部分の前側(トランク8側)には、当該部分を覆うリフトゲートトリム27(図1参照)が取り付けられている。尚、図2では、リフトゲート3、ホイルハウストリム25、後述のトランクボックス41、後述の開閉ボード45等の記載を省略している。また、図3では、リフトゲート3、リヤバンパー19等の記載を省略している。
【0037】
上記左右のリヤサイドフレーム20の上面には、トランク8のフロアを構成するフロアパネル30が固定されている。このフロアパネル30の下面における、後席シート7の前端部及び下端部並びにトランク8の前後方向中央部に対応する部分には、それぞれ車幅方向に延びるクロスメンバー31が固定されている。これらクロスメンバー31の両端部は、ぞれぞれ左右のリヤサイドフレーム20に固定されている。フロアパネル30の後端部における、左右のリヤサイドフレーム20と最後部のクロスメンバー31とで囲まれる部分は、下側に凹んでいて、上記リヤエンドパネル15と共に、平面視で略矩形状のリヤフロアパン32を構成している。尚、フロアパネル30は1枚の板材で構成されている必要はなく、複数枚の板材で構成されていてもよい。特にリヤフロアパン32を構成する部分は、他の部分と別の板材で構成されていてもよい。
【0038】
上記フロアパネル30の下方における後席シート7に対応する部分には、上下2分割構造の燃料タンク33が配設され、リヤフロアパン32に対応する部分には、排気管の後部に設けられた上下2分割構造のサイレンサー34が配設されている。このサイレンサー34に排気管のテールパイプ35が接続されている。また、フロアパネル30の下方における燃料タンク33とサイレンサー34との間の部分には、不図示の後輪サスペンション(E型マルチリンクサスペンション)を支持するための2つのサブフレーム36が車幅方向に延びた状態で前後に並んで配設されている。これらサブフレーム36の両端部は、ぞれぞれ左右のリヤサイドフレーム20にボルトにより締結固定されている。
【0039】
上記後席シート7は、上記フロアパネル30の上面に固定された1つのシートクッション7aと、シートクッション7aの後側に車幅方向に並ぶように設けられた2つのシートバック7bとを有している。各シートバック7bは、フロアパネル30の上面におけるシートクッション3aの後側でかつ各シートバック7bの左右両側に設けた支持ブラケット38に回動可能に支持されている。すなわち、各シートバック7b内の周縁部全周に亘って設けられたシートバックフレーム7cの左右両側側部の下部に固定された支持部材7dが、上記左右の支持ブラケット38の上端部にそれぞれ回動可能に連結されている。後席シート7の使用状態では、シートバック7bが上下方向に延びるように起立した状態にある。そして、シートバック7bをシートクッション7a側に前倒してシートバック7bの背もたれ面をシートクッション7aの座面に当接することで、後席シート7を使用状態から折り畳み状態にすることができる(図1に二点鎖線で示す)。
【0040】
上記トランク8におけるフロアパネル30の上面の前側部分には、樹脂製(例えばポリプロピレン製)のフロアボード40が配設されている。図4に拡大して示すように、このフロアボード40の下面における前後両端部には、フロアパネル30の上面に接触するように下方に突出しかつ左右方向に延びる脚部40aがそれぞれ形成されている。また、フロアボード40の下面における前後方向中央部には、複数(図5に示すように、本実施形態では、3つ)のグロメット部40bが設けられている。一方、フロアパネル30の上面には、上記複数のグロメット部40bにそれぞれ対応して、複数の係合部材43がフロアパネル30の上面から上方に突出するように配設されている。この各係合部材43には、各グロメット部40bが挿入されて係合する貫通孔43aが形成されており、これらの係合により、フロアボード40がフロアパネル30の上面に固定される。
【0041】
図5にも示すように、上記フロアボード40の上面における後端部には、下側に凹む段差部40cが形成されている。また、フロアボード40の上面における前端部及び左右両端部には、上方に僅かに突出する突出部40dが形成されている。フロアボード40の上面における前後左右の端部を除く部分(以下、フロアボード40の上面という)は、非防水性の植毛処理がなされた植毛部40e(図4参照)で構成されており、本実施形態では、このフロアボード40の上面が、実質的にトランク8のフロアとなる。
【0042】
トランク8におけるフロアパネル30の上面の後側部分には、図1及び図5に示すように、上側に開口を有する樹脂製(例えばポリプロピレン製)のトランクボックス41が配設されている。このトランクボックス41は、リヤフロアパン32と同様の平面視で略矩形状をなしていて、リヤフロアパン32内に挿入される。
【0043】
上記トランクボックス41の下面における前後両端部には、リヤフロアパン32内の底面に接触する、フロアボード40と同様の脚部41aがそれぞれ形成されている。また、トランクボックス41の下面における前後方向中間部には、フロアボード40と同様の複数(図5では、3つ)のグロメット部41bが設けられている。
【0044】
上記トランクボックス41の開口の周縁部全周には、略水平方向に突出するフランジ部が形成されている。このフランジ部において上記開口の前側部分を前側フランジ部41cといい、左側部分を左側フランジ部41dといい、右側部分を右側フランジ部41eといい、後側部分を後側フランジ部41fという。左側フランジ部41dは、前側フランジ部41c及び後側フランジ部41fの左側側方のところにまで延設されて、前側フランジ部41c及び後側フランジ部41fと繋がっている。左側フランジ部41dの後側部分には、左側のホイルハウストリム25の形状に沿うように更に左側に突出する左側拡張部41gが形成されている。また、右側フランジ部41eは、前側フランジ部41c及び後側フランジ部41fの右側側方のところにまで延設されて、前側フランジ部41c及び後側フランジ部41fと繋がっている。右側フランジ部41eの後側部分には、右側のホイルハウストリム25の形状に沿うように更に右側に突出する右側拡張部41hが形成されている。
【0045】
上記左側フランジ部41dの左側端部、右側フランジ部41eの右側端部及び後側フランジ部41fの後側端部には、上方に突出する突出部41iが連続的に形成されており、この突出部41iの上面は、上記フロアボード40の突出部40dの上面と略同じ高さ位置にある。
【0046】
前側フランジ部41cの前端部は、図4に二点鎖線で示すように、上記フロアボード40の段差部40c上に位置して、トランクボックス41とフロアボード40との間に段差が生じないようにフロアボード40の後端部に接続される。尚、図6に示すように、フロアボード40の段差部40cと前側フランジ部41cの前端部とを互いに係合する形状に形成して、トランクボックス41とフロアボード40とが互いに前後にずれないように構成してもよい。
【0047】
上記左側フランジ部41dにおいて、前側縁設部分(前側フランジ部41cの左側側方の部分)及び左側拡張部41gの上面は、フロアボード40の上面と略同じ高さ位置にあるが、その他の部分の上面は、開閉ボード45の厚みの分だけフロアボード40の上面よりも低い位置にある。また、右側フランジ部41eにおいても、前側縁設部分(前側フランジ部41cの右側側方の部分)及び右側拡張部41hの上面は、フロアボード40の上面と略同じ高さ位置にあるが、その他の部分の上面は、開閉ボード45の厚みの分だけフロアボード40の上面よりも低い位置にある。さらに、後側フランジ部41fの上面も、開閉ボード45の厚みの分だけフロアボード40の上面よりも低い位置にある。これらのフロアボード40の上面よりも低い部分は、フロアボード40の上面と同じく、略水平である。
【0048】
一方、前側フランジ部41cの上面は、フロアボード40の上面と略同じ高さ位置から、後方に向かって徐々に低くなるように傾斜する傾斜面部41jとされ、この傾斜面部41jの後端が上記開口の前側縁となっている。
【0049】
上記トランクボックス41内の内側面及びフランジ部41c〜41fの上面は、防水加工が施されており、トランクボックス41内に、水に濡れた荷物(スイムウエアやマリンスポーツ用品等)を収容することができるようになっている。
【0050】
上記トランクボックス41の開口は、図7に示す樹脂製(例えばポリプロピレン製)の開閉ボード45によって覆われる。この開閉ボード45は、上記開口を覆う閉位置(図1及び図3参照)と、図1に二点鎖線で示すように、トランク8内における該閉位置よりも前側に位置して該開口を開く開位置との間で設置位置を変更可能である。開閉ボード45が閉位置に設置されたとき、左側フランジ部41d、右側フランジ部41e及び後側フランジ部41fにおけるフロアボード40の上面よりも低い部分も開閉ボード45により覆われ、このときの開閉ボード45の上面はフロアボード40の上面と略同じ高さ位置となる(図3参照)。
【0051】
上記開閉ボード45は、2枚の板材45aを上下に重ね合わせてなるものである(図1、図8等参照)。上記閉位置に設置された開閉ボード45の上面における後部(図7に示す左右2箇所)には、板材45aとは別の部材45bが嵌め込まれて(図8参照)、該部材45bにより、自動車1の乗員が指を引っ掛けて開閉ボード45の後部を持ち上げるための指掛部45cが構成されている。また、開閉ボード45の後端部(左右2箇所)には、上下に貫通しかつ左右方向に長い長孔45dが形成されている。図9に示すように、この各長孔45dには、開閉ボード45が上記閉位置に設置されたときに、後側フランジ部41fに固定した逆U字状の係合フック46がそれぞれ挿入されて、係合フック46と長孔45dとが互いに係合するようになっている。この係合フック46は、図10に示すように、係合フック46の両端部に形成したネジ部46aにそれぞれナット47を螺号することで、上記後側フランジ部41fに上側に突出するように固定される。上記長孔45d内に挿入された係合フック46と長孔45dの内周面との摩擦力により、自動車1の走行時の振動等が生じても、係合フック46と長孔45dとの係合状態が維持されて、開閉ボード45は浮き上がらないようになっている。但し、指掛部45cに乗員が指を引っ掛けて開閉ボード45の後部を持ち上げる際には、軽い力で上記係合が解除されて開閉ボード45を持ち上げることができる。
【0052】
上記開閉ボード45の前端部は、他の部分よりも左右方向の長さが短くなっており、その前端部の左右両側の端面に、ヒンジ軸45eがそれぞれ突出形成されている。図11に示すように、この両ヒンジ軸45eは、左側及び右側フランジ部41d,41eの前側縁設部分に設けた溝状の軸受部41kにそれぞれ嵌合される。そして、開閉ボード45を閉位置から開位置に移動する際、軸受部41kと嵌合されたヒンジ軸45eを中心にして回動させる。この回動により、閉位置に設置された開閉ボード45の後端を、後席シート7のシートバック7bの背面のところまで移動させる。こうして開閉ボード45は、開位置においては、閉位置とは前後及び上下を逆にした状態で設置されることになる。
【0053】
上記開位置に設置された開閉ボード45は、後席シート7のシートバック7bの背面に設けたボード保持部51によって、開閉ボード45の上面が後方に向かって下側に傾斜しかつ開閉ボード45の後端がトランクボックス41の前端(傾斜面部41jの前端)よりも後方に位置する特定状態に保持される。
【0054】
具体的には、図12に示すように、各シートバック7b内の背面近傍(表皮の直ぐ内側)には、該背面の略全体に亘ってバックプレート7eが設けられている。このバックプレート7eは鉄製であって、シートバックフレーム7cの左右両側側部に固定されている。各シートバック7bのバックプレート7eの下部に1つずつ、シートバック7bの内側(後席シート7の使用状態で前側)に凹むフックベゼル52がシート表皮7fの表側からネジ52aにより固定されている。この各フックベゼル52の下端部に、断面円形の棒状部材を略U字状に折り曲げてなるボード保持フック53が回動自在に取り付けられている。この各ボード保持フック53は、フックベゼル52内に収容された状態(図12に二点鎖線で示す)と、シートバック7bの外側(後席シート7の使用状態で後側(トランク8側))へ突出した状態とに切り替えることができる。この突出した状態では、ボード保持フック53は、フックベゼル52内の下面に当接して、それ以上、下側へは移動できない。本実施形態では、上記フックベゼル52及びボード保持フック53がボード保持部51を構成する。尚、ボード保持フック53を、上記突出状態に固定して、フックベゼル52内に収容された状態に切り替えることができない構成にしてもよい。
【0055】
一方、図7及び図9に示すように、閉位置に設置された開閉ボード45の上面における上記各長孔45dの両端部から開閉ボード45の後端に至る部分には、係合溝45fがそれぞれ形成されている。これら2つの係合溝45fと長孔45dとを合わせた部分は、上記ボード保持フック53の上記突出部分と同じ形状をなしていて、開閉ボード45の開位置において、上記突出したボード保持フック53が嵌って係合する係合凹部45gを構成する。
【0056】
したがって、ボード保持フック53を突出状態にするとともに、閉位置に設置された開閉ボード45をヒンジ軸45eを中心に回動させると、ボード保持フック53と開閉ボード45の係合凹部45gとが互いに係合する。このとき、開閉ボード45の各ヒンジ軸45eは、各軸受部41kに嵌合支持されたままである。これにより、図1及び図13に示すように、開閉ボード45の上面が後方に向かって下側に傾斜するとともに、開閉ボード45の後端がトランクボックス41の前端よりも後方(具体的には、傾斜面部41jの後端と略同じ位置)に位置することになる。こうして開閉ボード45は、ボード保持部51によって、開位置で上記特定状態に保持されることになる。尚、上記特定状態にある開閉ボード45の下面の後部は、開閉ボード45上に荷物を置いたときに傾斜面部41jに接触する場合もあるが、荷物が置かれていない状態では、傾斜面部41jに接触しない。
【0057】
上記ボード保持部51により上記特定状態に保持された開閉ボード45(上記開位置に設置された開閉ボード45)の上面(つまり閉位置に設置されたときの下面)には、防水加工が施されている。このため、開位置にあって特定状態に保持された開閉ボード45上に水濡れ荷物を置くことができ、図13に示すように、この開閉ボード45上に置かれた水濡れ荷物(図13では、スイムウエア100)から流れ出た水雫は、開閉ボード45の上面を後方に向かって流れて開閉ボード45の後端から傾斜面部41jの後端部を通ってトランクボックス41内へと落下する。
【0058】
尚、閉位置に設置された開閉ボード45の上面に、上記フロアボード40の上面と同様の植毛処理を施して、トランク8のフロアとして統一した材質にすることが好ましいが、このようにする必要は必ずしもない。植毛処理を施さない場合、開閉ボード45全体に防水加工を施すようにしてもよい。
【0059】
上記ボード保持部51により特定状態に保持された開閉ボード45の上面には、複数(1つであってもよい)の突起リブ45hが形成されている。本実施形態では、開閉ボード45の上面における左右方向の中間部に、上方に突出しかつ前後方向に延びる3つの突起リブ45hが左右方向に略等間隔をあけて形成されている。これら突起リブ45hにより、開閉ボード45の軽量化を図りつつ、大量の水を含んでかなり重くなった水濡れ荷物の支持剛性を高めることができるようになる。また、前後方向に延びる突起リブ45hにより、開閉ボード45上に置かれた水濡れ荷物から流れ出た水雫を、トランクボックス41へと効果的に導くことができる。このような突起リブ45hは必ずしも必要ではなく、なくしてもよい。
【0060】
尚、上記突起リブ45hに代えて、開位置に設置された開閉ボード45の上面における左右方向の中間部に、前後方向に延びる1つ又は複数の溝を形成してもよい。これら突起リブ45hや溝は必ずしも必要なものではない。
【0061】
上記シートバック7bの背面におけるボード保持部51の高さ位置は、開閉ボード45の上面の傾斜角が適切な角度、つまり開閉ボード45上の水雫が後方に流れ易くかつ開閉ボード45上の荷物が滑り落ち難い角度になるように設定すればよい。また、本実施形態では、後述の如く後席シート7を折り畳み状態にしてもボード保持部51により開閉ボード45を特定状態に保持することができるようになっており、このように後席シート7を折り畳み状態にしたときのボード保持部51の位置も考慮して、ボード保持部51を適切な高さ位置に設定することが好ましい。
【0062】
図14及び図15に示すように、ボード保持部51は、後席シート7の使用状態だけでなく、折り畳み状態においても開閉ボード45を特定状態に保持することができるようになっている。すなわち、後席シート7の折り畳み状態では、シートバック7bの背面が上方を向いており、ボード保持フック53は該背面から上方へ突出する。そして、開閉ボード45が閉位置に設置されたときに開閉ボード45の長孔45dに挿入される係合フック46と同様に、上方へ突出するボード保持フック53を長孔45dに、開閉ボード45が閉位置に設置されたときの上面側から挿入してボード保持フック53と長孔45dとを互いに係合する(図16参照)。
【0063】
後席シート7の折り畳み状態においては、ボード保持フック53が、後席シート7の使用状態よりも前側に位置するため、ボード保持フック53を長孔45dに挿入するためには、開閉ボード45を、後席シート7の使用状態においてボード保持部51により保持された開閉ボード45の位置よりも前側に移動させる必要がある。このため、ヒンジ軸45eを軸受部41kから外し、開閉ボード45の後端を傾斜面部41jにおける前端近傍部分に載せるようにして、ボード保持フック53を長孔45dに挿入する。このとき、開閉ボード45の前端近傍部が、折り畳み状態にある後席シート7におけるシートバック7bの上面(背面)の後端部に当接する。このことで、開閉ボード45は、ボード保持部51によって、開閉ボード45の上面が後方に向かって下側に傾斜しかつ開閉ボード45の後端がトランクボックス41の前端よりも後方に位置する特定状態に保持されることになる。この保持状態においても、開閉ボード45は、閉位置とは前後及び上下を逆にした状態となっている。そして、この開閉ボード45上に水濡れ荷物を置いた場合、水濡れ荷物から開閉ボード45上に流れ出た水雫は、開閉ボード45上を後方へと流れた後、開閉ボード45の後端から傾斜面部41jへと流れ、この傾斜面部41jを後方へ流れて最終的にトランクボックス41内へ流れ込む。
【0064】
尚、後席シート7は、折り畳み可能なものでなくてもよく、また、折り畳み可能であっても使用状態にあるときにのみ、ボード保持部51により開閉ボード45を保持する構成であってもよい。
【0065】
したがって、本実施形態では、開閉ボード45を開位置にしてボード保持部51により特定状態に保持させることで、トランクボックス41だけでなく開閉ボード45上に水濡れ荷物を置くことが可能になる。この結果、水濡れ荷物を置くためのスペースをトランクボックス41の前側へ拡大することができ、水濡れ荷物が多数ある場合でも、トランクボックス41の荷物収容容積に比べて大きい水濡れ荷物がある場合でも、トランク8のフロア(フロアボード40)の上面が濡れないように水濡れ荷物をトランク8に収容することができるようになる。
【0066】
また、後席シート7を折り畳み状態にして、開閉ボード45をボード保持部51に保持させるようにすれば、後席シート7の折り畳み状態においてボード保持部51により特定状態に保持された開閉ボード45は、後席シート7の使用状態においてボード保持部51により特定状態に保持された開閉ボード45の位置よりも前側に位置し、これにより、水濡れ荷物を置くためのスペースを、後席シート7に制限されることなく、より一層前側へ拡大することができる。
【0067】
(実施形態2)
図17及び図18は、本発明の実施形態2を示し、ボード保持部51をトランク8の左右両側の側壁(ホイルハウストリム25)に設けるようにしたものである。
【0068】
具体的には、ボード保持部51は、左右のホイルハウストリム25の前部にそれぞれ形成されかつ開閉ボード45が載置される載置面55を有している。この載置面55は、後方に向かって下側に傾斜しており、これにより、載置面55に載置された開閉ボード45の上面が、後方に向かって下側に傾斜することになる。また、載置面55の前端部には、突部56が形成されている。図19に示すように、この突部56は、開閉ボード45が載置面55に載置される際に、開閉ボード45の下面における前端部(閉位置に設置された開閉ボード45の上面における後端部)に形成された凹部45iと係合するようになっている。そして、閉位置に設置された開閉ボード45を、上記実施形態1と同様に、ヒンジ軸45eを中心に回動させて、凹部45iと突部56とを互いに係合させながら開閉ボード45を載置面55に載置させる。これにより、開閉ボード45が載置面55上において特定状態に保持される。このことで、本実施形態では、載置面55及び突部56がボード保持部51を構成することになる。
【0069】
尚、本実施形態では、開閉ボード45に、長孔45d及び係合溝45fを含む係合凹部45gや突起リブ45hは存在せず、トランクボックス41の後側フランジ部41fに、係合フック46は存在しない。
【0070】
本実施形態では、ボード保持部51により特定状態に保持された開閉ボード45の上面における前端部及び左右両側の端部に、上方に突出しかつ当該端部に沿って延びる立壁部45jが形成されている。これらの立壁部45jにより、自動車1の減速時やカーブ走行時において前方や側方への加速度が生じたときや、自動車1を下り斜面や横斜面に駐車したときに、開閉ボード45上の水雫が開閉ボード45の前方や側方へ流れ出れるのを防止することができる。尚、ボード保持部51により保持された開閉ボード45の上面における前端部のみに立壁部45jを形成してもよく、左右両側の端部のみに立壁部45jを形成してもよい。また、立壁部45jに加えて、開位置に設置された開閉ボード45の上面における左右方向の中間部に、上記実施形態1と同様の突起リブ45h(又は溝)を形成してもよい。
【0071】
(実施形態3)
図20〜図24は、本発明の実施形態3を示し、ボード保持部51が、上記実施形態2と同様に傾斜した載置面55を有し、載置面55における車幅方向外側の部分に、前後方向に延びる溝状部57が載置面55の前端から後端に亘って形成されたものである。
【0072】
本実施形態では、トランクボックス41の形状が上記実施形態1及び2とは異なっており、傾斜面部41j、左側フランジ部41dの前側縁設部分及び左側拡張部41g、並びに、右側フランジ部41eの前側縁設部分及び右側拡張部41hは存在しない。そして、前側フランジ部41cは、その上面がフロアボード40の上面と略同じ高さとなる細いリブ状をなしていて、その左右両端部が、それぞれ、左側及び右側フランジ部41d,41eの前端部まで延設されて、左側フランジ部41dの左側端部及び右側フランジ部41d41eの右側端部にそれぞれ形成された突出部41i(本実施形態では、突出部41iの上面がフロアボード40の上面と略同じ高さとなる)と繋がっている。
【0073】
フロアボード40の後端は、上記リブ状の前側フランジ部41cの前端に接している。このフロアボード40には、突出部40dが存在しない。
【0074】
トランクボックス41の左側及び右側フランジ部41d,41eには、前後方向に延びる突起部41m(図23参照)がそれぞれ形成され、閉位置に設置されてトランクボックス41の開口を覆う開閉ボード45の下面における左右両端部には、前後方向に延びかつ上記突起部41mが嵌合して係合する凹溝部45kがそれぞれ形成されている。
【0075】
本実施形態では、開閉ボード45の指掛部45cは、開閉ボード45の前端部(2箇所)に切欠き状に形成されており、その切欠き状の指掛部45cに乗員が指を引っ掛けて開閉ボード45の前端部を持ち上げる。また、開閉ボード45には、ヒンジ軸45eは存在せず、開閉ボード45を閉位置から開位置に移動させるには、開閉ボード45を持ち上げて突起部41mと凹溝部45kとの係合を解除した後、開閉ボード45を、前後及び上下を逆にしないで、そのままの状態で前側へ移動する。
【0076】
尚、本実施形態においても、上記実施形態2と同様に、開閉ボード45に、長孔45d及び係合溝45fを含む係合凹部45gや突起リブ45hは存在せず、実施形態2における凹部45i及び立壁部45jも存在しない。また、トランクボックス41の後側フランジ部41fに、係合フック46は存在しない。
【0077】
上記各載置面55の左右方向中間部には、前後方向に延びる突起部58が載置面55の前端から後端に亘って形成されており、この突起部58、ホイルハウストリム25及び載置面55により、載置面55におけるホイルハウストリム25側の部分が溝状に形成されて、溝状部57とされている(図24参照)。
【0078】
上記開閉ボード45は、開位置においては、開閉ボード45の凹溝部45kが突起部58と係合することで、開閉ボード45が載置面55上において特定状態に保持される(図22及び図24参照)。このことで、本実施形態では、載置面55及び突起部58がボード保持部51を構成することになる。この開位置に設置されてボード保持部51に保持された開閉ボード45の後端は、トランクボックス41の前端よりも僅かに後方に位置する。すなわち、その開閉ボード45の後端は、トランクボックス41の開口の上側に位置しており、これにより、開閉ボード45上の水雫がトランクボックス41内へ入るようにしている。また、開閉ボード45は、その全体に防止加工を施したものである。
【0079】
尚、ボード保持部51に保持された開閉ボード45の後端が、トランクボックス41の開口からトランクボックス41内に入り込むようにしてもい。
【0080】
上記載置面55及び溝状部57の後端は、上方から見て、トランクボックス41の左側及び右側フランジ部41d,41eの前端と一致する位置にある。これにより、開閉ボード45上の水雫が開閉ボード45の側方へ流れ出たとしても、その水雫は、溝状部57に落下して溝状部57内を後方へと流れ、溝状部57の後端からトランクボックス41の左側及び右側フランジ部41d,41eへと流れる。
【0081】
したがって、本実施形態では、開位置に設置された開閉ボード45の上面の左右両端部に、上記実施形態2で説明したような立壁部45jを形成する必要はなくなり、開閉ボード45上の水雫が開閉ボード45の側方へ流れ出るのを許容することができる。
【0082】
(実施形態4)
図25〜図26は、本発明の実施形態4を示し、開閉ボード45を、ボード保持部51により保持された状態と、該ボード保持部51を介さずにトランク8のフロアの上面に載置された状態とに切り替えて、開位置に設置可能に構成したものである。
【0083】
すなわち、本実施形態では、ボード保持部51をトランク8の左右両側の側壁に設けることは上記実施形態2と同様であるが、開閉ボード45をボード保持部51を介さずにフロアボード40の上面(トランク8のフロアの上面)に載置できるように、ボード保持部51が可動に構成されている。
【0084】
具体的には、ボード保持部51は、後席シート7のシートバック7bの背面に設けられた上記実施形態1のボード保持部51と同様に、フックベゼル52とボード保持フック53とで構成されている。本実施形態では、フックベゼル52は、左右のホイールハウスインナパネル11にホイルハウストリム25を介してそれぞれ固定されている。そして、ボード保持フック53は、フックベゼル52の下端部に回動自在に取り付けられていて、フックベゼル52内に収容された状態(トランク8から退避した状態)と、トランク8内へ突出した状態とに切り替えることができる。
【0085】
開閉ボード45は、上記実施形態2と同様の構成である。但し、開位置に設置された開閉ボード45の下面における前端部(閉位置に設置された開閉ボード45の上面における後端部)に、凹部45iに代えて、ボード保持フック53と係合する係合凹部45mが形成されている。
【0086】
そして、開閉ボード45をボード保持部51により保持する際には、ボード保持フック53を突出状態にして、開閉ボード45の係合凹部45mとボード保持フック53とを互いに係合させる。これにより、ボード保持部51により開閉ボード45は特定状態に保持される(図26参照)。
【0087】
一方、ボード保持フック53がトランク8から退避した状態になると、開閉ボード45は、開位置において、ボード保持部51には保持されず、フロアボード40の上面に載置されることになる。このフロアボード40の上面に載置された開閉ボード45の上面(閉位置に設置された開閉ボード45の下面)は、略水平となる。これにより、トランク8の荷物収容スペースが、開閉ボード45が特定状態に保持される場合に比べて増大する。
【0088】
したがって、本実施形態では、水に濡れていない通常の荷物をトランク8に収容する場合の自由度を増大させることができる。
【0089】
尚、ボード保持部51及び開閉ボード45の構成は、上記各実施形態のものには限られない。ボード保持部51は、例えばフロアボード40又はフロアパネル30の上面に設けるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は、自動車後部のトランクに配設されるトランクボックス構造に有用であり、特にトランクボックスに水濡れ荷物を収容する場合に有用である。
【符号の説明】
【0091】
1 自動車
7 後席シート
7a シートクッション
7b シートバック
8 トランク
41 トランクボックス
45 開閉ボード
45h 突起リブ
45j 立壁部
51 ボード保持部
55 載置面
57 溝状部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車後部のトランクに配設され、上側に開口を有するトランクボックスと、
上記トランクボックスの上記開口を覆う閉位置と、上記トランク内における該閉位置よりも前側に位置して該開口を開く開位置との間で設置位置を変更可能な開閉ボードと、
上記開閉ボードを、上記開位置において、該開閉ボードの上面が後方に向かって下側に傾斜しかつ該開閉ボードの後端が上記トランクボックスの前端よりも後方に位置する特定状態に保持するボード保持部と、
を備えた、自動車のトランクボックス構造。
【請求項2】
上記ボード保持部は、上記トランクの前方に位置するシートのシートバックの背面に設けられていて、該シートの使用状態で上記開閉ボードを上記特定状態に保持する、請求項1記載の自動車のトランクボックス構造。
【請求項3】
上記シートは、上記シートバックをシートクッション側に前倒することで折り畳み可能に構成され、
上記ボード保持部は、上記シートの使用状態及び折り畳み状態のいずれの状態においても、上記開閉ボードを上記特定状態に保持することが可能に構成されている、請求項2記載の自動車のトランクボックス構造。
【請求項4】
上記シートの折り畳み状態において上記ボード保持部により上記特定状態に保持された開閉ボードの位置は、上記シートの使用状態において上記ボード保持部により上記特定状態に保持された開閉ボードの位置よりも前側にある、請求項3記載の自動車のトランクボックス構造。
【請求項5】
上記ボード保持部は、上記トランクの左右両側の側壁に設けられている、請求項1記載の自動車のトランクボックス構造。
【請求項6】
上記ボード保持部は、上記各側壁に形成されかつ上記開閉ボードが載置される載置面を有し、
上記載置面は、後方に向かって下側に傾斜しており、
上記載置面に、前後方向に延びる溝状部が形成されている、請求項5記載の自動車のトランクボックス構造。
【請求項7】
上記ボード保持部により上記特定状態に保持された開閉ボードの上面における前端部及び/又は左右両側の端部に、上方に突出しかつ当該端部に沿って延びる立壁部が形成されている、請求項1〜6のいずれか1つに記載の自動車のトランクボックス構造。
【請求項8】
上記ボード保持部により上記特定状態に保持された開閉ボードの上面には、前後方向に延びる突起リブ又は溝が形成されている、請求項1〜7のいずれか1つに記載の自動車のトランクボックス構造。
【請求項9】
上記開閉ボードを、上記ボード保持部により上記特定状態に保持された状態と、該開閉ボード保持部を介さずに上記トランクのフロアの上面に載置された状態とに切り替えて、上記開位置に設置可能に構成されている、請求項1〜8のいずれか1つに記載の自動車のトランクボックス構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate


【公開番号】特開2011−93508(P2011−93508A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−274157(P2009−274157)
【出願日】平成21年12月2日(2009.12.2)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】