説明

自動車のトランスミッションを保護するためのマルチローブソケット

【課題】ベルとソケットとの間の接続部の特性、特にシール性および機械的な保持力を損なうことなく、ソケットとこのソケットを受けるのに使用されるベルとを簡略化すること
【解決手段】本発明は、ソケット(5)の大きいマルチローブベース(6)と小型ベース(7)との間で延びる円筒形−円錐形ベローズ(8)の形態となるように、ドライブシャフト(1)とトランスミッションベル(2)との間のトランスミッションを保護するためのマルチローブソケット(5)に関する。
このソケットは、このソケット(5)の大きいマルチローブベース(6)に近い、新しいタイプの構造を有し、よってこの構造は保守または交換作業中にソケット(5)がスリップ方向に自由に並進できるようにするための圧力領域における軸方向に移動不能にする手段を、前記ベル(2)上の前記ソケット(5)の圧力領域ゾーンからなくすことから成り、よって前記圧力領域の外側面に締め付け構成要素(11)、例えば締め付けのためのカラーまたはリングを設け、支持ベル(2)に対して前記ソケット(5)を移動不能にするための径方向の圧力を加え、よってこの径方向の圧力によってカラー(11)の垂直方向の圧力領域ゾーンの厚みが薄くなるようになっていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライブシャフトとトランスミッションベルとの間の自動車のトランスミッションを保護するためのマルチローブソケットだけでなく、かかるソケットをシールするために設けられたトランスミッションジョイントにも関する。
【背景技術】
【0002】
自動車では、自動車のトランスミッション(変速機)と車輪との間において、滑らかさを必要とする機械式トランスミッション構成要素を介して、互いに接続された2本のシャフトから成るトランスミッションが設けられている。一般に、トランスミッションから延びるシャフトには、第1シャフトを第2ドライブシャフトに接続するトランスミッション構成要素の雌形構成要素を構成するベルが設けられている。この雌形構成要素は、一般にトライローブ(三葉)状のキャビティの形状となっている。従って、これらローブは、ハウジングを構成し、これらハウジングの各々は、例えば1つのローラを収納するようになっている。この場合、このローラは3つのローラベアリングを有する雄形構成要素によって支持されており、この雄形構成要素自身はドライブシャフトに結合されている。上記タイプのかかる等運動三脚状ジョイントの保護ソケットは、円筒形−円錐形ベローズを備え、このベローズは取り付け状態でベルまたはジョイントのボウルの外側面に当接する大きいマルチローブベースを備える。従って、この大きいベースはマルチローブベルの外側形状と相補的な形状である内側面を有する。ソケットが前記ベルに取り付けられている状態にあるとき、リングまたはカラーがこの大きいベースをベルの周辺に対して締め付けるようになっている。ソケットの小さいベースは、ジョイントの雄形構成要素と一体的なドライブシャフトに取り付けられている。
【0003】
かかる組立体は、当業者には周知であり、特に欧州公開特許第EP-A-1,182,372号に記載されている。図1および2に示された従来技術のように、一方で、ソケットの内部にベルを挿入する間の走行路端部ストッパーを構成できる、図2においてCで示された、一方の位置決めストッパーと、ジョイントが種々に移動する間、ベローズが外れないようにするためにベル内に設けられた溝Bと共に働くようになっている他方のリムAとによってソケットをトランスミッション上の所定位置に維持することがこれまで行われている。このような追加的な機械式接続によって、一方で、前記溝を設けるためにベルの周辺を変更することが可能となり、他方で、ソケットの大きいベースの内周部に保持力リムを設けることが可能となっている。このように二重に位置決めすることにより、製造中の公差を小さくできる。ソケットがドライブシャフトとベルとの間の相対運動を制限するようにも設計されていたことにより、今日まで、このような解決案がマルチローブソケットで採用されてきた。従って、ソケットにかかる力はかなり大きく、ソケットが外れる恐れが高い。
【0004】
欧州特許第EP-A-1,450,060号は、ベルがスリップする方向に、ソケットがベル上で軸方向に移動しないようにする手段を設けなければならないことを認めている。実際に、この欧州特許第EP-A-1,450,060号は、自動車のトランスミッションを保護するためのソケットを製造するための方法について述べている。本発明が解決しようとする、この欧州公開特許に記載されている目的は、図において60または100で示されたベローズと、図7aにおいて番号80で示されたベルとの間のシールを改善することである。この目的のために、前記ベローズと前記ベルとを分離する空間内に、挿入部分56が形成されている。この欧州特許の図6に示されるように、挿入部分56はベルに接触するようになっている膨出部をその表面に有する。これら膨出部はベル内に設けられた溝と作用できる。図7Aは、実施例とは別個に、挿入部分がベルの溝内に収納されていることを示す。従って、ソケットは挿入部分と共にアンダーカット部を備える。従って、この欧州特許に記載された解決案は圧力領域の軸方向に移動不能にする手段も備える。
【0005】
ドイツ特許第DE10253059号は、互いに一体的に製造された2つの部分から成るベローズについて述べている。一方は三ローブ(三葉)形状の第2部分が収納された従来のベローズの形状を有する。この発明の目的は、2つの部分を一体にするために使用される組み立て方法、すなわちレーザー溶着を提供することにある。このドイツ特許出願明細書には、シャフトのまわりにベローズを保持力する手段については記載されていない。実際に、図面のいずれも、シャフトまたはベルを使用する状況における本発明の課題である装置を示していない。更に、図2及び3には内面の構造について示されていない。実際には、ベローズが一定の直径を有しないためには、図2および3に溝の断面が示されているはずである。これらの図は簡略図であるので、そのような場合とは異なる。従って、上記ドイツ特許明細書はベルとソケットとを組み立てる方法に関する結論を出すことはできない。
【0006】
しかしながら、本発明の発明者達は、トランスミッションの作動中または取り扱い中に、ベル上のソケットの保持力を損なうことなく、この接続を簡略化できると考えた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、特にベルとソケットとの間の接続部の特性、特にシール性および機械的な保持力を損なうことなく、ソケットとこのソケットを受けるのに使用されるベルの構造を簡略化できる、マルチローブソケットおよびかかるソケットを含むトランスミッションジョイントを提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するために、本発明は、ソケットの大きいマルチローブベースと小さいベースとの間で延びる円筒形−円錐形ベローズの形態となるように、ドライブシャフトとトランスミッションベルとの間のトランスミッションを保護するためのマルチローブソケットであって、
前記ソケットは、このソケットの大きいマルチローブベースに近い、新しいタイプの構造を有し、よってこの構造は保守または交換作業中にソケットがスリップ方向に自由に並進できるようにするための圧力領域における軸方向に移動不能にする手段を、前記ベル上の前記ソケットの圧力領域ゾーンからなくすことから成り、よって前記圧力領域の外側面に締め付け構成要素、例えば締め付けのためのカラーまたはリングを設け、支持ベルに対して前記ソケットを移動不能にするための径方向の圧力を加え、よってこの径方向の圧力によってカラーの垂直方向の圧力領域ゾーンの厚みが薄くなるようになっていることを特徴とする、マルチローブソケットを提案するものである。
【0009】
ソケットのベローズにおける保持リムをなくし、機械加工されたベルから溝をなくしたことにより、ソケットとベルとの相対的な位置決めだけでなく構成要素の製造も簡略化される。
【0010】
本発明の好ましい実施例によれば、前記締め付け構成要素の垂直方向の、より薄いゾーン、いわゆる非ローブゾーンにおける前記ソケットの最終厚みが、前記ゾーンにおける前記ソケットの初期厚みの最大で85%に等しく、よってソケットとベルとの接続部の機械的保持力およびシール性を保証するようになっている。
【0011】
本発明は更に2本のシャフトと、これら2つのシャフトを接続する関節接続されたトランスミッション構成要素と、シャフト上またはシャフトと一体的なジョイントの構成要素上に前記ソケットの端部を締め付けるよう、前記ジョイントと2つの構成要素のシール性を保証するようになっているマルチローブソケットとを備え、よって2つの締め付け構成要素が前記端部に締め付けられるタイプのトランスミッションジョイントであって、前記シールソケットが上記タイプとなっていることを特徴とするトランスミッションジョイントにも関する。
【0012】
以下、添付図面を参照し、次の詳細な説明を読めば、本発明について正しく理解できよう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
上記のように、ソケット5は図5に示されたタイプのトランスミッションを保護するようになっている。従って、トランスミッションジョイントは図において番号1および3で示された2本のシャフトだけでなく、これらシャフト1と3とを互いに接続する関節接続されたトランスミッション構成要素2、4も含む。このトランスミッション構成要素は、互いに回転角方向に120°だけ離間した3つのローラベアリングを有する雄形構成要素4と雌形構成要素とから成る。ベルとも称される雌形構成要素2はハウジングを有し、この各ハウジングはローラ13を収納するようになっている。ジョイントの雄形構成要素は、図において番号1で示された駆動シャフトと一体的であるが、ジョイントの雌形構成要素、或いはベル2は、トランスミッションからのシャフト3に結合されている。このソケットは、このジョイントを保護するようになっており、その大きいマルチローブベースによりベル2の周辺に取り付けられており、ベル2はシャフト3と一体的なジョイントの雌形構成要素を構成し、一方、小さいベース7はジョイントの雄形構成要素と一体的なドライブシャフト1に取り付けられている。従って、このシャフトのベローズ8は前記ソケットの大きいマルチローブベース6と小さいベース7との間で延びている。
【0014】
当業者に知られており、明らかに自明なように、ソケットの大きいマルチローブベース6はベル2の外側の相補的な相似形状の内周部を有する。従って、この大きいベース6はこのソケットのローブを形成するようになっている円弧内の内部に膨出部を有する。これらローブは、ソケットの非ローブゾーン12と称される円形壁セグメントによって互いに接続されている。全体が円筒形−円錐形をしたソケット5は、そのベローズゾーン8内に、ソケットの小さいベース7から大きいベース6に形成されたコイルを有する。ソケットの大きいベース6および小さいベース7は、カラー11またはリングタイプとすることができる取り付け構成要素により、関連する構成要素の周辺に対して内側面が気密状態に締め付けられるようになっている。
【0015】
上記のように、かつ本発明の特定の態様で、ベル2上のソケット5の圧力領域ゾーンにはベル2からソケット5がスリップする方向に軸方向に移動不能にする手段は存在しない。
【0016】
収納ベル2に対してソケット5を移動不能にする径方向の圧力を加えるよう、大きいマルチローブベース6の周辺の圧力領域の外周面には、締め付けカラー11が平行に設けられている。カラー11の右側に対して加えられる径方向の圧力により、圧力領域ゾーンの厚みが薄くなる。この径方向の圧力は、トランスミッションが作動する間にソケットとベルとの間の接続部のシール性および機械的な保持力を保証するように、適当な値でなければならない。従って、締め付けカラー11を介して非ローブゾーン12に加えるべき締め付け力は、締め付けカラー11の垂直方向のソケット5の最終厚みが、前記ゾーン内のソケットの初期厚みの最大で85%に等しく、よってソケット5/ベル2の接続部の機械的な保持力およびシール性を保証できるような大きさでなければならない。参照符号E1で示されているソケットの初期厚みは、ベルに取り付けられているソケットの大きいベースの外側径DSIから、非ローブゾーン12内のベルのボウルの直径DTを減算し、全体の構造を2で割った値に対応する。従って、初期の厚みE1は、次の式で示される。
【数1】

【0017】
ここで、DSIはソケットの大きいベースの外径に対応し、DTは非ローブゾーン12内のベルに対応する。非ローブゾーン12内のEFソケットの最終厚みは次の式で示される値に等しくなる。
【数2】

【0018】
ここで、Eはカラーの厚みに対応し、DCFはカラーの直径に対応し、DTは非ローブゾーン12内のベルの直径に対応する。パーセントで示される締め付けの値は次の式で示される。
【数3】

【0019】
この締め付け値は次の式によっても示される。
【数4】

【0020】
従って、EF≦85%×EIとなるように締め付けが行われる。一般に、かかる締め付け力を保証するには、ソケット5の上でカラー11またはリングを締め付ける。
【0021】
接続部の適度な接着および機械的保持力を保証するためには、カラーまたはリングの締め付け値と平行に、シールリップ9の数を変えることも可能である。従って、ソケット5は大きいマルチローブベースの内周部上の圧力領域ゾーンにおいて、少なくとも1つの、好ましくは2つのシールリップ9を有する。
【0022】
最後に、ソケット5の大きいマルチローブベース6は、ベローズ8との移行ゾーン内に、移動路内の端部ストッパー10を構成し、ベル2をソケットに挿入する間、ベル2の前方表面がこのストッパーに載るようになっている。このストッパー10の機能は、ベル2をソケット5内でどれだけ遠くまでスライドさせるかを定めることに過ぎない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】従来技術に係わるソケットの非ローブゾーン内の斜視図である。
【図2】従来技術に係わるソケットの非ローブゾーン内の切り欠き図である。
【図3】本発明に係わるソケットの斜視図を示す。
【図4】ソケットの大きいマルチローブベースにおけるソケットとベルとの間の接続をするための非ローブゾーンの切り欠き図である。
【図5】本発明に係わるトランスミッションのジョイントを構成する構成要素が分解された状態にある、本発明に係わるトランスミッションのジョイントの全般的概略図である。
【図6A】締め付け値を計算できるようにするパラメータが示されるよう、構成要素の非ローブ圧力領域ゾーンにおけるベローズおよびベルを示す部分略図である。
【図6B】締め付け値を計算できるようにするパラメータが示されるよう、構成要素の非ローブ圧力領域ゾーンにおけるベローズおよびベルを示す部分略図である。
【符号の説明】
【0024】
1 ドライブシャフト
2 トランスミッションベル
5 ソケット
6 大きいマルチローブベース
7 小さいベース
8 円筒形−円錐形ベローズ
11 締め付け構成要素

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソケット(5)の大きいマルチローブベース(6)と小型ベース(7)との間で延びる円筒形−円錐形ベローズ(8)の形態となるように、ドライブシャフト(1)とトランスミッションベル(2)との間のトランスミッションを保護するためのマルチローブソケット(5)において、
前記ソケットは、このソケット(5)の大きいマルチローブベース(6)に近い、新しいタイプの構造を有し、よってこの構造は保守または交換作業中にソケット(5)がスリップ方向に自由に並進できるようにするための圧力領域における軸方向に移動不能にする手段を、前記ベル(2)上の前記ソケット(5)の圧力領域ゾーンからなくすことから成り、よって前記圧力領域の外側面に締め付け構成要素(11)、例えば締め付けのためのカラーまたはリングを設け、支持ベル(2)に対して前記ソケット(5)を移動不能にするための径方向の圧力を加え、よってこの径方向の圧力によってカラー(11)の垂直方向の圧力領域ゾーンの厚みが薄くなるようになっていることを特徴とする、マルチローブソケット(5)。
【請求項2】
前記締め付け構成要素(11)の垂直方向の、より薄いゾーン(12)、いわゆる非ローブゾーンにおける前記ソケット(5)の最終厚みが、前記ゾーンにおける前記ソケット(5)の初期厚みの最大で85%に等しく、よってソケット(5)とベル(2)との接続部の機械的保持力およびシール性を保証するようになっている、請求項1記載のソケット(5)。
【請求項3】
前記締め付け構成要素(11)、例えばカラーまたはリングが前記ソケット(5)に締め付けられるようになっている、請求項1および2のうちの1つに記載のソケット(5)。
【請求項4】
前記大きいマルチローブベース(6)の内周部上の圧力領域ゾーンにおいて、少なくとも1つの、好ましくは2つのシールリップ(9)を有する、請求項1〜3のうちの1つに記載のソケット(5)。
【請求項5】
前記ベローズ(8)を有する移行ゾーンにおいて、前記ソケット(5)の前記大きいマルチローブベース(6)は、行路の端部ストッパー(10)を構成し、ベル(2)を前記ソケット(5)に挿入する間、前記ベル(2)の前方表面がこのストッパーに載るようになっている、請求項1〜4のうちの1つに記載のソケット(5)。
【請求項6】
2本のシャフト(1、3)と、これら2つのシャフト(1、3)を接続する関節接続されたトランスミッション構成要素(2、4)と、シャフト(1)上またはシャフト(3)と一体的なジョイントの構成要素(2)上に前記ソケット(5)の端部を締め付けるよう、前記ジョイントと2つの構成要素(11)のシール性を保証するようになっているマルチローブソケット(5)とを備え、よって2つの締め付け構成要素(11)が前記端部に締め付けられ、前記シールソケット(5)が請求項1〜5のうちの1つに記載されたものであるタイプのトランスミッションジョイント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【公表番号】特表2008−524520(P2008−524520A)
【公表日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−546100(P2007−546100)
【出願日】平成17年12月7日(2005.12.7)
【国際出願番号】PCT/FR2005/003065
【国際公開番号】WO2006/064109
【国際公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【出願人】(507197018)
【Fターム(参考)】