説明

自動車のピラー構造

【課題】 側面部の強度が向上された自動車のピラー構造を得る。
【解決手段】 ピラー本体18を構成するアウタ22の前面部24と第1ピラーリインフォース28の第2前面部32の間には高強度部材36が配置される。同様に、アウタ22の後面部26と第1ピラーリインフォース28の第2後面部34の間にも、高強度部材38が配置される。高強度部材36、38は、平行な2枚の平行板40と、これら平行板40の間で平行板40どうしを連結する連結部材42とで構成されており、面外変形の強度が高くなっている。これにより、前面部24及び後面部26の座屈強度が向上し、ピラーー全体の曲げ強度も向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のピラー構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のピラーでは、外力による変形を抑制するために、各種の構造が提案されている。たとえば特許文献1では、センターピラー内に、アウタリインフォースとインナリインフォースとで構成されたセンターピラー補強部材を備えたセンターピラー構造が開示されている。
【0003】
ところで、実際の自動車のピラー構造においては、ピラー本体の側面部の強度をさらに向上させることが望まれている。
【特許文献1】特開平4−297378号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記事実を考慮し、側面部の強度が向上された自動車のピラー構造を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明では、車体の一部を成し、車体の前方又は後方に向かって対向する成分を持つ側面部を備えたピラー本体と、前記側面部よりも高強度とされ側面部に沿って配置された高強度部材と、を有することを特徴とする。
【0006】
このように、ピラー本体の側面部よりも高強度とされた高強度部材を側面部に沿って配置することで、ピラー全体として、側面部の強度を向上させることができる。たとえば、ピラー本体の側面部と同程度の強度を有する部材を側面部に沿って配置した構成と比較して、ピラー全体での側面部の強度はより高くなる。
【0007】
なお、側面部に関する「車体の前方又は後方に向かって対向する成分を持つ」とは、対象としている面が、完全に車幅方向に向いているものを除くが、たとえばこの面が(たとえ僅かであっても)傾斜して前方側あるいは後方側に向いているような面であれば含まれる趣旨である。
【0008】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、前記ピラー本体内に配置され、前記側面部と対面する側面部を備えたリインフォースメント、をさらに備えていることを特徴とする。
【0009】
側面部と平行な第2側面部を備えたリインフォースメントをピラー本体内に配置することで、ピラー全体での側面部の強度をより高めることができる。
【0010】
請求項3に記載の発明では、請求項2に記載の発明において、前記高強度部材が、前記側面部と前記第2側面部の間に配置されていることを特徴とする。
【0011】
このように高強度部材を側面部と第2側面部の間に配置することで、これら3つの部材によって、ピラー全体の側面部を効果的に補強できる。
【0012】
請求項4に記載の発明では、請求項3に記載の発明において、前記高強度部材が、前記側面部と前記第2側面部とに挟み込まれていることを特徴とする。
【0013】
高強度部材を側面部と第2側面部とで挟み込むことで、強固な接着等によることなく、高強度部材を固定することができる。
【0014】
請求項5に記載の発明では、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の発明において、前記高強度部材が、前記側面部と平行に配置される複数の平行板と、前記平行板の間で平行板どうしを連結する連結部材と、を含んで構成されていることを特徴とする。
【0015】
このような構造の高強度部材では、平行板どうしを連結する連結部材が、平行板の法線方向の成分を持つことになる。このため、高強度部材は、より面内変形しやすくなる。すなわち、ピラーの側面の座屈強度が向上するので、ピラー全体の曲げ強度が向上する。
【0016】
請求項6に記載の発明では、請求項5に記載の発明において、前記連結部材が、2枚の前記平行板の間で平行板の法線方向の成分を持つように形成されていることを特徴とする。
【0017】
このように、連結部材を平行板の法線方向の成分を持つように形成することで、簡単な構成で平行板を連結でき、しかも高強度部材の面外強度も確実に高めることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は上記構成としたので、側面部の強度が向上された自動車のピラー構造を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1には、本発明の一実施形態に係る自動車のピラー構造(以下、単に「ピラー構造」という)14が採用された自動車の車体12が部分的に示されている。また、図2には、このピラー構造14を有するピラー16が断面にて示されている。なお、本実施形態では、特にセンターピラーを採り上げて説明するが、本発明を適用可能なピラーとしてはセンターピラーに限定されない。以下、図面において車両前方を矢印FRで、上方を矢印UPで、車幅方向外側を矢印OUTでそれぞれ示す。
【0020】
ピラー16は、車室内側に配置されるインナ20と、車室外側に配置されるアウタ22の2部材を接合することで構成されたピラー本体18を有している。図2に示した例では、インナ20は略平板状に形成され、アウタ22は車幅方向外側に凸となる断面略U字状に形成されている。そして、接合状態で、略台形状の中空断面を有するピラー本体18となる。アウタ22の一部によって、車両前方側に向かって斜めに対向する前面部24と、車両後方側に向かって斜めに対向する後面部26が構成されている。
【0021】
ピラー16内には、第1ピラーリインフォース28が配置されている。第1ピラーリインフォース28は、アウタ22の内側に沿って配置されるように断面略U字状に形成されており、車両前後方向の両端部30がアウタ22とインナ20との間に挟持されている。また、第1ピラーリインフォース28の一部によって、アウタ22の前面部24と平行に対面する第2前面部32と、同じくアウタ22の後面部26と平行に対面する第2後面部34とが構成されている。
【0022】
前面部24と第2前面部32の間には、高強度部材36が配置されて、前面部24と第2前面部32とに挟持されている。同様に、後面部26と第2後面部34の間にも、高強度部材38が配置され、後面部26と第2後面部34とに挟持されている。
【0023】
高強度部材36、38は、平行な2枚の平行板40と、これら平行板40の間で平行板40どうしを連結する連結部材42とで構成されている。本実施形態では特に、連結部材42を、図2に示す断面で見て柵状(連結部材42は、全体としては、平行板40の法線方向に見てたとえば格子状あるいはハニカム状)とされている。そして、高強度部材36を配置したことで、前面部24及び後面部26がそれぞれ補強されていることになる。
【0024】
次に、本実施形態のピラー構造14の作用を説明する。
【0025】
本実施形態のピラー構造14では、上記したように、高強度部材36、38が配置されることで、前面部24及び後面部26がそれぞれ補強されており、ピラー16の側面部16A、16Bの座屈強度が効果的に向上されている。
【0026】
ここで、前面部24や後面部26(さらには、一般的な鋼板等)を考えると、その面外変形よりも面内変形のほうが、耐強度が高い。ここで、「面外変形」とは、板状物が、その面(厳密には、板状物を周囲に延長した面)からはみ出して変形することを言い、「面内変形」とは、その面の内部に留まって変形することをいう。
【0027】
そして、本実施形態に係る高強度部材36、38では、上記のように、連結部材42が平行板40の法線方向の成分を持っているため、平行板40単独の場合と比較して、特に、面外変形の強度が高くなっている。したがって、高強度部材36、38に外力が作用した場合に、このように面外変形の強度が向上されていない構成と比較して、面内変形を発生させるように外力を作用させることができる。しかし、面内変形の強度は、本来的に高いので、高強度部材36、38の全体的な強度が高められていることになる。
【0028】
このように、面外強度が高められた高強度部材36、38を前面部24及び後面部26に沿って配置することで、ピラー16の側面部16A、16Bの座屈強度(対座屈荷重)も向上している。そしてこれにより、ピラー16の曲げ強度も向上している。
【0029】
高強度部材36を前面部24あるいは後面部26に沿って取り付けるための構成は特に限定されず、たとえば、前面部24や後面部26に対する溶接(スポット溶接、アーク溶接、レーザ溶接など、その種類は限定されない)の他に、接着剤による接着等を挙げることができる。特に、上記のように、高強度部材36を前面部24と第2前面部32の間、及び後面部26を第2後面部34の間で挟持すれば、強固な溶接や接着を行う必要がなくなるので、好ましい。溶接や接着に代えて、たとえば発泡の充填材を使用して接合することも可能となる。
【0030】
図2には、本発明の第2実施形態のピラー構造54が適用されたピラー56が断面図にて示されている。以下の各実施形態において、第1実施形態と同一の構成要素、部材等については同一符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0031】
第2実施形態では、上下方向で断面形状が複雑に変化するタイプのピラー本体58を適用対象としている。このように断面形状が複雑に変化するピラー56では、前面部64及び後面部66の形状も複雑に変化しているため、これに合わせて高強度部材を成形すると、多くのコストを要するおそれがある。
【0032】
そこで、第2実施形態では、インナ60とアウタ62の間に配置する第1ピラーリインフォース68について、その第2前面部72をアウタ62の前面部64から離れた位置(前面部24が複雑に形状変化しても、その変化に影響されることなく単純な形状、たとえば略平面にできる位置)に配置している。同様に、第2後面部74も、アウタ62の後面部66から離れた位置に配置している。
【0033】
そして、第2実施形態に係る高強度部材76、78を、このように略平面状に形成された第2前面部64及び第2後面部66に沿って配置することで、高強度部材76、78を複雑な形状に成形することなく、略平面状に成形できるので、低コストとなる。
【0034】
しかも、高強度部材76、78をあらかじめ変形させることなく略平面状としているので、本来の座屈強度を発揮させることができる。より効果的に高強度部材76、78の面内変形を利用して、ピラー56の側面部56A、56Bの座屈強度を向上させることができるので、ピラー56の曲げ変形に対しても、曲げ強度を向上させることができる。
【0035】
このように、高強度部材の配設位置としては、ピラーの前側面部あるいは後側面部に沿った位置であれば特に限定されない。第1実施形態のように、高強度部材36、38をそれぞれ前面部24と第2前面部32の間、及び後面部26と第2後側面部の間に配置した構成では、前面部24と第2前面部32と高強度部材36の3つの部材で、及び後面部26と第2後面部34と高強度部材38の3つの部材で、ピラー16全体での側面部を効果的に補強できる。
【0036】
また、高強度部材の具体的構成も、上記したものに限定されず、ようするに、ピラー本体の側面部(前側面部及び後側面部)よりも高強度とされていれば、ピラーの曲げ強度を向上させることができる。図5に示す第1実施形態の変形例のピラー構造114では、高強度部材116、118として、第1実施形態と同構成の2枚の平行板40を、波状に形成された連結部材120で連結する構造としており、段ボール状の断面(平行板40がライナに、連結部材120が中しんにそれぞれ相当)となっている。このような高強度部材116、118であっても、連結部材120が平行板40の法線方向の成分をもっているので、面外変形の強度が高くなり、本発明に適用できる。ただし、第1実施形態に示した断面視にて柵状の連結部材42を備えたものでは、簡単な構成で平行板40を連結でき、しかも高強度部材の面外強度も確実に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明のピラー構造が適用されるピラーを備えた車体を部分的に示す側面図である。
【図2】本発明の第1実施形態のピラー構造が適用されたピラーを示す概略断面図である。
【図3】本発明の第2実施形態のピラー構造が適用されたピラーを示す概略断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態の変形例のピラー構造が適用されたピラーを示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0038】
12 車体
14 ピラー構造
16 ピラー
18 ピラー本体
24 前面部(側面部)
26 後面部(側面部)
28 第1ピラーリインフォース
32 第2前面部(第2側面部)
34 第2後面部(第2側面部)
36 高強度部材
38 高強度部材
40 平行板
42 連結部材
54 ピラー構造
56 ピラー
58 ピラー本体
64 前面部(側面部)
66 後面部(側面部)
68 第1ピラーリインフォース
72 第2前面部(第2側面部)
74 第2後面部(第2側面部)
76 高強度部材
78 高強度部材
114 ピラー構造
116 高強度部材
118 高強度部材
120 連結部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の一部を成し、車体の前方又は後方に向かって対向する成分を持つ側面部を備えたピラー本体と、
前記側面部よりも高強度とされ側面部に沿って配置された高強度部材と、
を有することを特徴とする自動車のピラー構造。
【請求項2】
前記ピラー本体内に配置され、前記側面部と対面する側面部を備えたリインフォースメント、
をさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載の自動車のピラー構造。
【請求項3】
前記高強度部材が、前記側面部と前記第2側面部の間に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の自動車のピラー構造。
【請求項4】
前記高強度部材が、前記側面部と前記第2側面部とに挟み込まれていることを特徴とする請求項3に記載の自動車のピラー構造。
【請求項5】
前記高強度部材が、
前記側面部と平行に配置される複数の平行板と、
前記平行板の間で平行板どうしを連結する連結部材と、
を含んで構成されていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の自動車のピラー構造。
【請求項6】
前記連結部材が、2枚の前記平行板の間で平行板の法線方向の成分を持つように形成されていることを特徴とする請求項5に記載の自動車のピラー構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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