説明

自動車のフロントピラーとサイドシルとの結合部構造

【課題】自動車の操縦安定性を向上させると同時に高い生産性を実現した自動車のフロントピラーとサイドシルとの結合構造を提供する。
【解決手段】フロントピラー1の閉断面形状内に、自動車の前後方向に延在するように、レインフォース8を配設して、レインフォース8をフロントピラーアウタ2に結合すると共に、レインフォース8の自動車後端側をサイドシル4側に延在させてレインフォース延長部8aを形成して、レインフォース延長部8aをサイドシルアウタ5側に結合することによって構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の上下方向に延設されるフロントピラーの下端部と自動車の前後方向に延設されるサイドシルの前端部とを結合して構成する自動車のフロントピラーとサイドシルとの結合部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車のフロントピラーとサイドシルとの結合部構造は、自動車の上下方向に延設されるフロントピラーアウタおよびフロントピラーインナを互いに重合することによって閉断面形状に形成されたフロントピラーの下端部と、自動車の前後方向に延設されやはり閉断面形状に形成されたサイドシルの前端部を互いに結合することによって構成していた。
【0003】
ところで、近年自動車の更なる軽量化を図るために、特に、前記フロントピラーアウタは材料強度の高い素材である鋼板を用いて構成していた。
【0004】
しかしながら、フロントピラーの下端部は、サイドシルに結合するためには、車体上下方向から車体後方に大きく曲線を描いて車体後方側に大きく折曲する折曲構造にしている。
【0005】
このことから、フロントピラーアウタを材料強度の高い素材である鋼板を用いたことは、当該フロントピラーアウタを一回のプレス加工により所定の形状に成形することを困難にして、生産性を劣化させてしまうことになる。
【0006】
そこで、従来において、フロントピラーは、その構成を生産性向上のためにできる限り簡単な構成にすべく、自動車上方向から順に、アッパー部と、当該アッパー部の下端に接合されるセンター部と、センター部の下側に接合されるロア部との三分割構成にして互いに端末同士を結合するという構成の簡単化を図ると共に、ロア部の下部端末構造をできる限り短い形状にすべくなしていた (特許文献1および特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−222039号公報
【特許文献2】特開2009−61991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
かかる結果、フロントピラーをアッパー部、センター部およびロア部の三分割構成にしたことによる成形金型個数の増加や各部位同士のスポット溶接等による結合部の増加による車体生産性の低下と相俟って、ロア部の下部端末構造を短い形状にしたことが加わって、サイドシルとの結合部において、車体の捻れ剛性が劣化してしまうおそれがあった。
【0009】
ここで、車体の捻れ現象とは、車両の前後方向軸を中心として、車体が前後方向において相対的に回転してしまう現象であり、かかる車体の捩れ現象を小さくするためには、車体の捩れ剛性を高める必要がある。
【0010】
かかる車体の捩れ現象が、フロントピラーとサイドシルとの結合部において生じた場合、上記従来の技術のように、フロントピラーを三分割にすると共にフロントピラーのロア部の下部端末構造を短い形状に構成したために、当該ロア部とサイドシルとの間の車体の捩れ剛性が低下してしまうことになるのである。
【0011】
かかる車体の捩れ剛性が低下した場合には、例えば、ステアリングハンドルを操舵させて自動車を旋回させたような場合、運転者の意図通りに自動車が旋回せず反応が遅れローリング等を起こして操縦方向が定まらず、操縦安定性を欠いてしまうことにもなりかねない。このような自動車の操縦安定性は、高性能車になればなるほど、高いものが要求されることになる。
【0012】
このような自動車の操縦安定性を確保するために、フロントピラー自体およびフロントピラーとサイドシルとの結合部における捩れ剛性を高めることが必要となってくるのであるが、かかる捩れ剛性としては、車体の左右方向軸(X軸)、車体の前後方向軸(Y軸)および上下方向軸(Z軸)の3軸方向回りの剛性を考慮することにより、自動車の操縦安定性を評価する必要がある。
【0013】
先ず、X軸周りおよびZ軸周りに対しては、フロントピラーのサイドシルとの結合部における折曲部分特にシルインナとシルアウターのX軸面結合フランジにおける歪現象が大きく関わっていることがわかっている(なお、「X軸面」とは、車体の左右方向軸であるX軸方向に面する面をいう)。
【0014】
かかる点から、上記従来の技術においては、フロントピラーのロア部の下端部を延出させることによってサイドシルとの結合力を高めるという対策を採ることが考えられる。
【0015】
しかし、かかる対策を採る結果逆にフロントピラー特にフロントピラーアウタの成形性を損なわせてしまうことになる。
【0016】
したがって、フロントピラーを構成するロア部下端をできる限り短くカットしたいところであるが、かかる構成を採る結果、当該X軸回りおよびZ軸回りの剛性が低下してしまうことになる。
【0017】
本発明者の実験等によれば、上記従来のようにロア部下端を短くカットして構成した場合には、短くカットしない場合に比して、X軸およびZ軸周りの剛性は2〜5%低下してしまうことが実験的に実証されている。
【0018】
また、Y軸回りの剛性を見ると、かかる剛性は、フロントピラーとサイドシルとの結合部分を境に生じる捩れモーメントが関わることになるが、かかる捩れモーメントに対処する当該結合部分の剛性を高めるため、従来では、図7および図8に示すような構成が採用されている。
【0019】
すなわち、自動車の上下方向に延設されるフロントピラーaは、先ず断面ハット型に形成したフロントピラーアウタbと平板状部分の多いフロントピラーインナcとを重合することによって閉断面形状に形成されており、その下端部が自動車の後方向に折曲されることにより、自動車の前後方向に延設されるようにサイドシルアウタdとサイドシルインナeとを重合することによって閉断面形状に形成されたサイドシルfの前端部に結合するという構成を採っている。
【0020】
そして、従来のフロントピラーとサイドシルとの結合部構造は、正面衝突時において主にタイヤ(不図示)がフロントピラーaに干渉して起こる入力に対して車体強度を高めるために、フロントピラーアウタbとフロントピラーインナcとが形成する閉断面形状内に、レインフォースgを自動車の後端部側が下方に傾斜するように配設して、フロントピラーアウタbおよびフロントピラーインナcにそれぞれ例えばスポット溶接により結合した構成を採っている。
【0021】
しかしながら、レインフォースgは主に前面衝突時における自動車前後方向の入力に対して、フロントピラーaの断面変形を抑制すると共にサイドシルfへ衝突荷重を効率的に伝えることを目的としていることから、フロントピラーaとサイドシルfとの結合部の捩れモーメントに対する剛性を高めるには未だ不十分である。
【0022】
更に、従来の技術においては、図9および図10に示すように、フロントピラーインナcの下端部をサイドシルインナeと共に閉断面形状のサイドシルfを構成するサイドシルアウタdに例えば自動車前後方向に沿って一列の結合部hで結合しており、かかるサイドシルインナeとサイドシルアウタdとをフランジ部同士でスポット溶接等により結合可能にするために、フロントピラーインナeの下端部に、下端開口の開口部iを結合部hに対応して複数個形成している。
【0023】
したがって、従来のフロントピラーとサイドシルとの結合部構造におけるフロントピラーインナcは、その下端部において、サイドシルfのサイドシルアウタdに対して、自動車前後方向に一列の結合部hにて結合されているだけであることから、フロントピラーaとサイドシルfとの結合部の特にY軸回りの剛性は余り大きくないことが実験的に判明している。
【0024】
そこで、本発明は、自動車の操縦安定性を向上させると同時に高い生産性を実現した自動車のフロントピラーとサイドシルとの結合構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明に係る自動車のフロントピラーとサイドシルとの結合構造は、自動車の上下方向に延設され、フロントピラーアウタおよびフロントピラーインナを互いに重合することによって閉断面形状に形成されたフロントピラーの下端部と、自動車の前後方向に延設されるサイドシルの前端部とを結合して構成する自動車のフロントピラーとサイドシルとの結合部構造であって、前記フロントピラーの閉断面形状内に、自動車の前後方向に延在するように、レインフォースを配設して前記フロントピラーに結合すると共に、前記レインフォースの自動車後端側を前記サイドシル側に延在させてレインフォース延長部を形成して、該レインフォース延長部を前記サイドシル側に結合することによって構成したことを特徴とするものである。
【0026】
かかる構成を有する本発明は、フロントピラーの閉断面形状内において自動車前後方向に延在するように配設したレインフォースが、フロントピラーに結合すると共に、自動車後端側をサイドシル側に延在させて形成したレインフォース延長部をサイドシル側に結合したことにより、フロントピラーインナと共にフロントピラーを構成するフロントピラーアウタを短くカットして構成したとしても、レインフォースの剛性によって、フロントピラー周りの捩れ剛性のうち車体のX軸周りおよびZ軸周りの捩れ剛性を高めて自動車の操縦安定性を向上させると共に、同時にフロントピラーの構成を従来のように三分割せず単一の構成とすることができ、高い生産性を実現することができる。
【0027】
また、本発明は、上記発明の実施の形態として、前記レインフォースを前記フロントピラーアウタ側に結合するように構成することが可能である。
【0028】
かかる構成により、フロントピラーアウタの下端部を、自動車の操縦安定性を損なうことなく、短くカットすることができて、生産性の高い自動車のフロントピラーとサイドシルとの結合構造を提供することができ、しかも材料強度の高い材料を用いてこうせいされているフロントピラーアウタの薄肉化による軽量化が図られる。
【0029】
また、本発明は、上記発明の実施の形態として、前記フロントピラーインナの下端部を、前記サイドシル側に延長させることによって、フロントピラーインナ延長部を形成し、前記フロントピラーインナの下端部を前記サイドシルのサイドシルインナに結合すると共に、前記フロントピラーインナ延長部を前記サイドシルインナに結合して構成することも可能である。
【0030】
かかる構成により、フロントピラーインナの下端部がサイドシルのサイドシルインナに結合されていると共に、フロントピラーインナ延長部がサイドシルインナに結合していることから、フロントピラーインナとサイドシルインナとの結合剛性を高めることができ、フロントピラーインナにおけるサイドシルインナとの結合部における特に車体のY軸周りの剛性を高めることができ、しかもフロントピラーインナは、フロントピラーアウタに比較してそれほど高強度の材料を使用せずまた略略平板状となるような簡単形状を呈していることから、たとえフロントピラーインナ延長部を設けたとしても、成形性を劣化させることがない。
【0031】
また、本発明は、上記発明における実施の形態として、前記フロントピラーインナの下端部におけるサイドシルインナとの結合部とフロントピラーインナ延長部における前記サイドシルインナとの結合部とが、互いに千鳥状に配置させた構成にすることも可能である。
【0032】
かかる構成により、フロントピラーインナの下端部におけるサイドシルインナとの結合部とフロントピラーインナ延長部におけるサイドシルインナとの結合部のスポット打点が、千鳥状に配置されていることから、フロントピラーインナとサイドシルインナとの結合剛性を高めることができ、フロントピラーインナにおけるサイドシルインナとの結合部における特に車体のY軸周りの剛性を高めることができ、しかもフロントピラーインナは、フロントピラーアウタに比較してそれほど高強度の材料を使用せずまた平板状部分が比較的多くなるような簡単形状を呈していることから、たとえフロントピラーインナ延長部を設けたとしても、成形性を劣化させることがない。
【0033】
また、本発明は、上記発明における実施の形態として、前記サイドシルを構成するサイドシルインナを、前記フロントピラーインナ側に延長させることによって、サイドシル延長部を形成して、前記サイドシルインナを前記フロントピラーインナに結合すると共に、前記サイドシル延長部を前記フロントピラーインナに結合して構成することも可能である。
【0034】
かかる構成により、本発明は、フロントピラーインナの下端部がサイドシルのサイドシルインナに結合されていると共に、サイドシル延長部がフロントピラーインナに結合していることから、サイドシルインナとフロントピラーインナとの結合剛性を高めることができ、サイドシルインナにおけるフロントピラーインナとの結合部における特に車体のY軸周りの剛性を高めることができる。
【0035】
また、本発明は、上記発明における実施の形態として、前記フロントピラーインナの下端部におけるサイドシルインナとの結合部とサイドシルインナ延長部における前記フロントピラーインナとの結合部とが、互いに千鳥状に配置することも可能である。
【0036】
かかる構成により、本発明は、サイドシルインナにおけるフロントピラーインナの下端部との結合部とサイドシル延長部におけるフロントピラーインナとの結合部のスポット打点とが、互いに千鳥状に配置されていることから、サイドシルインナとフロントピラーインナとの結合剛性を高めることができ、フロントピラーインナにおけるサイドシルインナとの結合部における特に車体のY軸周りの剛性を高めることができることになる。
【発明の効果】
【0037】
上記する本発明によれば、フロントピラーの閉断面形状内において自動車前後方向に延在するように配設したレインフォースが、前記フロントピラーに結合されると共に、自動車後端側をサイドシル側に延在させて形成したレインフォース延長部をサイドシル側に結合したことにより、フロントピラーインナと共にフロントピラーを構成するフロントピラーアウタを短くカットして構成したとしても、レインフォースの剛性によって、フロントピラー周りの捩れ剛性のうち車体のX軸周りおよびZ軸周りの捩れ剛性を高めて自動車の操縦安定性を向上させると共に、同時にフロントピラーの構成を従来のように三分割せず単一の構成とすることができ、高い生産性を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係る一の実施例を採用したフロントピラーとサイドシルの前端側の結合状態を描画した斜視図である。
【図2】図1におけるフロントピラーとサイドシルとの結合部を拡大して描画した斜視図である。
【図3】同じく、図1におけるフロントピラーとサイドシルとの結合部において、フロントピラーを構成するフロントピラーインナおよびサイドシルのサイドシルインナを取り外して描画した側面図である。
【図4】同じく、図1におけるフロントピラーとサイドシルとの結合部において、フロントピラーを構成するフロントピラーインナおよびサイドシルのサイドシルインナを取り外して描画した要部斜視図である。
【図5】図1におけるフロントインナーパネルとサイドシルインナとの結合部構造の実施形態の変形例を描画したフロントピラーとサイドシルとの結合部付近の斜視図である。
【図6】図5におけるフロントピラーインナとサイドシルインナとの結合部を拡大して描画した側面図である。
【図7】従来の技術におけるフロントピラーとサイドシルの一部をフロントピラーアウタ側から描画した斜視図である。
【図8】図7におけるフロントピラーとサイドシルとの結合部において、フロントピラーを構成するフロントピラーインナおよびサイドシルのサイドシルインナを取り外して描画した側面図である。
【図9】従来の技術におけるフロントピラーとサイドシルの一部をフロントピラーインナ側から描画した斜視図である。
【図10】図9におけるフロントピラーとサイドシルとの結合部において、フロントピラーインナ側から描画した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明に係る一の実施例に係るフロントピラー1は、自動車の上下方向に延設され、材料強度の高い鋼板などの素材を用いて断面ハット状に形成されたフロントピラーアウタ2と、材料強度がそれほど高くない鋼板などの素材を比較的平板状部分が多くなるように形成したフロントピラーインナ3とを、互いの端部フランジを接合することによって、閉断面形状に形成して構成されている。
【0040】
フロントピラー1は、センター部1aを中央にして、その上端部1bおよび下端部1cが折曲部1b−1,1c−1を有して自動車の後方に延在しており、フロントピラーアウタ2およびフロントピラーインナ3は、共に、例えばプレス成形等により成形された単一構成を呈している。
【0041】
そして、フロントパネル1は、その下端部1cが下向きに開口した状態で、かかる開口部がサイドシル4における前端部4aの上向き開口部4a−1に重合させた状態で、下端部1cがサイドシル4の前端部4aに例えばスポット溶接等により結合されて構成している。
【0042】
サイドシル4は、互いに断面ハット形を呈する自動車の外側に面するサイドシルアウタ5と自動車の内側に面するサイドシルインナ6とをそのフランジ部同士をスポット溶接等により結合することによって、閉断面形状に形成することによって構成している。
【0043】
フロントピラーアウタ2とフロントピラーインナ3とによって構成される閉断面形状内におけるサイドシル4との結合部7には、図2や図3に示すように断面略「Z」字状に形成されたプレート状のレインフォース8が配設されている。
【0044】
レインフォース8は、フロントピラーアウタ2とフロントピラーインナ3とによって構成される閉断面形状内に、自動車後端側が下側に傾斜するように配設されて、フロントピラーアウタ2にスポット溶接等により結合されており、且つ、自動車後端側をサイドシル4側に延在させることによって一体形成されたレインフォース延長部8aを有して構成されている。
【0045】
レインフォース延長部8aは、図4に明確に示すように、サイドシル4を構成するサイドシルアウタ5とサイドシルインナ6の両X軸面結合フランジおよびサイドシルアウタ5自体にスポット溶接等により結合されている。
【0046】
上記のように構成する本発明にかかる実施例においては、フロントピラー1の閉断面内において自動車前後方向に延在するように配設したレインフォース8が、フロントピラー1のフロントピラーアウタ2に結合すると共に、自動車後端側をサイドシル4側に延在させて形成したレインフォース延長部8aをサイドシル4のサイドシルアウタ5側に結合したことにより、フロントピラーインナ3と共にフロントピラー1を構成するフロントピラーアウタ2をその下端部をカットして短く構成したとしても、レインフォース8の剛性によって、フロントピラー1周りの捩れ剛性のうち車体のX軸周りおよびZ軸周りの捩れ剛性を高めて自動車の操縦安定性を向上させることができると共に、同時にフロントピラー1の構成を従来のように三分割せず単一の構成とにして、成形型の個数を1個にして一回成形することが可能となってき、高い生産性を実現することができる。
【0047】
図5および図6は、上記本発明に係る実施例の変形例を示している。
【0048】
図5および図6によれば、フロントピラーインナ3の下端部をサイドシル4側に延設して、フロントピラーインナ延長部3aを形成した点、上記実施例と異なる構成を採用しており、フロントピラーインナ延長部3aは、サイドシルインナ6にスポット溶接等により結合している。
【0049】
かかるフロントピラーインナ延長部3aにおけるサイドシルインナ6への結合点3a−1は、図8に明確に示すように、自動車前後方向に沿って一線状に互いに離間した状態で二箇所有しており、かかる結合点3a−1は、フロントピラーインナ3の下端部におけるサイドシルインナ6への互いに離間した二箇所の結合点3a−2に対して、千鳥状に配置されている。
【0050】
なお、フロントピラーインナ3の下端部には、サイドシルアウタ5とサイドシルインナ6とを直接スポット溶接等により結合可能にするために、貫通開口部3bが形成されている。
【0051】
かかる本発明の変形例における構成によれば、フロントピラーインナ3の下端部におけるサイドシルインナ6との結合点3a−2とフロントピラーインナ延長部3aにおけるサイドシルインナ6との結合点3a−1とが、互いに千鳥状に配置させた構成にしていることから、フロントピラーインナ3とサイドシルインナ6との結合剛性を高めることができ、フロントピラーインナ3におけるサイドシルインナ6との結合部における特に車体のY軸周りの剛性を高めることができることになり、しかもフロントピラーインナ3は、フロントピラーアウタに比較してそれほど高強度の材料を使用せずまた平板状部分が多くなるような簡単形状を呈していることから、たとえフロントピラーインナ延長部3aを設けたとしても、成形性を劣化させることがない。
【0052】
なお、本発明における実施例の他の変形例として、図示はしないが、フロントピラーインナ3の下端部にフロントピラーインナ延長部3aを形成する代わりに、サイドシルインナの上端部を、フロントピラーインナ3側に延長させることによって、サイドシル延長部を形成して、当該サイドシル延長部をフロントピラーインナ3に結合した構成にすることも可能である。
【0053】
かかる構成により、本発明は、フロントピラーインナ3の下端部がサイドシルインナ6に結合されていると共に、サイドシル延長部がフロントピラーインナ3に結合されていることから、サイドシルインナ6とフロントピラーインナ3との結合剛性を高めることができ、サイドシルインナ6におけるフロントピラーインナ3との結合部における特に車体のY軸周りの剛性を高めることができる。
【0054】
かかる他の変形によれば、フロントピラーインナ3の下端部におけるサイドシルインナ6との結合点とサイドシルインナ延長部におけるフロントピラーインナ3との結合点とが、やはり、互いに千鳥状に配置されており、かかる構成により、サイドシルインナ6とフロントピラーインナ3との結合剛性を高めることができ、フロントピラーインナ3におけるサイドシルインナ6との結合部における特に車体のY軸周りの剛性を高めることができることになる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
以上説明したように、本発明は、フロントピラーの閉断面形状内において自動車前後方向に延在するように配設したレインフォースが、前記フロントピラーに結合されると共に、自動車後端側をサイドシル側に延在させて形成したレインフォース延長部をサイドシル側に結合したことにより、フロントピラーインナと共にフロントピラーを構成するフロントピラーアウタを短くカットして構成したとしても、レインフォースの剛性によって、フロントピラー周りの捩れ剛性のうち車体のX軸周りおよびZ軸周りの捩れ剛性を高めて自動車の操縦安定性を向上させると共に、同時にフロントピラーの構成を従来のように三分割せず単一の構成とすることができ、高い生産性を実現することができ、したがって、自動車の上下方向に延設されるフロントピラーの下端部と自動車の前後方向に延設されるサイドシルの前端部とを結合して構成する自動車のフロントピラーとサイドシルとの結合部構造等に好適である。
【符号の説明】
【0056】
1 フロントピラー
2 フロントピラーアウタ
3 フロントピラーインナ
3a フロントパネルインナ延長部
3a−1、3a−2 結合点
4 サイドシル
5 サイドシルアウタ
6 サイドシルインナ
7 結合部
8 レインフォース
8a レインフォース延長部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の上下方向に延設され、フロントピラーアウタおよびフロントピラーインナを互いに重合することによって閉断面形状に形成されたフロントピラーの下端部と、自動車の前後方向に延設されるサイドシルの前端部とを結合して構成する自動車のフロントピラーとサイドシルとの結合部構造であって、
前記フロントピラーの閉断面形状内に、自動車の前後方向に延在するように、レインフォースを配設して、該レインフォースを前記フロントピラーに結合すると共に、前記レインフォースの自動車後端側を前記サイドシル側に延在させてレインフォース延長部を形成して、該レインフォース延長部を前記サイドシル側に結合することによって構成したことを特徴とする自動車のフロントピラーとサイドシルとの結合部構造。
【請求項2】
前記レインフォースが前記フロントピラーアウタ側に結合したことを特徴とする請求項1に記載の自動車のフロントピラーとサイドシルとの結合部構造。
【請求項3】
前記フロントピラーインナの下端部を、前記サイドシル側に延長させることによって、フロントピラーインナ延長部を形成し、前記フロントピラーインナの下端部を前記サイドシルのサイドシルインナに結合すると共に、前記フロントピラーインナ延長部を前記サイドシルインナに結合したことを特徴とする請求項1又は2に記載の自動車のフロントピラーとサイドシルとの結合部構造。
【請求項4】
前記フロントピラーインナの下端部におけるサイドシルインナとの結合部とフロントピラーインナ延長部における前記サイドシルインナとの結合部とが、互いに千鳥状に配置されていることを特徴とする請求項3に記載の自動車のフロントピラーとサイドシルとの結合部構造。
【請求項5】
前記サイドシルを構成するサイドシルインナを、前記フロントピラーインナ側に延長させることによって、サイドシル延長部を形成して、前記サイドシルインナを前記フロントピラーインナに結合すると共に、前記サイドシル延長部を前記フロントピラーインナに結合して構成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の自動車のフロントピラーとサイドシルとの結合部構造。
【請求項6】
前記フロントピラーインナの下端部におけるサイドシルインナとの結合部とサイドシルインナ延長部における前記フロントピラーインナとの結合部とが、互いに千鳥状に配置されていることを特徴とする請求項3に記載の自動車のフロントピラーとサイドシルとの結合部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−207455(P2011−207455A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−79797(P2010−79797)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000178804)ユニプレス株式会社 (83)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】