説明

自動車のマルチクラッチトランスミッション

本発明は、少なくとも1つの原動機を備える自動車のマルチクラッチトランスミッション(100、200)に関し、軸ブレーキユニット(160、260)が、2つの入力軸の1つ(121、122)の回転速度を下げるように設計され、中央同期ユニット(180、280)が、前記入力軸の第1軸(121)を前記入力軸の第2軸(122)より速く、又は遅く回転させるために、選択的に作動状態となるように設計されている。前記軸ブレーキユニットと前記中央同期ユニットは、前記出力軸が回転しない時、ツースクラッチの噛み合いの前に回転速度を下げるために同時に作動するように設計されている。前記軸ブレーキユニット(260)は多段パワーシフトを実施する時に用いられるように設計されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、高重量のオンロード及びオフロード車両の自動車変速機、具体的には、独立請求項の前文に記載のデュアルクラッチ及びマルチクラッチトランスミッションに関する。
【背景技術】
【0002】
デュアルクラッチトランスミッションは、ギヤシフトで動力切断する従来の多段変速機と、動力切断しないパワーシフト式遊星歯車変速機との間のハイブリッド体である。原則として、デュアルクラッチトランスミッションは、2つの入力軸を有し、摩擦クラッチ及びエンジンの出力に接続可能である。機能的には、従来の平行な2つの変速機、すなわち、2つの平行な副変速機と同等であり、動力伝達する際に一度に1つずつ用いる。当分使用されていない、すなわちアイドリング状態の副変速機は、次にシフトされるために事前選択され、噛合って待機しているギヤを有する。シフトは、用いていた副変速機の摩擦クラッチを切り離すのと、アイドリング状態であった副変速機を噛合わせるのを同時に行うことによって実施される。
【0003】
適切に設計されれば、デュアルクラッチトランスミッションは、生産コストをあまりかけず、低いエネルギー損失で、パワーシフトを達成する可能性を有する。これは、回転部品、すなわち、歯車、シャフト及びツースクラッチが、従来の多段変速機のものと類似しているためである。これにより、さらに、同じ生産設備の使用が可能になる。従って、従来の多段変速機に用いていたのと同じ施設内でデュアルクラッチトランスミッションを生産することは理にかなっている。
【0004】
デュアルクラッチトランスミッションは、2つの個別の副軸を有し、各入力軸に1つずつ接続される。一例として特許文献1がある。これらの副軸により、変速機が従来の多段変速機より相当幅広になる。そのため、変速機を車両に設置する上で問題が生じうる。しかし、デュアルクラッチトランスミッションの設計の中には、例えば、特許文献2及び特許文献3に記載されているように、1つの副軸しかないものもある。そこにルーズ歯車を回転可能に配置して、これらの歯車を、機械的ツースクラッチによって、互いに、また副軸にも回転可能に接続できる。ある意味、あたかも第2副軸が第1副軸と同軸に配置されているかのように見えるであろう。その結果、非常にコンパクトなパワーシフト式デュアルクラッチトランスミッションが達成され、対応する従来の多段変速機より幅が狭い。
【0005】
通常、デュアルクラッチトランスミッションでは、ツースクラッチを噛合わせたり、噛合いを外したりすることにより、現在アイドリング状態の副変速機でギヤを事前選択する。円滑かつ持続可能な操作のために、ツースクラッチによって噛合わせる部品が同期すること、すなわちこれらの部品が、ほぼ同じ回転速度を有することが必要である。そうでないと、クラッチの歯がぶつかり合い、歯の摩耗、若しくは破損及び騒音を引き起こしかねない。従って、噛合わせる部品を同期するために、様々な種類の装置及び設計が用いられている。これはまた、各ギヤシフトで動力切断がある従来の多段変速機の場合にも言えることである。しかし、大きな違いが1つある。それは、動力切断時に、噛合わせる部品を同期するために、エンジン回転数を制御できる点である。これは、重量トラック及びバスに共通の、自動機械式変速機(AMT)に用いられている方法である。動力切断のないデュアルクラッチトランスミッションでは不可能である。代わりに、何らかの同期装置が必要になる。分かり易い解決策は、例えば、特許文献4に記載のように、変速機におけるすべてのツースクラッチを同期装置として設計する、すなわち、同期クラッチ要素を備えることである。しかし、これは高いコスト及び動力損失を伴う。
【0006】
基本的に、必要となるのは2つの同期装置だけである。1つは、第1副変速機の速度を第2副変速機より高くできる装置であり、もう1つは、第1副変速機の速度を第2副変速機より低くできる装置である。該装置は、第1副変速機がアイドリング状態で、第2副変速機が作動状態であるとき、並びに第1副変速機が作動状態で、第2変速機がアイドリング状態のときに動作する。この装置を、中央同期ユニットと呼ぶ。分かり易い例が、特許文献5に示されている。
【0007】
デュアルクラッチトランスミッションにおける中央同期ユニットは、非常に単純な設計である。しかし、通常、動力切断のないシフトが、連続したギヤ間でのみ実施されることを要する。さらに、連続したギヤ同士の速度比の間隔はほぼ等しくなければならない。例えば特許文献4に記載のように、オンロード及びオフロード用重量車両の場合、レンジセクションと組み合わせているが、これはもっともである。特許文献1において、中央同期ユニット30は、動力伝達に用いられる歯車13を利用する。このとき、同期機能に必要なのはさらに3つの歯車32、33及び39のみである。これらの歯車は、同期時に荷重を支持するだけで良いため、動力伝達歯車よりその幅を相当小さくできる。従って、中央同期化ユニットは、特に軸方向の長さについては非常にコンパクトにすることができ、さらに費用効率を高くできる。
【0008】
同期クラッチ要素が一切ないツースクラッチを、非同期ツースクラッチと呼ぶ。非同期ツースクラッチを備える変速機には特別な注意が必要である。エンジンが作動中で、車両が停止している場合を考慮できる。変速機の出力に、従って駆動輪に駆動可能に接続されるシャフト及び歯車は回転しない。変速機の他の部品は、例えばパワーテイクオフユニットを駆動するために、エンジンと駆動可能に連動しているため、回転する。このとき、車両を駆動させようとすると、エンジンとパワーテイクオフユニットを切り離して、スタートオフギヤを変速機で噛合わせる必要がある。スタートオフギヤに対応するツースクラッチが非同期であれば、回転部品の速度が十分低くなるまで、スタートオフギヤを噛合わせることはできない。従って、特別な手段がなければ、それに数秒かかる可能性があり、ほとんど許容不可能である。そのため、非同期ツースクラッチを含む変速機は、回転部品の速度を選択的に下げることができる軸ブレーキを備えていることが多い。このような例については、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9、特許文献10、特許文献11、特許文献12、特許文献13、特許文献14を参照でき、デュアルクラッチトランスミッションについては特許文献15を参照されたい。軸ブレーキは、通常、駆動可能に接続されたシャフト又は歯車に作用する。
【0009】
デュアルクラッチトランスミッションでは、車両が停止しているとき、回転部品の速度を下げるために、2つの軸ブレーキを各副変速機について1つずつ用いることができるが、コストは増加する。
【0010】
中央同期ユニットに伴う制約は、連続したギヤ間のシフトのみを可能にすることである。例えば、急な下り坂条件において低速から急加速する際に、いくつかの多段ギヤシフトを実施できれば、有利であろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第4,876,907号明細書
【特許文献2】独国特許発明第923402号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第3131156号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2008/0188342号明細書
【特許文献5】英国特許第2110324号明細書
【特許文献6】米国特許第3,309,934号明細書
【特許文献7】独国特許出願公開第19652916号明細書
【特許文献8】米国特許第5,988,344号明細書
【特許文献9】米国特許出願公開第2003/0168300号明細書
【特許文献10】国際公開第2004/069621号
【特許文献11】米国特許第7,000,748号明細書
【特許文献12】スウェーデン国特許第527267号明細書(SE527267C2)
【特許文献13】国際公開第2008/094122号
【特許文献14】国際公開第2008/105728号
【特許文献15】独国特許出願公開第3739898号明細書
【特許文献16】米国特許第6,958,028号明細書
【特許文献17】米国特許第5,347,879号明細書
【特許文献18】米国特許第4,777,837号明細書
【特許文献19】独国特許発明第4226577号明細書
【特許文献20】米国特許出願公開第2008/0190228号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、本発明の第1の目的は、改善されたマルチクラッチトランスミッションであって、i)車両が停止しているときのギヤの噛合わせと、ii)多段パワーシフトとを促進する手段が付与されると共に、iii)コンパクトであり、iv)強力で、v)費用効率が高く、vi)作動していないときの動力損失が低い、マルチクラッチトランスミッションを提供することである。これは、冒頭に記載したマルチクラッチトランスミッションによって達成され、その特徴は請求項1に定義される。
【0013】
本発明の装置は、少なくとも1つの原動機を備える自動車のマルチクラッチトランスミッションであり、
マルチクラッチトランスミッションは、原動機に駆動可能に接続された摩擦クラッチと、出力軸と、摩擦クラッチに接続された入力軸、入力軸の少なくとも1つに平行な副軸、歯車及びツースクラッチを備える主変速機とを含み、
摩擦クラッチの第1クラッチとツースクラッチの第1サブセットが、原動機と出力軸との間の第1ギヤセットに動力を伝達させるために、選択的に噛合うように設計されており、また、摩擦クラッチの第2クラッチとツースクラッチの第2サブセットが、原動機と出力軸との間の第2ギヤセットに動力を伝達させるために、選択的に噛合うように設計されており、
主変速機が、第2ギヤセットの1つのギヤに動力を伝達して、第1摩擦クラッチを切り離すと共に、事前選択された第1ギヤセットの1ギヤを有し、事前選択された第1ギヤセットの別のギヤを有するように変更し、
マルチクラッチトランスミッションが、原動機と出力軸との間の動力伝達を切断することなく、第2ギヤセットの1ギヤから、第1ギヤセットの事前選択された1ギヤにシフトできるように設計されており、
軸ブレーキユニットが、入力軸の1つの回転速度を下げる傾向があるトルクを及ぼすために、選択的に作動状態となるように設計され、中央同期ユニットが、入力軸の第1軸を入力軸の第2軸より速く、又は遅く回転させるために、選択的に作動状態となるように設計されていることを特徴とする、マルチクラッチトランスミッション。
【0014】
本発明の別の実施形態において、軸ブレーキユニット及び中央同期ユニットはさらに、出力軸が回転していないとき、ツースクラッチの噛合わせの前に、主変速機における回転部品の速度を下げるために、同時に作動状態になるように設計されている。
【0015】
本発明のさらに別の実施形態では、軸ブレーキユニットは、副軸と、入力軸の1つを、歯車の2つによって制動するように設計された副軸ブレーキユニットであり、歯車の一方は、副軸に回転可能に取り付けられ、また歯車の他方は、入力軸の1つに回転可能に取り付けられており、これら2つの歯車は噛合う。
【0016】
本発明の別の実施形態では、軸ブレーキユニットは、入力軸ブレーキユニットであり、入力軸ブレーキユニットは、入力軸に回転可能に取り付けられた、又は入力軸と一体化した第1要素と、マルチクラッチトランスミッションハウジングに取り付けられた、又はハウジングと一体化した第2要素との相互作用を制動することにより、入力軸の1つを直接制動するように設計されている。
【0017】
本発明のまた別の実施形態では、入力軸ブレーキユニットは、多段パワーシフトを実施するとき用いられるように設計されている。
【0018】
本発明のさらに別の実施形態では、主変速機は、ローギヤ(第2ギヤセットの1ギヤである)から、より高速のギヤ(入力軸の第1ギヤセットの1ギヤである)への多段パワーシフトを実施するように設計され、入力軸ブレーキは制動を実施するように設計され、また、より高速のギヤを噛合わせることができるように、入力軸ブレーキは、入力軸の回転速度を、第1ギヤセットの事前選択されるギヤに対応するレベルに下げるように設計されている。
【0019】
前述した実施形態の別の実施形態では、入力軸ブレーキは、入力軸の回転速度を主軸の回転速度まで下げるように設計されており、入力軸は、第1ギヤセットにおけるツースクラッチの1つによって主軸に駆動可能に直接接続されるように配置されている。
【0020】
前述した最後の4つの実施形態の別の実施形態では、第1要素は入力軸同期歯車であり、第2要素はブレーキパッドである。
【0021】
前述した最初の実施形態のさらに別の実施形態では、軸ブレーキユニットは、多段パワーシフトを促進するために、第2ギヤセットの1速ギヤに動力を伝達しながら、第1ギヤセットの3速ギヤの事前選択の前に作動状態となるように設計されている。
【0022】
前述した実施形態のさらに別の実施形態では、速度比が、第1ギヤセットの3速ギヤの速度比と、第2ギヤセットの1速ギヤの速度比との中間である、第1ギヤセットの2速ギヤがあり、多段パワーシフトが実施されるとき第1ギヤセットの2速ギヤは飛ばされる。
【0023】
前述した実施形態の別の実施形態では、歯車の1つは、第1ギヤセットの1ギヤ及び第2ギヤセットの1ギヤに動力を伝達し、歯車の1つを介して第1ギヤセットの3速ギヤ及び第2ギヤセットの1速ギヤにゼロ動力を伝達する。
【0024】
前述した最後の3つの実施形態のさらに別の実施形態では、歯車の2つが噛合い、第1ギヤセットのローギヤ及び第2ギヤセットのローギヤに動力を伝達するが、第1ギヤセットのローギヤの減速比は、第2ギヤセットのローギヤの減速比より大きい。
【0025】
本発明の別の実施形態では、中央同期ユニットは、入力軸の第1軸を、入力軸の第2軸より、2段未満速い又は遅い速度に対応して回転させるために、選択的に作動状態にするよう設計される。
【0026】
本発明のさらに別の実施形態では、マルチクラッチトランスミッションは、デュアルクラッチトランスミッションである。
【0027】
本発明のさらに有利な実施形態は、請求項1に続く従属項から明らかになるであろう。
【0028】
本発明は、添付の図面を参照しながら、以下にさらに詳しく説明する。これらの図面は、例示するために、本発明の好ましい実施形態、さらに技術的背景を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態による、多段自動機械式デュアルクラッチトランスミッション(DCT)を概略的に示す図である。
【図2】本発明の別の実施形態による、多段自動機械式デュアルクラッチトランスミッション(DCT)を概略的に示す図である。
【図3】図2の軸ブレーキの詳細を概略的に示す図である。
【図4】図2の軸ブレーキの詳細を概略的に示す図である。
【図5】図2の軸ブレーキの詳細を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、デュアルクラッチトランスミッション100の縦断面図を概略的に示す図である。トランスミッション100は、2つのハウジング部分、すなわちクラッチハウジング101と主ハウジング102(又はマルチクラッチトランスミッションハウジング)を備える。クラッチハウジング101には、デュアル摩擦クラッチ110が配置され、これは、フライホイール111、そこにボルト締めされたねじりダンパー116、クラッチ入力軸118、並びに第1クラッチディスクセット113及び第2クラッチディスクセット114を有するデュアルクラッチアセンブリ112を含む。また、デュアル摩擦クラッチ110を制御するアクチュエータ装置(図示なし)もある。フライホイール111は、エンジンクランク軸(図示なし)に取り付けられている。
【0031】
主変速機120が主ハウジング102内に配置される。2つの入力軸、すなわち第1入力軸121と第2入力軸122がある。第1入力軸121は、第1クラッチディスクセット113によって回転可能に駆動する。同様に、第2入力軸122は、第2クラッチディスクセット114によって回転可能に駆動する。
【0032】
第1一次歯車歯132は、第1入力軸121と一体である。第2一次歯車歯130は、第2入力軸122と一体である。主軸124は、入力軸121及び122と同軸である。副軸123はこれらと平行である。第2入力軸122は、入力軸ベアリング125によって、クラッチハウジング101内に支持される。主軸124と、第1入力軸121及び第2入力軸122との間に、4つのパイロットベアリング129が配置される。主軸124は、主軸ベアリング128によって主ハウジング内に支持される。従って、主軸及び入力軸の完全だが過剰に拘束しない支持が達成される。
【0033】
主軸124は、3つのルーズ歯車、すなわち第2二次ルーズ歯車134、第1二次ルーズ歯車136及びリバース二次ルーズ歯車191を支持する。第1二次ルーズ歯車136及びリバース二次ルーズ歯車191は、第1/リバースツースクラッチ141によって、主軸124に回転可能にロックされる。また、第2二次ルーズ歯車134は、第2ツースクラッチ142によって、主軸124に回転可能にロックされる。最終的に、主軸124は、直接ツースクラッチ140によって第1入力軸121に回転可能にロックされる。
【0034】
副軸123に、第2一次歯車131が回転可能に取り付けられる。これは、第2入力軸122の第2一次歯車130と噛合う。一次副軸ルーズ歯車133は、第1入力軸121の第1一次歯車132と噛合う。二次副軸ルーズ歯車135は、主軸124の第2二次歯車134と噛合う。さらに、副軸123と一体である第1二次歯車137は、主軸124の第1二次ルーズ歯車136と噛合う。最後に、リバース二次歯車192は、副軸123と一体であり、リバースアイドラ歯車193を介してリバース二次ルーズ歯車191と駆動可能に接続される。一次副軸ルーズ歯車133は、選択的に、第1副軸ツースクラッチ148によって二次副軸ルーズ歯車135に回転可能にロックされる。二次副軸ルーズ歯車135は、選択的に、第2副軸ツースクラッチ149によって副軸123に回転可能にロックされる。
【0035】
出力軸171は主軸124と一体である。そこにコンパニオンフランジ173が回転可能に取り付けられており、これは、プロペラシャフト(図示なし)とのインターフェースである。
【0036】
自動又は半自動ギヤシフトは、ギヤシフト制御ユニット150によって実施される。このギヤシフト制御ユニット150は、ギヤシフト制御装置ハウジング155、直接シフトフォーク153、第2シフトフォーク152及び第1/リバースシフトフォーク151を含む。直接シフトフォーク153は、直接ツースクラッチ140を制御する。第2シフトフォーク152は、二次ツースクラッチ142を制御し、また、第1/リバースシフトフォーク151は、第1リバースツースクラッチ141を制御する。
【0037】
ギヤシフト制御ユニット150については、本明細書で詳細には説明しない。その構造部分であるギヤシフト制御装置ハウジング155は、鋳造ブランクから機械加工してもよく、主ハウジング102にボルト締めされる。ハウジング内に、マイクロコントローラ、センサ、弁、及びアクチュエータを配置してもよい。シフトフォーク151、152及び153は、アクチュエータに接続されたシフトロッドによって支持される。その他の構成も可能であり、シフトフォーク151、152及び153のいずれかが、ギヤシフト制御ユニット150の一部であってもよいし、そうでなくてもよい。さらにまた、ギヤシフト制御ユニット150は、トランスミッション100の様々な位置に配置される異なる部品から構成されるものでもよい。
【0038】
副軸ツースクラッチ148及び149は、第1副軸シフトフォーク158及び第2シフトフォーク159によって制御される。シフトフォーク158及び159は、概略的に示すように、副軸アクチュエータ157により、シフトロッド(図示なし)を介して作動される。
【0039】
任意のパワーテイクオフ駆動ユニット178が、主ハウジング102にボルト締めされ、副軸123に回転可能に接続される。パワーテイクオフ駆動ユニット178は、例えば、ポンプ、コンプレッサー及び電気機械(図示なし)を駆動する。これについて詳細には説明しないが、当業者には容易に理解されるように、ハウジング部品、ベアリング、シャフト、クラッチ、並びに噛合い及び解除のための制御部品、歯車装置、並びに出力フランジを含みうる。
【0040】
本発明によれば、軸ブレーキ160が、デュアルクラッチトランスミッション100の入力軸又は副軸の1つの回転速度を落とすように設置され、中央同期ユニット180が、デュアルクラッチトランスミッション100内に配置される。
【0041】
副軸を制動する軸ブレーキを図1に開示する。概略的に示すように、副軸ブレーキ160が、副軸123の左端とクラッチハウジング101との間に配置される。副軸ブレーキ160は、副軸123の回転速度を選択的に下げることができるが、これは、ツースクラッチの高速噛合いに不可欠である。
【0042】
中央同期ユニット180が、第2一次歯車131、第2入力軸122、第1入力軸121、及び一次副軸ルーズ歯車133の間に位置する。中央同期ユニット180は、入力軸同期歯車181、副軸同期ルーズ歯車182、副軸同期ツインコーン183、及び一次副軸ルーズ歯車133の内側円錐面133cを含む。入力軸同期歯車181は、第1入力軸121に回転可能に取り付けられている。副軸同期ルーズ歯車182は、副軸123に回転可能に設けられている。副軸同期ツインコーン183は、副軸123に回転可能に、さらに副軸上で軸方向に運動可能に取り付けられる。
【0043】
副軸同期ツインコーン183の軸方向移動によって、その外側円錐面のいずれかが、副軸同期ルーズ歯車182又は一次副軸ルーズ歯車133の内側円錐面と噛合う。このとき、摩擦トルクが発生するが、トルクは、接触する円錐面同士の相対速度を低下させる傾向がある。
【0044】
入力軸同期歯車181は、第2一次歯車歯130(第2入力軸122の)より大きいピッチ円直径を有し、第2一次歯車歯130のピッチ円直径は、第1入力軸121の第1一次歯車歯132のピッチ円直径より大きい。相応して、ピッチ円直径は、第2一次歯車131及び一次副軸ルーズ歯車133より、副軸同期ルーズ歯車182の方が小さい。従って、図1において、副軸同期ツインコーン183を右側へと軸方向に移動することによって、一次副軸ルーズ歯車133の回転速度を、副軸123の回転速度と等しくすることができる。このとき、第1入力軸121の回転速度は、第1一次歯車歯132のピッチ円直径が小さいために、第2入力軸122の回転速度より大きくなる。同様に、副軸同期ツインコーン183を左側へと軸方向に移動することによって、副軸同期ルーズ歯車182及び副軸123の回転速度を等しくすることができる。そうすると、第1入力軸121は、入力軸同期歯車181のピッチ円直径が大きいために、第2入力軸122より低速で回転することになる。
【0045】
前述したように、副軸ブレーキ160は、第2入力軸122、並びにこれに駆動可能に接続された全部品の回転速度を選択的に下げることができる。本発明の別の実施形態では、これは、中央同期ユニット180と組み合わせることができ、入力軸同期歯車181が副軸同期ルーズ歯車182と噛合うため、第1入力軸121も、これに駆動可能に接続された部品と一緒に減速する。従って、ツースクラッチにおける速度差を小さくするために回転部品を減速することによって、例えば、パワーテイクオフ操作後に、停止状態の車両との噛合いを促進する。
【0046】
主変速機120は、6つの前進ギヤを有するが、これにより、連続したギヤ同士のシフトの際に、駆動輪への高い動力伝達が可能になる。動力伝達が切断することなく、相互にシフトできる2つのバックギヤがある。その機能は、特許文献3の図1及び図2で説明されている。ツースクラッチ140、141、142、148及び149は、噛合いを促進するために、同期部品を備える必要がない。既に説明したように、これによりコスト及び動力損失が軽減される。さらに、ツースクラッチ140、148及び142、149は、半径方向の広がりが限定的であるため、同期性能を損なうことなく、軸方向に重なることができる。しかし、中央同期ユニット180自体は、最も近い、より高速又は低速ギヤへの連続的な一段階のパワーシフトしか可能にしない。非常にコンパクトな主変速機120において、副軸ブレーキ160は、残念ながら、多段パワーシフトのギヤの事前選択時に用いることができないことが明らかになる。従って、トランスミッション100を、動力を切断することなく多段シフトを可能にするように改変できれば有利であろう。好ましくは、こうした改変は、機能及びサイズに関して、トランスミッション100の魅力的な特徴に与える影響を最小限にすべきである。
【0047】
図2では、本発明の別の実施形態のトランスミッション200を示すが、トランスミッションも軸ブレーキ260を含み、ブレーキは、図1の実施形態と比較して、デュアルクラッチトランスミッション200の第1入力軸121の回転速度を直接下げるように設計される。中央同期ユニット280は、図1と同様の方法で、デュアルクラッチトランスミッション200に配置される。図2の部品は、図1の部品と同じであるか、あるいは同じであってよい。これらの部品を同じ符号で示す。対応するが、同じではない部品については、最初の数字(1/2)を除いて同じ数を有する。
【0048】
従って、入力軸ブレーキ260は、副軸ブレーキ160に代わって用いられる。入力軸ブレーキ260は、ブレーキパッド261として概略的に示されており、ブレーキパッドは、改変された中央同期ユニット280の改変された入力軸同期歯車281(第1入力軸121)における嵌め合いブレーキ溝281gと選択的に接触させることができる。入力軸同期歯車281の直径が大きいため、制動トルクが増大する。入力軸ブレーキ260は、図示されていないアクチュエータによって作動(又は作動状態に)され、アクチュエータは、改変されたギヤシフト制御ユニット250の改変されたギヤシフト制御ハウジング255と一体化しているか、又はこれに取り付けられている。その他の構成も可能であり、ブレーキパッド261とそのアクチュエータは、例えば、トランスミッションハウジング101、102に取り付けられたギヤシフト制御ユニット250から物理的に分離していてもよい。
【0049】
入力軸ブレーキ260は、第1入力軸121、並びにこれに駆動可能に接続された全部品の回転速度を選択的に下げることができる。中央同期ユニット280と組み合わせることによって、改変された入力軸同期歯車281が副軸同期ルーズ歯車182と噛合うため、副軸223も、これに駆動可能に接続された部品と一緒に減速する。従って、ツースクラッチにおける速度差を小さくするために回転部品を減速することによって、例えば、パワーテイクオフ操作後に、停止状態の車両との噛合いを促進できる。
【0050】
本発明の別の実施形態によれば、第1入力軸121に作用することにより、入力軸ブレーキ260を用いて、1つの大きな多段パワーシフト(図示の例では、2速ギヤから5速ギヤへの)時の事前選択を促進することもできる。これをどのようにして実施できるかを説明するために、2速ギヤで動作しているときのトランスミッション200について考慮する。このとき、第1/リバースツースクラッチ141は、図2の左側に噛合い、第1二次ルーズ歯車136及び主軸124を回転可能にロックする。すると、動力は、第2入力軸122の副変速機で、第2一次歯車131、副軸223、第1二次歯車137、第1二次ルーズ歯車136、並びに主軸124を介して、出力軸171に伝達される。第1入力軸121の副変速機は、1速ギヤを事前選択する。次いで、第1及び第2副軸ツースクラッチ148、149が、両方とも噛合う。また、3速ギヤを事前選択することもでき、この場合、第1副軸ツースクラッチ148及び第2ツースクラッチ142が噛合う。いずれも場合にも、以下の方法で、5速ギヤを事前選択する。初めに、第1副軸ツースクラッチ148を切り離す。次に、入力軸ブレーキ260を適用して、第1入力軸121の回転速度を主軸124の回転速度まで減速する。最後に、直接ツースクラッチ140を噛合わせる。
【0051】
第1入力軸121の副変速機で5速ギヤが事前選択された場合には、第2クラッチディスクセット114の解除と、第1クラッチディスクセット113の噛合わせを同時に行うことにより、多段パワーシフトを実施できる。次に、5速ギヤで、動力は、第1入力軸121から主軸124及び出力軸171へと直接導かれる。従って、入力軸ブレーキ260を用いて、2速ギヤから5速ギヤへのパワーシフトが可能になる。
【0052】
図2では、入力軸ブレーキ260は、奇数ギヤに対して作動状態の第1入力軸121の副変速機に作用する。図1では、副軸ブレーキ160は、第2入力軸122の副変速機に作用し、これが動力を偶数ギヤに伝達する。入力軸ブレーキ260は、動力を切断することなく多段アップシフトのギヤの事前選択に用いることができるが、副軸ブレーキ160を用いることはできない。これは、コンパクトな主変速機120及び220の特徴によるものであり、両方の副変速機のギヤへの動力伝達のために、複数の歯車が用いられる。例えば、二次副軸ルーズ歯車135は、1速及び3速ギヤ、並びに4速及び6速ギヤに動力を伝達する。1速ギヤで駆動する場合、この歯車は「使用中」であり、その速度は、4速ギヤの事前選択を促進するために変更することはできない。同様に、3速ギヤが作動状態であるとき、6速ギヤを事前選択することはできない。従って、副軸ブレーキ160は、多段パワーシフトのギヤの事前選択に用いることはできない。
【0053】
しかし、前述したように、2速ギヤで駆動する場合には、入力軸ブレーキ260を用いて、5速ギヤを事前選択する。この違いは、以下のように説明できる。2速ギヤの場合、歯車130、131、137及び136が動力を伝達している。5速ギヤでは、第1入力軸121のクラッチ側末端から直接ツースクラッチ140に、歯車132だけで、その歯を介してではなく、軸方向に、動力が伝達される。従って、5速及び2速ギヤへと動力を伝達する歯車はない。これにより、第1入力軸121の副変速機の速度を調節して、2速ギヤでの駆動中に5速ギヤを事前選択することが可能になる。例えば、特許文献15に記載されているような増速装置を用いれば、上記と逆のこと、すなわち5速ギヤで駆動中に、2速ギヤを事前選択することも可能である。
【0054】
従って、軸ブレーキは、第2入力軸122(副軸123、図1)の副変速機に対する作用から、第1入力軸121(図2)へと再配置されている。この再配置によって、多段パワーシフトの事前選択時に入力軸ブレーキ260の使用が可能になっている。
【0055】
図2の実施形態による本発明を特徴付けるのは、以下の特徴を有するデュアルクラッチトランスミッションにおける多段パワーシフトの事前選択時に、軸ブレーキを用いることができることである。
−中央同期ユニットが、隣接するギヤの事前選択を促進する(一段シフト)。
−軸ブレーキが、事前選択されるギヤの副変速機の回転部品に作用する。
−2つの副変速機に、ギヤに動力を伝達する少なくとも1つの歯車がある。
−どの歯車も、事前選択しようとするギヤ及び現在使用中のギヤの両方に動力を伝達しない。
【0056】
図2に示す主変速機220で、噛合う歯車対136、137は、1速ギヤ及び2速ギヤに動力を伝達する。同様に、噛合う歯車対134、135は、3速ギヤ及び4速ギヤに動力を伝達する。1速ギヤ及び3速ギヤは、第1入力軸121の副変速機の一部である。従って、これらの噛合う歯車対では、より低速のギヤ(最大の減速比を有する)、すなわち1速及び3速ギヤは、それぞれ、入力軸ブレーキ260が作用する副変速機の一部である。このとき、多段パワーシフトのために軸ブレーキが補助する事前選択を可能にする条件を再公式化する。すなわち、軸ブレーキは、動力伝達のために噛合う歯車対を用いる、より低速のギヤの副変速機に作用するであろう。次に、軸ブレーキは、噛合う歯車対を用いる、より高速のギヤで駆動するとき、副変速機のより高速のギヤの事前選択を促進する。
【0057】
図3〜5は、入力軸ブレーキ260の実施形態を概略的に示す。ブレーキパッド261は、ピストンロッド263内にピン262で止められている。ピストン264をピストンロッド263に取り付けて、ブレーキアクチュエータハウジング265内に配置する。弁手段(図示なし)が、流体吸込みチャネル265fを通して加圧流体を選択的に制御することによって、ピストン264に作用する。シール手段266が、ピストン264の上方側を下方から封止している。従って、流体吸込みチャネル265fを通して、加圧流体を流入させることにより、ピストン264、ピストンロッド263及びブレーキパッド261を下方に押すことができる。次に、ブレーキパッド261は、入力軸同期歯車281のブレーキ溝281gと噛合う。摩擦力が発生し、これが第1入力軸121の回転速度を下げることになる。ピストン264の上方側に対する流体圧力が解放されると、ピストンロッド263は、戻しばね267によって押し上げられて、ブレーキパッド261が、ブレーキ溝281gから外れる。ピストンロッド263は、ベアリング手段268によって支持されている。第1入力軸121の速度を感知するために、1セットの歯281tを用いることができる。これに代わるものとして、入力軸同期歯車281の通常の歯を用いることもできる。
【0058】
図5は、図3における「v−v」に沿った断面図を示す。図4は、ブレーキパッド261と、ブレーキアクチュエータハウジング265の下部の、図5における矢印「iv」の図を示す。ブレーキアクチュエータハウジング265にはくぼみ265rがある。戻しばね267によって押し戻されると、ブレーキパッド261がくぼみ265rによって案内されるが、いずれもピストンロッド263の中心、並びにピン262を中心に行われる。これは、ブレーキパッド261の十分に画定された解除位置及び方向付けをもたらし、ブレーキ溝281gに対する隙間を確実にする。図5に示すように、ブレーキパッド261は、入力軸の周辺方向において非対称であるのが好ましい。これにより、摩擦材料の均一な接触圧力及び摩耗、いわゆる自己倍力作用若しくはサーボ効果による制動作用の増大がもたらされる。エッジ281e及び孔281hが、入力軸121、122内部からの油の流れを捕捉し、冷却のために、これをブレーキ溝281g及びブレーキパッド261に向ける。
【0059】
従って、入力軸ブレーキ260を用いて、i)車両が停止しているとき、ギヤの噛合いを促進し(中央同期ユニット280と一緒に)、また、ii)多段パワーシフトの事前選択を促進する。さらに、これは、iii)非常にコンパクトであり、軸方向にほとんど場所を取らない。ブレーキ溝281g内への押し込み作用と自己倍力作用によって、これはiv)強力である。単純な設計と、少数の部品によって、v)費用効率が高くなる。最後に、作動していないとき、ブレーキパッド261は、くぼみ265rによって案内されるため、vi)動力損失が低い。従って、入力軸ブレーキ260は、本発明の範囲を満足する可能性を有する。
【0060】
第1入力軸121の副変速機に作用する入力軸ブレーキ260は、本発明の重要な特徴としてみなすことができる。これは、多段パワーシフトの事前選択を可能にするが、中央同期ユニット280と一緒に、車両が停止しているとき、依然としてギヤの噛合いを促進する(最後に記載した機能も、図1の実施形態によって実施する)。
【0061】
摩擦材料、例えば、有機、炭素基材、モリブデン若しくは青銅を、嵌め合い摩擦表面のいずれか、好ましくはブレーキパッド261の小さな接触面に被覆する。摩擦材料は、当業者には公知のように、複数の方法、例えば、接着、溶接、焼結及びプラズマ噴霧のいずれかによって、支持構造物に結合させることができる。
【0062】
本発明について、ある程度具体的に説明してきた。しかし、当業者には明らかであるように、本発明の請求の範囲内で、複数の変更及び改変が可能である。例えば、主変速機220又は120は、特許文献4及び特許文献16に記載されているように、レンジセクションと組み合わせることもできる。
【0063】
主変速機220又は120に代わって、例えば、特許文献1に記載のように、その他いずれの副軸を有するデュアルクラッチトランスミッションを用いることもできる。例えば、特許文献17又は特許文献18に記載のように、摩擦クラッチのその他の設計及び配置も可能である。3つ以上の摩擦クラッチ(例えば、特許文献19又は特許文献20参照)を含むこともできる。1つ以上の摩擦クラッチを備えるパワーシフトトランスミッションを、マルチクラッチトランスミッションと呼ぶ。
【0064】
以上説明してきた本発明の範囲には含まれないが、提案される別の解決策は、中央同期ユニット内の両装置を両方同時に作動させることである。中央同期ユニットの複雑さ、大きさ及びコストが増大する以外に、これは、極めて高い熱負荷をその摩擦面にもたらすことになる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの原動機を備える自動車のマルチクラッチトランスミッション(100、200)であって、
前記マルチクラッチトランスミッションは、前記原動機に駆動可能に接続された摩擦クラッチ(113、114)と、出力軸(171)と、前記摩擦クラッチに接続された入力軸(121、122)、前記入力軸の少なくとも1つに平行な副軸(123、223)、歯車(130、131、132、133、134、135、136、137、191、192、193)及びツースクラッチ(140、141、142、148、149)を備える主変速機(220)とを含み、
前記摩擦クラッチの第1クラッチ(113)と前記ツースクラッチの第1サブセットが、前記原動機と前記出力軸との間の第1ギヤセットに動力を伝達させるために、選択的に噛合うように設計されており、また、前記摩擦クラッチの第2クラッチ(114)と前記ツースクラッチの第2サブセットが、前記原動機と前記出力軸との間の第2ギヤセットに動力を伝達させるために、選択的に噛合うように設計されており、
前記主変速機が、前記第2ギヤセットの1ギヤに動力を伝達して、前記第1摩擦クラッチを切り離すと共に、事前選択された前記第1ギヤセットの1ギヤを有し、事前選択された前記第1ギヤセットの別のギヤを有するように変更するように設計されており、
前記マルチクラッチトランスミッションが、前記原動機と前記出力軸との間の動力伝達を切断することなく、前記第2ギヤセットの1ギヤから、前記第1ギヤセットの事前選択された1ギヤにシフトできるように設計されており、
軸ブレーキユニット(160、260)が、前記入力軸の1つ(121、122)の回転速度を下げる傾向があるトルクを及ぼすために、選択的に作動状態となるように設計され、中央同期ユニット(180、280)が、前記入力軸の第1軸(121)を前記入力軸の第2軸(122)より速く、又は遅く回転させるために、選択的に作動状態となるように設計されていることを特徴とする、マルチクラッチトランスミッション。
【請求項2】
前記軸ブレーキユニット及び前記中央同期ユニットが、前記出力軸が回転していないとき、ツースクラッチの噛合わせの前に、前記主変速機における回転部品の速度を下げるために、同時に作動状態になるようにさらに設計されていることを特徴とする、請求項1に記載のマルチクラッチトランスミッション。
【請求項3】
前記軸ブレーキユニットが、前記副軸(123)と前記入力軸の1つ(122)とを、前記歯車の2つ(131、130)によって制動するように設計された副軸ブレーキユニット(160)であり、前記歯車の一方は、前記副軸に回転可能に取り付けられ、また前記歯車の他方は、前記入力軸の1つに回転可能に取り付けられており、前記2つの歯車は噛合うことを特徴とする、請求項1または2に記載のマルチクラッチトランスミッション。
【請求項4】
前記軸ブレーキユニットが、入力軸ブレーキユニット(260)であり、前記入力軸ブレーキユニットは、前記入力軸に回転可能に取り付けられた、又は前記入力軸と一体化した第1要素(281)と、マルチクラッチトランスミッションハウジング(102)に取り付けられた、又は前記ハウジングと一体化した第2要素(261)との相互作用を制動することにより、前記入力軸の1つ(121)を直接制動するように設計されていることを特徴とする、請求項1または2に記載のマルチクラッチトランスミッション。
【請求項5】
前記入力軸ブレーキユニット(260)が、多段パワーシフトを実施するときに用いられるように設計されていることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかに記載のマルチクラッチトランスミッション。
【請求項6】
前記主変速機が、前記第2ギヤセットの1ギヤであるローギヤ(131、136、137)から、前記入力軸(121)の前記第1ギヤセットの1ギヤである、より高速のギヤへの前記多段パワーシフトを実施するように設計され、前記入力軸ブレーキは制動を実施するように設計され、
前記高速のギヤを噛合わせることができるように、前記入力軸ブレーキ(260)が、前記入力軸(121)の回転速度を、前記第1ギヤセットの事前選択されるギヤに対応するレベルに下げるように設計されていることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれかに記載のマルチクラッチトランスミッション。
【請求項7】
前記入力軸ブレーキ(260)が、前記入力軸(121)の回転速度を前記主軸(124)の回転速度まで下げるように設計されており、その際、前記入力軸(121)は、前記第1ギヤセットにおける前記ツースクラッチの1つ(140)によって前記主軸(124)に駆動可能に直接接続するように配置されていることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれかに記載のマルチクラッチトランスミッション。
【請求項8】
前記第1要素が、入力軸同期歯車であり、また、前記第2要素が、ブレーキパッドであることを特徴とする、請求項4乃至7のいずれか一項に記載のマルチクラッチトランスミッション。
【請求項9】
前記軸ブレーキユニット(260)が、多段パワーシフトを促進するために、前記第2ギヤセットの1速ギヤに動力を伝達しながら、前記第1ギヤセットの3速ギヤの事前選択の前に作動状態となるように設計されていることを特徴とする、請求項1に記載のマルチクラッチトランスミッション。
【請求項10】
速度比が、前記第1ギヤセットの前記3速ギヤの速度比と、前記第2ギヤセットの前記1速ギヤの速度比との中間である、前記第1ギヤセットの2速ギヤがあり、前記多段パワーシフトが実施されるとき、前記第1ギヤセットの2速ギヤが飛ばされることを特徴とする、請求項1乃至9のいずれかに記載のマルチクラッチトランスミッション。
【請求項11】
前記歯車の1つ(133、135)が、前記第1ギヤセットの1つ及び前記第2ギヤセットの1つに動力を伝達し、前記歯車の前記1つを介して前記第1ギヤセットの前記3速ギヤ及び前記第2ギヤセットの前記1速ギヤにゼロ動力を伝達することを特徴とする、請求項1乃至10のいずれかに記載のマルチクラッチトランスミッション。
【請求項12】
前記歯車の2つ(136、137)が噛合い、前記第1ギヤセットのローギヤ及び前記第2ギヤセットのローギヤに動力を伝達するが、前記第1ギヤセットの前記ローギヤの減速比は、前記第2ギヤセットの前記ローギヤの減速比より大きいことを特徴とする、請求項9乃至11のいずれかに記載のマルチクラッチトランスミッション。
【請求項13】
前記中央同期ユニット(180、280)が、前記入力軸の第1軸(121)を、前記入力軸の第2軸(122)より2段未満速い又は遅い速度に対応して回転させるために、選択的に作動状態にするよう設計されることを特徴とする、請求項1乃至12のいずれかに記載のマルチクラッチトランスミッション。
【請求項14】
前記マルチクラッチトランスミッションが、デュアルクラッチトランスミッションであることを特徴とする、請求項1乃至13のいずれかに記載のマルチクラッチトランスミッション。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−513765(P2013−513765A)
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−542365(P2012−542365)
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【国際出願番号】PCT/EP2009/008878
【国際公開番号】WO2011/069530
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(500277711)ボルボ ラストバグナー アーベー (163)
【Fターム(参考)】