説明

自動車のルーフ構造及びルーフメンバ

【課題】部品の種類を少なくすることができて製作コストを低廉化することができ、部品の管理にかかる手間を軽減することができる自動車のルーフ構造及びルーフメンバを提供する。
【解決手段】幅が次第に広がるパネル部2を備えたルーフパネル1と、パネル部2の車幅方向の両端部11に架け渡された前後一対のルーフメンバ41,42とを設け、他方のルーフメンバ42の車幅方向の端縁42Tを、パネル部2の車幅方向の端縁2Tに沿うように車両前後方向に対して傾斜させて形成し、他方のルーフメンバ42と同一形状に形成した一方のルーフメンバ41を、他方のルーフメンバ42とは左右を逆にしてパネル部2の車幅方向の両端部11に架け渡し、一方のルーフメンバ41の車幅方向の端縁41Tを、車両前後方向に対してパネル部2の車幅方向の端縁2Tとは逆方向に傾斜させてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
幅が次第に広がるパネル部を備えたルーフパネルと、前記パネル部の車幅方向の両端部に架け渡された前後一対のルーフメンバとを設け、前記パネル部の車幅方向の両端部をフランジ状に形成してある自動車のルーフ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ルーフパネルは薄い鋼板で形成されており、補強ビードが形成されても十分な面剛性を得ることができないことから、ルーフパネルの車幅方向の両端部に、車両前後方向に並ぶ複数のルーフメンバを架け渡して面剛性を確保し、これにより、べかつき・べか音・こもり音の発生を抑制している。
冒頭に記載した自動車のルーフ構造においては、例えば、前側のルーフメンバが接合されるパネル部分が、後側のルーフメンバが接合されるパネル部分よりも幅広であるために、前側のルーフメンバと後側のルーフメンバを同一形状に形成すると、パネル部分に対する前側のルーフメンバの長さが短くなって、パネル部のフランジ状の端部に対して前側のルーフメンバの車幅方向の端部の溶接接合部が小さくなる。
そこで、従来、前側のルーフメンバを後側のルーフメンバよりも長く設定し、パネル部のフランジ状の端部に対して前側のルーフメンバの車幅方向の端部の溶接接合部が小さくならないようにしていた。
なお、前側のルーフメンバが接合されるパネル部分の幅と、後側のルーフメンバが接合されるパネル部分の幅とが同一であるか、あるいは両者の幅の差が極めて小さいと、複数のルーフメンバを同一形状に形成しても、いずれのルーフメンバも前記パネル部分に対する長さが短くなることはなく、パネル部のフランジ状の端部に対して両ルーフメンバの車幅方向の端部の溶接接合部が小さくなることはない(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−96659号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の構造によれば、前側のルーフメンバを後側のルーフメンバよりも長く設定して両者を別形状に形成していたために、部品の種類が多くなって、製作コストが高くなり、部品の管理にも手間がかかっていた。
本発明の目的は、幅が次第に広がるパネル部の車幅方向の両端部に前後一対のルーフメンバを架け渡した構造でありながら、部品の種類を少なくすることができて製作コストを低廉化することができ、部品の管理にかかる手間を軽減することができる自動車のルーフ構造及びルーフメンバを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の特徴は、
幅が次第に広がるパネル部を備えたルーフパネルと、前記パネル部の車幅方向の両端部に架け渡された前後一対のルーフメンバとを設け、前記パネル部の車幅方向の両端部をフランジ状に形成してある自動車のルーフ構造であって、
一方のルーフメンバよりも前記パネル部の幅狭側に位置する他方のルーフメンバの車幅方向の端縁を、前記パネル部の車幅方向の端縁に沿うように車両前後方向に対して傾斜させて形成し、
前記他方のルーフメンバと同一形状に形成した前記一方のルーフメンバを、前記他方のルーフメンバとは左右を逆にして前記パネル部の車幅方向の両端部に架け渡し、前記一方のルーフメンバの車幅方向の端縁を、車両前後方向に対して前記パネル部の車幅方向の端縁とは逆方向に傾斜させてある点にある。(請求項1)
【0005】
この構成によれば、
他方のルーフメンバの車幅方向の端縁を、パネル部の車幅方向の端縁に沿うように車両前後方向に対して傾斜させて形成してあるから、他方のルーフメンバの車幅方向の端縁を、その端縁の全長にわたってパネル部の車幅方向の端縁に近づけることができ、パネル部のフランジ状の端部に対して他方のルーフメンバの車幅方向の端部の溶接接合部を十分大きく確保することができる。
また、上記構成では、他方のルーフメンバと同一形状に形成した一方のルーフメンバを、他方のルーフメンバとは左右を逆にしてパネル部の車幅方向の両端部に架け渡し、一方のルーフメンバの車幅方向の端縁を、車両前後方向に対してパネル部の車幅方向の端縁とは逆方向に傾斜させてある。従って、例えば一方のルーフメンバを、他方のルーフメンバとは左右を逆にすることなくパネル部の車幅方向の両端部に架け渡した構造に比べると、前記一方のルーフメンバの車幅方向の端縁のうち、他方のルーフメンバーに近い側の端縁部分をパネル部の車幅方向の端縁に、より近づけることができる。その結果、パネル部のフランジ状の端部に対して一方のルーフメンバの車幅方向の端部の溶接接合部を十分大きく確保することができる。
これにより、溶接接合の状態を安定化でき、前後一対のルーフメンバーでルーフパネルの面剛性を確保することができて、べかつき・べか音・こもり音の発生を抑制することができる。
そして、他方のルーフメンバと一方のルーフメンバを同一形状に形成してあるから、両ルーフメンバを共通化することができて、部品の種類を少なくすることができる。従って、誤組み付けを回避することができ、部品管理の工数を削減することができ、部品置き場を削減することができる。また、ルーフパネルの曲率が近い他の種類の自動車にも採用することができて、部品共通化の幅を広げることができる。(請求項1)
【0006】
本発明において、
上下方向から見て前記他方のルーフメンバの車幅方向の端縁を、前記パネル部の車幅方向の端縁に重複させてあると、他方のルーフメンバの長さを最大限の長さに設定することができ、パネル部のフランジ状の端部に対して他方のルーフメンバの車幅方向の端部の溶接接合部をより大きく設定することができる。(請求項2)
【0007】
本発明において、
前記他方のルーフメンバの車幅方向の端部のうち車両前後方向中央の端部部分を、前記パネル部の車幅方向の端部に下側から重ね合わせて溶接接合し、
前記一方のルーフメンバの車幅方向の端部のうち最も車幅方向外側に位置する一方のコーナー側の端部部分を、前記パネル部の車幅方向の端部に下側から重ね合わせて溶接接合してあると、次の作用を奏することができる。(請求項3)
【0008】
前記他方のルーフメンバの車幅方向の端部のうち車両前後方向中央の端部部分を、前記パネル部の車幅方向の端部に下側から重ね合わせて溶接接合してあるから、パネル部のフランジ状の端部に対して溶接接合部を十分大きく確保することができて、溶接接合状態を安定化することができる。また、前記一方のルーフメンバの車幅方向の端部のうち最も車幅方向外側に位置する一方のコーナー側の端部部分を、前記パネル部の車幅方向の端部に下側から重ね合わせて溶接接合してあるから、パネル部のフランジ状の端部に対して溶接接合部を十分大きく確保することができて、溶接接合状態を安定化することができる。(請求項3)
【0009】
本発明において、
前記パネル部の車幅方向の端部を、ルーフパネル本体の側部から下方に延びる第1縦壁と、前記第1縦壁の下端から車幅方向外側に延びる第1下壁とを備えた断面L字状の端部に構成し、
サイドボディアウタパネルの車幅方向内側の端部を、サイドボディアウタパネル本体の側部から下方に延びる第2縦壁と、前記第2縦壁の下端から車幅方向内側に延びる第2下壁とを備えた断面L字状の端部に構成し、
前記前後一対のルーフメンバの車幅方向の端部に前記第1下壁を上側から重ね合わせるとともに前記第2下壁を下側から重ね合わせ、前記第1下壁と第2下壁で前記前後一対のルーフメンバの車幅方向の端部を挟み込んで溝部を形成し、前記溝部に上側から溶接チップを挿入して、前記第1下壁と前記前後一対のルーフメンバの車幅方向の端部と前記第2下壁とを溶接接合し、
前記一方のルーフメンバの上側の第1縦壁部分と、前記他方のルーフメンバの上側の第1縦壁部分とに、車幅方向内側に凹む上側及び車幅方向外側開放の凹部を形成して、前記溶接チップを前記凹部に受け入れ可能に構成してあると、次の作用を奏することができる。(請求項4)
【0010】
溶接チップを前記溝部内で車幅方向内側に寄せて、溶接チップの周部の一部分を凹部内に位置させた状態で溶接接合することができる。これにより、スポット溶接においてスポット打点を車幅方向内側に寄せることができる。その結果、パネル部の車幅方向の端部やルーフメンバの車幅方向の端部を必要以上に車幅方向外側に延出しなくても、溶接接合部を十分大きく確保することができる。(請求項4)
【0011】
本発明において、
前記凹部の車両前後方向における長さを、前記溶接チップの径よりも長く、かつ、前記凹部の車幅方向における深さよりも長く設定してあると、溶接チップの周部の一部分を凹部内により確実に位置させることができる。(請求項5)
【0012】
本発明において、
前記パネル部の車幅方向の端縁である前記第1下壁の車幅方向外側の端縁から前記第2下壁の上面にわたって塗装シーラーを塗布してあると、次の作用を奏することができる。(請求項6)
【0013】
本発明においては、上記のようにパネル部の車幅方向の端部やルーフメンバの車幅方向の端部を必要以上に車幅方向外側に延出しなくても、溶接接合部を十分大きく確保することができる(請求項4の作用)ことから、パネル部の車幅方向の端縁やルーフメンバの車幅方向の端縁とサイドボディアウタパネルの車幅方向の端部の第2縦壁との間に隙間を十分確保することができる。
その結果、塗装シーラーを第1下壁の車幅方向外側の端縁から前記第2下壁の上面にわたって十分塗布することができ、しかも、ルーフメンバの車幅方向の端縁がサイドボディアウタパネルの第2下壁と第2縦壁との断面円弧状の境界部(いわゆるRじり)に乗り上げるのを回避することができて防水性を向上させることができる。(請求項6)
【0014】
本第2発明は、
請求項1〜6のいずれか一つに記載の自動車のルーフ構造のルーフメンバであり、この構成のルーフメンバを用いた自動車のルーフ構造において、請求項1〜6のいずれか一つに記載の自動車のルーフ構造による作用と同様の作用を奏することができる。(請求項7)
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、
幅が次第に広がるパネル部の車幅方向の両端部に前後一対のルーフメンバを架け渡した構造でありながら、部品の種類を少なくすることができて製作コストを低廉化することができ、部品の管理にかかる手間を軽減することができる自動車のルーフ構造及びルーフメンバを提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
図1,図5に自動車のルーフ構造を示してある。図1は自動車のルーフ構造を下方から見た下面図、図5は、自動車のルーフ構造の分解斜視図である。
【0017】
これらの図に示すように前記自動車のルーフ構造は、左右のルーフサイドレール(図示せず)に架け渡された車両前後方向に長いルーフパネル1と、ルーフパネル1のセンターピラーに対する両接合部間に架け渡された1本のセンタールーフメンバ3と、前側パネル部2(以下、「パネル部2」と略称する)の車幅方向の両端部11(左右両端部、以下、同じ)に架け渡された前後一対のフロントルーフメンバ41,42と、後側パネル部5の車幅方向の両端部に架け渡された1本のリヤルーフメンバ6とから成る。
【0018】
[ルーフパネル1の構造]
ルーフパネル1は薄い鋼板で形成されて上側に少し凸に湾曲している。そして、ルーフパネル1の車両前方側の端縁33は車両前方側Frが凸の円弧状に形成され、車両後方側の端部34は後下方に斜めに折曲して車両後方側の車体パネルに対する接合部に構成されている。
【0019】
このルーフパネル1の前記パネル部2は車両前方側Frになるにつれて幅が次第に広がっている。また、前側のフロントルーフメンバ41(一方のルーフメンバに相当)が架け渡されているルーフパネル部分の曲率と、後側のフロントルーフメンバ42(他方のルーフメンバに相当)が架け渡されているルーフパネル部分の曲率との差は小さく、互いに近い曲率になっている。
【0020】
ルーフパネル1の後側パネル部5には、車両前後方向に沿う複数の長い補強リブ7を車幅方向に所定の間隔を空けて形成してある。各補強リブ7は上側に凸の断面円弧状に形成されるとともに、後側パネル部5のほぼ全長にわたって形成されている。
【0021】
図4に示すように、ルーフパネル1の車幅方向の端部11を、ルーフパネル本体35の側部から下方に延びる段付きの第1縦壁12と、第1縦壁12の下端から車幅方向外側W2に延びるフランジ状の第1下壁13とを備えた断面L字状の端部に構成してある。そして、第1下壁13をサイドボディアウタパネル30の車幅方向内側W1の端部16に接合してある。第1下壁13とサイドボディアウタパネル30の車幅方向内側W1の端部16との接合構造については後で詳しく説明する。
【0022】
上記のルーフパネル1の面剛性を前記センタールーフメンバ3とフロントルーフメンバ41,42とリヤルーフメンバ6で確保し、これにより、バックリング(ルーフ振動の変位飛び移り)を防止して、べかつき・べか音・こもり音の発生を抑制している。センタールーフメンバ3は高張力鋼で帯状に形成され、フロントルーフメンバ41,42とリヤルーフメンバ6はそれぞれ薄い鋼板で帯状に形成されている。
【0023】
[センタールーフメンバ3とフロントルーフメンバ41,42とリヤルーフメンバ6の構造]
センタールーフメンバ3とフロントルーフメンバ41,42とリヤルーフメンバ6の車幅方向の両端部はフランジ状に形成され、このフランジ状の両端部がルーフパネル1の車幅方向の両端部11の第1下壁13に下側から各別に溶接接合されている。センタールーフメンバ3は全長にわたって同一幅に形成されているが、フロントルーフメンバ41,42とリヤルーフメンバ6の車幅方向の両端部は、両端部間のメンバ部分よりも幅広に形成されている。
【0024】
各メンバ3,41,42,6の車幅方向の両端部間の部分はルーフパネル1に対応して上側に凸に少し湾曲し、前記車幅方向の両端部間の部分とルーフパネル1の下面との間に空間が形成されている。また、センタールーフメンバ3とフロントルーフメンバ41,42とリヤルーフメンバ6のいずれにも、長手方向(車幅方向)に沿う上側に凸の断面円弧状の複数の補強リブ50を、車両前後方向に間隔を空けて各メンバ3,41,42,6のほぼ全長にわたって形成してある。
【0025】
[フロントルーフメンバ41,42の構造]
図1,図2に示すように、前側のフロントルーフメンバ41よりもパネル部2の幅狭側(車両後方側)に位置する後側のフロントルーフメンバ42の車幅方向の両端縁42Tを、パネル部2の車幅方向の両端縁2Tに各別に沿うように車両前後方向に対して傾斜させて形成してある。つまり、後側のフロントルーフメンバ42の車幅方向の両端縁42Tを、車両前方側Frほど車幅方向外側W2に位置するように傾斜させてある。そして、上下方向から見て後側のフロントルーフメンバ42の車幅方向の両端縁42Tを、パネル部2の車幅方向の両端縁2Tに各別に重複させてある。
【0026】
また、後側のフロントルーフメンバ42と同一形状に形成した前側のフロントルーフメンバ41を、後側のフロントルーフメンバ42とは左右を逆にしてパネル部2の車幅方向の両端部11に架け渡してある。これにより、前側のフロントルーフメンバ41の車幅方向の一端縁41Tを、車両前後方向に対してパネル部2の車幅方向の一端縁2Tとは逆方向に傾斜させ、前側のフロントルーフメンバ41の車幅方向の他端縁41Tを、車両前後方向に対してパネル部2の車幅方向の他端縁2Tとは逆方向に傾斜させてある。つまり、前側のフロントルーフメンバ41の車幅方向の両端縁41Tは、車両後方側ほど車幅方向外側W2に位置するように傾斜している。
【0027】
図2,図4に示すように、後側のフロントルーフメンバ42の車幅方向の一端部42Aのうち車両前後方向中央の端部部分42A1を、パネル部2の車幅方向の一端部11の第1下壁13に下側から重ね合わせて溶接接合し、後側のフロントルーフメンバ42の車幅方向の他端部42Aのうち車両前後方向中央の端部部分42A1を、パネル部2の車幅方向の他端部11の第1下壁13に下側から重ね合わせて溶接接合してある。
【0028】
さらに、前側のフロントルーフメンバ41の車幅方向の一端部41Aのうち最も車幅方向外側W2に位置する一方のコーナー側の端部部分41A1(車両後方側のコーナー側の端部部分)を、パネル部2の車幅方向の一端部11の第1下壁13に下側から重ね合わせて溶接接合し、前側のフロントルーフメンバ41の車幅方向の他端部41Aのうち最も車幅方向外側W2に位置する一方のコーナー側の端部部分41A1(車両後方側のコーナー側の端部部分)を、パネル部2の車幅方向の他端部11の第1下壁13に下側から重ね合わせて溶接接合してある。
次に、上記の溶接接合部の構造についてさらに詳しく説明する。
【0029】
[ルーフパネル1とサイドボディアウタパネル30とフロントルーフメンバ41,42との接合構造]
図4に示すように、左右のサイドボディアウタパネル30の車幅方向内側W1の端部16を、サイドボディアウタパネル本体38から下方に延びる段付きの第2縦壁32と、第2縦壁32の下端から車幅方向内側W1に延びる第2下壁31とを備えた断面L字状の端部に構成してある。
【0030】
そして、前記前後一対のフロントルーフメンバ41,42の車幅方向の端部41A,42Aに第1下壁13を上側から重ね合わせるとともに第2下壁31を下側から重ね合わせ、第1下壁13と第2下壁31で前後一対のフロントルーフメンバ41,42の車幅方向の端部41A,42Aを挟み込んで溝部29を形成し、溝部29に上側から溶接チップTを挿入して、第1下壁13と前後一対のフロントルーフメンバ41,42の車幅方向の端部41A,42Aと前記第2下壁31とをスポット溶接してある。
【0031】
第1下壁13の車幅方向外側W2の端縁2T、及び、前後一対のフロントルーフメンバ41,42の車幅方向の端縁41T,42Tと、サイドボディアウタパネル30の第2縦壁32との間には隙間を形成してある。この隙間に塗装具の先端部を挿入して、パネル部2の車幅方向の端縁2Tである第1下壁13の車幅方向外側W2の端縁から第2下壁31の上面31Jにわたって塗装シーラー51を塗布してある。
【0032】
前側のフロントルーフメンバ41の車幅方向の端縁41Tは、パネル部2の車幅方向の端縁2Tである第1下壁13の車幅方向外側W2の端縁よりも車幅方向内側W1に位置している。これにより、シーラー塗布具の先端が前側のフロントルーフメンバ41の車幅方向の端縁41Tに当接することによる塗装不良を回避することができる。
【0033】
前側のフロントルーフメンバ41の上側の第1縦壁部分と、後側のフロントルーフメンバ42の上側の第1縦壁部分とには、車幅方向内側W1に凹む上側及び車幅方向外側開放の凹部46を形成して、溶接チップTを凹部46に受け入れ可能に構成してある。そして、凹部46の車両前後方向における長さを、溶接チップTの先端部の径よりも長く、かつ、前記凹部50の車幅方向における深さよりも長く設定してある。
【0034】
これにより、溶接チップTを前記溝部29内で車幅方向内側W1に寄せて、溶接チップTの周部の一部分を凹部46内に位置させた状態で溶接接合することができ、スポット溶接においてスポット打点を車幅方向内側W1に寄せることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】自動車のルーフ構造を下方から見た下面図
【図2】図1のA部とB部の拡大図
【図3】ルーフパネルの要部の斜視図
【図4】ルーフパネルとサイドボディアウタパネルとルーフメンバとの接合部の縦断面図
【図5】自動車のルーフ構造の分解斜視図
【符号の説明】
【0036】
1 ルーフパネル
2 パネル部
2T パネル部の車幅方向の端縁(第1下壁の車幅方向外側の端縁)
11 パネル部の車幅方向の端部(ルーフパネルの車幅方向の端部)
12 第1縦壁
13 第1下壁
16 サイドボディアウタパネルの車幅方向内側の端部
29 溝部
30 サイドボディアウタパネル
31 第2下壁
31J 第2下壁の上面
32 第2縦壁
35 ルーフパネル本体
38 サイドボディアウタパネル本体
41 一方のルーフメンバ(前側のフロントルーフメンバ)
41A 一方のルーフメンバの車幅方向の端部
41A1 最も車幅方向外側に位置する一方のコーナー側の端部部分
41T 一方のルーフメンバの車幅方向の端縁
42 他方のルーフメンバ(後側のフロントルーフメンバ)
42A 他方のルーフメンバの車幅方向の端部
42A1 車両前後方向中央の端部部分
42T 他方のルーフメンバの車幅方向の端縁
46 凹部
51 塗装シーラー
T 溶接チップ
W1 車幅方向内側
W2 車幅方向外側

【特許請求の範囲】
【請求項1】
幅が次第に広がるパネル部を備えたルーフパネルと、前記パネル部の車幅方向の両端部に架け渡された前後一対のルーフメンバとを設け、前記パネル部の車幅方向の両端部をフランジ状に形成してある自動車のルーフ構造であって、
一方のルーフメンバよりも前記パネル部の幅狭側に位置する他方のルーフメンバの車幅方向の端縁を、前記パネル部の車幅方向の端縁に沿うように車両前後方向に対して傾斜させて形成し、
前記他方のルーフメンバと同一形状に形成した前記一方のルーフメンバを、前記他方のルーフメンバとは左右を逆にして前記パネル部の車幅方向の両端部に架け渡し、前記一方のルーフメンバの車幅方向の端縁を、車両前後方向に対して前記パネル部の車幅方向の端縁とは逆方向に傾斜させてある自動車のルーフ構造。
【請求項2】
上下方向から見て前記他方のルーフメンバの車幅方向の端縁を、前記パネル部の車幅方向の端縁に重複させてある請求項1記載の自動車のルーフ構造。
【請求項3】
前記他方のルーフメンバの車幅方向の端部のうち車両前後方向中央の端部部分を、前記パネル部の車幅方向の端部に下側から重ね合わせて溶接接合し、
前記一方のルーフメンバの車幅方向の端部のうち最も車幅方向外側に位置する一方のコーナー側の端部部分を、前記パネル部の車幅方向の端部に下側から重ね合わせて溶接接合してある請求項1又は2記載の自動車のルーフ構造。
【請求項4】
前記パネル部の車幅方向の端部を、ルーフパネル本体の側部から下方に延びる第1縦壁と、前記第1縦壁の下端から車幅方向外側に延びる第1下壁とを備えた断面L字状の端部に構成し、
サイドボディアウタパネルの車幅方向内側の端部を、サイドボディアウタパネル本体の側部から下方に延びる第2縦壁と、前記第2縦壁の下端から車幅方向内側に延びる第2下壁とを備えた断面L字状の端部に構成し、
前記前後一対のルーフメンバの車幅方向の端部に前記第1下壁を上側から重ね合わせるとともに前記第2下壁を下側から重ね合わせ、前記第1下壁と第2下壁で前記前後一対のルーフメンバの車幅方向の端部を挟み込んで溝部を形成し、前記溝部に上側から溶接チップを挿入して、前記第1下壁と前記前後一対のルーフメンバの車幅方向の端部と前記第2下壁とを溶接接合し、
前記一方のルーフメンバの上側の第1縦壁部分と、前記他方のルーフメンバの上側の第1縦壁部分とに、車幅方向内側に凹む上側及び車幅方向外側開放の凹部を形成して、前記溶接チップを前記凹部に受け入れ可能に構成してある請求項1〜3のいずれか一つに記載の自動車のルーフ構造。
【請求項5】
前記凹部の車両前後方向における長さを、前記溶接チップの径よりも長く、かつ、前記凹部の車幅方向における深さよりも長く設定してある請求項4記載の自動車のルーフ構造。
【請求項6】
前記パネル部の車幅方向の端縁である前記第1下壁の車幅方向外側の端縁から前記第2下壁の上面にわたって塗装シーラーを塗布してある請求項4又は5記載の自動車のルーフ構造。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一つに記載の自動車のルーフ構造のルーフメンバ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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