説明

自動車の供給ポンプ

自動車の供給ポンプは、構成要素(1)の中空空間(4)に収容されるエンジンで駆動される供給ユニットを有し、ここで、中空空間(4)は自動車のユニットの機能ホイール(2)によって半径方向に囲まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前段に記載の自動車の供給ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、駆動できる滑車輪と、流体摩擦クラッチを介して駆動される冷却液インペラとを備える、自動車の内燃機関の冷却液回路用の冷却液ポンプを開示している。冷却液インペラがシャフトに設けられ、このシャフトに滑車輪が回転接続部なしに取付けられ、滑車輪がベルト駆動部を介して自動車の内燃機関により駆動される。流体摩擦クラッチは滑車輪に一体化され、この流体摩擦クラッチはロータを備え、このロータは、シャフトに接続され、粘性流体を介して伝達される剪断力により滑車輪によって駆動され、この結果、冷却液インペラも、粘性流体により滑車輪とロータとの間に形成される力の流れによって駆動される。前記冷却液インペラは滑車輪の軸方向前方に配置され、この結果、全装置の全体の大きさが比較的大きくなる。
【0003】
【特許文献1】独国特許出願公開第19932359A1号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、自動車のコンパクトな構造の供給ポンプを規定することを目的とする。本発明によれば、この目的は請求項1の特徴によって達成される。従属請求項は好ましい発展形態を規定している。
【課題を解決するための手段】
【0005】
供給ポンプのエンジンで駆動されるユニットは構成要素の中空空間に収容され、この中空空間は、回転する機能ホイールによって半径方向に囲まれ、この回転する機能ホイールは、自動車のアセンブリに割り当てられ、例えば、内燃機関のクランクシャフトによって直接駆動される滑車輪等として構成される。供給ユニットが、機能ホイールの周囲に及ぶ中空空間に一体化されることにより、特に軸方向において、非常にコンパクトな実施形態が実現されるが、この理由は、従来技術の実施形態と比較して、軸方向に必要な設置空間が、機能ホイールなしの供給ユニット用の設置空間よりも小さいか又はそれよりもほんの僅かに大きい程度であるからである。供給ユニットが中空空間に一体化されることによって、供給ポンプ及び機能ホイールの両方の作動方法の不具合を予想する必要がなくなるが、この理由は、原則として、両方の構造ユニットの機能を互いに独立して実行できるからである。しかし、有利な一実施形態によれば、中空空間で機能ホイールに収容される供給ポンプの駆動ホイールを直接又は間接的に接続することが好都合であり得るため、供給ポンプ用の追加の駆動モータは用いられない。
【0006】
供給ユニットが収容される構成要素は、機能ホイールが回転可能に取付けられる軸受ジャーナルであることが好ましい。別の有利な実施形態によれば、供給ポンプの供給ユニットが収容されるポンプハウジングが、軸受ジャーナルを同時に形成するようになっている。軸受ジャーナルへの収容には、機能ホイールによって半径方向に囲まれる中空空間内の収容と組み合わされた供給ユニット用の保持装置が位置固定されるという利点がある。
【0007】
さらに、機能ホイールと供給ユニットの駆動ホイールとの間に伝達要素を設けることが好都合であり得るため、駆動ホイールと機能ホイールとの間には回転接続部が形成される。上記伝達要素は、特に、駆動ホイールと機能ホイールとの間のシャフトとして構成され、前記シャフトは、第1の好ましい実施形態によれば、同時に駆動ホイール及び機能ホイールの両方の回転軸になる。この実施形態は、軸受ジャーナルの壁を通して駆動ホイールのシャフトを案内するのに十分であり、軸受ジャーナルの端側に及ぶ機能ホイールの壁にこのシャフトを接続するのに十分であるので、簡単な構造を特徴とする。
【0008】
しかし、第2の代替実施形態によれば、供給ユニットの駆動ホイールと機能ホイールとの回転軸が一致せず、互いに平行にそして互いに離間して存在することも有利であり得る。この実施形態では、駆動ホイール及び機能ホイールは、中間に接続される中間ホイールを介して間接的に回転するように接続され、この結果、回転速度の加速比又は減速比を実現できる。特に、より高い回転速度の変速比を実現することが可能であり、この結果、供給ポンプは、機能ホイールよりも高い回転速度を有する。中間ホイールを追加したにもかかわらず、コンパクトな全体の大きさを維持するために、機能ホイールは、内部噛み合わせシステムを有する内部歯車として有利に構成され、この機能ホイールにおいて、中間ホイールは、内輪として配置され、内部歯車の内部噛み合わせシステムと噛み合う。機能ホイールと中間ホイールとの間の噛み合い接触の故に、これは、この場合確実な動力伝達であるが、中間ホイールと機能ホイールとの間の摩擦接続も基本的に適切であり得る。
【0009】
中間ホイールが設けられた場合、そのシャフトは、有利には、同時に供給ユニットの駆動ホイールのシャフトになるため、この結果、さらなる構造の簡略化が実現される。
【0010】
供給ポンプは、例えば、歯車ポンプとして、特に外部歯車ポンプとして構成され、この供給ポンプにおいて、供給される媒体は、歯車の外歯とハウジングの内壁との間で常に互いに噛み合う2つの歯車を介して搬送される。2つの歯車の一方は、シャフトを介して機能ホイールにより直接又は間接的に駆動される駆動ホイールとして構成される。
【0011】
しかし、別の実施形態によれば、供給ポンプの駆動部を機能ホイールから分離することと、この駆動部を機能ホイールとは別個に構成することも好都合であり得る。この場合、供給ポンプの駆動ホイールと機能ホイールとの間に回転接続部は不要である。
【0012】
別の請求項と図面の説明と図面とから、別の利点及び好ましい実施形態を理解できる。
【0013】
図面において、同一の構成要素には同一の参照番号が付されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1に示されている構成要素1は、自動車構成要素、例えば内燃機関のクランクケース、特にクランクケースの閉鎖カバーであり、このクランクケースにおいて、クランクシャフトが、クランクケースから突出し、内燃機関の補助アセンブリを駆動するための多様なプーリー及びホイールを駆動する。機能ホイール2は、一例として滑車輪等である構成要素1に回転可能に取付けられる。前記機能ホイールは、中空体として構成され、特にカップ形状を有し、この結果、内部空間又は中空空間4が機能ホイール2に形成される。一般に番号3で示されている供給ポンプはこの中空空間4に収容され、この供給ポンプは、例えば油供給ポンプ又は冷却液供給ポンプである。供給ポンプ3の供給ユニットは、好ましくは、歯車ポンプ、特に外部歯車ポンプとして構成され、ベーンセルポンプ等の他の実施形態も適切である。供給される流体は、吸入側に案内され、供給ポンプ3を介して圧力側で放出される。
【0015】
構成要素1に回転可能に取付けられるカップ状の形態の機能ホイール2の開口側は、構成要素1の側壁に面する。供給ポンプ3は、機能ホイール2を介して、あるいは、代替実施形態によれば、機能ホイール2とは独立して別個の駆動モータを介して運動接続部によって駆動される。供給ポンプ3は機能ホイール2の中空空間4に完全に収容される。
【0016】
図2による例示的な実施形態は、カップ状の形態の機能ホイール2の開口側が構成要素1の反対側にあるという点で、図1による例示的な実施形態とは異なる。機能ホイール2は、構成要素1内に突出する駆動シャフト5を介して駆動される。駆動シャフト5は、同時に機能ホイール2の回転装着部になる。供給ポンプ3は機能ホイール2の内部空間又は中空空間4に収容される。
【0017】
図3に示されている例示的な実施形態では、機能ホイール2は同様にカップ状の形態のものであり、機能ホイールの開口側は構成要素1に面する。機能ホイール2は、構成要素1に固定して接続される軸受ジャーナル6に回転可能に取付けられる。軸受ジャーナル6は、機能ホイール2の中空空間内に突出し、供給ポンプ3が完全に収容される中空空間4を同様に有する。供給ポンプ3の供給ユニットの駆動ホイールはシャフト7を介して機能ホイール2に回転するように接続される。シャフト7は機能ホイール2の回転軸9にあり、この回転軸は、同時に供給ポンプの供給ユニットの駆動ホイールの回転軸になる。シャフト7は、固定された軸受ジャーナル6の端壁を貫通し、機能ホイール2の端壁と供給ポンプ3の駆動ホイールとの間に回転接続部を形成する。
【0018】
図4による例示的な実施形態では、供給ポンプ3の駆動ホイールは機能ホイール2に対して偏心して取付けられる。それに応じて、機能ホイール2の回転軸9と供給ポンプ3の駆動ホイールの回転軸10とが、互いに平行にそして互いに離間して存在する。供給ポンプ3は、同様に、軸受ジャーナル6の中空空間4に完全に収容されるが、中間ホイール8は供給ポンプ3の駆動ホイールと機能ホイール2との間の伝達経路に接続され、この中間ホイール8は、供給ポンプ3の駆動ホイールと同一の回転軸10を有し、したがって、機能ホイール2に対して偏心して取付けられる。特に、図5による端面図から理解できるように、中間ホイール8は、固定して取付けられ、かつ内部歯車として構成される機能ホイール2の内部噛み合わせシステムと噛み合う回転可能な内輪として構成される。中間ホイール8のシャフト7は供給ポンプ3の駆動ホイールに回転するように接続される。このようにして、機能ホイール2の回転運動は、最初に中間ホイール8に伝達され、それからさらに供給ポンプ3の駆動ホイールに伝達される。等しくない変速比を有する回転速度の加速比は、機能ホイール2と中間ホイール8との大きさの比によって機能ホイール2と供給ポンプ3の駆動ホイールとの間で可能である。特に、より高い回転速度の加速比を実現でき、これにより、機能ホイール2よりも高い供給ポンプの回転速度が得られる。
【0019】
図6ないし図8は、供給ポンプ3、及び機能ホイール2と、それに噛み合う中間ホイール8とを介した供給ポンプの駆動を示している。図7に関連して図6から理解できるように、機能ホイール2は、外部噛み合わせシステムと内部噛み合わせシステムとを有する内部歯車として構成され、外部噛み合わせシステムは別の構成要素(図示せず)、例えば歯付きベルトと噛み合い、内部噛み合わせシステムは、機能ホイール2に対して偏心して取付けられる中間ホイール8と噛み合う。図7から理解できるように、中間ホイール8のシャフト7は、同時に、供給ポンプ3の駆動ホイール11のシャフトである。供給ポンプ3は、合計で2つの供給ホイールを有する外部歯車ポンプとして構成され、この供給ホイールの一方は、第2の供給ホイール12と噛み合う駆動ホイール11を形成する。両方のホイール11と12はインボリュート歯形システムを有し、このインボリュート歯形システムにおいて、図8に示されている矢印から理解できるように、噛み合わせシステムと収容ハウジングの内壁との間の駆動ホイール11及び供給ホイール12が反対方向に回転した場合に、供給される媒体が搬送され、この内壁は、例示的な実施形態においてホイール11と12を収容する軸受ジャーナル6の内壁である。図6〜図8において、駆動ホイール11と噛み合う供給ホイール12のシャフト13を見ることもできる。
【0020】
供給ポンプ3の2つのホイール11と12は軸受ジャーナル6の中空空間4に収容され、機能ホイール2の反対側にあるホイール11と12のシャフト7と13のそれらのシャフトスタブは、軸受ジャーナル6の中空空間4から軸方向に突出する。前記シャフトスタブ7と13を、隣接する構成要素(図示せず)に取付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】カップ状の機能ホイールが自動車の別の構成要素に保持され、機能ホイールの開口側が前記別の構成要素に面する、この機能ホイールの中空空間又は内部空間に配置される供給ポンプの概略図である。
【図2】カップ状の機能ホイールの開口側が支持構成要素の反対側にある、この機能ホイール及びその中に収容される供給ポンプの、図1に対応する図である。
【図3】供給ポンプが軸受ジャーナルの中空空間に一体化され、前記供給ポンプの駆動ホイールがシャフト片を介してカップ状の機能ホイールに回転するように接続される、中空体として構成されかつ自動車の構成要素に延びる軸受ジャーナルに回転可能に取付けられるこの機能ホイールを有する別の例示的な実施形態の図である。
【図4】供給ポンプが機能ホイール用の軸受ジャーナルの中空空間に配置されるが、この供給ポンプの駆動ホイールが、シャフト片を介して、内部歯車として構成される機能ホイールの内部噛み合わせシステムに内輪として噛み合う中間ホイールに回転するように接続される、この供給ポンプを有する別の実施形態の図である。
【図5】図4による実施形態の端面図である。
【図6】内部歯車として構成される機能ホイールが、中間ホイールと噛み合う内部噛み合わせシステムに加えて、外部噛み合わせシステムを有する、図4と図5に対応する例示的な実施形態の端面図である。
【図7】図6による構造の断面線VII−VIIによる断面図である。
【図8】外部歯車ポンプとして構成される供給ポンプを示した図6と図7による実施形態の背面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 構成要素
2 機能ホイール
3 供給ポンプ
4 中空空間
5 駆動シャフト
6 軸受ジャーナル
7 シャフト
8 中間ホイール
9 回転軸
10 回転軸
11 駆動ホイール
12 供給ホイール
13 シャフト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンで駆動される供給ユニットと、自動車のアセンブリの回転する機能ホイール(2)と、を有する自動車の供給ポンプであって、
前記供給ユニットが構成要素(1)の中空空間(4)に収容され、その中空空間(4)が前記機能ホイール(2)の半径方向周囲に及ぶことを特徴とする供給ポンプ。
【請求項2】
前記供給ユニットが収容される前記構成要素(1)が前記機能ホイール(2)の軸受ジャーナル(6)であることを特徴とする請求項1に記載の供給ポンプ。
【請求項3】
前記供給ユニットがポンプハウジングに収容され、前記ポンプハウジングが前記軸受ジャーナル(6)を形成することを特徴とする請求項2に記載の供給ポンプ。
【請求項4】
前記供給ユニットの駆動ホイール(11)と前記機能ホイール(2)とが伝達要素(7)を介して回転するように接続されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の供給ポンプ。
【請求項5】
前記伝達要素(7)が前記軸受ジャーナル(6)の壁を貫通することを特徴とする請求項4に記載の供給ポンプ。
【請求項6】
前記伝達要素が前記供給ユニットの前記駆動ホイール(11)と前記機能ホイール(2)との間のシャフト(7)として構成されることを特徴とする請求項4あるいは5に記載の供給ポンプ。
【請求項7】
前記シャフト(7)の回転軸(9)が前記機能ホイール(2)の回転軸(9)と一致することを特徴とする請求項6に記載の供給ポンプ。
【請求項8】
前記中間ホイール(8)が前記供給ユニットと前記機能ホイール(2)との間の伝達経路内に接続されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の供給ポンプ。
【請求項9】
前記中間ホイール(8)が前記機能ホイール(2)に確実に接続され、前記機能ホイール(2)と噛み合うことを特徴とする請求項8に記載の供給ポンプ。
【請求項10】
前記機能ホイール(2)が、内部噛み合わせシステムを有する内部歯車として構成され、前記中間ホイール(8)が前記内部噛み合わせシステムと噛み合うことを特徴とする請求項9に記載の供給ポンプ。
【請求項11】
前記中間ホイール(8)が前記機能ホイール(2)に摩擦接続されることを特徴とする請求項8に記載の供給ポンプ。
【請求項12】
前記中間ホイール(8)が前記機能ホイール(2)に対して偏心して取付けられることを特徴とする請求項8〜11のいずれか一項に記載の供給ポンプ。
【請求項13】
前記中間ホイール(8)の前記シャフト(7)が、同時に、前記供給ユニットの前記駆動ホイール(11)の前記シャフト(7)であることを特徴とする請求項8〜12のいずれか一項に記載の供給ポンプ。
【請求項14】
供給ポンプが歯車ポンプとして使用されることを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載の供給ポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2009−527680(P2009−527680A)
【公表日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−555665(P2008−555665)
【出願日】平成19年2月10日(2007.2.10)
【国際出願番号】PCT/EP2007/001151
【国際公開番号】WO2007/098849
【国際公開日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(598051819)ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフト (1,147)
【氏名又は名称原語表記】Daimler AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 137,70327 Stuttgart,Deutschland
【Fターム(参考)】