説明

自動車の制御装置

本発明は、少なくとも1つのプラスチック基板を備える自動車の制御装置、とりわけ自動車のエンジン制御装置であって、前記プラスチック基板に少なくとも1つの電気伝導性および/または熱伝導性のエレメントが割り当てられている形式の制御装置に関する。この制御装置においては、前記プラスチック基板(1)は少なくとも部分的に、電気伝導性および/または熱伝導性の、エレメントを形成するドーピング(16,17)を有している。さらに本発明は、上述のような自動車の制御装置のためのプラスチック基板を製造する方法に関する。この方法では、前記プラスチック基板は、電気伝導性および/または熱伝導性の構造を構成するために少なくとも部分的にドーピングされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの電気伝導性および/または熱伝導性のエレメントが割り当てられている少なくとも1つのプラスチック基板を備える自動車の制御装置、とりわけ自動車のエンジン制御装置に関する。
【0002】
さらに本発明は、自動車の制御装置のためのプラスチック基板を製造する方法に関する。
【0003】
先行技術
公知の自動車の制御装置は基本的にプラスチック基板を有しており、該プラスチック基板の上に、例えば電気導体路または冷却エレメント等のような電気伝導性および/または熱伝導性のエレメントが割り当てられている。現在このような制御装置の取り付けの際には、エレメントは、基本的にいわゆるSMT技術(Surface Munted Technique=表面実装技術)を用いてプラスチック基板の表面に固定される。この際エレメントは、例えばプラスチック基板にネジ留めされるか、接着されるか、または緊締される。これにより、このような公知の自動車の制御装置を製造するために必要な取り付けステップが多くなってしまう。さらに、比較的複雑な回路は、高い取り付けコストおよび高い設計コストを以てしか実現することができない。
【0004】
発明の概要
本発明によれば、プラスチック基板は少なくとも部分的に、電気伝導性および/または熱伝導性の、エレメントを形成するドーピングを有している。すなわち非伝導性であるプラスチック基板に、電気伝導性および/または熱伝導性でありかつエレメントを形成するドーピングが、部分的に設けられているのである。これによって電気伝導性および/または熱伝導性のエレメントは、本来的に非伝導性である基板自体から(一緒に)形成され、これによってとりわけ、構造スペースが特に節約された配置が可能となる。さらにこのエレメントは、プラスチック基板の中または基板上のあらゆるところに配置することができるので、複雑な回路配線を簡単に実現することが可能である。プラスチック基板は、エレメントを機械的に固定する機能、ならびに、外部作用からエレメントを保護する機能を果たす。エレメントは、いわば基板によって周囲をモールドされている、ないしは収容されているのである。このような有利な構成によって、制御装置は特に安定的および高耐久性に構成されている。ドーピングは、エレメントを所期のように位置づけるために、例えばプラスチック基板が液状/粘性である状態において注入することができる。
【0005】
本発明の発展形態によれば、ドーピングは電気的および/または熱的接続を形成する。有利には、プラスチック基板の中および/または基板上に、少なくとも1つの電気/電子的および/または熱的構成素子が配置されており、これらはドーピングによって形成された電気的および/または熱的接続を介してコンタクトされる。この接続は、有利には少なくとも1つのレーザビームを用いた局地的な溶融によって、および/または、少なくとも局地的に向けられた電界および/または磁界によって形成することができる。レーザビームによれば、例えばプラスチック基板の局地的な溶融を達成することができ、これによって伝導性ドーピングが電気伝導性接続へと流れ、この電気伝導性接続はプラスチック基板の長い区間を橋渡しすることができる。有利にはプラスチック基板は、少なくともドーピング領域においてフォーム状の構造を有する。プラスチック基板の液状/粘性の状態を局地的に導出することも考えられ、この基板内では、向けられた電界および/または磁界によって電気的および/または熱的接続が形成される。接続は、ドーピング領域におけるプラスチック基板への点圧によって形成された接続とすることもでき、この場合プラスチック基板は、熱的であろうと電気的であろうと伝導性の接続が形成されるまで局地的に押圧される。
【0006】
有利には、これに加えてプラスチック基板は少なくとも局地的に液状化または粘性化もされている。
【0007】
有利には、電気伝導性および/または熱伝導性のエレメントが、レーザ切断によって少なくとも1つの分離箇所を有する。このようにして例えば、電気伝導性/熱伝導性接続は、レーザ切断によって形成された分離箇所を有することができる。ここでは、複数の電気的および/または熱的な構成素子が割り当てられたプラスチック基板を準備することが考えられ、これらの構成素子は、複数の有利な電気的および/または熱的接続によって互いにコンタクトされている。有利には、プラスチック基板は、構成素子間で形成し得る全ての接続が存在するように構成されている。この際レーザ切断により、存在している接続の少なくとも1つを切断することによって、構成素子の所期の回路接続を互いに形成することができる。のちの使用のために望まない接続だけを切断する必要があり、これは上に述べたように簡単に実行することができる。
【0008】
本発明の発展形態によれば、ドーピングは電気的および/または熱的な差込接続の構成素子を形成する。有利には、プラスチック基板はこのために少なくとも1つの突出部および/または少なくとも1つの切欠部を有しており、ドーピングは、該突出部ないし切欠部の領域において、差込接続されたコネクタとコンタクトするように配置されており、これによって電気伝導性および/または熱伝導性の差込接続が生じる。そのためドーピングはこの目的に適うように、部分的にプラスチック基板の表面にまで達している。ドーピングは、例えば、コネクタの相応のコンタクト収容部に差し込むための電気伝導性のコンタクトピンを形成する。プラスチック基板は、有利には、複数の突出したコンタクトピンを有し、これらのコンタクトピンには1つのドーピングまたは種々異なるドーピングが設けられており、有利にはこれに加えて、これらのコンタクトピンは、コンタクト改善のために金属被覆された表面を部分的に有する。
【0009】
伝導性の(ドーピングされた)プラスチック基板と非伝導性のプラスチック基板との境界を厳密に画定することが望まれる場合には、ドーピングされた、すなわち電気伝導性の基板からなる1つまたは複数のコンタクトピンを、ドーピングされていない、すなわち非伝導性の基板に設けられた収容部に差し込んで、場合によって付加的に接着および/または溶接することが考えられる。
【0010】
1つないし複数のコンタクトピンをプラスチック基板と直接/一体的に構成することは、プラスチック基板への密接な接続が得られるという利点を有する。このことは、プラスチック基板が有利には制御装置のケーシングまたはケーシング部分として構成されている場合にとりわけ重要である。
【0011】
さらにドーピングは、電気的構成素子、とりわけ電気抵抗、コンデンサ、および/または電磁シールドの少なくとも1つの領域を形成している。非伝導性プラスチック基板に複数の伝導性ドーピングを有利に層状に配置することによってコンデンサが形成され、この際この種々異なるドーピングがそれぞれコンデンサ電極を形成する。ドーピング/コンデンサプレートの間の(プラスチック)基板材料の絶縁特性の変化によって、種々異なる容量値を実現することができる。プラスチック基板のための所定の材料においては、例えばプラスチック基板を伸ばすおよび/または広げるなどといった誘電体の変化によって、分極を生じさせることができる。このことはレーザビームによって達成することもできる。これにより、プラスチック基板において、物理的および/または化学的な組織変化または構造変化が局地的にもたらされる。択一的に、プラスチック基板に供給されたドーピングは、例えばレーザビームを用いた直接的または間接的な加熱、気化または溶融の際に、周囲を取り囲むプラスチック基板において組織変化ないし構造変化を達成し、これによって例えばコンデンサの誘電特性を決定することができる。有利にはドーピングは、プラスチック基板を通り抜けて延在する電気的導体路/接続の領域に配置されており、空間的に変わりやすい局地的な、場合によっては異方性でもある伝搬定数によって特性インピーダンス(実部および虚部)を所期のように調整し、とりわけ反射、漏話、シールド減衰、障害放射耐性、障害入射耐性、および/または静電放電(ESD=electro static discharge)に関連して導体路の信号完全性を改善することができる。有利には、このためにドーピングが層状に構成されている。
【0012】
有利には、導体路を取り囲むプラスチック基板は、とりわけHDR(High Data Rate)線での有利な伝搬特性("low-k"基板)を達成するために、少なくとも局地的に発泡性に構成されている。有利にはドーピングは、例えば信号接地に対する広帯域の高周波フィルタないしシールドを、種々異なる伝導率、透磁率、誘電率を有するドーピングされた基板層からなる層構造によって形成する。伝導率、透磁率、および誘電率は、プラスチック基板および/またはドーピング、およびプラスチック基板におけるドーピング材料の配向および成形を、相応に材料選択することよって調整することができる。本発明の有利な実施形態によれば、プラスチック基板には少なくとも1つのビクティムおよび/または低インピーダンスの吸収回路が設けられており、プラスチック基板に割り当てられた回路構造の外部の電磁障害が吸収される。ビクティムおよび/または吸収回路は、伝導性構造(パッチアンテナ)として、適当な局地的伝導率、透磁率、および誘電率を備える所期のように変化されたプラスチック基板の材料環境、とりわけドーピングによって変化されたプラスチック基板の材料環境の中に入れられている。このプラスチック基板における少なくとも1つのパッチ構造は、有利には電子回路のための離散的かつ受動的な電子構成素子、および/または、能動的かつ離散的な電子構成素子と接続されており、シールドおよび減衰を有利に設計することができる。有利には、プラスチック基板は制御装置の少なくとも1つのケーシング部分を形成する。該ケーシング部分は、有利には所定の透磁率および誘電率を備えるドーピングが設けられており、所定の波長領域において電磁妨害放射および妨害入射を吸収によって低減し、電磁的ケーシング共振、および、制御装置の電気導体路の寄生的かつ誘導性かつ容量性の結合を低減する。
【0013】
さらに有利には、ドーピングは少なくとも1つの冷却エレメントを形成する。このためにドーピングは、この目的に適うように熱伝導性のヒートブリッジとして構成されており、プラスチック基板での局地的な注入および/または配向によって実現されている。有利には、熱伝導性のドーピングは、熱伝導率の局地的な上昇を達成するために例えばレーザビームによって溶融される。この上昇によって、実質的にいわゆる局地的なサーマルビア(Thermal-Vias)またはサーマルインレー(Thermal-Inlays)が生じる。有利には、冷却エレメントを形成するドーピングは、プラスチック基板において、該プラスチック基板の内部から外部へと熱が輸送されるように配置および配向されている。特に基板の表面には、放熱性を改善するために、付加的に金属粉を備える被覆、例えば炭素鉄パウダーを備える熱可塑性樹脂ベースの分散液などが設けられている。
【0014】
有利な実施形態においては、ドーピングは、電気伝導性および/または熱伝導性の粒子および/または繊維によって形成されている。
【0015】
有利には、ドーピングは、円形、ロット形状、および/または別の形状の金属粒子ないし金属繊維、例えば銅繊維によって充填されたポリイミドまたは炭素からなるナノチューブ(最小の管)によって形成されている。
【0016】
有利には、粒子および/または繊維は、少なくとも局地的に粘性/液状であるプラスチック基板において、電磁界の印加および/または重力によって、配向および/または移動させられている。
【0017】
本発明の方法によれば、電気伝導性または熱伝導性の構造を構成するために、プラスチック基板が少なくとも部分領域的にドーピングされる。これによってプラスチック基板に電気伝導性および/または熱伝導性のエレメントを形成することができる。
【0018】
有利には、プラスチック基板ないしドーピングは、このような構造を形成するために、例えばレーザビームを用いた直接的または間接的な加熱によって溶融される。この際ドーピングの溶融によって、接続を形成または破壊することができる。プラスチック基板は、有利には少なくともドーピングの領域において、フォーム状に製造される。
【0019】
有利にはドーピングは、このような構造を形成するために、プラスチック基板が少なくとも局地的に液状である状態において、少なくとも局地的な電界および/または磁界によって配向される。
【0020】
最後にドーピングは、以下のものを形成するように配向される、および/または例えば溶融によって成形される。すなわち該ドーピングが、電気的および/または熱的接続、差込接続の電気的および/または熱的構成素子、とりわけ電気抵抗、コンデンサ、および/または電磁シールド等のような電気的構成素子の少なくとも一領域、および/または、冷却エレメント、を形成するように配向される、および/または例えば溶融によって形成されるのである。
【0021】
図面の簡単な説明
以下、本発明を図面に基づいて詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1Aおよび1Bは、電気的接続を備える有利なプラスチック基板の実施例を示す図である。
【図2】図2Aおよび2Bは、電気的接続を備える有利なプラスチック基板の有利な第2の実施例を示す図である。
【図3】図3A〜3Cは、分離された接続を備える有利なプラスチック基板の実施例を示す図である。
【図4】図4A〜4Cは、差込接続を備える有利なプラスチック基板の実施例を示す図である。
【図5】図5は、組み込まれたコンデンサを備える有利なプラスチック基板の実施例を示す図である。
【図6】図6は、信号完全性を改善するための層状のドーピングを備える有利なプラスチック基板の実施例を示す図である。
【図7】図7は、組み込まれた冷却エレメントを備える有利なプラスチック基板の実施例を示す図である。
【0023】
実施例の説明
図1Aは、ここでは詳細に示されていない自動車のモータケーシングの有利なプラスチック基板1の実施例を示す概略図である。プラスチック基板1には複数の電子構成素子2〜5が配置されている、ないしは、プラスチック基板1によって周囲がモールドされている/収容されている。各電子構成素子2〜5はそれぞれ2つの電気的コンタクト6、7ないし8、9ないし10、11ないし12、13を有する。電子構成素子2〜5の電気的コンタクト6〜13は、それぞれ隣接する電子構成素子の電気的コンタクトと向かい合っている。さらにプラスチック基板1は、電気伝導性のドーピング14、15および16が設けられた複数の領域を有する。各ドーピング14、15、16は金属繊維17からなり、これらの金属繊維はプラスチック基板1内にて無方向に存在している。ドーピング14〜16は、それぞれ向かい合う2つの電気的コンタクト6〜13の間の領域に配置されている。ドーピング14〜16の濃度に応じて、向かい合う電気的コンタクト6〜13の間における電気的接続が、形成されないこと、またはより強く形成されること、またはより弱く形成されることが保証されている。本発明のプラスチック基板1を製造する際には、ドーピング14〜16は、例えばプラスチック基板1がまだ液状/粘性である状態において相応の領域に注入される。
【0024】
図1Bは図1Aのプラスチック基板1を示し、ここでは電子構成素子3および5の間のドーピング16が外部から印加された磁界18によって集中および/または配向され、これによって粒子17は電気伝導性のエレメントを形成する、すなわち電子構成素子3の電気的コンタクト9から電子構成素子5の電気的コンタクト10への電気伝導性接続を形成するのである。プラスチック基板1は有利にはこの際、まだ粘性ないし液状の状態にある。局地的に向けられた磁界18によって金属繊維17が配向され、確実に電子構成素子3と5との間のみにおける電気的接続が形成され、残りのドーピング15および14は阻害されない。択一的に、プラスチック基板1をドーピング16の領域にて局地的に液状化させ、その後電界および/または磁界によってドーピング16を配向することも考えられる。
【0025】
図1Aおよび1Bに示したプラスチック基板1によれば、ないしは図1Aおよび1Bに示されるような、電子構成素子3と5との間の電気的接続の製造方法によれば、多数の同種のプラスチック基板を形成することができ、この際、所期の複数の電気的接続が個々に簡単に製造される。これにより、同じような下地基板をベースにしてバリエーションの多様性を簡単かつ低コストに提供することができる。
【0026】
電界および/または磁界18を印加する代わりに点圧によって、プラスチック基板1をドーピング14、15または16の1つの領域において、電子構成素子2〜5の少なくとも2つの間における電気伝導性接続が形成されるまで押圧することも可能である。この場合プラスチック基板は、目的に適うようにとりわけ局所的に液状または粘性の状態で存在している。
【0027】
図2Aおよび2Bは、概略的に示した実施例において、先行する図面の2つの電子構成素子4および5の間における電気的接続を形成するための別の手段を示している。電子構成素子4および5はプラスチック基板1の底部領域に配置されており、これらの電子構成素子の電気的コンタクト11および12は、上述したように互いに向き合っている。図2Aは、金属粒子および/または金属繊維によって形成されたドーピング15を示しており、このドーピングは配向されていない状態、すなわち無方向な状態にある。電子構成要素4および5の間に確実な電気的接続を形成するために、有利には、プラスチック基板1ならびにドーピング15は、ドーピング15の領域において、例えばレーザビームを用いた加熱によって溶融される。この際ドーピング15は底部領域において、重力の作用に基づいて電気的接続19へと合流する。有利にはプラスチック基板1は、ドーピング15の領域において少なくとも局所的にフォーム状に構成されている。
【0028】
図3A〜3Cは、プラスチック基板1の別の有利な実施形態を示す。図3Aは、電子構成素子4および5を備えるプラスチック基板1の初めの状態を示す。これらの電子構成素子の、互いに向き合う電気的コンタクト12および11は、ドーピング15によって形成された電気的接続20によって互いに接続されている。この際電気的接続20は、プラスチック基板1の粘性状態における磁界の印加によって形成されたものとすることができる。この実施例においては、プラスチック基板1に配置された電子構成素子(2〜5)の間に形成され得る全ての電気的または熱的接続は、プラスチック基板1を製造する際に製造されている。所期の接続を得るために、図3Bおよび3Cに示すように、望まない接続20が分離される。
【0029】
図3Bは図3Aによるプラスチック基板1を示しており、ここでは電気的接続20が例えばレーザを用いた局所的な加熱によって気化され、これによって電子構成素子4および5は電気的に互いに分離された。
【0030】
図3Cは、分離された接続20を備える図3Aによるプラスチック基板1を示しており、ここでは図3Bに示した実施例とは異なり、接続20は溶融されている。接続の局所的な気化または溶融をより簡単に行うために、プラスチック基板は、有利にはとりわけ前記接続20の領域においてフォーム状に形成されている。図3Bおよび3Cに示した実施例に代えて、電気的接続20を、プラスチック基板が少なくとも局地的に液状/粘性である状態において、相応に向けられた電界および/または磁界によって分離させることも考えられる。もちろん、プラスチック基板1の全体が液状/粘性である状態において、局所的に向けられた電界および/または磁界により電気的接続20を分離させることも可能である。
【0031】
図4A〜4Cは、プラスチック基板1のこれまで示していない部分の実施例を示す。図示した領域は、差込接続21の一部として構成されている。このためにプラスチック基板1は、自由端部22において、縁部開放された切欠部23を有する。該切欠部23には、プラスチック基板1と一体的に形成されたピン形状の突出部24が、前記切欠部23の中に挿入される差込エレメントを突出部24の上に被せることができるように突出している。突出部24の領域において、プラスチック基板1は電気伝導性のドーピング25を有する。電気伝導性のドーピング25は、突出部24の領域において、該突出部24が電気的コンタクトピン26(ないしは電気伝導性構成素子26)として機能するよう集中されて構成されている。有利には、コンタクトピン26の表面には、良好な電気的コンタクトを保証するために金属被覆27が設けられている。ドーピング25の相応の構成および/または配向によって、コンタクトピン26は、プラスチック基板1の電子構成素子ととりわけ上に述べたように接続することができる。ここでは図示しない差込接続21の択一的実施形態においては、ドーピング25が設けられた突出部24ではなく、プラスチック基板のドーピングによって取り囲まれたコンタクトピン収容部が構成されている。
【0032】
プラスチック基板1の電気伝導性の領域、すなわちドーピングされた領域25と、プラスチック基板1の非電気伝導性の領域との境界を厳密に画定するために、図4Bに示すように、コンタクトピン26を、ドーピングされた電気伝導性のプラスチック基板27から形成することも考えられ、前記プラスチック基板27は、非電気伝導性のプラスチック基板1に設けられた切欠部28に差し込まれており、かつ有利にはその中で接着または溶接されている。同様にして、コンタクトピン26を形成するプラスチック基板27を、機械的なプレスまたは係止方法によってプラスチック基板1の中に固定することも考えられる。
【0033】
さらに図4Cは、プラスチック基板27によって形成されたコンタクトピン26を示し、該コンタクトピン26はプラスチック基板1の収容部28に挿入されている。コンタクトピン26の、切欠部23とは反対側においては、前記コンタクトピン26が導体路45の収容部29の中に封入されており、この導体路もまたプラスチック基板1に構成ないし配置されている。
【0034】
図5は、プラスチック基板1のこれまで示していない部分の別の実施例を示す。プラスチック基板1の図示した領域は、組み込まれたコンデンサ30を有し、該コンデンサは層状のドーピングによって形成されている。コンデンサ30の複数のコンデンサプレートは、それぞれ相応に配置および配向されたドーピング31ないし32によって形成されており、この際これらのドーピング31,32は、上に述べたように配置および配向することができる。これらのコンデンサプレート間の領域におけるプラスチック基板1の絶縁特性の変化によって、種々異なる容量値を実現することも可能である。誘電体の変化のために種々異なる技術を使用することができる。1つには、プラスチック基板を伸ばすおよび/または広げることによって、所定の分極を達成することができる。レーザビームを用いて、例えばプラスチック基板1および/またはドーピング31,32における物理的および/または化学的な組織変化および/または構造変化を達成することも可能である。
【0035】
図6は、プラスチック基板1の別の実施例の概略図を示し、このプラスチック基板1は、種々異なるようにドーピングされた互いに隣接する複数の層33,34,35を有する。さらに、プラスチック基板1を通り抜けてとりわけ複線のデータケーブル36が延在している。このデータケーブルはここでは簡略にしか図示しない。種々異なる層33〜35は、種々異なる伝導率、透磁率、および誘電率を有し、これらの種々異なる値は、相応のドーピングによって、とりわけ配向、成形、および材料に関連して達成される。これによってデータケーブル36の信号完全性は、とりわけ特性インピーダンス(実部および虚部)に関して格段に改善される。とりわけ反射、漏話、シールド減衰、障害放射耐性、障害入射耐性、および/または静電放電(ESD)保護に関して、信号完全性が改善される。有利には、プラスチック基板はデータケーブル36の周囲において発泡性に構成されており、とりわけHDR(Hight Data Rate)線上での有利な伝搬特性("low-k"基板)が達成される。図6に示したプラスチック基板1の構成によって、例えば信号接地(36)に対して広帯域の高周波フィルタないしシールドを形成することができる。
【0036】
図7は、最後の実施例において、ドーピング37によって形成された冷却エレメント38を備えるプラスチック基板1を示す。ドーピング37は、熱伝導性の粒子39によって形成されている。これらの粒子39は、電界および/または磁界によって以下のように、すなわち熱が内部から、とりわけ電子構成素子2から外部へと輸送されるように、配向されている。プラスチック基板1は、該プラスチック基板の外側に冷却フィン40を形成する複数の突出部41を有しており、該突出部にもドーピング37が設けられている。熱の搬出を強化するために、粒子39を例えばレーザビームによって溶融し、熱伝導性の粒子39を局所的に集積させることができる。このような濃密化によって、局所的なサーマルビア(Thermal-Vias)またはサーマルインレー(Thermal-Inlays)が形成される。有利には、放熱を改善するために、冷却フィン40に金属粉被覆42が設けられている。この際ドーピング37は、冷却エレメント38を形成し、例えばプラスチック基板1に配置された電子構成素子から外部への熱伝導性接続43をも形成する。有利には、プラスチック基板1は、エンジン制御装置のケーシング部分44として構成されている。
【図1A】

【図1B】

【図2A】

【図2B】

【図3A】

【図3B】

【図3C】

【図4A】

【図4B】

【図4C】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのプラスチック基板を備える自動車の制御装置、とりわけ自動車のエンジン制御装置であって、
前記プラスチック基板には、少なくとも1つの電気伝導性および/または熱伝導性のエレメントが割り当てられている
形式の制御装置において、
前記プラスチック基板(1)は少なくとも部分的に、電気伝導性および/または熱伝導性の、エレメント(19,20,26,30,31,32,38,43)を形成するドーピング(14,15,16,25,37)を有している、
ことを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記ドーピング(14,15,16,25,37)は、電気的および/または熱的接続(19,29,43)を形成する、
ことを特徴とする請求項1記載の制御装置。
【請求項3】
前記電気伝導性および/または熱伝導性のエレメント(20)は、レーザ切断によって少なくとも1つの分離箇所を有する、
ことを特徴とする請求項1または2記載の制御装置。
【請求項4】
前記ドーピング(25)は、差込接続(21)の電気的および/または熱的構成素子(26)を形成する、
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の制御装置。
【請求項5】
前記ドーピング(14,15,16,25,37)は、電気的構成素子、とりわけ電気抵抗、コンデンサ(30)、および/または電磁シールドの少なくとも1つの領域を形成している、
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載の制御装置。
【請求項6】
前記ドーピング(37)は、冷却エレメント(38)を形成する、
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項記載の制御装置。
【請求項7】
前記ドーピング(14,15,16,25,37)は、電気伝導性および/または熱伝導性の粒子(39)および/または繊維(17)によって形成されている、
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項記載の制御装置。
【請求項8】
前記粒子(39)および/または繊維(17)は、硬化されていないプラスチック基板(1)において、電界および/または磁界(18)の印加によって、および/または、重力によって配向および/または移動させられる、
ことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項記載の制御装置。
【請求項9】
前記プラスチック基板(1)は、少なくとも前記制御装置のケーシング部分(44)として構成されている、
ことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項記載の制御装置。
【請求項10】
とりわけ請求項1〜9のいずれか一項記載の自動車の制御装置のためのプラスチック基板を製造する方法において、
前記プラスチック基板は、電気伝導性および/または熱伝導性の構造を構成するために、少なくとも部分的にドーピングされる、
ことを特徴とする方法。
【請求項11】
前記電気伝導性および/熱伝導性の構造を形成または分離するために、前記プラスチック基板は、とりわけドーピング領域において局地的に溶融される、
ことを特徴とする請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記構造を形成するために、前記プラスチック基板は、粘性/液状である状態において、向けられた局地的な電界および/または磁界が印加される、
ことを特徴とする請求項10または11記載の方法。
【請求項13】
前記構造を形成するために、前記プラスチック基板は、局地的に粘性/液状である状態において、向けられた電界および/または磁界が印加される、
ことを特徴とする請求項10〜12のいずれか一項記載の方法。

【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−528481(P2010−528481A)
【公表日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−509759(P2010−509759)
【出願日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際出願番号】PCT/EP2008/053044
【国際公開番号】WO2008/145425
【国際公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】