自動車の後部荷室構造
【課題】第2荷室内に収容されたサブトランクケースの自動車後方向の不用意な飛び出しを規制し、且つ自動車の上方向の不用意な飛び出しを規制するように構成した。
【解決手段】自動車1の後部のフロアパネル3上に第1荷室4が設けられて後部荷室2を構成する場合、フロアパネル3の下方を凹設することにより第2荷室6を設け、第2荷室内設けた荷室構成体5に自動車1の前後方向にスライド可能にボックス形状のサブトランクケース7を配設し、サブトランクケース7に荷室構成体5内から自動車1の後方側への飛び出しを阻止する前後方向移動阻止片8を形成し、且つ、サブトランクケース7に荷室構成体5から自動車1の上方側への飛び出しを阻止する上下方向移動阻止片9を形成した。
【解決手段】自動車1の後部のフロアパネル3上に第1荷室4が設けられて後部荷室2を構成する場合、フロアパネル3の下方を凹設することにより第2荷室6を設け、第2荷室内設けた荷室構成体5に自動車1の前後方向にスライド可能にボックス形状のサブトランクケース7を配設し、サブトランクケース7に荷室構成体5内から自動車1の後方側への飛び出しを阻止する前後方向移動阻止片8を形成し、且つ、サブトランクケース7に荷室構成体5から自動車1の上方側への飛び出しを阻止する上下方向移動阻止片9を形成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車後部のフロアパネル上に第1荷室を設けるとともに、当該フロアパネルの下方を凹設することによって第2荷室を設けるようにした自動車の後部荷室構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の自動車後部においては、フロアパネルの上方を第1荷室に構成するとともに、フロアパネルの下方にも補助的な荷室ともいうべき第2荷室を設けることによって、後部荷室を構成しているものが多く知られている(例えば、特許文献1〜特許文献3)。
【特許文献1】実開平6−6106号公報。
【特許文献2】特開2001−322500号公報。
【特許文献3】特開2001−322501号公報。
【0003】
そして、従来の自動車の後部荷室構造は、自動車後部のフロアパネルを下方に凹設することによって、第2荷室を構成し、当該第2荷室が底深くなるために収容した収容物の出し入れを容易にするために、第2荷室内に予めサブトランクケースを収容しておき、当該サブトランクケースを第2荷室に対して自動車の前後方向にスライド可能に構成し、自動車の後部側からサブトランクケースを引き出して、収容物の出し入れを行うようにしている。
【0004】
従って、サブトランクケースを有する後部荷室構造においては、例えば、図10および図11に示すように、不図示のフロアパネルに設けた開口部に、凹状に形成した荷室構成体aを嵌め込むことによって、フロアパネルの下方に第2荷室を凹設構成しており、荷室構成体aの上部側および後部側を開口し、後部側開口b側から、サブトランクケースcを挿入して、サブトランクケースcが荷室構成体a内を自動車前後方向にスライド可能に構成しており、サブトランクケースcは、荷室構成体aの後部側開口bから出入りさせることによって、収納物の出し入れを行うようにしている。
【0005】
そして、サブトランクケースcが荷室構成体a内に収容されている際に、自動車の走行等によって、荷室構成体a内をスライドしてしまって自動車の後方側に飛び出さないようにするために、サブトランクケースcの後端底部dに、一対の自動車の前後方向移動阻止片e、eを突設するとともに、前後方向移動阻止片e、eが係合する係合部f、fを、荷室構成体aの後部側開口bに張り出し形成されたサブトランクケース受け台部gに形成して、係合部f、fに前後方向移動阻止片e、eを上方側から嵌入係合することによって、荷室構成体a内において、サブトランクケースcが自動車の後方向に不用意に飛び出さないようにしていた。
【0006】
従って、荷室構成体a内に収容されたサブトランクケースcは、その後端部側を少し持ち上げるようにして、前後方向移動阻止片e、eの係合部f、fへの係合を外した後に、自動車の後方にスライドさせて、荷室構成体aから取出すことになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
かかる構成を有する従来の自動車の後部荷室構造においては、前後方向移動阻止片e、eを係合部f、fにそれぞれ係合することにより、荷室構成体a内に収容されたサブトランクケースcは、自動車の後方向にスライドして不用意に飛び出すことは阻止されるが、前後方向移動阻止片e、eの係合部f、fへの係合によっては、サブトランクケースcの上方向の動きを規制することはできず、自動車の走行中に起きる振動等によって、サブトランクケースcが振動して、収容物を乱雑にしてしまうことや荷室構成体aやフロアパネル等に衝接して異音を発生する等が起きてしまう。
【0008】
そこで、本発明は、かかる点に鑑み、第2荷室内に収容されたサブトランクケースにおける自動車後方向の不用意な飛び出しを規制するとともに、自動車の上方向の不用意な飛び出しを規制するように構成した自動車の後部荷室構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係る自動車の後部荷室構造は、自動車後部のフロアパネル上に第1荷室が設けられた自動車の後部荷室構造であって、後部荷室における前記フロアパネルの下方を凹設することにより第2荷室を設け、前記第2荷室内において前記自動車の前後方向にスライド可能にボックス形状のサブトランクケースを配設すると共に、前記サブトランクケースに前記第2荷室内から前記自動車の後方側への飛び出しを阻止する前後方向移動阻止片を形成するとともに、前記サブトランクケースに前記第2荷室内から前記自動車の上方側への飛び出しを阻止する上下方向移動阻止片を形成し、これら前後方向移動阻止片および上下方向移動阻止片を前記第2荷室側に形成した係合部にそれぞれ係合することによって、前記サブトランクケースにおける前記後部荷室に対する前記自動車の後方向および上方向への飛び出しを規制するように構成したものである。
【0010】
かかる構成により、本発明は、第2荷室内において、前後方向移動阻止片および上下方向移動阻止片を第2荷室側に形成した係合部にそれぞれ係合させることによって、サブトランクケースの自動車の後方向への不用意な飛び出しを規制するとともに、自動車の上方向への不用意な飛び出しをも規制されることになり、自動車の走行中に起きる振動等によって、振動して収容物を乱雑にすることや後部荷室やフロアパネル等に衝接して異音を発生する等が防止することができる。
【0011】
そして、前後方向移動阻止片又は上下方向移動阻止片の周囲に係合部内壁が当接するように構成すれば、サブトランクケースは、後部荷室に対して、自動車の上下および前後方向ばかりでなく、左右方向の移動も阻止されるようにできる。
【0012】
また、本発明は、前記前後方向移動阻止片は、前記サブトランクケースにおける前記自動車の後端部側に形成し、前記上下方向移動阻止片は、前記サブトランクケースにおける前記自動車の前端部側に形成するようにしてもよい。
【0013】
かかる構成により、サブトランクケースを後部荷室から自動車後方に引き出す際に、先ずサブトランクケースの自動車後端側を上方に持ち上げて前後方向移動阻止片の係合を外して、この状態で、サブトランクケースを自動車の後方に引き出すだけで、上下方向移動阻止片の係合を外すことができ、サブトランクケースにおける後部荷室からの引き出し作業が自動車後方部で行われることを考慮すると、サブトランクケースの引出し作業が非常に簡単にでき、便利である。
【発明の効果】
【0014】
かかる構成において、本発明におけるサブトランクケースは、第2荷室内において、前後方向移動阻止片および上下方向移動阻止片が第2荷室側に形成した係合部にそれぞれ係合することによって、サブトランクケースの自動車後方向の不用意な飛び出しを阻止できる動きとともに、自動車の上方向への不用意な飛び出しをも規制されることになり、自動車の走行中に起きる振動等によって、振動して収容物を乱雑にすることや後部荷室やフロアパネル等に衝接して異音を発生する等が防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図を用いて、本発明を実施するための最良の実施例について説明する。
【0016】
図1は本発明に係る一実施例を採用した自動車後部を描画した斜視図、図2は図1における第2荷室を構成する荷室構成体の斜視図、図3は図2の荷室構成体内において自動車前後方向にスライド可能に収納するサブトランクケースの斜視図、図4は図2の荷室構成体に図3のサブトランクケースを収容した状態における図2のA−A断面図である。
【0017】
先ず、図1において、自動車1の後部には、後部荷室2が設けられている。
【0018】
後部荷室2は、フロアパネル3より上部を第1荷室4に構成するとともに、フロアパネル3を一部開口するとともに、開口部3aにおける自動車1の前後方向略中央部を隔壁3bにて区画し、隔壁3bを挟んで、開口部3aより一対の荷室構成体5、5をそれぞれ挿入してフロアパネル3に装着することによって、フロアパネル3の下方に第2荷室6を有して構成している。
【0019】
荷室構成体5、5は、図2に示すように、自動車1の上部側および後部側が開口したボックス型を呈して構成されており、後部側開口5aから挿入した引出しタイプのサブトランクケース7、7をそれぞれ自動車1の前後方向にスライド可能に収容している。
【0020】
サブトランクケース7、7は、図3に示すように、自動車1の上部側が開口するボックス型を呈して構成しており、底部壁7aにおける後部側側壁7bの近傍に、互いに離間して自動車1の下方に突出するように一対の前後方向移動阻止片8が形成されており、また、底部壁7aにおける前部側側壁7cの近傍に、互いに離間して自動車1の前方に突出延在する一対の上下方向移動阻止片9が形成されている。
【0021】
また、サブトランクケース7、7の前後方向移動阻止片8および上下方向移動阻止片9に対応して、荷室構成体5の底壁部5bにおける後部側開口5aから自動車1の後方側に延在するように形成した張出し台部5cには、前後方向移動阻止片8が係合する孔状の一方の係合部10、10が互いに離間した状態で一対形成されているとともに、荷室構成体5の底壁部5bと前壁部5dが交差する前端角部5eには、上下方向移動阻止片9が係合する孔状の他方の係合部11、11が互いに離間した状態で一対形成されている。
【0022】
かかる構成において、サブトランクケース7、7が荷室構成体5、5に収容されている際には、先ず、前後方向移動阻止片8が一方の係合部10に係合することによって、サブトランクケース7、7における自動車1の前後方向の移動が阻止され、荷室構成体5、5からのサブトランクケース7、7の自動車1の後方側への飛び出しが阻止されるとともに、上下方向移動阻止片9が他方の係合部11に係合することによって(図4参照)、サブトランクケース7、7における自動車1の上下方向の移動が阻止され、荷室構成体5、5からのサブトランクケース7、7の自動車1の上方側への飛び出しが阻止されることになる。
【0023】
そして、前後方向移動阻止片8と一方の係合部10、或いは上下方向移動阻止片9と他方の係合部11との係合は、前後方向移動阻止片8が一方の係合部10の内壁周囲に当接し、或いは、上下方向移動阻止片9が他方の係合部11の内壁周囲に当接するように構成することにより、サブトランクケース7は、荷室構成体5延いては後部荷室2に対して、自動車の上下および前後方向ばかりでなく、左右方向の移動も阻止することができ、自動車1の走行中に起きる振動等によって、収容物を乱雑にすることや後部荷室2やフロアパネル3等に衝接して異音を発生する等が防止することができる。
【0024】
また、荷室構成体5に収容されたサブトランクケース7、7を後部荷室2から自動車1の後方に引き出す際には、先ずサブトランクケース7、7の自動車1の後端側を上方に持ち上げて前後方向移動阻止片8における一方の係合部10との係合を外し、この状態で、サブトランクケース7、7を自動車1の後方(図1の矢印方向)に二点鎖線視するように引き出すだけで、上下方向移動阻止片9の他方の係合部11との係合を外すことができ、サブトランクケース7、7における後部荷室2からの引き出し作業が自動車1の後方部で行われることを考慮すると、サブトランクケース7、7の引出し作業が非常に簡単にでき、便利であるといえる。
【0025】
なお、図1に示すように、フロアパネル3の上には、フロアカバー12が取外し可能に設置されるようになっており、サブトランクケース7の上部側開口部を閉塞するとともに、フロアカバー12はフロアパネル3とともに第1荷室4と第2荷室6との区画部としての構成を有するものである。
【0026】
図5乃至図9は、本発明にかかる他の実施例を示すものである。
【0027】
かかる他の実施例においては、サブトランクケース7側に形成する上下方向移動阻止片9が、サブトランクケース7の底壁部7aにおいて、自動車1の前後左右方向に互いに離間した状態で4箇所に形成すべく、底壁部5bをエンボスするか別体構成のものを取付けることによって、形成されている。
【0028】
そして、上下方向移動阻止片9は、サブトランクケース7の底部壁7aにおける自動車1の前後方向および左右方向に互いに離間した状態で形成することによって構成しており、それぞれ、断面略コ字状を呈して、自動車1の前方側が開口し、後部側は閉塞している。
【0029】
また、上下方向移動阻止片9に対応して、他方の係合部11は、荷室構成体5の底壁部5bにおいて、自動車1の前後方向および左右方向に互いに離間した状態で4箇所に形成すべく、底壁部5bをエンボスするか別体構成のものを取付けることによって、形成されている。
【0030】
他方の係合部11は、自動車1の後部側が開口するにボックス形状を呈しており、上壁部11aが自動車1の後方側に延在する板状の係合片部11bを有して構成している。
【0031】
なお、サブトランク7側に形成した前後方向移動阻止片8および荷室構成体5側に形成した一方の係合部10は、前記一の実施例と同一構造を呈している。
【0032】
かかる構成において、サブトランクケース7、7が荷室構成体5、5に収容されている際には、先ず、前後方向移動阻止片8が一方の係合部10に係合することによって、サブトランクケース7、7における自動車1の前後方向の移動が阻止され、荷室構成体5、5からのサブトランクケース7、7の自動車1の後方側への飛び出しが阻止されるとともに、上下方向移動阻止片9内に他方の係合部11の係合片部11bが挿入して係合することによって(図9参照)、サブトランクケース7、7における自動車1の上下方向の移動が阻止され、荷室構成体5、5からのサブトランクケース7、7の自動車1の上方側への飛び出しが阻止されることになる。
【0033】
そして、前後方向移動阻止片8と一方の係合部10、或いは上下方向移動阻止片9と他方の係合部11の係合片部11bとの係合は、前後方向移動阻止片8が一方の係合部10の内壁周囲に当接し、或いは、上下方向移動阻止片9の内壁に他方の係合部11の係合片部11bが当接するように構成することにより、サブトランクケース7は、荷室構成体5延いては後部荷室2に対して、自動車の上下および前後方向ばかりでなく、左右方向の移動も阻止されるようになり、自動車1の走行中に起きる振動等によって、振動して収容物を乱雑にすることや後部荷室2やフロアパネル3等に衝接して異音を発生する等が防止することができる。
【0034】
また、荷室構成体5に収容されたサブトランクケース7、7を後部荷室2から自動車1の後方に引き出す際には、先ずサブトランクケース7、7の自動車1の後端側を上方に持ち上げて前後方向移動阻止片8における一方の係合部10との係合を外し、この状態で、サブトランクケース7、7を自動車1の後方に引き出すだけで、上下方向移動阻止片9における他方の係合部11の係合片部11bとの係合を外すことができ、サブトランクケース7、7における後部荷室2からの引き出し作業が自動車1の後方部で行われることを考慮すると、サブトランクケース7、7の引出し作業が非常に簡単にでき、便利であるといえる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
以上説明したように、本発明は、第2荷室内において、前後方向移動阻止片および上下方向移動阻止片が第2荷室側に形成した係合部にそれぞれ係合することによって、サブトランクケースの自動車後方向の不用意な飛び出しを阻止できる動きとともに、自動車の上方向への不用意な飛び出しをも規制されることになり、自動車の走行中に起きる振動等によって、振動して収容物を乱雑にすることや後部荷室やフロアパネル等に衝接して異音を発生する等が防止することができるために、自動車後部のフロアパネル上に第1荷室を設けるとともに、当該フロアパネルの下方を凹設することによって第2荷室を設けるようにした自動車の後部荷室構造等に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係る一実施例を採用した自動車後部を描画した斜視図である。
【図2】図1における第2荷室を構成する荷室構成体の斜視図である。
【図3】図2の荷室構成体内において自動車前後方向にスライド可能に収納するサブトランクの斜視図である。
【図4】図2における荷室構成体に図3におけるサブトランクケースを収容した状態を描画した図2のA−A断面図である。
【図5】本発明の他の実施例による自動車後部荷室より取外した荷室構成体の斜視図である。
【図6】同じく、図5における要部拡大図である。
【図7】同じく、図5の荷室構成体内において自動車前後方向にスライド可能に収納するサブトランクの斜視図である。
【図8】同じく、図7における要部拡大図である。
【図9】図5における荷室構成体に図6におけるサブトランクケースを収容した状態を描画した図5のB−B断面図である。
【図10】従来の技術による自動車後部荷室より取外した荷室構成体およびサブトランクケースの分割斜視図である。
【図11】図10のC矢視図である。
【符号の説明】
【0037】
1 自動車
2 後部荷室
3 フロアパネル
4 第1荷室
5 荷室構成体
6 第2荷室
7 サブトランクケース
8 前後方向移動阻止片
9 上下方向移動阻止片
10 一方の係合部
11 他方の係合部
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車後部のフロアパネル上に第1荷室を設けるとともに、当該フロアパネルの下方を凹設することによって第2荷室を設けるようにした自動車の後部荷室構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の自動車後部においては、フロアパネルの上方を第1荷室に構成するとともに、フロアパネルの下方にも補助的な荷室ともいうべき第2荷室を設けることによって、後部荷室を構成しているものが多く知られている(例えば、特許文献1〜特許文献3)。
【特許文献1】実開平6−6106号公報。
【特許文献2】特開2001−322500号公報。
【特許文献3】特開2001−322501号公報。
【0003】
そして、従来の自動車の後部荷室構造は、自動車後部のフロアパネルを下方に凹設することによって、第2荷室を構成し、当該第2荷室が底深くなるために収容した収容物の出し入れを容易にするために、第2荷室内に予めサブトランクケースを収容しておき、当該サブトランクケースを第2荷室に対して自動車の前後方向にスライド可能に構成し、自動車の後部側からサブトランクケースを引き出して、収容物の出し入れを行うようにしている。
【0004】
従って、サブトランクケースを有する後部荷室構造においては、例えば、図10および図11に示すように、不図示のフロアパネルに設けた開口部に、凹状に形成した荷室構成体aを嵌め込むことによって、フロアパネルの下方に第2荷室を凹設構成しており、荷室構成体aの上部側および後部側を開口し、後部側開口b側から、サブトランクケースcを挿入して、サブトランクケースcが荷室構成体a内を自動車前後方向にスライド可能に構成しており、サブトランクケースcは、荷室構成体aの後部側開口bから出入りさせることによって、収納物の出し入れを行うようにしている。
【0005】
そして、サブトランクケースcが荷室構成体a内に収容されている際に、自動車の走行等によって、荷室構成体a内をスライドしてしまって自動車の後方側に飛び出さないようにするために、サブトランクケースcの後端底部dに、一対の自動車の前後方向移動阻止片e、eを突設するとともに、前後方向移動阻止片e、eが係合する係合部f、fを、荷室構成体aの後部側開口bに張り出し形成されたサブトランクケース受け台部gに形成して、係合部f、fに前後方向移動阻止片e、eを上方側から嵌入係合することによって、荷室構成体a内において、サブトランクケースcが自動車の後方向に不用意に飛び出さないようにしていた。
【0006】
従って、荷室構成体a内に収容されたサブトランクケースcは、その後端部側を少し持ち上げるようにして、前後方向移動阻止片e、eの係合部f、fへの係合を外した後に、自動車の後方にスライドさせて、荷室構成体aから取出すことになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
かかる構成を有する従来の自動車の後部荷室構造においては、前後方向移動阻止片e、eを係合部f、fにそれぞれ係合することにより、荷室構成体a内に収容されたサブトランクケースcは、自動車の後方向にスライドして不用意に飛び出すことは阻止されるが、前後方向移動阻止片e、eの係合部f、fへの係合によっては、サブトランクケースcの上方向の動きを規制することはできず、自動車の走行中に起きる振動等によって、サブトランクケースcが振動して、収容物を乱雑にしてしまうことや荷室構成体aやフロアパネル等に衝接して異音を発生する等が起きてしまう。
【0008】
そこで、本発明は、かかる点に鑑み、第2荷室内に収容されたサブトランクケースにおける自動車後方向の不用意な飛び出しを規制するとともに、自動車の上方向の不用意な飛び出しを規制するように構成した自動車の後部荷室構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係る自動車の後部荷室構造は、自動車後部のフロアパネル上に第1荷室が設けられた自動車の後部荷室構造であって、後部荷室における前記フロアパネルの下方を凹設することにより第2荷室を設け、前記第2荷室内において前記自動車の前後方向にスライド可能にボックス形状のサブトランクケースを配設すると共に、前記サブトランクケースに前記第2荷室内から前記自動車の後方側への飛び出しを阻止する前後方向移動阻止片を形成するとともに、前記サブトランクケースに前記第2荷室内から前記自動車の上方側への飛び出しを阻止する上下方向移動阻止片を形成し、これら前後方向移動阻止片および上下方向移動阻止片を前記第2荷室側に形成した係合部にそれぞれ係合することによって、前記サブトランクケースにおける前記後部荷室に対する前記自動車の後方向および上方向への飛び出しを規制するように構成したものである。
【0010】
かかる構成により、本発明は、第2荷室内において、前後方向移動阻止片および上下方向移動阻止片を第2荷室側に形成した係合部にそれぞれ係合させることによって、サブトランクケースの自動車の後方向への不用意な飛び出しを規制するとともに、自動車の上方向への不用意な飛び出しをも規制されることになり、自動車の走行中に起きる振動等によって、振動して収容物を乱雑にすることや後部荷室やフロアパネル等に衝接して異音を発生する等が防止することができる。
【0011】
そして、前後方向移動阻止片又は上下方向移動阻止片の周囲に係合部内壁が当接するように構成すれば、サブトランクケースは、後部荷室に対して、自動車の上下および前後方向ばかりでなく、左右方向の移動も阻止されるようにできる。
【0012】
また、本発明は、前記前後方向移動阻止片は、前記サブトランクケースにおける前記自動車の後端部側に形成し、前記上下方向移動阻止片は、前記サブトランクケースにおける前記自動車の前端部側に形成するようにしてもよい。
【0013】
かかる構成により、サブトランクケースを後部荷室から自動車後方に引き出す際に、先ずサブトランクケースの自動車後端側を上方に持ち上げて前後方向移動阻止片の係合を外して、この状態で、サブトランクケースを自動車の後方に引き出すだけで、上下方向移動阻止片の係合を外すことができ、サブトランクケースにおける後部荷室からの引き出し作業が自動車後方部で行われることを考慮すると、サブトランクケースの引出し作業が非常に簡単にでき、便利である。
【発明の効果】
【0014】
かかる構成において、本発明におけるサブトランクケースは、第2荷室内において、前後方向移動阻止片および上下方向移動阻止片が第2荷室側に形成した係合部にそれぞれ係合することによって、サブトランクケースの自動車後方向の不用意な飛び出しを阻止できる動きとともに、自動車の上方向への不用意な飛び出しをも規制されることになり、自動車の走行中に起きる振動等によって、振動して収容物を乱雑にすることや後部荷室やフロアパネル等に衝接して異音を発生する等が防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図を用いて、本発明を実施するための最良の実施例について説明する。
【0016】
図1は本発明に係る一実施例を採用した自動車後部を描画した斜視図、図2は図1における第2荷室を構成する荷室構成体の斜視図、図3は図2の荷室構成体内において自動車前後方向にスライド可能に収納するサブトランクケースの斜視図、図4は図2の荷室構成体に図3のサブトランクケースを収容した状態における図2のA−A断面図である。
【0017】
先ず、図1において、自動車1の後部には、後部荷室2が設けられている。
【0018】
後部荷室2は、フロアパネル3より上部を第1荷室4に構成するとともに、フロアパネル3を一部開口するとともに、開口部3aにおける自動車1の前後方向略中央部を隔壁3bにて区画し、隔壁3bを挟んで、開口部3aより一対の荷室構成体5、5をそれぞれ挿入してフロアパネル3に装着することによって、フロアパネル3の下方に第2荷室6を有して構成している。
【0019】
荷室構成体5、5は、図2に示すように、自動車1の上部側および後部側が開口したボックス型を呈して構成されており、後部側開口5aから挿入した引出しタイプのサブトランクケース7、7をそれぞれ自動車1の前後方向にスライド可能に収容している。
【0020】
サブトランクケース7、7は、図3に示すように、自動車1の上部側が開口するボックス型を呈して構成しており、底部壁7aにおける後部側側壁7bの近傍に、互いに離間して自動車1の下方に突出するように一対の前後方向移動阻止片8が形成されており、また、底部壁7aにおける前部側側壁7cの近傍に、互いに離間して自動車1の前方に突出延在する一対の上下方向移動阻止片9が形成されている。
【0021】
また、サブトランクケース7、7の前後方向移動阻止片8および上下方向移動阻止片9に対応して、荷室構成体5の底壁部5bにおける後部側開口5aから自動車1の後方側に延在するように形成した張出し台部5cには、前後方向移動阻止片8が係合する孔状の一方の係合部10、10が互いに離間した状態で一対形成されているとともに、荷室構成体5の底壁部5bと前壁部5dが交差する前端角部5eには、上下方向移動阻止片9が係合する孔状の他方の係合部11、11が互いに離間した状態で一対形成されている。
【0022】
かかる構成において、サブトランクケース7、7が荷室構成体5、5に収容されている際には、先ず、前後方向移動阻止片8が一方の係合部10に係合することによって、サブトランクケース7、7における自動車1の前後方向の移動が阻止され、荷室構成体5、5からのサブトランクケース7、7の自動車1の後方側への飛び出しが阻止されるとともに、上下方向移動阻止片9が他方の係合部11に係合することによって(図4参照)、サブトランクケース7、7における自動車1の上下方向の移動が阻止され、荷室構成体5、5からのサブトランクケース7、7の自動車1の上方側への飛び出しが阻止されることになる。
【0023】
そして、前後方向移動阻止片8と一方の係合部10、或いは上下方向移動阻止片9と他方の係合部11との係合は、前後方向移動阻止片8が一方の係合部10の内壁周囲に当接し、或いは、上下方向移動阻止片9が他方の係合部11の内壁周囲に当接するように構成することにより、サブトランクケース7は、荷室構成体5延いては後部荷室2に対して、自動車の上下および前後方向ばかりでなく、左右方向の移動も阻止することができ、自動車1の走行中に起きる振動等によって、収容物を乱雑にすることや後部荷室2やフロアパネル3等に衝接して異音を発生する等が防止することができる。
【0024】
また、荷室構成体5に収容されたサブトランクケース7、7を後部荷室2から自動車1の後方に引き出す際には、先ずサブトランクケース7、7の自動車1の後端側を上方に持ち上げて前後方向移動阻止片8における一方の係合部10との係合を外し、この状態で、サブトランクケース7、7を自動車1の後方(図1の矢印方向)に二点鎖線視するように引き出すだけで、上下方向移動阻止片9の他方の係合部11との係合を外すことができ、サブトランクケース7、7における後部荷室2からの引き出し作業が自動車1の後方部で行われることを考慮すると、サブトランクケース7、7の引出し作業が非常に簡単にでき、便利であるといえる。
【0025】
なお、図1に示すように、フロアパネル3の上には、フロアカバー12が取外し可能に設置されるようになっており、サブトランクケース7の上部側開口部を閉塞するとともに、フロアカバー12はフロアパネル3とともに第1荷室4と第2荷室6との区画部としての構成を有するものである。
【0026】
図5乃至図9は、本発明にかかる他の実施例を示すものである。
【0027】
かかる他の実施例においては、サブトランクケース7側に形成する上下方向移動阻止片9が、サブトランクケース7の底壁部7aにおいて、自動車1の前後左右方向に互いに離間した状態で4箇所に形成すべく、底壁部5bをエンボスするか別体構成のものを取付けることによって、形成されている。
【0028】
そして、上下方向移動阻止片9は、サブトランクケース7の底部壁7aにおける自動車1の前後方向および左右方向に互いに離間した状態で形成することによって構成しており、それぞれ、断面略コ字状を呈して、自動車1の前方側が開口し、後部側は閉塞している。
【0029】
また、上下方向移動阻止片9に対応して、他方の係合部11は、荷室構成体5の底壁部5bにおいて、自動車1の前後方向および左右方向に互いに離間した状態で4箇所に形成すべく、底壁部5bをエンボスするか別体構成のものを取付けることによって、形成されている。
【0030】
他方の係合部11は、自動車1の後部側が開口するにボックス形状を呈しており、上壁部11aが自動車1の後方側に延在する板状の係合片部11bを有して構成している。
【0031】
なお、サブトランク7側に形成した前後方向移動阻止片8および荷室構成体5側に形成した一方の係合部10は、前記一の実施例と同一構造を呈している。
【0032】
かかる構成において、サブトランクケース7、7が荷室構成体5、5に収容されている際には、先ず、前後方向移動阻止片8が一方の係合部10に係合することによって、サブトランクケース7、7における自動車1の前後方向の移動が阻止され、荷室構成体5、5からのサブトランクケース7、7の自動車1の後方側への飛び出しが阻止されるとともに、上下方向移動阻止片9内に他方の係合部11の係合片部11bが挿入して係合することによって(図9参照)、サブトランクケース7、7における自動車1の上下方向の移動が阻止され、荷室構成体5、5からのサブトランクケース7、7の自動車1の上方側への飛び出しが阻止されることになる。
【0033】
そして、前後方向移動阻止片8と一方の係合部10、或いは上下方向移動阻止片9と他方の係合部11の係合片部11bとの係合は、前後方向移動阻止片8が一方の係合部10の内壁周囲に当接し、或いは、上下方向移動阻止片9の内壁に他方の係合部11の係合片部11bが当接するように構成することにより、サブトランクケース7は、荷室構成体5延いては後部荷室2に対して、自動車の上下および前後方向ばかりでなく、左右方向の移動も阻止されるようになり、自動車1の走行中に起きる振動等によって、振動して収容物を乱雑にすることや後部荷室2やフロアパネル3等に衝接して異音を発生する等が防止することができる。
【0034】
また、荷室構成体5に収容されたサブトランクケース7、7を後部荷室2から自動車1の後方に引き出す際には、先ずサブトランクケース7、7の自動車1の後端側を上方に持ち上げて前後方向移動阻止片8における一方の係合部10との係合を外し、この状態で、サブトランクケース7、7を自動車1の後方に引き出すだけで、上下方向移動阻止片9における他方の係合部11の係合片部11bとの係合を外すことができ、サブトランクケース7、7における後部荷室2からの引き出し作業が自動車1の後方部で行われることを考慮すると、サブトランクケース7、7の引出し作業が非常に簡単にでき、便利であるといえる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
以上説明したように、本発明は、第2荷室内において、前後方向移動阻止片および上下方向移動阻止片が第2荷室側に形成した係合部にそれぞれ係合することによって、サブトランクケースの自動車後方向の不用意な飛び出しを阻止できる動きとともに、自動車の上方向への不用意な飛び出しをも規制されることになり、自動車の走行中に起きる振動等によって、振動して収容物を乱雑にすることや後部荷室やフロアパネル等に衝接して異音を発生する等が防止することができるために、自動車後部のフロアパネル上に第1荷室を設けるとともに、当該フロアパネルの下方を凹設することによって第2荷室を設けるようにした自動車の後部荷室構造等に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係る一実施例を採用した自動車後部を描画した斜視図である。
【図2】図1における第2荷室を構成する荷室構成体の斜視図である。
【図3】図2の荷室構成体内において自動車前後方向にスライド可能に収納するサブトランクの斜視図である。
【図4】図2における荷室構成体に図3におけるサブトランクケースを収容した状態を描画した図2のA−A断面図である。
【図5】本発明の他の実施例による自動車後部荷室より取外した荷室構成体の斜視図である。
【図6】同じく、図5における要部拡大図である。
【図7】同じく、図5の荷室構成体内において自動車前後方向にスライド可能に収納するサブトランクの斜視図である。
【図8】同じく、図7における要部拡大図である。
【図9】図5における荷室構成体に図6におけるサブトランクケースを収容した状態を描画した図5のB−B断面図である。
【図10】従来の技術による自動車後部荷室より取外した荷室構成体およびサブトランクケースの分割斜視図である。
【図11】図10のC矢視図である。
【符号の説明】
【0037】
1 自動車
2 後部荷室
3 フロアパネル
4 第1荷室
5 荷室構成体
6 第2荷室
7 サブトランクケース
8 前後方向移動阻止片
9 上下方向移動阻止片
10 一方の係合部
11 他方の係合部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車後部のフロアパネル上に第1荷室が設けられた自動車の後部荷室構造であって、
後部荷室における前記フロアパネルの下方を凹設することにより第2荷室を設け、前記第2荷室内において前記自動車の前後方向にスライド可能にボックス形状のサブトランクケースを配設すると共に、前記サブトランクケースに前記第2荷室内から前記自動車の後方側への飛び出しを阻止する前後方向移動阻止片を形成するとともに、前記サブトランクケースに前記第2荷室内から前記自動車の上方側への飛び出しを阻止する上下方向移動阻止片を形成し、これら前後方向移動阻止片および上下方向移動阻止片を前記第2荷室側に形成した係合部にそれぞれ係合することによって、前記サブトランクケースにおける前記後部荷室に対する前記自動車の後方向および上方向への飛び出しを規制するように構成したことを特徴とする自動車の後部荷室構造。
【請求項2】
前記前後方向移動阻止片は、前記サブトランクケースにおける前記自動車の後端部側に形成し、前記上下方向移動阻止片は、前記サブトランクケースにおける前記自動車の前端部側に形成したことを特徴とする請求項1記載の自動車の後部荷室構造。
【請求項1】
自動車後部のフロアパネル上に第1荷室が設けられた自動車の後部荷室構造であって、
後部荷室における前記フロアパネルの下方を凹設することにより第2荷室を設け、前記第2荷室内において前記自動車の前後方向にスライド可能にボックス形状のサブトランクケースを配設すると共に、前記サブトランクケースに前記第2荷室内から前記自動車の後方側への飛び出しを阻止する前後方向移動阻止片を形成するとともに、前記サブトランクケースに前記第2荷室内から前記自動車の上方側への飛び出しを阻止する上下方向移動阻止片を形成し、これら前後方向移動阻止片および上下方向移動阻止片を前記第2荷室側に形成した係合部にそれぞれ係合することによって、前記サブトランクケースにおける前記後部荷室に対する前記自動車の後方向および上方向への飛び出しを規制するように構成したことを特徴とする自動車の後部荷室構造。
【請求項2】
前記前後方向移動阻止片は、前記サブトランクケースにおける前記自動車の後端部側に形成し、前記上下方向移動阻止片は、前記サブトランクケースにおける前記自動車の前端部側に形成したことを特徴とする請求項1記載の自動車の後部荷室構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−155680(P2008−155680A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−343912(P2006−343912)
【出願日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(000124454)河西工業株式会社 (593)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(000124454)河西工業株式会社 (593)
【Fターム(参考)】
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