説明

自動車の操作ペダル支持構造

【課題】ペダルの後退防止機構をペダル軸(第1支軸)よりも略前方の領域にコンパクトに形成することができ、簡単かつ信頼性の高い自動車の操作ペダル支持構造を提供する。
【解決手段】ダッシュパネル3側の固定ペダル支持部材17と、揺動ペダル支持部材19と、該揺動ペダル支持部材19に第1支軸28を介して支持されるペダル本体12と、固定ペダル支持部材17に第2支軸33を介して支持された回動レバー21とを備え、第2支軸33が第1支軸28に対して上方かつ前後方向において略同一乃至前方に配設され、回動レバー21にはノーマル時に揺動ペダル支持部材19を支持し、前面衝突時に揺動ペダル支持部材19の支持を解除する支持部34を設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車の前面衝突時にダッシュパネル後方に配設された操作ペダルのペダル踏面部(いわゆるパッド)の後方移動を抑制するような自動車の操作ペダル支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車が前面衝突すると、ダッシュパネル前方のエンジン等のパワートレインが後退し、これにより倍力装置およびダッシュパネルが後退することに起因して、操作ペダルが後退する。このような操作ペダルの後方移動を抑制する所謂後退防止機構を備え、乗員の安全性を確保する自動車の操作ペダル支持構造が既に発明されている(特許文献1〜4参照)。
【0003】
特許文献1に開示された構造は、図16に示すように、ダッシュパネル側に取付けられた固定ペダル支持部材100を設け、ペダル本体101のペダル軸102を、該固定ペダル支持部材100のL字状の溝103内に配置する一方、上記ペダル軸102よりも車両後方側に回動中心となる軸104を介して回動レバー105を取付け、通常時は回動レバー105の前下部の支持部105aでペダル軸102を保持する一方、自動車の前面衝突時には、インパネメンバ側に設けた車体側部材106に回動レバー105を衝合させ、該回動レバー105の矢印方向への回動により、その押圧部105bにてペダル軸102をL字状の溝103に沿って押下げ、ペダル本体101を、プッシュロッド107の軸108を支点として回動させて、そのパッド109を図16に矢印で示すように前方に移動させ、ペダルの後退を防止するものである。
【0004】
この特許文献1に開示された従来構造においては、ペダル軸102よりも後方に回動レバー105の軸104が位置するため、固定ペダル支持部材100には該軸104を支持する支持部が必須となり、ペダル支持構造のコンパクト化を図ることができない問題点があった。
また、上記回動レバー105は回動可能に構成されているため、ペダル軸102をその支持部105aで保持しているとは云え、その保持が不安定で、乗員のペダル本体101の操作形態によっては不用意にペダル軸102の位置が下方にずれる可能性があり、ペダル支持の信頼性が劣る問題点があった。
【0005】
特許文献2に開示された構造は、図17に示すように、ダッシュパネル200側に取付けられた固定ペダル支持部材201を設け、ペダル本体202のペダル軸203を、該固定ペダル支持部材201に枢支する一方、このペダル軸203よりも車両後方側に回動支点としての軸204を介して回動レバー205を設け、通常時は固定ペダル支持部材201の突起部201aおよびペダル軸203を支持するストッパ部材208にてペダル軸203を支持する一方、自動車の前面衝突時には、インパネメンバ206側に設けた車体側部材207に回動レバー205を衝合させ、該回動レバー205の押圧部205aでペダル軸203を押下げ、該ペダル軸203が突起部201aおよびストッパ部材208を変形させて下方に脱落することで、ペダルの後退を防止するものである。
【0006】
この特許文献2に開示された従来構造においても、ペダル軸203よりも後方に回動レバー205の軸204が存在するので、固定ペダル支持部材201には、該軸204を支持する支持部が必要となり、ペダル支持構造のコンパクト化を図ることができない問題点があった。また、ストッパ部材208が別途必要であった。
【0007】
特許文献3に開示された構造は、図18に示すように、前面衝突時にダッシュパネル300に対して後退量の僅少な車体剛性部材としてのカウルパネル301の下部に取付けブラケット302を設け、この取付けブラケット302にはボルト、ナット303を介して衝突時に後方移動可能に固定ペダル支持部材304と揺動ペダル支持部材305とを設けている。
固定ペダル支持部材304および揺動ペダル支持部材305は何れも門形状に形成され、固定ペダル支持部材304の内側に揺動ペダル支持部材305が位置する。
【0008】
また、カウルパネル301の下部には車体側部材306を取付ける一方、固定ペダル支持部材304にはワイヤガイド307および突出板状部材308を一体的に取付けている。
さらに、支軸309を支点として回動可能な揺動ペダル支持部材305にはペダル軸310を設け、このペダル軸310にペダル本体311を取付ける一方、一端を取付けブラケット302に固定したワイヤ312の中間をワイヤガイド307のガイド部307aで案内させた後に、このワイヤ312の他端をペダル軸310に巻回固定している。
【0009】
自動車の前面衝突時には、ダッシュパネル300の後退により、固定ペダル支持部材304および揺動ペダル支持部材305が取付けブラケット302から離脱し、ノーマル状態下で弛んだ状態のワイヤ312が緊張した後、このワイヤ312の他端でペダル軸310を後方に引っ張るので、該ペダル軸310および揺動ペダル支持部材305は支軸309を支点として図示の時計方向に回動し、ペダル本体311はプッシュロッド313の軸314を支点として、そのパッド315が前方に移動して、ペダルの後退を防止するものである。
【0010】
この特許文献3に開示された従来構造においては、自動車の前面衝突時に、揺動ペダル支持部材305を引抜いてペダル本体311を強制的に前下方向へ移動させる機構が、ペダル軸310よりも後方に存在するので、ペダル支持構造のコンパクト化を図ることができない問題点があった。
【0011】
特許文献4に開示された構造は、図19に示すように、ダッシュパネル400に取付けられた固定ペダル支持部材401を設け、ペダル本体402のペダル軸403を該固定ペダル支持部材401の下部に枢支する一方、上記固定ペダル支持部材401の上部には軸404を介して回動レバー405を設けている。
また、インパネメンバ406には車体側部材407を取付ける一方、回動レバー405とペダル本体402との間には、T字状のリンク408と直線状のリンク409とを配設している。
【0012】
この図19に示す従来構造においては、自動車の前面衝突時に、回動レバー405が車体側部材407に衝合して図示の矢印方向へ回動し、該回動レバー405の下部の動きが2つのリンク408,409を介してペダル本体402に伝達されるので、このペダル本体402はそのパッド410が前方へ変位するように移動して、ペダルの後退を防止するものである。
【0013】
この特許文献4に開示された従来構造においては、ペダル軸403よりも前方に回動レバー405の軸404が存在するので、回動レバー405では後方への動作が確保できるが、下方への動作が確保できない。このため、該従来構造においては上記2つのリンク408,409を用いて下方への動作を形成している。
【0014】
そして、この特許文献4においては次のような問題点があった。
すなわち、ペダル軸403よりも車両後方側にペダル本体402を強制移動させる機構が存在するので、ペダル支持構造のコンパクト化を図ることができない問題点があった。
【0015】
また、ペダル本体402は衝突時にそのパッド410が前方へ移動するものの、ペダル軸403の位置は一定不変であり、ペダルを落下させるものではなく、下方スペースの有効利用を図ることができない問題点があった。
さらに、前面衝突時の挙動により、リンク408,409がこじれると、適切な動作が得られなくなり、信頼性が悪いうえ、部品点数が多く、構造が複雑化する問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特表2005−510785号公報
【特許文献2】特開2008−77150号公報
【特許文献3】特開2006−139345号公報
【特許文献4】特開2006−160150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
そこで、この発明は、ペダルの後退防止機構をペダル軸(第1支軸)よりも略前方の領域にコンパクトに形成することができ、簡単かつ信頼性の高い自動車の操作ペダル支持構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この発明による自動車の操作ペダル支持構造は、車室前部を構成するダッシュパネルの後方に配設された自動車の操作ペダル支持構造であって、上記ダッシュパネル側に取付けられた固定ペダル支持部材と、上記ダッシュパネルに対して、その前部を中心に上下揺動可能に支持されて、後側上方に延びる揺動ペダル支持部材と、該揺動ペダル支持部材の後部に車幅方向に延びるように配設された第1支軸を介して揺動操作自在に支持されるペダル本体と、上記固定ペダル支持部材の後方に離間して固定されるインパネメンバ側の車体側部材と、該車体側部材の前方に非連結で配設され、かつ上記固定ペダル支持部材に車幅方向に延びるように配設された第2支軸を介して前後方向に揺動可能に支持され、上記固定ペダル支持部材が上記車体側部材に対して後退した時、該車体側部材に当接することにより、上記第2支軸を支点として回動して上記揺動ペダル支持部材を下方に押圧する回動レバーとを備え、上記第2支軸は、上記第1支軸に対して上方で、かつ前後方向において略同一乃至前方に配設され、上記回動レバーには、該回動レバー非回動時に上記揺動ペダル支持部材を支持する一方、上記回動レバーの回動により上記揺動ペダル支持部材の支持を解除する支持部が設けられたものである。
【0019】
上記構成によれば、回動レバーの支持部で、揺動ペダル支持部材を介してペダル軸としての第1支軸を確実に保持することができ、自動車の前面衝突時には、回動レバーが第2支軸を中心として回動することで、上記支持部が退避して、揺動ペダル支持部材の支持を解除し、かつ回動レバーにて該揺動ペダル支持部材を下方へ押下げるので、第1支軸は後方下方へ下降して、ペダルの踏面部を前下に移動させることができる。
上記第2支軸は、第1支軸に対して上方で、かつ前後方向において略同一乃至前方に配設されているので、操作ペダルの後退防止機構を、ペダル軸(第1支軸)から略前方の領域にコンパクトに形成することができ、簡単かつ信頼性の高い自動車の操作ペダル支持構造を提供することができる。
【0020】
また、回動レバーは、インパネメンバ側の車体側部材に対して、その前方に非連結で配設されているので、ペダル組付け後にインパネモジュールを車体に組付ける場合の組付け性向上を図ることができる。
さらに、ペダル軸としての第1支軸を衝突時に下降させると共に、パッド(ペダル踏面部)を前下に移動させるものであるから、充分な後退防止量を確保することができる。
【0021】
この発明の一実施態様においては、上記支持部は、上記回動レバーにおける上記第2支軸と前後方向同一乃至後方であって、上記回動レバー非回動時に下方揺動しようとする上記揺動ペダル支持部材と係合可能な位置にあり、上記回動レバーの回動により上記揺動ペダル支持部材と非係合となる位置に移動するように設けられたものである。
上記構成によれば、支持部による揺動ペダル支持部材の係合と、前面衝突時に回動レバーが回動して支持部が非係合位置へ退避することによる揺動ペダル支持部材の離脱動作との双方の信頼性向上を図ることができる。
【0022】
この発明の一実施態様においては、上記固定ペダル支持部材は、上記第1支軸の下方移動を抑制する下方移動抑制手段を備え、該下方移動抑制手段は、第1支軸支持部から上記ペダル本体の操作時に上記第1支軸にかかる操作荷重方向よりも下方に向けて延びる溝部と、該溝部と上記第1支軸支持部の間に形成され、所定の下方荷重以上で上記第1支軸により破損する規制部とが設けられたものである。
上記構成によれば、固定ペダル支持部材の規制部は、所定の下方荷重未満の状態で、ペダル軸としての第1支軸の下方移動を抑制するので、通常時(非衝突時)にペダルが脱落する誤作動を確実に防止することができ、自動車の前面衝突時には上記規制部が破損するので、第1支軸の下方移動を許容して、ペダルの後退防止を図ることができる。
【0023】
この発明の一実施態様においては、上記揺動ペダル支持部材は、上記固定ペダル支持部材に軸支されたものである。
上記構成によれば、揺動ペダル支持部材を固定ペダル支持部材に軸支したので、該揺動ペダル支持部材に第1支軸を介して設けた操作ペダルの衝突時における下方移動をスムーズに行なうことができる。
【0024】
この発明による自動車の操作ペダル支持構造は、また、車室前部を構成するダッシュパネルの後方に配設された自動車の操作ペダル支持構造であって、上記ダッシュパネル側に取付けられた固定ペダル支持部材と、上記ダッシュパネルに対して、その前部を中心に上下揺動可能に支持されて、後側上方に延びる揺動ペダル支持部材と、該揺動ペダル支持部材の後部に車幅方向に延びるように配設された第1支軸を介して揺動操作自在に支持されるペダル本体と、上記固定ペダル支持部材の後方に離間して固定されるインパネメンバ側の車体側部材と、該車体側部材の前方に非連結で配設され、かつ上記固定ペダル支持部材に車幅方向に延びるように配設された第2支軸を介して前後方向に揺動可能に支持され、上記固定ペダル支持部材が上記車体側部材に対して後退した時、該車体側部材に当接することにより、上記第2支軸を支点として回動して上記揺動ペダル支持部材を下方に押圧する回動レバーとを備え、上記第2支軸は、上記第1支軸に対して上方で、かつ前後方向において略同一乃至前方に配設され、上記回動レバーには、該回動レバー非回動時に上記揺動ペダル支持部材を支持する一方、上記回動レバーの回動により上記揺動ペダル支持部材の支持を解除する支持部が設けられ、上記固定ペダル支持部材は、所定荷重未満の入力荷重に対しては上記第1支軸の下方移動を規制し、所定荷重以上の時には上記第1支軸の下方移動を許容するように構成されたものである。
【0025】
上記構成によれば、請求項1に記載の発明の効果と併せて、固定ペダル支持部材は所定荷重未満の入力時には第1支軸の下方移動を規制するので、通常時(非衝突時)に操作ペダルが脱落する誤作動を防止することができ、所定荷重以上が作用する前面衝突時には第1支軸の下方移動を許容するので、ペダルの後退防止を図ることができる。
【0026】
この発明の一実施態様においては、上記回動レバーには、上記第2支軸よりも前方に上記揺動ペダル支持部材を押下げる押圧部が設けられたものである。
上記構成によれば、回動レバーが第2支軸よりも前方で揺動ペダル支持部材を押下げる構成により、ペダル強制下降手段を有するペダル支持構造をコンパクトに形成することができる。
【発明の効果】
【0027】
この発明によれば、ペダルの後退防止機構をペダル軸(第1支軸)よりも略前方の領域にコンパクトに形成することができ、簡単かつ信頼性の高い自動車の操作ペダル支持構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の自動車の操作ペダル支持構造を示す側面図
【図2】図1の操作ペダル支持構造を車両内側から見た状態で示す背面図
【図3】図1の要部の平面図
【図4】操作ペダル支持構造の分解斜視図
【図5】図1の要部の拡大側面図
【図6】操作ペダル支持構造の非衝突時の側面図
【図7】支持部退避時の側面図
【図8】第1支軸離脱時の側面図
【図9】回動レバーによるペダル強制下降時の側面図
【図10】回動レバーの押圧部でペダル本体の上端部を押下げる時の側面図
【図11】自動車の操作ペダル支持構造の他の実施例を示す側面図
【図12】図11の固定ペダル支持部材のみを抽出して示す拡大側面図
【図13】ペダル強制下降時の側面図
【図14】ペダル最大踏込み時における非衝突状態の側面図
【図15】ペダル最大踏込み状態下でのペダル強制下降を示す側面図
【図16】従来の自動車の操作ペダル支持構造を示す側面図
【図17】従来の自動車の操作ペダル支持構造の他の例を示す側面図
【図18】従来の自動車の操作ペダル支持構造のさらに他の例を示す側面図
【図19】従来の自動車の操作ペダル支持構造のさらに他の例を示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0029】
ペダルの後退防止機構をペダル軸(第1支軸)よりも略前方の領域にコンパクトに形成し、簡単かつ信頼性の高い自動車の操作ペダル支持構造を提供するという目的を、車室前部を構成するダッシュパネルの後方に配設された自動車の操作ペダル支持構造において、上記ダッシュパネル側に取付けられた固定ペダル支持部材と、上記ダッシュパネルに対して、その前部を中心に上下揺動可能に支持されて、後側上方に延びる揺動ペダル支持部材と、該揺動ペダル支持部材の後部に車幅方向に延びるように配設された第1支軸を介して揺動操作自在に支持されるペダル本体と、上記固定ペダル支持部材の後方に離間して固定されるインパネメンバ側の車体側部材と、該車体側部材の前方に非連結で配設され、かつ上記固定ペダル支持部材に車幅方向に延びるように配設された第2支軸を介して前後方向に揺動可能に支持され、上記固定ペダル支持部材が上記車体側部材に対して後退した時、該車体側部材に当接することにより、上記第2支軸を支点として回動して上記揺動ペダル支持部材を下方に押圧する回動レバーとを備え、上記第2支軸は、上記第1支軸に対して上方で、かつ前後方向において略同一乃至前方に配設され、上記回動レバーには、該回動レバー非回動時に上記揺動ペダル支持部材を支持する一方、上記回動レバーの回動により上記揺動ペダル支持部材の支持を解除する支持部を設けるという構成にて実現した。
【実施例1】
【0030】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図1は自動車の操作ペダル支持構造の全体構造を示す側面図、図2は図1の要部の背面図、図3は図1の要部の平面図であって、図1において、ダッシュアッパパネル1(上側ダッシュパネル)とダッシュロアパネル2(下側ダッシュパネル)とを接合して、ダッシュパネル3を形成し、このダッシュパネル3でエンジンルーム4と車室5とを前後方向に仕切っている。ここで、上述のダッシュパネル3は車室5の前部を構成するパネルである。
上述のダッシュアッパパネル1のエンジンルーム4側には、ブレーキ装置を構成する倍力装置6およびマスタシリンダ7を配置している。
【0031】
ブレーキ装置のプッシュロッド8は車室5側へ延出され、このプッシュロッド8の後端部は、フォーク9および軸10を介して操作ペダルとしてのブレーキペダル11のペダル本体12の上下方向中間部に連結されている。ペダル本体12の下端部にはペダル踏面部としてのパッド13が一体的に設けられている。
【0032】
自動車の操作ペダル支持構造は、車室5の前部を構成するダッシュパネル3の後方、つまり車室5側に配設されるものである。
上述のダッシュアッパパネル1の車室5側において、倍力装置6の上部と対応する部位には、車幅方向に延びるダッシュクロスメンバ14を取付ける一方、車室5内において左右のヒンジピラー(図示せず)と対応する部位には、車幅方向に延びるインパネメンバ15を設け、車体強度部材としての該インパネメンバ15の前部には当接用ブラケットとして作用する車体側部材16を取付けている。
【0033】
図2に背面図で、図3に平面図で、また図4に分解斜視図でそれぞれ示すように、この実施例の自動車の操作ペダル支持構造は、左右一対の固定ペダル支持部材17,18と、左右一対の揺動ペダル支持部材19,20と、上述のペダル本体11と、上述の車体側部材16と、門形状に形成された回動レバー21とを備え、ペダル本体11は後述する第1支軸28(ペダル軸)を介して左右一対の揺動ペダル支持部材19,20に支持されている。
【0034】
図4に分解斜視図で示すように、左側の固定ペダル支持部材17は、その前部に上側取付け片17aと下側取付け片17bとを一体に折曲げ形成すると共に、上部および下部には左向きのフランジ17c,17dを一体形成し、後部には右向きの折曲げ片17eを一体形成している。
また、右側の固定ペダル支持部材18は、その前部に上側取付け片18aと下側取付け片18bとを一体に折曲げ形成すると共に、上部には右向きのフランジ18cを一体形成し、下部には左向きのフランジ18dを一体形成し、後部には左向きの折曲げ片18eを一体形成している。
【0035】
図1、図2に示すように、左右一対の固定ペダル支持部材17,18の上側取付け片17a,18aは、ボルト22、ナット23等の取付け部材を用いてダッシュクロスメンバ14に取付けられ、左右一対の固定ペダル支持部材17,18の下側取付け片17b,18bは、図1〜図3に示すように、ボルト24、ナット25等の取付け部材を用いてブラケット26(取付けブラケット)に取付けられている。
上述のブラケット26は、倍力装置6の中央部と対応するようにダッシュパネル3(詳しくは、ダッシュアッパパネル1)の車室5側に設けられた取付けブラケットである。
【0036】
このようにして、ダッシュパネル3側に取付けられた左右一対の固定ペダル支持部材17,18は、図3に平面図で示すように、その部位a,bにより車両後方側が狭く、車両前方側が広くなる『ハの字状』に形成されており、これにより、固定ペダル支持部材17,18個々の剛性向上と、ペダル支持の安全性を確保するように構成している。
【0037】
図1に示すように、上述の左右一対の揺動ペダル支持部材19,20は、ダッシュパネル3に対して、その前部を中心に上下揺動可能に支持されて、後側上方に延びる部材であって、この実施例では、図2、図3に示すように、左右の揺動ペダル支持部材19,20は、ピン27,27(車幅方向に延びる支軸)を用いて、固定ペダル支持部材17,18に左右独立して軸支されている。
【0038】
また、左右の揺動ペダル支持部材19,20の長手方向中間には、これら揺動ペダル支持部材19,20をペダル本体12側へ凸形状に折曲げ形成して、回動レバー21と係合する受け部19a,20aを一体形成し、これにより揺動ペダル支持部材19,20の剛性向上を図ると共に、回動レバー21の回動時において、該回動レバー21と揺動ペダル支持部材19,20との両者の当接面オーバラップ量拡大を図って、回動レバー21が確実に揺動ペダル支持部材19,20に当接するように構成している。
左右一対の揺動ペダル支持部材19,20の後部(遊端部)には、車幅方向に延びるように配設されたペダル軸としての第1支軸28を介して上述のペダル本体12が揺動操作自在に支持されている。
【0039】
この実施例では、上述の第1支軸28として所定長さのボルト29を用いるが、図2に背面図で示すように、ペダル本体12の両側にはスペーサ30,30を配設し、スペーサ30の外側に各揺動ペダル支持部材19,20を配設し、揺動ペダル支持部材19,20の外側に固定ペダル支持部材17,18を配設し、さらに固定ペダル支持部材17,18の外側にペダルストッパ31,31を配設した状態で、一方から他方に向けて挿通したボルト29の他方端部にナット32を締付けることで、左右一対の揺動ペダル支持部材19,20間にペダル本体12を揺動操作自在に支持させている。なお、ペダルストッパは固定ペダル支持部材に接合されていてもよく、この場合、ボルトを離れた位置で接合されてもよい。
上述のインパネメンバ15側の強度部材としての車体側部材16は、固定ペダル支持部材17,18の後方に離間して固定されたもので、さらに詳しくは、該車体側部材16は、回動レバー21の後部に対してもリヤ側に離間して固定されたものである。
【0040】
回動レバー21は、図1、図2に示すように、車体側部材16の前方に非連結で、好ましくは、離間して配設されており、かつ、上述の固定ペダル支持部材17,18に対して車幅方向に延びるように配設された左右独立の第2支軸33,33を介して前後方向に揺動可能に支持されており、固定ペダル支持部材17,18が車体側部材16に対して後退した時、該車体側部材16に当接することにより、左右独立の第2支軸33,33を支点として回動して、上述の揺動ペダル支持部材19,20を下方に押圧する門形状のレバーである。
【0041】
図5は図1の要部拡大側面図であって、図5に示すように、上述の第2支軸33はペダル軸としての第1支軸28に対して上方で、かつ前後方向において略同一位置に配設されている。
【0042】
図4、図5に示すように、上述の回動レバー21は上片部21aと、この上片部21aの左右一体に折曲げ形成したフランジ部21b,21bとを有し、左右のフランジ部21b,21bの下部には支持部34,34をそれぞれ一体形成している。
これら左右の支持部34,34は、回動レバー21の非回動時(つまり非衝突時)に、揺動ペダル支持部材19,20を支持する一方、回動レバー21の回動により該揺動ペダル支持部材19,20の支持を解除するためのものである。
【0043】
ここで、上述の支持部34は、図5に拡大図で示すように、その回動軌跡αに対して真っ直ぐ、または内側に傾くように形成されており、これにより、通常時(非衝突時)における該支持部34と揺動ペダル支持部材19,20との適切な係合を保つように構成している。
また、上述の支持部34は、図5に示すように、回動レバー21における第2支軸33と前後方向同一乃至後方(この実施例では後方)であって、回動レバー21の非回動時に下方へ揺動しようとする揺動ペダル支持部材19,20と係合可能な位置にあり、衝突時において回動レバー21が回動した場合、揺動ペダル支持部材19,20と非係合となる位置、つまり係合を解除する位置(図7〜図10参照)に移動するように設けられている。
【0044】
さらに、上述の回動レバー21における上片部21aの下部は、押圧部35として作用するものである。この押圧部35は回動レバー21の回動時に、揺動ペダル支持部材19,20の受け部19a,20aを押圧して、該揺動ペダル支持部材19,20を下方に押し下げるものであって、図5に示すように、この押圧部35は第2支軸33よりも前方下方に位置するように設けられている。
【0045】
一方、図4、図5に示すように、左右一対の固定ペダル支持部材17,18は、ペダル軸としての第1支軸28の下方移動を抑制する下方移動抑制手段(次に述べる溝部37、規制部38参照)を備えている。
この下方移動抑制手段は、同図に示すように、第1支軸28を支持する第1支軸支持部36からペダル本体12の操作時に該第1支軸28にかかる操作荷重方向(図5の矢印x方向)よりも方向を異にして下方へ向けて延びる溝部37と、この溝部37と第1支軸支持部36との間に形成され、所定の下方荷重以上で第1支軸28により破損する規制部38と、から構成されている。なお、操作荷重方向は、ペダル最大踏込み時における軸10を中心とした第1支軸28を通る円弧に近似する。
すなわち、左右一対の固定ペダル支持部材17,18は、所定荷重未満の入力荷重に対しては第1支軸28の下方移動を規制し、所定荷重以上の時には第1支軸28の下方移動を許容するように構成されたものである。なお、規制部38は支持部34側に向かって延びる形状であることが好ましい。
【0046】
一方、図4、図5に示すように、左右一対の揺動ペダル支持部材19,20の後部(遊端下部)には、上記支持部34と対向する係合凹部19b,20bが形成されている。
【0047】
図5に示すように、係合凹部19b,20bと支持部34,34との間には、通常時(非衝突時)においてギャップgが形成されており、このギャップgにより通常走行時に異音が発生するのを防止すべく構成している。
【0048】
通常時において、第1支軸28は、固定ペダル支持部材17,18の第1支軸支持部36および規制部38で支持されている。自動車の前面衝突時において乗員がブレーキペダル11をパニック操作する所謂パニックブレーキ時には、通常のブレーキング操作時と比較して強大な力が第1支軸28に作用し、上記ギャップgがゼロとなるので、このパニックブレーキ時には、第1支軸28は規制部38と支持部34との双方で保持されるものである。
【0049】
ところで、図2、図3、図5に示すように、係合凹部19b,20bおよび支持部34は、スペーサ30と固定ペダル支持部材17,18との間に挟持され、適切に位置決めされている。
また、図5に示すように、ペダル本体12の上部と回動レバー21とは、上下方向にオーバラップするように構成されていて、これにより操作ペダル支持構造の上下方向寸法のコンパクト化を図るように構成している。
【0050】
さらに、図5に示すように、第1支軸28と第2支軸33とを近接配置しており、スペーサ30により第2支軸33部分の剛性を高め、衝突時に若干のこじれが発生しても、第1支軸28に対する第2支軸33の相対位置が変化しないように構成し、回動レバー21の確実な動きを確保して、動作の安定性を高めるように構成している。
加えて、揺動ペダル支持部材19,20と回動レバー21とは、左右の固定ペダル支持部材17,18に対して、左右別々に軸支する構成により、これら揺動ペダル支持部材19,20の間と回動レバー21下の凹部スペースを有効利用できると共に、支持部材が歪んでも安定した回動動作が得られるように構成している。
【0051】
また、固定ペダル支持部材17,18および揺動ペダル支持部材19,20はそれぞれ板状部材から構成されており、図2、図3に示すように、これらの各支持部材17〜20をそれぞれ上述したような屈曲形状に形成し、各部材17〜20それ自体の剛性向上と、軽量化の両立を図っている。
【0052】
さらに、図5に示すように、非回動時における回動レバー21は、車体側部材16と離間していることは勿論、揺動ペダル支持部材19,20とも離間しており、これにより組付け性の向上と騒音発生防止との両立を図っている。
さらにまた、回動レバー21は門形状(つまりコの字状)に形成され、揺動ペダル支持部材19,20は左右一対で構成されると共に、内側に凸形状に形成され、これら回動レバー21および各揺動ペダル支持部材19,20が共に固定ペダル支持部材17,18の側壁に沿う形状に構成されており、これにより、ブレーキペダル11の下降時の安定化と、衝突によりこじれが生じた場合でも、回動レバー21の回動により該回動レバー21を確実に揺動ペダル支持部材19,20に押圧係合させることとの両立を図るように構成している。
【0053】
また、回動レバー21の押圧部35を、第2支軸33よりも下方前方へ突出形成することで、衝突時においてダッシュパネル3により押圧部35が後方に押され、該回動レバー21の回動促進を図るように構成している。
さらに、固定ペダル支持部材17,18とスペーサ30,30との間に、回動レバー21のフランジ部21b,21bと揺動ペダル支持部材19,20とを挟み込んで、パニックブレーキ時に揺動ペダル支持部材19,20の係合凹部19b,20bが確実に支持部34と係合するように構成してもよく、上記挟持構造により揺動ペダル支持部材19,20の可及的薄肉化を図ると共に、ボルト29,ナット32による締付け構造にて、通常時においては回動レバー21が動きにくくなるように構成できる。なお、ボルト29、ナット32による締付け安定性を優先し、フランジ21b,21bを固定ペダル支持部材17,18とスペーサ30,30との間に挟み込まれないようにしてもよい。
【0054】
なお、図中、39はペダル本体12にブラケット40を介して設けられたフットブレーキランプスイッチ当接部、41は上述のペダルストッパ31の下方部に取付けられたフットブレーキランプスイッチである。
【0055】
このように構成した自動車の操作ペダル支持構造の作用を、図6〜図10を参照して、以下に詳述する。
図6は通常時(非衝突時)の側面図であって、図6において揺動ペダル支持部材19の長手方向の延長線βは、プッシュロッド8の前端8F近傍を通るように設定されており、これにより衝突時のプッシュロッド8の下方回動を促進するように構成している。
【0056】
図6に示す状態から自動車が前面衝突すると、エンジンルーム4内のパワートレインの後退により、ダッシュパネル3が後退し、これに起因して回動レバー21が車体側部材16に衝合するので、該回動レバー21は第2支軸33を支点として図示の反時計方向へ回動し、この回動レバー21の支持部34が揺動ペダル支持部材19との非係合位置に後退移動すると共に、回動レバー21の押圧部35が左右一対の揺動ペダル支持部材19,20の受け部19a,20aに係合する。
この場合、回動レバー21の左右のフランジ部21b,21bは、固定ペダル支持部材17,18の側壁と、揺動ペダル支持部材19,20の凸形状の受け部19a,20aと、の間の空間部分に嵌まり込むので、これ以降の回動レバー21の動作が確実となる。
【0057】
図7に示す回動レバー21の回動初期においては、ペダル軸としての第1支軸28は規制部38で支持されており、ブレーキペダル11の操作が可能である。
また、揺動ペダル支持部材19の長手方向の延長線βがプッシュロッド8の前端8F近傍を通るので、該前端8Fを中心にプッシュロッド8には下方への回転モーメントが付勢される。
【0058】
図7に示す回動レバー21の回動初期から、図8に示す回動レバー21の回動中期に至ると、回動レバー21の押圧部35で、左右一対の揺動ペダル支持部材19,20が下方へ押下げられるので、その後端に設けたペダル軸としての第1支軸28は規制部38を破損して後方下方へ移動する。
【0059】
図8に示す回動レバー21の回動中期から、図9に示す回動レバー21の回動後期に至ると、回動レバー21の押圧部35で、左右一対の揺動ペダル支持部材19,20がさらに下方へ押下げられ、第1支軸28はさらに後方下方へ移動し、プッシュロッド8の軸10は図9に矢印cで示すように前下方へ移動し、ブレーキペダル11のパッド13は図9に矢印dで示すように前方下方へ移動する。
【0060】
図9に示す回動レバー21の回動後期から、図10に示す回動レバー21の回動終期に至ると、該回動レバー21の押圧部35がペダル本体12の上端部を押下げる。これにより、ブレーキペダル11はそのバッド13が前方下方に移動して、下方スペースの有効利用を図る。
このようにして、自動車の前面衝突時においてブレーキペダル11の後退を確実に防止することができる。
【0061】
ここで、上述したように、回動レバー21の押圧部35が該回動レバー21の回動終期においてペダル本体12の上端部を押し下げるように、該ペダル本体12の上端部が回動レバー21と上下方向にオーバラップし、かつ揺動ペダル支持部材19,20の後端よりもさらに上方へ突出形成されているので、揺動ペダル支持部材19,20の軽量化、コンパクト化と、ペダル下降ストローク確保との両立を図ることができる。
【0062】
このように、図1〜図10で示した実施例の自動車の操作ペダル支持構造は、車室5前部を構成するダッシュパネル3の後方に配設された自動車の操作ペダル支持構造であって、上記ダッシュパネル3側に取付けられた固定ペダル支持部材17,18と、上記ダッシュパネル3に対して、その前部を中心に上下揺動可能に支持されて、後側上方に延びる揺動ペダル支持部材19,20と、該揺動ペダル支持部材19,20の後部に車幅方向に延びるように配設された第1支軸28を介して揺動操作自在に支持されるペダル本体12と、上記固定ペダル支持部材17,18の後方に離間して固定されるインパネメンバ15側の車体側部材16と、該車体側部材16の前方に非連結で配設され、かつ上記固定ペダル支持部材17,18に車幅方向に延びるように配設された第2支軸33を介して前後方向に揺動可能に支持され、上記固定ペダル支持部材17,18が上記車体側部材16に対して後退した時、該車体側部材16に当接することにより、上記第2支軸33を支点として回動して上記揺動ペダル支持部材19,20を下方に押圧する回動レバー21とを備え、上記第2支軸33は、上記第1支軸28に対して上方で、かつ前後方向において略同一乃至前方(この実施例では、前後方向の略同一位置)に配設され、上記回動レバー21には、該回動レバー21非回動時に上記揺動ペダル支持部材19,20を支持する一方、上記回動レバー21の回動により上記揺動ペダル支持部材19,20の支持を解除する支持部34が設けられたものである(図1、図4、図5参照)。
【0063】
この構成によれば、回動レバー21の支持部34で、揺動ペダル支持部材19,20を介してペダル軸28としての第1支軸28を確実に保持することができ、自動車の前面衝突時には、回動レバー21が第2支軸33を中心として回動することで、上記支持部34が退避して、揺動ペダル支持部材19,20の支持を解除し、かつ回動レバー21にて該揺動ペダル支持部材19,20を下方へ押下げるので、第1支軸28は後方下方へ下降して、ペダル11の踏面部(パッド13)を前下に移動させることができる。
上記第2支軸33は、第1支軸28に対して上方で、かつ前後方向において略同一乃至前方に配設されているので、ブレーキペダル11の後退防止機構を、ペダル軸(第1支軸28)から略前方の領域にコンパクトに形成することができ、簡単かつ信頼性の高い自動車の操作ペダル支持構造を提供することができる。
【0064】
また、回動レバー21は、インパネメンバ15側の車体側部材16に対して、その前方に非連結で配設されているので、ペダル11の組付け後にインパネモジュール(図示せず)を車体に組付ける場合の組付け性向上を図ることができる。
さらに、ペダル軸としての第1支軸28を衝突時に下降させると共に、パッド13(ペダル踏面部)を前下に移動させるものであるから、充分な後退防止量を確保することができる。
【0065】
また、上記支持部34は、上記回動レバー21における上記第2支軸33と前後方向同一乃至後方(この実施例では前後方向後方)であって、上記回動レバー21非回動時に下方揺動しようとする上記揺動ペダル支持部材19,20と係合可能な位置にあり、上記回動レバー21の回動により上記揺動ペダル支持部材19,20と非係合となる位置(図7参照)に移動するように設けられたものである(図5、7参照)。
この構成によれば、支持部34による揺動ペダル支持部材19,20の係合と、前面衝突時に回動レバー21が回動して支持部34が非係合位置へ退避することによる揺動ペダル支持部材19,20の離脱動作との双方の信頼性向上を図ることができる。
【0066】
さらに、上記固定ペダル支持部材17,18は、上記第1支軸28の下方移動を抑制する下方移動抑制手段を備え、該下方移動抑制手段は、第1支軸支持部36から上記ペダル本体12の操作時に上記第1支軸28にかかる操作荷重方向(図5の矢印x方向)よりも下方に向けて延びる溝部37と、該溝部37と上記第1支軸支持部36の間に形成され、所定の下方荷重以上で上記第1支軸28により破損する規制部38とが設けられたものである(図5参照)。
この構成によれば、固定ペダル支持部材17,18の規制部38は、所定の下方荷重未満の状態で、ペダル軸としての第1支軸28の下方移動を抑制するので、通常時(非衝突時)にペダル11が脱落する誤作動を確実に防止することができ、自動車の前面衝突時には上記規制部38が破損するので、第1支軸28の下方移動を許容して、ペダル11の後退防止を図ることができる。
【0067】
加えて、上記揺動ペダル支持部材19,20は、上記固定ペダル支持部材17,18に軸支されたものである(図5参照)。
この構成によれば、揺動ペダル支持部材19,20を固定ペダル支持部材17,18に軸支したので、該揺動ペダル支持部材19,20に第1支軸28を介して設けたブレーキペダル11の衝突時における下方移動をスムーズに行なうことができる。
【0068】
また、上記実施例の自動車の操作ペダル支持構造は、車室5前部を構成するダッシュパネル3の後方に配設された自動車の操作ペダル支持構造であって、上記ダッシュパネル3側に取付けられた固定ペダル支持部材17,18と、上記ダッシュパネル3に対して、その前部を中心に上下揺動可能に支持されて、後側上方に延びる揺動ペダル支持部材19,20と、該揺動ペダル支持部材19,20の後部に車幅方向に延びるように配設された第1支軸28を介して揺動操作自在に支持されるペダル本体12と、上記固定ペダル支持部材17,18の後方に離間して固定されるインパネメンバ15側の車体側部材16と、該車体側部材16の前方に非連結で配設され、かつ上記固定ペダル支持部材17,18に車幅方向に延びるように配設された第2支軸33を介して前後方向に揺動可能に支持され、上記固定ペダル支持部材17,18が上記車体側部材16に対して後退した時、該車体側部材16に当接することにより、上記第2支軸33を支点として回動して上記揺動ペダル支持部材19,20を下方に押圧する回動レバー21とを備え、上記第2支軸33は、上記第1支軸28に対して上方で、かつ前後方向において略同一乃至前方(この実施例では、前後方向において略同一位置)に配設され、上記回動レバー21には、該回動レバー21の非回動時に上記揺動ペダル支持部材19,20を支持する一方、上記回動レバー21の回動により上記揺動ペダル支持部材19,20の支持を解除する支持部34が設けられ、上記固定ペダル支持部材17,18は、所定荷重未満の入力荷重に対しては上記第1支軸28の下方移動を規制し、所定荷重以上の時には上記第1支軸28の下方移動を許容するように構成されたものである(図1、図4、図5参照)。
この構成によれば、請求項1に記載の発明の効果と併せて、固定ペダル支持部材17,18は所定荷重未満の入力時には第1支軸28の下方移動を規制するので、通常時(非衝突時)にブレーキペダル11が脱落する誤作動を防止することができ、所定荷重以上が作用する前面衝突時には第1支軸28の下方移動を許容するので、ペダルの後退防止を図ることができる。
【0069】
さらに、上記回動レバー21には、上記第2支軸33よりも前方に上記揺動ペダル支持部材19,20を押下げる押圧部35が設けられたものである(図5参照)。
この構成によれば、回動レバー21が第2支軸33よりも前方で揺動ペダル支持部材19,20を押下げる構成により、ペダル強制下降手段を有するペダル支持構造をコンパクトに形成することができる。
【実施例2】
【0070】
図11〜図15は自動車の操作ペダル支持構造の他の実施例を示すものである。
この実施例においても、自動車の操作ペダル支持構造は、車室5の前部を構成するダッシュパネル3(前図参照)の後方に配設される。
【0071】
また、この実施例の操作ペダル支持構造は、図11に示すように、ダッシュパネル側に取付けられた固定ペダル支持部材50と、該固定ペダル支持部材50に対して、その前部に設けられたピン27を中心として上下揺動可能に支持されて、後側上方に延びる揺動ペダル支持部材51と、この揺動ペダル支持部材51の後部に車幅方向に延びるように配設されたペダル軸としての第1支軸28を介して揺動操作自在に支持されるペダル本体12と、この第1支軸28よりも前方に位置する第2支軸33を介して固定ペダル支持部材50に支持された回動レバー52と、を備えている。
【0072】
この回動レバー52は、車体側部材16(前図参照)の前方において該部材16とは非連結で配設され、車幅方向に延びる第2軸33を介して固定ペダル支持部材50に対して前後方向に揺動可能に支持されており、かつ固定ペダル支持部材50が車体側部材16に対して後退した時、該車体側部材16に当接することで、第2支軸33を支点として回動して揺動ペダル支持部材51を下方に押圧するレバーである。
【0073】
また、上述の第2支軸33は、第1支軸28に対して若干上方で、かつ前後方向において前方に配設されており、上述の回動レバー52には、該回動レバー52の非回動時に揺動ペダル支持部材51を支持する一方、回動レバー52の回動により揺動ペダル支持部材51の支持を解除する支持部53が一体形成されている。
さらに、上述の回動レバー52には、第2支軸33よりも前方に揺動ペダル支持部材51を押下げる押圧部54が一体形成されている。ここで、上述の支持部53は揺動ペダル支持部材51の強制降下時に、弾性変形または塑性変形するように構成されている。
【0074】
揺動ペダル支持部材51は、図11に示すように、細長い楕円形状に形成されていて、この揺動ペダル支持部材51と、回動レバー52とが前後の2つの嵌合点P1,P2で嵌合されている。
つまり、回動レバー52の支持部53前面と、押圧部54下面とが揺動ペダル支持部材51に当接することで、該回動レバー52により揺動ペダル支持部材51を嵌合支持し、通常時(非衝突時)におけるペダル軸としての第1支軸28の位置を保持している。
【0075】
また、上述の固定ペダル支持部材50には、図12に示すように、第1支軸28を支持する第1支軸支持部55と、この第1支軸支持部55に連続する溝部56とが形成されている。
ここで、上記溝部56の形成方向yは、ペダル本体12の操作時に第1支軸28にかかる操作荷重方向(図12の矢印x方向)よりも角度を異にして下方に向けて延びるように設定されている。
【0076】
図11に示すように、回動レバー52の支持部53における支持面(前面)は、該回動レバー52の回動軌跡Qの周方向よりも下方前方に傾斜しており、揺動ペダル支持部材51の下方揺動時に、回動レバー52が係合方向に付勢されるようになっている。
また、上述の押圧部54は、回動レバー52を支持する第2支軸33よりも前方下方に形成されており、この押圧部54で揺動ペダル支持部材51を下方に押圧変位させるように構成している。
【0077】
図11、図13はブレーキペダル11非操作時の側面図(ブレーキペダル11を踏込んでいない時の側面図)であって、図11に示す通常時(非衝突時)の状態から、自動車が前面衝突すると、エンジンルーム4内のパワートレインの後退により、ダッシュパネル3(前図参照)が後退し、これに起因して回動レバー21の後部が車体側部材16(前図参照)に衝合するので、図13に示すように、回動レバー52は第2支軸33を支点として図示の反時計方向へ回動し、支持部53による揺動ペダル支持部材51の支持を解除しつつ、押圧部54で揺動ペダル支持部材51を下方へ押圧変位させる。
【0078】
このため、揺動ペダル支持部材51の遊端部に設けられたペダル軸としての第1支軸28は、固定ペダル支持部材50の溝部56に沿って下方後方へ移動するので、ペダル本体12はプッシュロッド8の軸10を支点として、その上部が後方へ回動し、ペダル本体12下部のパッド13は前方下方へ移動する。これにより、ブレーキペダル11の後退を防止することができる。
【0079】
また、衝突により後退するダッシュパネル3で、回動レバー52の押圧部54が後方へ押圧されるので、該押圧部54は揺動ペダル支持部材51をさらに確実に下方へ揺動させる方向に回動し、ブレーキペダル11の後退防止をより一層確実なものにすることができる。
【0080】
図14、図15はブレーキペダル最大踏込み時の側面図であって、自動車の前面衝突時には図14から図15の状態となり、ブレーキペダル11の後退を防止する。図14の状態から図15の状態に至る作用については、図11から図13の状態に至る作用と略同様であるから、同一の部分には同一符号を付して、その詳しい説明を省略している。
【0081】
このように、図11〜図15で示した実施例の自動車の操作ペダル支持構造においても、車室5前部を構成するダッシュパネル3の後方に配設された自動車の操作ペダル支持構造であって、上記ダッシュパネル3側に取付けられた固定ペダル支持部材50と、上記ダッシュパネル3に対して、その前部を中心に上下揺動可能に支持されて、後側上方に延びる揺動ペダル支持部材51と、該揺動ペダル支持部材51の後部に車幅方向に延びるように配設された第1支軸28を介して揺動操作自在に支持されるペダル本体12と、上記固定ペダル支持部材50の後方に離間して固定されるインパネメンバ15側の車体側部材16(図1参照)と、該車体側部材16の前方に非連結で配設され、かつ上記固定ペダル支持部材50に車幅方向に延びるように配設された第2支軸33を介して前後方向に揺動可能に支持され、上記固定ペダル支持部材50が上記車体側部材16に対して後退した時、該車体側部材16に当接することにより、上記第2支軸33を支点として回動して上記揺動ペダル支持部材51を下方に押圧する回動レバー52とを備え、上記第2支軸33は、上記第1支軸28に対して上方で、かつ前後方向において略同一乃至前方(この実施例では前後方向において前方の位置)に配設され、上記回動レバー52には、該回動レバー52非回動時に上記揺動ペダル支持部材51を支持する一方、上記回動レバー52の回動により上記揺動ペダル支持部材51の支持を解除する支持部53が設けられたものである(図11、図13参照)。
【0082】
この構成によれば、回動レバー52の支持部53で、揺動ペダル支持部材51を介してペダル軸としての第1支軸28を確実に保持することができ、自動車の前面衝突時には、回動レバー52が第2支軸33を中心として回動することで、上記支持部53が退避して、揺動ペダル支持部材51の支持を解除し、かつ回動レバー52にて該揺動ペダル支持部材51を下方へ押下げるので、第1支軸28は後方下方へ下降して、ペダル11の踏面部(パッド13参照)を前下に移動させることができる。
【0083】
上記第2支軸33は、第1支軸28に対して上方で、かつ前後方向において略同一乃至前方(この実施例では、前後方向の前方)に配設されているので、ブレーキペダル11の後退防止機構を、ペダル軸(第1支軸28)から略前方の領域にコンパクトに形成することができ、簡単かつ信頼性の高い自動車の操作ペダル支持構造を提供することができる。
【0084】
また、回動レバー52は、インパネメンバ15側の車体側部材16に対して、その前方に非連結で配設されているので、ブレーキペダル11組付け後にインパネモジュール(図示せず)を車体に組付ける場合の組付け性向上を図ることができる。
さらに、ペダル軸としての第1支軸28を衝突時に下降させると共に、パッド13(ペダル踏面部)を前下に移動させるものであるから、充分な後退防止量を確保することができる。
【0085】
図11〜図15で示すこの実施例においても、その他の構成、作用、効果については、先の実施例とほぼ同様であるから、図11〜図15において、前図と同一の部分には同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0086】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明の操作ペダルは、実施例のブレーキペダル11に対応し、
以下同様に、
下方移動抑制手段は、溝部37および規制部38に対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではなく、全ての車両のペダル支持構造に適用する実施例を含むものである。
【符号の説明】
【0087】
3…ダッシュパネル
5…車室
12…ペダル本体
15…インパネメンバ
16…車体側部材
17,18…固定ペダル支持部材
19,20…揺動ペダル支持部材
21…回動レバー
28…第1支軸
33…第2支軸
34…支持部
35…押圧部
36…第1支軸支持部
37…溝部
38…規制部
50…固定ペダル支持部材
51…揺動ペダル支持部材
52…回動レバー
53…支持部
54…押圧部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室前部を構成するダッシュパネルの後方に配設された自動車の操作ペダル支持構造であって、
上記ダッシュパネル側に取付けられた固定ペダル支持部材と、
上記ダッシュパネルに対して、その前部を中心に上下揺動可能に支持されて、後側上方に延びる揺動ペダル支持部材と、
該揺動ペダル支持部材の後部に車幅方向に延びるように配設された第1支軸を介して揺動操作自在に支持されるペダル本体と、
上記固定ペダル支持部材の後方に離間して固定されるインパネメンバ側の車体側部材と、
該車体側部材の前方に非連結で配設され、かつ上記固定ペダル支持部材に車幅方向に延びるように配設された第2支軸を介して前後方向に揺動可能に支持され、上記固定ペダル支持部材が上記車体側部材に対して後退した時、該車体側部材に当接することにより、上記第2支軸を支点として回動して上記揺動ペダル支持部材を下方に押圧する回動レバーとを備え、
上記第2支軸は、上記第1支軸に対して上方で、かつ前後方向において略同一乃至前方に配設され、
上記回動レバーには、該回動レバー非回動時に上記揺動ペダル支持部材を支持する一方、上記回動レバーの回動により上記揺動ペダル支持部材の支持を解除する支持部が設けられたことを特徴とする
自動車の操作ペダル支持構造。
【請求項2】
上記支持部は、上記回動レバーにおける上記第2支軸と前後方向同一乃至後方であって、上記回動レバー非回動時に下方揺動しようとする上記揺動ペダル支持部材と係合可能な位置にあり、
上記回動レバーの回動により上記揺動ペダル支持部材と非係合となる位置に移動するように設けられた
請求項1記載の自動車の操作ペダル支持構造。
【請求項3】
上記固定ペダル支持部材は、上記第1支軸の下方移動を抑制する下方移動抑制手段を備え、
該下方移動抑制手段は、第1支軸支持部から上記ペダル本体の操作時に上記第1支軸にかかる操作荷重方向よりも下方に向けて延びる溝部と、
該溝部と上記第1支軸支持部の間に形成され、所定の下方荷重以上で上記第1支軸により破損する規制部とが設けられた
請求項1記載の自動車の操作ペダル支持構造。
【請求項4】
上記揺動ペダル支持部材は、上記固定ペダル支持部材に軸支された
請求項1記載の自動車の操作ペダル支持構造。
【請求項5】
車室前部を構成するダッシュパネルの後方に配設された自動車の操作ペダル支持構造であって、
上記ダッシュパネル側に取付けられた固定ペダル支持部材と、
上記ダッシュパネルに対して、その前部を中心に上下揺動可能に支持されて、後側上方に延びる揺動ペダル支持部材と、
該揺動ペダル支持部材の後部に車幅方向に延びるように配設された第1支軸を介して揺動操作自在に支持されるペダル本体と、
上記固定ペダル支持部材の後方に離間して固定されるインパネメンバ側の車体側部材と、
該車体側部材の前方に非連結で配設され、かつ上記固定ペダル支持部材に車幅方向に延びるように配設された第2支軸を介して前後方向に揺動可能に支持され、上記固定ペダル支持部材が上記車体側部材に対して後退した時、該車体側部材に当接することにより、上記第2支軸を支点として回動して上記揺動ペダル支持部材を下方に押圧する回動レバーとを備え、
上記第2支軸は、上記第1支軸に対して上方で、かつ前後方向において略同一乃至前方に配設され、
上記回動レバーには、該回動レバー非回動時に上記揺動ペダル支持部材を支持する一方、上記回動レバーの回動により上記揺動ペダル支持部材の支持を解除する支持部が設けられ、
上記固定ペダル支持部材は、所定荷重未満の入力荷重に対しては上記第1支軸の下方移動を規制し、
所定荷重以上の時には上記第1支軸の下方移動を許容するように構成されたことを特徴とする
自動車の操作ペダル支持構造。
【請求項6】
上記回動レバーには、上記第2支軸よりも前方に上記揺動ペダル支持部材を押下げる押圧部が設けられた
請求項1〜5の何れか1に記載の自動車の操作ペダル支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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