説明

自動車の照明装置および/または信号装置の構成要素の変位装置、およびこのような変位装置を作動させる方法

【課題】 自動車の照明装置および/または信号装置の構成要素の熱変形によって引き起こされる、光ビームの幾何形状特性の変化を補正する変位装置、およびこの変位装置の制御方法を提供する。
【解決手段】 この変位装置は、電気的に制御されて、照明装置および/または信号装置から放射される光ビームの幾何形状に影響を与える熱的効果を補償するように伸長する補償手段(133)を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の照明装置および/または信号装置の構成要素の変位装置、特に、照明装置および/または信号装置によって発生する光ビームのカットオフの位置を補正することができる変位装置に関する。本発明は、さらに、このような変位装置に用いられる補償手段に給電する方法に関する。本発明は、さらに、このような変位装置を備えている照明装置および/または信号装置に関する。最後に、本発明は、このような照明装置および/または信号装置を備えている自動車にも関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の照明装置および/または信号装置には、熱問題が存在する。特に、照明装置においては、放射される光ビームは、安定でなければならないという課題がある。それにも関わらず、このような照明装置の温度は、作動中に大幅に変動する。特に、照明装置が始動したばかりで、周囲温度と同じ温度にあるときと、安定した動作温度に達しているときとの間には、大きな温度差がある。実際、照明装置の種々の構成要素が、これらの2つの温度間で、相当に膨張することがある。このような膨張は、照明装置の各構成要素を変形させ、照明装置から放射される光ビームの幾何形状的な特性を変えることがある。さらに、照明装置から放射される光ビームのカットオフが変更されることがある。
【0003】
さらに、これらの照明装置に関する法令上の規制、特にカットオフの位置に関する規制は非常に厳しい。実際、このような照明装置の法定試験において、カットオフの位置は、法規によって定められた2つの測定時刻間において、0.2%を超過して変動してはならない。
【0004】
したがって、通例、照明装置の構成要素の変形を回避し、それによって、放射される光ビームの形状特性の変動を回避することを可能にするような特質または物質を備えた、いくつかの補強部品が、照明装置内に設けられる。しかしながら、このような処理方法においては、次のような費用が必要になる。
− 設計費用および開発費用、および
− 設計された、特殊な特性を有する部品の製造に要する費用、およびそれらの部品の複雑な組み立てに要する費用。
【0005】
特許文献1は、自動車用の多機能ヘッドライトを開示している。この多機能ヘッドライトは、シャフトに取り付けられており、かつあらかじめ定められた複数の位置をとることができる回転シールドを備えている。したがって、この回転シールドの角度位置に応じて、放射される光ビームは種々の形状特性を有し、多機能ヘッドライトは種々の照明機能を発揮する。回転シールドは、モータ、特に圧電モータによって回転させられる。
【0006】
特許文献2および特許文献3は、相異なる2つの光ビームを放射することができる、自動車用のヘッドライトを開示している。このヘッドライトは、リフレクタに相対的に光源を変位させ、それによって、相異なる2つの光ビームを発生させる手段を備えている。特許文献3においては、光源を変位させる手段は、圧電式の手段である。
【0007】
特許文献4は、障害物検出システムを備える、自動車の照明装置を開示している。この障害物検出システムは、圧電モータによって変位させられるミラーによって方向が変えられる赤外線および可視光線を用いている。
【0008】
特許文献5は、自動車用のヘッドライト装置を開示している。このヘッドライト装置は、アクチュエータ、特に圧電型のアクチュエータによって変位させることができるシールドを備えている。このシールドは、自動車の位置移動中に光ビームの形状特性が変化しないように、光ビームの形状特性を補正することができる。
【0009】
上述の装置は、全て、放射される光ビームの形状特性について、十分な補正を行うことを可能にしている。他方において、これらの装置では、上述の膨張の影響を取り除くことはできず、したがって、放射される光ビームの形状特性の変形を十分に小さくすることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】ヨーロッパ特許公開第1197387号公報
【特許文献2】フランス国特許公開第2790062号公報
【特許文献3】米国特許公開第2003/31026号公報
【特許文献4】米国特許公開第2009/15388号公報
【特許文献5】ヨーロッパ特許公開第2066530号公報
【特許文献6】ヨーロッパ特許公開第0373065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上に引用した特許文献と対照的に、本発明は、上述の問題を解決して、従来技術によって公知の変位装置を改良することができる、自動車の照明装置および/または信号装置の構成要素の変位装置を提供することを目的としている。特に、本発明は、照明装置および/または信号装置の構成要素の熱によって引き起こされる、光ビームの変形を補正することができる変位装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の変位装置は、自動車の照明装置および/または信号装置を変位させることができる。この変位装置は、照明装置および/または信号装置から放射される光ビームの幾何形状に影響を与える熱的効果を補償するようになっている補償手段を備えている。この補償手段は、電気的に制御されることが好ましい。
【0013】
補償手段の伸長変位を、照明装置および/または信号装置の構成要素の一箇所に、直接印加することができる。したがって、変位装置は、非常に単純な機械的構造を有している。
【0014】
補償手段は、上述の構成要素に機械的に連結されており、かつ補償手段の伸長力が、この構成要素の関節運動のための軸のまわりにトルクを発生させるように、この軸から空間的に距離を置いて配置されている場合がある。
【0015】
補償手段の伸長変位は、変位増幅装置を介して、上述の構成要素に印加される場合がある。この場合には、小型であり、かつ/またはあまり大きな膨張係数を有していない補償手段を用いることができる。
【0016】
補償手段は、固定点のまわりに関節運動し、かつ第1の方向に沿って変位させられる連結棒上で関節運動する場合がある。この連結棒は、上述の構成要素に機械的に連結されている。補償手段の伸長方向と第1の方向とは、70°を超過する角度をなしていることが好ましい。この実施形態は、有利な機械的構造を有している。
【0017】
補償手段および上述の構成要素は、固定シャフトのまわりに関節運動するレバー上で関節運動する場合がある。この実施形態も、有利な機械的構造を有している。
【0018】
補償手段は、電気的に制御される場合がある。この場合には、補償手段の状態を、精密に制御することができる。
【0019】
好適な一実施形態によれば、補償手段は圧電シムである。このタイプのシムは、広がって、相当な力を発揮するという長所を有する。
【0020】
本発明によれば、前述の変位装置を電気的に制御することができる方法も提供される。この方法は、照明装置および/または信号装置のスイッチが投入されるとき、または投入されているときに、補償手段が給電されることを特徴としている。
【0021】
照明装置および/または信号装置のスイッチを切るときに、補償手段への給電を停止することが可能である。実際、光源のスイッチが切られているときに、補償手段に給電する必要はない。
【0022】
照明装置および/または信号装置のスイッチ投入を起点とする、ある調整時間の終了後に、補償手段への給電を開始することが可能である。この実施形態は、特に容易に実行しうる。
【0023】
最初に、次第に上昇する電圧信号を、次いで、少なくとも実質的に所定の値に安定化された電圧信号を、補償手段に供給することが可能である。この比較的単純な実施形態によって、照明装置および/または信号装置の全作動期間にわたって、カットオフの変化を最小にすることができる。
【0024】
照明装置および/または信号装置の温度に応じて、補償手段に給電することも可能である。このより高度な実施形態によって、照明装置および/または信号装置の全作動期間にわたって、カットオフの位置の変化を最小にし、さらにはなくすることさえできる。
【0025】
変位装置は、上述の制御方法を実行するためのハードウェア手段、および/またはソフトウェア手段を備えていることが好ましい。
【0026】
また本発明によれば、上述の変位装置を備えていることを特徴とする、自動車の照明装置および/または信号装置が提供される。
【0027】
さらに本発明によれば、上述の変位装置を備えていることを特徴とする自動車が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明による照明装置および/または信号装置の第1の実施形態のプロセスを説明するための断面図である。
【図2】本発明による照明装置および/または信号装置の第2の実施形態のプロセスを説明するための断面図である。
【図3】本発明による照明装置および/または信号装置の第3の実施形態のプロセスを説明するための断面図である。
【図4】本発明による変位装置に用いられる補償手段への第1の供給電圧信号の時間変化を示す図である。
【図5】本発明による変位装置に用いられる補償手段への第2の供給電圧信号の時間変化を示す図である。
【図6】本発明による変位装置に用いられる補償手段への第3の供給電圧信号の時間変化を示す図である。
【図7】変位増幅手段の幾何形状特性をパラメータとした、照明装置および/または信号装置の構成要素の、補償手段による変位を示すグラフである。
【図8】規格化された試験において、ロービームライトの前方25mに位置するスクリーン上に得られる、ロービームライトによって発生する光ビームの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
添付図面は、本発明による、自動車の照明装置および/または信号装置の各実施形態を例示している。
【0030】
図1に概要断面図で示されている、自動車用の第1の実施形態の照明装置および/または信号装置100は、主として、光モジュール9、および、照明装置および/または信号装置の構成要素、より具体的には、光モジュールの構成要素である変位装置130を備えている。自動車用の照明装置および/または信号装置100は、密閉ガラス3によって閉じられており、光モジュールおよび変位装置を内包する壁を形成しているハウジング10を有している。さらに照明装置および/または信号装置100は、位置補正装置110を備えている。
【0031】
光モジュール9は、具体的には白熱電球、ハロゲンランプ、または1つ以上のLEDなどから成る光源4を有している。光モジュール9は、さらに、複雑面、例えば少なくとも実質的に楕円面によって形成されているリフレクタ2を有している。リフレクタ2が、楕円面を有している場合、その楕円面の第1の焦点の領域には、光源、および楕円面の第2の焦点の領域に焦点を有する集光レンズまたは集光レンズ系が設けられている。
【0032】
特許文献6は、複雑面の例を開示している。具体的には、複雑面は、その面の一部を遮蔽するための遮蔽装置を用いることなく、また波型ガラスを用いることなく、例えばロービームタイプの光ビームを形成することができる面である。より具体的には、一連の基本区画によって、1つの複雑面を形成することができる。各区画は、全体的に垂直方向に、直接に隣接している区画につながっている。各区画は、1本の水平母線と、その水平母線から上方および下方に延びる1組の縦断曲線を有することが有利である。水平母線は、例えば凸状であり、その詳細な形状は、その区画によって発生する光ビームの水平分布を決定する。各区画の水平母線は、光源から出射した光線が、カットオフ、例えばロービームライトのカットオフを形成するように下向きに、リフレクタ面から反射されるように選択される。縦断曲線は、例えば放物線の弧である。概括的に言えば、上方に延びる各放物線の焦点は、下方に延びる各放物線の焦点と一致しない。いくつかの場合には、弧群は放物線ではなく、一組の焦点(各焦点は各高さに対応している)によって定めることができる、同一平面内の曲線群であることもある。
【0033】
光モジュール9の位置補正装置110は、情報112、特に自動車の位置に関する情報を受ける制御手段111によって制御されるアクチュエータ113を備えている。アクチュエータ113は、例えばスライダ114を変位させることができる。スライダ114は、玉継ぎ手連結部115を介してスライダ114と連結しており、かつスライド連結部117を介して、光モジュールに統合されているアーム118と連結している連結棒116を変位させる。光モジュールは、さらに、ハウジング10の内部を通っている軸140のまわりに、玉継ぎ手連結部120を介して関節運動する別のアーム119を統合している。したがって、スライダ114の変位によって、軸140のまわりの光モジュール9の回転が生じる。したがって、アクチュエータ113を作動させることによって、照明装置および/または信号装置から放射される光ビームに対する、自動車の位置の変化に伴う影響を補正することができる。位置補正装置によって得られる変位に、比較的大きな振幅を与えることができる。しかしながら、この場合には、照明装置および/または信号装置における熱的変形の問題であるから、そのような大きな振幅によって得られる精度では、放射される光ビームの幾何形状的問題を克服するためには不十分である。実際、照明装置および/または信号装置の規格化された検定試験では、カットオフは、上述の2つの測定時刻間において、0.2%を超過して変位してはならない。ロービームライトの規格化された試験において、ロービームライトの前方25mの位置に配置されているスクリーン上に、一方は水平であり、他方は傾斜している2本の上側直線分によって構成されたカットオフを有する、図8に示されている光分布形状が得られる。上述の0.2%は、2つの測定時刻間の光ビームのふれ角の正接であり、約0.115°のふれ角に相当する。照明装置および/または信号装置の設計において、特別の対策が講じられない場合には、これらの2つの測定時刻間で、通常、0.6%程度のカットオフの変位が発生する。この0.6%は、約0.344°のふれ角に相当する。したがって、0.4%の変位、さらには0.5%の変位を補償する必要がある。これらの変位は、連結棒116と軸140との間に、長さ75mmのレバーアームが存在する場合には、連結棒116の、それぞれ0.3mm、0.375mmの変位によって得られる。公知の位置補正装置では、このような変位補正精度は得られない。さらに、照明装置および/または信号装置の機能転換装置を用いても、この問題を解決することはできない。
【0034】
この第1の実施形態においては、変位装置130は、光モジュールから放射される光ビームの幾何形状に影響を与える熱的効果を補償するように伸長する補償手段133を備えている。実際、上述のように、ハウジング10が膨張すると、光ビームの形状特性は、ハウジングの内部の温度に応じて変化する。変位装置130は、光ビームの形状特性のこのような変化を打ち消すことができ、特に、カットオフが変化すること、具体的には、あらかじめ定められた基準位置に相対的に、カットオフの位置が変化することを防止することができる。基準位置とは、例えばロービームライトのカットオフの水平部分が、地平線から下向きに0.57°の方向に観察される位置である。
【0035】
第1の実施形態においては、補償手段133は、連結棒116の長さを変えることができるように構成されている。連結棒116の長さが変化すると、光モジュール9は、軸140のまわりに向きを変える。この向き変更は、光ビームの形状特性の上述の変化を打ち消す効果を有する。変位装置130は、任意選択的に、入力レベル132の情報を受けて、補償手段133を電気的に制御する制御手段131を備えていることが好ましい。
【0036】
例えばスライダ114の変位と補償手段133の伸長とが、同じ方向に生じるように、スライダ114の延長上に、補償手段133を配置することができる。
【0037】
図2に概略断面図で示されている、自動車用の第2の実施形態の照明装置、および/または信号装置200は、第2の実施形態の変位装置230を備えている。第1の実施形態における符号と同一の符号を付してある部分は、第1の実施形態に関して上述した部分と同等の部分である。
【0038】
この第2の実施形態においては、第1の実施形態における連結棒116が、固定長を有する連結棒216に置き換えられている。この第2の実施形態においては、変位装置230は、第1の実施形態と同様に、光モジュールから放射される光ビームの幾何形状に影響を与える熱的効果を補償するように伸長する補償手段233を備えている。
【0039】
補償手段233は、固定点のまわりに、玉継ぎ手連結部234を介して関節運動し、かつスライド連結部236内をスライドする第2の連結棒237上で、玉継ぎ手連結部235を介して関節運動する連結棒240の長さを変化させることができる。第2の連結棒237は、玉継ぎ手連結部220を介して、光モジュールに統合されているアーム219と機械的に連結しており、定められた第1の方向に沿って変位する。したがって、連結棒240の長さlが増加すると、連結棒240は傾斜して、第2の連結棒237を変位させる。この第2の連結棒237の変位によって、光モジュール9は、玉継ぎ手連結部115を介して、ハウジング10の内部を通っている軸のまわりに、回転運動する。
【0040】
第1の方向に沿って測定した、玉継ぎ手連結部234と235との間の距離をxとし、第1の方向に直角に測定した、玉継ぎ手連結部115と220との間の距離が75mmであり、補償手段233の圧電シム(後に詳しく説明される)は、dl=10μmだけ伸長すると仮定すると、連結棒240の種々の長さをパラメータとして、図7のグラフのY軸上に、カットオフの変位dx(%としての)を読み取ることができる。
【0041】
変位装置230は、任意選択的に、入力レベル232の情報を受けて、補償手段233を電気的に制御する制御手段231を備えていることが好ましい。
【0042】
補償手段233とアクチュエータ113とを、例えば光モジュール9の2つの側に相対向するように配置することができる。すなわち、図2に示すように、アクチュエータ113は、リフレクタ2の上部に連結され、したがって、光モジュール9の上部に作用し、また補償手段233は、リフレクタ2の下部に連結され、したがって、光モジュール9の下部に補償変位を与える。
【0043】
図3に概略断面図で示されている、自動車用の第3の実施形態の照明装置および/または信号装置300は、第3の実施形態の変位装置330を備えている。第2の実施形態における符号と同一の符号を付してある部分は、第2の実施形態に関して上述した部分と同等の部分である。
【0044】
この第3の実施形態においては、第1および第2の実施形態と同様に、変位装置330は、光モジュールから放射される光ビームの幾何形状に影響を与える熱的効果を補償するように伸長する補償手段333を備えている。
【0045】
この第3の実施形態においては、補償手段333は、レバー335を回転変位させることができる。したがって、レバー335は、固定シャフト336のまわりに関節運動する。補償手段333は、レバー335上で関節運動し、また光モジュール9に統合されているアーム319も、レバー335上で関節運動する。次の距離によって、2つのレバーアームが定義される。
・レバー335上の補償手段333の関節点(玉継ぎ手連結部334)と、固定シャフト336のまわりを関節運動するレバー335の関節点(玉継ぎ手連結部340に直接つながっている部分)との間の距離、および
・レバー335上のアーム319の関節点(玉継ぎ手連結部320)と、固定シャフト336のまわりを関節運動するレバー335の関節点との間の距離。
【0046】
2つのレバーアーム距離間の比に応じて、補償手段333の伸長によって生じる変位を増幅させることができる。したがって、補償手段333とレバー335との間の関節点に与えられた変位を、アーム319の先端における、はるかに大きな変位に変換することができる。
【0047】
変位装置330は、任意選択に、入力レベル332の情報を受けて、補償手段333を電気的に制御する制御手段331を備えていることが好ましい。
【0048】
変位装置の前述の3つの実施形態において、補償手段は、1つ以上の圧電シムを有していてもよく、または1つ以上の圧電シムから成っていてもよい。
【0049】
補償手段は、また、1つ以上の圧電シム、およびそれらの圧電シムの伸長を増幅するための手段、特に機械的手段を有するアセンブリから成っていてもよい。第2および第3の実施形態においては、変位の増幅のための手段は、補償手段の外部に設けられている。
【0050】
補償手段が圧電シムを有している場合には、制御手段131、231、331は、補償手段に供給するための電圧を発生させるように設計された電圧発生器を制御するコンピュータを備えていることが好ましい。電圧発生器は、高電圧タイプの電圧発生器である。
【0051】
本明細書全体にわたって、用語「圧電シム」は、その寸法が、供給される電圧に依存する(特に一意的に、または実質的に一意的に依存する)任意の圧電装置を意味している。この定義によれば、2つの部分の相対位置が、供給電圧信号の供給周期に依存する圧電モータは除外される。圧電モータにおいては、2つの部分の相対位置は、さらに、駆動される機械系の摩擦係数に依存する場合が多く、したがって、到達した位置を確認するための追跡センサを追加する必要があることに注意されたい。
【0052】
本発明は、さらに、本発明による照明装置および/または信号装置を備えている自動車にも関する。
【0053】
本発明は、さらに、電気的に制御される補償手段を有している、本発明による変位装置を制御する、または作動させる方法にも関する。
【0054】
この方法においては、照明装置および/または信号装置のスイッチの投入中、すなわち作動中、すなわち、光源からの光の放射中、または開始時に、補償手段は給電される。照明装置および/または信号装置が、スイッチを切られているとき、すなわち作動していないとき、すなわち、光源が光を放射していないときに、補償手段への給電は止められていることが好ましい。
【0055】
この方法の第1の実施形態においては、図4に示すように、補償手段は、照明装置および/または信号装置のスイッチ投入を起点とする、ある調整時間の後に、給電が開始される。この調整時間の期間は、例えば20〜60分間の範囲にあり、好ましくは約40分間である。この調整時間後、補償手段に、第1の電圧値を有する電圧信号が供給される。その後、少なくとも光源のスイッチが切られるまで、この第1の電圧値は一定に、または実質的に一定に保たれる。
【0056】
第2の実施形態においては、図5に示すように、補償手段は、照明装置および/または信号装置のスイッチ投入と同時に、傾斜部において増加していく電圧信号が供給される。その後、この傾斜部が第1の電圧値に達すると、補償手段は、第1の電圧値を有する電圧信号を供給され続ける。第1の電圧値は、少なくとも光源のスイッチが切られるまで、一定に、または実質的に一定に保たれる。傾斜部は時間、または他の任意の因子、好ましくはほとんど変化しない他の因子に線形に依存していてもよい。10分間を超過して、60分間未満の時間で、好ましくは約40分間で第1の電圧値に達することができるように、傾斜部の平均勾配が選択される。
【0057】
第3の実施形態においては、図6に示すように、補償手段は、照明装置および/または信号装置の温度に応じて給電される。この温度は、照明装置および/または信号装置内の周囲空気の温度であってもよいし、また照明装置および/または信号装置の構成要素の温度であってもよい。この温度情報は、例えば前述の制御手段131、231、331に、入力レベル132、232、332で伝達される。
【0058】
各実施形態において、いつ、光源が給電されたかを知る必要がある。この給電情報は、例えば前述の制御手段131、231、331に、入力レベル132、232、332で伝達される。
【0059】
この方法の第1および第2の実施形態において言及されている第1の電圧値は、あらかじめ定められる。これは、実証的に行うことができる。実際、照明装置および/または信号装置の設計および製造後に、照明装置および/または信号装置のスイッチ投入開始時と、熱的定常状態における作動時との間で生み出される、カットオフの変化を測定し、次いで、この熱的定常状態において、カットオフを、照明装置および/または信号装置のスイッチ投入開始時の初期位置に戻す、この第1の電圧値に達するまで、補償手段に印加される供給電圧を変化させる作動試験を行なうことができる。製造された同タイプの各照明装置および/または信号装置の制御手段のコンピュータのメモリに、この第1の電圧値を記憶させることができる。
【0060】
同様に、この方法の第3の実施形態においては、温度と補償手段への供給電圧との間の関係が、あらかじめ定められる。これは、前述の手法と同様の手法によって、すなわち、動作温度が測定され、次いで、カットオフの位置を補正することを可能にする供給電圧が見出されるまで、補償手段への供給電圧が調べられる作動試験を行なうことによって、実証的に行うことができる。
【0061】
さらに、特にエンジンのアイドリング時に、カットオフに対する、自動車の振動の影響を補償するために、補償手段に、可変電圧信号を供給することができる。したがって、自動車の振動の影響下においてさえ、補償手段には、カットオフが変位しないような可変電圧信号が供給される。この場合には、補償手段には、自動車の振動周波数と同じ周波数を有する交流電圧信号が供給される。
【0062】
前述の変位装置の各実施形態において、変位装置は、ハウジング10の内部における光モジュール9の変位を可能にする。しかしながら、同じ目的を達成するために、変位装置は、照明装置および/または信号装置の任意の構成要素、特に光モジュールの任意の構成要素を変位させることもできる。特に、変位装置は、光源のみの変位、シールドの変位、リフレクタの変位、レンズまたはレンズ系の変位を起こすことができる。さらに、変位させられる構成要素には、照明装置および/または信号装置、または光モジュールの複数の部品、例えば光源とリフレクタ、光源とシールド、光源とレンズ、リフレクタとシールド、リフレクタとレンズ、またはシールドとレンズなどが含まれていてもよい。
【0063】
本発明による変位装置の各実施形態において、カットオフの補正の大きさは、3°未満であることが好ましい。すなわち、補償手段の伸長のない状態と最大伸張状態との間で、カットオフは、最大で3°だけ変化することが好ましい。より好ましくは、カットオフの補正の大きさは、1°未満であることが好ましい。実際、カットオフのわずかの変化を厳密に調整することができることが、本発明の1つの利点である。
【符号の説明】
【0064】
2 リフレクタ
3 密閉ガラス
4 光源
9 光モジュール
10 ハウジング
100、200、300 照明装置および/または信号装置
110 位置補正装置
111、131、231、331 制御手段、
112 情報
113 アクチュエータ
114 スライダ
115、120、220、234、235、320、334、340 玉継ぎ手連結部
116、216、237、240 連結棒
117、236 スライド連結部
118、119、219、319 アーム
130、230、330 変位装置
132、232、332 入力レベル
133、233、333 補償手段
140 軸
335 レバー
336 固定シャフト
dx カットオフの変位
l 長さ
x 距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の照明装置および/または信号装置(100、200、300)の構成要素(2、3、4)を変位させる装置(130、230、330)であって、電気的に制御されて、前記照明装置および/または信号装置から放射される光ビームの幾何形状に影響を与える熱的効果を補償するように伸長する補償手段(133、233、333)を備えていることを特徴とする装置(130、230、330)。
【請求項2】
前記補償手段(133)の伸長変位を、前記構成要素の一箇所に直接印加することができることを特徴とする、請求項1に記載の装置(130)。
【請求項3】
前記補償手段(133)は、前記構成要素に機械的に連結されており、かつ前記補償手段の伸長力が、前記構成要素の関節運動のための軸(140)のまわりにトルクを発生させるように、該軸(140)から空間的に距離を置いて配置されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の装置(130)。
【請求項4】
前記補償手段(233、333)の伸長変位が、変位増幅装置(236、237、335)を介して、前記構成要素に印加されることを特徴とする、請求項1に記載の装置(230、330)。
【請求項5】
前記補償手段(233)は、固定点のまわりに関節運動し、かつ第1の方向に沿って変位させられる、前記構成要素に機械的に連結されている連結棒(237)上で関節運動し、前記補償手段の伸長方向と前記第1の方向とは、好ましくは70°を超過する角度をなしていることを特徴とする、請求項4に記載の装置(230)。
【請求項6】
前記補償手段(333)および前記構成要素は、固定シャフト(336)のまわりに関節運動するレバー(335)上で関節運動することを特徴とする、請求項4に記載の装置(330)。
【請求項7】
前記照明装置および/または信号装置の構成要素は、光モジュール(9)、または光源(4)を含む光学要素、および/または光線を偏向させる要素(2)であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の装置(130、230、330)。
【請求項8】
前記補償手段(133、233、333)は圧電シムであることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の装置(130、230、330)。
【請求項9】
照明装置および/または信号装置のスイッチが投入されるとき、または投入されているときに、補償手段に給電されることを特徴とする、請求項8に記載の装置の制御方法。
【請求項10】
前記照明装置および/または信号装置のスイッチが切られるときに、前記補償手段への給電が停止されることを特徴とする、請求項9に記載の制御方法。
【請求項11】
前記照明装置および/または信号装置のスイッチ投入を起点とする、ある調整時間の終了後に、前記補償手段への給電が開始されることを特徴とする、請求項9または10に記載の制御方法。
【請求項12】
前記補償手段は、最初に、次第に上昇する電圧信号を供給され、次いで、少なくとも実質的に所定の値に安定化された電圧信号を供給されることを特徴とする、請求項9または10に記載の制御方法。
【請求項13】
前記補償手段は、前記照明装置および/または信号装置の温度に応じて給電されることを特徴とする、請求項9または10に記載の制御方法。
【請求項14】
請求項9〜13のいずれか1つに記載の制御方法を実行するためのハードウェア手段および/またはソフトウェア手段(131、231、331)を備えていることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項15】
請求項1〜8、14のいずれか1項に記載の装置(130、230、330)を、構成要素の変位のために備えていることを特徴とする、自動車用の照明装置および/または信号装置(100、200、300)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−157064(P2011−157064A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−20276(P2011−20276)
【出願日】平成23年2月2日(2011.2.2)
【出願人】(391011607)ヴァレオ ビジョン (133)
【氏名又は名称原語表記】VALEO VISION
【Fターム(参考)】