説明

自動車シート用背当て

【課題】 長時間の車の運転であっても、特にドライバーの首部の疲労を抑え得る自動車シート用背当ての提供。
【解決手段】 自動車シートと自動車シートに座った着席者に挟まれてその首部に後部から当接して緩衝性を有する首枕体と、該首枕体の下方に位置して自動車シートと着席者の背との間に挟まれて緩衝性を有する背枕体とが上下方向で一体となるように設けられ、首枕体は背枕体に比べて仮想基準面に対してその先端部が前方に突出している自動車シート用背当て。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車シート用背当てに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から自動車シート用背当ては、種々提案されており、例えば下記特許文献1に示すようなものがある。この自動車シート用背当ては、自動車シートの背もたれ部分に装着されるもので、縦長のベースシートと、ベースシートの表面側に施した起毛生地と、立体形状を有して底面側に起毛生地の任意の位置に着脱自在に固着できる起毛テープが施された補助クッションとからなっている。
【0003】
補助クッションは、自動車シートの背もたれ部分に装着されるベースシートに起毛テープによって取付けられるもので、ドライバーや同乗者の背に当ってこれを緩衝するものである。
【特許文献1】特開2000−116461号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の背当ては、ドライバーや同乗者の背は緩衝するものの、一方で背に当ることによりドライバーの首部が自動車シートから前方に大きく離れてしまい易くなる。そして特にドライバーにおいて疲労しやすい部分として首部があげられるが、上記従来の背当てでは首部の補助ができず、特に長時間の運転におけるドライバーの首部の疲労防止ができにくかった。
【0005】
そこで本発明は、長時間の車の運転であっても、特にドライバーの首部の疲労を抑え得る自動車シート用背当ての提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、自動車シートの背もたれ部分に装着される自動車シート用背当てであって、自動車シートと自動車シートに座った着席者に挟まれてその首部に後部から当接して緩衝性を有する首枕体と、該首枕体の下方に位置して自動車シートと着席者の背との間に挟まれて緩衝性を有する背枕体とが上下方向で一体となるように設けられ、首枕体は背枕体に比べて仮想基準面に対してその先端部が前方に突出していることを特徴としている。
【0007】
上記構成において、自動車シート用背当てを自動車シートの背もたれ部分に装着して着席者が自動車シートに着席し、無理なく自動車シート側にもたれると、首枕部が着席者の首部に背面側から当接するから首部の揺れを抑え、しかもその状態で着席者が無理な姿勢をとることなく着席者の姿勢を保持することが可能であるから、着席者が車両のドライバーである場合であっても、長時間の運転操作にも疲れにくくなる。
【0008】
首枕体および背枕体は、それぞれ外皮と、外皮内に装着された発泡ウレタン等の緩衝材とから構成されており、この構成によって所定の形状を保持するようになっているとともに、着席者の首部あるいは背部から力が働いたとしても、その力が取除かれたら、弾性的に形状回復するようになっている。
【0009】
首枕体および背枕体は、それぞれ外皮の背面に左右方向の切り込みが形成されされており、この切り込みから緩衝材が外皮内に対して着脱できるようになっている。切り込みは面ファスナを介して前後方向に重なるようになっており、面ファスナどうしを着脱することで緩衝材を外皮内に対して着脱する構成となっている。
【0010】
本発明の自動車シート用背当てでは、首枕体と背枕体とは生地を介して一体に設けられていることを特徴としている。この構成によれば、首枕体と背枕体とを一体に扱うことができ、しかも両者はつなぎ用の生地を介して連結されているから、両者は当該生地によって相対的に回動自在となって、背当てを自動車シートに装着した状態で、着席者の体型に応じて前後に移動するようにして対応するようになる。
【0011】
首枕体とその直下に配置された背枕体とは両者を一体に連結した生地の中心に対する上部を下方へ開き、生地の中心に対する下部を上方へ開くようにして切り込みを開放することで外皮内に緩衝材を挿入し、また緩衝材を取外す。
【0012】
本発明の自動車シート用背当てでは、背枕体は上下方向に複数配置されていることを特徴としている。この構成によれば、着席者の首部から背部の多くの領域に亙って当ることになって人体を支持して、長時間の着席状態や運転操作であっても疲れが抑えられる。
【0013】
本発明の自動車シート用背当てでは、首枕体および背枕体は、側面視して半円状に形成されてしかも横長形状とされていることを特徴としている。上記構成によれば、首枕体の突出部分が首部の後側にフィットし易くなり、しかも横長であることから、首部を横方向で支持するようになる。
首枕体および背枕体は外皮が半円柱状に形成されており、これらを横長になるようにして上下方向に用いるようにして用いる。
【0014】
本発明の自動車シート用背当てでは、背枕体は、位置調節手段を介して上下方向に位置調節可能に設けられていることを特徴としている。この構成によれば、位置調節手段を用いて着席者の体型や使い易さにあわせて背枕体の上下位置を調整できるようになるから便利に使用できる。
【0015】
本発明の自動車シート用背当てでは、位置調節手段は面ファスナであることを特徴としている。この構成によれば、背枕体の着脱が容易になる。
首枕体の直下の背枕体の裏面から、位置調節手段の一部を構成する着脱用生地が垂下されるように取付けられており、この着脱用生地に対して一個または複数個の背枕体が着脱自在に取付けられるようになる。
さらに位置調節手段は、前記着脱用生地、該着脱用生地の裏面左右外縁部に固着された取付け用面ファスナ、および背枕体の裏面側部に取付けられた被取付け用面ファスナを備える。
着脱用生地は、複数の背枕体を上下に並べた場合にこれら並べた背枕体の上下方向高さに対応する高さに設定されており、取付け用面ファスナは、複数の背枕体における被取付け用面ファスナが取付けられる領域を有するものである。
したがって、被取付け用面ファスナは、着脱用生地の上下方向に亙るものであってもよいし、上下方向に亙ることなく上下方向で離間するように背枕体の数に対応する数だけ設けることもできる。
【0016】
本発明の自動車シート用背当てでは、首枕体の裏側に、該首枕体を自動車シートの背もたれ部分に装着するための伸縮性を有する装着体が設けられていることを特徴としている。この構成によれば、装着体を用いて背もたれ部分に確実に装着することができる。
装着体はゴムであり、その伸縮性を利用して、例えば自動車シートのヘッドレスト部分に掛けるようにすれば、背当てを首枕体が上位となり背枕体を下位となるようにして、容易に装着することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の自動車シート用背当てによれば、これを自動車シートの背もたれ部分に装着して着席者が自動車シートに着席し自動車シート側にもたれると、首枕部が着席者の首部に背面側から当接して首部を支持するようになるから、首部の揺れを抑えることができ、自動車シートへの着席者が車両のドライバーである場合に、長時間の運転操作であっても疲れにくくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態に係る自動車シート用背当てを、図面に基づいて説明する。図1は自動車シート用背当ての首枕体と背枕体と垂れ生地を示す斜視図、図2は首枕体と三つの背枕体を示す正面側からの全体斜視図、図3は図2における左右方向中心での断面図、図4は図2における背面側からの全体斜視図、図5は上位の背枕体を垂れ生地に取付ける際の背面からの斜視図、図6は上位の背枕体を垂れ生地に取付けた状態の背面からの斜視図、図7は上位または下位の背枕体の背面側からの単体斜視図、図8は使用状態を示す側面図である。
【0019】
これらの図に示すように、本発明の実施の形態に係る自動車シート用背当て(以下単に「背当て」という)1は、自動車シート2の背もたれ3に装着するようにして使用されるもので、自動車シート2の背もたれ3と自動車シート2に座った着席者(以下「ドライバー」という)4に挟まれてその首部5に後部から当接して緩衝性を有する首枕体6と、首枕体6の下方に位置して自動車シート2とドライバー4の背部7との間に挟まれて緩衝性を有する背枕体8,9,10とを有する。
【0020】
首枕体6および背枕体8,9,10は、それぞれ横長に形成されており、側面視して半円状の横外皮部11,12と、前方に向けて突出する前外皮部13,14と、平面状の後外皮部15,16とからなる外皮18を有し、全体として半円柱状に形成されており、首枕体6および背枕体8,9,10には、外皮18内に発泡ウレタン等の緩衝材19,20が着脱自在に内装されてなる。なお、首枕体6および背枕体8,9,10は何れも左右方向幅がほぼ同一に形成されている。
この構成によって所定の形状を保持するようになっているとともに、ドライバー4の首部5あるいは背部7から背もたれ3側に向く力が働いたとしても、その力が取除かれたら、弾性的に形状回復するようになっている。
【0021】
首枕体6と背枕体8,9,10は、上下方向で一体となるように設けられており、首枕体6は背枕体8,9,10に比べて仮想基準面、すなわち背もたれ3の背もたれ面23に対してその先端部24,25が前方に突出している。
【0022】
首枕体6と背枕体8とを上下方向で一体にするための一体化手段が設けられており、この一体化手段として、前外皮部13,14と後外皮部15,16が用いられており、前外皮部13,14と後外皮部15,16の境界部分が縫着されていることで両者が一体化されている。すなわち、首枕体6と背枕体8とはその後外皮部15,16の一部がつなぎ用生地26として用いられている。
【0023】
首枕体6および背枕体8は、それぞれ後外皮部15,16のほぼ上下方向中心に、左右方向の切り込み部27,28が形成されされており、この切り込み部27,28から緩衝材19,20が外皮18内に対して着脱できるようになっている。各切り込み部27,28において何れかの一辺に他方の一辺に向かう面ファスナ30a,31aが左右方向に亙って縫着されており、他方の一辺の裏面、すなわち外皮18の内部側に面ファスナ30a,31aに前後で方向で重なって係止する面ファスナ30b,31bが縫着されている。そして、面ファスナ30,31どうしを着脱することで緩衝材19,20を外皮18内に対して着脱する構成となっている。なお、首枕体6と背枕体8とはその後外皮部15,16につなぎ生地26の前側に重ねられる舌片34,35を有する。
【0024】
つなぎ生地26上部を面ファスナ30a,30bの係合力に抗して切り込み部27を開き、あるいはつなぎ生地26の下部を面ファスナ31a,31bの係合力に抗して下方へ開くことで、首枕体6または(および)背枕体8内の緩衝材19,20を交換することができる。
【0025】
首枕体6の後外皮部15に、首枕体6を自動車シート2の背もたれ3に装着するための伸縮性を有する装着体37が縫着されている。装着体37はゴムからなっており、その伸縮性を利用して、例えば自動車シート2のヘッドレスト部分38に掛けるようにすれば、背当て1を首枕体6が上位となり背枕体8を下位となるようにして、容易に装着することができる。
【0026】
背枕体8の後外皮部16の下部に、該背枕体8とは別の複数個(この場合、2個)の背枕体9,10を上下方向に横置き式に並べて配置するための垂れ生地40(着脱用生地に相当する)が縫着されている。この垂れ生地40は、正面視して(背面視しても同様)矩形に形成され、その上下方向高さは、複数の背枕体9,10を上下に並べた際にその高さの合計にほぼ一致するものである。また、垂れ生地40の左右幅は、背枕体9,10の左右幅にほぼ一致するものである。
【0027】
背枕体9,10は、垂れ生地40に、位置調節手段を介して上下方向に位置調節可能および着脱可能に設けられている。背枕体9,10の後外皮部16の左右側辺部に縦長矩形の耳生地41,42が縫着されている。前記位置調節手段は、耳生地41,42と、耳生地41,42それぞれの裏面に縫着された被取付け用面ファスナ32aと、垂れ生地40の裏面左右外縁部に固着された取付け用面ファスナ32bとを備える。
【0028】
なお、垂れ生地40は、複数の背枕体9,10を上下に並べた場合にこれら並べた背枕体9,10の上下方向高さに対応する高さに設定されており、取付け用面ファスナ32bは、複数の背枕体9,10における被取付け用面ファスナ32aが取付けられる領域を有するものであればよい。
したがって、被取付け用面ファスナ32aは、耳生地41,42の上下方向に亙るものであってもよいし、上下方向に亙ることなく上下方向で離間するように背枕体の数に対応する数だけ設けることもできる。
【0029】
垂れ生地40に着脱自在とされる背枕体9,10において、その切り込み部28は、前後に重ねられて切り込み部28の表裏面に縫着された面ファスナ33a,33bによって開閉自在とされている。これによって背枕体9,10内の緩衝材20を交換できるようになっている。
【0030】
上記構成において、背当て1を自動車シート2の背もたれ3に装着してドライバー4が自動車シート2に着席し、無理なく自動車シート2側にもたれると、首枕部6がドライバー4の首部5に背面側から当接するから首部5の揺れを抑えることになる。したがって、車両の運転に伴う振動があったとしても、また長時間の運転であっても、首部5の揺れを抑えることになるから、特に首部5およびその周辺の疲れを抑えることができる。
【0031】
しかも、首枕体6と背枕体8とは一体であり、両者はつなぎ生地26によって相対的に回動自在となって、背当て1を自動車シート2に装着した状態で、ドライバー4の体型に応じて前後に移動するようにして対応するようになり、しかも緩衝体19,20の存在によってドライバー4の動きに応じて緩衝体19,20が圧縮・膨脹を繰返すようになるから、ドライバー4の首部5および背部7の不要な動きを防止することになって、疲労を抑えることができる。
【0032】
ところで、背枕体9,10の使用については、ドライバー4の体型や好みに応じて用いるか否かを適宜判断できる。即ち、背枕体9,10を用いない場合では、上記のように、装着体37によって首枕体6と背枕体8の組み合わせユニットを自動車シート2の背もたれ3に装着して使用すればよい。
背枕体9,10を用いた方がドライバー4が心地よいのであれば、背枕体9,10の耳生地41,42を折曲げることにより、被取付け用面ファスナ32aと取付け用面ファスナ32bとを係合させて、垂れ生地40に背枕体9,10を装着するようにすればよい。
さらに、背枕体9,10のうち一方のみを用いることが心地よい場合は、背枕体9,10のうち一方の耳生地41,42を折曲げることにより、被取付け用面ファスナ32aと取付け用面ファスナ32bとを係合させて、垂れ生地40に装着するようにすればよい。
あるいは、取付け用面ファスナ32bは上下方向に長いから、背枕体9,10のうち一方を使用する場合であっても、垂れ生地40の上下方向の長さに応じた範囲のなかで、その高さ位置を調節することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施形態を示す自動車シート用背当ての首枕体と背枕体と垂れ生地を示す斜視図
【図2】同じく首枕体と三つの背枕体を示す正面側からの全体斜視図
【図3】同じく図2における左右方向中心での断面図
【図4】同じく図2における背面側からの全体斜視図
【図5】同じく上位の背枕体を垂れ生地に取付ける際の背面からの斜視図
【図6】同じく上位の背枕体を垂れ生地に取付けた状態の背面からの斜視図
【図7】同じく上位または下位の背枕体の背面側からの単体斜視図
【図8】同じく使用状態を示す側面図
【符号の説明】
【0034】
1…背当て、2…自動車シート、3…背もたれ、4…ドライバー、5…首部、6…首枕体、7…背部、8,9,10…背枕体、11,12…横外皮部、13,14…前外皮部、15,16…後外皮部、18…外皮、19,20…緩衝材、23…背もたれ面、27,28…切り込み部、19,20…緩衝材、30a,31a…面ファスナ、30b,31b…面ファスナ、26…つなぎ生地、34,35…舌片、37…装着体、38…ヘッドレスト部分、40…垂れ生地、41,42…耳生地、32a…被取付け用面ファスナ、32b…取付け用面ファスナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車シートの背もたれ部分に装着される自動車シート用背当てであって、
自動車シートと自動車シートに座った着席者に挟まれてその首部に後部から当接して緩衝性を有する首枕体と、該首枕体の下方に位置して自動車シートと着席者の背との間に挟まれて緩衝性を有する背枕体とが上下方向で一体となるように設けられ、首枕体は背枕体に比べて仮想基準面に対してその先端部が前方に突出していることを特徴とする自動車シート用背当て。
【請求項2】
首枕体と背枕体とは生地を介して一体に設けられていることを特徴とする請求項1記載の自動車シート用背当て。
【請求項3】
背枕体は上下方向に複数配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の自動車シート用背当て。
【請求項4】
首枕体および背枕体は、側面視して半円状に形成されてしかも横長形状とされていることを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れかに記載の自動車シート用背当て。
【請求項5】
背枕体は、位置調節手段を介して上下方向に位置調節可能に設けられていることを特徴とする請求項3または請求項4記載の自動車シート用背当て。
【請求項6】
位置調節手段は面ファスナであることを特徴とする請求項5記載の自動車シート用背当て。
【請求項7】
首枕体の裏側に、該首枕体を自動車シートの背もたれ部分に装着するための伸縮性を有する装着体が設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項6の何れかに記載の自動車シート用背当て。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−119098(P2008−119098A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−304093(P2006−304093)
【出願日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【出願人】(502337550)株式会社ヴァルド (1)
【Fターム(参考)】