説明

自動車ドア閉鎖阻止具

【課題】自動車車体の塗装工程で、ドアが完全に閉まらないように阻止する。
【解決手段】閉鎖阻止具4の取付け手段5によって、該閉鎖阻止具4を自動車車体1の乗降口2の下縁フランジ3に取付けると、該閉鎖阻止具4のスペーサー手段6によってドアが完全に閉まらなくなる。スペーサー手段6が伸縮可能であると、種々のサイズの自動車に適用可能。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車体を塗装する時にドアが完全に閉鎖状態にならないように阻止する道具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の車体を塗装する場合には、まず電気泳動装置によって水性塗料で下塗りを行ない、次いで溶液型塗料をスプレーして上塗りを行う。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来上塗り塗装にあっては、ドアを若干開いた状態で行うが、塗装中にドアが閉まってしまうと、乗降口周縁とドアとが塗料によって接着されてしまうと云う問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、自動車1乗降口2下縁フランジ部分3に取付ける取付け手段5と、該取付け手段5から延設されドア7裏面に先端が当接するスペーサー手段6とからなる自動車ドア閉鎖阻止具4を提供するものである。
通常上記取付け手段はクリップ5であるか磁石9である。
上記スペーサー手段6は伸縮可能であることが望ましく、また該自動車1ドア7閉鎖阻止具4本体は合成樹脂射出成形品からなることが好ましく、この場合該合成樹脂は耐熱性を有しかつ塗膜と親和性を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0005】
〔作用〕
自動車1の乗降口2の下縁フランジ3部分に、取付け手段5によって閉鎖阻止具4を取付けておき、上塗り塗装を行う。塗装中ドア7が閉まろうとしても、該閉鎖阻止具4とスペーサー手段6が該ドア7裏面に当接して、該ドア7が完全に閉まるのを阻止する。
上記取付け手段がクリップ5であるか、あるいは磁石9であると、該閉鎖阻止具4は自動車1の乗降口2の下縁フランジ3に簡単に取付けられる。更に上記スペーサー手段6が伸縮可能であると、種々のサイズの自動車1に適用可能である。
該自動車1ドア2閉鎖阻止具4本体が合成樹脂射出成形品からなると大量生産が可能である。この場合に該合成樹脂が耐熱性を有しかつ塗膜と親和性を有するものであると、上塗り塗装後該閉鎖阻止具4を取付けたまゝで焼付け工程に入ることが出来、また閉鎖阻止具4に付着した塗膜が剥離して塗膜片となって周囲に散乱し、周囲わ汚染することがない。
【0006】
〔効果〕
本発明では自動車車体の上塗り塗装時および焼付け時にドアが完全に閉まることを阻止されるから、車体とドアとが塗料によって接着されてしまうことが確実に防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明を図1〜図4に示す一実施例によって説明すれば、閉鎖阻止具4は、取付け手段5と、スペーサー手段6とからなり、該取付け手段5にあっては、左右一対の蝶着片51,52の内側から差出された軸ブラケット53,54を重ねて軸棒55を貫着し、該軸棒55の周りにコイルスプリング56を配置し、該一対の蝶着片51,52が閉じる方向に付勢する。このようにして一対の蝶着片51,52によってクリップ5が構成されるが、該蝶着片51,52の下部が挟持部57となっている。
【0008】
スペーサー手段6は一方の蝶着片51の上部から外側に差出されているめねじ筒61と、該めねじ筒61に螺着されるボルト杆62とからなる。
【0009】
上記閉鎖阻止具4の本体は、金属や合成樹脂からなるが、熱可塑性樹脂を材料として射出成形によって製造すれば、大量生産に対応出来る。
【0010】
該合成樹脂としては耐熱性(180℃〜200℃)があり、かつ塗料の塗膜と親和性を有するものが望ましい。このような合成樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレンターポリマー、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、熱可塑性アクリル樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体等の熱可塑性合成樹脂、あるいはポリアミド、ポリエステル、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミノビスマレイミド、ポリメチルペンテンコポリマー、セルロースアセテート、ポリアリルエーテル、ポリテトラフルオロエチレン等のエンジニアリングプラスチックの一種または該熱可塑性合成樹脂および/または該エンジニアリングプラスチックとの二種以上の混合物やポリマーアロイがあるが、このうち塗料との親和性が良く、耐熱性にも優れているポリアミドおよびポリアミドを含む他のプラスチックとのポリマーアロイが使用される。
【0011】
上記ポリマーアロイにおいて、ポリスチレン、ポリアミド、スチレン系エラストマーを含むものは、耐熱性があるが成形性も良く、かつ塗料塗膜との密着性も良い。更にポリアミド6はポリマーアロイにすることなく、単独で耐熱性(180℃〜200℃)が良好で、かつ塗膜との密着性も良い。
【0012】
上記合成樹脂には、例えば炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、燐酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、アルミナ、シリカ、ケイ藻土、ドロマイト、石膏、タルク、クレー、アスベスト、マイカ、ガラス繊維、カーボン繊維、ケイ酸カルシウム、ベンナイト、ホワイトカーボン、カーボンブラック、鉄粉、アルミニウム粉、石粉、高炉スラグ、フライアッシュ、セメント、ジルコニア粉等の無機充填材、木綿、麻、竹繊維、ヤシ繊維、羊毛、絹等の天然繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ビスコース繊維、アセテート繊維、塩化ビニル繊維、塩化ビニリデン繊維、ビニロン繊維、アセテート繊維等の有機合成繊維、アスベスト繊維、ガラス繊維、炭素繊維、セラミック繊維、金属繊維、ウィスカー等の無機繊維、リンター、リネン、サイザル、木粉、ヤシ粉、クルミ粉、でん粉、小麦粉等の有機充填材等の補強材を添加して形状保持性、寸法安定性、圧縮および引張強度等を向上せしめてもよい。上記充填材は通常上記マスキング材の樹脂原料に対して0.5〜200重量%程度添加される。
また更に顔料や染料、DOP,DBP等の可塑剤、酸化防止剤、帯電防止剤、結晶化促進剤、難燃剤、防炎剤、防虫剤、防腐剤、ワックス類、滑剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、化学発泡剤またはカプセル型発泡剤のような発泡剤等を添加してもよい。これらの成分は一種または二種以上相互に混合して添加せられてもよい。
【0013】
更に上記熱可塑性樹脂には、塗膜との密着性を高めるため、粗面化処理、プライマー処理が施されてもよい。
【0014】
上記粗面化処理としては例えばコロナ放電処理、サンディング処理等のがあり、その他火炎処理、酸腐食処理等の表面に親塗膜化学構造を導入する方法と、塗膜と樹脂との両方に親和性を有するプライマー処理とがある。
【0015】
上記プライマー処理に使用されるプライマーとしては、例えば塩素化ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体のような変性ポリオレフィンまたはオレフィン共重合体、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ポリブタジエンのような合成ゴム、アクリル系合成樹脂、ビニル系合成樹脂、あるいはアミノ基、アミド基等を含むアクリル系合成樹脂、ビニル系合成樹脂、アミノ系合成樹脂やエポキシ樹脂等の合成ゴムまたは合成樹脂系のプライマー、あるいはアルミニウムイソプロピレート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート等のアルミニウムアルコラートまたはアルミニウムキレート化合物、2−エチルヘキシル鉛、ヘキサデシルリチウム等のアルキル金属、ジブチルスズジアセテート、ジ−n−ブチルスズジオキシド等の有機スズ化合物、メチルビニルジクロロシラン等のシラン化合物、アセチルアセトンリチウム、アセチルアセトンベリリウム等の1,3−ジカルボニルの金属錯塩、テトラブチルチタネート等の有機チタン化合物、ホウ酸トリ−n−ブチル、ホウ酸トリフェニル等のホウ酸化合物、リン酸トリオレイル、リン酸トリデシル等のリン酸エステル、ステアリン酸マグネシウム、ナフテン酸コバルト等のカルボン酸金属塩、n−ドデシルメルカプトカリウム塩等の金属チオアルコラート、2−エチルヘキサンジチオカルボン酸亜鉛等のジチオカルボン酸塩、ジメチルジチオカルバミン酸ニッケル、ジメチルジチオカルバミン酸銅等のジチオカルバミン酸金属塩、ベンゼンスルホン酸ニッケル等のスルホン酸金属塩、ジブチルリン酸バナジウム等の有機リン酸金属塩等の低分子量のプライマー等があり、上記プライマーは一種または二種以上の混合物として用いられる。上記プライマーとして特に望ましいものとしては第4級アンモニウム塩を含むアクリル系合成樹脂やアミノ系合成樹脂がある。
【0016】
上記閉鎖阻止具4は、図4に示すように、自動車車体1の乗降口2の下縁フランジ3に取付け手段5の挟持部57を挟持せしめることによって取付けられる。この状態でスペーサー手段6のボルト杆62頭部がドア7の内側に当接し、上塗り塗装中、あるいは焼付け中にドア7が完全に閉らないように阻止する。自動車の種類、サイズ等によってボルト杆62のめねじ筒61に対する螺入度を調節する。このように本実施例の閉鎖阻止具4のスペーサー手段6は伸縮可能である。
【0017】
図5、図6には本発明の他の実施例が示される。
図5に示す閉鎖阻止具8は、取付け手段として根端に樹脂磁石9が取付けられ、該樹脂磁石9から筒体101と杆体102とからなるスペーサー手段10が差出されている。該筒体101の内周の所定個所には一条の環溝103が形成され、該杆体102の外周の所定個所には複数条(3条)の環凸起104が形成されており、該筒体101の環溝103に該杆体102の環凸起104のいずれかを係合することによって、該スペーサー手段10は所定の長さ(3段)に調節される。
【0018】
該閉鎖阻止具8は、樹脂磁石9によって車体1の乗降口2の下縁フランジ3に取付けられ、スペーサー手段10の杆体102頭部がドア7の裏面に当接することによって、ドア7が完全に閉まらないように阻止する。
【0019】
上記閉鎖阻止具8も前実施例と同様な合成樹脂の射出成形によって製造されるが、筒体101の成形時に樹脂磁石9を金型にインサートしておく。
【0020】
上記実施例以外、スペーサー手段は必ずしも伸縮可能でなくてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明は、自動車車体塗装時に車体とドアが塗料によって接着されてしまうことを阻止し、車体塗装工程を円滑にならしめるから、産業上有用に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1〜図4は本発明の一実施例を示すものである。
【図1】閉鎖阻止具の側面図
【図2】閉鎖阻止具の正面図
【図3】閉鎖阻止具の平面図
【図4】閉鎖阻止具の使用状態側面図図5、図6は本発明の他の実施例を示すものである。
【図5】閉鎖阻止具の分解一部切欠き側面図
【図6】閉鎖阻止具の使用状態側面図
【符号の説明】
【0023】
1 自動車
2 乗降口
3 下縁フランジ
4,8 閉鎖阻止具
5 クリップ(取付け手段)
6,10 スペーサー手段
7 ドア
9 樹脂磁石(取付け手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車乗降口下縁フランジ部分に取付ける取付け手段と、該取付け手段から延設されドア裏面に先端が当接するスペーサー手段とからなることを特徴とする自動車ドア閉鎖阻止具。
【請求項2】
上記取付け手段はクリップである請求項1に記載の自動車ドア閉鎖阻止具。
【請求項3】
上記取付け手段は磁石である請求項1に記載の自動車ドア閉鎖阻止具。
【請求項4】
上記スペーサー手段は伸縮可能である請求項1〜3のいずれか1項に記載の自動車ドア閉鎖阻止具。
【請求項5】
該自動車ドア閉鎖阻止具本体は合成樹脂射出成形品からなる請求項1〜4のいずれか1項に記載の自動車ドア閉鎖阻止具。
【請求項6】
該合成樹脂は耐熱性を有しかつ塗膜と親和性を有する請求項5に記載の自動車ドア閉鎖阻止具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−38161(P2007−38161A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−226550(P2005−226550)
【出願日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(000243892)名古屋油化株式会社 (78)
【Fターム(参考)】