説明

自動車用アンダーカバー

【課題】 剛性が高く、耐チッピング性および熱成形性に優れた自動車用アンダーカバーを提供する。
【解決手段】 下記のプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)を含む樹脂組成物からなる自動車用アンダーカバー。
プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)は、
プロピレン単独重合体部分(A1)95〜60重量%と、プロピレン−エチレン共重合体部分(A2)5〜40重量%からなり、
前記単独重合体部分(A1)の固有粘度[η]pが2dl/g以上5dl/g以下であり、
前記共重合体部分(A2)に含有されるエチレンの含量が20〜50重量%であり、前記共重合体部分(A2)の固有粘度[η]epが2dl/g以上8dl/g以下の
プロピレン−エチレンブロック共重合体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂組成物からなる自動車用アンダーカバーに関するものである。さらに詳しくは、剛性が高く、耐チッピング性および熱成形性に優れた自動車用アンダーカバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車においては、車体下側の空力特性の向上と駆動部搭載ルーム内へのチッピング防止、スプラッシュ進入防止等のため、車体前部の駆動部搭載ルームの下側に、アンダーカバーを配設して、自動車床下をフラットにすることが行なわれている(特許文献1)。また、特許文献2には、ポリプロピレン樹脂からなるアンダーカバーが記載されている。
【0003】
近年、さらに空力特性を向上させるために、自動車の床下の一層広い範囲をアンダーカバーで覆うことが望まれてきている。自動車床下の一層広い範囲をアンダーカバーで覆う場合、アンダーカバー自身の耐チッピング性のさらなる改良が求められてくる。また、アンダーカバーを熱可塑性樹脂で製造する場合、成形品の大きさが大きくなるため、剛性が必要となってくる。
【0004】
特許文献2に記載されているポリプロピレンからなるアンダーカバーは、剛性、耐チッピング性が必ずしも十分でなく、また、押出し成形性、真空成形、圧縮成形等の熱成形性も必ずしも十分ではないため、これらのさらなる改良が求められていた。
【0005】
【特許文献1】特開平9−315345
【特許文献2】特開平11−105747
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、剛性が高く、耐チッピング性および熱成形性に優れた自動車用アンダーカバーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、かかる実情に鑑み、鋭意研究の結果、本発明が上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、
下記のプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)を含む樹脂組成物からなる自動車用アンダーカバーに係るものである。
プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)は、
プロピレン単独重合体部分(A1)95〜60重量%と、プロピレン−エチレン共重合体部分(A2)5〜40重量%からなり、
前記単独重合体部分(A1)の固有粘度[η]pが2dl/g以上5dl/g以下であり、
前記共重合体部分(A2)に含有されるエチレンの含量が20〜50重量%であり、前記共重合体部分(A2)の固有粘度[η]epが2dl/g以上8dl/g以下の
プロピレン−エチレンブロック共重合体である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、剛性が高く、耐チッピング性および熱成形性に優れた自動車用アンダーカバーを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明で用いられるプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)とは、プロピレン単独重合体部分(A1)とプロピレン−エチレンランダム共重合体部分(A2)からなる共重合体である。
【0010】
本発明で用いられるプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)におけるプロピレン単独重合体部分(A1)とプロピレン−エチレンランダム共重合体部分(A2)の、それぞれの重量割合は、単独重合体部分(A1)が95〜60重量%であり、ランダム共重合体部分(A2)が5〜40重量%である。好ましくは、単独重合体部分(A1)が90〜65重量%であり、ランダム共重合体部分(A2)が10〜35重量%であり、さらに好ましくは、単独重合体部分(A1)が90〜70重量%であり、ランダム共重合体部分(A2)が10〜30重量%である。(但し、プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)の全重量を100重量%とする。)
単独重合体部分(A1)の含有量が過多の場合、衝撃強度が不充分となる場合があり、単独重合体部分(A1)の含有量が過少の場合、剛性が不充分となる場合がある。
【0011】
ブロック共重合体(A)におけるプロピレン−エチレンランダム共重合体部分(A2)に含有されるエチレンの含量は、20〜50重量%であり、好ましくは、30〜50重量%、さらに好ましくは、30〜45重量%である。(ただし、プロピレン−エチレンランダム共重合体(A2)の全量を100重量%とする。)
プロピレン−エチレンランダム共重合体部分(A2)に含有されるエチレンの含量が過多あるいは過少の場合、衝撃強度が不充分となる場合がある。
【0012】
ブロック共重合体(A)における単独重合体部分(A1)のアイソタクチックペンタッド分率は、剛性や耐熱性の観点から、通常、0.97以上であり、より好ましくは0.98以上である。
【0013】
プロピレン単独重合体部分(A1)の固有粘度([η]P)は、2dl/g以上5dl/g以下であり、好ましくは2dl/g以上4dl/g以下である。プロピレン単独重合体部分(A1)の固有粘度が過小の場合、押出し加工性が悪化したり、真空成形や圧縮成形等の熱成形を行う時にドローダウンと呼ばれる成形不良現象が起こる場合がある。一方、固有粘度が過大の場合、溶融粘度が高すぎ、押出し加工が困難となる場合がある。
【0014】
また、プロピレン−エチレンランダム共重合体部分(A2)の固有粘度([η]EP)は、2dl/g以上8dl/g以下であり、好ましくは2dl/g以上4dl/g以下である。プロピレン−エチレンランダム共重合体部分(A2)の固有粘度が過小の場合、耐衝撃強度が乏しくなる場合があり、一方、固有粘度が過大な場合、A2の分散性が不十分となり外観が悪化する場合がある。
【0015】
ブロック共重合体(A)の230℃、測定荷重21NにおけるMFRは、押出し加工性を良好にするという観点や、真空成形や圧縮成形等の熱成形を行う時にドローダウンと呼ばれる成形不良現象を抑えるという観点から、好ましくは、1以下である。
【0016】
ブロック共重合体(A)の製造方法としては、例えば、プロピレン単独重合体部分(A1)を第1工程で製造し、プロピレン−エチレンランダム共重合体部分(A2)を第2工程で製造する方法が挙げられる。
【0017】
そして、重合触媒としては、例えば、チーグラー触媒やメタロセン触媒が挙げられ、重合方法としては、例えば、スラリー重合法や気相重合法が挙げられる。
【0018】
本発明で用いられるエラストマー(B)とは、下記のビニル芳香族化合物含有ゴム(B−1)、エチレン−α−オレフィンランダム共重合体ゴム(B−2)、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体(B−3)から選ばれる少なくとも1種のエラストマーである。
(B−1)比重が0.91以下のビニル芳香族化合物含有ゴム
(B−2)比重が0.89以下のエチレン−α−オレフィンランダム共重合体ゴム
(B−3)プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体
【0019】
(B−1)ビニル芳香族化合物含有ゴム
ビニル芳香族化合物含有ゴム(B−1)としては、例えば、ビニル芳香族化合物重合体ブロックと共役ジエン系重合体ブロックからなるブロック共重合体等が挙げられ、その共役ジエン部分の二重結合が80%以上水素添加されているものが好ましく、さらに好ましくは85%以上水素添加されているものである。
【0020】
また、GPC(ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー)法による分子量分布(Q値)は2.5以下が好ましく、さらに好ましくは2.3以下である。
【0021】
また、ビニル芳香族化合物含有ゴムに含有されるビニル芳香族化合物の平均含有量は、10〜30重量%が好ましく、さらに好ましくは12〜20重量%である。
【0022】
また、ビニル芳香族化合物含有ゴムのメルトフローレート(MFR、JIS−K−6758)は0.3〜15g/10分が好ましく、さらに好ましくは0.5〜13g/10分である。
【0023】
ビニル芳香族化合物含有ゴム(B−1)としては、例えば、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン系ゴム(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン系ゴム(SEPS)、スチレン−ブタジエン系ゴム(SBR)、スチレン−ブタジエン−スチレン系ゴム(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレン系ゴム(SIS)等のブロック共重合体又はこれらのゴム成分を水添したブロック共重合体等を挙げることができる。また、エチレン−プロピレン−非共役ジエン系ゴム(EPDM)等のオレフィン系共重合体ゴムとスチレン等のビニル芳香族化合物を反応させて得られるゴムも好適に使用することができる。また、少なくとも2種のビニル芳香族化合物含有ゴムを併用しても良い。
【0024】
ビニル芳香族化合物含有ゴム(B−1)の製造方法としては、例えば、オレフィン系共重合体ゴムや共役ジエンゴムに対し、ビニル芳香族化合物を重合や反応によって結合させる方法等が挙げられる。
【0025】
(B−2)エチレン−α−オレフィンランダム共重合体ゴム
エチレン−α−オレフィンランダム共重合体ゴム(B−2)とは、エチレンとα−オレフィンからなるランダム共重合体ゴムである。α−オレフィンは炭素原子数3以上のα−オレフィンであり、例えば、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1、デセン等が挙げられ、好ましくは、プロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1であり、少なくとも2種のα−オレフィンを併用してもよい。
【0026】
また、エチレン−α−オレフィンランダム共重合体ゴムのMFR(JIS−K−6758、190℃)は0.3〜15g/10分が好ましく、さらに好ましくは0.5〜13g/10分である。
【0027】
エチレン−α−オレフィンランダム共重合体ゴム(B−2)としては、例えば、エチレン−プロピレンランダム共重合体ゴム、エチレン−ブテン−1ランダム共重合体ゴム、エチレン−ヘキセン−1ランダム共重合体ゴム、エチレン−オクテン−1ランダム共重合体ゴム、エチレン−プロピレン−ブテン−1ランダム共重合体等が挙げられ、好ましくは、エチレン−オクテン−1ランダム共重合体ゴム、エチレン−ブテン−1ランダム共重合体ゴム又はエチレン−ヘキセン−1ランダム共重合体ゴムである。また、少なくとも2種類のエチレン−α−オレフィンランダム共重合体ゴムを併用しても良い。
【0028】
(B−3)プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体
プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体ゴム(B−3)としては、例えば、プロピレン−ブテンランダム共重合体ゴム、プロピレン−ヘキセン−1ランダム共重合体ゴム、プロピレン−オクテン−1ランダム共重合体ゴム等が挙げられ、好ましくは、プロピレン−ブテンランダム共重合体ゴムである。また、少なくとも2種類のプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体ゴムを併用しても良い。
【0029】
本発明で用いられるエラストマーとしては、(B−2)エチレン−αオレフィン共重合体ゴムが、耐チッピング性の改良効果の点で好ましい。
【0030】
本発明で用いられる造核剤(C)としては、例えば、ナトリウム 2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ホスフェート、[リン酸−2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)] ジヒドロオキシアルミニウム、ビス[リン酸−2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)] ヒドロオキシアルミニウム、トリス[リン酸−2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)] アルミニウム、ナトリウム ビス(4−t−ブチルフェニル)ホスフェート、安息香酸ナトリウムなどの安息香酸金属塩、p−t−ブチル安息香酸アルミニウム、1,3:2,4−ビス(o−ベンジリデン)ソルビトール、1,3:2,4−ビス(o−メチルベンジリデン)ソルビトール、1,3:2,4−ビス(o−エチルベンジリデン)ソルビトール、1,3−o−3,4−ジメチルベンジリデン−2,4−o−ベンジリデンソルビトール、1,3−o−ベンジリデン−2,4−o−3,4−ジメチルベンジリデンソルビトール、1,3:2,4−ビス(o−3,4−ジメチルベンジリデン)ソルビトール、1,3−o−p−クロロベンジリデン−2,4−o−3,4−ジメチルベンジリデンソルビトール、1,3−o−3,4−ジメチルベンジリデン−2,4−o−p−クロロベンジリデンソルビトール、1,3:2,4−ビス(o−p−クロロベンジリデン)ソルビトールおよびそれらの混合物、ロジン系のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、具体的にはロジンのリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩などの化合物が挙げられ、これらは少なくとも2種を併用してもよい。
【0031】
本発明の熱可塑性樹脂組成物が、前述の(A)〜(C)を含む熱可塑性樹脂組成物である場合、(A)〜(C)を含む熱可塑性樹脂組成物の全量を100重量%として、(A)〜(C)のそれぞれの含有量は、次のとおりである。
【0032】
プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)の含有量は、79.6〜98.6重量%であり、好ましくは、84.6〜94.6重量%である。(A)の含有量が過少の場合、剛性が十分でない場合があり、過多の場合、耐チッピング性が低下する場合がある。
【0033】
エラストマー(B)の含有量は、1〜20重量%であり、好ましくは、5〜15重量%である。(B)の含有量が過少の場合、耐チッピング性の改良効果が十分でない場合があり、過多の場合、剛性が低下する場合がある。
【0034】
結晶造核剤剤(C)の含有量は、0.01〜0.4重量%であり、好ましくは、0.04〜0.3重量%である。(C)の含有量が過少の場合、剛性の改良効果が不十分である場合があり、過多の場合、耐衝撃強度が悪化する場合がある。
【0035】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物の製造方法としては、各成分を混合し、混練する方法が挙げられ、混練に用いられる装置としては、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、熱ロール等が挙げられる。混練の温度は、通常、170〜300℃であり、混練の時間は、通常、1〜20分である。また、各成分の混練は同時に行ってもよく、分割して行ってもよい。各成分を分割して混合する場合、混練順序は特に限定されるものではない。
【0036】
本発明で用いられる熱可塑性樹脂には必要に応じて、プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)の単独重合体部分(A1)と同様のプロピレン単独重合体を配合しても良い。
【0037】
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物には、必要に応じて、他の熱可塑性樹脂、無機充填剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、帯電防止剤、銅害防止剤、難燃剤、中和剤、発泡剤、可塑剤、気泡防止剤、架橋剤、滑剤等の添加剤を配合しても良い。
無機充填剤としては、例えば、タルク、マイカ、ウォラスナイト、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、クレー、アルミナ、シリカ、硫酸カルシウム、炭素繊維、硫酸マグネシウム、ガラス繊維、金属繊維、けい砂、カーボンブラック、酸化チタン、水酸化マグネシウム、ゼオライト、モリブデン、けいそう土、セリサイト、シラス、水酸化カルシウム、亜硫酸カルシウム、硫酸ソーダ、ベントナイト、黒鉛等が挙げられる。衝撃強度、成形体の光沢や良好な外観を得るという観点から、好ましくは、タルクである。
【0038】
タルクの平均粒子径は、通常、10μm以下であり、好ましくは5μm以下である。ここでタルクの平均粒子径とは、遠心沈降式粒度分布測定装置を用いて水、アルコール等の分散媒中に懸濁させて測定した篩下法の積分分布曲線から求めた50%相当粒子径D50のことを意味する。
【0039】
また、タルクは無処理のまま使用しても良く、ポリプロピレン系樹脂との界面接着性を向上させ、ポリプロピレン系樹脂に対する分散性を向上させるために、通常知られているシランカップリング剤、チタンカップリング剤や界面活性剤で表面を処理して使用しても良い。界面活性剤としては、例えば、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸塩類等が挙げられる。
【0040】
本発明の自動車用アンダーカバーは、本発明の熱可塑性樹脂組成物を用い、射出成形、押出し成形によりシートを作製し、概シートを真空成形、圧空成形等の熱成形によって成形して得られる。好ましくは、押出し成形にて、一旦、厚さ1〜5mmのシートを作製した後、このシートを真空成形、圧空成形等の熱成形で所望の形状に成形する成形法である。成形型には、雌型、雄型など、通常の熱成形に用いる型(金属製、樹脂製、木製など)が用いられる。成形展開率は、成形前の厚み(t0)と成形後の厚み(t)の比で示される面絞り比(R)が10以下であることが好ましく、特に好ましくは5以下である。
【0041】
熱成形の工程は、押出し成形で得られたシートを冷却後行なっても良いし、冷却することなく連続的に行なっても良い。
【0042】
アンダーカバーは、自動車の床下の一部、または、全面を覆い、空力特性の向上、駆動部搭載ルーム内へのチッピング防止、スプラッシュ進入防止等の効果を発揮する。
【実施例】
【0043】
実施例および比較例で用いた試験片の物性は、以下の方法に従って、測定した。
(1)メルトフローレート(MFR、単位:g/10分)
ASTM D1238に従って測定した。測定温度230℃、荷重21Nの条件で測定した。
【0044】
(2)曲げ弾性率(単位:MPa)
ASTM D790に準拠し、射出成形によって得られた3.2mm厚の試験片を使用して、23℃における曲げ弾性率を測定した。
【0045】
(3)デュポン衝撃強度(単位:J)
デュポン衝撃試験機(東洋精機製作所製)にて、先端半径6.3mmの撃芯を用い、射出成形によって得られた厚み2mmのシート試験片の50%破壊エネルギーを求めた。デュポン衝撃強度が高いほど、耐チッピング性が良好であることを示す。
【0046】
(4)固有粘度([η]、単位:dl/g)
ウベローデ型粘度計を用いて濃度0.1、0.2および0.5g/dlの3点について還元粘度を測定した。固有粘度は、「高分子溶液、高分子実験学11」(1982年共立出版株式会社刊)第491頁に記載の計算方法、すなわち、還元粘度を濃度に対しプロットし、濃度をゼロに外挿する外挿法によって求めた。ポリプロピレンについては、溶媒としてテトラリンを用い、温度135℃で評価した。
【0047】
(5)アイソタクチックペンタッド分率(単位:%)
アイソタクチック・ペンタッド分率は、A.Zambelliらによって、Macromolecules,6,925(1973)に発表、記載されている方法に従って測定した。すなわち、13C−NMRを使用して測定されるポリプロピレン分子鎖中のペンタッド単位でのアイソタクチック連鎖、換言すれば、プロピレンモノマー単位が5個連続してメソ結合した連鎖の中心にあるプロピレンモノマー単位の分率を求めた。ただし、NMRの吸収ピークの帰属に関しては、その後発刊されたMacromolecules,8,687(1975)に基づいて行った。
【0048】
具体的には、13C−NMRスペクトルのメチル炭素領域の全吸収ピーク中のmmmmピークの面積分率としてアイソタクチック・ペンタッド分率を測定した。この方法により英国NATIONAL PHYSICAL LABORATORYのNPL標準物質 CRM No.M19−14 PolypropylenePP/MWD/2のアイソタクチックペンタッド分率を測定したところ、0.944であった。
【0049】
(6)プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)におけるプロピレン−エチレンランダム共重合体部分(A2)の全ブロック共重合体(A)に対する重量比率(X、重量%)及びプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)中のプロピレン−エチレンランダム共重合体部分(A2)のエチレン含量:[(C2’)EP、重量%]、及びプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)中のエチレン含量[(C2’)、重量%]
下記の条件で測定した13C−NMRスペクトルから、Kakugoらの報告(Macromolecules 1982,15,1150-1152)に基づいて求めた。
10mmΦの試験管中で約200mgのプロピレン−エチレンブロック共重合体を3mlのオルソジクロロベンゼンに均一に溶解させて試料を調整し、その試料の13C−NMRスペクトルを下記の条件下で測定した。
測定温度:135℃
パルス繰り返し時間:10秒
パルス幅:45°
積算回数:2500回
【0050】
(7)プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)におけるプロピレン−エチレンランダム共重合体部分(A2)の固有粘度([η]EP、単位:dl/g)
プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)におけるプロピレン−エチレンランダム共重合体部分(A2)の固有粘度[η]EPは、プロピレン単独重合体部分(A1)と全ブロック共重合体(A)の各々の固有粘度を測定することにより、次式から算出した。
[η]EP=[η]T/X−(1/X−1)[η]P
[η]P:プロピレン単独重合体部分の固有粘度(dl/g)
[η]T:ブロック共重合体全体の固有粘度(dl/g)
なお、プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)中のプロピレン単独重合体部分(A1)の固有粘度[η]Pは、その製造時に、第一工程であるプロピレン単独重合体部分(A1)の製造後に重合槽内より取り出し、取り出されたプロピレン単独重合体から[η]Pを求めた。
【0051】
(試料)
(A−1)プロピレン−エチレンブロック共重合体(成分(A−1))
プロピレン単独重合体とプロピレン−エチレンランダム共重合体部分とからなるプロピレン−エチレン共重合体を用いた。このプロピレン−エチレンブロック共重合体は、特開平10−212319号記載の触媒を用いて製造されたものである。その詳細は、以下の通りである。
MFR(230℃)が0.3g/10分、プロピレン単独重合体部分の固有粘度([η]P)が3.1dl/g、アイソタクチックペンタッド分率が0.97、プロピレン−エチレンランダム共重合体部分の固有粘度([η]EP)が3.5dl/g、プロピレン−エチレンブロック共重合体に対する重量割合が19重量%であり、エチレン−プロピレンランダム共重合部分におけるエチレン含量が42重量%、であるプロピレン-エチレンブロック共重合体。
【0052】
(A−2)プロピレン−エチレンブロック共重合体(成分(A−2))
MFR(230℃)が0.5g/10分、プロピレン単独重合体部分の固有粘度([η]P)が2.7dl/g、アイソタクチックペンタッド分率が0.97、プロピレン−エチレンランダム共重合体部分の固有粘度([η]EP)が2.8dl/g、プロピレン−エチレンブロック共重合体に対する重量割合が20重量%であり、エチレン−プロピレンランダム共重合部分におけるエチレン含量が38重量%であるプロピレン−エチレンブロック共重合体。
【0053】
(A−3)プロピレン−エチレンブロック共重合体(成分(A−3))
MFR(230℃)が2.5g/10分、プロピレン単独重合体部分の固有粘度([η]P)が1.9dl/g、アイソタクチックペンタッド分率が0.97、プロピレン−エチレンランダム共重合体部分の固有粘度([η]EP)が3.1dl/g、プロピレン−エチレンブロック共重合体に対する重量割合が19重量%であり、エチレン−プロピレンランダム共重合部分におけるエチレン含量が40重量%であるプロピレン−エチレンブロック共重合体。
【0054】
(B)エラストマー(成分B)
商標:Engage8842(デュポンダウ製)
比重が0.86であり、MFR(190℃)が1g/10分であるエチレン−1−ブテン共重合体ゴム
【0055】
(C−1)造核剤(成分(C−1))
リン酸2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ナトリウム (商標:アデカスタブNA−11:旭電化工業(株)製)
(C−2)造核剤(成分(C−2))
p−t−ブチル安息香酸アルミニウム(PTBBA−Al、シエル化学(株)製)
【0056】
実施例1
表1に示した配合割合の各成分を混合し、シリンダー温度230℃、スクリュー回転数200rpmに設定した二軸混練機(日本製鋼所製、TEX44)のホッパーから投入した後、これらの成分を溶融混練したものをストランドカットしてペレット状の樹脂組成物を得た。得られたペレットを射出成形機(東芝機械製 IS150E)を用いシリンダー温度260℃、金型温度50℃に設定し、各試験片を成形した。得られた試験片を用いて曲げ弾性率、デュポン衝撃強度を測定した。また、得られたペレットのMFRを測定した。この結果を表1に示した。
【0057】
実施例2〜3、比較例1
表1に示した配合割合の各成分を用いた以外が実施例1と同様に実施した。結果を表1に示した。
【0058】
比較例1
A−3を射出成形機(東芝機械製 IS150E)を用いシリンダー温度220℃、金型温度50℃に設定し、各試験片を成形した。得られた試験片を用いて曲げ弾性率、デュポン衝撃強度を測定した。また、得られたペレットのMFRを測定した。この結果を表1に示した。
【0059】
【表1】

【0060】
本発明の要件を満足する実施例1〜4は、剛性が高く、耐チッピング性および熱成形性に優れていることが分かる。
【0061】
これに対して、本発明の要件であるプロピレン−エチレンブロック共重合体の単独重合体部分の固有粘度[η]pを満足しないブロック共重合体(A−3)を用いた比較例1は、耐チッピング性に劣ることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記のプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)を含む樹脂組成物からなる自動車用アンダーカバー。
プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)は、
プロピレン単独重合体部分(A1)95〜60重量%と、プロピレン−エチレン共重合体部分(A2)5〜40重量%からなり、
前記単独重合体部分(A1)の固有粘度[η]pが2dl/g以上5dl/g以下であり、
前記共重合体部分(A2)に含有されるエチレンの含量が20〜50重量%であり、前記共重合体部分(A2)の固有粘度[η]epが2dl/g以上8dl/g以下の
プロピレン−エチレンブロック共重合体である。
【請求項2】
下記のプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)79.6〜98.9重量%と、エラストマー(B)1〜20重量%と、結晶造核剤(C)0.01〜0.4重量%とを含む熱可塑性樹脂組成物からなる自動車用アンダーカバー。
プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)は、
プロピレン単独重合体部分(A1)95〜60重量%と、プロピレン−エチレン共重合体部分(A2)5〜40重量%からなり、
前記単独重合体部分(A1)の固有粘度[η]pが2dl/g以上5dl/g以下であり、
前記共重合体部分(A2)に含有されるエチレンの含量が20〜50重量%であり、前記共重合体部分(A2)の固有粘度[η]epが2dl/g以上8dl/g以下の
プロピレン−エチレンブロック共重合体である。
【請求項3】
真空成形または圧縮成形によって得られる請求項1または2に記載の自動車用アンダーカバー。

【公開番号】特開2006−240520(P2006−240520A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−60323(P2005−60323)
【出願日】平成17年3月4日(2005.3.4)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】