説明

自動車用アンダーカバー

【課題】本発明は自動車用アンダーカバーに関し、超軽量であるにもかかわらず必要な強度を確保することができ、しかも所望の整流機能及び遮音機能を発揮せしめるようにすることを目的とする。
【解決手段】フロアアンダーカバーは熱可塑性樹脂とガラス繊維と発泡剤との混合物を板状に発泡成形してなる板状体を加熱発泡後に加圧成形することにより製造される。圧縮により板状体の厚みは縮小し、発泡倍率としては小さくなり、圧縮後の一般部の肉厚としては自動車用アンダーカバーとしての設計上の剛性を得ることができる値に設定される。そして、一般部の肉厚に対して対して局部的な薄肉部20若しくは厚肉部22, 24, 26が得られるように、即ち、局所的に圧縮率が変化するように成形型の形状を選定している。薄肉部20は車体への接続部、厚肉部22, 24, 26はインシュレータとして機能させることができる。下面12'はフルフラットとなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はフロアアンダーカバーやエンジンアンダーカバー等の自動車用アンダーカバー及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車のフロアアンダーカバーやエンジンアンダーカバー等の自動車用アンダーカバーは車体下部における空気の流れをスムーズとし、空気抵抗の低下によるダウンフォースの低下、延いては燃料効率の増大を狙ったものである(特許文献1及び2)。また、遮音機能も意図しており、大抵は内面側に吸音材をタッカー等により貼着して構成している。自動車用アンダーカバーの素材としては軽量化のためポリプロピレンなどの熱可塑性合成樹脂から板状に成形したプラスチック製のものや、ポリプロピレンなどの熱可塑性合成樹脂に補強のためガラス繊維等の繊維素材を混合し、板状に成形したもの所謂FRP製のものがある。合成樹脂製のものでもFRP製のものでも剛性確保のためビートを持たせているのが普通である。
【特許文献1】特開平7−215244号公報
【特許文献2】特開平8−192466号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ポリプロピレンなどの合成樹脂から成形したプラスチック製のものはエンジン側からの熱による変形が起こり易い問題がある。ガラス繊維で補強したFRP製のものは熱変形には強いが重くなるしコスト増となる。また補強のため板状部における長手方向若しくは幅方向における凹凸成形部であるビードを設けることが多いが、このような凹凸は車体下部における空気の流れを乱す要因となる。また、内面側には多くは別体の吸音材が取り付けられており、これも重量増やコスト増の要因となっている。
【0004】
この発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、超軽量であるにもかかわらず必要な強度を確保することができ、しかも所望の整流機能及び遮音機能を発揮せしめるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明においては、フロアアンダーカバーやエンジンアンダーカバー等の自動車用アンダーカバーはポリプロピレン等の熱可塑性樹脂とガラス繊維等の強化繊維と発泡剤との混合物を板状に成形してなる板状体を素材とする。強化繊維はポリプロピレンに対して5から40wt%含まれるのが好適である。板状体は、好ましくは車体外側面となる一面において非通気性のポリプロピレンフィルム等の合成樹脂フィルムを貼着し、車体内側面となる他面において通気性のポリプロピレンフィルム等の合成樹脂フィルムを貼着している。板状体は加熱炉で加熱発泡後、成形型にてに加圧圧縮成形することにより自動車用アンダーカバーとされる。ポリプロピレンの場合の成形圧力は1から10kg/cmである。圧縮により板状体の厚みは縮小し、発泡倍率としては小さくなるが、平均的な発泡倍率、すなわち、圧縮後の一般部の肉厚としては自動車用アンダーカバーとしての設計上の剛性を得ることができるように1.1から8倍の発泡倍率値に設定される。そして、この発明では、この一般部の肉厚に対して局部的な薄肉部若しくは厚肉部が得られるように、即ち、局所的に圧縮率が変化するように成形型の形状を選定している。例えば、自動車のボディへの連接部位であるフランジ部では肉厚が一般部のそれより薄くなるように、即ち、発泡倍率が1から1.5倍、場合によっては1(完全圧縮状態)といった値となるような成形型形状とし、最大限の局部的剛性値を持たせることができる。また、内側面に沿って発泡倍率が2から8倍の低圧縮若しくは無圧縮とすることで、リブ若しくはビード状の厚肉部(高発泡倍率部位)を形成し、この部位を一体型の吸音部(インシュレータ)とすることができる。そして、この発明では発泡板材の圧縮により所定の剛性値を得ると共に局部的薄肉部や厚肉部を得ているため、車体外側に位置する片面側に空気の乱れを惹起せしめる凹凸が実質的に存在しないように実質的に平坦化することができる。即ち、本発明により自動車用アンダーカバーの下面形状をよりフルフラットにより近い形状とすることができる。
【発明の効果】
【0006】
この発明では熱可塑性樹脂と強化繊維と発泡剤より発泡成形された板状体を成形型内で局部的薄肉部や局部的厚肉部が得られるように圧縮成形しているため、自動車用アンダーカバーとしての所期の剛性(一般部の剛性値)を得つつ、局部的な薄肉部や局部的な厚肉部を任意に成形型内で同時形成可能であり、従来のインシュレータのような別体の部材を省略することができ、所期の剛性を確保しつつ大いなる軽量化及び工程簡略化及び低コスト化を実現し、しかもよりフルフラットに近似した底面を持つ製品化することができるため最大限の整流効果を発揮させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1は自動車の車体下部における左側半分を下面側より見た模式図であり、10はエンジンアンダーカバー、12はフロアアンダーカバー(左右に設けられるが左側のみ図示)、14はリヤアンダーカバーを夫々示す。また、16は左前車輪、18は左後車輪を示している。
【0008】
この発明の自動車用アンダーカバーの構造はエンジンアンダーカバー10にも、フロアアンダーカバー12にもリヤアンダーカバー14にも採用し得るが、以下はフロアアンダーカバー12に実施した例について説明する。
【0009】
図2はフロアアンダーカバー12の幅方向の断面図を示し、この特定実施形態のフロアアンダーカバー12はポリプロピレンに対して10〜40重量%のガラス繊維を含みかつ発泡剤を含有し、車体外側面となる一面において非通気性のポリプロピレンフィルムを貼着し、車体内側面となる他面において通気性のポリプロピレンフィルムを貼着して成る板状体を加熱炉にて加熱発泡後に加圧成形することにより製造される。発泡倍率は例えば20といった値のもので、これは仮に発泡剤がないとしたときの板厚に対して発泡剤により20倍の倍率で厚みが増加していることを意味する。板状体は片面を通気性のポリプロピレンフィルムで貼着していることにより加熱炉内での空気の自由な流通が可能となり所期の加熱発泡を行わせることができる。加熱より軟化された板状体は加圧により厚みを減じ、発泡倍率はそれに応じて減ずる。この発明においては成形型を加圧(圧縮)の程度が局部的に変化する形状とし、各部で所期の性能が得られるようにしている。図2において具体的に説明すると、一般部の厚みはtにて表され、この厚みtは出発素材の肉厚より圧縮により相当に薄くなってはいるが発泡倍率としては1.0より相当に大きいが、素材のフロアアンダーカバー12として所期の剛性値を得ることができるものである。
【0010】
フロアアンダーカバー12の幅方向の両端部はフランジ状を呈しており幾分高められており、一般部の肉厚tに対して厚みを減じた肉厚tの薄肉部20を形成している。この肉厚tは発泡倍率を1.0若しくはそれに近い値まで減少させるように選定され、剛性値としては最も硬くなっている。そして、薄肉部20に車体に対するフロアアンダーカバー12のボルト留めのためのボルト孔21が穿設される。
【0011】
フロアアンダーカバー12の内側内面においては局部的な厚肉部(ビード)22, 24, 26が形成され、これらは図1に破線にて示すようにフロアアンダーカバー12の長手方向における全長若しくは実質的全長に延びており、大、中、小の共振周波数を持つ一体の吸音部を構成する。ビード22, 24, 26はt3, t4, t5( t3> t4> t5)の肉厚を持ち、これらの肉厚t3, t4, t5は一般部の肉厚tより大きく、厚肉部22, 24, 26はこの順序で大きい大、中、小の発泡倍率を持っている。厚みが大、中、小のビード22, 24, 26を設けることにより大、中、小の共振数を持たせ、広い周波数範囲で効率的な吸音を行うことができる。従来は別体の吸音部材を接着等により取り付ける方式であったが、本発明では加熱発泡素材を圧縮率が局部的に適宜に変化するように成形型で圧縮することによりフロアアンダーカバー12の一体成形部としており、軽量化及び低コスト化が実現され、かつ圧縮率を変えた厚肉部22, 24, 26を複数設けることで、広い周波数範囲における所期の吸音効果を得ることができる。
【0012】
また、フロアアンダーカバー12は図2に示すように底面12´が実質的に平坦(実質的に無凹凸)であり、この平坦面はフロアアンダーカバー12の下面の実質的全面に及んでいる。そのため、フロアアンダーカバー12による整流効果を最大限に発揮せしめることが可能である。従来技術ではフロアアンダーカバー12は合成樹脂の板状成形品であったが、この場合は薄肉としつつ強度を確保するため長手方向に補強リブやビードを設けていたが、ビードを設けることにより下面でも凹凸状を呈しており、これがフロアアンダーカバー12の整流効果を損なっていたが、本発明ではポリプロピレンなどの合成樹脂に強化繊維を混合させかつ発泡させたものを成形型により圧縮して必要な剛性を得ており、他方、フロアアンダーカバー12の下面12´は実質的に全面で平坦であり、よりフルフラット化に近づけたものであるため最大限の整流効果を発揮せしめることができる。また、フロアアンダーカバー12の下面12´における最外面は非通気性のポリプロピレンフィルムの被覆が存在するため、発泡体としてのフロアアンダーカバー12の内部空隙への車外からの水分や湿気の浸透を防止することができる。
【0013】
次に、この発明の実施形態としての自動車用フロアアンダーカバーの製造方法について説明すると、図3は加熱発泡前の出発素材Mの構造を模式的に示しており、熱可塑性合成樹脂と強化繊維と発泡剤と混合物から成る板状体であるが、混合物における車体外側面となる下面M1において非通気性のポリプロピレンフィルムを貼着し、車体内側面となる上面M2において通気性のポリプロピレンフィルムを貼着して構成される。この実施形態では、板状体Mにおいて、ポリプロピレンに対して30重量%のガラス繊維が含まれる。板状体Mは樹脂としてのポリプロピレンの軟化温度である200℃といった温度にて加熱することにより発泡され、かつ軟化される。板状体Mの片面M1における通気性フィルムの存在により加熱発泡時の空気の自由な流通を確保することができる。加熱により発泡軟化された板状体Mは図4(イ)に示すように成形型に設置され、自動車用フロアアンダーカバーに低圧成形される。成形型は上型30と下型32とからなり、上型30の下面(成形面)にはビード22, 24, 26に対応した凹部30A, 30B, 30Cを備える。下型32の上面32A(成形面)は実質的に平坦であり、凹凸部が実質的に存在しない。
【0014】
発泡軟化により中央部が垂れた状態の板状素材Mはその両端において下型32の支持面32-1に載置される。下型32への板状素材Mの載置状態において非通気性のポリプロピレンフィルムを貼着した面M1は下側に位置し、通気性のポリプロピレンフィルムを貼着した面M2は上側に位置する。この状態で上型30が下降され、上下の型30, 32間での板状素材Mの加圧成形が行われる。上型30が最下端まで下降した状態は図4(ロ)にて示され、上型30と下型32との間に製品の形状と相補的な形状の空間が形成され、換言すれば、発泡板状素材Mは図2の製品形状に加圧圧縮され、かつ低温の型30, 32との接触によって素材Mは冷却を受け、各部の圧縮度合いに応じてその分発泡倍率は変化され、製品M´(自動車用フロアアンダーカバー)となる。尚、上下の型30, 32間での圧縮により素材は幅及び長さ方向にも幾分逃げるが、最終的にはトリミングを行うことで所定の幅及び長さ寸法を得ることができる。
【0015】
成形型の成形に先立った発泡軟化時の加熱温度は温度はポリプロピレンの軟化温度に応じて定まるが、180〜220℃であり、成形型30, 32による成形時の圧力値としてはポリプロピレンとガラス繊維との混合発泡体を出発素材とした場合は1〜10Kg/cm、好ましくは3〜10Kg/cmである。この圧力値は通常の合成樹脂からの成形が300Kg/cmといった圧力において行われていることと比較して桁違いに低く、プレス設備の著しい小型化が可能であり、また金型コストも低減され、本発明方法における発泡素材を出発素材とすることの大いなる利点である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は自動車におけるアンダーカバーの配置状態を模式的に示す図である。
【図2】図2はこの発明の実施形態としてのフロアアンダーカバーの断面図であり、図1のII−II線に沿って示す。
【図3】図3はこの発明の加熱発泡前の板状体を構造を模式的に示す断面図である。
【図4】図4は図2のフロアアンダーカバーの製造工程を示す概略図で、(イ)は成形型分離状態、(ロ)は成形型の合体状態を示す。
【符号の説明】
【0017】
12…フロアアンダーカバー
16…左前車輪
18…左後車輪を示している。
22, 24, 26…ビード
30…上型
32…下型
M…板状素材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂と強化繊維と発泡剤との混合物を板状に成形してなる板状体を加熱発泡後に成形型にて加圧成形することにより製造される自動車用アンダーカバーであって、一般部においては所定剛性値が得られる肉厚を持つが、特定機能の達成のため一般部の肉厚に対して局部的な薄肉部若しくは厚肉部を備えていることを特徴とする自動車用アンダーカバー。
【請求項2】
請求項1に記載の発明において、加圧成形後の底面が実質的に平坦である自動車用アンダーカバー。
【請求項3】
請求項1若しくは2に記載の発明において、前記薄肉部は自動車のボディへの連接部位である自動車用アンダーカバー。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の発明において、前記厚肉部は一般部より車体内側に突出した吸音部である自動車用アンダーカバー。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の発明において、加熱発泡される前記板状体は車体外側面となる一面において非通気性の合成樹脂フィルムを貼着し、車体内側面となる他面において通気性の合成樹脂フィルムを貼着している自動車用アンダーカバー。
【請求項6】
合成樹脂と強化繊維と発泡剤との混合物を板状に成形してなる板状体を加熱発泡後に成形型にて圧縮成形することにより自動車用アンダーカバーを製造する際に、一般部においては所期の剛性値が得られる肉厚に圧縮するが、その際成形型型形状を局部的な薄肉部若しくは厚肉部が得られる形状の成形型を使用することで、局部的に高圧縮率の薄肉部若しくは局部的に低圧縮率の厚肉部を同時形成する自動車用アンダーカバー製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の発明において合成樹脂としてはポリプロピレンであり、強化繊維としてはポリプロピレンに対して5から40wt%のガラス繊維であり、成形型における成形圧力は1から10kg/cmである自動車用アンダーカバー製造方法。
【請求項8】
請求項6若しくは7に記載の発明において、加熱発泡後成形型による加圧成形時における一般部での発泡倍率は1.1から8倍となるように圧縮する自動車用アンダーカバー製造方法。
【請求項9】
請求項6から8のいずれか一項に記載の発明において、加熱発泡後成形型による加圧成形時における厚肉部での発泡倍率は2から8倍となるように圧縮し、厚肉部は吸音部として機能させるためのものである自動車用アンダーカバー製造方法。
【請求項10】
請求項6から8のいずれか一項に記載の発明において、加熱発泡後成形型による加圧成形時における薄肉部での発泡倍率は1から1.5倍となるように圧縮し、薄肉部は車体への接続部として機能させるためのものである自動車用アンダーカバー製造方法。
【請求項11】
請求項6〜10のいずれか一項に記載の発明において、前記板状体は車体外側面となる一面において非通気性の合成樹脂フィルムを貼着し、車体内側面となる他面において通気性の合成樹脂フィルムを貼着している自動車用アンダーカバー製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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