説明

自動車用ダクト

【課題】安価な材料構成で、混合材料の種類を少なくした軽量で低温衝撃性の高い自動車用ダクトの提供を目的とする。
【解決手段】発泡性樹脂を押し出した発泡パリソンからブロー成形したダクト1において、0.95〜0.96の長鎖分岐構造を有し、メルトフローレイト(MFR)3〜7g/10分、溶融張力100〜250mNの高密度ポリエチレンである樹脂A60〜30重量部と、メルトフローレイト(MFR)0.3〜1.0g/10分の高密度ポリエチレンである樹脂B40〜70重量部を混合した混合樹脂100重量部に、化学発泡剤を1〜3重量部添加した発泡性樹脂を用いた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡性樹脂から形成した発泡層を有する筒状体(いわゆる発泡パリソン)をブロー成形した自動車用ダクトに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用の空調あるいは吸気用ダクトとして、発泡層を有するいわゆる発泡ダクトがある。発泡ダクトは、管壁が発泡層からなるため、非発泡のダクトと比べて軽量であり、燃費等の点から軽量性が求められる自動車ダクトとして好適なものである。
【0003】
従来の発泡ダクトは、発泡に適した溶融張力の高いポリオレフィン樹脂を使用し、前記ポリオレフィン樹脂を押出機で溶融混練中にポリオレフィン樹脂に発泡剤を配合して発泡性樹脂にし、この発泡性樹脂を押出機の環状ダイから押し出して発泡パリソン(発泡層を有する筒状体)を形成し、この発泡パリソンを金型で挟んでブロー成形することで得られる。なおブロー成形は、金型内の発泡パリソンに空気を吹き込んで発泡パリソンを金型内面に押し当てて賦形し、その後冷却し、金型を開いて成形品を取り出す工程からなる。
【0004】
例えば、特許文献1には溶融張力の高いポリプロピレン樹脂を用いることで軽量な発泡中空品が得られることが示されている。さらに、特許文献2には発泡を促す核剤を2.5〜7%配合することで、発泡層のセルが微細化することが示されている。
また、発泡ダクトは、剛性及び耐熱性を確保するため、ポリプロピレン樹脂を用いるものが主流となっている。しかし、ポリプロピレン樹脂からなる発泡ダクトは、低温環境下で衝撃性が著しく低下し、衝撃により割れるおそれがある。特に自動車用ダクトにおいては、北欧などの寒冷地で気温が−30℃以下になることが想定されるため、低温衝撃性の高い発泡ダクトが求められていた。
【0005】
低温衝撃性を高めるため、特許文献3ではポリプロピレン樹脂に水素添加スチレン系熱可塑性エラストマー(SEBS)を5〜40重量部添加することが提案されている。しかし、低温衝撃性はまだ十分ではなく、しかもエラストマーを添加すると発泡ダクトの剛性及び耐熱性の低下を生じるようになり、さらに材料価格が高価になり、また混合材料の種類増加によって従来の生産設備に改良の必要が生じるようになる等の問題がある。
【0006】
一方、特許文献4、5のようにポリエチレン樹脂を用いる場合、低温衝撃性は向上するが、発泡させるために溶融張力の高い低密度ポリエチレンや特殊な増粘剤を使用する必要があり、耐熱性、剛性の低下が避けられない。
また、特許文献6には発泡倍率の高い発泡層、すなわち軽量性の高い発泡層を得るためには発泡剤として物理発泡剤を用いる必要があると記載されている。なお、物理発泡剤は、熱等で化学反応を起こすことなく気化しているガス状の発泡剤であり、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、塩化メチル、二酸化炭素、窒素、水等を挙げることができるが、専用の生産設備を用い、高圧で溶融樹脂内に注入する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−181957号公報
【特許文献2】特開2005−193726号公報
【特許文献3】特開2009−243860号公報
【特許文献4】特許3997334号公報
【特許文献5】特開2007−160582号公報
【特許文献6】特開2004−249680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであって、安価な材料構成で、混合材料の種類を少なくした、軽量で低温衝撃性の高い自動車用ダクト及びその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
自動車用ダクトに関する発明は、発泡性樹脂から形成した発泡層を有する筒状体(発泡パリソン)をブロー成形した自動車用ダクトにおいて、前記発泡性樹脂は、長鎖分岐構造を有し、比重0.95〜0.96、メルトフローレイト(MFR)3〜7g/10分、溶融張力100〜250mNの高密度ポリエチレンである樹脂Aを60〜30重量部と、メルトフローレイト(MFR)0.3〜1.0g/10分の高密度ポリエチレンである樹脂Bを40〜70重量部混合した混合樹脂100重量部に、化学発泡剤を0.3〜3重量部添加したものからなることを特徴とする。また、前記樹脂Bは、比重が0.95〜0.98であることが好ましい。
【0010】
自動車用ダクトの製造方法に関する発明は、発泡性樹脂を押出機の環状ダイから押し出して発泡層を有する筒状体を形成し、前記発泡層を有する筒状体を金型に収容してブロー成形することにより自動車用ダクトを製造する方法において、前記発泡性樹脂は、長鎖分岐構造を有し、比重0.95〜0.96、メルトフローレイト(MFR)3〜7g/10分、溶融張力100〜250mNの高密度ポリエチレンである樹脂Aを60〜30重量部と、比重0.95〜0.98、メルトフローレイト(MFR)0.3〜1.0g/10分の高密度ポリエチレンである樹脂Bを40〜70重量部混合した混合樹脂100重量部に、化学発泡剤を0.3〜3重量部添加したものからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の自動車用ダクトは、長鎖分岐構造を有し、比重0.95〜0.96、メルトフローレイト(MFR)3〜7g/10分、溶融張力100〜250mNの高密度ポリエチレンである樹脂Aを60〜30重量部と、メルトフローレイト(MFR)0.3〜1.0g/10分の高密度ポリエチレンである樹脂Bを40〜70重量部混合した混合樹脂100重量部に、化学発泡剤を0.3〜3重量部添加した発泡性樹脂からなる発泡パリソンをブロー成形したものであるため、発泡層により軽量となり、また低温でも割れにくく、しかも高い剛性によって組付性が良く、さらにポリプロピレン樹脂に水素添加スチレン系熱可塑性エラストマー(SEBS)を添加した場合と比べて構成材料が少なく、製品が安価であるという効果を有する。
【0012】
また、本発明の自動車用ダクトの製造方法によれば、軽量で、低温衝撃性が高く、しかも組付性が良く、さらに構成材料が少なく、安価な自動車用ダクトを従来の生産設備を用いて容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明における一実施形態のダクトの斜視図である。
【図2】ブロー成形態様を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態に係るダクトについて説明する。図1に示す本発明の一実施形態のダクト10は、管壁に発泡層を有する発泡ダクトからなり、自動車の吸気ダクトや空調ダクト等として用いられる自動車用のものである。
前記自動車用ダクト10は、押出機の環状ダイから発泡性樹脂を押し出すことによって形成した発泡パリソンを金型で挟んでブロー成形することにより得られる。なお、ブロー成形直後のダクトは両端が閉じた状態となっており、ブロー成形後のトリミングによってダクトの両端が切断されて開口形状にされる。
【0015】
前記発泡性樹脂は、高密度ポリエチレンである樹脂Aと高密度ポリエチレンである樹脂Bの混合樹脂に、化学発泡剤を添加したものである。
前記高密度ポリエチレンである樹脂Aは、長鎖分岐構造を有し、比重が0.95〜0.96、メルトフローレイト(MFR)が3〜7g/10分、溶融張力が100〜250mNのものである。なお、本発明における高密度ポリエチレンである樹脂A、Bの比重はJIS K7112、メルトフローレイト(MFR)はJIS K7210(試験温度190℃、21.18N)に準じて測定された値である。
【0016】
また、本発明における溶融張力は、190℃におけるものであり、株式会社東洋精機製作所製のキャピログラフ1Dによって以下のようにして測定される。バレル(径9.55mm、長さ350mm)及びキャピラリー(押出ダイ、径2mm、長さ10mm)を190℃に加熱し、試料(樹脂)の必要量をバレル内に押し込み、5分間以上放置して試料を溶融させた後、ピストンを一定速度20mm/分で押し込んでキャピラリーから溶融樹脂を糸状に押し出す。押し出された糸状樹脂をキャピラリーから50cm下方に位置する直径40mmの張力測定用プーリーに掛け、初期値5m/分以下の速度で回転する巻き取りローラに糸状樹脂の先端を挟み込んで糸状樹脂の巻き取りを行い、その際、巻き取り速度を1分当たり10m/分で加速し、糸状樹脂が切断した際の巻き取り速度を記録する。同様の測定を5回以上繰り返し、切断した際の巻き取り速度の平均値を破断巻き取り速度に決定する。
【0017】
次に、前記と同様にして糸状樹脂の押し出しを行い、押し出された糸状樹脂の先端を直径40mmの張力測定用プーリーに掛け、初期値5m/分以下の速度で回転する巻き取りローラに糸状樹脂の先端を挟み込んで糸状樹脂の巻き取りを行う。その際、巻き取り速度を1分当たり10m/分で加速し、前記破断巻き取り速度の70%に到達した時点で巻き取り速度を一定にして張力を測定し、張力の上限ピークと下限ピークをそれぞれ5点以上記録して平均値を溶融張力の測定値とする。同様にして溶融張力を繰り返し測定し、5個以上の溶融張力の測定値を取得し、それらの溶融張力の測定値を平均して溶融張力とする。
【0018】
前記樹脂Aの比重が0.95未満の場合、剛性が低下して良好なダクトが得られなくなり、一方、比重が0.96を超える場合には溶融張力の低下のため、発泡性樹脂が良好に発泡せず、発泡層が得られなくなる。
【0019】
前記樹脂Aの長鎖分岐構造は、13C−NMR測定で検出されるヘキシル基(炭素数6)以上の分岐の数が、1,000個の炭素原子当たり0.01個以上で3個以下の長鎖分岐数を有し、かつ重量平均分子量(Mw)が100,000以上、1,000,000以下が好ましい。分岐数が0.01個未満では発泡層を形成することができず、一方、3個を超えると耐熱性及び剛性に劣るようになる。重量平均分子量が100,000未満では、形状保持が困難となり、1,000,000より大きいと、成形が困難になる。また、前記樹脂Aのメルトフローレイト(MFR)が3〜7g/10分の範囲から外れる場合、及び溶融張力が100〜250mNの範囲から外れる場合、良好な発泡層が得られなくなる。さらに前記樹脂Aは、曲げ弾性率(JIS K6922)が700MPa以上のものが好ましい。前記樹脂Aの曲げ弾性率を700MPa以上とすることにより、剛性が一層良好になる。
【0020】
前記高密度ポリエチレンである樹脂Bは、メルトフローレイト(MFR)が0.3〜1.0g/10分の高密度ポリエチレンが用いられる。前記樹脂Bのメルトフローレイトが0.3g/10分未満の場合には、流動性が低下して成形困難となり、一方、1.0g/10分を超えると流動性が過剰となって成形困難になる。また、前記樹脂Bの比重は、0.95〜0.98が好ましい。0.95未満の場合には、剛性が低下するため良好なダクトが得られなくなり、一方、密度が0.98を超える場合には硬くて脆くなり、良好なダクトが得られなくなる。
【0021】
前記樹脂Bの重量平均分子量(Mw)は100,000以上、1,000,000以下が好ましい。前記樹脂Bの重量平均分子量(Mw)が100,000未満の場合には、形状保持が困難となり、一方1,000,000を超える場合には成形困難となる。前記樹脂Bは、曲げ弾性率(JIS K6922)が1000MPa以上のものが好ましく、前記曲げ弾性率とすれば、剛性が良好なダクトが得られる。また、前記樹脂Bは、13C−NMR測定で検出されるヘキシル基(炭素数6)以上の分岐が炭素原子1,000個当たり0.01個未満のものであることが好ましい。前記樹脂Bをヘキシル基(炭素数6)以上の分岐が炭素原子1,000個当たり0.01個未満のものとしたことにより、良好な成形性と十分な軽量性を両立し、自動車用ダクトに必要な剛性と耐熱性が得られる。
【0022】
前記樹脂Aと樹脂Bの混合割合は、混合樹脂100重量部において樹脂Aが60〜30重量部、樹脂Bが40〜70重量部である。前記樹脂Aが60重量部を超える場合、すなわち樹脂Bが40重量部未満の場合には、ブロー成形時に発泡パリソンの形状保持が困難になって良好なダクトが得られない。一方、前記樹脂Aが30重量部未満、すなわち樹脂Bが70重量部を超える場合には、化学発泡剤から発生した発泡ガスの保持力が低下し、密度の高いダクトとなり、ダクトの軽量性が損なわれるようになる。このように、前記樹脂Aと樹脂Bを前記の割合で混合したことにより、樹脂Aの単独あるいは樹脂Bの単独では実現できない、良好な成形性と十分な軽量性を両立させることができる。
【0023】
前記化学発泡剤は、加熱により分解してガスを発生し、このガスによって樹脂の発泡を行うタイプの発泡剤である。前記化学発泡剤としては、例えば、アゾジカルボンアミド、アゾジカルボン酸バリウム、N,N−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、ジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホニルヒドラジド、トリヒドラジノトリアジン、炭酸亜鉛等を挙げることができる。前記化学発泡剤の量は、前記樹脂Aと樹脂Bからなる混合樹脂100重量部に対して0.3〜3重量部である。0.3重量部未満の場合には発泡が不十分となってダクトの軽量性が損なわれ、一方、3重量部を超える場合には、ブロー成形機から発泡ガス漏れを起こし、ダクトの軽量性が損なわれるようになる。なお、前記化学発泡剤は、発泡核剤を含む化学発泡剤を、前記樹脂Aと樹脂Bの混合樹脂100重量部に化学発泡剤中の発泡成分含有量が0.3〜3重量部となるように添加することが好ましい。
【0024】
なお、前記樹脂Aと樹脂Bからなる混合樹脂には、前記化学発泡剤の他に適宜の添加剤を配合することができる。前記添加剤としては、耐熱安定剤、耐候安定剤、帯電防止剤、滑剤、顔料、核剤等を挙げることができる。また、発泡パリソン形成時の押出機における前記発泡性樹脂の押出温度は、前記化学発泡剤が発泡する温度とされる。前記化学発泡剤が重曹系化学発泡剤の場合には、150〜190℃が好ましい。150℃より低い場合は重曹系化学発泡剤から発泡ガスが発生せず、一方、190℃を超える場合には発泡核剤が分解し始めるため、微細なセルができなくなり、良好な発泡層を形成することができなくなる。
【0025】
前記自動車用ダクトの製造は、次のようにして行われる。まず、押出機のシリンダー内において、前記樹脂Aと樹脂Bを60〜30重量部:40〜70重量部の割合で溶融混練した混合樹脂100重量部に、前記化学発泡剤を0.3〜3重量部添加して調製した発泡性樹脂を、図2に示すように、押出機の環状ダイ21から押し出して発泡層を有する筒状体からなる発泡パリソンPを形成し、該発泡パリソンPをチラーによる冷却構造を有する金型30の分割型31、32間に配置する。次に前記金型30を型締めし、型内の発泡パリソンP内に空気を吹き込んで、前記発泡パリソンPを金型30の内面に押し当てる。そして、冷却した後に前記金型30を開いて、成形品を金型30から取り出し、トリミングで不要部分を除去して前記自動車用ダクトを得る。前記発泡パリソンPの押出時における前記発泡性樹脂の温度は、前記化学発泡剤が発泡する温度とされる。また、冷却のためのチラーは水温を10℃設定とする。
【実施例】
【0026】
・実施例1
樹脂A1として高密度ポリエチレン、東ソー(株)、品番08S55Aを用い、また樹脂B1として高密度ポリエチレン、東ソー(株)、品番8500Aを用い、樹脂A1と樹脂B1を30重量部:70重量部として押出機のシリンダー内で溶融混練し、樹脂A1と樹脂B1からなる混合樹脂100重量部に化学発泡剤として永和化成工業(株)、品番EE405Fを2重量部(発泡成分含有量0.8重量部相当)添加して170〜190℃で押出混練を行い、環状ダイから溶融した発泡性樹脂を押し出すことにより発泡層を有する発泡パリソンを形成した。なお、実施例1の化学発泡剤における発泡成分含有量(発泡成分換算量)とは、発泡剤から樹脂成分を除いた値であり、本発明における化学発泡剤の含有量に相当する。続いて、ダクト形状の内面を有する金型に発泡パリソンを収めて発泡パリソン内に空気を吹き込み、発泡パリソンを金型の型面に押し当てて、一般肉厚を1.5mm±0.5mmとなるように成形し、チラーを使用した冷却後に金型を開いて成形品を取り出し、トリミングで不要部分を除去して実施例1のダクトを得た。
【0027】
・実施例2
樹脂A1と樹脂B1の割合を50重量部:50重量部とした以外は実施例1と同様にして実施例2のダクトを得た。
・実施例3
樹脂A1と樹脂B1の割合を60重量部:40重量部とした以外は実施例1と同様にして実施例3のダクトを得た。
【0028】
・実施例4
実施例1の樹脂B1に代えて、樹脂B2;高密度ポリエチレン、東ソー(株)、品番8300Aを用い、樹脂A1と樹脂B2を30重量部:70重量部とした以外は実施例1と同様にして実施例4のダクトを得た。
・実施例5
実施例1の樹脂B1に代えて、樹脂B3;高密度ポリエチレン、旭化成ケミカルズ(株)、品番B870を用い、樹脂A1と樹脂B3を30重量部:70重量部とした以外は実施例1と同様にして実施例5のダクトを得た。
・実施例6
実施例1の樹脂B1に代えて、樹脂B4;高密度ポリエチレン、(株)プライムポリマー、品番3600Fを用い、樹脂A1と樹脂B4を30重量部:70重量部とした以外は実施例1と同様にして実施例6のダクトを得た。
【0029】
・比較例1
実施例1における樹脂A1及びB1を用い、発泡剤を使用しない状態において、肉厚が薄くなるように成形し、軽量な非発泡のダクトを比較例1のダクトとして得た。
・比較例2
実施例1における樹脂A1のみを用いた以外は実施例1と同様にして比較例2のダクトを得た。
・比較例3
実施例1における樹脂B1のみを用いた以外は実施例1と同様にして比較例3のダクトを得た。
【0030】
・比較例4
実施例2における発泡剤の添加量を0.5重量部(発泡成分含有量0.2重量部相当)とした以外は実施例2と同様にして比較例4のダクトを得た。
・比較例5
実施例2における発泡剤の添加量を8.0重量部(発泡成分含有量3.2重量部相当)とした以外は実施例2と同様にして比較例5のダクトを得た。
・比較例6
樹脂A1と樹脂B1の割合を70重量部:30重量部とした以外は実施例1と同様にして比較例6のダクトを得た。
【0031】
・比較例7
樹脂A1と樹脂B1の割合を20重量部:80重量部とした以外は実施例1と同様にして比較例7のダクトを得た。
・比較例8
実施例1の樹脂A1に代えて、樹脂A2;低密度ポリエチレン、東ソー(株)、品番225を用い、樹脂A2と樹脂B1の割合を50重量部:50重量部とした以外は実施例1と同様にして比較例8のダクトを得た。
・比較例9
実施例1の樹脂B1に代えて、樹脂B5;高密度ポリエチレン、日本ポリエチレン(株)、品番HS451を用い、樹脂A1と樹脂B5の割合を60重量部:40重量部とした以外は実施例1と同様にして比較例9のダクトを得た。
・比較例10
実施例1の樹脂A1に代えて樹脂A3;ポリプロピレン、BOREALIS製、品番WB260HMSを用い、樹脂B1に代えて樹脂B6;ポリプロピレン、サンアロマー(株)、品番PB170Aを用い、樹脂A3と樹脂B6の割合を60重量部:40重量部とした以外は実施例1と同様にして比較例10のダクトを得た。
・比較例11
比較例10の樹脂A3と樹脂B6の割合を30重量部:70重量部とした以外は実施例1と同様にして比較例11のダクトを得た。
【0032】
前記の各実施例及び比較例で使用したポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)の構造及び物性は、表1に示す通りである。なお、表1における「長鎖分岐構造C6以上」の欄が「有り」は、ポリエチレン及びポリプロピレンにおけるヘキシル基(炭素数6)以上の分岐の数が、1,000個の炭素原子当たり0.01個以上で3個以下の長鎖分岐数を有し、かつ重量平均分子量(Mw)が100,000以上、1,000,000以下であることを示し、一方、「長鎖分岐構造C6以上」の欄が「無し」は、長鎖分岐数が1,000個の炭素原子数当たり0.01個未満であり、かつ重量平均分子量(Mw)が100,000以上1,000,000以下であることを示す。各実施例及び比較例における配合内容を表2にまとめて示す。また、表2における「An」は、対応する実施例あるいは比較例において使用されている「A1」〜「A3」の樹脂を示し、一方、「Bn」は、対応する実施例あるいは比較例において使用されている「B1」〜「B6」の樹脂を示す。
【0033】
【表1】

【0034】
【表2】

【0035】
前記各実施例及び比較例のダクトに対して、比重、発泡倍率、製品重量、耐熱性、低温衝撃性、剛性について測定し、測定結果から成形性、耐熱性、低温衝撃性、組付性について評価、その評価に基づいて総合評価を行った。
【0036】
比重はJIS K7222に準じて測定した。比重の測定箇所は、n=8以上として最大値と最小値を除いて平均値を算出した。発泡倍率は未発泡状態の比重と発泡状態の比重により算出した。耐熱性は実車取付相当の治具にダクトを固定し、80℃の槽内に400時間保管してダクトの開口部の寸法変化率を測定した。低温衝撃性は、実車取付相当の治具にダクトを固定し、−30℃の雰囲気の槽内に2時間放置した後、0.5kgの鉄球を高さを変化させてダクトの上部一般面に落下させ、亀裂、いちじるしい変形などを生じた破壊高さを記録して次の式で破壊強度を算出した。
破壊強度(J)=0.5kg×破壊高さ(m)×9.8
【0037】
剛性は、実車取付相当の治具にダクトを固定し、23℃の雰囲気中においてφ2.0のR端子をヘッドスピード10mm/分でダクトの上部一般面に衝突させて荷重49Nに達した時のダクトの上部一般面に対して5箇所以上で変形量を測定し、最大値、最小値を除いた平均値を変形量(荷重歪)とした。
【0038】
成形性の評価は、ダクトの形状及び外観の目視観察結果が問題無く、且つ比重が0.75以下の場合に◎、形状及び外観に問題無く、且つ比重が0.75より大の場合に×、形状不良の場合に××とした。耐熱性の評価は、寸法変化率が10%以下の場合に○、10%を超える場合に×とした。低温衝撃性の評価は、破壊強度が2.0J以上の場合に○、2.0J未満の場合に×とした。組付性は、剛性試験の変形量(平均値)が10mm以内の場合に○、10mmを超える場合を×とした。総合評価は、全ての評価が○の場合に○(合格)、一つでも×がある場合に×(不合格)とした。測定結果及び評価結果は表3に示すとおりである。
【0039】
【表3】

【0040】
表3に示すように、各実施例は、成形性、耐熱性、低温衝撃性、組付性の何れについても良好なものであり、総合評価が○(合格)となった。
一方、比較例1は、非発泡のまま製品重量を実施例1相当に低減させたものであり、製品の肉厚が薄くなることによって耐熱性及び剛性の低下が見られ、自動車用ダクトとして不向きであった。
比較例2は、樹脂A1単体からなるものであり、ブロー成形時に著しいドローダウンを生じて成形が困難になった。
比較例3は、樹脂B1単体からなるものであり、成形時に発泡ガスを保持できず、十分な軽量効果が得られなかった。
【0041】
比較例4は、発泡剤が0.3重量部未満であったため、発泡が不足し十分な軽量効果が得られなかった。
比較例5は、発泡剤が3.0重量部より多かったため、成形時にガス漏れを生じて発泡剤添加量に見合う軽量効果が得られなかった。
比較例6は、樹脂A1が60重量部より多かったため、ブロー成形時にドローダウンを生じて成形が困難になった。
比較例7は、樹脂A1が30重量部より少なかったため、成形時に発泡ガスを保持できず、十分な軽量効果が得られなかった。
【0042】
比較例8は、使用した樹脂A2が長鎖分岐を有しているが、比重0.95未満であるため、耐熱性、剛性が不足し、自動車用ダクトとしては不向きであった。
比較例9は、使用した樹脂B5のMFRが1.0g/10分より大であるため、ブロー成形時にドローダウンを生じて成形が困難になった。
比較例10及び11は、使用した樹脂A3が高溶融張力ポリプロピレンであるため、発泡による軽量効果は見られたが、低温衝撃性が低く、自動車用ダクトとしては不向きであった。
【符号の説明】
【0043】
10 ダクト
21 環状ダイ
30 金型
31、32 金型の分割型
P 発泡パリソン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡性樹脂から形成した発泡層を有する筒状体をブロー成形した自動車用ダクトにおいて、
前記発泡性樹脂は、長鎖分岐構造を有し、比重0.95〜0.96、メルトフローレイト(MFR)3〜7g/10分、溶融張力100〜250mNの高密度ポリエチレンである樹脂Aを60〜30重量部と、メルトフローレイト(MFR)0.3〜1.0g/10分の高密度ポリエチレンである樹脂Bを40〜70重量部混合した混合樹脂100重量部に、化学発泡剤を0.3〜3重量部添加したものからなることを特徴とする自動車用ダクト。
【請求項2】
前記高密度ポリエチレンである樹脂Bの比重が0.95〜0.98であることを特徴とする請求項1に記載の自動車用ダクト。
【請求項3】
発泡性樹脂を押出機の環状ダイから押し出して発泡層を有する筒状体を形成し、前記発泡層を有する筒状体を金型に収容してブロー成形することにより自動車用ダクトを製造する方法において、
前記発泡性樹脂は、長鎖分岐構造を有し、比重0.95〜0.96、メルトフローレイト(MFR)3〜7g/10分、溶融張力100〜250mNの高密度ポリエチレンである樹脂Aを60〜30重量部と、比重0.95〜0.98、メルトフローレイト(MFR)0.3〜1.0g/10分の高密度ポリエチレンである樹脂Bを40〜70重量部混合した混合樹脂100重量部に、化学発泡剤を0.3〜3重量部添加したものからなることを特徴とする自動車用ダクトの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−194700(P2011−194700A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−63625(P2010−63625)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】