説明

自動車用デフォッガ制御装置

【課題】効率的に曇り除去及び防止を行うことができる自動車用デフォッガ制御装置を提供する。
【解決手段】ウィンドウガラスに設けられた熱線式ヒータ10に対し電源11とスイッチング部12とを直列接続し、少なくとも二つのデューティ比を時間で切り替えて、スイッチング部12に制御信号として出力するデューティ駆動回路15Dと、デューティ駆動回路15Dに対してデューティ比の切り替えタイミングを計るためのタイマー15Cと、外気温度センサー17、内気温度センサー18による各検出信号からデューティ比の切り替え時間を決定する切替時間決定部15Bとを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車用デフォッガ制御装置に関し、特に、温度管理と時間管理をすることで最適な晴れ性能を確保する自動車用デフォッガ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両におけるウィンドウガラスなどの曇りを除去するために、デフォッガ制御装置が車両に搭載されている。デフォッガ制御装置では、ウィンドウガラスに熱線式ヒータを取り付け、時間的に制御しながら熱線に電流を流している。具体的には、熱線式ヒータをリレーを介して電源に接続する一方、そのリレーの両側にはそれぞれスイッチ、タイマー回路が接続されて、デフォッガ制御装置が構成されている。スイッチをONにすると、リレーが動作して熱線式ヒータに電源から電気エネルギーが供給されると同時にタイマー回路が動作する。そして、所定時間経過するとタイマー回路からの信号によりリレーがOFFの状態となり、電源から熱線式ヒータに電流が供給されなくなる。このデフォッガ制御装置では、熱線式ヒータに一定の電流がタイマー時間だけ流れる。そのため、消費電力が大きい。
【0003】
そこで、特許文献1では、熱線式ヒータへの通電をデューティ制御することで、ガラスの曇りを速やかに除去しかつガラスの曇りの再発を防止することが言及されており、通電開始時から第1の所定時間まではデューティファクタを100%とし、第1の所定時間から第2の所定時間まではデューティファクタを100%よりも小さいα%とし、さらに、第2の所定時間以降はデューティファクタをα%よりも小さいβ%としている。
【0004】
デフォッガ制御装置としては上記のほか、ガラスの結露条件を踏まえて熱線式ヒータへの通電制御を行える車両用デフォッガ制御装置(特許文献2)、外気温や内外温度差や車速あるいは外気温と氷結温度の関係に応じて熱線式ヒータへの通電時間を可変にする車両用デフォッガ制御装置(特許文献3)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−155313号公報
【特許文献2】特開平5−193341号公報
【特許文献3】特開2004−210153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されている装置では、ドライバーにより操作スイッチがON状態にされると、熱線式ヒータには100%のデューティファクタで一定時間だけ通電し、その後α%のデューティファクタで別の一定時間だけ通電される。各デューティファクタの時間は一定であるため、天候状態、昼夜を問わず、熱線式ヒータへの通電タイムチャートは同じとなる。これでは熱線式ヒータによるバッテリの消費が一律に定まっているため、エネルギーを浪費するだけでなく地球温暖化への配慮が十分なされていない。
【0007】
そこで、本発明では、効率的に曇り除去及び防止を行うことができる自動車用デフォッガ制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、ウィンドウガラスに設けられた熱線式ヒータに対し電源とスイッチング部とが直列接続された自動車用デフォッガ制御装置であって、デューティ比を時間で切り替えて、スイッチング部に制御信号として出力するデューティ駆動回路と、デューティ駆動回路に対してデューティ比の切り替えタイミングを計るためのタイマーと、外気温度センサー、内気温度センサーによる各検出信号からデューティ比の切り替え時間を決定する切替時間決定部と、を備えたことを特徴とするものである。
【0009】
上記構成によれば、熱線式ヒータの通電時間が外気温度、内気温度により可変に決めることができるため、天候状態や昼夜何れかに応じて通電タイミングを制御することができる。
【0010】
上記構成において、切替時間決定部は、外気温度センサー及び内気温度センサーのほかに、日射センサー、車速センサーの何れかのセンサーからの検出信号に基づいて、デューティ比の切り替え時間を決定することが好ましい。
【0011】
上記構成によれば、ユーザの置かれている環境に対応して消費電力を低減することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、熱線式ヒータに供給する時間及び一定期間当たりの熱量をコントロールすることができるので、ウィンドウガラスの曇りを防止すると共に、エネルギー消費の少ない自動車用デフォッガ制御装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る自動車用デフォッガ制御装置の機能ブロック図である。
【図2】デューティ駆動回路からスイッチング部に流れる駆動信号のタイムチャートである。
【図3】図1に示す切替時間決定部に格納されている指標、判断プログラムを説明するための図であり、(A)は第1の継続時間t1と温度との関係、(B)は第2の継続時間t2と温度との関係、(C)は第1の継続時間t1に対する第2の継続時間t2の比率t2/t1と温度との関係を示している。
【図4】自動車用デフォッガ制御装置の主要な動作を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明するが、本発明は以下の説明に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された範囲及びそれと均等な範囲にも及ぶことはいうまでもない。
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係る自動車用デフォッガ制御装置の機能ブロック図である。本発明の実施形態に係る自動車用デフォッガ制御装置1は、車両のウィンドウガラスに設けた熱線式ヒータ10への通電量を制御するものである。熱線式ヒータ10は電源11とスイッチング部12とが直列接続されており、スイッチング部12の開閉を制御部15で制御して、熱線式ヒータ10の通電制御に応じて発熱量を調整するものである。
【0016】
制御部15は、外部信号処理部15Aと切替時間決定部15Bとタイマー15Cとでデューティ駆動回路15Dとを有している。制御部15には、ユーザが熱線式ヒータの加熱を開始するために操作するスイッチ16と、車体に取り付けられている外気温度センサー17、室内に取り付けられている内気温度センサー18、日射センサー19,車速センサー20などが接続されている。
【0017】
これらのセンサー及び制御部15はスイッチング部12及び熱線式ヒータ10と共にエアコンECU(Electric Control Unit)その他のECUを構成している。このECUには前述以外の各種センサーからの検出信号などが入力される。
【0018】
制御部15の構成について更に詳細に説明する。外部信号処理部15Aは、制御部15への信号を取り出したり、必要なタイミングでサンプリングして切替時間決定部15Bに出力する。デューティ駆動回路15Dは、その出力信号、即ち制御信号により、スイッチング部12、例えばトランジスターのゲート電極への電圧を制御するものである。
【0019】
図2は、デューティ駆動回路15Dからスイッチング部12に流れる電圧のタイムチャートである。横軸は時間であり、縦軸はスイッチング部12に加えられる電圧の大きさを示している。デューティ駆動回路15Dでは、図2に流れるように、時間t1の間は、それより短い周期τ1においてパルス幅をそのパルス周期τで割った比(デューティ比)がα%例えば100%に設定されているため、電圧がスイッチング部12に連続して印加される。そのため、時間tが0〜t1では、熱線式ヒータ10に常に電流が流れ、加熱されている。
【0020】
デューティ駆動回路15Dは、時間t2の間では、それよりも短い周期τ1においてパルス幅をその周期τで割った比がβ%に設定されているため、電圧がスイッチング部12に連続して印加されておらず、離散的に印加される。そのため、時間がt1〜t1+t2では、熱線式ヒータ10に電流が流れたり流れなったりするので、加熱空冷が繰り返される。
【0021】
タイマー15Cは、デューティ駆動回路15Dにおけるデューティ比の切り替えタイミングを計る手段である。タイマー15Cはスイッチ16がON状態になってから所定の時間t1経過すると、デューティ駆動回路15Dに対して時間経過を伝え、デューティ比を例えばα%からβ%に変化させる。
【0022】
切替時間決定部15Bは、外部信号処理部15Aを介して制御部15に入力された、外気温度センサー17、内気温度センサー18、日射センサー19及び車速センサー20の検出データに基づいて、デューティ比の切り替えタイミングを計画する手段である。
【0023】
切替時間決定部15Bは、例えば外気温度センサー17と内気温度センサー18との差分に基づいて、図2に示す時間t1と時間t2との比を設定する。そのため、切替時間決定部15Bには、各センサーの値に基づいて時間t1と時間t2との比及び時間t1と時間t2との総和時間tとを求めるための指標が格納されている。もちろん、総和時間tは常に一定としておいてもよい。時間はt1とt2の二種類である必要はなく、三種類以上であってもよい。
【0024】
切替時間決定部15Bは、上述以外に、外気温度センサー17及び内気温度センサー18のほかに、日射センサー19及び車速センサー20の検知データに基づいて、切替時間決定部15B内に格納されている判断プログラムにより、内外の温度差だけでなく、昼間なのか夜間なのか、又は高速運転中であるのかそれとも低速若しくは停車中であるのかにより、時間t1と時間t2との比及びその総和時間tとを求める。
【0025】
図3は切替時間決定部15Bに格納されている指標、判断プログラムを説明するための図であり、(A)は第1の継続時間t1と温度との関係、(B)は第2の継続時間t2と温度との関係、(C)は第1の継続時間t1に対する第2の継続時間t2の比率t2/t1と温度との関係を示している。各図の実線は日射センサー19により照度が規定値より大きく昼間であると判断された場合、点線は日射センサー19により照度が規定値以下で夜間と判断された場合である。
【0026】
第1の継続時間t1については、図3(A)に示すように外気温又は内気温に応じて次のように設定する。昼間では、温度が低い(例えば−5℃以下)場合、t1=taとし、温度が高い(例えば5℃以上)場合、t1=tbとし、その間は温度に比例してt1をtaからtbまで直線的に減少するような値としてt1を決定する。夜間では、第1の継続時間t1をtaからtbに移行する温度を、例えば図3(A)に点線で示すように0℃から10℃とする。
【0027】
第2の継続時間t2については、図3(B)に示すように外気温又は内気温に応じて次のように設定する。昼間では、温度が低い(例えば−5℃以下)場合、t2=tcとし、温度が高い(例えば15℃以上)場合、t2=0とし、その間では、氷点下の温度では温度0℃においてt2がtdとなる割合で増加するような値とし、温度0℃を超えると温度0℃ではt2をtdとし温度15℃ではt2がゼロとなるよう温度に対して一定の割合で減少するような値としてt2を決定する。夜間では、第2の継続時間t2をtcから一旦tdまで増加してゼロに減少する略山形波形が、図3(B)に点線で示すように、0℃から20℃の範囲となるようにする。
【0028】
第1の継続時間t1に対する第2の継続時間t2の比率t2/t1は上述のように設定した場合には、図3(C)のようになる。昼間では、温度が−5℃以下と低い場合にはt2/t1の比率を低く一定とし、温度が−5℃から15℃の範囲ではそれよりもt2/t1の比率を高くし、温度が15℃より高いとt2/t1の比率をゼロとする。温度が−5℃から15℃の範囲についてのt2/t1は、約0℃以下では温度上昇に伴いt2/t1の比率が直線的に増加するような値とし、0℃から5℃の近辺では一定の値とし、5℃から15℃までは温度上昇に伴い直線的に減少するような値とする。
【0029】
例えば外気温度と内気温度との差に応じて、内気温度、外気温度の何れかの温度の値を用いて、図3(A)〜(C)の関係から、第1の継続時間t1、第2の継続時間t2及びその比率t2/t1を決定する。
【0030】
図3に示すようなデータが継続時間決定部15Bに格納されていることで第1の継続時間t1、第2の継続時間t2を設定することができる。切替時間決定部15Bに格納されている指標、判断プログラムによる第1の継続時間t1、第2の継続時間t2の設定の仕方については図3に限定されることはなく、自動車が使用される地域等に応じて温度と時間t1,t2の関係を設定することができる。また、図3に示すような関係について、日照の度合いのみならず、車速、湿度などのパラメータにより、第1の継続時間t1、第2の継続時間t2を設定することもできる。
【0031】
次に、自動車用デフォッガ制御装置1のヒータ10による曇り除去及び防止方法について説明する。図4は自動車用デフォッガ制御装置1の主要な動作を示すフロー図である。スイッチ16がONになっている条件下において(STEP1でYes)、外部信号処理部15Aが外気温度センサー17,内気温度センサー18,日射センサー19の各センサーの値を切替時間決定部15Bに出力し、切替時間決定部15Bは第1の継続時間t1と第2の継続時間t2とを決定する。その際、前述したように、切替時間決定部15Bに格納されている各種の指標や判断プログラムが用いられる(STEP2)。
【0032】
切替時間決定部15Bは、STEP2で決定した第1の継続時間t1及び第2の継続時間t2をタイマー15Cにセットする。すると、デューティ駆動回路15Dはタイマー15Cにより第1の継続時間t1となるまで、デューティ比をα%と設定し、スイッチング部13に駆動信号を出力する。その状態では、熱線式ヒータ10にデューティ比αの割合で電流が流れる(STEP3)。
【0033】
第1の継続時間t1が経過すると(STEP4でYes)、デューティ駆動回路15Dはタイマー15Cにより第2の継続時間t2となるまで、デューティ比をβ%に設定して、スイッチング部13に駆動信号を出力する。その状態では、熱線式ヒータ10にデューティ比βの割合で電流が流れる(STEP5)。
【0034】
第2の継続時間t2が経過、即ち時間t1+t2だけ経過すると(STEP6でYes)、タイマー15CがOFFとなり(STEP7)、デューティ駆動回路15Dから電圧が印加されない。それゆえ、熱線式ヒータ10に電流が流れない。
【0035】
以上説明したように、本発明の実施形態では、熱線式ヒータに流す電流の平均的な比率を外気温度、内気温度、日射状況、車速度に応じて決めるので、その置かれた環境下に応じた熱線式ヒータ制御を行うことができ、同時に電源を無駄に労使しないで、省電力にも資する。その点においても、本発明における自動車用デフォッガ制御装置は自動車用熱線式ヒータ装置と呼んでも良い。
【0036】
上述の説明では、ECUに接続されている外気温度センサー、内気温度センサー、日射センサー、車速センサーで周りの環境情報を得ているが、それ以外に、車室内の湿度センサーの検出データをも加味して、熱線式ヒータに流す平均的な電流比率を可変にすることができる。
【符号の説明】
【0037】
1:自動車用デフォッガ制御装置
10:熱線式ヒータ
11:電源
12:スイッチング部
15:制御部
15A:外部信号処理部
15B:切替時間決定部
15C:タイマー
15D:デューティ駆動回路
16:スイッチ
17:外気温度センサー
18:内気温度センサー
19:日射センサー
20:車速センサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウィンドウガラスに設けられた熱線式ヒータに対し電源とスイッチング部とが直列接続された自動車用デフォッガ制御装置であって、
少なくとも二つのデューティ比を時間で切り替えて、上記スイッチング部に制御信号として出力するデューティ駆動回路と、
上記デューティ駆動回路に対してデューティ比の切り替えタイミングを計るためのタイマーと、
外気温度センサー、内気温度センサーによる各検出信号から上記デューティ比の切り替え時間を決定する切替時間決定部と、
を備えた、自動車用デフォッガ制御装置。
【請求項2】
前記切替時間決定部は、前記外気温度センサー及び前記内気温度センサーのほかに、日射センサー、車速センサーの何れかのセンサーからの検出信号に基づいて、前記デューティ比の切り替え時間を決定する、請求項1に記載の自動車用デフォッガ制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−105279(P2011−105279A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−265696(P2009−265696)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【出願人】(000157083)関東自動車工業株式会社 (1,164)
【Fターム(参考)】