説明

自動車用ドアロック装置

【課題】自動車用ドアロック装置において、排水口からの雨水浸入を阻止する。
【解決手段】カバー7は、垂直面にあって、カバー7と補助カバー19間に浸入した雨水をカバー7外に排出可能な排水口745、746を有する。ハウジング6は、排水口745、746の側方に近接して対向する庇部62を有する。庇部62の下端は、排水口745、746よりも下方へ延出する。これにより、雨水を排水口745、746から排出することができると共に、排水口745、746から逆に浸入することを阻止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用ドアロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用ドアロック装置において、合成樹脂製のハウジング内に操作レバーを配置すると共に、操作レバーの連結部をハウジングに設けた開口から露呈させ、この操作レバーの連結部にボーデンケーブル等の操作力伝達部材を連結した後に、ハウジングの下部に設けた補助カバーをもってハウジングの開口を閉塞するようになっている。さらに、ハウジングの開口下部または補助カバーの下部に、ハウジング内に浸入した雨水をハウジング外へ排出するための排水口が形成される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−129813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載されている自動車用ドアロック装置においては、ハウジング内に浸入した雨水をハウジング外に排出するための排水口がハウジングの下部に設けられているため、ハウジングの表面を伝わって垂れてくる雨水やドア内で跳ね上がった雨水が排水口から逆にハウジング内に浸入する虞がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑み、排水口からの雨水浸入を阻止可能にした自動車用ドアロック装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によると、上記課題は、次のようにして解決される。
(1)ストライカと係合することによってドアを閉鎖状態に保持する自動車用ドアロック装置において、前記ストライカと係合可能な噛合機構を収容したボディと、前記ボディに固定されるハウジングと、前記ハウジングに固定され前記ハウジングの側面を閉塞するカバーと、前記ハウジングと前記カバー間に配置され、操作装置の操作力を伝達可能な操作力伝達部材が連結される連結部を有する操作レバーと、前記操作レバーの前記連結部に前記操作力伝達部材を連結した後、前記連結部及び前記操作力伝達部材の端部を閉塞可能な補助カバーと、前記ハウジングまたは前記カバーに設けられ、前記ハウジングと前記カバーとの間または前記カバーと前記補助カバーとの間に浸入した雨水を排出可能な排水口と、前記ハウジングに設けられ、前記排水口の排出側にあって、前記排水口に対向して近接する庇部とを備えることを特徴とする。
【0007】
(2)上記(2)において、前記操作力伝達部材は、アウタチューブ内にインナケーブルが挿通されてなるボーデンケーブルであり、前記アウタチューブの外周は、前記ハウジングと前記補助カバー間または前記カバーと前記補助カバー間にラビリンス構造をもって固定される。
【0008】
(3)上記(1)または(2)において、前記排水口を、側方が開口するように前記ハウジングまたは前記カバーの垂直面に設け、前記庇部を、前記排水口の側方に近接して対向するように前記ハウジングの垂直面に設ける。
【0009】
(4)上記(1)または(2)において、前記排水口を、下方が開口するように前記ハウジングまたは前記カバーの底部に設け、前記庇部を、前記排水口の下方に近接して対向するように前記ハウジングの下部に設ける。
【0010】
(5)ストライカと係合することによってドアを閉鎖状態に保持する自動車用ドアロック装置において、前記ストライカと係合可能な噛合機構を収容したボディと、前記ボディに固定されるハウジングと、前記ハウジングに固定され前記ハウジングの側面を閉塞するカバーと、前記ハウジングと前記カバー間に配置され、操作装置の操作力を伝達可能な操作力伝達部材が連結される連結部を有する操作レバーと、前記ハウジングに設けられ、前記ハウジングと前記カバーとの間に浸入した雨水を排出可能な排水口と、前記ハウジングに設けられ、前記排水口の排出側にあって、前記排水口に対向して近接する庇部とを備えることを特徴とする。
【0011】
(6)上記(5)において、前記操作力伝達部材は、アウタチューブ内にインナケーブルが挿通されてなるボーデンケーブルであり、前記アウタチューブの外周は、前記ハウジングと前記カバー間にラビリンス構造をもって固定される。
【0012】
(7)上記(5)または(6)において、前記排水口を、側方が開口するように前記ハウジングの垂直面に設け、前記庇部を、前記排水口の側方に近接して対向するように前記ハウジングの垂直面に設ける。
【0013】
(8)上記(5)または(6)において、前記排水口を、下方が開口するように前記ハウジングの底部に設け、前記庇部を、前記排水口の下方に近接して対向するように前記ハウジングの下部に設ける。
【0014】
(9)上記(3)または(7)において、前記庇部の下端は、前記排水口よりも下方へ延出する。
【0015】
(10)上記(9)において、前記庇部または前記庇部に対向する面の少なくともいずれ一方に、前記排水口に近接した位置から他方へ向けて突出し、かつ上方へ延出する外側壁部を設ける。
【発明の効果】
【0016】
本発明の車両用ドアロック装置によると、内部に浸入した雨水を排出可能な排水口に近接して対向する庇部をハウジングに設けたことによって、雨水を排水口からの排出することができると共に、排水口からの雨水浸入を阻止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係わる第1実施形態のドアロック装置の正面図である。
【図2】同じく、図1において左方から見たドアロック装置の側面図である。
【図3】補助カバーを開けた状態のドアロック装置の正面図である。
【図4】補助カバーを開けた状態のドアロック装置の背面図である。
【図5】正面斜め方向から見たドアロック装置の分解斜視図である。
【図6】背面斜め方向から見たドアロック装置の分解斜視図である。
【図7】操作ユニットの正面図である。
【図8】カバーの背面図である。
【図9】カバーの要部の拡大斜視図である。
【図10】カバーの要部の拡大正面図である。
【図11】ハウジング及びカバーの要部の拡大斜視図である。
【図12】ハウジングの要部の拡大正面図である。
【図13】図1におけるA−A線断面拡大図である。
【図14】図1におけるB−B線断面拡大図である。
【図15】本発明に係わる第2実施形態の補助カバーを開けた状態のドアロック装置の正面図である。
【図16】同じく、背面斜め方向から見たドアロック装置の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の第1実施形態を図1〜14に基づいて説明する。なお、以下の説明において、図1において左方を自動車の前方とし、同じく右方を後方とする。また、図2において左側を車外側とし、右側を車内側とする。
【0019】
ドアロック装置1は、自動車のフロントドア(以下、ドアと記す)内の後端部に取り付けられ、ドアを閉鎖状態に保持するための噛合ユニット2と、噛合ユニット2に取り付けられる操作ユニット3とを備える。
【0020】
図5、6に示すように、噛合ユニット2は、ドア内にボルト(図示略)により固定される合成樹脂製のボディ4を備え、ボディ4内には、車体側のストライカ(図示略)と係合可能なラッチ5(図5参照)及び当該ラッチ5に係合可能なラチェット(図示略)を含む噛合機構が設けられ、ドアが閉じられると、ラッチ5がストライカに噛合すると共に、ラチェットがラッチ5に係合することによってドアを閉鎖状態に保持する。なお、噛合機構は公知の構造であるので、詳細説明は省略する。
【0021】
同じく図5、6に示すように、操作ユニット3は、ボディ4に固定される合成樹脂製のハウジング6と、ハウジング6に固定されハウジング6の後述の作動要素配置領域部61を閉塞する合成樹脂製のカバー7とを備え、ハウジング6の作動要素配置領域部61とカバー7間の収容空間には、各種作動要素が設けられる。
【0022】
図5〜7に示すように、ハウジング6は、各種作動要素が配置され車内側を向く前述の作動要素配置領域部61と、作動要素配置領域部61の後部にあって、ボディ4の前面、上、下面及び車外側面を覆う後方を向くボディ覆い部63とを一体的に形成し、作動要素配置領域部61の前側下部には、雨水が後述の排出口745、746からカバー7の後述のケーブル連結領域部74内及び作動要素配置領域部61内への浸入を阻止するための庇部62が連設される。
【0023】
カバー7は、ハウジング6の車内側側面に固定されることによって、ハウジング6の作動要素配置領域部61を車内側から閉塞すると共に、後下がりに傾斜する下端部には、補助カバー19が前後1対のヒンジ部71、71により開閉可能に連結される。
【0024】
各種作動要素としては、図5、7に示すように、第1キーレバー8、第2キーレバー9、連係レバー10、ドアの車内側に設けられる操作装置をなす施解錠操作用のロックノブに操作力伝達部材をなすボーデンケーブル11(図1、3参照)を介して連結される操作レバーをなすロッキングレバー12、オープンリンク13、ドアの車内側に設けられる操作装置をなすドア開扉操作用のインサイドハンドルに操作力伝達部材をなすボーデンケーブル14(図1、3参照)を介して連結される操作レバーをなすインサイドレバー15、正逆回転可能なモータ16、ウォームホイール17、及びドアの車外側に設けられるドア開扉操作用のアウトサイドハンドル(図示略)に連係されるアウトサイドレバー18が含まれる。なお、本実施形態においては、アウトサイドレバー18は、ハウジング6のボディ覆い部63側に支持される。
【0025】
ボーデンケーブル11、14は、撓曲可能なアウタチューブ111、141内に撓曲可能なインナケーブル112、142を軸方向へ摺動自在に挿通されることによってそれぞれ形成される。
【0026】
図7に示すように、第1キーレバー8は、作動要素配置領域部61の最上部にあって、ハウジング6とカバー7間に車内外方向を向く軸回りに回動可能に枢支されると共に、ドアの車外側に設けられるキーシリンダ(図示略)のロック操作に基づいて、図7に示す中立位置からロック方向(図7において反時計方向)へ所定角度回動し、また同じくアンロック操作に基づいて、中立位置からアンロック方向(図7において時計方向)へ所定角度回動する。
【0027】
第2キーレバー9は、第1キーレバー8の下方にあって、ハウジング6とカバー7間に車内外方向を向く軸部615により枢支されると共に、上端部が第1キーレバー8の長孔81に連結される。これにより、第1キーレバー8が中立位置からロック方向及びアンロックへ回動すると、第2キーレバー9は、図7に示す中立位置からロック方向(図7において時計方向)及びアンロック方向(図7において反時計方向)へ所定角度回動する。
【0028】
連係レバー10は、第2キーレバー9と共に軸部615に枢支され、第2キーレバー9のアンロック方向及びロック方向への回動に従動して、図7に示すアンロック位置及びアンロック位置から図7において時計方向へ所定角度回動したロック位置に回動する。
【0029】
ロッキングレバー12は、作動要素配置領域部61の下部にあって、ハウジング6とカバー7間に車内外方向を向く軸部616に枢支されると共に、上端部が連係レバー10に連結され、下端部に設けられる連結部121には、図3に示すようにボーデンケーブル11のインナケーブル112の端末112aが連結される。これにより、キーシリンダがアンロック操作またはロック操作されると、キーシリンダの操作は、第1、2キーレバー8、9及び連係レバー10を介してロッキングレバー12に伝達されて、ロッキングレバー12は、ハウジング6とロッキングレバー12間に設けられるオーバーセンターバネ20の付勢力に抗して図7に示すアンロック位置及びアンロック位置から反時計方向へ所定角度回動したロック位置に回動する。また、ロックノブの操作はボーデンケーブル11のインナケーブル112を介してロッキングレバー12に伝達されて、ロッキングレバー12はアンロック位置及びロック位置へ回動する。
【0030】
ウォームホイール17は、ハウジング6とカバー7間に車内外方向を向く軸部617に枢支されると共に、モータ16の回転軸に止着されたウォーム161に噛合してモータ16の動力により回転する。
【0031】
図7に示すように、ロッキングレバー12がアンロック位置にあるとき、車内に設けられた操作スイッチまたは携帯用の操作スイッチがロック操作された場合には、モータ16の回転によりウォームホイール17が図7において時計方向へ回動することに伴って、ウォームホイール17の一方の回転面に設けられた係合突部(図示略)がロッキングレバー12に対して当接する。これにより、ロッキングレバー12は、アンロック位置からロック位置に移動する。また、ロッキングレバー12がロック位置にあるとき、操作スイッチがアンロック操作された場合には、モータ16の回転によりウォームホイール17が図7において反時計方向へ回動することに伴って、ウォームホイール17の他方の回転面に設けられた係合突部171がロッキングレバー12に対して当接する。これにより、ロッキングレバー12は、ロック位置からアンロック位置に移動する。
【0032】
オープンリンク13は、下端部がアウトサイドレバー18の車内側端部181に前後方向へ揺動可能に連結されると共に、ロッキングレバー12の端部に上下方向へ摺動可能に連結されることにより、ロッキングレバー12のアンロック位置及びロック位置への移動に従動し車内側端部181を中心にアンロック位置(図7に示す位置)及びアンロック位置から反時計方向へ所定角度回動したロック位置に移動する。
【0033】
インサイドレバー15は、作動要素配置領域部61の下部にあって、ハウジング6とカバー7間に車内側へ突出する軸618により枢支されると共に、下部に設けられる連結部151には、ボーデンケーブル14のインナケーブル142の端末142aが連結され(図3参照)、インサイドハンドルの開操作に基づいて、図7に示す位置から時計方向へ所定角度回動する。
【0034】
アウトサイドレバー18は、ハウジング6におけるボディ覆い部63の下部に後方へ突出する軸部619により枢支されると共に、アウトサイドハンドルに伝達部材(図示略)を介して連結され、アウトサイドハンドルの開操作、またはインサイドレバー15の回動に基づいて所定角度回動することによりオープンリンク13を上方へ移動させる。
【0035】
図7に示すように、ロッキングレバー12及びオープンリンク13がアンロック位置にある状態において、インサイドハンドル(またはアウトサイドハンドル)が開操作された場合には、アウトサイドレバー18の回動に基づいてオープンリンク13が上方へ移動することによりラチェットをラッチ5から離脱させてドアの開きを可能にする。
【0036】
また、ロッキングレバー12及びオープンリンク13がロック位置にある状態において、インサイドハンドル(またはアウトサイドハンドル)が開操作された場合には、アウトサイドレバー18の回動に基づいてオープンリンク13が上方へ移動しても、ラチェットがラッチ5に係合した状態に保持されてドアを開けることはできない。
【0037】
次に、ハウジング6及びカバー7について詳細に説明する。
図7に示すように、ハウジング6の作動要素配置領域部61は、各種作動要素が配置される領域で、ハウジング6の上縁、前縁及び下縁に沿って設けられ車内側へ向けて突出する外郭壁部611、612、613に囲まれることにより形成される。ハウジング6内に浸入した雨水は、後下がりに傾斜する下縁の外郭壁部613に沿って前方斜め下方へ流動しハウジング6の前部の下隅部に設けられた排水口64から外部へ排出される。
【0038】
庇部62は、ハウジング6における作動要素配置領域部61外の垂直面下部の前部にあって、カバー7の下部側面、具体的には、カバー7に設けられる後述のケーブル連結領域部74の垂直面に設けられる排水口745、746の排出側に接していない状態(若干の間隙を介した状態)で近接対向し、かつその下端は排水口745、746よりも下方へ延出する。庇部62の前縁には、車内側、すなわちカバー7のケーブル連結領域部74の垂直面に向けて突出し、ケーブル連結領域部74の垂直面に当接可能な壁部621が上下方向へ延設される。
【0039】
図1、3に示すように、カバー7の車内側を向く側面の下部には、車内側へ突出し、かつ後下がりに傾斜する上庇部72及び下庇部73が形成される。カバー7における下庇部73の下方には、ハウジング6の作動要素配置領域部61の下部(ロッキングレバー12の連結部121及びインサイドレバー15の連結部151が配置される領域)を閉塞すると共に、車内側が開口するケーブル連結領域部74が設けられる。
【0040】
主に図10に示すように、ケーブル連結領域部74は、下庇部73、カバー7の下部前縁に沿って設けられ車内側へ突出する上下方向の前壁部75及びカバー7の後下がりに傾斜する下縁に沿って設けられ車内側へ突出する前後方向の下壁部76により囲まれることにより形成され、ケーブル連結領域部74に浸入した雨水を後方へ流動させて後部から排水するように後下がりに傾斜している。
【0041】
主に図3、13、14に示すように、ケーブル連結領域部74の垂直面(ハウジング6における作動要素配置領域部61の下部を閉塞する面)には、車内側へ突出し前壁部75に対峙する上下方向の中間壁部741と、車内側へ突出し中間壁部741に対峙する上下方向の内側壁部742と、ロッキングレバー12の連結部121の移動軌跡に沿う形状の長孔743と、インサイドレバー15の連結部151の移動軌跡に沿う形状の切欠き744と、排水口745、746が設けられる。ケーブル連結領域部74内に浸入した雨水は、後下がりに傾斜する下壁部76により前方へ誘導され、庇部62に対向する排水口745、746から排出される。これにより、ケーブル連結領域部74内に雨水が浸入したとしても、当該雨水の作動要素配置領域部61への浸入を阻止することができる。
【0042】
排水口745、746は、車内外方向へ開口する孔であって、ハウジング6における作動要素配置領域部61に対向しない位置で、かつ庇部62に対して若干の間隙を介して近接対向する位置に設けられる。これにより、庇部62は、排水口745、746の車外側を向く側方を若干の間隙を介して閉塞するため、ケーブル連結領域部74内に浸入した雨水は、庇部62に遮られることなく排水口745、746から外部に排出され、ハウジング6及びカバー7の表面を伝わって流下してくる雨水が排水口745、746からケーブル連結領域部74内へ逆流するようなことを防止できる。
【0043】
主に図4、6に示すように、カバー7におけるケーブル連結領域部74の車外側を向く垂直面(ハウジング6の庇部62に対向する面)には、上下方向へ延出する外側壁部77が設けられる。外側壁部77は、庇部62の壁部621の後面に対向し、かつ排水口745の前部に近接した位置から上方へ延出すると共に、その車外側を向く端縁は、図14に示すように庇部62の対向面(ケーブル連結領域部74の垂直面に対向する面)に隣接(または当接)する。これにより、ハウジング6及びカバー7の表面を伝わって流下してくる雨水が排水口745、746へ向けて流下することは、庇部62の壁部621及びカバー7側の外側壁部77から形成されるラビリンス構造により阻止されるため、雨水が排水口745、746からケーブル連結領域部74内に逆に浸入することは阻止される。
【0044】
ロッキングレバー12の連結部121は、カバー7の長孔743からケーブル連結領域部74内に露出し、インサイドレバー15の連結部151は、カバー7の切欠き744からケーブル連結領域部74内に露出する。ケーブル連結領域部74内に露出した連結部121、151には、ボーデンケーブル11、14のインナーケーブル112、142の端末112a、142aがそれぞれ連結される。
【0045】
補助カバー19は、前述のようにカバー7の下端部にヒンジ部71、71により開閉可能に連結され、ロッキングレバー12の連結部121及びインサイドレバー15の連結部151にボーデンケーブル11、14のインナケーブル112、142の端末112a、142aをそれぞれ連結した後に閉じられることによって、ケーブル連結領域部74を車内側から閉塞する。
【0046】
図13、14に示すように、補助カバー19には、カバー7のケーブル連結領域部74を閉塞した状態において、カバー7の前壁部75と中間壁部741間に位置しケーブル連結領域部74の垂直面へ向けて突出する第1壁部191と、カバー7の中間壁部741と内側壁部742間に位置しケーブル連結領域部74の垂直面へ向けて突出する第2壁部192と、カバー7の前壁部75の斜め前方に対向する前壁部193が設けられる。
【0047】
ボーデンケーブル11、14のインナケーブル112、142の端末112a、142aをロッキングレバー12、インサイドレバー15の連結部121、151にそれぞれ連結した後、補助カバー19を閉じることによって、図13、14に示すように、ボーデンケーブル11、14のアウタチューブ111、141の外周は、カバー7側の前壁部75、中間壁部741、内側壁部742と、補助カバー19側の前壁部193、第1壁部191、第2壁部192間に挟み付けられた状態でカバー7のケーブル連結領域部74に固定される。これにより、ボーデンケーブル11、14のアウタチューブ111、141の外周は、ラビリンス構造をもって、カバー7と補助カバー19間に挟み付けられた状態で固定されるため、アウタチューブ111、141の外周面を伝わって来る雨水がケーブル連結領域部74内の奥部(後部)へ向かって浸入することを効果的に阻止することができる。
【0048】
図15、16は、本発明に係わる第2実施形態を示す。
第2実施形態においては、補助カバー190をハウジング60の下端部に開閉可能に連結した点、この点に伴ってハウジング60及びカバー70の下部の形状を変更した点、第1実施形態の排水口745、746に相当する排水口6001、6002をハウジング60に設けた点、ボーデンケーブル11、14をハウジング60と補助カバー190間に固定した点について第1実施形態と相違し、他の構成については第1実施形態と実質的に同一である。したがって、第1実施形態と実質的に同一部分には、第1実施形態と同一符号を付して説明は省略する。
【0049】
補助カバー190は、ハウジング60の下端部に設けた前後のヒンジ部6003、6003に開閉可能に連結され、ロッキングレバー12及びインサイドレバー15の各連結部121、151にボーデンケーブル11、14のインナケーブル112、142を連結した後に閉じられることによって、各連結部121、151、ボーデンケーブル11、14のアウタチューブ111、141の端末、及びインナケーブル112、142の端末112a、142aを車内側から閉塞する。
【0050】
補助カバー190を閉じた状態においては、ボーデンケーブル11、141のアウタチューブ111、41の外周は、ハウジング60に設けられる前壁部6004(第1実施形態の前壁部75に相当)、中間壁部6005(同じく中間壁部741に相当)、内側壁部6006(同じく内側壁部742に相当)と補助カバー190に設けた前記実施形態と同様の前壁部193、第1壁部191、第2壁部192間に、ラビリンス構造により挟み付けられた状態で、ハウジング60と補助カバー190間に固定される。
【0051】
カバー70は、図16に明示されるように、第1実施形態におけるケーブル連結領域部74を除去した形状である。
【0052】
排水口6001、6002は、ハウジング60の垂直面の下部に設けられる。ハウジング60の下部、すなわち排水口6001、6001の車外側(排出側)に若干の間隙を介して対向する部分には、第1実施形態と同様の庇部6007が設けられる。庇部6007の前縁には、排水口6001、6002が設けられたハウジング60の垂直面へ向けて突出する上下方向の壁部6008(第1実施形態の壁部621に相当)が設けられる。
【0053】
上述により第2実施形態においては、ハウジング60と、カバー70及び補助カバー190間に浸入した雨水は、排水口6001、6002から外部に排出され、ハウジング60及びカバー70の表面を伝わって流下してくる雨水は、庇部6007により遮られ排水口6001、6002からハウジング60内へ逆流するようなことを防止できる。
【0054】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、上記実施形態に対して、次のような種々の変形や変更を施すことが可能である。
【0055】
(i)第1、2実施形態において、補助カバー19,190を廃止し、カバー7、70の下部に補助カバー19、190に相当する部分を一体的に設ける。したがって、この場合は、カバーは、ロッキングレバー12、インサイドレバー15の連結部121、151にボーデンケーブル11、14のインナケーブル112、142を連結した後にハウジングに固定される。また、ボーデンケーブル11、14のアウタチューブ111、141の外周は、ハウジングとカバー間にラビリンス構造をもって固定される。
【0056】
(ii)第1、2実施形態において、排出口(745、746、6001、6002)をハウジング60のまたはカバー7の垂直面に設けることに代えて、ハウジング60またはカバー7の底部に上下方向が開口するように設ける。この場合は、庇部(62、6007)は、排水口の下側(排出側)に若干間隙を介して対向するようにハウジング60またはカバー7に設けられる。
【0057】
(iii)第1実施形態において、カバー7に設けた外側壁部77に代えて、または加えて、庇部62のカバー7に対向する対向面に、カバー7の垂直面に当接可能な上下方向に延出する外側壁部をさらに設ける。
【0058】
(iv)排出口745、746の数を適宜変更する。
【符号の説明】
【0059】
1 ドアロック装置
2 噛合ユニット
3 操作ユニット
4 ボディ
5 ラッチ(噛合機構)
6、60 ハウジング
7、70 カバー
8 第1キーレバー
9 第2キーレバー
10 連係レバー
11 ボーデンケーブル(操作力伝達部材)
12 ロッキングレバー(操作レバー)
13 オープンリンク
14 ボーデンケーブル(操作力伝達部材)
15 インサイドレバー(操作レバー)
16 モータ
17 ウォームホイール
18 アウトサイドレバー
19、190 補助カバー
20 オーバーセンターバネ
61 作動要素配置領域部
62 庇部
63 ボディ覆い部
64 排水口
71 ヒンジ部
72 上庇部
73 下庇部
74 ケーブル連結領域部
75 前壁部
76 下壁部
77 外側壁部
81 長孔
111 アウタチューブ
112 インナケーブル
112a 端末
121 連結部
141 アウタチューブ
142 インナケーブル
142a 端末
151 連結部
161 ウォーム
171 係合突部
181 車内側端部
191 第1壁部
192 第2壁部
193 前壁部
611、612、613 外郭壁部
615、616、617、618、619 軸部
621 壁部
741 中間壁部
742 内側壁部
743 長孔
744 切欠き
745、746 排水口
6001、6002 排水口
6003 ヒンジ部
6004 前壁部
6005 中間壁部
6006 内側壁部
6007 庇部
6008 壁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストライカと係合することによってドアを閉鎖状態に保持する自動車用ドアロック装置において、
前記ストライカと係合可能な噛合機構を収容したボディと、
前記ボディに固定されるハウジングと、
前記ハウジングに固定され前記ハウジングの側面を閉塞するカバーと、
前記ハウジングと前記カバー間に配置され、操作装置の操作力を伝達可能な操作力伝達部材が連結される連結部を有する操作レバーと、
前記操作レバーの前記連結部に前記操作力伝達部材を連結した後、前記連結部及び前記操作力伝達部材の端部を閉塞可能な補助カバーと、
前記ハウジングまたは前記カバーに設けられ、前記ハウジングと前記カバーとの間または前記カバーと前記補助カバーとの間に浸入した雨水を排出可能な排水口と、
前記ハウジングに設けられ、前記排水口の排出側にあって、前記排水口に対向して近接する庇部とを備えることを特徴とする自動車用ドアロック装置。
【請求項2】
前記操作力伝達部材は、アウタチューブ内にインナケーブルが挿通されてなるボーデンケーブルであり、
前記アウタチューブの外周は、前記ハウジングと前記補助カバー間または前記カバーと前記補助カバー間にラビリンス構造をもって固定されることを特徴とする請求項1記載の自動車用ドアロック装置。
【請求項3】
前記排水口を、側方が開口するように前記ハウジングまたは前記カバーの垂直面に設け、
前記庇部を、前記排水口の側方に近接して対向するように前記ハウジングの垂直面に設けたことを特徴とする請求項1または2記載の自動車用ドアロック装置。
【請求項4】
前記排水口を、下方が開口するように前記ハウジングまたは前記カバーの底部に設け、
前記庇部を、前記排水口の下方に近接して対向するように前記ハウジングの下部に設けたことを特徴とする請求項1または2記載の自動車用ドアロック装置。
【請求項5】
ストライカと係合することによってドアを閉鎖状態に保持する自動車用ドアロック装置において、
前記ストライカと係合可能な噛合機構を収容したボディと、
前記ボディに固定されるハウジングと、
前記ハウジングに固定され前記ハウジングの側面を閉塞するカバーと、
前記ハウジングと前記カバー間に配置され、操作装置の操作力を伝達可能な操作力伝達部材が連結される連結部を有する操作レバーと、
前記ハウジングに設けられ、前記ハウジングと前記カバーとの間に浸入した雨水を排出可能な排水口と、
前記ハウジングに設けられ、前記排水口の排出側にあって、前記排水口に対向して近接する庇部とを備えることを特徴とする自動車用ドアロック装置。
【請求項6】
前記操作力伝達部材は、アウタチューブ内にインナケーブルが挿通されてなるボーデンケーブルであり、
前記アウタチューブの外周は、前記ハウジングと前記カバー間にラビリンス構造をもって固定されることを特徴とする請求項6記載の自動車用ドアロック装置。
【請求項7】
前記排水口を、側方が開口するように前記ハウジングの垂直面に設け、
前記庇部を、前記排水口の側方に近接して対向するように前記ハウジングの垂直面に設けたことを特徴とする請求項5または6記載の自動車用ドアロック装置。
【請求項8】
前記排水口を、下方が開口するように前記ハウジングの底部に設け、
前記庇部を、前記排水口の下方に近接して対向するように前記ハウジングの下部に設けたことを特徴とする請求項5または6記載の自動車用ドアロック装置。
【請求項9】
前記庇部の下端は、前記排水口よりも下方へ延出することを特徴とする請求項3または7記載の自動車用ドアロック装置。
【請求項10】
前記庇部または前記庇部に対向する面の少なくともいずれ一方に、前記排水口に近接した位置から他方へ向けて突出し、かつ上方へ延出する外側壁部を設けたことを特徴とする請求項9記載の自動車用ドアロック装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−180702(P2012−180702A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−45179(P2011−45179)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(000148896)三井金属アクト株式会社 (127)
【Fターム(参考)】