説明

自動車用ドアロック装置

【課題】操作入力機構が回転軸線方向へ傾くような外力が作用しても、ロック機構がアンロック状態からロック状態に切り替わらないようにする。
【解決手段】連結手段は、第1キーレバー8に設けられ長手方向が遠心方向へ向く被摺動部81と、第2キーレバー9に設けられ被摺動部81にその長手方向へ摺動可能に係合する摺動部91とを含み、ロック機構がロック状態にある場合、第1キーレバー8の回動はロック状態にあるロック機構へアンロック切り替え作動として伝達するが、外力による第1キーレバー8の回転軸線方向へ傾く変位はロック状態にあるロック機構へアンロック切り替え作動として伝達不能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防盗対策を施した自動車用ドアロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用ドアロック装置において、アンロック状態とロック状態に切り替え可能なロック機構と、ドアの車外側に設けられるキーシリンダの回転操作をロック機構に伝達可能な操作入力機構とを備え、キーシリンダにドライバ等の不正具を差し込む等の不正行為が行われて、操作入力機構にキーシリンダの軸方向に沿って予め設定した値以上の外力が作用した際、操作力入力機構からロック機構への回転力を断つようにすることで、操作入力機構を無理矢理回転させようと試みてもロック状態にあるロック機構をアンロック状態に切り替え不能として防盗性の向上を図っている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−282095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の自動車用ドアロック装置においては、キーシリンダの軸方向に沿う方向への外力が作用した場合に対しては、防盗性に対して効果的に作用するものの、不正行為をもって、キーシリンダをその軸方向へ無理矢理傾けることで、操作入力機構が軸方向へ傾くような外力が作用した場合には、操作入力機構の傾きによる変位に伴って、操作入力機構がロック機構の一部に当接し、当該当接をもって、ロック状態にあるロック機構がアンロック状態に切り替えられる虞がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑み、操作入力機構が回転軸線方向へ傾くような外力が作用しても、ロック機構がロック状態からアンロック状態に切り替わらないようにした自動車用ドアロック装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によると、上記課題は、次のようにして解決される。
(1)キーシリンダのキー操作により回動する操作入力機構と、前記操作入力機構の回動に従動しハンドルによるドア開操作を有効化するアンロック状態と前記ハンドルによるドア開操作を無効化するロック状態に切り替え可能なロック機構と、前記ロック機構がロック状態にある場合、前記操作入力機構の前記回動はロック状態にある前記ロック機構へアンロック切り替え作動として伝達するが、外力による前記操作入力機構の回転軸方向へ傾く変位はロック状態にある前記ロック機構へアンロック切り替え作動として伝達しない連結手段とを備える。
【0007】
上記構成により、外力により操作入力手段が回転軸線方向へ傾いても、当該傾きによる操作入力手段の変位は連結手段により遮断されてロック機構に伝達されないため、ロック状態にあるロック機構はアンロック状態に切り替わらない。
【0008】
(2)上記(1)項において、前記操作入力機構は、前記キーシリンダのキー操作により中立位置からアンロック方向及びロック方向へ回動する第1キーレバーと、前記第1キーレバーに連結され前記第1キーレバーの回動に従動して中立位置からアンロック方向及びロック方向へ回動し当該回動を前記ロック機構へ伝達する第2キーレバーとを含み、前記連結手段は、前記第1キーレバーまたは前記第2キーレバーのいずれか一方に設けられ長手方向が遠心方向へ向く長孔または長溝から形成される被摺動部と、前記第1キーレバーまたは前記第2キーレバーのいずれか他方に設けられ前記被摺動部にその長手方向へ摺動可能に係合する摺動部とを含んで構成される。
【0009】
上記構成により、連結手段は、第1キーレバーまたは第2キーレバーのいずれか一方に設けられる被摺動部と、第1キーレバーまたは第2キーレバーのいずれか他方に設けられ被摺動部にその長手方向へ摺動可能に係合する摺動部とによって構成され、第1キーレバーの回転軸線方向への傾きによる変位を被摺動部によって遮断してロック機構へ伝達不能とする。
【0010】
(3)上記(2)項において 前記被摺動部の長手方向を向く内側縁に、前記被摺動部の開口幅が一方の面から他方の面にかけて拡開するようなテーパー面を形成する。
【0011】
上記構成により、第1キーレバーの回転軸線方向に対する傾きの変位を、ロック機構へ伝達されないように、被摺動部の内側縁に設けたテーパー面によって遮断することができる。
【0012】
(4)上記(2)または(3)項において、前記摺動部を、前記第1キーレバー及び前記第2キーレバーが中立位置にあるとき、前記第1キーレバーの回転中心と前記第2キーレバーの回転中心とを結んだ線よりもロック方向側へ偏倚した位置に設定する。
【0013】
上記構成により、第1キーレバーに回転軸線方向に対して傾くような力が作用しても、その力は第2キーレバーに対してロック方向へ向けて作用するため、ロック状態にあるロック機構はアンロック状態に切り替わらない。
【0014】
(5)上記(2)〜(4)項のいずれかにおいて、前記被摺動部の長手方向の端部に、前記摺動部の幅よりも十分に拡幅の拡幅部を設けたことを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の自動車用ドアロック装置。
【0015】
上記構成により、外力により第1キーレバーが回転軸線方向へ傾いても、当該傾きによる変位を拡幅部によって吸収して、前記変位がロック機構へ伝達されないように遮断することができる。
【0016】
(6)上記(2)〜(5)項のいずれかにおいて、前記摺動部の外側面を、前記第1キーレバーまたは前記第2キーレバーのいずれか一方の回転軸を中心とする円弧状に形成する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の自動車用ドアロック装置によると、外力により操作入力手段が回転軸線方向へ傾いても、当該傾きによる操作入力手段の変位はロック状態にあるロック機構へ伝達されないため、キーシリンダへの不正行為の攻撃に対して、十分に対応でき、防盗性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係わる一実施形態のドアロック装置の正面図である。
【図2】同じく、ドアロック装置の分解斜視図である。
【図3】同じく、アンロック状態にある操作ユニットの側面図である。
【図4】同じく、ロック状態にある操作ユニットの側面図である。
【図5】同じく、第1、2キーレバーがアンロック方向へ回動した状態の操作ユニットの側面図である。
【図6】同じく、第1、2キーレバーがロック方向へ回動した状態の操作ユニットの側面図である。
【図7】同じく、第1、2キーレバーの拡大斜視図である。
【図8】図4におけるVIII−VIII線拡大縦断面図である。
【図9】下向きの外力が作用した状態の図8と同一部位の拡大縦断面図である。
【図10】下向きの外力が作用した状態の要部の拡大側面図である。
【図11】図4におけるXI−XI線拡大横断面図である。
【図12】外力が作用した場合の図10と同一部位の拡大縦断面図である。
【図13】他の実施形態の要部の拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明において、図1において左側を自動車の車外側とし、同じく右側を車内側とし、図3〜6において左方を自動車の前方とし、右方を後方とする。
【0020】
ドアロック装置1は、自動車のフロントドア(以下、ドアと記す)Dの後端部内側に取り付けられ、ドアDを閉鎖状態に保持するための噛合ユニット2と、噛合ユニット2に取り付けられる操作ユニット3とを備える。
【0021】
ドアDの車外側には、ドアDを車外から開けるときに操作されるアウトサイドハンドル(図示略)と、車外からキーを用いてドアロック装置1の後述のロック機構をアンロック状態またはロック状態に切り替えるときに操作されるキーシリンダKCが配置される。また、ドアDの車内側には、ドアDを車内から開けるときに操作されるインサイドハンドル(図示略)と、手動操作でロック機構をアンロック状態またはロック状態に切り替えるときに操作されるロックノブ(図示略)が配置される。
【0022】
図2に示すように、噛合ユニット2は、ドアD内にボルト(図示略)により固定される合成樹脂製のボディ4を備え、ボディ4内には、車体側のストライカ(図示略)と係合可能なラッチ5及び当該ラッチ5に係合可能なラチェット(図示略)が設けられ、ドアDが閉じられると、ラッチ5がストライカに噛合すると共に、ラチェットがラッチ5に係合することによってドアDを閉鎖状態に保持する。なお、噛合ユニット2は公知の構造であるので、詳細説明は省略する。
【0023】
操作ユニット3は、ボディ4に固定される合成樹脂製のハウジング6と、ハウジング6の車内側を向く開口を閉塞するカバー7とを備え、ハウジング6とカバー7間の収容空間には、図3〜6に示すように、上方から、第1キーレバー8、第2キーレバー9、コネクトレバー10、ロックレバー12、リフトリンク13、インサイドレバー15が配置され、さらにロックレバー12の上方には、正逆回転可能なモータ16及びウォームホイール17が配置される。さらに、ボディ4の前面に対向するハウジング6の下部内面には、アウトサイドハンドルに連係されるアウトサイドレバー18が配置される。
【0024】
本発明に係わる操作入力機構は、第1キーレバー8及び第2キーレバー9により構成され、同じくロック機構は、コネクトレバー10、ロックレバー12及びリフトレバー13を含んで構成される。また、ロック機構のアンロック状態は、図3、5に示す状態であって、コネクトレバー10、ロックレバー12及びリフトリンク13がそれぞれ後述のアンロック位置にある状態を指し、同じくロック状態は、図4、6に示す状態であって、コネクトレバー10、ロックレバー12及びリフトリンク13がそれぞれ後述のロック位置にある状態を指す。
【0025】
第1キーレバー8は、ハウジング6の最上部に形成される支持筒部61内に車内外方向を向く回転軸部82が挿入されることにより回動可能に枢支されると共に、キーシリンダKCのキー操作によって回転するキーロッドKRの車内側端部に連結され、キーシリンダKCのロック操作に基づいて、図3、4に示す中立位置からロック方向(図3、4において反時計方向)へ所定角度回動した図6に示すロック位置へ回動し、同じくアンロック操作に基づいて、中立位置からアンロック方向(図3、4において時計方向)へ所定角度回動した図5に示すアンロック位置へ回動し、各操作終了後は中立位置に戻る。
【0026】
第1キーレバー8の回転軸部82の回転軸線回りに回転するロック方向への回動は、第2キーレバー9を介してロック機構にロック切り替え作動として伝達されてロック機構をロック状態に切り替え、また同じくアンロック方向への回動は、第2キーレバー9を介してロック機構にアンロック切り替え作動として伝達されてロック機構をアンロック状態に切り替える。なお、第1キーレバー8の回転軸線方向とキーシリンダKCの軸方向Xとは合致する。
【0027】
第1キーレバー8には、長手方向が遠心方向へ向き、かつ中立位置にあるとき上下方向を向く被摺動部をなす長孔81が設けられる。長孔81内の長手方向の内側縁には、テーパー面812が形成される。テーパー面812は、特に図11に示すように、長孔81の前後方向(図11においては左右方向)の開口幅が、車外側を向く面(図11において下面)の開口幅よりも車内側を向く面(図11において上面)の開口幅の方が拡幅になるように形成される。また、長孔81の最上部には、前後方向の開口幅が他の部分の開口幅よりも拡幅の拡幅部811が形成される。なお、長孔81の前後方向の開口幅は、後述の摺動部91の前後幅の寸法より僅かに大きく設定され、拡幅部911の前後方向の開口幅は、摺動部811の前後幅の寸法よりも十分に大きく設定される。
【0028】
第2キーレバー9は、第1キーレバー8の下方にあって、車内外方向を向く軸19により枢支されると共に、上端部にあって車内側へ向けて突設する凸状の摺動部91がキーレバー8の長孔81にその長手方向に沿って摺動可能に係合することによって第1キーレバー8に連結され、第1キーレバー8のアンロックへの回動に従動して図3、4に示す中立位置からアンロック方向(図3、4において反時計方向)へ所定角度回動した図5に示すアンロック位置に回動し、また第1キーレバー8のロック方向(図3、4において反時計方向)へ所定角度回動した図6に示すロック位置に回動する。なお、本発明の連結手段は、本実施形態においては長孔81(被摺動部)及び摺動部91により形成される。
【0029】
図3、4に示すように、摺動部91は、第1、2キーレバー8、9が中立位置にあるとき、第1キーレバー8の回転中心と第2キーレバー9の回転中心とを互いに結んだ線Cよりも第1、2キーレバー8、9のロック方向側へ偏倚した位置にあって、かつ長孔81内で拡幅部811の僅か下方に位置する。
【0030】
図3に示すアンロック状態にあって、かつ第1、2キーレバー8、9が中立位置にある場合、キーシリンダKCのロック操作によって、第1キーレバー8が中立位置からロック方向(反時計方向)へ回動すると、長孔81の内側縁が摺動部91に対して前側(図3においては左側)から当接することで、図6に示すように、第2キーレバー9は、第1キーレバー8と共に中立位置からロック方向へ回動し、当該回動は、ロック機構に伝達され、ロック機構はロック状態に切り替わる。ロック機構をロック状態に切り替えた後はキーシリンダKCを中立位置に戻して第1、2キーレバー8、9を中立位置に戻す。これにより、図4に示すロック状態となる。
【0031】
また、図4に示すロック状態にあって、かつ第1、2キーレバー8、9が中立位置にある場合、キーシリンダKCのアンロック操作によって、第1キーレバー8が中立位置からアンロック方向(時計方向)へ回動すると、長孔81の側縁が摺動部91に対して後側(図4においては右側)から当接することで、第2キーレバー9は、第1キーレバー8と共に中立位置からアンロック方向へ回動し、当該回動はロック機構に伝達され、ロック機構は図3に示すアンロック状態に切り替わる。ロック機構をアンロック状態に切り替えた後はキーシリンダKCを中立位置に戻して第1、2キーレバー8、9を中立位置に戻す。これにより、図3に示すアンロック状態となる。
【0032】
コネクトレバー10は、第2キーレバー9と共に軸19に枢支されると共に、図3、5に示すアンロック位置及び図4、6に示すロック位置に回動可能である。コネクトレバー10の回転面には、第2キーレバー9の下部に設けられたロック係合部92とアンロック係合部93との間にあって、ロック係合部92及びアンロック係合部93に対して、アンロック位置からロック位置、またはその逆への移動ストロークに相当する遊びを介して回動方向へ当接可能な突部101が突設される。
【0033】
コネクトレバー10が図3に示すアンロック位置にあるとき、第2キーレバー9が中立位置からロック方向へ回動すると、第2キーレバー9のロック係合部92がコネクトレバー10の突部101に対して回動方向へ当接することで、コネクトレバー10は、アンロック位置から図4に示すロック位置に回動する。また、コネクトレバー10が図4に示すロック位置にあるとき、第2キーレバー9が中立位置からアンロック方向へ回動すると、第2キーレバー9のアンロック係合部93がコネクトレバー10の突部101に対して回動方向へ当接することで、コネクトレバー10は、ロック位置からアンロック位置に回動する。
【0034】
ロックレバー12は、車内外方向を向く軸20に枢支されると共に、上端部121がコネクトレバー10の長孔102に係合することでコネクトレバー10に連結される。これにより、キーシリンダの操作は、第1、2キーレバー8、9及びコネクトレバー10を介してロックレバー12に伝達され、ロックレバー12は、ロックレバー12に作用するオーバーセンタースプリング11の付勢力に抗して図3に示すアンロック位置及びアンロック位置から反時計方向へ所定角度回動した図4に示すロック位置に回動する。また、ロックレバー12の連結部122は、操作力を伝達可能なケーブル(図示略)を介してロックノブに連結される。これにより、ロックノブの操作は、ケーブルを介してロックレバー12に伝達され、ロックレバー12、コネクトレバー10は、アンロック位置及びロック位置に回動する。なお、コネクトレバー10側からの回動は、第2キーレバー9へ伝達されない。
【0035】
ウォームホイール17は、車内外方向を向く軸21に枢支されると共に、モータ16の回転軸に止着されたウォーム161に噛合してモータ16の動力により回転する。
【0036】
図3に示すように、ロック機構がアンロック状態にあるとき、車内に設けられた操作スイッチまたは携帯用の操作スイッチがロック操作されると、モータ16の回転によりウォームホイール17が図3において時計方向へ回動することで、ウォームホイール17の両回転面のうち一方の回転面に設けられた係合突部(図示略)がロックレバー12に対して当接することにより、ロックレバー12は、アンロック位置からロック位置に回動する。また、ロックレバー12がロック位置にあるとき、操作スイッチがアンロック操作された場合には、モータ16の回転によりウォームホイール17が図4において反時計方向へ回動することで、ウォームホイール17の他方の回転面に設けられた係合突部171がロックレバー12に対して当接する。これにより、ロックレバー12は、ロック位置からアンロック位置に移動する。
【0037】
リフトリンク13は、下端部がアウトサイドレバー18の車内側端部181に前後方向へ揺動可能に連結されると共に、ロックレバー12の回動端部に上下方向へ摺動可能に連結され、ロックレバー12のアンロック位置及びロック位置への移動に従動して車内側端部181を中心に図3、5に示すアンロック位置と図4、6に示すロック位置に揺動する。
【0038】
インサイドレバー15は、車内外方向を向く軸22に枢支されると共に、下部の連結部151には、操作力を伝達可能なケーブル(図示略)を介してインサイドハンドルに連結され、インサイドハンドルのドア開操作に基づいて、図3〜6に示す位置から時計方向へ所定角度回動する。
【0039】
アウトサイドレバー18は、ハウジング6の下部に前後方向の軸23により枢支されると共に、車外側端部が操作力を伝達可能なロッド(図示略)を介してアウトサイドハンドルに連結され、アウトサイドハンドルのドア開操作、またはインサイドハンドルのドア開操作によるインサイドレバー15の回動に基づいて所定角度回動することによりリフトリンク13を上方移動させる。
【0040】
上述構成により、本実施形態のドアロック装置1においては、図3に示すロック機構がアンロック状態にある場合、アウトサイドハンドル(またはインサイドハンドル)のドア開操作により、アウトサイドレバー18の回動に基づいてリフトリンク13がアンロック位置から上方へ移動することによって、リフトリンク13の解除部131がラチェットと一体的に回動可能なオープンレバー14にその回動方向へ当接しラチェットをラッチ5との係合から外してドアの開きを可能にする。
【0041】
また、図4に示すロック機構がロック状態にある場合には、アウトサイドハンドル(またはインサイドハンドル)がドア開操作されても、アウトサイドレバー18の回動に基づいてリフトリンク13がロック位置から上方へ移動しても、リフトリンク13の解除部131がオープンレバー14に対して空振り移動するため、ラチェットがラッチ5に係合した状態に保持されてドアを開けることはできない。
【0042】
次に、本発明の特徴部分の作用について説明する。
ロック機構がロック状態にあるとき、例えば、キーシリンダKCにドライバ等の不正具が差し込まれて、図9に示すように、キーシリンダKCが強引に下向きへ傾けられた場合(以下、「第1の場合」と記す)には、キーシリンダKCが本来の軸方向Xから傾き軸方向X1へ傾き、第1キーレバー8は傾いた状態で下方へ変位する。このような状態になると、従来技術のドアロック装置においては、長孔8の上端が摺動部91を下方へ押すことで、第2キーレバー9がアンロック方向へ回動して、ロック状態にあるロック機構がアンロック状態に切り替わる可能性がある。しかし、本実施形態においては、第1キーレバー8の長孔81の上端と第2キーレバー9の摺動部91との間には拡幅部811に相当する隙間が存在するため、第1キーレバー8と共に長孔81が下方へ変位しても、長孔81の上端が第2キーレバー9の摺動部91に当接することはないので、第1キーレバー8の傾きによる下向き変位は、長孔81の拡幅部811によって遮断されて、ロック機構へは伝達されない。よって、ロック機構は、ロック状態からアンロック状態へ切り替わることはない。
【0043】
さらに第1の場合で、第1キーレバー8の下方への傾き変位量が大きく、図10に示すように、長孔81の上端、すなわち拡幅部811の上端が第2キーレバー9の摺動部91の上面に当接した場合(以下、「第2の場合」と記す)であっても、摺動部91は、第1キーレバー8の回転中心と第2キーレバー9の回転中心を結んだ線Cよりもロック方向側へ偏倚しているため、第2キーレバー9に作用する力の方向は、第2キーレバー9のロック方向となり、ロック機構にアンロック切り替え作動となるような動きは伝達されない。よって、ロック機構は、ロック状態からアンロック状態へ切り替わるようなことはない。
【0044】
さらに第2の場合で、図10に示す状態からキーシリンダKCが強引に前後方向(図10において左右方向)へ傾けられた場合であっても、摺動部91が長孔81の拡幅部811内に位置して、摺動部91と拡幅部911との間には、前後方向へ十分な隙間が存在するため、長孔81が第1キーレバー8と共に前後方向へ変位しても、長孔81の内側縁が第2キーレバー9の摺動部91に当接することはないので、第1キーレバー8の傾きによる前後方向への変位は、長孔81の拡幅部811によって遮断されて、ロック機構へは伝達されない。よって、ロック機構は、ロック状態からアンロック状態へ切り替わるようなことはない。
【0045】
さらに、キーシリンダKCが強引に上向きへ傾けられた場合には、第1キーレバー8は傾いた状態で上方へ変位するが、この場合には、摺動部91と長孔81の下端との間には、上下方向へ十分な隙間が存在するため、摺動部91が長孔81内を下方へ摺動するだけで、第1キーレバー8の上方への変位は、第2キーレバー9を介してロック機構へ伝達されることはない。よって、ロック機構は、ロック状態からアンロック状態へ切り替わるようなことはない。
【0046】
さらには、第1キーレバー8が軸方向Xに対して左右方向へ傾けられた場合には、長孔81の内側縁には、テーパー面812が形成されているため、第1キーレバー8の傾きがテーパー面812のテーパー角以内であれば、図12に示すように、長孔81の内側縁が摺動部91をアンロック方向へ押すように当接することはない。よって、第1キーレバー8の前後方向への傾きによる変位は、第2キーレバー9に伝達されず、ロック機構へアンロック切り替え作動として伝達されることはない。
【0047】
以上により、第1、2キーレバー8、9が中立位置にあって、かつロック機構がロック状態にある場合、第1キーレバー8の中立位置からロック方向への回動は、第2キーレバー9を介してロック状態にあるロック機構へアンロック切り替え作動として伝達するが、外力による第1キーレバー8が回転軸線方向に傾きによる変位は、連結手段をなす長孔81と摺動軸91との間で遮断されてロック状態にあるロック機構へアンロック切り替え作動として伝達されない。よって、キーシリンダへの不正行為の攻撃に対して、十分に対応でき、防盗性の向上を図ることができる。
【0048】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、次のような種々の変形や変更を施すことが可能である。
(i)被摺動部を、長孔81に代えて長溝とする。
(ii)被摺動部を第2キーレバー9に設け、摺動部91を第1キーレバー8に設ける。
(iii)摺動部91の外側面(実施形態では上側面)911を、図13に示すように、第2キーレバー9の回転軸である軸19を中心とする円弧状に形成する。このようにすると、不正行為で長孔81の上端が摺動部91の外側面911に当接した際、第2キーレバー9に対して回転方向の力が作用し難くなり、第2キーレバー9をアンロック方向へ回動させることがより困難になり、防盗性をより向上させることができる。なお、摺動部91を第1キーレバー8に設けた場合には、摺動部91の外側面911は、下側面となり、第1キーレバー8の回転軸を中心とする円弧状に形成される。
【符号の説明】
【0049】
1 ドアロック装置
2 噛合ユニット
3 操作ユニット
4 ボディ
5 ラッチ
6 ハウジング
7 カバー
8 第1キーレバー
9 第2キーレバー
10 コネクトレバー
11 オーバーセンタースプリング
12 ロックレバー
13 リフトリンク
14 オープンレバー
15 インサイドレバー
16 モータ
161 ウォーム
17 ウォームホイール
18 アウトサイドレバー
19、20、21、22、23 軸
61 支持筒部
81 長孔(被摺動部)
82 回転軸部
91 摺動部
92 ロック係合部
93 アンロック係合部
101 突部
102 長孔
121 上端部
122 連結部
131 解除部
151 連結部
171 係合突部
181 車内側端部
811 拡幅部
812 テーパー面
911 外側面
D ドア
G 隙間
KC キーシリンダ
KR キーロッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キーシリンダのキー操作により回動する操作入力機構と、
前記操作入力機構の回動に従動しハンドルによるドア開操作を有効化するアンロック状態と前記ハンドルによるドア開操作を無効化するロック状態に切り替え可能なロック機構と、
前記ロック機構がロック状態にある場合、前記操作入力機構の前記回動はロック状態にある前記ロック機構へアンロック切り替え作動として伝達するが、外力による前記操作入力機構の回転軸線方向へ傾く変位はロック状態にある前記ロック機構へアンロック切り替え作動として伝達しない連結手段とを備えたことを特徴とする自動車用ドアロック装置。
【請求項2】
前記操作入力機構は、前記キーシリンダのキー操作により中立位置からアンロック方向及びロック方向へ回動する第1キーレバーと、前記第1キーレバーに連結され前記第1キーレバーの回動に従動して中立位置からアンロック方向及びロック方向へ回動し当該回動を前記ロック機構へ伝達する第2キーレバーとを含み、
前記連結手段は、前記第1キーレバーまたは前記第2キーレバーのいずれか一方に設けられ長手方向が遠心方向へ向く長孔または長溝から形成される被摺動部と、前記第1キーレバーまたは前記第2キーレバーのいずれか他方に設けられ前記被摺動部にその長手方向へ摺動可能に係合する摺動部とを含んで構成されることを特徴とする請求項1記載の自動車用ドアロック装置。
【請求項3】
前記被摺動部の長手方向を向く内側縁に、前記被摺動部の開口幅が一方の面から他方の面にかけて拡開するようなテーパー面を形成したことを特徴とする請求項2記載の自動車用ドアロック装置。
【請求項4】
前記摺動部を、前記第1キーレバー及び前記第2キーレバーが中立位置にあるとき、前記第1キーレバーの回転中心と前記第2キーレバーの回転中心とを結んだ線よりもロック方向側へ偏倚した位置に設定したことを特徴とする請求項2または3に記載の自動車用ドアロック装置。
【請求項5】
前記被摺動部の長手方向の端部に、前記摺動部の幅よりも十分に拡幅の拡幅部を設けたことを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の自動車用ドアロック装置。
【請求項6】
前記摺動部の外側面を、前記第1キーレバーまたは前記第2キーレバーのいずれか一方の回転軸を中心とする円弧状に形成したことを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の自動車用ドアロック装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−14877(P2013−14877A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−146140(P2011−146140)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000148896)三井金属アクト株式会社 (127)
【Fターム(参考)】