自動車用光触媒システム
【課題】紫外光のない車室内においても充分な環境浄化機能を得る事のできる光触媒システムを提供する。
【解決手段】可視光応答性光触媒とその触媒活性促進剤とを共存させる構成とした。
【解決手段】可視光応答性光触媒とその触媒活性促進剤とを共存させる構成とした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は環境浄化用光触媒システムに関し、さらに詳しくは、屋内ないしは自動車室内の環境浄化用に好適な可視光応答性光触媒システムに関する。
【背景技術】
【0002】
環境浄化用の非常に優れた光触媒として、酸化チタンが知られており、ビルの外壁やテント屋根への実用化が進んでいる。酸化チタンは紫外光応答性であり、太陽光に含まれる紫外光により環境浄化機能を発現する、紫外光応答性光触媒である。
【0003】
しかしながら、通常のガラス窓は、その不純物のために、そもそも紫外光の透過性に乏しく、近年の自動車においては、さらに紫外光の透過性を防止したUVカットガラスが一般的となっている。そのため、車室内では、上記の紫外光応答性光触媒が機能できず、車室内で紫外光応答性光触媒を用いる場合、太陽光中の紫外線を取り込む機構(例えば、特許文献1参照。)あるいは、紫外線ランプ(例えば、特許文献2参照。)といった付加機構を設ける方法が提案されている。
【特許文献1】特開2006−177017号公報
【特許文献2】特開2000−217902号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、車室内で紫外光応答性光触媒を用いる場合、上記特許文献1、2に記載発明では、車室内に紫外光を導入する機構や紫外光源を設ける必要があり、その車載性に乏しいだけでなく、コスト高になる、という問題があった。
【0005】
また、紫外光の少ない環境のための可視光応答性光触媒の材料探索研究も進められているが、浄化性能に優れた材料は、なかなか見出されていなかった。
【0006】
そこで、本発明は、紫外光のない車室内においても、紫外光を導入する機構や紫外光源を設けることなく、充分な環境浄化機能を得る事のできる光触媒システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために鋭意努力した結果、可視光応答性光触媒とその触媒活性促進剤とを共存させることで、充分な光触媒活性が得られる事、可視光応答性光触媒とその触媒活性促進剤とが離間していても機能が発現する事、触媒活性促進剤に光照射される必要もない事、を発見し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、太陽光ないしは人工光の照射される領域に設けられた光触媒と、該光触媒の触媒活性促進剤と、から構成されていることを特徴とする光触媒システムにより達成することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、太陽光中の紫外線を取り込む機構や紫外線ランプといった付加機構を設けることなく、紫外光のない車室内においても充分な環境浄化機能を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の光触媒システムは、太陽光ないしは人工光の照射される領域に設けられた光触媒と、該光触媒の触媒活性促進剤と、から構成されていることを特徴とするものである。以下に、本発明につき詳しく説明する。
【0011】
可視光照射下における、可視光応答性光触媒WO3粉末を用いたアセトアルデヒド(以下、CH3CHOとも称する。)の光触媒分解反応において、CH3CHO濃度を1000ppmから10000ppmで段階的に変化させた場合のCO2生成量の変化を図1に示す。図1に示すように、いずれの濃度においても、量論比のおよそ半分量のCO2が生成した段階で反応速度が大幅に低下してしまう事がわかった。CH3CHO濃度自体は減少していることや、反応速度が低下した状態のサンプルにCH3CHOを再度導入すると、再びCO2生成速度の向上が確認されたことから、反応速度の低下は反応系内のO2不足やWO3粉末の劣化によるものではなく、反応中間体により反応性が低下しているものと推察される。
【0012】
次に、WO3粉末を用いたCH3CHOの光触媒分解反応において、WO3粉末に様々な遷移金属酸化物粉末を添加した効果を図2に示す。遷移金属酸化物粉末の添加量は2wt%で統一して、WO3及び遷移金属酸化物の両粉末を乳鉢で混合した。図2に示すように、CuO粉末を添加した場合、図1に示したような反応量の飽和現象が起こらず、短時間でCH3CHOが完全に消失する、というCuO粉末による光触媒活性化現象を発見した。この光触媒活性化現象は、CuOのみならず、Cu2O、Cu(NO3)2、CuSO4など他のCu化合物を添加した場合でも同様の効果が得られた。なお、CuO粉末だけでは光触媒活性は認められなかった。
【0013】
さらには、WO3粉末にCuOを担持しても、WO3とCuOの各薄膜を別々に調整し、共存させても同様の効果を得ることが出来ただけでなく、WO3薄膜にのみ光照射しても同様の効果が得られた。
【0014】
以上の事から、可視光応答性光触媒(WO3)とその触媒活性促進剤(CuO)とを共存させることで、充分な光触媒活性が得られる事、可視光応答性光触媒とその触媒活性促進剤とが離間していても機能が発現する事、触媒活性促進剤に光照射される必要もない事、という知見を得た。
【0015】
以下、本発明の各実施の形態に係る自動車用光触媒システムの詳細を図面を用いて説明する。但し、図面は模式的なものであり、各材料層の厚さやその比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。
【0016】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態に係る自動車用光触媒システムは、太陽光ないしは人工光の照射される領域に設けられた光触媒と、該光触媒の触媒活性促進剤とが混合された状態で構成されていることを特徴とするものである。
【0017】
本発明の第1の実施の形態に係る自動車用光触媒システムの代表的な実施例について、図3を用いて説明する。
【0018】
図3に示すように、符号1は、運転者及び乗員の視界2を妨げないように、リアウインドウ3の内側に設けられた、スリット状の日除けフラップである。ここで、運転者及び乗員の視界2は、図中の破線の矢印のように、車室内の運転席及び乗車席から後方のリアウインドウ3を通して車外を直接又はバックミラー越しに見たときの視界をいう。本実施形態では、日除けフラップ1の上面に、可視光応答性光触媒(例えば、WO3)粉末と該光触媒の触媒活性促進剤(例えば、CuO)粉末の混合粉の塗布層4が設けられている。塗布層4は、多孔質が好ましい。太陽光5は、リアウインドウ3によって紫外光がカットされ、塗布層4を照射する。車室内空気に含まれる有機物質が、塗布層4で光分解により浄化される。
【0019】
塗布層4は、可視光応答性光触媒粉末と触媒活性促進剤粉末が混合されており、これらが協調して機能することにより、紫外光のない車室内において、充分な浄化機能を発現する事ができる。また、フラップ1の上面に塗布層4を設けたため、太陽光5の塗布層4への照射効率が良いだけでなく、可視光応答性光触媒や触媒活性促進剤の色が、乗員や通行人から見えにくく、様々な可視光応答性光触媒や触媒活性促進剤の組み合わせを、自動車の様々な内外装に対して、意匠性を損なうことなく適用可能である。
【0020】
また、塗布層4は、緻密な塗布層であっても良いが、上記したように多孔質とすることで、塗布層4の細孔内部にまで、車室内空気に含まれる有機物質及び紫外光がカットされた太陽光が入り込み、可視光応答性光触媒の触媒活性及び利用効率を高めることができる。さらに光触媒で生成した有機物質の反応中間体が、該光触媒近傍に存在する触媒活性促進剤に素早く供給される混合形態となっているため、触媒活性促進効果を効率よく向上させる事ができる。
【0021】
上記観点から、塗布層4が多孔質の場合において、かかる塗布層4の粒子径としては、1nm〜500μm、好ましくは10nm〜10μmの範囲が望ましい。上記粒子径が10nm以上あれば、ボトムアップ製造法(アルコキシド法等の湿式製造法や、気相中熱分解法等の乾式製造法)による生産性が高く、好ましく、1μm以上であれば、トップダウン製造法(大きな粒子を粉砕する製造方法)による生産性が高く、好ましい。また、10μm以下であれば、塗布性や結着性が高く、好ましい。ただし、上記範囲に何ら制限されるものではなく、複数の粒子径の触媒粒子を混合しても良いし、1次粒子が凝集した2次粒子であっても良いし、場合によっては、触媒担体粒子に担持して用いても良いし、上記範囲を外れる場合であっても可視光応答性光触媒粉末と触媒活性促進剤粉末とが協調して機能し得るものであれば十分利用可能である。
【0022】
該塗布層4の厚さや塗布面積は、車室内空気に含まれる有機物質が、塗布層4で光分解により浄化することができるように適宜決定すればよい。また、他の実施形態の自動車用光触媒システムと組み合わせて用いるような場合には、これら全体の自動車用光触媒システムによる浄化機能を考慮して、各自動車用光触媒システムの塗布層の厚さや塗布面積を適宜決定すればよい。
【0023】
なお、以後の各実施の形態での各塗布層10、11、20、21、36、42、43、51、62あるいは被膜50や粉末64の粒子径、厚さ、塗布ないし被膜面積や触媒活性促進剤の粉末64を撒く範囲(面積)に関しても、上記第1の実施形態と同様である。
【0024】
本実施形態のように可視光応答性光触媒粉末と触媒活性促進剤粉末とを混合して利用する形態では、触媒活性促進剤が可視光応答性光触媒の光吸収を妨げて光分解反応の進行を遅らせないように、その配合比率を調整するのが望ましい。具体的には、触媒活性促進剤粉末の添加量は、可視光応答性光触媒粉末に対して1〜5質量%、より好ましくは1〜2質量%である。触媒活性促進剤粉末の添加量が1質量%以上あれば、可視光応答性光触媒粉末と触媒活性促進剤粉末とを協調して機能させるのに十分である。触媒活性促進剤粉末の添加量が5質量%以下であれば、触媒活性促進剤が可視光応答性光触媒の光吸収を妨げることなく光分解反応を素早く進行させることができる点で優れている。なお、上記範囲は、CuO粉末とWO3粉末を用いた結果に基づくものである。CuOは、光触媒活性はないものの、光吸収特性に優れている。そのため、本実施の形態のように可視光応答性光触媒と混合して用いる場合には、可視光応答性光触媒の光吸収を妨げないようにその添加量に留意する必要がある。一方、可視光応答性光触媒の光吸収をあまり妨げない触媒活性促進剤であれば、上記範囲に制限されるものではない。以上のことから、触媒活性促進剤粉末の添加量は、可視光応答性光触媒と触媒活性促進剤との組み合わせ等によっては、上記範囲を外れる場合であっても光触媒と触媒活性促進剤とが協調して機能し得る範囲内であれば十分利用可能である。
【0025】
塗布層4と、光触媒を含む塗布層が直接ないし間接的に塗布される構造材(以下、単に構造材ともいう。)との間に、光触媒作用により構造材表面の劣化を防止するための層、例えば、シリカ層等を設けても良い。図3では、上記構造材として日除けフラップ1の例を示したが、本実施形態では、これに制限されるものではなく、上記構造材の上面が、有機物、例えば、有機塗料、有機系樹脂、有機繊維・布材などのように光触媒作用による光分解反応・劣化を受けやすい場合に効果的である。また、劣化を防止するための層としては、光触媒作用による劣化を受けない無機系材料による層であれば、特にシリカに制限されるものではなく、場合によっては、有機系材料のテフロン(登録商標)樹脂などを用いることができる。
【0026】
なお、本実施形態及び後述する第4の実施の形態では、以下に説明するような第2、3、5〜7の実施形態のように、可視光応答性光触媒から成る部位とその触媒活性促進剤から成る部位とが異なった領域に離間して構成されていなければよい。即ち、可視光応答性光触媒とその触媒活性促進剤とを同じ領域に相互に接触した状態で共存して構成されていてもよい。例えば、上述したように光触媒粉末とその触媒活性促進剤粉末の混合粉を塗布して共存させる形態のほか、光触媒粉末に触媒活性促進剤(微粉末)を担持してなる担持体を塗布して共存させる形態としてもよいなど、特に制限されるものではない。該担持体は、例えば、可視光応答性光触媒(例えば、WO3)粉末に硫酸銅や硝酸銅の水溶液やエタノール溶液などを加えて混合し、70〜80℃で乾燥させてから、500〜550℃で焼成することで触媒活性促進剤のCuOを担持することができる。触媒活性促進剤を担持させるための最適な条件は、光触媒の種類、形状、担持量などを考慮し適宜設定すればよい。
【0027】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態に係る自動車用光触媒システムは、太陽光ないしは人工光の照射される領域に設けられた光触媒と、該光触媒の触媒活性促進剤とから構成されてなる光触媒システムにおいて、前記光触媒から成る部位と、該光触媒から成る部位と異なった領域に設けられた該光触媒の触媒活性促進剤から成る部位と、から構成されているものである。即ち、可視光応答性光触媒とその触媒活性促進剤とが離間した状態で構成されているものである。
【0028】
更に、本実施形態に係る自動車用光触媒システムにおいては、光の入射面の垂直ないし前後方向に、前記光触媒からなる領域ないしは層と、前記触媒活性促進剤からなる領域ないしは層とが設けられていることを特徴とするものである。
【0029】
本発明の第2の実施の形態に係る自動車用光触媒システムの代表的な実施例について、図4を用いて説明する。
【0030】
図4Aに示すように、符号1は、運転者及び乗員の視界2を妨げないように、リアウインドウ3の内側に設けられた、スリット状の日除けフラップである。ここで、運転者及び乗員の視界2については、第1の実施の形態で説明したと同様である。本実施形態では、日除けフラップ1の上面に、触媒活性促進剤(例えば、CuO)粉末の塗布層10が、さらにその上面に、可視光応答性光触媒(例えば、WO3)粉末の塗布層11が設けられている。即ち、本実施形態では、太陽光5の入射面の垂直ないし前後方向に、塗布層10と塗布層11とが設けられている構成となっている。塗布層10ならびに11は、多孔質が好ましい。太陽光5は、リアウインドウ3によって紫外光がカットされ、塗布層11を照射し、車室内空気に含まれる有機物質が、塗布層11で光分解により浄化される点は、第1の実施の形態と類似である。
【0031】
塗布層11の可視光応答性光触媒粉末と塗布層10の触媒活性促進剤粉末とが、極めて近傍に塗布成膜されており、これらの層が協調して機能することにより、紫外光のない車室内において、充分な浄化機能を発現する事ができる。
【0032】
触媒活性促進剤の塗布層10は、光触媒活性を有しておらず、光触媒作用による劣化を受けないため、光触媒作用により構造材表面の劣化を防止する機能を有しており、光触媒作用により構造材表面の劣化を防止するための層を、別途設ける必要がない。
【0033】
触媒活性促進剤としてCuOを用いる場合は、光触媒活性はないものの、光吸収特性に優れているため、本実施の形態に記載されているように、可視光応答性光触媒の光吸収を妨げないよう、光照射面の可視光応答性光触媒の塗布層の下部に触媒活性促進剤の塗布層を設けた方が好ましい。可視光応答性光触媒の光吸収をあまり妨げない触媒活性促進剤であれば、塗布順を入れ替えても良い。
【0034】
また、塗布層10、11は緻密な塗布層であっても良いが、塗布層10、11を上記したように多孔質とすることで、塗布層10、11の細孔内部にまで、車室内空気に含まれる有機物質及び紫外光がカットされた太陽光が入り込み、可視光応答性光触媒の触媒活性及び利用効率を高めることができる。さらに光触媒で生成した有機物質の反応中間体(中間生成物ともいう)が、該光触媒塗布層10の下部に位置する触媒活性促進剤の塗布層11に塗布層10、11の細孔を通じて素早く供給される形態となっているため、触媒活性促進効果を効率よく向上させる事ができる。
【0035】
上記観点から、塗布層10、11が多孔質の場合において、かかる塗布層10、11の粒子径としては、1nm〜500μm、好ましくは10nm〜10μmの範囲が望ましい。上記粒子径が10nm以上あれば、ボトムアップ製造法(アルコキシド法等の湿式製造法や、気相中熱分解法等の乾式製造法)による生産性が高く、好ましく、1μm以上であれば、トップダウン製造法(大きな粒子を粉砕する製造方法)による生産性が高く、好ましい。また、10μm以下であれば、塗布性や結着性が高く、好ましい。ただし、上記範囲に何ら制限されるものではなく、複数の粒子径の触媒粒子を混合しても良いし、1次粒子が凝集した2次粒子であっても良いし、場合によっては、触媒担体粒子に担持して用いても良いし、上記範囲を外れる場合であっても可視光応答性光触媒粉末と触媒活性促進剤粉末とが協調して機能し得るものであれば十分利用可能である。
【0036】
本実施形態のように可視光応答性光触媒とその触媒活性促進剤とが離間した状態で利用する形態では、塗布層10の触媒活性促進剤が塗布層11の可視光応答性光触媒の光吸収を妨げて光分解反応の進行を遅らせることがないことから、それぞれ使用比率は特に制限されるものではない。光触媒と触媒活性促進剤とが協調して機能し得る範囲内で適宜利用可能である。
【0037】
なお、光触媒から成る塗布層11及び触媒活性促進剤から成る塗布層10は、図4Aに示すように、いずれの層も太陽光5の入射面内全体に設けられていてもよいし、図4Bのように、入射面内に部分的に設けられていてもよい。光触媒から成る塗布層11及び触媒活性促進剤から成る塗布層10が入射面内に部分的に設けられていている場合には、図4Bのように、光の入射面の垂直ないし前後方向に、模様の塗布層10、11が形成されていてもよい。この場合には、光触媒粉末および触媒活性促進剤粉末による模様の塗布層10、11が形成されていない領域は、可視光応答性光触媒粉末により車室内空気に含まれる有機物質が光分解した中間生成物をやり取りする開口部22として機能することができる。また、図4Aのように、光触媒から成る塗布層11及び触媒活性促進剤から成る塗布層10が入射面内に部分的に設けられていている場合には、構造材上に順に形成される塗布層10、11の表面平滑性に優れ、塵や埃がたまり難く、ふき取りやすい構成とすることができる。
【0038】
(第3の実施の形態)
次に、本発明の第3の実施の形態に係る自動車用光触媒システムは、太陽光ないしは人工光の照射される領域に設けられた光触媒と、該光触媒の触媒活性促進剤とから構成されてなる光触媒システムにおいて、前記光触媒から成る部位と、該光触媒から成る部位と異なった領域に設けられた該光触媒の触媒活性促進剤から成る部位と、から構成されているものである。更に、本実施形態に係る自動車用光触媒システムにおいては、光の入射面内に、前記触媒活性促進剤から成る部位が部分的に設けられていることを特徴とするものである。
【0039】
本発明の第3の実施の形態に係る自動車用光触媒システムの代表的な実施例について、図5を用いて説明する。
【0040】
図5Aに示すように、符号1は、運転者及び乗員の視界2を妨げないように、リアウインドウ3の内側に設けられた、スリット状の日除けフラップである。ここで、運転者及び乗員の視界2については、第1の実施の形態で説明したと同様である。本実施形態では、日除けフラップ1の上面に、可視光応答性光触媒(例えば、WO3)粉末の塗布層21が、さらにその上面に、触媒活性促進剤(例えば、CuO)粉末による模様の塗布層20が、設けられている。即ち、本実施形態では、太陽光5の入射面内に、触媒活性促進剤から成る塗布層20が部分的に設けられている構成となっている。塗布層20ならびに21は、多孔質が好ましい。太陽光5は、リアウインドウ3によって紫外光がカットされ、塗布層21を照射し、車室内空気に含まれる有機物質が、塗布層21で光分解により浄化される点は、第1、2の実施の形態と類似である。
【0041】
塗布層21の可視光応答性光触媒粉末と塗布層20の触媒活性促進剤粉末とが、極めて近傍に塗布成膜されており、これらの層が協調して機能することにより、紫外光のない車室内において、充分な浄化機能を発現する事ができる点は、第2の実施の形態と類似である。触媒活性促進剤粉末による模様の塗布層20の触媒活性促進剤粉末の塗布されていない領域は、可視光応答性光触媒粉末の塗布層21の車室内空気に対する開口部22として機能する。即ち、図5Aに示すように、触媒活性促進剤粉末による模様の塗布層20が形成されていない領域は、可視光応答性光触媒粉末の塗布層21により車室内空気に含まれる有機物質が光分解した中間生成物を、その近傍の塗布層20との間でやり取りする開口部22として機能することができる。かかる観点から、塗布層20及び開口部22の幅ないし間隔は、できるだけ狭い方が中間生成物を塗布層20に素早く供給することができることから望ましい。かかる観点から、塗布層20及び開口部22の幅ないし間隔は、10μm〜50mm、好ましくは100μm〜5mm程度とするのが望ましいが、かかる範囲を外れる場合であってもこれらの層20、21が協調して機能することができるものであれば何ら制限されるものではない。また、模様による意匠性を付与する場合には、意匠性が損なわれない範囲で塗布層20及び開口部22の幅ないし間隔狭くすればよい。あるいは印刷技術のように非常に細かいドットで塗布層20及び開口部22を形成して模様を構成しても良いし、インクジェット印刷技術を用いて、微細な模様やパターンを構成することで、これらの層の協調機能による充分な浄化機能と共に意匠性を発現するようにしてもよい。
【0042】
可視光応答性光触媒としてWO3を、触媒活性促進剤としてCuOを用いる場合は、それぞれ、緑がかった薄い青色(半透明)、赤茶色であるため、日除けフラップ1の構造体表面の色を下地とし、赤茶色の模様が描かれた日除けフラップが得られ、その意匠性を高める事ができる。様々な、可視光応答性光触媒ならびに触媒活性促進剤の色ならびに色合いの組み合わせにより、様々な模様を描くことができ、意匠性を高めることが出来る。かかる意匠性付与に関しては、本実施形態に制限されるものではなく、他の実施形態においても同様にすることができる。
【0043】
また、図5Aの塗布層20ならびに21の塗布順を入れ替えても良いし、塗布層20ならびに21それぞれで模様を描いても良い。
【0044】
更に、可視光応答性光触媒から成る塗布層21は、図5Aに示すように太陽光5の入射面内全体に設けられていてもよいし、入射面内に部分的に設けられていてもよい。光触媒から成る塗布層21が入射面内に部分的に設けられていている場合には、図5Bのように、模様の塗布層20が形成されていない部位ないし領域にのみ形成されていてもよい。この場合には、図5Aの開口部22の部位に光触媒から成る塗布層21が形成され、図5Aと同様に、当該塗布層21で光分解により生じた中間生成物を、隣接する塗布層20に素早く供給することができる。かかる観点から、塗布層20、21の幅ないし間隔も、図5Aの形態と同様に、できるだけ狭い方が中間生成物を塗布層20に素早く供給することができることから望ましく、意匠性に関しても同様である。
【0045】
(第4の実施の形態)
次に、本発明の第4の実施の形態に係る自動車用光触媒システムは、太陽光ないしは人工光の照射される領域に設けられた光触媒と、該光触媒の触媒活性促進剤とから構成されてなる光触媒システムにおいて、前記光触媒が設けられた領域または前記光触媒から成る部位へ空気を輸送する機構を有することを特徴とするものである。
【0046】
本発明の第4の実施の形態に係る自動車用光触媒システムの代表的な実施例について、図6を用いて説明する。
【0047】
図6に示すように、符号31は、リアトレイ30に設けられた空気清浄器であり、符号33が該空気清浄器のブロア、符号34が該空気清浄器のフィルタ、符号35が該空気清浄器から送風される清浄空気である。空気清浄器31の空気取り入れ口のフィン32は、リアウインドウ3側から乗員側に傾いており、そのリアウインドウ3側の空気取り入れ口のフィン32の上面に、可視光応答性光触媒粉末と触媒活性促進剤粉末の混合粉の塗布層36が設けられている。即ち、本実施形態では、光触媒が設けられた領域の塗布層36へ空気を輸送する機構として空気清浄器31が設けられているものである。
【0048】
太陽光5は、リアウインドウ3によって紫外光がカットされ、塗布層36を照射する。車室内空気に含まれる有機物質が、塗布層36で光分解により浄化される点、ならびに塗布層36は、可視光応答性光触媒粉末と触媒活性促進剤粉末が混合されており、これらが協調して機能することにより、紫外光のない車室内において、充分な浄化機能を発現する事ができる点は、第1の実施の形態と類似である。
【0049】
空気清浄器31の空気取り入れ口のフィン32に塗布層36を設けたため、塗布層36に車室内空気が順次供給されることにより、その光触媒浄化効率を向上させることができる。
【0050】
また、リアウインドウ3側から乗員側に傾いた空気取り入れ口のフィン32の上面に塗布層36を設けたため、太陽光5の塗布層36への照射効率が良いだけでなく、可視光応答性光触媒や触媒活性促進剤の色が、乗員や通行人から見えにくく、様々な可視光応答性光触媒や触媒活性促進剤の組み合わせを、自動車の様々な内外装に対して、意匠性を損なうことなく適用可能である。
【0051】
さらに、本実施形態では、空気取り入れ口のフィン32の上面に第1の実施形態と同様に可視光応答性光触媒粉末と触媒活性促進剤粉末の混合粉の塗布層36を設けた例を図示している。しかしながら、本発明では、かかる態様に何ら制限されるものではなく、フィン32の上面に、第2の実施形態や第3の実施形態のように、可視光応答性光触媒粉末の塗布層とその触媒活性促進剤粉末の塗布層とを設けてもよい。
【0052】
(第5の実施の形態)
次に、本発明の第5の実施の形態に係る自動車用光触媒システムは、太陽光ないしは人工光の照射される領域に設けられた光触媒と、該光触媒の触媒活性促進剤とから構成されてなる光触媒システムにおいて、前記光触媒から成る部位と、該光触媒から成る部位と異なった領域に設けられた該光触媒の触媒活性促進剤から成る部位と、から構成されているものである。即ち、可視光応答性光触媒とその触媒活性促進剤とが離間した状態で構成されているものである。
【0053】
更に、本実施形態に係る自動車用光触媒システムにおいては、光触媒から成る部位から前記光触媒の触媒活性促進剤から成る部位へ、空気を輸送する機構を有することを特徴とするものである。
【0054】
本発明の第5の実施の形態に係る自動車用光触媒システムの代表的な実施例について、図7を用いて説明する。
【0055】
図7に示すように、符号31は、リアトレイ30に設けられた空気清浄器であり、符号33が該空気清浄器のブロア、符号41が該空気清浄器のフィルタ、符号35が該空気清浄器から送風される清浄空気である。空気清浄器31の空気取り入れ口のフィン40は、リアウインドウ3側から乗員側に傾いており、そのリアウインドウ3側の空気取り入れ口のフィン40の上面に、可視光応答性光触媒粉末の塗布層42が、フィルタ41上面に、触媒活性促進剤の塗布層43が設けられている。即ち、本実施形態では、光触媒から成る部位(フィン40上面の塗布層42)から触媒活性促進剤から成る部位(フィルタ41上面の塗布層43)へ、空気を輸送する機構として空気清浄器31が設けられているものである。
【0056】
太陽光5は、リアウインドウ3によって紫外光がカットされ、塗布層42を照射する。塗布層42ならびに43の、可視光応答性光触媒粉末と触媒活性促進剤粉末の塗布層が協調して機能することにより、車室内空気に含まれる有機物質が、塗布層42で光分解により浄化され、紫外光のない車室内において、充分な浄化機能を発現する事ができる。
【0057】
空気清浄器31の空気取り入れ口のフィン40に塗布層42を設けたため、塗布層42に車室内空気が順次供給されることにより、その光触媒浄化効率を向上させることができる。また、塗布層42により生成した中間生成物が順次フィルタ41上に設けられた触媒活性促進剤の粉末の塗布層43に供給され、触媒活性促進の効果を向上させる事ができる。
【0058】
また、触媒活性促進剤を空気清浄器内部のフィルタ41の上面に設けたため、触媒活性促進剤の色が、乗員や通行人が覗き込んでも見えにくく、自動車の様々な内外装に対して、意匠性を損なうことなく適用可能である。
【0059】
図7では、フィルタ41の上面に触媒活性促進剤の塗布層43を設けたが、これに限らず、空気取り入れ口のフィン40の裏面に設けても良い。また、フィルタ41の上面に設けた触媒活性促進剤の塗布層43は、塗布に限らず、触媒活性促進剤の粉末を撒いただけでも良い。なお、空気取り入れ口のフィン40の裏面に設ける場合には、触媒活性促進剤の塗布層43が設けられた専用フィルタ41やフィルタ41交換毎に触媒活性促進剤の粉末を撒くといった操作が不要である点で優れている。一方、フィルタ41側に触媒活性促進剤を設ける場合には、中間生成物が、気流に乗って塗布層43に供給されるため、中間生成物を確実に捕捉しやすい構成とすることができる点で優れている。
【0060】
本実施形態でも、塗布層42ならびに43が離間していることから、これらの層の間隔は、できるだけ狭い方が塗布層42で生じた中間生成物を失活させることなく塗布層43に素早く供給することができることから望ましい。かかる観点から、塗布層42と塗布層43の間隔(両層間の最短距離とする)は、50mm以下程度、好ましくは5mm以下程度とするのが望ましいが、かかる範囲を外れる場合であっても、これらの層の光触媒と触媒活性促進剤とが協調して機能することができるものであれば何ら制限されるものではない。
【0061】
(第6の実施の形態)
次に、本発明の第6の実施の形態に係る自動車用光触媒システムは、太陽光ないしは人工光の照射される領域に設けられた光触媒と、該光触媒の触媒活性促進剤とから構成されてなる光触媒システムにおいて、前記光触媒から成る部位と、該光触媒から成る部位と異なった領域に設けられた該光触媒の触媒活性促進剤から成る部位と、から構成されているものである。
【0062】
更に、本実施形態に係る自動車用光触媒システムにおいては、光の入射面内に、前記触媒活性促進剤から成る部位が部分的に設けられており、光触媒が設けられた部位が太陽光ないしは人工光を導入する窓および/またはカバーである。更に、前記窓が、加熱ヒータないしはアンテナ線を有する自動車用窓ガラスであって、前記加熱ヒータないしはアンテナ線の設けられた領域に、前記触媒活性促進剤から成る部位が設けられていることを特徴とするものである。
【0063】
本発明の第6の実施の形態に係る自動車用光触媒システムの代表的な実施例について、図8を用いて説明する。
【0064】
本実施形態では、図8に示すように、リアウインドウ3の車室内側に、細いライン状の導電性パターンで、ラジオのアンテナ線52が設けられており、細いライン状の導電性パターンとすることで、リアウインドウ3全体はシースルーとなって、運転者及び乗員の視界2が確保されている。ここで、運転者及び乗員の視界2については、第1の実施の形態で説明したと同様である。このリアウインドウ3の車室内側の全面に、可視光応答性光触媒被膜50が、アンテナ線52の上面に、触媒活性促進剤粉末の塗布層51が設けられている。
【0065】
太陽光5は、リアウインドウ3によって紫外光がカットされ、被膜50を照射する。可視光応答性光触媒被膜50ならびに触媒活性促進剤粉末の塗布層51が近傍で協調して機能することにより、車室内空気に含まれる有機物質が、被膜50で光分解により浄化され、紫外光のない車室内において、充分な浄化機能を発現する事ができる。
【0066】
可視光応答性光触媒被膜50は、例えばWO3であれば、緑がかった透明な薄い青色であり、塗布部の透明性を損なわない。一方、触媒活性促進剤粉末の塗布層51は、例えばCuOであれば、赤茶色で光吸収特性が高く、リアウインドウ3等の窓の全面に塗布したのでは、窓のシースルー性を確保することが出来ない。可視光応答性光触媒粉末と触媒活性促進剤粉末とを混合して塗布した場合も、同じく、窓のシースルー性を確保することが出来ない。本実施形態では、アンテナ線52というもともと光に対して開口部となっていない領域に、触媒活性促進剤粉末の塗布層51を設けることで、窓のシースルー性を低下させること無く、可視光応答性光触媒と触媒活性促進剤から構成される光触媒システムを機能させることができる。
【0067】
なお、本実施の形態において、上述の第1〜第5の実施の形態の可視光応答性光触媒粉末の塗布層という表現ではなく、可視光応答性光触媒被膜という表現を用いたが、透明性を確保する必要のある窓の実施例のため、より粒子径が小さく、より緻密で透明性の高い、という事を表現するために用いたものであり、可視光応答性光触媒粉末の塗布層と本質的には同じものである。
【0068】
図8では、アンテナ線を例に説明したが、加熱ヒータ線でも良いし、アンテナ線やヒータ線の有無によらず、細いライン状あるいは細かなパターン状に、触媒活性促進剤粉末の塗布層を設けても、シースルー性が確保された光触媒機能を有する窓ガラスを得ることができる。
【0069】
また、可視光応答性光触媒被膜50は、図8に示すように、アンテナ線52部分を除くリアウインドウ3の車室内側の全面に形成されていればよいが、アンテナ線52の上面にも形成されていてもよい。この場合には、アンテナ線52の上面の可視光応答性光触媒被膜50の上部に触媒活性促進剤粉末の塗布層51が設けられている構成となる。また、加熱ヒータ線やアンテナ線は、通常、図8のようにリアウインドウ3の車室内側に形成されているが、リアウインドウ3の内部に埋め込まれていてもよい。そうした場合には、リアウインドウ3の車室内側の全面に可視光応答性光触媒被膜50を設ければよい。そして、リアウインドウ3の車室内側の加熱ヒータやアンテナ線により光に対して開口部となっていない領域に、加熱ヒータ線やアンテナ線と同程度の細いライン状のパターンで、可視光応答性光触媒被膜50の上部に触媒活性促進剤粉末の塗布層51を設けた構成としてもよい。あるいは、リアウインドウ3の車室内側の加熱ヒータやアンテナ線により光に対して開口部となっていない領域に、加熱ヒータ線やアンテナ線と同程度の細いライン状のパターンで触媒活性促進剤粉末の塗布層51が設けられ、該塗布層51が設けられたリアウインドウ3の車室内側の全面に、可視光応答性光触媒被膜50が設けられた構成となっていてもよい。
(第7の実施の形態)
次に、本発明の第7の実施の形態に係る自動車用光触媒システムは、太陽光ないしは人工光の照射される領域に設けられた光触媒と、該光触媒の触媒活性促進剤とから構成されてなる光触媒システムにおいて、前記光触媒から成る部位と、該光触媒から成る部位と異なった領域に設けられた該光触媒の触媒活性促進剤から成る部位と、から構成されているものである。即ち、可視光応答性光触媒とその触媒活性促進剤とが離間した状態で構成されているものである。
【0070】
更に、本実施形態に係る自動車用光触媒システムにおいては、光の入射面の垂直ないし前後方向に、前記光触媒からなる領域ないしは層と、前記触媒活性促進剤からなる領域ないしは層とが設けられている。更に、前記光触媒からなる領域ないしは層と、前記触媒活性促進剤からなる領域ないしは層の間に、多孔性隔膜が設けられていることを特徴とするものである。
【0071】
本発明の第7の実施の形態に係る自動車用光触媒システムの代表的な実施例について、図9を用いて説明する。
【0072】
本実施形態では、図9に示すように、多孔質隔膜63、例えば、布、紙あるいはパンチングボードの主面に可視光応答性光触媒粉末の塗布層62が、多孔質隔膜63の裏面に、触媒活性促進剤の粉末64が設けられ、結着材65を用いて、リアトレイの樹脂構造材60の表面に、結着されている。
【0073】
太陽光5は、リアウインドウ3によって紫外光がカットされ、塗布層62を照射する。可視光応答性光触媒粉末の塗布層62ならびに触媒活性促進剤の粉末64が、中間生成物をやり取り可能な多孔質隔膜63の両面の近傍で協調して機能することにより、車室内空気に含まれる有機物質が、塗布層62で光分解により浄化され、紫外光のない車室内において、充分な浄化機能を発現する事ができる。
【0074】
また、可視光応答性触媒の塗布層62を介して多孔質隔膜63の表面が透けて見え、触媒活性促進剤の粉末64は多孔質隔膜63の裏面にあるために、その色が見えない構造となっているため、多孔質隔膜63の上面(主面)に色や模様が施されていても良い。
【0075】
また、多孔質隔膜の材質は、主面に可視光応答性触媒を適用することから、光触媒作用による劣化を受けない無機系ないしは金属系材料によるものが望ましい。多孔質隔膜の材質に有機系材料、例えば、ナイロンやポリエステルなどを用いる場合には、第1の実施の形態で説明したような劣化を防止するための層を多孔質隔膜と可視光応答性触媒の塗布層の間に形成してもよい。この場合には、当該劣化を防止するための層自身も、多孔質隔膜と同程度の多孔質となっているのが望ましい。また、車室内の適用部位によっては、多孔質隔膜も透明性を有している材料を用いても良い。塗布層62、多孔質隔膜63及び触媒活性促進剤の粉末64、更には結着材65や構造材60全体で立体的な形状や色や模様を表現することができるためである。
【0076】
なお、多孔質隔膜63の主面は、太陽光ないしは人工光が照射される側の面をいうものとする。従って、図9のような使用形態では、その上面(ないし表面)が主面となる。一方、カーテンなど一方の面に太陽光が、他方の面に人工光が照射されるような場合には、いずれか一方の面を主面とし、もう一方の面を裏面とすればよい。こうした場合には、より光触媒効果が発現される面を主面とするのが望ましいが、使用用途によっては、より意匠性が求められる面を主面としてもよいなど特に制限されるものではない。
【0077】
また、上記多孔質隔膜63の孔径としては、車室内空気に含まれる有機物質の光分解による中間生成物をやり取り可能なサイズを有していれば良く、0.1μm〜10mm、好ましくは10μm〜0.1mmの範囲が望ましい。ただし、上記範囲に何ら制限されるものではなく、上記範囲を外れる場合であっても、塗布層62の可視光応答性光触媒粉末と触媒活性促進剤の粉末64とが協調して機能し得るものであれば十分利用可能である。
【0078】
また、上記多孔質隔膜63の厚さとしては、第3の実施の形態で説明したように、できるだけ薄い方が塗布層62で生じた中間生成物を多孔質隔膜63を介して触媒活性促進剤の粉末64に素早く供給することができることから望ましく、中間生成物の固体表面(本実施の形態では多孔質隔膜63)との相互作用(衝突による失活)の観点から、第3の実施の形態に比し、空間的に、より近い事が望ましい。かかる観点から、多孔質隔膜63の厚さは、1μm〜5mm、好ましくは10μm〜0.5mm程度とするのが望ましいが、かかる範囲を外れる場合であっても、これらの塗布層62の光触媒と触媒活性促進剤粉末64とが協調して機能することができるものであれば何ら制限されるものではない。
【0079】
上記結着材65としては、特に制限されるものではなく、リアトレイの樹脂構造材60、多孔質隔膜63、触媒活性促進剤の粉末64を好適に結着し得る従来公知の接着剤、粘着剤などを用いることができる。
【0080】
(その他の実施の形態)
上述した実施の形態の開示の一部をなす論述および図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例および運用技術が明らかとなろう。以下に、それらの例を列挙し説明する。
【0081】
上述の第1、第2ならびに第3の本実施の形態では、車室内リアウインドウの日除けを例に説明したが、これに限定される訳ではなく、太陽光が照射されうる場所であれば適用可能であり、ダッシュボード、リアトレイ、サンバイザー、ソファー(座席シート)あるいはカーテンなどの車両用内装部品に、夫々、塗布層4、塗布層10ならびに11、塗布層20ならびに21を設けても良い。また、これらの塗布層は、構造材の全面に設けるだけでなく、部分的に設けても良い。構造材としては、非透明な構造に限らず、太陽光ないしは人工光を透過導入する窓なしはカバーに、光透過性を損なわずに適用することも可能である。上記カバーとしては、例えば、人工光である蛍光灯や白熱電球のカバーなどが挙げられるが、これらに制限されるものではない。
【0082】
上述の第4ならびに第5の実施の形態では、リアトレイ上に設けられた車室内用の空気清浄器を例に説明したが、これに限定される訳ではなく、空気清浄器がダッシュボードに設けられても良いし、車室内用のエアコンと一体化しても良い。
【0083】
上述の第7の本実施の形態においては、リアトレイを例に説明したが、これに限定される訳ではなく、太陽光が照射されうる場所であれば適用可能であり、日除け、ダッシュボード、サンバイザー、ソファー(座席シート)あるいはカーテンなどの車両用内装部品に適用可能である。
【0084】
上述した各実施の形態では、光触媒として、可視光応答性光触媒の1種であるWO3を例に説明したが、これに限定される訳ではなく、その他の可視光応答性光触媒、例えば、バナジン酸ビスマス(BiVO4)、無機酸化物半導体(インジウムタンタレート・InTaO4)、特開2003−33661号公報に記載のバナジウム含有複合酸化物半導体、特開2006−305523号公報、特開2004−344825号公報、特開2003−340288号公報、特開2002−346382号公報などに記載の可視光応答型酸化チタン(Ti−O−N系;TiO2−xNx、Ti−O−C系など)、硫黄ドープ可視光応答型酸化チタン、Ba,Sr(Ti,Zr)O3、特開2004−275946号公報に記載のペロブスカイト型複合酸化物、特開2004−275947号公報に記載のインジウム系複合酸化物、特開2004−66028号公報に記載のインジウムバリウム複合酸化物、特開2005−34716号公報に記載のアルカリ金属及びAgのビスマス複合酸化物、特開2004−358332号公報に記載のビスマス系複合酸化物等でも良いし、場合によっては、酸化チタン、タンタル酸ナトリウムなどの紫外光応答型光触媒に適用しても良い。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。併用する場合には、可視光応答性光触媒の異なる2種以上を併用してもよいし、可視光応答性光触媒と紫外光応答型光触媒とをそれぞれ1種以上組み合わせてもよいし、紫外光応答型光触媒の異なる2種以上を併用してもよい。
【0085】
光触媒粉末の粒径や形状などに関しては、使用用途に応じた光触媒機能を有効に発現し得るものであれば特に制限されるものではなく、既に光触媒として利用されている粒径や形状を適用することができる。
【0086】
上述した各実施の形態では、光触媒の触媒活性促進剤として、CuOを例に説明したが、これに限定される訳ではなく、その他の光触媒の触媒活性促進剤、例えば、Cu2O、Cu(NO3)2、CuSO4など他のCu化合物など光触媒活性化現象を発現するものであれば、いずれでも良い。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0087】
光触媒の触媒活性促進剤粉末の粒径や形状などに関しては、使用用途に応じた光触媒の触媒活性促進機能を有効に発現し得るものであれば特に制限されるものではない。例えば、光触媒と混合して用いる場合には、既に説明したように、光触媒の光吸収を妨げないような粒径や形状を選択することが望ましい。一方、光触媒と離間して用いるような場合には、光触媒の光吸収を妨げないとする要件は特に求められないことから、光触媒の触媒活性促進機能を有効に発現し得る範囲内で粒径や形状を適宜選択すればよい。
【0088】
上述した各実施の形態では、自動車の室内浄化用を例に説明したが、これに限定される訳ではなく、自動車以外の車両ないし移動体、例えば、電車(地下鉄を含む。人工光である蛍光灯を利用できるためである)、船舶、飛行機などの室内(車内や船内や機内)の浄化用にも適用可能である。更には上記車両ないし移動体以外の建築物(家屋、ビル、工場、地下街など)や建造物(橋梁、鉄塔や電波塔など)などの屋内の浄化用はもちろん屋外の浄化用においても適用可能である。例えば、建築物の内装用部品、例えば、壁紙、内壁材(床材、天井材、壁材など)、カーペット、絨毯、カーテン;ソファー、テーブル、本棚、食器棚、机、椅子、衣装家具などの文具・家具類;照明器具のカバー、エアコンなど;建築物の窓ガラスなどの屋内側、あるいは建築物や建造物の外壁材、などに対しても、適用可能である。
【0089】
上述した各実施の形態では、自動車用光触媒システムとしてリアウインドウ等の窓やカバーによって紫外光がカットされた太陽光を利用した実施形態となっているが、地下鉄や地下街等のように太陽光の利用が困難な場合や、ビルなど日当たりの悪い部屋など太陽光の利用が制限される場合には、蛍光灯、水銀灯、白熱電球などの人工光のみ、あるいは太陽光と人工光の双方を利用した光触媒システムとすることができる。また、紫外光をカットしない窓やカバーが用いられている移動体内や建築物の屋内の浄化用には、上述した各実施の形態で用いた可視光応答性光触媒を単独で、または紫外光応答型光触媒を単独で、あるいは双方の光触媒を組み合わせて利用することができる。
【0090】
上述した各実施の形態では、光触媒や触媒活性促進剤の塗布を例に説明したが、その製造プロセスに限定される訳ではなく、スパッタ等の他の手法を用いても良い。例えば、光触媒からなる塗布層の製造方法としては、入門光触媒(東京図書)p.146−154等に記載のスピンコート法、ディップコート法、吹き付け法、ゾルゲル法、あるいは、ドクターブレード法、など従来公知の光触媒の塗布、成膜技術を適宜利用することができるものであるなど、特に制限されるものではない。特に、本発明に適用し得る光触媒は、可視光応答性光触媒であれ、紫外光応答型光触媒であれ、いずれも金属酸化物の形態をとることから、一方の光触媒の塗布層の製造技術を他方の光触媒の塗布層の製造技術に適宜転用することができる。同様に、光触媒の触媒活性促進剤粉末からなる塗布層の製造方法としても、特に制限されるものではなく、上記光触媒からなる塗布層の製造方法を適宜利用することができるものである。
【0091】
第1の実施の形態において、塗布層4と塗布される構造材との間に、光触媒作用により構造材表面の劣化を防止するための層、例えばシリカ層等を設けても良いことを記載したが、この事は、第1の実施の形態に限らない。
【0092】
また、本発明の光触媒システムは、屋内ないしは自動車室内の環境浄化、具体的には、環境汚染有機物質を光分解するのに有効なシステムである。
【0093】
かかる環境汚染有機物質としては、例えば、酢酸、ギ酸などのカルボン酸類;アセトアルデヒド、ホルムアルデヒドなどのアルデヒド類;ベンゼン、トルエンなどの芳香族化合物類;ジクロロメタンなどのハロゲン化アルキル類などが挙げられる。光触媒システムとして、少なくとも可視光応答性光触媒を用いる場合には、カルボン酸類やアルデヒド類に対して特に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】可視光照射下における、WO3粉末を用いたアセトアルデヒドの光触媒分解反応における濃度依存性の説明図である。
【図2】可視光照射下における、WO3粉末を用いたアセトアルデヒドの光触媒分解反応における、各種金属酸化物の添加効果の説明図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る自動車用光触媒システムの代表的な実施例の説明図である。
【図4A】本発明の第2の実施の形態に係る自動車用光触媒システムの代表的な実施例の説明図である。
【図4B】本発明の第2の実施の形態に係る自動車用光触媒システムの他の実施例の説明図である。
【図5A】本発明の第3の実施の形態に係る自動車用光触媒システムの代表的な実施例の説明図である。
【図5B】本発明の第3の実施の形態に係る自動車用光触媒システムの他の実施例の説明図である。
【図6】本発明の第4の実施の形態に係る自動車用光触媒システムの代表的な実施例の説明図である。
【図7】本発明の第5の実施の形態に係る自動車用光触媒システムの代表的な実施例の説明図である。
【図8】本発明の第6の実施の形態に係る自動車用光触媒システムの代表的な実施例の説明図である。
【図9】本発明の第7の実施の形態に係る自動車用光触媒システムの代表的な実施例の説明図である。
【符号の説明】
【0095】
1 スリット状の日除けフラップ、
2 視界、
3 リアウインドウ、
4 可視光応答性光触媒粉末と触媒活性促進剤粉末の混合粉の塗布層、
5 太陽光、
10 触媒活性促進剤粉末の塗布層、
11 可視光応答性光触媒粉末の塗布層、
20 触媒活性促進剤粉末による模様の塗布層、
21 可視光応答性光触媒粉末の塗布層、
22 開口部、
30 リアトレイ、
31 空気清浄器、
32 空気取り入れ口のフィン、
33 ブロア、
34 フィルタ、
35 清浄空気、
36 可視光応答性光触媒粉末と触媒活性促進剤粉末の混合粉の塗布層、
40 空気取り入れ口のフィン、
41 フィルタ、
42 可視光応答性光触媒粉末の塗布層、
43 触媒活性促進剤の塗布層、
50 可視光応答性光触媒被膜、
51 触媒活性促進剤粉末の塗布層、
52 ラジオのアンテナ線、
60 リアトレイの樹脂構造材、
62 可視光応答性光触媒粉末の塗布層、
63 多孔質隔膜、
64 触媒活性促進剤の粉末、
65 結着材。
【技術分野】
【0001】
本発明は環境浄化用光触媒システムに関し、さらに詳しくは、屋内ないしは自動車室内の環境浄化用に好適な可視光応答性光触媒システムに関する。
【背景技術】
【0002】
環境浄化用の非常に優れた光触媒として、酸化チタンが知られており、ビルの外壁やテント屋根への実用化が進んでいる。酸化チタンは紫外光応答性であり、太陽光に含まれる紫外光により環境浄化機能を発現する、紫外光応答性光触媒である。
【0003】
しかしながら、通常のガラス窓は、その不純物のために、そもそも紫外光の透過性に乏しく、近年の自動車においては、さらに紫外光の透過性を防止したUVカットガラスが一般的となっている。そのため、車室内では、上記の紫外光応答性光触媒が機能できず、車室内で紫外光応答性光触媒を用いる場合、太陽光中の紫外線を取り込む機構(例えば、特許文献1参照。)あるいは、紫外線ランプ(例えば、特許文献2参照。)といった付加機構を設ける方法が提案されている。
【特許文献1】特開2006−177017号公報
【特許文献2】特開2000−217902号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、車室内で紫外光応答性光触媒を用いる場合、上記特許文献1、2に記載発明では、車室内に紫外光を導入する機構や紫外光源を設ける必要があり、その車載性に乏しいだけでなく、コスト高になる、という問題があった。
【0005】
また、紫外光の少ない環境のための可視光応答性光触媒の材料探索研究も進められているが、浄化性能に優れた材料は、なかなか見出されていなかった。
【0006】
そこで、本発明は、紫外光のない車室内においても、紫外光を導入する機構や紫外光源を設けることなく、充分な環境浄化機能を得る事のできる光触媒システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために鋭意努力した結果、可視光応答性光触媒とその触媒活性促進剤とを共存させることで、充分な光触媒活性が得られる事、可視光応答性光触媒とその触媒活性促進剤とが離間していても機能が発現する事、触媒活性促進剤に光照射される必要もない事、を発見し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、太陽光ないしは人工光の照射される領域に設けられた光触媒と、該光触媒の触媒活性促進剤と、から構成されていることを特徴とする光触媒システムにより達成することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、太陽光中の紫外線を取り込む機構や紫外線ランプといった付加機構を設けることなく、紫外光のない車室内においても充分な環境浄化機能を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の光触媒システムは、太陽光ないしは人工光の照射される領域に設けられた光触媒と、該光触媒の触媒活性促進剤と、から構成されていることを特徴とするものである。以下に、本発明につき詳しく説明する。
【0011】
可視光照射下における、可視光応答性光触媒WO3粉末を用いたアセトアルデヒド(以下、CH3CHOとも称する。)の光触媒分解反応において、CH3CHO濃度を1000ppmから10000ppmで段階的に変化させた場合のCO2生成量の変化を図1に示す。図1に示すように、いずれの濃度においても、量論比のおよそ半分量のCO2が生成した段階で反応速度が大幅に低下してしまう事がわかった。CH3CHO濃度自体は減少していることや、反応速度が低下した状態のサンプルにCH3CHOを再度導入すると、再びCO2生成速度の向上が確認されたことから、反応速度の低下は反応系内のO2不足やWO3粉末の劣化によるものではなく、反応中間体により反応性が低下しているものと推察される。
【0012】
次に、WO3粉末を用いたCH3CHOの光触媒分解反応において、WO3粉末に様々な遷移金属酸化物粉末を添加した効果を図2に示す。遷移金属酸化物粉末の添加量は2wt%で統一して、WO3及び遷移金属酸化物の両粉末を乳鉢で混合した。図2に示すように、CuO粉末を添加した場合、図1に示したような反応量の飽和現象が起こらず、短時間でCH3CHOが完全に消失する、というCuO粉末による光触媒活性化現象を発見した。この光触媒活性化現象は、CuOのみならず、Cu2O、Cu(NO3)2、CuSO4など他のCu化合物を添加した場合でも同様の効果が得られた。なお、CuO粉末だけでは光触媒活性は認められなかった。
【0013】
さらには、WO3粉末にCuOを担持しても、WO3とCuOの各薄膜を別々に調整し、共存させても同様の効果を得ることが出来ただけでなく、WO3薄膜にのみ光照射しても同様の効果が得られた。
【0014】
以上の事から、可視光応答性光触媒(WO3)とその触媒活性促進剤(CuO)とを共存させることで、充分な光触媒活性が得られる事、可視光応答性光触媒とその触媒活性促進剤とが離間していても機能が発現する事、触媒活性促進剤に光照射される必要もない事、という知見を得た。
【0015】
以下、本発明の各実施の形態に係る自動車用光触媒システムの詳細を図面を用いて説明する。但し、図面は模式的なものであり、各材料層の厚さやその比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。
【0016】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態に係る自動車用光触媒システムは、太陽光ないしは人工光の照射される領域に設けられた光触媒と、該光触媒の触媒活性促進剤とが混合された状態で構成されていることを特徴とするものである。
【0017】
本発明の第1の実施の形態に係る自動車用光触媒システムの代表的な実施例について、図3を用いて説明する。
【0018】
図3に示すように、符号1は、運転者及び乗員の視界2を妨げないように、リアウインドウ3の内側に設けられた、スリット状の日除けフラップである。ここで、運転者及び乗員の視界2は、図中の破線の矢印のように、車室内の運転席及び乗車席から後方のリアウインドウ3を通して車外を直接又はバックミラー越しに見たときの視界をいう。本実施形態では、日除けフラップ1の上面に、可視光応答性光触媒(例えば、WO3)粉末と該光触媒の触媒活性促進剤(例えば、CuO)粉末の混合粉の塗布層4が設けられている。塗布層4は、多孔質が好ましい。太陽光5は、リアウインドウ3によって紫外光がカットされ、塗布層4を照射する。車室内空気に含まれる有機物質が、塗布層4で光分解により浄化される。
【0019】
塗布層4は、可視光応答性光触媒粉末と触媒活性促進剤粉末が混合されており、これらが協調して機能することにより、紫外光のない車室内において、充分な浄化機能を発現する事ができる。また、フラップ1の上面に塗布層4を設けたため、太陽光5の塗布層4への照射効率が良いだけでなく、可視光応答性光触媒や触媒活性促進剤の色が、乗員や通行人から見えにくく、様々な可視光応答性光触媒や触媒活性促進剤の組み合わせを、自動車の様々な内外装に対して、意匠性を損なうことなく適用可能である。
【0020】
また、塗布層4は、緻密な塗布層であっても良いが、上記したように多孔質とすることで、塗布層4の細孔内部にまで、車室内空気に含まれる有機物質及び紫外光がカットされた太陽光が入り込み、可視光応答性光触媒の触媒活性及び利用効率を高めることができる。さらに光触媒で生成した有機物質の反応中間体が、該光触媒近傍に存在する触媒活性促進剤に素早く供給される混合形態となっているため、触媒活性促進効果を効率よく向上させる事ができる。
【0021】
上記観点から、塗布層4が多孔質の場合において、かかる塗布層4の粒子径としては、1nm〜500μm、好ましくは10nm〜10μmの範囲が望ましい。上記粒子径が10nm以上あれば、ボトムアップ製造法(アルコキシド法等の湿式製造法や、気相中熱分解法等の乾式製造法)による生産性が高く、好ましく、1μm以上であれば、トップダウン製造法(大きな粒子を粉砕する製造方法)による生産性が高く、好ましい。また、10μm以下であれば、塗布性や結着性が高く、好ましい。ただし、上記範囲に何ら制限されるものではなく、複数の粒子径の触媒粒子を混合しても良いし、1次粒子が凝集した2次粒子であっても良いし、場合によっては、触媒担体粒子に担持して用いても良いし、上記範囲を外れる場合であっても可視光応答性光触媒粉末と触媒活性促進剤粉末とが協調して機能し得るものであれば十分利用可能である。
【0022】
該塗布層4の厚さや塗布面積は、車室内空気に含まれる有機物質が、塗布層4で光分解により浄化することができるように適宜決定すればよい。また、他の実施形態の自動車用光触媒システムと組み合わせて用いるような場合には、これら全体の自動車用光触媒システムによる浄化機能を考慮して、各自動車用光触媒システムの塗布層の厚さや塗布面積を適宜決定すればよい。
【0023】
なお、以後の各実施の形態での各塗布層10、11、20、21、36、42、43、51、62あるいは被膜50や粉末64の粒子径、厚さ、塗布ないし被膜面積や触媒活性促進剤の粉末64を撒く範囲(面積)に関しても、上記第1の実施形態と同様である。
【0024】
本実施形態のように可視光応答性光触媒粉末と触媒活性促進剤粉末とを混合して利用する形態では、触媒活性促進剤が可視光応答性光触媒の光吸収を妨げて光分解反応の進行を遅らせないように、その配合比率を調整するのが望ましい。具体的には、触媒活性促進剤粉末の添加量は、可視光応答性光触媒粉末に対して1〜5質量%、より好ましくは1〜2質量%である。触媒活性促進剤粉末の添加量が1質量%以上あれば、可視光応答性光触媒粉末と触媒活性促進剤粉末とを協調して機能させるのに十分である。触媒活性促進剤粉末の添加量が5質量%以下であれば、触媒活性促進剤が可視光応答性光触媒の光吸収を妨げることなく光分解反応を素早く進行させることができる点で優れている。なお、上記範囲は、CuO粉末とWO3粉末を用いた結果に基づくものである。CuOは、光触媒活性はないものの、光吸収特性に優れている。そのため、本実施の形態のように可視光応答性光触媒と混合して用いる場合には、可視光応答性光触媒の光吸収を妨げないようにその添加量に留意する必要がある。一方、可視光応答性光触媒の光吸収をあまり妨げない触媒活性促進剤であれば、上記範囲に制限されるものではない。以上のことから、触媒活性促進剤粉末の添加量は、可視光応答性光触媒と触媒活性促進剤との組み合わせ等によっては、上記範囲を外れる場合であっても光触媒と触媒活性促進剤とが協調して機能し得る範囲内であれば十分利用可能である。
【0025】
塗布層4と、光触媒を含む塗布層が直接ないし間接的に塗布される構造材(以下、単に構造材ともいう。)との間に、光触媒作用により構造材表面の劣化を防止するための層、例えば、シリカ層等を設けても良い。図3では、上記構造材として日除けフラップ1の例を示したが、本実施形態では、これに制限されるものではなく、上記構造材の上面が、有機物、例えば、有機塗料、有機系樹脂、有機繊維・布材などのように光触媒作用による光分解反応・劣化を受けやすい場合に効果的である。また、劣化を防止するための層としては、光触媒作用による劣化を受けない無機系材料による層であれば、特にシリカに制限されるものではなく、場合によっては、有機系材料のテフロン(登録商標)樹脂などを用いることができる。
【0026】
なお、本実施形態及び後述する第4の実施の形態では、以下に説明するような第2、3、5〜7の実施形態のように、可視光応答性光触媒から成る部位とその触媒活性促進剤から成る部位とが異なった領域に離間して構成されていなければよい。即ち、可視光応答性光触媒とその触媒活性促進剤とを同じ領域に相互に接触した状態で共存して構成されていてもよい。例えば、上述したように光触媒粉末とその触媒活性促進剤粉末の混合粉を塗布して共存させる形態のほか、光触媒粉末に触媒活性促進剤(微粉末)を担持してなる担持体を塗布して共存させる形態としてもよいなど、特に制限されるものではない。該担持体は、例えば、可視光応答性光触媒(例えば、WO3)粉末に硫酸銅や硝酸銅の水溶液やエタノール溶液などを加えて混合し、70〜80℃で乾燥させてから、500〜550℃で焼成することで触媒活性促進剤のCuOを担持することができる。触媒活性促進剤を担持させるための最適な条件は、光触媒の種類、形状、担持量などを考慮し適宜設定すればよい。
【0027】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態に係る自動車用光触媒システムは、太陽光ないしは人工光の照射される領域に設けられた光触媒と、該光触媒の触媒活性促進剤とから構成されてなる光触媒システムにおいて、前記光触媒から成る部位と、該光触媒から成る部位と異なった領域に設けられた該光触媒の触媒活性促進剤から成る部位と、から構成されているものである。即ち、可視光応答性光触媒とその触媒活性促進剤とが離間した状態で構成されているものである。
【0028】
更に、本実施形態に係る自動車用光触媒システムにおいては、光の入射面の垂直ないし前後方向に、前記光触媒からなる領域ないしは層と、前記触媒活性促進剤からなる領域ないしは層とが設けられていることを特徴とするものである。
【0029】
本発明の第2の実施の形態に係る自動車用光触媒システムの代表的な実施例について、図4を用いて説明する。
【0030】
図4Aに示すように、符号1は、運転者及び乗員の視界2を妨げないように、リアウインドウ3の内側に設けられた、スリット状の日除けフラップである。ここで、運転者及び乗員の視界2については、第1の実施の形態で説明したと同様である。本実施形態では、日除けフラップ1の上面に、触媒活性促進剤(例えば、CuO)粉末の塗布層10が、さらにその上面に、可視光応答性光触媒(例えば、WO3)粉末の塗布層11が設けられている。即ち、本実施形態では、太陽光5の入射面の垂直ないし前後方向に、塗布層10と塗布層11とが設けられている構成となっている。塗布層10ならびに11は、多孔質が好ましい。太陽光5は、リアウインドウ3によって紫外光がカットされ、塗布層11を照射し、車室内空気に含まれる有機物質が、塗布層11で光分解により浄化される点は、第1の実施の形態と類似である。
【0031】
塗布層11の可視光応答性光触媒粉末と塗布層10の触媒活性促進剤粉末とが、極めて近傍に塗布成膜されており、これらの層が協調して機能することにより、紫外光のない車室内において、充分な浄化機能を発現する事ができる。
【0032】
触媒活性促進剤の塗布層10は、光触媒活性を有しておらず、光触媒作用による劣化を受けないため、光触媒作用により構造材表面の劣化を防止する機能を有しており、光触媒作用により構造材表面の劣化を防止するための層を、別途設ける必要がない。
【0033】
触媒活性促進剤としてCuOを用いる場合は、光触媒活性はないものの、光吸収特性に優れているため、本実施の形態に記載されているように、可視光応答性光触媒の光吸収を妨げないよう、光照射面の可視光応答性光触媒の塗布層の下部に触媒活性促進剤の塗布層を設けた方が好ましい。可視光応答性光触媒の光吸収をあまり妨げない触媒活性促進剤であれば、塗布順を入れ替えても良い。
【0034】
また、塗布層10、11は緻密な塗布層であっても良いが、塗布層10、11を上記したように多孔質とすることで、塗布層10、11の細孔内部にまで、車室内空気に含まれる有機物質及び紫外光がカットされた太陽光が入り込み、可視光応答性光触媒の触媒活性及び利用効率を高めることができる。さらに光触媒で生成した有機物質の反応中間体(中間生成物ともいう)が、該光触媒塗布層10の下部に位置する触媒活性促進剤の塗布層11に塗布層10、11の細孔を通じて素早く供給される形態となっているため、触媒活性促進効果を効率よく向上させる事ができる。
【0035】
上記観点から、塗布層10、11が多孔質の場合において、かかる塗布層10、11の粒子径としては、1nm〜500μm、好ましくは10nm〜10μmの範囲が望ましい。上記粒子径が10nm以上あれば、ボトムアップ製造法(アルコキシド法等の湿式製造法や、気相中熱分解法等の乾式製造法)による生産性が高く、好ましく、1μm以上であれば、トップダウン製造法(大きな粒子を粉砕する製造方法)による生産性が高く、好ましい。また、10μm以下であれば、塗布性や結着性が高く、好ましい。ただし、上記範囲に何ら制限されるものではなく、複数の粒子径の触媒粒子を混合しても良いし、1次粒子が凝集した2次粒子であっても良いし、場合によっては、触媒担体粒子に担持して用いても良いし、上記範囲を外れる場合であっても可視光応答性光触媒粉末と触媒活性促進剤粉末とが協調して機能し得るものであれば十分利用可能である。
【0036】
本実施形態のように可視光応答性光触媒とその触媒活性促進剤とが離間した状態で利用する形態では、塗布層10の触媒活性促進剤が塗布層11の可視光応答性光触媒の光吸収を妨げて光分解反応の進行を遅らせることがないことから、それぞれ使用比率は特に制限されるものではない。光触媒と触媒活性促進剤とが協調して機能し得る範囲内で適宜利用可能である。
【0037】
なお、光触媒から成る塗布層11及び触媒活性促進剤から成る塗布層10は、図4Aに示すように、いずれの層も太陽光5の入射面内全体に設けられていてもよいし、図4Bのように、入射面内に部分的に設けられていてもよい。光触媒から成る塗布層11及び触媒活性促進剤から成る塗布層10が入射面内に部分的に設けられていている場合には、図4Bのように、光の入射面の垂直ないし前後方向に、模様の塗布層10、11が形成されていてもよい。この場合には、光触媒粉末および触媒活性促進剤粉末による模様の塗布層10、11が形成されていない領域は、可視光応答性光触媒粉末により車室内空気に含まれる有機物質が光分解した中間生成物をやり取りする開口部22として機能することができる。また、図4Aのように、光触媒から成る塗布層11及び触媒活性促進剤から成る塗布層10が入射面内に部分的に設けられていている場合には、構造材上に順に形成される塗布層10、11の表面平滑性に優れ、塵や埃がたまり難く、ふき取りやすい構成とすることができる。
【0038】
(第3の実施の形態)
次に、本発明の第3の実施の形態に係る自動車用光触媒システムは、太陽光ないしは人工光の照射される領域に設けられた光触媒と、該光触媒の触媒活性促進剤とから構成されてなる光触媒システムにおいて、前記光触媒から成る部位と、該光触媒から成る部位と異なった領域に設けられた該光触媒の触媒活性促進剤から成る部位と、から構成されているものである。更に、本実施形態に係る自動車用光触媒システムにおいては、光の入射面内に、前記触媒活性促進剤から成る部位が部分的に設けられていることを特徴とするものである。
【0039】
本発明の第3の実施の形態に係る自動車用光触媒システムの代表的な実施例について、図5を用いて説明する。
【0040】
図5Aに示すように、符号1は、運転者及び乗員の視界2を妨げないように、リアウインドウ3の内側に設けられた、スリット状の日除けフラップである。ここで、運転者及び乗員の視界2については、第1の実施の形態で説明したと同様である。本実施形態では、日除けフラップ1の上面に、可視光応答性光触媒(例えば、WO3)粉末の塗布層21が、さらにその上面に、触媒活性促進剤(例えば、CuO)粉末による模様の塗布層20が、設けられている。即ち、本実施形態では、太陽光5の入射面内に、触媒活性促進剤から成る塗布層20が部分的に設けられている構成となっている。塗布層20ならびに21は、多孔質が好ましい。太陽光5は、リアウインドウ3によって紫外光がカットされ、塗布層21を照射し、車室内空気に含まれる有機物質が、塗布層21で光分解により浄化される点は、第1、2の実施の形態と類似である。
【0041】
塗布層21の可視光応答性光触媒粉末と塗布層20の触媒活性促進剤粉末とが、極めて近傍に塗布成膜されており、これらの層が協調して機能することにより、紫外光のない車室内において、充分な浄化機能を発現する事ができる点は、第2の実施の形態と類似である。触媒活性促進剤粉末による模様の塗布層20の触媒活性促進剤粉末の塗布されていない領域は、可視光応答性光触媒粉末の塗布層21の車室内空気に対する開口部22として機能する。即ち、図5Aに示すように、触媒活性促進剤粉末による模様の塗布層20が形成されていない領域は、可視光応答性光触媒粉末の塗布層21により車室内空気に含まれる有機物質が光分解した中間生成物を、その近傍の塗布層20との間でやり取りする開口部22として機能することができる。かかる観点から、塗布層20及び開口部22の幅ないし間隔は、できるだけ狭い方が中間生成物を塗布層20に素早く供給することができることから望ましい。かかる観点から、塗布層20及び開口部22の幅ないし間隔は、10μm〜50mm、好ましくは100μm〜5mm程度とするのが望ましいが、かかる範囲を外れる場合であってもこれらの層20、21が協調して機能することができるものであれば何ら制限されるものではない。また、模様による意匠性を付与する場合には、意匠性が損なわれない範囲で塗布層20及び開口部22の幅ないし間隔狭くすればよい。あるいは印刷技術のように非常に細かいドットで塗布層20及び開口部22を形成して模様を構成しても良いし、インクジェット印刷技術を用いて、微細な模様やパターンを構成することで、これらの層の協調機能による充分な浄化機能と共に意匠性を発現するようにしてもよい。
【0042】
可視光応答性光触媒としてWO3を、触媒活性促進剤としてCuOを用いる場合は、それぞれ、緑がかった薄い青色(半透明)、赤茶色であるため、日除けフラップ1の構造体表面の色を下地とし、赤茶色の模様が描かれた日除けフラップが得られ、その意匠性を高める事ができる。様々な、可視光応答性光触媒ならびに触媒活性促進剤の色ならびに色合いの組み合わせにより、様々な模様を描くことができ、意匠性を高めることが出来る。かかる意匠性付与に関しては、本実施形態に制限されるものではなく、他の実施形態においても同様にすることができる。
【0043】
また、図5Aの塗布層20ならびに21の塗布順を入れ替えても良いし、塗布層20ならびに21それぞれで模様を描いても良い。
【0044】
更に、可視光応答性光触媒から成る塗布層21は、図5Aに示すように太陽光5の入射面内全体に設けられていてもよいし、入射面内に部分的に設けられていてもよい。光触媒から成る塗布層21が入射面内に部分的に設けられていている場合には、図5Bのように、模様の塗布層20が形成されていない部位ないし領域にのみ形成されていてもよい。この場合には、図5Aの開口部22の部位に光触媒から成る塗布層21が形成され、図5Aと同様に、当該塗布層21で光分解により生じた中間生成物を、隣接する塗布層20に素早く供給することができる。かかる観点から、塗布層20、21の幅ないし間隔も、図5Aの形態と同様に、できるだけ狭い方が中間生成物を塗布層20に素早く供給することができることから望ましく、意匠性に関しても同様である。
【0045】
(第4の実施の形態)
次に、本発明の第4の実施の形態に係る自動車用光触媒システムは、太陽光ないしは人工光の照射される領域に設けられた光触媒と、該光触媒の触媒活性促進剤とから構成されてなる光触媒システムにおいて、前記光触媒が設けられた領域または前記光触媒から成る部位へ空気を輸送する機構を有することを特徴とするものである。
【0046】
本発明の第4の実施の形態に係る自動車用光触媒システムの代表的な実施例について、図6を用いて説明する。
【0047】
図6に示すように、符号31は、リアトレイ30に設けられた空気清浄器であり、符号33が該空気清浄器のブロア、符号34が該空気清浄器のフィルタ、符号35が該空気清浄器から送風される清浄空気である。空気清浄器31の空気取り入れ口のフィン32は、リアウインドウ3側から乗員側に傾いており、そのリアウインドウ3側の空気取り入れ口のフィン32の上面に、可視光応答性光触媒粉末と触媒活性促進剤粉末の混合粉の塗布層36が設けられている。即ち、本実施形態では、光触媒が設けられた領域の塗布層36へ空気を輸送する機構として空気清浄器31が設けられているものである。
【0048】
太陽光5は、リアウインドウ3によって紫外光がカットされ、塗布層36を照射する。車室内空気に含まれる有機物質が、塗布層36で光分解により浄化される点、ならびに塗布層36は、可視光応答性光触媒粉末と触媒活性促進剤粉末が混合されており、これらが協調して機能することにより、紫外光のない車室内において、充分な浄化機能を発現する事ができる点は、第1の実施の形態と類似である。
【0049】
空気清浄器31の空気取り入れ口のフィン32に塗布層36を設けたため、塗布層36に車室内空気が順次供給されることにより、その光触媒浄化効率を向上させることができる。
【0050】
また、リアウインドウ3側から乗員側に傾いた空気取り入れ口のフィン32の上面に塗布層36を設けたため、太陽光5の塗布層36への照射効率が良いだけでなく、可視光応答性光触媒や触媒活性促進剤の色が、乗員や通行人から見えにくく、様々な可視光応答性光触媒や触媒活性促進剤の組み合わせを、自動車の様々な内外装に対して、意匠性を損なうことなく適用可能である。
【0051】
さらに、本実施形態では、空気取り入れ口のフィン32の上面に第1の実施形態と同様に可視光応答性光触媒粉末と触媒活性促進剤粉末の混合粉の塗布層36を設けた例を図示している。しかしながら、本発明では、かかる態様に何ら制限されるものではなく、フィン32の上面に、第2の実施形態や第3の実施形態のように、可視光応答性光触媒粉末の塗布層とその触媒活性促進剤粉末の塗布層とを設けてもよい。
【0052】
(第5の実施の形態)
次に、本発明の第5の実施の形態に係る自動車用光触媒システムは、太陽光ないしは人工光の照射される領域に設けられた光触媒と、該光触媒の触媒活性促進剤とから構成されてなる光触媒システムにおいて、前記光触媒から成る部位と、該光触媒から成る部位と異なった領域に設けられた該光触媒の触媒活性促進剤から成る部位と、から構成されているものである。即ち、可視光応答性光触媒とその触媒活性促進剤とが離間した状態で構成されているものである。
【0053】
更に、本実施形態に係る自動車用光触媒システムにおいては、光触媒から成る部位から前記光触媒の触媒活性促進剤から成る部位へ、空気を輸送する機構を有することを特徴とするものである。
【0054】
本発明の第5の実施の形態に係る自動車用光触媒システムの代表的な実施例について、図7を用いて説明する。
【0055】
図7に示すように、符号31は、リアトレイ30に設けられた空気清浄器であり、符号33が該空気清浄器のブロア、符号41が該空気清浄器のフィルタ、符号35が該空気清浄器から送風される清浄空気である。空気清浄器31の空気取り入れ口のフィン40は、リアウインドウ3側から乗員側に傾いており、そのリアウインドウ3側の空気取り入れ口のフィン40の上面に、可視光応答性光触媒粉末の塗布層42が、フィルタ41上面に、触媒活性促進剤の塗布層43が設けられている。即ち、本実施形態では、光触媒から成る部位(フィン40上面の塗布層42)から触媒活性促進剤から成る部位(フィルタ41上面の塗布層43)へ、空気を輸送する機構として空気清浄器31が設けられているものである。
【0056】
太陽光5は、リアウインドウ3によって紫外光がカットされ、塗布層42を照射する。塗布層42ならびに43の、可視光応答性光触媒粉末と触媒活性促進剤粉末の塗布層が協調して機能することにより、車室内空気に含まれる有機物質が、塗布層42で光分解により浄化され、紫外光のない車室内において、充分な浄化機能を発現する事ができる。
【0057】
空気清浄器31の空気取り入れ口のフィン40に塗布層42を設けたため、塗布層42に車室内空気が順次供給されることにより、その光触媒浄化効率を向上させることができる。また、塗布層42により生成した中間生成物が順次フィルタ41上に設けられた触媒活性促進剤の粉末の塗布層43に供給され、触媒活性促進の効果を向上させる事ができる。
【0058】
また、触媒活性促進剤を空気清浄器内部のフィルタ41の上面に設けたため、触媒活性促進剤の色が、乗員や通行人が覗き込んでも見えにくく、自動車の様々な内外装に対して、意匠性を損なうことなく適用可能である。
【0059】
図7では、フィルタ41の上面に触媒活性促進剤の塗布層43を設けたが、これに限らず、空気取り入れ口のフィン40の裏面に設けても良い。また、フィルタ41の上面に設けた触媒活性促進剤の塗布層43は、塗布に限らず、触媒活性促進剤の粉末を撒いただけでも良い。なお、空気取り入れ口のフィン40の裏面に設ける場合には、触媒活性促進剤の塗布層43が設けられた専用フィルタ41やフィルタ41交換毎に触媒活性促進剤の粉末を撒くといった操作が不要である点で優れている。一方、フィルタ41側に触媒活性促進剤を設ける場合には、中間生成物が、気流に乗って塗布層43に供給されるため、中間生成物を確実に捕捉しやすい構成とすることができる点で優れている。
【0060】
本実施形態でも、塗布層42ならびに43が離間していることから、これらの層の間隔は、できるだけ狭い方が塗布層42で生じた中間生成物を失活させることなく塗布層43に素早く供給することができることから望ましい。かかる観点から、塗布層42と塗布層43の間隔(両層間の最短距離とする)は、50mm以下程度、好ましくは5mm以下程度とするのが望ましいが、かかる範囲を外れる場合であっても、これらの層の光触媒と触媒活性促進剤とが協調して機能することができるものであれば何ら制限されるものではない。
【0061】
(第6の実施の形態)
次に、本発明の第6の実施の形態に係る自動車用光触媒システムは、太陽光ないしは人工光の照射される領域に設けられた光触媒と、該光触媒の触媒活性促進剤とから構成されてなる光触媒システムにおいて、前記光触媒から成る部位と、該光触媒から成る部位と異なった領域に設けられた該光触媒の触媒活性促進剤から成る部位と、から構成されているものである。
【0062】
更に、本実施形態に係る自動車用光触媒システムにおいては、光の入射面内に、前記触媒活性促進剤から成る部位が部分的に設けられており、光触媒が設けられた部位が太陽光ないしは人工光を導入する窓および/またはカバーである。更に、前記窓が、加熱ヒータないしはアンテナ線を有する自動車用窓ガラスであって、前記加熱ヒータないしはアンテナ線の設けられた領域に、前記触媒活性促進剤から成る部位が設けられていることを特徴とするものである。
【0063】
本発明の第6の実施の形態に係る自動車用光触媒システムの代表的な実施例について、図8を用いて説明する。
【0064】
本実施形態では、図8に示すように、リアウインドウ3の車室内側に、細いライン状の導電性パターンで、ラジオのアンテナ線52が設けられており、細いライン状の導電性パターンとすることで、リアウインドウ3全体はシースルーとなって、運転者及び乗員の視界2が確保されている。ここで、運転者及び乗員の視界2については、第1の実施の形態で説明したと同様である。このリアウインドウ3の車室内側の全面に、可視光応答性光触媒被膜50が、アンテナ線52の上面に、触媒活性促進剤粉末の塗布層51が設けられている。
【0065】
太陽光5は、リアウインドウ3によって紫外光がカットされ、被膜50を照射する。可視光応答性光触媒被膜50ならびに触媒活性促進剤粉末の塗布層51が近傍で協調して機能することにより、車室内空気に含まれる有機物質が、被膜50で光分解により浄化され、紫外光のない車室内において、充分な浄化機能を発現する事ができる。
【0066】
可視光応答性光触媒被膜50は、例えばWO3であれば、緑がかった透明な薄い青色であり、塗布部の透明性を損なわない。一方、触媒活性促進剤粉末の塗布層51は、例えばCuOであれば、赤茶色で光吸収特性が高く、リアウインドウ3等の窓の全面に塗布したのでは、窓のシースルー性を確保することが出来ない。可視光応答性光触媒粉末と触媒活性促進剤粉末とを混合して塗布した場合も、同じく、窓のシースルー性を確保することが出来ない。本実施形態では、アンテナ線52というもともと光に対して開口部となっていない領域に、触媒活性促進剤粉末の塗布層51を設けることで、窓のシースルー性を低下させること無く、可視光応答性光触媒と触媒活性促進剤から構成される光触媒システムを機能させることができる。
【0067】
なお、本実施の形態において、上述の第1〜第5の実施の形態の可視光応答性光触媒粉末の塗布層という表現ではなく、可視光応答性光触媒被膜という表現を用いたが、透明性を確保する必要のある窓の実施例のため、より粒子径が小さく、より緻密で透明性の高い、という事を表現するために用いたものであり、可視光応答性光触媒粉末の塗布層と本質的には同じものである。
【0068】
図8では、アンテナ線を例に説明したが、加熱ヒータ線でも良いし、アンテナ線やヒータ線の有無によらず、細いライン状あるいは細かなパターン状に、触媒活性促進剤粉末の塗布層を設けても、シースルー性が確保された光触媒機能を有する窓ガラスを得ることができる。
【0069】
また、可視光応答性光触媒被膜50は、図8に示すように、アンテナ線52部分を除くリアウインドウ3の車室内側の全面に形成されていればよいが、アンテナ線52の上面にも形成されていてもよい。この場合には、アンテナ線52の上面の可視光応答性光触媒被膜50の上部に触媒活性促進剤粉末の塗布層51が設けられている構成となる。また、加熱ヒータ線やアンテナ線は、通常、図8のようにリアウインドウ3の車室内側に形成されているが、リアウインドウ3の内部に埋め込まれていてもよい。そうした場合には、リアウインドウ3の車室内側の全面に可視光応答性光触媒被膜50を設ければよい。そして、リアウインドウ3の車室内側の加熱ヒータやアンテナ線により光に対して開口部となっていない領域に、加熱ヒータ線やアンテナ線と同程度の細いライン状のパターンで、可視光応答性光触媒被膜50の上部に触媒活性促進剤粉末の塗布層51を設けた構成としてもよい。あるいは、リアウインドウ3の車室内側の加熱ヒータやアンテナ線により光に対して開口部となっていない領域に、加熱ヒータ線やアンテナ線と同程度の細いライン状のパターンで触媒活性促進剤粉末の塗布層51が設けられ、該塗布層51が設けられたリアウインドウ3の車室内側の全面に、可視光応答性光触媒被膜50が設けられた構成となっていてもよい。
(第7の実施の形態)
次に、本発明の第7の実施の形態に係る自動車用光触媒システムは、太陽光ないしは人工光の照射される領域に設けられた光触媒と、該光触媒の触媒活性促進剤とから構成されてなる光触媒システムにおいて、前記光触媒から成る部位と、該光触媒から成る部位と異なった領域に設けられた該光触媒の触媒活性促進剤から成る部位と、から構成されているものである。即ち、可視光応答性光触媒とその触媒活性促進剤とが離間した状態で構成されているものである。
【0070】
更に、本実施形態に係る自動車用光触媒システムにおいては、光の入射面の垂直ないし前後方向に、前記光触媒からなる領域ないしは層と、前記触媒活性促進剤からなる領域ないしは層とが設けられている。更に、前記光触媒からなる領域ないしは層と、前記触媒活性促進剤からなる領域ないしは層の間に、多孔性隔膜が設けられていることを特徴とするものである。
【0071】
本発明の第7の実施の形態に係る自動車用光触媒システムの代表的な実施例について、図9を用いて説明する。
【0072】
本実施形態では、図9に示すように、多孔質隔膜63、例えば、布、紙あるいはパンチングボードの主面に可視光応答性光触媒粉末の塗布層62が、多孔質隔膜63の裏面に、触媒活性促進剤の粉末64が設けられ、結着材65を用いて、リアトレイの樹脂構造材60の表面に、結着されている。
【0073】
太陽光5は、リアウインドウ3によって紫外光がカットされ、塗布層62を照射する。可視光応答性光触媒粉末の塗布層62ならびに触媒活性促進剤の粉末64が、中間生成物をやり取り可能な多孔質隔膜63の両面の近傍で協調して機能することにより、車室内空気に含まれる有機物質が、塗布層62で光分解により浄化され、紫外光のない車室内において、充分な浄化機能を発現する事ができる。
【0074】
また、可視光応答性触媒の塗布層62を介して多孔質隔膜63の表面が透けて見え、触媒活性促進剤の粉末64は多孔質隔膜63の裏面にあるために、その色が見えない構造となっているため、多孔質隔膜63の上面(主面)に色や模様が施されていても良い。
【0075】
また、多孔質隔膜の材質は、主面に可視光応答性触媒を適用することから、光触媒作用による劣化を受けない無機系ないしは金属系材料によるものが望ましい。多孔質隔膜の材質に有機系材料、例えば、ナイロンやポリエステルなどを用いる場合には、第1の実施の形態で説明したような劣化を防止するための層を多孔質隔膜と可視光応答性触媒の塗布層の間に形成してもよい。この場合には、当該劣化を防止するための層自身も、多孔質隔膜と同程度の多孔質となっているのが望ましい。また、車室内の適用部位によっては、多孔質隔膜も透明性を有している材料を用いても良い。塗布層62、多孔質隔膜63及び触媒活性促進剤の粉末64、更には結着材65や構造材60全体で立体的な形状や色や模様を表現することができるためである。
【0076】
なお、多孔質隔膜63の主面は、太陽光ないしは人工光が照射される側の面をいうものとする。従って、図9のような使用形態では、その上面(ないし表面)が主面となる。一方、カーテンなど一方の面に太陽光が、他方の面に人工光が照射されるような場合には、いずれか一方の面を主面とし、もう一方の面を裏面とすればよい。こうした場合には、より光触媒効果が発現される面を主面とするのが望ましいが、使用用途によっては、より意匠性が求められる面を主面としてもよいなど特に制限されるものではない。
【0077】
また、上記多孔質隔膜63の孔径としては、車室内空気に含まれる有機物質の光分解による中間生成物をやり取り可能なサイズを有していれば良く、0.1μm〜10mm、好ましくは10μm〜0.1mmの範囲が望ましい。ただし、上記範囲に何ら制限されるものではなく、上記範囲を外れる場合であっても、塗布層62の可視光応答性光触媒粉末と触媒活性促進剤の粉末64とが協調して機能し得るものであれば十分利用可能である。
【0078】
また、上記多孔質隔膜63の厚さとしては、第3の実施の形態で説明したように、できるだけ薄い方が塗布層62で生じた中間生成物を多孔質隔膜63を介して触媒活性促進剤の粉末64に素早く供給することができることから望ましく、中間生成物の固体表面(本実施の形態では多孔質隔膜63)との相互作用(衝突による失活)の観点から、第3の実施の形態に比し、空間的に、より近い事が望ましい。かかる観点から、多孔質隔膜63の厚さは、1μm〜5mm、好ましくは10μm〜0.5mm程度とするのが望ましいが、かかる範囲を外れる場合であっても、これらの塗布層62の光触媒と触媒活性促進剤粉末64とが協調して機能することができるものであれば何ら制限されるものではない。
【0079】
上記結着材65としては、特に制限されるものではなく、リアトレイの樹脂構造材60、多孔質隔膜63、触媒活性促進剤の粉末64を好適に結着し得る従来公知の接着剤、粘着剤などを用いることができる。
【0080】
(その他の実施の形態)
上述した実施の形態の開示の一部をなす論述および図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例および運用技術が明らかとなろう。以下に、それらの例を列挙し説明する。
【0081】
上述の第1、第2ならびに第3の本実施の形態では、車室内リアウインドウの日除けを例に説明したが、これに限定される訳ではなく、太陽光が照射されうる場所であれば適用可能であり、ダッシュボード、リアトレイ、サンバイザー、ソファー(座席シート)あるいはカーテンなどの車両用内装部品に、夫々、塗布層4、塗布層10ならびに11、塗布層20ならびに21を設けても良い。また、これらの塗布層は、構造材の全面に設けるだけでなく、部分的に設けても良い。構造材としては、非透明な構造に限らず、太陽光ないしは人工光を透過導入する窓なしはカバーに、光透過性を損なわずに適用することも可能である。上記カバーとしては、例えば、人工光である蛍光灯や白熱電球のカバーなどが挙げられるが、これらに制限されるものではない。
【0082】
上述の第4ならびに第5の実施の形態では、リアトレイ上に設けられた車室内用の空気清浄器を例に説明したが、これに限定される訳ではなく、空気清浄器がダッシュボードに設けられても良いし、車室内用のエアコンと一体化しても良い。
【0083】
上述の第7の本実施の形態においては、リアトレイを例に説明したが、これに限定される訳ではなく、太陽光が照射されうる場所であれば適用可能であり、日除け、ダッシュボード、サンバイザー、ソファー(座席シート)あるいはカーテンなどの車両用内装部品に適用可能である。
【0084】
上述した各実施の形態では、光触媒として、可視光応答性光触媒の1種であるWO3を例に説明したが、これに限定される訳ではなく、その他の可視光応答性光触媒、例えば、バナジン酸ビスマス(BiVO4)、無機酸化物半導体(インジウムタンタレート・InTaO4)、特開2003−33661号公報に記載のバナジウム含有複合酸化物半導体、特開2006−305523号公報、特開2004−344825号公報、特開2003−340288号公報、特開2002−346382号公報などに記載の可視光応答型酸化チタン(Ti−O−N系;TiO2−xNx、Ti−O−C系など)、硫黄ドープ可視光応答型酸化チタン、Ba,Sr(Ti,Zr)O3、特開2004−275946号公報に記載のペロブスカイト型複合酸化物、特開2004−275947号公報に記載のインジウム系複合酸化物、特開2004−66028号公報に記載のインジウムバリウム複合酸化物、特開2005−34716号公報に記載のアルカリ金属及びAgのビスマス複合酸化物、特開2004−358332号公報に記載のビスマス系複合酸化物等でも良いし、場合によっては、酸化チタン、タンタル酸ナトリウムなどの紫外光応答型光触媒に適用しても良い。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。併用する場合には、可視光応答性光触媒の異なる2種以上を併用してもよいし、可視光応答性光触媒と紫外光応答型光触媒とをそれぞれ1種以上組み合わせてもよいし、紫外光応答型光触媒の異なる2種以上を併用してもよい。
【0085】
光触媒粉末の粒径や形状などに関しては、使用用途に応じた光触媒機能を有効に発現し得るものであれば特に制限されるものではなく、既に光触媒として利用されている粒径や形状を適用することができる。
【0086】
上述した各実施の形態では、光触媒の触媒活性促進剤として、CuOを例に説明したが、これに限定される訳ではなく、その他の光触媒の触媒活性促進剤、例えば、Cu2O、Cu(NO3)2、CuSO4など他のCu化合物など光触媒活性化現象を発現するものであれば、いずれでも良い。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0087】
光触媒の触媒活性促進剤粉末の粒径や形状などに関しては、使用用途に応じた光触媒の触媒活性促進機能を有効に発現し得るものであれば特に制限されるものではない。例えば、光触媒と混合して用いる場合には、既に説明したように、光触媒の光吸収を妨げないような粒径や形状を選択することが望ましい。一方、光触媒と離間して用いるような場合には、光触媒の光吸収を妨げないとする要件は特に求められないことから、光触媒の触媒活性促進機能を有効に発現し得る範囲内で粒径や形状を適宜選択すればよい。
【0088】
上述した各実施の形態では、自動車の室内浄化用を例に説明したが、これに限定される訳ではなく、自動車以外の車両ないし移動体、例えば、電車(地下鉄を含む。人工光である蛍光灯を利用できるためである)、船舶、飛行機などの室内(車内や船内や機内)の浄化用にも適用可能である。更には上記車両ないし移動体以外の建築物(家屋、ビル、工場、地下街など)や建造物(橋梁、鉄塔や電波塔など)などの屋内の浄化用はもちろん屋外の浄化用においても適用可能である。例えば、建築物の内装用部品、例えば、壁紙、内壁材(床材、天井材、壁材など)、カーペット、絨毯、カーテン;ソファー、テーブル、本棚、食器棚、机、椅子、衣装家具などの文具・家具類;照明器具のカバー、エアコンなど;建築物の窓ガラスなどの屋内側、あるいは建築物や建造物の外壁材、などに対しても、適用可能である。
【0089】
上述した各実施の形態では、自動車用光触媒システムとしてリアウインドウ等の窓やカバーによって紫外光がカットされた太陽光を利用した実施形態となっているが、地下鉄や地下街等のように太陽光の利用が困難な場合や、ビルなど日当たりの悪い部屋など太陽光の利用が制限される場合には、蛍光灯、水銀灯、白熱電球などの人工光のみ、あるいは太陽光と人工光の双方を利用した光触媒システムとすることができる。また、紫外光をカットしない窓やカバーが用いられている移動体内や建築物の屋内の浄化用には、上述した各実施の形態で用いた可視光応答性光触媒を単独で、または紫外光応答型光触媒を単独で、あるいは双方の光触媒を組み合わせて利用することができる。
【0090】
上述した各実施の形態では、光触媒や触媒活性促進剤の塗布を例に説明したが、その製造プロセスに限定される訳ではなく、スパッタ等の他の手法を用いても良い。例えば、光触媒からなる塗布層の製造方法としては、入門光触媒(東京図書)p.146−154等に記載のスピンコート法、ディップコート法、吹き付け法、ゾルゲル法、あるいは、ドクターブレード法、など従来公知の光触媒の塗布、成膜技術を適宜利用することができるものであるなど、特に制限されるものではない。特に、本発明に適用し得る光触媒は、可視光応答性光触媒であれ、紫外光応答型光触媒であれ、いずれも金属酸化物の形態をとることから、一方の光触媒の塗布層の製造技術を他方の光触媒の塗布層の製造技術に適宜転用することができる。同様に、光触媒の触媒活性促進剤粉末からなる塗布層の製造方法としても、特に制限されるものではなく、上記光触媒からなる塗布層の製造方法を適宜利用することができるものである。
【0091】
第1の実施の形態において、塗布層4と塗布される構造材との間に、光触媒作用により構造材表面の劣化を防止するための層、例えばシリカ層等を設けても良いことを記載したが、この事は、第1の実施の形態に限らない。
【0092】
また、本発明の光触媒システムは、屋内ないしは自動車室内の環境浄化、具体的には、環境汚染有機物質を光分解するのに有効なシステムである。
【0093】
かかる環境汚染有機物質としては、例えば、酢酸、ギ酸などのカルボン酸類;アセトアルデヒド、ホルムアルデヒドなどのアルデヒド類;ベンゼン、トルエンなどの芳香族化合物類;ジクロロメタンなどのハロゲン化アルキル類などが挙げられる。光触媒システムとして、少なくとも可視光応答性光触媒を用いる場合には、カルボン酸類やアルデヒド類に対して特に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】可視光照射下における、WO3粉末を用いたアセトアルデヒドの光触媒分解反応における濃度依存性の説明図である。
【図2】可視光照射下における、WO3粉末を用いたアセトアルデヒドの光触媒分解反応における、各種金属酸化物の添加効果の説明図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る自動車用光触媒システムの代表的な実施例の説明図である。
【図4A】本発明の第2の実施の形態に係る自動車用光触媒システムの代表的な実施例の説明図である。
【図4B】本発明の第2の実施の形態に係る自動車用光触媒システムの他の実施例の説明図である。
【図5A】本発明の第3の実施の形態に係る自動車用光触媒システムの代表的な実施例の説明図である。
【図5B】本発明の第3の実施の形態に係る自動車用光触媒システムの他の実施例の説明図である。
【図6】本発明の第4の実施の形態に係る自動車用光触媒システムの代表的な実施例の説明図である。
【図7】本発明の第5の実施の形態に係る自動車用光触媒システムの代表的な実施例の説明図である。
【図8】本発明の第6の実施の形態に係る自動車用光触媒システムの代表的な実施例の説明図である。
【図9】本発明の第7の実施の形態に係る自動車用光触媒システムの代表的な実施例の説明図である。
【符号の説明】
【0095】
1 スリット状の日除けフラップ、
2 視界、
3 リアウインドウ、
4 可視光応答性光触媒粉末と触媒活性促進剤粉末の混合粉の塗布層、
5 太陽光、
10 触媒活性促進剤粉末の塗布層、
11 可視光応答性光触媒粉末の塗布層、
20 触媒活性促進剤粉末による模様の塗布層、
21 可視光応答性光触媒粉末の塗布層、
22 開口部、
30 リアトレイ、
31 空気清浄器、
32 空気取り入れ口のフィン、
33 ブロア、
34 フィルタ、
35 清浄空気、
36 可視光応答性光触媒粉末と触媒活性促進剤粉末の混合粉の塗布層、
40 空気取り入れ口のフィン、
41 フィルタ、
42 可視光応答性光触媒粉末の塗布層、
43 触媒活性促進剤の塗布層、
50 可視光応答性光触媒被膜、
51 触媒活性促進剤粉末の塗布層、
52 ラジオのアンテナ線、
60 リアトレイの樹脂構造材、
62 可視光応答性光触媒粉末の塗布層、
63 多孔質隔膜、
64 触媒活性促進剤の粉末、
65 結着材。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光ないしは人工光の照射される領域に設けられた光触媒と、該光触媒の触媒活性促進剤と、から構成されていることを特徴とする光触媒システム。
【請求項2】
請求項1に記載の光触媒システムにおいて、前記光触媒から成る部位と、該光触媒から成る部位と異なった領域に設けられた該光触媒の触媒活性促進剤から成る部位と、から構成されていることを特徴とする光触媒システム。
【請求項3】
請求項2に記載の光触媒システムにおいて、光の入射面内に、前記触媒活性促進剤から成る部位が部分的に設けられていることを特徴とする光触媒システム。
【請求項4】
請求項2に記載の光触媒システムにおいて、光の入射面の垂直ないし前後方向に、前記光触媒からなる領域ないしは層と、前記触媒活性促進剤からなる領域ないしは層とが設けられていることを特徴とする光触媒システム。
【請求項5】
請求項3に記載の光触媒システムにおいて、前記光触媒が設けられた部位が、太陽光ないしは人工光を導入する窓および/またはカバーであることを特徴とする光触媒システム。
【請求項6】
請求項4に記載の光触媒システムにおいて、前記光触媒からなる領域ないしは層と、前記触媒活性促進剤からなる領域ないしは層の間に、多孔性隔膜が設けられていることを特徴とする光触媒システム。
【請求項7】
請求項5に記載の光触媒システムにおいて、前記窓が、加熱ヒータないしはアンテナ線を有する自動車用窓ガラスであって、
前記加熱ヒータないしはアンテナ線の設けられた領域に、前記触媒活性促進剤から成る部位が設けられていることを特徴とする光触媒システム。
【請求項8】
請求項6に記載の光触媒システムにおいて、前記多孔性隔膜の少なくとも片面に、色彩および/または模様が設けられていることを特徴とする光触媒システム。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の光触媒システムにおいて、前記光触媒および前記触媒活性促進剤の少なくとも一つを用いて、色彩および/または模様を付加していることを特徴とする光触媒システム。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の光触媒システムが設けられた建築用内装部品。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれかに記載の光触媒システムが設けられた車両用内装部品。
【請求項12】
請求項1〜9のいずれかに記載の光触媒システムにおいて、前記光触媒が設けられた領域または前記光触媒から成る部位へ空気を輸送する機構を有することを特徴とする光触媒システム。
【請求項13】
請求項2〜9、12のいずれかに記載の光触媒システムにおいて、前記光触媒から成る部位から前記光触媒の触媒活性促進剤から成る部位へ、空気を輸送する機構を有することを特徴とする光触媒システム。
【請求項1】
太陽光ないしは人工光の照射される領域に設けられた光触媒と、該光触媒の触媒活性促進剤と、から構成されていることを特徴とする光触媒システム。
【請求項2】
請求項1に記載の光触媒システムにおいて、前記光触媒から成る部位と、該光触媒から成る部位と異なった領域に設けられた該光触媒の触媒活性促進剤から成る部位と、から構成されていることを特徴とする光触媒システム。
【請求項3】
請求項2に記載の光触媒システムにおいて、光の入射面内に、前記触媒活性促進剤から成る部位が部分的に設けられていることを特徴とする光触媒システム。
【請求項4】
請求項2に記載の光触媒システムにおいて、光の入射面の垂直ないし前後方向に、前記光触媒からなる領域ないしは層と、前記触媒活性促進剤からなる領域ないしは層とが設けられていることを特徴とする光触媒システム。
【請求項5】
請求項3に記載の光触媒システムにおいて、前記光触媒が設けられた部位が、太陽光ないしは人工光を導入する窓および/またはカバーであることを特徴とする光触媒システム。
【請求項6】
請求項4に記載の光触媒システムにおいて、前記光触媒からなる領域ないしは層と、前記触媒活性促進剤からなる領域ないしは層の間に、多孔性隔膜が設けられていることを特徴とする光触媒システム。
【請求項7】
請求項5に記載の光触媒システムにおいて、前記窓が、加熱ヒータないしはアンテナ線を有する自動車用窓ガラスであって、
前記加熱ヒータないしはアンテナ線の設けられた領域に、前記触媒活性促進剤から成る部位が設けられていることを特徴とする光触媒システム。
【請求項8】
請求項6に記載の光触媒システムにおいて、前記多孔性隔膜の少なくとも片面に、色彩および/または模様が設けられていることを特徴とする光触媒システム。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の光触媒システムにおいて、前記光触媒および前記触媒活性促進剤の少なくとも一つを用いて、色彩および/または模様を付加していることを特徴とする光触媒システム。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の光触媒システムが設けられた建築用内装部品。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれかに記載の光触媒システムが設けられた車両用内装部品。
【請求項12】
請求項1〜9のいずれかに記載の光触媒システムにおいて、前記光触媒が設けられた領域または前記光触媒から成る部位へ空気を輸送する機構を有することを特徴とする光触媒システム。
【請求項13】
請求項2〜9、12のいずれかに記載の光触媒システムにおいて、前記光触媒から成る部位から前記光触媒の触媒活性促進剤から成る部位へ、空気を輸送する機構を有することを特徴とする光触媒システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2008−126121(P2008−126121A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−312475(P2006−312475)
【出願日】平成18年11月20日(2006.11.20)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月20日(2006.11.20)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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