説明

自動車用外板パネル部品、自動車用外板パネル部材の使用方法、自動車用フード

【課題】重量、剛性に優れ、かつ優れた外観意匠面を安価にて達成する繊維強化樹脂製自動車外板用パネル部品を提供することにある。
【解決手段】 少なくとも2500cm以上の面から構成されており、かつ面の最大断面の曲率半径が50以上である外表面を構成するアウター部材と、アウター部材外縁部に沿って配置された部分を有するインナー部材から構成される構造体において、アウター部材が樹脂製であり、かつ、インナー部材が炭素繊維強化樹脂製で構成される部分を有することを特徴とする自動車用外板パネル部品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化樹脂(以下、FRP)を用いた自動車用外板パネル部品に関し、必要な剛性、強度および軽量性を有し、さらに高い外観品位と優れたコストを兼ね備えることができる構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建築物、輸送機器や情報機器等のあらゆる構造体において、剛性や強度の他にも軽量であることが強く求められており、さらに、商品性を向上させるために、高い外観品位が要求されるようになってきた。特に輸送機器においては、軽量化によって大幅なエネルギー消費量の低減が見込まれることから、剛性や強度と共に軽量性を達成することが大きなメリットとなるが、同時に商品性向上のために、高い外観品位が要求されている。
【0003】
輸送機器分野の中でも、特に自動車においては、消費者に直接アピールする性能となることから、剛性/強度/軽量性に加え、高い外観品位、具体的にはクラスA外観を持つことが求められており、この性能を獲得するために、種々研究開発がなされている。
【0004】
これら要求に対して、例えば特許文献1では、自動車外板部品として、フードを炭素繊維強化樹脂(以降、「CFRP」と称することもある)製とする手段が開示されている。本技術では、外表面を形成するアウターと、インナーがCFRP製で構成されており、高い剛性および強度を持ち、さらに優れた軽量性を獲得することが出来るとされている。
【0005】
しかしながら、アウターをCFRP製とした場合、またCFRP製独特の表面凹凸や、CFRP成形表面の気泡やクロス目のズレ等が発生し、外観品位は低下する。これを改善し、クラスA外観を達成するためには、表面研磨が必要であり、プライマー等の塗布により気泡等を埋め、さらにサンドペーパー等を用いて人手で研磨する必要があるため、結果として、プライマー塗布により重量が増加し、CFRP製の軽量性を低減してしまうばかりか、人手作業による塗装と研磨の繰り返しにより製造コストが上昇し、製品の価値が低下してしまう。
【0006】
また近年、自動車用外板パネル部品としては、軽量化を目的としてオールアルミ製の部品が採用されている。アルミは、スチールに比べて密度が約1/3であり、軽量化効果が期待できる。アルミ製部品の場合には、従来のスチールと同様の良好な外観品位が得られるが、比剛性および比強度がCFRPに比べて劣ることから、その重量低減効果はCFRP製に比べて低くなってしまう。
【0007】
さらに近年においては、樹脂製の外観品位を持つ自動車外板用パネル部材が普及しつつある。この様な構成を採用する場合、金属製アウター部材を持つパネル部材に比べて、大きな重量低減効果が期待できるが、内部構造であるインナー部材は依然としてスチールを代表とする金属製であり、CFRP製に比べると重量低減のメリットが低い。
【0008】
また、内部構造であるインナー部材も樹脂製とし、アウター部材とインナー部材共に樹脂製とすることも可能であるが、樹脂自身の剛性が低いことから、必要な剛性を得るために、結果として厚肉構造とならざるを得ず、十分な軽量化効果を得るに至っていない。
【特許文献1】特開2002−284038号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで本発明の課題は、自動車外板パネル部品に要求される剛性、強度等の構造要件と共に、高い外観品位、軽量性、低コストであることを満たすことができる自動車用外板パネル部品、これを開閉機構を要する箇所に用いる自動車用外板パネル部品の使用方法、および、これを用いた自動車用フードを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に関わる自動車外板パネル部品は、以下の構成からなる。すなわち
(1)少なくとも2500cm以上の面から構成されており、かつ面の最大断面の半径が50mm以上である外表面を構成するアウター部材と、アウター部材の外周端部縁に沿う形状にスティフナ構造断面を配置した部分を有するインナー部材から構成される構造体において、アウター部材が樹脂製であり、かつ、インナー部材が炭素繊維強化樹脂製で構成される部分を有することを特徴とする自動車用外板パネル部品。
【0011】
(2)アウター部材の外周端部縁にヘミング曲げ形状のアンダーカット部が設けられていることを特徴とする(1)に記載の自動車外板用パネル部品。
【0012】
(3)アウター部材が短繊維強化樹脂製であることを特徴とする(1)または(2)に記載の自動車外板用パネル部品。
【0013】
(4)アウター部材がナノコンポジット樹脂製であることを特徴とする(1)または(2)に記載の自動車外板用パネル部品。
【0014】
(5)少なくとも2500cm以上の面から構成されており、かつ面の最大断面の半径が50mm以上である外表面を構成するアウター部材と、アウター部材の外周端部縁に沿うようにスティフナ形状の断面を配置した部分を有するインナー部材から構成される構造体において、アウター部材が金属製であり、かつ、インナー部材が炭素繊維強化樹脂で構成されている部分を有することを特徴とする自動車用外板パネル部品。
【0015】
(6)ハット型断面のスティフナを有するインナー部材を用いたことを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の自動車用外板パネル部品。
【0016】
(7)アウター部材の外周端部の全縁にインナー部材を配置したこと特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の自動車用外板パネル部品。
【0017】
(8)インナー部材に金属製締結部材が設置されており、金属製締結部材を介して自動車車両側に取り付けられていることを特徴とする(1)〜(7)のいずれかに記載の自動車用外板パネル部品。
【0018】
(9)金属製締結部材が少なくとも3点設けられていることを特徴とする(1)〜(8)に記載の自動車用外板パネル部品。
【0019】
(10)金属製締結部材が自動車用外板パネル部品の外周部に設けられていることを特徴とする(1)〜(9)のいずれかに記載の自動車用外板パネル部品。
【0020】
(11)金属製締結部を介して回転機構が設けられており、回転機構を通じて自動車用外板パネル部品が回転するように構成されていることを特徴とする(1)〜(10)のいずれかに記載の自動車用外板パネル部品。
【0021】
(12)金属製締結部材が鍵状のフック機構を有することを特徴とする(8)〜(11)のいずれかに記載の自動車用外板パネル部品。
【0022】
(13)金属製締結部材がU字状の被フック機構を有することを特徴とする(8)〜(12)のいずれかに記載の自動車用外板パネル部品。
【0023】
(14)アウター部材とインナー部材が接着層を介して一体化されていることを特徴とする(1)〜(13)のいずれかに記載の自動車用外板パネル部品。
【0024】
(15)インナー部材のアウター部材の外縁部に沿って配置された部分が実質的に全て炭素繊維強化樹脂製であることを特徴とする(1)〜(14)のいずれか記載の自動車用外板パネル部品。
【0025】
(16)インナー部材のアウター部材の外縁部に沿って配置された部分以外が金属で構成されている部分を有することを特徴とする(1)〜(15)のいずれかに記載の自動車用外板パネル部品。
【0026】
(17)インナー部材のアウター部材の外縁部に沿って配置された部分以外がアルミニウム合金で構成されている部分を有することを特徴とする(16)に記載の自動車用外板パネル部品。
【0027】
(18)インナー部材に用いられる炭素繊維の繊維長が20mm以上であることを特徴とする(1)〜(17)のいずれかに記載の自動車用外板パネル部品。
【0028】
(19)(1)〜(18)のいずれかに記載の自動車用外板パネル部品を、開閉機能を要する箇所に用いることを特徴とする自動車用外板パネル部品の使用方法。
【0029】
(20)(1)〜(18)のいずれかに記載の自動車用外板パネル部品が一部または全部に用いられてなる自動車用フード。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係る自動車用外板パネル部品によれば、アウター部材に樹脂を用いることにより、高外観が達成され、かつ、インナー部材を炭素繊維強化樹脂性とすることで、高剛性と軽量性が得られることから、自動車外板用パネル部品として、優れた製品性能を得ることができる。
【0031】
また本発明によれば、アウター部材を金属製とすることも可能であり、重量は樹脂製アウター部材に劣るものの、樹脂製に比べて高い外観性能が得られる。アウター部材の材料選択は各部品に応じて必要とされる、外観性能と重量を勘案し選択することが可能である。
【0032】
また、インナー部材は炭素繊維強化樹脂製であるが、必要に応じて、部分的に金属製とすることも可能である。
【0033】
また、アウター部材の外周端部全縁部分のインナー部材は全て炭素繊維強化樹脂製とし、それ以外の内部構造や、成形が難しくコスト高となる箇所に関しては、金属製インナー部材にて補完することにより、必要な強度剛性を得ながら、かつ低コストで部品を製作することが可能になる。
また、本発明に係る自動車用外板パネル部品を、開閉機構を有する箇所や、特に自動車用フードに適用することにより、製品としての高外観性を実現するとともに、高剛性と軽量性が達成されることにより、開閉操作性の向上や、車両全体の重量低減にも大きく寄与する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
本発明に係る自動車用外板パネル部品は、少なくとも2500cm以上の面を有することを特徴とする。これにより、本発明に規定の構造を用いたときの、部品としての軽量化効果が発揮される。このような観点から、少なくとも5000cm以上の面を有することが好ましく、少なくとも10000cm以上の面を有することがより好ましい。なお、製品生産性を良好に保つことや製造コストの上昇を抑制するという点を考慮すると、40000cm以下であることが望ましい。
【0035】
本発明に係る自動車用外板パネル部品は、最大断面の半径が50mm以上である外表面を構成するアウター部材と、該アウター部材の外周端部縁に沿う形状にスティフナ構造断面を配置された部分を有するインナー部材から構成される構造体である。
【0036】
アウター部材の外表面の最大断面の半径とは、Rゲージまたは3次元測定機を用いて測定したアウター表面の点集合からなる電子データにより測定されたものであり、これを50mm以上とすることにより、自動車部品として適当な半径を持つことになり、良好な外板パネル部品を構成することができる。このような観点から、当該半径は100mm以上であることが好ましく、2000mm以上であることがより好ましい。なお、アウター部材の外観表面を押したときに感じるベコ感の堅さを満足させることを考慮すると、10000mm以下であることが望ましい。
【0037】
インナー部材は、前記アウター部材の外周端部縁に沿う形状にスティフナ構造断面を配置した部分を有することを必須とする。ここで言う、アウター部材の外周端部縁に沿う形状とは、アウター部材の端部全周を意味する。すなわち、アウター部材の外周端部縁に沿う形状にスティフナ構造断面を配置しているとは、アウター部材の端部全周にスティフナ構造断面を持つインナー部材が全周に渡って配置していることを意味する。かかるスティフナ構造断面を配置した部分を有することにより、フードとしての剛性性能と軽量性を最も効率よく両立することが可能になるのである。
【0038】
本発明を構成するアウター部材は樹脂製であり、面方向に構造体全体に渡って広がっており、デザインや用途に応じて、必要な曲面もしくは直線形状にて形成されている。インナー部材はCFRP製の部分を有し、アウター部材の裏面に接しており、構造体の全体剛性を分担しているものである。金属締結部材はインナー部材内側に取り付けられ、他部品や回転機構の取付等に用いられるものである。このような構成とすることで、樹脂製アウター部材による高い外観品位に加え、CFRP製インナー部材による高い剛性と強度、軽量性が達成され、かつ本部品を車両に取り付ける機能が満足されることから、これら必要な特性を備えた優れた製品とすることが可能になる。
【0039】
ここで、アウター部材に用いられる樹脂としては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂等の熟硬化性樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフイン樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、ポリウレタン樹脂等の熟可塑性樹脂が挙げられるが、これらの中で、生産性と材料の強度、剛性特性に優れるという点で、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂が好ましく用いられる。
【0040】
また、ここで言う樹脂とは、長繊維や短繊維で強化された繊維強化樹脂も含まれており、かかる強化繊維としては、炭素繊維、ガラス繊維などの無機繊維、ケブラー繊維、ポリエチレン繊維、ポリアミド繊維、PBO繊維などの有機繊維が挙げられるが、これらの中で、剛性および強度も最も効率的に向上させるという点で炭素繊維が好ましく用いられる。
【0041】
本発明の自動車用外板パネル部品に用いられるアウター部材は、その外周端部縁にヘミング曲げ形状のアンダーカット部が設けられていることが好ましい。アウター部材の外周端部縁にヘミング曲げ形状のアンダーカット部が設けられているとは、アウター部材端部がインナー部材の端部に回り込む様に配置され、インナー端部を覆い隠す形態が設けられていることを意味する。
【0042】
本発明の自動車外板用パネル部品に用いられるアウター部材は、短繊維強化樹脂製であることが好ましい。これにより、アウター部材の剛性、面剛性が強化され、より強固な自動車外板用パネル部品と得ることができる。ここで言う短繊維とは、繊維長15mm以下の繊維を意味し、アウター部材の剛性、面剛性を強化するという点や、得られる自動車外板用パネル部品をより強固なものにするという点を考慮すると、繊維長は0.02〜15mmであることが好ましく、より好ましくは2.5〜11mmである。
【0043】
また、本発明の自動車外板用パネル部品に用いられるアウター部材は、ナノコンポジット樹脂製であることも好ましい。これにより、アウター部材の部材剛性、面剛性強化とともに、樹脂単独で製造されたものと同等の外観表面品位が確保され、より商品価値の高い自動車外板用パネル部品を得ることができる。ここで言うナノコンポジット樹脂とは、ナノサイズのフィラーを添加した樹脂を意味し、少なくともクレーや合成雲母等の無機成分をフィラーとして添加した樹脂が好ましく用いられる。さらに、本発明の自動車外板用パネル部品に用いられるアウター部材は、前記短繊維強化と前記ナノサイズのフィラーとを添加して得られた樹脂製であっても、前記短繊維強化樹脂と前記ナノコンポジット樹脂をブレンドして得られた樹脂製であっても良い。
【0044】
本発明の自動車外板用パネル部品に用いられるアウター部材は金属製とすることもでき、好ましくはアルミニウム合金製とすることができる。これは樹脂製アウター部材に比べて、重量は増加する傾向にあるものの、アウター部材を金属製とすることで、樹脂製よりもさらに高い外観品位を得ることが出来るためである。したがって、アウター部材の材料選択に関しては、要求される外観品位、重量、コストを勘案して、上述の選択肢より、それぞれの製品に最も適した材料を選択することで、最も優れた製品とすることができる。
【0045】
本発明の自動車外板用パネル部品に用いられるインナー部材のスティフナは、ハット型断面を有することが好ましい。これは、インナー部材のスティフナとしての効果、すなわち、フードとしての剛性性能と軽量性を最も効率よく両立することが可能になるという効果を最も高めるためである。なお、ハット型断面とは、ある元の平板上に台形もしくは矩形の断面を構成するために必要な断面形状を表すもので、ある元の平板から距離を離れて設けられた、有限の寸法を持つ平板と、その端部より元の平板に向かって、0〜90°の角度で、ある元の平板に接するまで延長された斜面を少なくとも2面持つことを意味する。
【0046】
本発明の自動車外板用パネル部品に用いられるインナー部材は、例えば図1に図示するように、アウター部材の外周端部の全縁に配置されていることが好ましい。これは、アウター部材端部の全周をインナー部材で囲むことにより、最も効率的に構造剛性を得ることができるためである。
【0047】
本発明の自動車外板用パネル部品に用いられるインナー部材は、金属製締結部材を介して自動車車両側に取り付けられていることが好ましい。これは、金属製締結部材を介して取り付けることで、より強固な取付構造が実現されるためである。ここで言う金属製締結部材を介して取り付けるとは、金属締結部材を用いて車両に自動車外板用パネル部品を取り付けることを意味し、ボルト、ナットまたは接着などの方法により取り付けることができる。なお、自動車車両側とは、自動車進行方向に対し垂直方向の線を水平面内で延長した際の、自動車両端部を意味する。
【0048】
本発明に係る自動車外板用パネル部品には、金属製締結部材が少なくとも3点以上設けられていることが好ましい。これは平面状となる本部品を安定的に支持するためである。かかる構成とするためには、例えば、インナー部材と自動車車両側の間の少なくとも3箇所以上に当該金属製締結部材を配し、当該金属製締結部材を介してインナー部材を自動車車両側に取り付けることにより達成できる。
【0049】
また、当該金属製締結部品は、本発明に係る自動車外板用パネル部品の外周部に設けられていることがより好ましい。これは、締結部分を外周に配置することで、より安定的に部品を支持することが可能になるためである。
【0050】
本発明の自動車外板用パネル部品は当該金属製締結部品を介して回転機構が設けられており、回転機構を通じて本発明に係る自動車用外板パネル部品が回転するように構成されていることが好ましい。これは、外部より回転機構を設けることで、部品の高い強度と剛性、軽量性と相まって、高い回転特性を得ることができるためである。
【0051】
本発明の自動車外板用パネル部品に用いられる金属製締結部品は、鍵状のフック機構またはU字状の被フック機構を有することが好ましい。これは、フック稼働機構を設けることで、頻繁に開閉する箇所にも本部品を適用することが可能となり、部品としての価値が向上するためである。
【0052】
本発明の自動車外板用パネル部品に用いられるアウター部材とインナー部材は、接着層を介して一体化されていることが好ましい。接着層以外の締結手段として、インサートナットをアウター部材もしくはインナー部材にインサート成形して、ボルト締結構成とする方法や、他にもリベット接合、接着剤を併用したリベット接合等が選択肢として挙げられるが、接着層を介しての接合が、接合面積を最も広くすることが可能であり、かつボルトやリベット等ではアウター部材表面に接合箇所が露見してしまうため、外表面に影響がなく、外観品位が最も優れていることから、好ましく用いられる。
【0053】
本発明の自動車外板用パネル部品に用いられるインナー部材のアウター部材外縁部に沿って設置された部分は実質的に全てCFRP製であることが好ましい。これは、インナー部材のアウター部材外縁部に沿って配設された部分は、自動車外板用パネル部品の構造剛性に最も大きく寄与する部分であり、これを比剛性、比強度に最も優れたCFRP製とすることで、最も剛性と軽量性に優れたパネル部品とすることができるためである。もっとも、かかる目的を損なわない限りにおいて、一部(例えばインナー部材のアウター部材外縁部に沿って設置された部分の面積の25%以下)CFRP製でない部分があっても差支えは無いが、CFRP製でない部分の占める割合は少なければ少ないほど良く、100%全てCFRP製であることが最も好ましい。
【0054】
本発明の自動車外板用パネル部品に用いられるインナー部材のアウター部材外縁部に沿って配置された部分以外が金属で構成されていることが好ましい。これは、この様な構成とすることで、必要な部品剛性を確保しつつ、CFRP製では成形が難しく、製造コストが高い部分をより成形性にすぐれた安価な金属製とすることで、同様に高い外観品位と、アウター部材外縁全周をCFRP製であることによる、高い強度と剛性、軽量性のメリットを保持しつつ、より低コストな部品を提供することが可能になるためであり、さらに望ましくはアルミニウム合金であることが、軽量化効果および、必要な剛性確保と製造コストの面からより好ましい。
【0055】
本発明のインナー部材に用いられる炭素繊維の繊維長は20mm以上であることが好ましい。これは繊維長が長い程、強化繊維の強度、剛性強化効果が向上するためであり、より好ましくは、繊維長が十分に長い場合の材料強度値のおおよそ8割程度を確保するために50mm以上とするのが良い。
【0056】
本発明の自動車外板用パネル部品は開閉機能を有する箇所に用いられることが好ましい。これは、開閉機構を有する箇所が、人目に触れる外観品位に優れ、かつ、強度、剛性、軽量性に優れることから、開閉操作時のソリッド感や、軽量性、耐久性を両立することが可能であり、ドアやトランクリッド等の種々構造部品に本発明を適用することができる。なかでも、当該自動車外板用パネル部品の一部または全部が自動車用フードとして用いられることがより好ましい。これはフードが自動車部品の中でも比較的大きい面積を有しているために、本発明を適用することによる軽量化の効果が高く、また求められる外観品位も本発明で得られる品位と合致するためである。ここで、自動車外板用パネル部品の一部が自動車用フードに用いられるとは、自動車用フードが複数部品に分かれていて、その複数部品の一部に本発明に係る自動車外板用パネル部品が設けられていたり、自動車用フードの一部に本発明に係る自動車外板用パネル部品により達成される上記効果とは無関係の備品が設けられたりしても良いことを意味する。
【0057】
以下に、本発明の望ましい実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0058】
図1、2、3、4は、本発明の一実施態様に関わる自動車用外板パネル部品を示している。図1は外観面を形成するアウター部材2、アウター部材2の内側に位置するインナー部材3とインナー部材3の内側に設置される金属締結部材4の分解斜視図、図2はアウター部材2とインナー部材3を接合した自動車外用パネル部材1の斜視図を示しており、図3は図2における左右中央断面0Yの断面図を表したもので、図4は図2のおける前後中央断面0Xの断面図を表したものである。
【0059】
本実施態様におけるアウター部材2とインナー部材3は接着層5によって接合接着されており、アウター部材2の裏側外周部とそれに接するインナー部材3の面は全て接着されている。
【0060】
アウター部材2とインナー部材3の接合構成は、接着剤を用いることが好ましく、その中でも構造用接着剤もしくは弾性接着剤と呼ばれる物がより好ましく、例えば、ネオプレン−フェノリック、ビニル−フェノリック、ニトリル−エポキシ、エポキシ−フェノリック、ナイロン−エポキシ、変性エポキシ、ポリウレタン、アクリル、シリコーン、ポリサルファイド、弾性エポキシ、ビスマレイミド、ポリイミド、ポリベンズイミタゾール、セメント系、低融点ガラス、アルカリ金属シソケート、ホスフェート、エチレン酢酸ビニル、エチレンエチルアクリレート等が挙げられ、アウター部材とインナー部材の間の応力伝達がなされる構成が好ましい。
【0061】
本発明に係わるインナー部材2に用いられる強化繊維としては、例えば、炭素繊維、ガラス繊維などの無機繊維や、ケブラー繊維、ポリエチレン繊維、ポリアミド繊維、PBO繊維などの有機繊維からなる強化繊維が挙げられる。重量あたりの剛性、強度の面からは、特に炭素繊維が好ましい。FRPのマトリックス樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂等の熟硬化性樹脂が挙げられ、さらには、ポリアミド樹脂、ポリオレフイン樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、ポリウレタン樹脂等の熟可塑性樹脂も使用可能である。これら強化繊維とマトリックス樹脂とからなるFRPは、単層構成とすることも可能であるが、望ましい特性(特に、特定の方向に対する望ましい曲げ剛性やねじり剛性)を発現させるために、積層横成とすることが好ましい。また、FRPの機械特性は、上記のような強化繊維、マトリックス樹脂の選択や組み合わせ、強化繊維の配向や体積含有率、積層構成等により適宜設定できる。
【0062】
図4は本発明の別の実施態様に係わる自動車外板用パネル部品を示している。同様に、アウター部材12とインナー部材13により自動車用外板パネル部品が構成され、金属締結部材14が設置されている。本実施態様においては、インナー部材13の中央部分に別体金属部品17が設けられており、フード剛性を担っている。別体部品はアウター部材12と接合されても良いが、インナー部材13と接合されても良く、接着構造の他にも、リベット接合や、ボルト等による機械的接合とすることが可能であり、接合方法に関しては、それぞれの製品に要求される外観品位、強度、剛性、等を勘案して選択すれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の一実施態様に係る自動車用外板パネル部品の分解斜視図である。
【図2】本発明の一実施態様に係る自動車用外板パネル部品の斜視図である。
【図3】本発明の一実施態様に係る自動車用外板パネル部品の0Y断面図である。
【図4】本発明の一実施態様に係る自動車用外板パネル部品の0X断面図である。
【図5】本発明の別の実施態様に係る自動車用外板パネル部品の分解斜視図である。
【符号の説明】
【0064】
1、11 自動車用外板パネル部品
2,12 アウター部材
3,13 インナー部材
4、14 金属締結部材
5、15 接着層
6,16 折り曲げ部
17 別体金属部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2500cm以上の面から構成されており、かつ面の最大断面の半径が50mm以上である外表面を構成するアウター部材と、アウター部材の外周端部縁に沿う形状にスティフナ構造断面を配置した部分を有するインナー部材から構成される構造体において、アウター部材が樹脂製であり、かつ、インナー部材が炭素繊維強化樹脂製で構成される部分を有することを特徴とする自動車用外板パネル部品。
【請求項2】
アウター部材の外周端部縁にヘミング曲げ形状のアンダーカット部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の自動車外板用パネル部品。
【請求項3】
アウター部材が短繊維強化樹脂製であることを特徴とする請求項1または2に記載の自動車外板用パネル部品。
【請求項4】
アウター部材がナノコンポジット樹脂製であることを特徴とする請求項1または2に記載の自動車外板用パネル部品。
【請求項5】
少なくとも2500cm以上の面から構成されており、かつ面の最大断面の半径が50mm以上である外表面を構成するアウター部材と、アウター部材の外周端部縁に沿うようにスティフナ形状の断面を配置した部分を有するインナー部材から構成される構造体において、アウター部材が金属製であり、かつ、インナー部材が炭素繊維強化樹脂で構成されている部分を有することを特徴とする自動車用外板パネル部品。
【請求項6】
ハット型断面のスティフナを有するインナー部材を用いたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の自動車用外板パネル部品。
【請求項7】
アウター部材の外周端部の全縁にインナー部材を配置したこと特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の自動車用外板パネル部品。
【請求項8】
インナー部材に金属製締結部材が設置されており、該金属製締結部材を介して自動車車両側に取り付けられていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の自動車用外板パネル部品。
【請求項9】
金属製締結部材が少なくとも3点設けられていることを特徴とする請求項1〜8に記載の自動車用外板パネル部品。
【請求項10】
金属製締結部材が自動車用外板パネル部品の外周部に設けられていることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の自動車用外板パネル部品。
【請求項11】
金属製締結部を介して回転機構が設けられており、回転機構を通じて自動車用外板パネル部品が回転するように構成されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の自動車用外板パネル部品。
【請求項12】
金属製締結部材が鍵状のフック機構を有することを特徴とする請求項8〜11のいずれかに記載の自動車用外板パネル部品。
【請求項13】
金属製締結部材がU字状の被フック機構を有することを特徴とする請求項8〜12のいずれかに記載の自動車用外板パネル部品。
【請求項14】
アウター部材とインナー部材が接着層を介して一体化されていることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の自動車用外板パネル部品。
【請求項15】
インナー部材のアウター部材の外縁部に沿って配置された部分が実質的に全て炭素繊維強化樹脂製であることを特徴とする請求項1〜14のいずれか記載の自動車用外板パネル部品。
【請求項16】
インナー部材のアウター部材の外縁部に沿って配置された部分以外が金属で構成されている部分を有することを特徴とする請求項1〜15のいずれかに記載の自動車用外板パネル部品。
【請求項17】
インナー部材のアウター部材の外縁部に沿って配置された部分以外がアルミニウム合金で構成されている部分を有することを特徴とする請求項16に記載の自動車用外板パネル部品。
【請求項18】
インナー部材に用いられる炭素繊維の繊維長が20mm以上であることを特徴とする請求項1〜17のいずれかに記載の自動車用外板パネル部品。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれかに記載の自動車用外板パネル部品を、開閉機能を要する箇所に用いることを特徴とする自動車用外板パネル部品の使用方法。
【請求項20】
請求項1〜18のいずれかに記載の自動車用外板パネル部品が一部または全部に用いられてなる自動車用フード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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