説明

自動車用外板構造及び製造方法

【課題】車室内をより明るくすることのできる自動車用外板構造を提供する。
【解決手段】ルーフパネル2に複数の貫通孔4が形成され、これら貫通孔4に光ファイバ片3Aが埋め込まれている。ルーフパネル2の表面には塗装膜5が形成されているが、光ファイバ片3Aの上端には塗装膜5は形成されておらず、光ファイバ片3Aの上端は露出している。また、光ファイバ片3Aの上端と塗装膜5の上面とは面一に設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内の明るさをより向上させることができる自動車用外板構造、及びその自動車用外板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人の居住空間は明るい方が好ましい。例えば、住宅においては、光ファイバ等の光透過部材を壁に挿通させ、前記光透過部材を介して外光を室内に導くことにより、室内をより明るくするようにした住宅構造が提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平1−219251号公報
【特許文献2】特開平4−288203号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の技術は住宅に関するものであって、光ファイバ等の光透過部材を用いて外光を車室内に導くようにした技術は存在しない。
【0004】
現在では、車両乗員のプライバシー保護の観点からサングラスカーが好まれており、そのため、車室内は暗くなりがちであるが、ユーザからは車室内はできれば明るい方がよいとの要望も多い。
【0005】
本発明の課題は、車室内をより明るくすることのできる自動車用外板構造、及びその自動車用外板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、自動車用外板に複数の貫通孔を開け、これら貫通孔を介して外光を車室内に導くようにした点に特徴がある。すなわち、本発明は、自動車の外板に複数の貫通孔が形成され、該各貫通孔に光ファイバ片が埋め込まれていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、光ファイバを介して外光が車室内に導かれるので、車室内をより明るくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施例を図面に従って説明する。
【実施例】
【0009】
図1は、本発明に係る自動車用外板構造がルーフパネルに適用された自動車の斜視図である。この自動車1のルーフパネル2の略全面には、多数の光ファイバ片3Aが埋め込まれている。
【0010】
図2は、光ファイバ片3Aが埋め込まれたルーフパネル2の縦断面図である。ここでは、光ファイバ片3Aは一つだけ示してあるが、実際には、図1に示したように光ファイバ片3Aは多数埋め込まれている。例えば、図2において、光ファイバ片3Aの左側及び右側にも同様に光ファイバ片が埋め込まれ、また、光ファイバ片3Aの前側(紙面垂直方向手前側)及び後側(紙面垂直方向奥側)にも同様に光ファイバ片が埋め込まれている。光ファイバ片3Aは樹脂製の光ファイバで形成されている。
【0011】
図2においては、上部はルーフパネル2の上側つまり車室外であり、下部は車室内である。図2に示すように、ルーフパネル2には貫通孔4が開けられ、この貫通孔4内に光ファイバ片3Aが埋め込まれている。光ファイバ片3Aの下部には横方向に拡がったフランジ部3Bが形成され、このフランジ3Bの上面3Cがルーフパネル2の室内側内面2Aに密接して設けられている。
【0012】
ルーフパネル2の上面には、光ファイバ片3Aが埋め込まれた部分を除いて、塗装膜5が形成されている。この塗装膜5は、色を有する有色塗装膜である。光ファイバ片3Aの上端には塗装膜5は形成されておらず、光ファイバ片3Aの上端は露出している。そして、光ファイバ片3Aの上端と塗装膜5の上面は面一となっている。
【0013】
次に、光ファイバ片3Aを埋め込んだルーフパネル2の製造方法(つまり、自動車用外板の製造方法)について説明する。
【0014】
図3〜図5は、光ファイバ片3Aを埋め込んだルーフパネル2の製造方法を示している。
【0015】
先ず、図3(a)に示すようなパンチプレス装置10を用意する。このパンチプレス装置10は、上下方向に貫通した円形の孔11Aを有する下型11と、開放端が下方に向けて設けられた円筒状パンチ12Aを有する上型12とを備えている。上型12の円筒状パンチ12Aは、下型11の孔11Aに対向配置されている。また、下型11の孔11Aの内径は、上型12の円筒状パンチ12Aの外径よりも大きく設定されている。
【0016】
なお、図3(a)〜(c)、図4(a)及び(b)では、下型11の孔11Aは1つしか描かれていないが、実際には、下型11には多数の孔11Aが形成されている。同様に、図3(a)〜(c)、図4(a)及び(b)では、上型12の円筒状パンチ12Aは1つしか描かれていないが、実際には、上型12には多数の円筒状パンチ12Aが設けられている。
【0017】
そして、図3(a)に示すように、上型12を上方に位置させ、上型12の円筒状パンチ12Aを下型11の孔11Aから引き抜いた状態とする。このとき、下型11の孔11A内には、下型11の下側から光ファイバ3が挿通され、その上端が下型11の孔11Aの上部に位置するよう、つまり、光ファイバ3の上端が孔11Aから上方へ飛び出さないように光ファイバ3がセットされている。
【0018】
図3(a)の状態において、ルーフパネル2をその表面(上面)が上を向くよう下型11の上に載置する。次に、図3(b)に示すように、上型12を下方に移動させて、筒状パンチ12Aでルーフパネル2に円形の貫通孔4を開けるとともに、円筒状パンチ12A内に光ファイバ3が挿入される位置まで上型12を押し下げる。このとき、円筒状パンチ12Aの内部には、貫通孔4を開けたときの、ループパネル2の円形の切れ端2Bと、光ファイバ3の上部先端部とが入り込んでいる。
【0019】
次に、図3(c)に示すように、上型12を上方に移動させて、円筒状パンチ12Aを下型11の孔11Aから引き抜くとともに、円筒状パンチ12A内を、図示していない吸引装置により負圧にし、光ファイバ3を上方へ吸引する。この場合、円筒状パンチ12Aの下部先端が光ファイバ3の上端部を挟み込んで、上型12の上方への移動によって、光ファイバ3を上方へ引っ張り上げるようにしてもよい。
【0020】
上方へ吸引された光ファイバ3は、ルーフパネル2の貫通孔4内を挿通して、その先端はルーフパネル2の表面(上面)よりも上側に位置する。光ファイバ3は巻き取りリール(図示省略)に巻かれており、上記のように上方へ吸引されると、次の必要量が巻き取りリールから引き出される。
【0021】
次に、図4(a)に示すように、下型11を下方へ移動させて光ファイバ3を下型11の孔11Aから更に引き出しつつ、カッター部材13を横方向(光ファイバ3に対して直角方向)に移動させて光ファイバ3を所定の長さに切断する。このとき、カッター部材13は高温に加熱されており、このカッター部材13によって樹脂製の光ファイバ3を容易に切断(つまり溶断)することができる。溶断された短い光ファイバは、光ファイバ片3Aとなる。
【0022】
光ファイバ3の溶断後、図4(b)に示すように、カッター部材13を光ファイバ片3Aの下方に位置させるとともに、このカッター部材13を上方(ルーフパネル2へ接近する方向)へ移動させ、さらに、カッター部材13で光ファイバ片3Aの下部を上方へ押圧する。すると、カッター部材13は高温に加熱されているので、光ファイバ片3Aの下部は溶融して横方向に拡がって、光ファイバ片3Aの下部にフランジ部3Bが形成される。そして、カッター部材13で光ファイバ片3Aの下部を更に押圧すると、フランジ部3Bの上面3Cがルーフパネル2の室内側内面2Aに密接する。これにより、光ファイバ片3Aをルーフパネル2の貫通孔4内に埋め込むことができる。
【0023】
ルーフパネル2の貫通孔4の内径は光ファイバ3の外径よりも大きいため、貫通孔4の内周縁と光ファイバ3の外周面との間には空隙が形成されているが、カッター部材13で光ファイバ片3Aの下部を押圧したとき、溶融した光ファイバ片3Aが前記空隙内に入り込み、その結果、光ファイバ片3Aは、図4(c)に示すように、フランジ部3Bの上部部分が少し拡径された形状となる。
【0024】
図4(b)において、カッター部材13で光ファイバ片3Aを押圧しているとき、下型11の孔11A内にある光ファイバ3を少し下方に引っ張って、その先端を孔11Aの上部開放端よりも下方に位置させ、次のルーフパネルに貫通孔を開ける作業(図3(a)の工程)に備える。
【0025】
光ファイバ片3Aをルーフパネル2の貫通孔4に埋め込む作業が終了したら、図4(c)に示すように、ルーフパネル2をパンチプレス装置10から取り外して、次に、図5(a)に示すように、光ファイバ片3Aの上部を含めてルーフパネル2の上面(表面)に塗装を施し、光ファイバ片3Aのルーフパネル2上面からの突出部3D、及びルーフパネル2の上面に塗装膜5を形成する。
【0026】
次に、図5(b)に示すように、光ファイバ片3Aの突出部3Dをその塗装膜5と共に、図示していないカッターで削り取る。その後、その削り取った部分を研磨して、光ファイバ片3Aの上端と塗装膜5の上面を面位置にするとともに、塗装膜5の表面全体を滑らかにする。これにより、光ファイバ片3Aの上端は塗装膜5は無く、露出した状態となるので、図5(c)に示すように、外部の光が光ファイバ片3Aを介して容易に車室内へ導くことが可能となる。
【0027】
本実施例によれば、ルーフパネル2の貫通孔4に光ファイバ片3Aを埋め込んだので、車室内を明るくすることができるとともに、光ファイバ片3Aは可視光のみ透過させ、赤外線や紫外線は透過させないため、車室内が暑くなりすぎることはなく、また、紫外線による健康への被害を抑えることができる。
【0028】
また、本実施例によれば、光ファイバ片3Aのフランジ部3Bがルーフパネル2の室内側内面2Aに密接して設けられているので、光ファイバ片3Aのルーフパネル2への接合力が高くなって、光ファイバ片3Aがルーフパネル2から外れてしまうのを防ぐことができる。
【0029】
また、本実施例によれば、光ファイバ片3Aの上端と塗装膜5の上面とが面一となっているので、塗装膜5の上面を滑らかにすることができる。
【0030】
さらに、本実施例におけるルーフパネル2の製造方法によれば、多数の光ファイバ片3Aをルーフパネル2に同時に埋め込むことが可能となる。
【0031】
なお、図5(c)に示すように、塗装膜5の上面に、無色のクリア塗装膜14を形成してもよい。このようにすれば、ルーフパネル2の表面をより一層滑らかにすることができる。
【0032】
なお、上記実施例では、下型11の孔11Aを円形とし、上型12に円筒状パンチ12Aを設けたが、これに限らず、下型11の孔を角形とし、上型12に角形の筒状パンチを設けるようにしてもよい。
【0033】
以上、本発明の実施例を図面により詳述してきたが、上記実施例は本発明の例示にしか過ぎないものであり、本発明は上記実施例の構成にのみ限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、本発明に含まれることは勿論である。
【0034】
例えば、本発明はルーフパネル2に限らず、リアピラーやドアにも適用できる。リアピラーに適用した場合は、斜め後方の死角が軽減され、後方視界の向上を図ることができる。また、ドアに適用した場合は、車両の側方に小さい子がいても、それを容易に確認することが可能となり、安全性のより一層の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係る自動車用外板構造がルーフパネルに適用された自動車の斜視図である。
【図2】光ファイバ片が埋め込まれたルーフパネルの縦断面図である。
【図3】(a)〜(c)は光ファイバ片を埋め込んだルーフパネルの製造方法を示す図である。
【図4】図3の続きを示しており、(a)〜(c)は光ファイバ片を埋め込んだルーフパネルの製造方法を示す図である。
【図5】図4の続きを示しており、(a)〜(c)は光ファイバ片を埋め込んだルーフパネルの製造方法を示す図である。
【符号の説明】
【0036】
2 ルーフパネル
3 光ファイバ
3A 光ファイバ片
3B フランジ部
4 貫通孔
5 塗装膜
10 パンチプレス装置
11 下型
11A 孔
12 上型
12A 円筒状パンチ
13 カッター部材
14 クリア塗装膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の外板に複数の貫通孔が形成され、該各貫通孔に光ファイバ片が埋め込まれていることを特徴とする自動車用外板構造。
【請求項2】
前記外板は、ルーフパネルであることを特徴とする請求項1に記載の自動車用外板構造。
【請求項3】
前記光ファイバ片の下部は横方向に拡がったフランジ部を有し、そのフランジ部の上面が前記ルーフパネルの車室側内面に密着していることを特徴とする請求項1又は2に記載の自動車用外板構造。
【請求項4】
前記光ファイバ片の上端は、色を有する有色塗装膜の表面と面一に配置されていることを特徴とする請求項1,2又は3に記載の自動車用外板構造。
【請求項5】
前記有色塗装膜の表面には、無色のクリア塗装膜が積層されていることを特徴とする請求項4に記載の自動車用外板構造。
【請求項6】
貫通した複数の孔を有し該孔内に光ファイバがセットされた下型と、前記複数の孔に対応して配置された複数の筒状パンチを有する上型と、を備えたパンチプレス装置を用意し、
先ず、前記下型の上に自動車用外板をその表面が上を向くように載置し、前記上型及び前記下型を互い接近するよう相対的に移動させて、前記筒状パンチで前記自動車用外板に貫通孔を開けるとともに、前記筒状パンチによって前記光ファイバを引っ張り上げて当該光ファイバを前記貫通孔に挿通させ、
次に、前記自動車用外板を前記下型から離間させた後に前記光ファイバを切断し、その切断後の光ファイバのうち、上部の光ファイバ片の下部を加熱し且つ押圧して、前記光ファイバ片の下部に横方向に拡がったフランジ部を形成するとともに、該フランジ部を前記自動車用外板の裏面に密着させ、
さらに、前記自動車用外板の表面に塗装を施した後、塗装面を研磨して、塗装面より上に突出した前記光ファイバ片を削り取り、光ファイバ片の上端と塗装膜の表面とを面一にすることを特徴とする自動車用外板製造方法。
【請求項7】
前記塗装面を研磨して、当該塗装面より上に突出した前記光ファイバ片を削り取った後、前記光ファイバ片の上端及び前記塗装面上面に、無色のクリア塗装膜を形成することを特徴とする請求項6に記載の自動車用外板製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−220604(P2009−220604A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−64045(P2008−64045)
【出願日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】