説明

自動車用室内灯制御装置及び制御方法

【課題】室内の拡大及び高級化に伴い自動車の室内灯の設置数が増加しており、ランプを一つ点灯している場合から二つめ、三つめを続けて点灯した場合に、ランプの明るさが段階的に暗くなるといった不快感をユーザに与える。
【解決手段】ランプ制御装置10は、パルス駆動制御により複数のランプを発光させる自動車用の室内灯の制御装置において、予め決められた点灯時間及び消灯時間の繰り返しにより各ランプを発光させるDUTY制御部23と、各ランプにおけるDUTY制御の点灯開始タイミングを位相制御にて調整する位相制御部22と、を備えている。また、位相制御部22は、二つ以上のランプの使用においても、点灯開始タイミングが重ならないように点灯開始タイミングを制御する重複点灯制御手段を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用室内灯の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から自動車用室内灯などのランプ制御において、高級感を演出するために徐々に消灯する減光消灯や、バッテリ電圧が変動しても明るさを一定に保てるように、DUTY比を可変することで明るさを調節するパルス点灯制御が行われている。
【0003】
また、特許文献1には、ランプに流れる電流又はランプに印加される電圧を検出手段により検出し、検出された検出値と所定の基準値を比較して、その比較に基づいてランプの点灯にDUTY制御を行う自動車用灯火制御装置が示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2001−315572号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、ミニバンなどのワゴンタイプの車両購買ニーズが増加している。ミニバンなどは、搭乗者数がセダンタイプに比べて多く、室内の拡大に伴い室内灯の設置数が増加し、上述のような電流及び電圧検出手段を有する制御装置をそのまま使用するとコストアップを招くという問題がある。また、高級車では、ルームランプ、ドライバーライト、助手席サイト、グローブボックス、フットライトなどの他に、サンバイザーに設けられたバニティミラーにランプを有するものもあり、室内灯の数も例えば4〜6個程度になる場合がある。
【0006】
図7は、従来のランプ発光タイミングを示すタイミング図である。横軸は時間、縦軸にランプ用電源電圧、ランプ1〜3を示す。一定の明るさで点灯させるためにランプをパルスで駆動する場合において、ハーネスの抵抗分及び内部回路の抵抗分などによりランプの点灯及び消灯タイミングにて電圧降下が発生する。具体的には、図7に示すように、ランプ1が点灯すると、点灯時間だけランプ用電源電圧が1dV(例えば0.3V〜0.4V)程度の電圧低下が発生する。
【0007】
さらに、ランプ1とランプ2が同位相で点灯すると、バッテリ電圧(12V)からの電圧降下の変動幅が2dV(約0.8V)と大きくなり、さらにまたランプ3を点灯させると変動幅は3dV(約1.2V)となる。このため、ランプに印加される電圧が一つのみの点灯の時と比較して低くなり、明るさも暗くなる。
【0008】
人間の感覚は、ゆっくりとした変化より短時間の変化を敏感に感じることができるので、例えば、一つ点灯している場合から二つめ、三つめを続けて点灯した場合に、ランプの明るさが段階的に暗くなるといった不快感をユーザに与えることになり、合わせて高級感の喪失となる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上のような問題を解決するために、本発明に係る自動車用室内灯制御装置は、パルス駆動制御により複数のランプを発光させる自動車用の室内灯制御装置において、予め決められた点灯時間及び消灯時間の繰り返しにより各ランプを発光させるDUTY制御回路と、各ランプにおけるDUTY制御の点灯開始タイミングを位相制御にて調整する位相制御回路と、を備え、位相制御回路は、二つ以上のランプの使用においても、点灯開始タイミングを重ならないように点灯開始タイミングを制御する重複点灯制御手段を有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る自動車用室内灯制御装置において、位相制御回路は、各ランプの点灯開始タイミングを制御し、点灯時間と消灯時間の和に対する点灯時間の比が1/n(自然数)のDUTY比の場合、2n個のランプのうち少なくとも二つのランプを同時に点灯させることを特徴とする。
【0011】
さらに、本発明に係る自動車用室内灯制御装置において、位相制御回路は、n+1個目のランプを発光させる場合、点灯開始タイミングを点灯時間の半分の時間ずらしてランプを点灯させることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る制御方法は、パルス駆動制御により複数のランプを発光させる自動車用室内灯制御装置の制御方法において、予め決められた点灯時間及び消灯時間の繰り返しにより各ランプを発光させるDUTY制御工程と、各ランプにおけるDUTY制御の点灯開始タイミングを位相制御にて調整する位相制御工程と、を含み、位相制御工程は、二つ以上のランプの使用においても、点灯開始タイミングが重ならないように点灯開始タイミングを制御する重複点灯制御手段を有することを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る自動車用室内灯制御装置の制御方法において、位相制御工程は、各ランプの点灯開始タイミングを制御し、点灯時間と消灯時間の和に対する点灯時間の比が1/n(自然数)のDUTY比の場合、2n個のランプのうち少なくとも二つのランプを同時に点灯させることを特徴とする。
【0014】
さらに、本発明に係る自動車用室内灯制御装置の制御方法において、位相制御回路は、n+1個目のランプを発光させる場合、点灯開始タイミングを点灯時間の半分の時間ずらしてランプを点灯させることを特徴とする。
【0015】
発明の目的の一つは、自動車用室内灯のように、1つのユニットで複数個のランプを制御する機器において、ランプの点灯個数に伴う明るさの変動を低減させる制御方法、及び制御装置を提供することである。
【0016】
さらに別の目的の一つは、ランプを一つ駆動してから、二つめを駆動しようとした場合、位相をずらして波形を出力してランプの電源電圧の変動を低減し、同時点灯時の切替ノイズを低減するために、二つ同時点灯以降のランプの駆動も点灯開始タイミングをずらすことで実現している。
【発明の効果】
【0017】
本発明を用いると、一定の明るさで点灯させるためにランプをパルスで駆動する場合において、複数のランプを独立で制御する時にパルス出力の位相をずらして同時点灯を少なくとも2点灯とすることで、明るさの変動を同位相で出力したときと比べて電圧変動を減少させることができる。さらに、パルス幅と出力の位相を調整して、同時に1点灯となるように位相をずらすことで明るさの変動を無くする効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態(以下実施形態という)を、図面に従って説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係るランプ制御装置の構成を示す構成図である。ランプ制御装置10は、ランプ制御ユニット20と、駆動すべきランプ15〜17と、各ランプを駆動する駆動I/F(11〜13)を有している。また、バッテリ19の電源側(例えば12V)であるプラス端子は、ランプ制御ユニット20、ランプ15〜17に接続されている。
【0020】
また、バッテリ19のGND側の端子は、車両GNDに接続され、ランプ制御ユニット20と、駆動I/F(11〜13)に接続されている。
【0021】
各ランプはランプ駆動I/F(11〜13)により駆動され、ランプの発光指示は、SW入力24からランプ制御ユニット20に入力される。ランプ制御ユニット20は、コマンド受付部21と位相制御部22とDUTY制御部23を有している。さらに、SW入力24は、車両のローカルネットワークに接続され、SW入力情報及びその他の車両情報をコマンドとして取り込む。
【0022】
本実施形態に係るランプ制御装置10は、パルス駆動制御により複数のランプを発光させる自動車用の室内灯の制御装置であって、予め決められた点灯時間及び消灯時間の繰り返しにより各ランプを発光させるDUTY制御部23と、各ランプにおけるDUTY制御の点灯開始タイミングを位相制御にて調整する位相制御部22と、を備えている。また、位相制御部22は、二つ以上のランプの使用においても、点灯開始タイミングを重ならないように点灯開始タイミングを制御する重複点灯制御手段を有する。
【0023】
図2は、本発明の実施形態に係るランプ1〜3の発光タイミングを示すタイミングチャート図である。図中、点灯時間と消灯時間の和と点灯時間の比であるDUTY比(1/3)となり、n=3と設定することができる。図2に示すように、ランプ1を駆動している場合から二つめであるランプ2を駆動しようとした場合(n=4から開始)に、二つめのランプの制御波形を同位相で出力するのではなく、ランプの点灯開始タイミングを重ならないようにするため、位相をずらして波形を出力することにより、ランプの電源電圧の変動を1dとしたままで、明るさの変動を低減している。
【0024】
図3は、本発明の実施形態に係るランプ1〜6の発光タイミングを示すタイミングチャート図である。各ランプの点灯時間はWであり、ランプ1〜3までは、ランプ1が点灯して消灯すると同時にランプ2が点灯し、ランプ2の消灯と同時にランプ3が点灯することで、ランプ用電源電圧の変動を1dに抑えている。
【0025】
また、図3のように、ランプ4(n=4)が点灯し、同時点灯が避けられない場合において、ランプ3の点灯開始からW/2経過後にランプ4を点灯する。これは、同時に二つのランプを点灯することで点灯時の過渡現象によりノイズや余分な電圧変動が発生するという問題を避けるためである。
【0026】
また、ランプ4〜6までは、ランプ1〜3までの点灯タイミングで制御する。このように、複数ランプの点灯により点灯タイミングが重なった場合であっても、同位相で出力している場合に比べて、同時に点灯している時間が少なくなることで電圧変動の幅が小さく抑えられ、次々に点灯された場合の明るさの変化を低減させることができる。
【0027】
図4は、本発明の実施形態に係るランプ制御処理の流れを示すフローチャート図である。以下、図3のタイミングチャート図と共に処理の流れを説明する。
【0028】
最初にランプ制御ユニット20は、図示しない車両のローカルネットワークより、発光すべきランプの情報がSW入力24を介して取得される(ステップS10)。次に、予め決められた点灯時間と消灯時間の和に対する点灯時間の割合であるDUTY比を設定する(ステップS12)。もし、SW入力24で得た情報の中にバッテリ電圧の情報があれば、その電圧を考慮してDUTY比を決定してもよい。
【0029】
次に、発光指示のあった発光ランプ及びタイミング決定(ステップS14)と発光ループ(ステップS16)において、SW入力24で取得した発光すべきランプ1〜6までの点灯開始タイミングを記憶した図示しない発光テーブルを記憶領域に展開する。次に点滅ループ(ステップS18)において、点灯時間と消灯時間の制御を行い、発光テーブルに従って、各ランプを制御する。なお、ステップS18の点滅ループは、各判断ステップのランプN発光?(Nは1〜6)を次々判定することにより、全てのランプの発光と消灯を制御可能である。
【0030】
例えば、ランプ1発光?(ステップS20)において、発光テーブルに“発光”という情報を見つけ、ステップS30の発光処理を実行する。同様にして、ランプ2発光?(ステップS22)において、発光テーブルに“消灯”という情報を見つけ、ステップS36の消灯処理を実行する。以下、同様にしてランプ6までの判定が終了すると、点滅ループの繰り返し(ステップS50)を行い、1サイクルの間繰り返し、かつ、発光ループを繰り返し、全てのランプが消灯になるまで繰り返す。もし、全てのランプが消灯と指示された場合は、発光ループ(ステップS52)を抜ける。
【0031】
また、ランプ3〜ランプ4を発光させる処理においては、ランプ3の制御波形の出力タイミングをさらに確認し、W/2位相ずれて出力できるように位相分の時間を待って点灯を開始する。
【0032】
図5は、本発明の実施形態に係る繰り返しサイクルに対する点灯時間の比が大きい場合のランプ1〜3の発光タイミングを示すタイミング図である。もし、ランプ用電源電圧が既定値より低下した場合には、ランプの発光照度を高めるためにDUTY比を高めて、点灯時間を延長される。この場合は、消灯時間が短縮される関係で、重複点灯時にランプ用電源電圧の低下がランプ2の点灯時間中に発生することになる。しかし、二つのランプ点灯中でも同じ点灯開始タイミングで二つのランプの点灯処理が行われないため、ランプ1〜ランプ3まで次々切り替えて点灯処理が行われる。
【0033】
図6は、本発明の実施形態に係る繰り返しサイクルに対する点灯時間の比が大きい場合のランプ1〜6の発光タイミングを示すタイミング図である。ランプ1〜3までの発光処理は、図5と同様であるが、1サイクルにおける点灯時間をWとすると、ランプ3〜ランプ4の間隔はW/4経過後にランプ4が点灯される。以下、ランプ4〜ランプ6までは、上述したランプ1〜ランプ3までと同様な処理である。
【0034】
なお、本実施形態では、重複点灯開始タイミングを早めに開始している。これは、操作者の指示に対して迅速に反応するためである。
【0035】
なお、本実施形態のSW入力24は、車両のローカルネットワークに接続され、SW入力情報をコマンドとして取り込む形式としたが、設定入力を直接接続する形式でもよい。
【0036】
以上説明したように、一定の明るさで点灯させるためにランプをパルスで駆動する場合において、複数のランプを独立で制御する時にパルス出力の位相をずらして同時点灯を少なくとも2点灯とすることで、明るさの変動を同位相で出力したときと比べて電圧変動を減少させることができる効果がある。
【0037】
さらに、SW入力24により得られたランプ用電源電圧値を用いることで、パルス幅と出力の位相を調整して、同時に1点灯となるように位相をずらすことで明るさの変動を無くする効果がある。また、W/2又はW/4等の点灯時間に関連する値を用いることにより回路及び制御プログラムの簡略化ができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施形態に係るランプ制御装置の構成を示す構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係るランプ発光タイミングを示すタイミングチャート図である。
【図3】本発明の実施形態に係るランプ発光タイミングを示すタイミングチャート図である。
【図4】本発明の実施形態に係るランプ制御処理の流れを示すフローチャート図である。
【図5】本発明の実施形態に係る繰り返しサイクルに対する点灯時間の比が大きい場合のランプ発光タイミングを示すタイミング図である。
【図6】本発明の実施形態に係る繰り返しサイクルに対する点灯時間の比が大きい場合のランプ発光タイミングを示すタイミング図である。
【図7】従来のランプ発光タイミングを示すタイミング図である。
【符号の説明】
【0039】
10 ランプ制御装置、11〜13 ランプ駆動I/F、15〜17 ランプ、19 バッテリ、20 ランプ制御ユニット、21 コマンド受付部、22 位相制御部、23 DUTY制御部、24 SW入力。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルス駆動制御により複数のランプを発光させる自動車用の室内灯制御装置において、
予め決められた点灯時間及び消灯時間の繰り返しにより各ランプを発光させるDUTY制御回路と、各ランプにおけるDUTY制御の点灯開始タイミングを位相制御にて調整する位相制御回路と、を備え、
位相制御回路は、二つ以上のランプの使用においても、点灯開始タイミングが重ならないように点灯開始タイミングを制御する重複点灯制御手段を有することを特徴とする自動車用室内灯制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の自動車用室内灯制御装置において、
位相制御回路は、各ランプの点灯開始タイミングを制御し、
点灯時間と消灯時間の和に対する点灯時間の比が1/n(自然数)のDUTY比の場合、2n個のランプのうち少なくとも二つのランプを同時に点灯させることを特徴とする自動車用室内灯制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の自動車用室内灯制御装置において、
位相制御回路は、n+1個目のランプを発光させる場合、点灯開始タイミングが点灯時間の半分の時間ずらしてランプを点灯させることを特徴とする自動車用室内灯制御装置。
【請求項4】
パルス駆動制御により複数のランプを発光させる自動車用室内灯制御装置の制御方法において、
予め決められた点灯時間及び消灯時間の繰り返しにより各ランプを発光させるDUTY制御工程と、各ランプにおけるDUTY制御の点灯開始タイミングを位相制御にて調整する位相制御工程と、を含み、
位相制御工程は、二つ以上のランプの使用においても、点灯開始タイミングを重ならないように点灯開始タイミングを制御する重複点灯制御手段を有することを特徴とする制御方法。
【請求項5】
請求項4に記載の自動車用室内灯制御装置の制御方法において、
位相制御工程は、各ランプの点灯開始タイミングを制御し、
点灯時間と消灯時間の和に対する点灯時間の比が1/n(自然数)のDUTY比の場合、2n個のランプのうち少なくとも二つのランプを同時に点灯させることを特徴とする制御方法。
【請求項6】
請求項5に記載の自動車用室内灯制御装置の制御方法において、
位相制御回路は、n+1個目のランプを発光させる場合、点灯開始タイミングを点灯時間の半分の時間ずらしてランプを点灯させることを特徴とする制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate