説明

自動車用水性中塗り塗料組成物

【課題】下地隠蔽性に優れ、かつ、塗装作業性に優れた水性中塗り塗料組成物を提供すること。
【解決手段】本発明の自動車用水性中塗り塗料組成物は、ポリエステル樹脂と、メチロール基型メラミン樹脂、イミノ基型メラミン樹脂およびメチロール/イミノ基型メラミン樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種のメラミン樹脂と、数平均分子量が400〜1,500であるポリエーテルポリオールと、下記一般式(1)で表され、重量平均分子量が50,000〜1,000,000であるカルボン酸基含有高分子化合物とを含む。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用水性中塗り塗料組成物に関する。より詳細には、本発明は、下地隠蔽性に優れ、かつ、塗装作業性に優れた自動車用水性中塗り塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車車体の塗装工程においては、通常、被塗装物である鋼板の表面にリン酸亜鉛等による化成処理が行われた後、電着塗装による下塗り塗装、中塗り塗料による中塗り塗装および上塗り塗料による上塗り塗装が行われ、鋼板上には多層塗膜が形成されている。中塗り塗料は、通常、鋼板や電着塗装によって得られる電着塗膜の微小なうねりを隠蔽し、得られる塗膜の平滑化を目的として用いられる。
【0003】
上記中塗り塗料として、所定のポリエステル樹脂およびメラミン樹脂を含有する水性中塗り塗料組成物が提案されているが(特許文献1参照)、この水性中塗り塗料組成物は下地隠蔽性が十分ではない。下地隠蔽性を向上させる手段としては、(1)水性中塗り塗料組成物の粘度を下げる手段、(2)水性中塗り塗料組成物の固形分濃度を上げる手段が考えられる。手段(1)ではフロー性を向上させることによって、手段(2)では塗膜形成時の体積収縮量を減少させることによって、下地隠蔽性を向上させ得る。なお、「塗膜形成時」とは、焼き付け工程だけでなく、塗装後のセッティングおよび予備乾燥工程も含む。
【0004】
しかし、上記手段(1)では、粘度が下がることにより塗装作業性に劣るという問題がある。また、上記手段(2)では、高固形分濃度化には限界がある。また、高固形分濃度化を達成できても、ダスト性などの塗装作業性に問題が生じる。
【特許文献1】特開2002−294148号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、下地隠蔽性に優れ、かつ、塗装作業性に優れた水性中塗り塗料組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の自動車用水性中塗り塗料組成物は、ポリエステル樹脂と、メチロール基型メラミン樹脂、イミノ基型メラミン樹脂およびメチロール/イミノ基型メラミン樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種のメラミン樹脂と、数平均分子量が400〜1,500であるポリエーテルポリオールと、下記一般式(1)で表される構造を有し、重量平均分子量が50,000〜1,000,000であるカルボン酸基含有高分子化合物とを含む。
【化1】

(式中、Mはカルボン酸基、又は、アンモニア、1級、2級若しくは3級アミン化合物によるカルボン酸中和基であり、mは1以上の整数であり、Rは水素原子若しくはメチル基である。)
【0007】
好ましい実施形態においては、上記ポリエーテルポリオールの固形分が、水性中塗り塗料組成物の全樹脂固形分100質量部に対して3〜30質量部である。
【0008】
好ましい実施形態においては、上記カルボン酸基含有高分子化合物の固形分が、水性中塗り塗料組成物の全樹脂固形分100質量部に対して0.05〜5.0質量部である。
【0009】
好ましい実施形態においては、上記メラミン樹脂が、メチル化メラミン樹脂、ブチル化メラミン樹脂およびメチルブチル混合メラミン樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種である。
【0010】
好ましい実施形態においては、上記ポリエーテルポリオールの水酸基価が30〜700である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、特定のメラミン樹脂とポリエーテルポリオールとカルボン酸基含有高分子化合物とを組み合わせることにより、下地隠蔽性に優れ、かつ、塗装作業性に優れた水性中塗り塗料組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の水性中塗り塗料組成物は、ポリエステル樹脂と、特定のメラミン樹脂と、ポリエーテルポリオールと、カルボン酸基含有高分子化合物とを含む。以下、各成分について説明する。
【0013】
A.ポリエステル樹脂
上記ポリエステル樹脂としては、塗膜形成成分として機能し得る任意の適切なポリエステル樹脂が採用され得る。例えば、カルボキシル基含有水性ポリエステル樹脂が挙げられる。
【0014】
上記カルボキシル基含有水性ポリエステルの重量平均分子量は、好ましくは3,000〜80,000である。重量平均分子量が3,000未満である場合、貯蔵安定性が低下するおそれがある。80,000を超える場合、下地隠蔽性が不充分になるおそれがある。
【0015】
上記カルボキシル基含有水性ポリエステル樹脂の有する固形分酸価は、好ましくは15〜80である。酸価が15未満である場合、貯蔵安定性が低下するおそれがある。80を超える場合、得られる塗膜の耐水性が低下するおそれがある。また、上記カルボキシル基含有水性ポリエステル樹脂の有する水酸基価は、好ましくは40〜200である。水酸基価が40未満である場合、硬化性が低下するおそれがある。200を超える場合、得られる塗膜の耐水性が低下するおそれがある。
【0016】
上記カルボキシル基含有水性ポリエステル樹脂のガラス転移温度は、好ましくは−40〜50℃であり、さらに好ましくは−40〜10℃である。ガラス転移温度が−40℃未満である場合、硬度が低下するおそれがある。50℃を超える場合、下地隠蔽性が低下するおそれがある。なお、ガラス転移温度は、示差走査型熱量計(DSC)等によって実測することができる。
【0017】
上記カルボキシル基含有水性ポリエステル樹脂は、代表的には、多塩基酸成分とポリオール成分とを常法によって縮合して樹脂を得た後、塩基によって中和して水に分散または溶解することによって得ることができる。
【0018】
上記多塩基酸成分としては、例えば、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、無水トリメリット酸、テトラブロム無水フタル酸、テトラクロロ無水フタル酸、無水ピロメリット酸等の芳香族多価カルボン酸および酸無水物;ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、1,4−及び1,3−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族多価カルボン酸および無水物;無水マレイン酸、フマル酸、無水コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸等の脂肪族多価カルボン酸および無水物等の多塩基酸成分およびそれらの無水物等が挙げられる。
【0019】
上記ポリオール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,9−ノナンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル、2−ブチル−2−エチル-1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチルペンタンジオール、1,4−及び1,3−シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA等のジオール類、およびトリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の3価以上のポリオール成分、並びに、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロールペンタン酸、2,2−ジメチロールヘキサン酸、2,2−ジメチロールオクタン酸等のヒドロキシカルボン酸成分を挙げることができる。
【0020】
上記塩基としては、例えば、トリエチルアミン、ジメチルアミノエタノール等のアミン類を挙げることができる。また、上記中和の際の中和率は、任意の適切な値に設定し得る。代表的には、80〜120%である。なお、本発明の水性中塗り塗料組成物は、上記カルボキシル基含有水性ポリエステル樹脂を2種類以上組み合わせて用いることもできる。
【0021】
本発明の水性中塗り塗料組成物における上記ポリエステル樹脂の固形分は、水性中塗り塗料組成物の全樹脂固形分100質量部に対して、好ましくは25〜75質量部、さらに好ましくは40〜70質量部である。ポリエステル樹脂の固形分が25質量部未満の場合、塗膜性能(例えば、耐チッピング性、耐水性)が低下するおそれがある。75質量部を超える場合、塗膜の硬度が不十分で、耐溶剤性が低下するおそれがある。
【0022】
B.メラミン樹脂
一般的に、メラミン樹脂としては、反応性基がN−(CHOR)である完全アルキル型、N−(CHOR)CHOHであるメチロール基型、N−(CHOR)Hであるイミノ基型、N−(CHOR)CHOHとN−(CHOR)Hが混在するメチロール/イミノ基型の4種類を例示することができる。本発明の水性中塗り塗料組成物は、メチロール基型メラミン樹脂、イミノ基型メラミン樹脂およびメチロール/イミノ基型メラミン樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種のメラミン樹脂を含む。このようなメラミン樹脂を採用し、後述するポリエーテルポリオールとカルボン酸基含有高分子化合物とを組み合わせることにより、下地隠蔽性に優れ、かつ、塗装作業性に優れた水性中塗り塗料組成物を提供することができる。
【0023】
上記反応性基のRは、任意の適切なアルキル基であり得る。例えば、メチル基(メチル化メラミン樹脂)、ブチル基(ブチル化メラミン樹脂)、これらの混合(メチルブチル混合メラミン樹脂)等が挙げられる。例えば、ブチル化メラミン樹脂を用いることにより、得られる水性中塗り塗料組成物の耐水性が向上し得る。
【0024】
本発明で用いられるメラミン樹脂の数平均分子量は、好ましくは400〜1,500であり、さらに好ましくは400〜1,200である。このような範囲であることにより、下地隠蔽性がさらに向上する。
【0025】
本発明で用いられるメラミン樹脂として、市販品を採用し得る。具体例としては、マイコート723、サイメル212、サイメル238(いずれも日本サイテック社製)、ユーバン226(三井化学社製)等が挙げられる。
【0026】
水性中塗り塗料組成物における上記メラミン樹脂の固形分は、水性中塗り塗料組成物の全樹脂固形分100質量部に対して、好ましくは20〜50質量部、さらに好ましくは25〜45質量部である。メラミン樹脂の固形分が20質量部未満の場合、塗膜の硬度が不十分で、耐溶剤性が低下するおそれがある。50質量部を超える場合、塗膜の硬度が高くなりすぎて、耐チッピング性や耐衝撃性が低下するおそれがある。
【0027】
C.ポリエーテルポリオール
上記ポリエーテルポリオールは、1分子中に水酸基を2個以上有する限り、任意の適切なポリエーテルポリオールを採用し得る。このような構成とすることにより、得られる塗膜の耐水性や密着性が向上し得る。本発明で用いられるポリエーテルポリオールの1分子中の水酸基の数の上限は、好ましくは6であり、さらに好ましくは4である。塗膜の硬化性や耐水性に優れ得るからである。
【0028】
上記ポリエーテルポリオールの数平均分子量は、400〜1,500であり、好ましくは500〜1,200である。数平均分子量が400未満である場合、塗膜の硬化性が低下するおそれがある。1,500を超える場合、粘度が高くなって上記ポリエステル樹脂との相溶性が低下し得、塗膜ににごりが生じるおそれがある。
【0029】
上記ポリエーテルポリオールの水酸基価は、好ましくは30〜700、さらに好ましくは50〜500である。水酸基価が前記範囲外である場合、貯蔵安定性が低下したり、得られる塗膜の諸性能が低下したりするおそれがある。
【0030】
本発明で用いられるポリエーテルポリオールは、任意の適切な方法で製造され得る。例えば、アルカリ触媒の存在下、常法により常圧又は加圧下、60〜160℃の温度で、活性水素原子含有化合物にアルキレンオキサイドを付加することにより得られ得る。
【0031】
上記活性水素原子含有化合物としては、例えば、水;1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等の多価アルコール成分や、ジグリセリン、ソルビタン等の4価アルコール;アドニトール、アラビトール、キシリトール、トリグリセリン等の5価アルコール;ジペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、イジトール、イノシトール、ダルシトール、タロース、アロース等の6価アルコール;蔗糖等の8価アルコール;ポリグリセリン等の多価アルコール類、ピロガロール、ヒドロキノン、フロログルシン等の多価フェノールやビスフェノールA、ビスフェノールスルフォン等のビスフェノール類の多価フェノール類;アジピン酸、無水マレイン酸等の多価カルボン酸成分及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。1分子中に有する全水酸基の個数が3個以上であるポリエーテルポリオールを形成するのに用いられる3価以上のアルコールとしては、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビタン、ソルビトール等が好ましい。
【0032】
上記アルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドが挙げられ、これらは2種以上を併用することができる。2種以上を併用する場合の付加形式はブロック若しくはランダムのいずれでもよい。
【0033】
本発明で用いられるポリエーテルポリオールとして、市販品を採用し得る。具体例としては、プライムポールPX−1000、サンニックスGE−600、サンニックスSP−750、PP−400(いずれも三洋化成工業社製)、PTMG−650(三菱化学社製)等が挙げられる。
【0034】
水性中塗り塗料組成物における上記ポリエーテルポリオールの固形分は、水性中塗り塗料組成物の全樹脂固形分100質量部に対して、好ましくは3〜30質量部、さらに好ましくは5〜25質量部である。ポリエステル樹脂の固形分が3質量部未満の場合、フロー性が不十分で、下地隠蔽性が低下するおそれがある。30質量部を超える場合、塗膜の硬度が不十分で、耐溶剤性が低下するおそれがある。
【0035】
D.カルボン酸基含有高分子化合物
上記カルボン酸基含有高分子化合物は、下記一般式(1)で表される構造を有する。
【0036】
【化2】

【0037】
上記式(1)中、Mはカルボン酸基、又は、アンモニア、1級、2級若しくは3級アミン化合物によるカルボン酸中和基であり、mは1以上の整数であり、Rは水素原子若しくはメチル基である。
【0038】
上記カルボン酸基含有高分子化合物の重量平均分子量は、50,000〜1,000,000であり、好ましくは100,000〜800,000である。50,000未満である場合、得られる塗膜の耐水性が低下するおそれがある。1,000,000を超える場合、他の成分との相溶性が低下するおそれがある。
【0039】
上記カルボン酸基含有高分子化合物は、代表的には、アクリル酸及び/又はアクリル酸の塩基による中和塩を含んだモノマー混合液を重合させて得られ得る。当該モノマー混合液は、その他の成分を含み得る。その他の成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ステアリル、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステルモノマー、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−(ヒドロキシメチル)(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリル酸アミドモノマー、ポリエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレンプロピレングリコールモノビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールモノビニルエーテル等のポリアルキレングリコールモノビニルエーテルモノマー、メトキシポリエチレングルコールアリルエーテル、エトキシポリエチレングリコールアリルエーテル等のポリアルキレングリコールモノアリルエーテルモノマー、その他の単量体としては、(メタ)アクリルニトリル、酢酸ビニル、塩化ビニル、スチレン、α−メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、ヒドロキシメチルスチレン、スチレンスルホン酸およびビニルスルホン酸などが挙げられる。これらを単独あるいは2種以上使用することができる。
【0040】
上記モノマー混合液の重合方法としては、任意の適切な方法を採用し得る。例えば、水及び必要に応じてアルコール等の有機溶媒を含む水性媒体中での溶液重合や、乳化剤、重合開始剤及び連鎖移動剤等を用いた乳化重合等が挙げられる。
【0041】
上記一般式(1)のMがカルボン酸中和基である場合、上記重合の前にアクリル酸モノマーを中和して中和塩とした後で上記重合を行ってもよいし、上記重合によってカルボン酸基含有高分子化合物を得た後に中和して中和塩としてもよい。上記中和には、例えば、アンモニア、1級、2級若しくは3級アミン化合物が用いられる。当該アミン化合物はアルカノールアミンであってもよく、また、炭素数1〜4の低級アルキルアミンであってもよい。
【0042】
水性中塗り塗料組成物における上記カルボン酸基含有高分子化合物の固形分は、水性中塗り塗料組成物の全樹脂固形分100質量部に対して、好ましくは0.05〜5.0質量部、さらに好ましくは0.1〜3.0質量部である。カルボン酸基含有高分子化合物の固形分が0.05質量部未満の場合、得られる塗料の粘性が不十分となるおそれがある。5.0質量部を超える場合、塗料の固形分濃度が低下し、塗装する際の作業性が低下するおそれがある。
【0043】
E.その他
本発明の水性中塗り塗料組成物は、任意の適切なその他の成分を含み得る。例えば、下地隠蔽性や得られる塗膜の諸性能を高めるために、顔料を含み得る。当該顔料としては、例えば、黄鉛、黄色酸化鉄、酸化鉄、カーボンブラック、二酸化チタン、アゾキレート系顔料、不溶性アゾ系顔料、縮合アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、インジゴ顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、ジオキサン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、金属錯体顔料等の着色顔料、および、炭酸カルシウム、沈降性硫酸バリウム、クレー、タルク等の体質顔料等が挙げられる。
【0044】
本発明の水性中塗り塗料組成物が上記顔料を含む場合、[全顔料質量/(全顔料質量+全樹脂固形分質量)]×100で表される全顔料濃度は、好ましくは20〜60質量%であり、さらに好ましくは30〜55質量%である。全顔料濃度が20質量%未満である場合、塗料の色設計が困難であり塗膜の耐候性が低下するおそれがある。60質量%を超える場合、塗料安定性が低下するおそれがある。
【0045】
上記その他の成分としては、上記顔料以外にも、必要に応じて、有機溶剤、硬化触媒、表面調整剤、消泡剤、可塑剤、造膜助剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等を含み得る。
【0046】
本発明の水性中塗り塗料組成物の製造方法は、任意の適切な方法を採用し得る。例えば、上記樹脂および顔料等の配合物をニーダーやロール等を用いて混練、サンドグラインドミルやディスパー等を用いて分散する等の方法が挙げられる。
【0047】
F.使用方法
本発明の水性中塗り塗料組成物は、通常、被塗装物に対し、任意の適切な方法で塗布して塗膜を形成するのに用いられる。当該塗布方法としては、例えば、エアスプレー、エアレススプレー、静電塗装等が挙げられる。得られる塗膜の膜厚は、用途等に応じて任意の適切な膜厚に設定し得る。一般的には乾燥膜厚で15〜40μmであることが好ましい。
【0048】
さらに、得られた塗膜を加熱硬化させてもよい。加熱硬化させることで、塗膜の物性および諸性能が向上し得る。加熱温度としては、本発明の水性塗料組成物の種類に応じて適宜設定し得る。一般的には80〜180℃に設定されていることが好ましい。加熱時間は加熱温度に応じて任意に設定し得る。
【0049】
本発明の水性中塗り塗料組成物を自動車車体用の中塗り塗料として用いる場合は、必要により下塗りを施された被塗装物に対して本発明の水性中塗り塗料組成物を塗布し、焼き付け硬化させて中塗り塗膜を形成した後、その上に上塗り塗料を塗布した後、加熱硬化することによって多層塗膜を得ることができる。
【0050】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例には限定されない。なお、特に明記しない限り、実施例における部および%は質量基準である。
【0051】
(製造例1)ポリエステル樹脂1の製造
反応器に、イソフタル酸25.6部、無水フタル酸22.8部、アジピン酸5.6部、トリメチロールプロパン19.3部、ネオペンチルグリコール26.7部、ε−カプロラクトン17.5部、ジブチルスズオキサイド0.1部を加え、混合撹拌しながら170℃まで昇温した。その後3時間かけて220℃まで昇温しつつ、酸価8となるまで縮合反応により生成する水を除去した。
次いで、無水トリメリット酸7.9部を加え、150℃で1時間反応させ、酸価が40のポリエステル樹脂を得た。さらに、100℃まで冷却後ブチルセロソルブ11.2部を加え均一になるまで撹拌し、60℃まで冷却後、イオン交換水98.8部、ジメチルエタノールアミン5.9部を加え、不揮発分50%、固形分酸価40、水酸基価110、重量平均分子量8,000のポリエステル樹脂1を得た。
【0052】
(製造例2)着色顔料ペースト1の製造
製造例1で得られたポリエステル樹脂1を50部に対して、ルチル型酸化チタン34.5部、硫酸バリウム34.4部、タルク6部、カーボンブラック0.1部、イオン交換水17.9部を混合撹拌し、ペイントコンディショナー中でガラスビーズ媒体を加え、室温で1時間混合分散し、粒度5μm以下、不揮発分70%の着色顔料ペースト1を得た。
【0053】
(実施例1)
製造例1で得られたポリエステル樹脂1を65部、製造例2で得られた着色顔料ペースト1を142.9部、イミノ基型メチル化メラミン樹脂としてマイコート723(日本サイテック社製、数平均分子量420、固形分100質量%)45部、ポリエーテルポリオールとしてプライムポールPX−1000(三洋化成工業社製、数平均分子量1,000、1分子中の水酸基数2、固形分100質量%)10.0部、サーフィノール104(エアープロダクツジャパン社製)3.8部、ブチルセロソルブ15部、および、SNシックナーN−1(サンノプコ社製カルボン酸基含有高分子化合物、重量平均分子量500,000、有効成分25質量%)0.9部を混合し、均一分散させて水性中塗り塗料組成物を得た。
【0054】
(実施例2)
製造例1で得られたポリエステル樹脂1を35部、製造例2で得られた着色顔料ペースト1を142.9部、イミノ基型メチル化メラミン樹脂としてマイコート723(日本サイテック社製、数平均分子量420、固形分100質量%)25部、イミノ基型メチルブチル混合メラミン樹脂としてサイメル212(日本サイテック社製、数平均分子量580、固形分90質量%)20部、ポリエーテルポリオールとしてサンニックスGE−600(三洋化成工業社製、数平均分子量600、1分子中の水酸基数3、固形分100質量%)25.0部、サーフィノール104(エアープロダクツジャパン社製)3.8部、ブチルセロソルブ15部、および、SNシックナーN−1(サンノプコ社製カルボン酸基含有高分子化合物、重量平均分子量500,000、有効成分25質量%)1.8部を混合し、均一分散させて水性中塗り塗料組成物を得た。
【0055】
(比較例1)
製造例1で得られたポリエステル樹脂を85部とし、プライムポールPX−1000を配合しなかったこと以外は実施例1と同様にして、水性中塗り塗料組成物を得た。
【0056】
(比較例2)
SNシックナーN−1を配合しなかったこと以外は実施例2と同様にして、水性中塗り塗料組成物を得た。
【0057】
(比較例3)
製造例1で得られたポリエステル樹脂1を85部、製造例2で得られた着色顔料ペースト1を142.9部、サイメル235(日本サイテック社製、完全アルキル型メラミン樹脂、数平均分子量650、固形分100質量%)45部、サーフィノール104(エアープロダクツジャパン社製)3.8部、および、ブチルセロソルブ15部を混合し、均一分散させて水性中塗り塗料組成物を得た。
【0058】
(比較例4)
マイコート723のかわりにサイメル235を用いたこと以外は実施例1と同様にして、水性中塗り塗料組成物を得た。
【0059】
上記で得られた水性中塗り塗料組成物の各々について、以下の評価を行った。評価方法は以下に示すとおりである。評価結果を表1にまとめる。なお、得られた水性中塗り塗料組成物を、イオン交換水で30秒(No.4フォードカップを使用し、20℃で測定)に希釈し、以下の評価に供した。
<仕上がり外観>
リン酸亜鉛処理した300×400×0.8mmのダル鋼板に、カチオン電着塗料(パワートップU−50、日本ペイント社製)を、乾燥膜厚が20μmとなるように電着塗装し、160℃で30分間加熱して硬化させ、電着塗装板を得た。この電着塗装板の電着塗装面に、上記で得られた水性中塗り塗料組成物を、乾燥膜厚30μmとなるようにカートリッジベル(ABBインダストリー社製、水系塗料塗装用回転霧化式静電塗装機)で1ステージ塗装し、80℃で3分間プレヒートした。その後、150℃で30分間加熱硬化後に冷却し、試験板を得た。
溶剤型中塗り塗料(日本ペイント社製、オルガP−30グレー)を前記と同様の手順でダル鋼板に塗装し、加熱硬化させて比較試験板を得た。
試験板の仕上がり外観を目視で観察し、比較試験板の観察結果と比較した。評価基準は以下の通りである。なお、Aは実用上問題のないレベルである。
(評価基準)
A:溶剤型中塗り塗料を用いた場合と同等以上
B:溶剤型中塗り塗料を用いた場合に比べ、やや劣る
C:溶剤型中塗り塗料を用いた場合に比べ、格段に劣る
<下地隠蔽性>
上記で得られた試験板の下地隠蔽性(塗膜平滑性)をウェーブスキャン(ビックケミー社製、表面粗度測定器)にて、320〜800μmのうねりの隠蔽に有効な低波長領域(W3値)を測定した。測定値が25以下を合格とした。
<塗装作業性>
直径5mmの穴が複数個形成された上記電着塗装板を水平の状態に設置し、当該板の表面に上記で得られた水性中塗り塗料組成物をカートリッジベルで膜厚を変えて(20μm〜50μm)勾配塗装した。
塗装後、直ぐに板を垂直に立て、その状態のまま5分間セッティングし、80℃で3分間プレヒートした後、150℃で30分間加熱硬化した。加熱硬化後、穴の下端から垂れた塗膜の長さが5mmの地点の垂れた塗膜の膜厚(タレ膜厚)を測定した。評価基準は40μmとし、40μm以上を合格、40μm未満を不合格とした。
【0060】
【表1】

【0061】
表1から明らかなように、本発明の実施例の水性中塗り塗料組成物は、仕上がり外観に優れるとともに、下地隠蔽性および塗装作業性の両方が顕著に優れている。一方、ポリエーテルポリオールを用いない比較例1は、下地隠蔽性が不十分であり、仕上がり外観に劣る。カルボン酸基含有高分子化合物を用いない比較例2は、塗装作業性に劣る。ポリエーテルポリオールもカルボン酸基含有高分子化合物も用いない比較例3は、下地隠蔽性にも塗装作業性にも劣る。ポリエーテルポリオールとカルボン酸基含有高分子化合物とを用いるがメラミン樹脂が完全アルキル型である比較例4は塗装作業性に劣る。このことから、下地隠蔽性と塗装作業性との両立は、特定のメラミン樹脂とポリエーテルポリオールとカルボン酸基含有高分子化合物とを組み合わせることにより達成されると推察される。これは、特定のメラミン樹脂とポリエーテルポリオールとカルボン酸基含有高分子化合物とを組み合わせて水性中塗り塗料組成物を実際に調製してはじめて得られる知見であり、予期せぬ優れた効果である。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の水性中塗り塗料組成物は、自動車車体の塗装に好適に利用され得る。また、環境問題に配慮した塗料として好適に利用され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル樹脂と、
メチロール基型メラミン樹脂、イミノ基型メラミン樹脂およびメチロール/イミノ基型メラミン樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種のメラミン樹脂と、
数平均分子量が400〜1,500であるポリエーテルポリオールと、
下記一般式(1)で表される構造を有し、重量平均分子量が50,000〜1,000,000であるカルボン酸基含有高分子化合物とを含む、自動車用水性中塗り塗料組成物。
【化1】

(式中、Mはカルボン酸基、又は、アンモニア、1級、2級若しくは3級アミン化合物によるカルボン酸中和基であり、mは1以上の整数であり、Rは水素原子若しくはメチル基である。)
【請求項2】
前記ポリエーテルポリオールの固形分が、水性中塗り塗料組成物の全樹脂固形分100質量部に対して3〜30質量部である、請求項1に記載の自動車用水性中塗り塗料組成物。
【請求項3】
前記カルボン酸基含有高分子化合物の固形分が、水性中塗り塗料組成物の全樹脂固形分100質量部に対して0.05〜5.0質量部である、請求項1または2に記載の自動車用水性中塗り塗料組成物。
【請求項4】
前記メラミン樹脂が、メチル化メラミン樹脂、ブチル化メラミン樹脂およびメチルブチル混合メラミン樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種である、請求項1から3のいずれかに記載の自動車用水性中塗り塗料組成物。
【請求項5】
前記ポリエーテルポリオールの水酸基価が30〜700である、請求項1から4のいずれかに記載の自動車用水性中塗り塗料組成物。

【公開番号】特開2008−144064(P2008−144064A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−334005(P2006−334005)
【出願日】平成18年12月12日(2006.12.12)
【出願人】(000230054)日本ペイント株式会社 (626)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【Fターム(参考)】