説明

自動選別装置、自動選別方法及び資材の製造方法

【課題】選別対象物に含まれる特定元素の含有レベルを正確に判定することが可能であり、選別対象物を特定元素の含有レベルに応じて正確に選別することができる。
【解決手段】 粉状若しくは粒状の選別対象物1を搬送する搬送部2と、搬送部2の選別対象物1の一部1aを採取するサンプリング部3と、選別対象物1の一部1aが移入される前処理室4と、前処理室4から選別対象物1の一部1aが移入される試料室5と、試料室5に密接して選別対象物1の一部1aに近接することにより、選別対象物1の一部1aにX線を照射して蛍光X線を計測する蛍光X線計測部6と、蛍光X線計測部6の計測結果から選別対象物1の一部1aの特定元素の含有レベルを判定する判定部8と、判定部8の判定結果に応じて搬送部2の選別対象物1の残部1bと一部1aを選別する選別部10とを備える自動選別装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原材料、製品、廃棄物などの選別対象物の選別に係り、特定元素の含有レベルに応じて選別対象物を選別する自動選別装置及び自動選別方法及び資材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、資源の安定供給や廃棄物の発生量増加に伴う最終処分場の残存容量の減少が問題化している。そのため、原材料の効率的利用や廃棄物のリサイクル推進により、資源の消費抑制、環境への負荷低減を図ることが求められている。
しかし、原材料の効率的利用や廃棄物のリサイクル推進を適切に行うに当たっては、原材料や廃棄物等の中に含有されている特定元素が特に問題となる。現在、原材料や廃棄物中に含まれる特定元素成分に対しては規制が設けられ、この規制値をクリアしたものを使用することが求められており、さらに、適切な処理が施され、十分な品質管理がなされた製品を出荷することが要求されている。
例えば、セメント製造分野においては、リサイクルを推進させるために、焼却灰や汚染土壌などの各種廃棄物がセメント原料として混合されており、そのため、予めこれら各種廃棄物中の特定元素の含有レベルを計測し、混合に適した安全なものを選別して、使用することが求められている。
【0003】
原材料や廃棄物を適切に選別する装置としては、例えば特許文献1に開示されている、選別の対象となる廃回路基板を常に一定速度で移動させながら、蛍光X線分析により特定元素の含有の有無を検知し、その検知結果に応じて廃棄物を分別する装置が知られている。
【0004】
また、特許文献2には、空気中においても蛍光X線による分析を可能にするため、静止状態の部材と蛍光X線検出装置との間隔を検出可能な程度まで短くし、検出感度を高めた識別装置と、より検出感度を高くするため、X線透過率が空気中よりも不活性ガス中における方が大きいことを利用し、検査室をヘリウム雰囲気にして部材を蛍光X線分析する識別装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−310952号公報
【特許文献2】特開平10−267868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1の分別装置における分別の対象となる廃回路基板の蛍光X線分析は、常に一定速度で廃回路基板を移動させながら行う。しかも、蛍光X線検出装置と廃回路基板とがかなり離間した状態で蛍光X線の計測を行っているため、蛍光X線の強度が減衰してしまい、例え廃回路基板から特定元素の含有の有無を検知し判定することができたとしても、特定元素の含有レベルまでを判定することは困難である。
【0007】
また、特許文献2の識別装置では、識別対象の部材を静止状態にして蛍光X線の検出を行っているものであるが、特許文献1と同様に、識別対象の部材と蛍光X線検出装置とがかなり離間している状態で検出を行っているため、例え検査室をヘリウム雰囲気にしても蛍光X線強度が減衰し、特定元素の含有レベルまで判定することは困難である。
【0008】
本発明は上記課題に鑑み提案するものであって、選別対象物に含まれる特定元素の含有レベルを正確に判定することが可能であり、選別対象物を特定元素の含有レベルに応じて確実に選別することができる自動選別装置、自動選別方法及び資材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の自動選別装置は、粉状若しくは粒状の選別対象物を搬送する搬送部と、前記搬送部の選別対象物の一部を採取するサンプリング部と、前記選別対象物の一部が移入される試料室と、前記試料室に密接して前記選別対象物の一部に近接することにより、若しくは前記試料室内の前記選別対象物の一部に略当接することにより、前記選別対象物の一部にX線を照射し、前記照射によって発生する蛍光X線を計測する蛍光X線計測部と、前記蛍光X線計測部の計測結果から前記選別対象物の一部の特定元素の含有レベルを判定する判定部と、前記判定部の判定結果に応じて、少なくとも前記搬送部の前記選別対象物の残部を選別する選別部と、を備えることを特徴とする。
前記構成によって、選別対象物の一部を試料として採取し、試料に対して蛍光X線計測部を近接或いは略当接して蛍光X線を計測することにより、選別対象物に含まれる特定元素の含有レベルを正確に判定することが可能となり、選別対象物を特定元素の含有レベルに応じて確実に選別することができる。
【0010】
また、本発明の自動選別装置は、前記サンプリング部が、前記搬送部の選別対象物の複数箇所から採取することにより前記選別対象物の一部を採取することを特徴とする。
前記構成によって、選別対象物の複数箇所からサンプルを採取して試料を作成し、複数のサンプルに基づく計測結果から特定元素の含有レベルを判断することができるので、選別対象物の一部として採取した試料に含まれる特定元素の含有レベルは、元々その試料が含まれていた選別対象物全体を代表する特定元素の含有レベルにより近付けることができる。従って、選別対象物に含まれる特定元素の含有レベルをより正確に判定することが可能となり、選別対象物を特定元素の含有レベルに応じてより確実に選別することができる。
【0011】
また、本発明の自動選別装置は、前記サンプリング部を、移送路と、所定間隔を開けて設けられ前記移送路に通じる複数の吸入口を有する構成とし、少なくとも前記移送路内を減圧可能な減圧部を設け、前記移送路内を減圧することにより、前記複数の吸入口から前記選別対象物の一部を採取することを特徴とする。
前記構成によって、複数の吸入口から一度に選別対象物を移送することが可能であり、選別対象物の効率的な移送を行うことができる。また、減圧機構のみで複数の吸入口からの移送が可能となり、低コストで装置を構成することができる。
【0012】
また、本発明の自動選別装置は、前記試料室内の前記選別対象物の一部を前記選別部に排出する若しくは前記選別対象物の残部と合わさるように排出する排出路を備え、前記選別対象物の残部と共に前記選別対象物の一部も選別することを特徴とする。
前記構成では、試料として用いた選別対象物の一部も選別することができ、選別対象物を残らず全て選別することが可能となる。また、選別対象物の一部が選別されない場合には、選別されずに保管する必要のある対象物が残り、保管場所や保管コストが必要となるが、斯様な保管場所や保管コストを不要にすることができる。
【0013】
また、本発明の自動選別装置は、前記サンプリング部で採取した前記選別対象物の一部が前記試料室に移入される前に移入される前処理室を備え、前記前処理室を、前記選別対象物の一部を加熱して含有水分を除去する乾燥室、若しくは前記選別対象物の一部を粒径を均一化するために粉砕する粉砕室、若しくは前記選別対象物の一部を均一化するために混合攪拌する混合室、若しくは前記乾燥室と前記粉砕室と前記混合室の少なくとも2つの組み合わせとすることを特徴とする。
前記構成では、例えば含有水分の除去、粒径の均一化、選別対象物の均一化など選別対象物の状態に応じて適切な処理を行った後に蛍光X線の計測を行うことが可能となり、蛍光X線の計測誤差や特定元素の含有レベルの判定誤差を低減することができる。従って、選別対象物に含まれる特定元素の含有レベルをより正確に判定することが可能となり、選別対象物を特定元素の含有レベルに応じてより正確に選別することができる。また、人手による乾燥、粉砕、混合という前処理が不要となり、選別工程の効率化を図ることができる。
【0014】
また、本発明の自動選別方法は、粉状若しくは粒状の選別対象物を搬送する工程と、前記搬送された選別対象物の一部を採取する工程と、前記選別対象物の一部を試料室に移入する工程と、蛍光X線計測部を、前記試料室に密接して前記選別対象物の一部に近接することにより、若しくは前記試料室内の前記選別対象物の一部に略当接することにより、前記選別対象物の一部にX線を照射し、前記照射によって発生する蛍光X線を計測する工程と、前記蛍光X線計測部の計測結果から前記選別対象物の一部の特定元素の含有レベルを判定する工程と、前記判定部の判定結果に応じて、少なくとも前記搬送部の前記選別対象物の残部を選別する工程と、を備えることを特徴とする。
前記構成では、選別対象物の一部を試料として採取し、試料に対して蛍光X線計測部を近接或いは略当接して蛍光X線を計測することにより、選別対象物に含まれる特定元素の含有レベルを正確に判定することが可能となり、選別対象物を特定元素の含有レベルに応じて正確に選別することができる。
【0015】
また、本発明の自動選別方法は、粉状若しくは粒状の選別対象物を搬送する工程と、前記搬送を停止すると共に、移送路と所定間隔を開けて設けられ前記移送路に通じる複数の吸入口とから構成されるサンプリング部における前記複数の吸入口を下降して前記選別対象物に近付ける工程と、前処理室及び前記前処理室に通じる前記移送路を減圧して、前記選別対象物の一部を前記複数の吸入口から前記前処理室内に移送する工程と、前記前処理室及び前記移送路の減圧を停止すると共に、前記複数の吸入口を上昇する工程と、前記前処理室で前記選別対象物の一部に対して乾燥、粉砕、混合若しくはこれらのうちの少なくとも2つを組み合わせである前処理を施す工程と、試料室を減圧して、前記前処理を施した前記選別対象物の一部を前記前処理室から前記試料室内に移送する工程と、前記試料室の減圧を停止する工程と、前記蛍光X線計測部を、前記試料室に密接して前記選別対象物の一部に近接することにより、若しくは前記試料室内の前記選別対象物の一部に略当接することにより、前記選別対象物の一部にX線を照射し、前記照射によって発生する蛍光X線を計測する工程と、前記蛍光X線計測部の計測結果から前記選別対象物の一部の特定元素の含有レベルを判定する工程と、前記判定部の判定結果に応じて選別部の選別経路を設定して、前記選別対象物の残部を搬送して前記選別部に排出して選別すると共に、前記試料室から前記選別対象物の一部を前記選別部に排出して選別する工程と、を備えることを特徴とする。
前記構成では、選別対象物の複数箇所から選別対象物の一部を試料として採取し、前処理を行った後に、試料に対して蛍光X線計測部を近接或いは略当接して蛍光X線を計測することにより、選別対象物に含まれる特定元素の含有レベルを非常に正確に判定することが可能となり、選別対象物を特定元素の含有レベルに応じて非常に正確に選別することができる。また、複数の吸入口から一度に選別対象物を移送することが可能であり、選別対象物の効率的な移送を行うことができる。また、減圧機構のみで複数の吸入口からの移送が可能となり、低コストで装置を構成することができる。また、試料として用いた選別対象物の一部も選別することができ、選別対象物を残らず全て選別することが可能となる。また、選別対象物の一部が選別されない場合には、選別されずに保管する必要のある対象物が残り、保管場所や保管コストが必要となるが、斯様な保管場所や保管コストを不要にすることができる。
【0016】
また、本発明の資材の製造方法は、粉状若しくは粒状の選別対象物を搬送する工程と、前記搬送された選別対象物の一部を採取する工程と、前記選別対象物の一部を試料室に移入する工程と、蛍光X線計測部を、前記試料室に密接して前記選別対象物の一部に近接することにより、若しくは前記試料室内の前記選別対象物の一部に略当接することにより、前記選別対象物の一部にX線を照射し、前記照射によって発生する蛍光X線を計測する工程と、前記蛍光X線計測部の計測結果から前記選別対象物の一部の特定元素の含有レベルを判定する工程と、前記判定部の判定結果により前記特定元素の含有レベルが所定基準を充足する場合に、少なくとも前記搬送部の前記選別対象物の残部を資材として取得する工程と、を備えることを特徴とする。
前記構成では、選別対象物の一部を試料として採取し、試料に対して蛍光X線計測部を近接或いは略当接して蛍光X線を計測することにより、選別対象物に含まれる特定元素の含有レベルを正確に判定することが可能となり、選別対象物を特定元素の含有レベルに応じて正確に選別し、管理基準に適合する選別対象物を資材とすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の自動選別装置、自動選別方法或いは資料の製造方法は、選別対象物に含まれる特定元素の含有レベルを正確に判定することが可能であり、選別対象物を特定元素の含有レベルに応じて正確に選別することができる。特に、膨大な選別対象物の中からごく少量サンプリングして選別対象物中の特定元素の含有レベルを判定することにより、非常に細かい単位で特定元素の含有レベルを判定することができ、選別対象物を管理基準に対して確実に選別し、原材料の効率的な利用や廃棄物のリサイクルの推進等を積極的に推進することができる。また、都市の廃棄物を鉱石に見立てた都市鉱山からのレアメタルの回収に関し、廃棄物中のレアメタルの含有レベルを計測して廃棄物を選別し、効率的にリサイクルしていくこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態である自動選別装置の構成を示す側面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[実施形態の自動選別装置]
以下、本発明の実施形態を本発明に係る自動選別装置の構成を示す側面説明図である図1に基づいて説明する。
【0020】
本実施形態の自動選別装置は、図1に示すように、原材料、製品、廃棄物などの粉状若しくは粒状の選別対象物1を搬送する搬送部2と、搬送部2上から選別対象物1の一部1aを採取するサンプリング部3と、サンプリング部3で採取した選別対象物1の一部1aが移入され、その選別対象物1の一部1aに前処理を施す前処理室4と、前処理室4で前処理を施した選別対象物1の一部1aが移入される試料室5と、試料室5に密接して選別対象物1の一部1aに近接し、選別対象物1の一部1aにX線を照射し、X線の照射で発生する蛍光X線を計測する蛍光X線計測部6と、試料室5の選別対象物1の一部1aの排出先である排出路7と、CPU等の処理部及び所定制御プログラム等を記憶するハードディスクやメモリ等の記憶部で構成され、蛍光X線計測部6の計測結果から選別対象物1の一部aの特定元素の含有濃度等の含有レベルを判定する判定部8と、CPU等の処理部及び所定制御プログラム等を記憶するハードディスクやメモリ等の記憶部で構成され、各部の動作を制御する制御部9と、搬送部2のサンプリング部3の下流側に設けられ、判定部8の判定結果に応じて選別対象物1を選別する選別部10とを備える。
なお、特定元素とは、X線照射によって蛍光X線を発生する元素であり、例えば鉛、水銀、カドミウム等の重金属、金、銀、銅、白金等の有価金属、ニッケル、コバルト、マンガン等の鉱石成分などが挙げられる。また、特定元素の含有レベルは、量、率或いは独自に設定されるレベルによるものなど適宜である。
【0021】
さらに、自動選別装置は、前処理室4、試料室5及び排出路7を減圧にし、選別対象物1の一部1aを移送するための減圧部41、51、71と、サンプリング部3と前処理室4との間、前処理室4と試料室5との間、試料室5と排出路7との間、排出路7の途中をそれぞれ仕切るシャッター42、52、72、73と、各部を制御するための検知情報を制御部9に出力するセンサー33、43、53、74とを有し、制御部9で減圧部41、51、71とシャッター42、52、72、73の動作を制御することにより、選別対象物1の一部1aの採取や、前処理室4、試料室5及び排出路7への選別対象物1の一部1aの移送が可能となっている。
【0022】
搬送部2は、本例ではベルトコンベアであり、制御部9の制御に応じて駆動・駆動停止し、選別対象物1の搬送・搬送停止を行うようになっている。なお、搬送部2は、本例のベルトコンベアに限定されず、選別対象物1を搬送可能なものであれば適宜であり、例えば移動式コンテナ、トラック等とすることも可能である。
【0023】
サンプリング部3は、ホース状或いはパイプ状の移送路31と、所定間隔を開けて設けられ移送路31に通じる複数の吸入口32とを有する。サンプリング部3は、後述する減圧機構で移送路31内を減圧し、複数の吸入口32(図示例では5個の吸入口32)で搬送部2上の選別対象物1の複数箇所から選別対象物1の一部1aを減圧吸引し、移送路31で前処理室4内に移送する。サンプリング部3の少なくとも複数の吸入口32及びその周辺領域は、選別対象物1に対向した状態で伸縮して上下動するようになっている。そして、搬送部2で選別対象物1がサンプリング部3の直下まで搬送されてきた際に、複数の吸入口32が同時に下降して選別対象物1に近接し、各吸入口32が所定量の選別対象物1を吸引し、サンプリング部3は、各吸入口32から吸引された選別対象物1の合計量である一部1aを採取する。前記採取の終了後、前記減圧吸引を停止し、複数の吸入口32は上昇して選別対象物1の残部1bから所定距離離れるようになっている。複数の吸入口32及びその周辺領域の上下動と、前記減圧機構の動作は制御部9の制御に応じて行われる。
【0024】
サンプリング部3の選別対象物1の一部1aの移送方向の上流側、図示例では搬送部2の最下流側に位置する吸入口32の近傍には、選別対象物1の有無を検出するためのセンサー33が設けられている。センサー33は、例えば光電センサーであり、搬送部2や選別対象物1までの距離を計測して計測距離を制御部9に出力し、制御部9がその計測距離に応じて搬送部2上の選別対象物1の有無を判定するようになっている。制御部9は、センサー33の検知情報及びその判定結果に応じて、サンプリング部3の直下まで選別対象物1が搬送されてきたことを認識して搬送部2の搬送を停止すると共に、前述の吸入口32の下降、減圧吸引及び前処理室4内への選別対象物1の一部1aの移送の動作を制御する。
【0025】
前処理室4は、選別対象物1の一部1aが試料室5に移入される前に移入される室であり、選別対象物1の性状で蛍光X線計測に誤差を生ずる場合があることに対応し、蛍光X線計測を正確に行うために選別対象物1の一部1aに前処理を施す室である。前処理室4は、選別対象物1の一部1aを加熱して含有水分を除去する乾燥室、若しくは選別対象物1の一部1aを粒径を均一化するためにローラー等で粉砕する粉砕室、若しくは選別対象物1の一部1aを均一化するために攪拌棒等で混合攪拌する混合室、若しくはこれらの乾燥室と粉砕室と混合室の少なくとも2つの組み合わせの複数室等とすることが可能であり、前処理室4の乾燥、粉砕または混合攪拌等の前処理は制御部9の制御によって行われる。
【0026】
例えば選別対象物1が比較的乾燥し、粒径が均一である場合には、前処理室4として混合室を設けて選別対象物1の一部1aを混合攪拌する構成とし、また、選別対象物1が含水している場合には、前処理室4として乾燥室を設けて選別対象物1の一部1aを加熱して水分を飛ばす構成とし、また、選別対象物1の粒径が不均一である場合には、前処理室4として粉砕室を設けて選別対象物1の一部1a中の粒径の大きいものを粉砕する構成とし、また、選別対象物1が含水し、且つ粒径が不均一である場合には、前処理室4として乾燥室と粉砕室と混合室を設けて選別対象物1の一部1aの水分を飛ばし、粉砕して粒径を均一化して混合攪拌する構成等とする。
なお、乾燥室または粉砕室と混合室を設ける場合、混合室は乾燥室または粉砕室の後に設けると好適であり、また、乾燥室と粉砕室を設ける場合の順番は適宜である。
【0027】
前処理室4には、減圧ポンプ等の減圧部41が接続されており、減圧部41による減圧で前処理室4内を減圧可能であると共に、図示省略する開閉弁等で前処理室4内の減圧雰囲気を大気開放可能になっている。また、前処理室4には、移送路31と前処理室4とを仕切る開閉可能なシャッター42が設けられ、減圧部41とシャッター42とにより、前記移送路31内を減圧する減圧機構を構成しており、減圧部42の駆動・駆動停止及びシャッター42の開閉動作は制御部9で制御される。即ち、選別対象物1を移送路31から減圧吸引する際には、減圧部41で前処理室4内を減圧し、シャッター42を開いて移送路31内を減圧することにより吸引し、選別対象物1の一部1aを移送路31を介して前処理室4内に移送する。
【0028】
前処理室4には、選別対象物1の一部1aの有無を検出するためのセンサー43が設けられている。センサー43は、例えば光電センサーであり、前処理室4の底面や選別対象物1の一部1aまでの距離を計測して計測距離を制御部9に出力し、制御部9がその計測距離に応じて前処理室4内の選別対象物1の一部1aの有無或いは所定量の選別対象物1の一部1aの存在を判定するようになっている。制御部9は、センサー43の検知情報及びその判定結果に応じて、減圧部41を停止すると共に前処理室4の入口のシャッター42を閉じる動作を制御して減圧吸引を停止し、吸入口32の上昇動作を制御し、さらに前処理動作を制御する。そして、制御部9は、前処理動作の終了後に、前処理室4を大気開放して、後述する試料室5に選別対象物1の一部1aを移送するが、この際に、センサー43の検知情報とその検知情報に基づく前処理室4内に選別対象物1の一部1aが無くなったことの判定に応じて、試料室5の減圧部51を停止すると共に、試料室5の入口のシャッター52を閉じる動作を制御する。
【0029】
試料室5は、蛍光X線計測部6による蛍光X線の計測が行われる室であり、選別対象物1の一部1aが封入される。試料室5には、減圧ポンプ等の減圧部51が接続されており、減圧部51による減圧で試料室5内を減圧可能であると共に、図示省略する開閉弁等で試料室5内の減圧雰囲気を大気開放可能になっている。また、試料室5には、前処理室4と試料室5とを仕切る開閉可能なシャッター52が設けられ、減圧部52の駆動・駆動停止及びシャッター52の開閉動作は制御部9で制御される。即ち、制御部9は、前処理動作の終了後或いは前処理動作中に、減圧部51による減圧を開始し、その後にシャッター52を開放し、大気開放された前処理室4から減圧雰囲気の試料室5に選別対象物1の一部1aを減圧吸引して移送すると共に、上述の前処理室4のセンサー43の検知情報に基づき、移送後に、減圧部51を停止してシャッター52を閉じる動作を制御する。
【0030】
試料室5には、選別対象物1の一部1aの有無を検出するためのセンサー53が設けられている。センサー53は、例えば光電センサーであり、試料室5の底面や選別対象物1の一部1aまでの距離を計測して計測距離を制御部9に出力し、制御部9がその計測距離に応じて試料室5内の選別対象物1の一部1aの有無或いは所定量の選別対象物1の一部1aの存在を判定するようになっている。制御部9は、後述する蛍光X線計測の終了後に或いは計測中に減圧部71による減圧を開始し、試料室5を大気開放して、シャッター72を開放し、試料室5から排出路7に選別対象物1の一部1aを減圧吸引して移送排出するが、その後、センサー53の検知情報とその検知情報に基づく試料室5内に選別対象物1の一部1aが無くなったことの判定に応じて、排出路7の減圧部71を停止すると共に、試料室5の出口に相当する排出路7の入口側のシャッター72を閉じる動作を制御し、さらに、排出路7の出口側のシャッター73を開け、選別部10に選別対象物1の一部1aを排出する動作を制御する。
【0031】
蛍光X線計測部6は、その計測窓61を試料室5に密接して選別対象物1の一部1aに計測窓61を近接し、その状態で制御部9の制御に応じて、選別対象物1の一部1aにX線を照射し、X線の照射で発生する蛍光X線を計測するものである。図示例の蛍光X線計測部6では、計測窓61が試料室5の下側に配置され、試料室5の底面の下側に計測窓61を密接するようになっている。前記試料室5底面はX線、蛍光X線を透過可能な素材であれば適宜の素材とすることが可能であり、また、その厚さは可能な限り薄くすることが好ましい。前記構成により、特定元素の含有の有無だけではなく含有レベルまで計測することが可能となり、且つ誤差の小さい計測が可能となる。また、計測の際に、選別対象物1に蛍光X線計測部6の計測窓61を直接押し当てることがないため、蛍光X線計測部6の計測窓61を保護することができ、長期的かつ安定的な計測が可能となる。
【0032】
排出路7は、蛍光X線計測が終了した選別対象物1の一部1aを試料室5から排出する経路であり、蛍光X線計測が終了した選別対象物1の一部1aは排出路7を経由して、その計測に基づいて選別される搬送部2上の選別対象物1の残部1bと共に選別部10に排出される。排出路7は、排出路7内を減圧可能な減圧ポンプ等の減圧部71と、試料室5と排出路7との間を開閉可能に仕切る排出路7の入口側のシャッター72と、排出路7の出口側のシャッター73とを有し、制御部9は、上述の如く、減圧部71とシャッター72、73の動作を制御する。
【0033】
さらに、排出路7には、選別対象物1の一部1aの有無を検出するためのセンサー74が設けられている。センサー74は、例えば光電センサーであり、排出路7の側壁や選別対象物1の一部1aまでの距離を計測して計測距離を制御部9に出力し、制御部9がその計測距離に応じて排出路7内の選別対象物1の一部1aの有無を判定するようになっている。制御部9は、排出路7からの選別対象物1の一部1aの排出時に、センサー74の検知情報とその検知情報に基づく排出路7内に選別対象物1の一部1aが無くなったことの判定に応じて、排出路7の出口側のシャッター73を閉じる動作を制御する。
なお、排出路7は、必ずしも選別部10に接続する必要はなく、選別対象物1の一部1aについて別途分析等を行いたい場合には、一時貯留槽やサンプリング容器などに排出路7を接続して選別対象物1の一部1aを保管し、選別対象物1の残部1bのみを選別することも可能である。
【0034】
判定部8には、蛍光X線計測部6から蛍光X線の計測結果が入力され、その計測結果から選別対象物1の一部aの特定元素の含有レベルを取得し、その記憶部に記憶されている所定の管理基準値と対比し、選別対象物1の特定元素の含有レベルが管理基準を充足するか、充足しないかを判定し、その判定情報を制御部9に出力する。制御部9は、上述の各部の動作を制御すると共に、前記判定情報に応じて、所要の選別経路で選別対象物1を搬送するように選別経路を設定或いは切り替える。
【0035】
選別部10は、判定部8の判定結果に基づく制御部9の制御に応じて選別経路を設定でき、所要の選別経路に選別対象物1を搬送可能なものであれば適宜であり、例えば異なる方向の選別対象物1を搬送する2つのベルトコンベア、或いは正逆転可能なベルトコンベア、2つ若しくは複数の移動式コンテナなど様々なものを採用することが可能である。選別部10は、搬送部2による搬送経路でサンプリング部3の下流側に設けられる。
なお、搬送部2が移動式コンテナやトラックなどであれば、搬送部2自体をそのまま選別部10とすることが可能である。選別部10には、搬送部2上の選別対象物1の残部1bと合わさるように、排出路7から選別対象物1の一部1aが排出され、選別部10は、選別対象物1の一部1aと残部1bが合わさったものを選別部10で選別する、或いは選別対象物1の一部1aと残部1bを選別部10で選別する。
【0036】
次に、本実施形態の自動選別装置の動作について説明する。
なお、図1の点線は制御部9による制御、二点鎖線は選別対象物1の移送方向を示す。図1の自動選別装置において、先ず搬送部2により選別対象物1を搬送する。選別対象物1は粉状若しくは粒状のものであれば原材料、製品、廃棄物など適宜である。搬送されてくる選別対象物1は、センサー33により検知され、その検知情報が制御部9に出力される。制御部9は、前記検知情報に応じて、選別対象物1がサンプリング部3の直下に位置したと認識し、その時点で搬送部2による搬送を停止すると共に、サンプリング部3の複数の吸入口32を下降し、選別対象物1に近付ける。
【0037】
搬送停止・吸入口32の下降後、制御部9の制御により、減圧部41を駆動して前処理室4内を減圧すると共に、制御部9の記憶部に記憶されている所定時間の経過後に前処理室4の入口側のシャッター42を開き、前処理室4に通じる移送路31を減圧して、複数の吸入口32から選別対象物1の一部1aを減圧吸引し、所定量の選別対象物1の一部1aを前処理室4内に移送する。そして、前処理室4のセンサー43が所定量の選別対象物1の一部1aを検知した際に、その検知情報を制御部9に出力する。制御部9は、減圧部41を停止し、前処理室4の入口側のシャッター42を閉じると共に、サンプリング部3の吸入口32を上昇させる。
なお、搬送部2からの選別対象物1の一部1aの採取は所定間隔、即ち搬送部2で搬送される選別対象物1についてほぼ一定量が搬送される毎に行うことができる。また、減圧吸引する選別対象物1の一部1aの量は、減圧の度合いや吸引時間等の調整で適宜所要量に調整することが可能である。
【0038】
その後、制御部9の制御により、前処理室4において、選別対象物1の一部1aに対して乾燥、粉砕、混合若しくはこれらのうちの少なくとも2つを組み合わせである前処理を施す。そして、制御部9の制御により、前処理終了後に、前処理室4を大気開放し、減圧部51による減圧を開始すると共に、制御部9の記憶部に記憶されている所定時間の経過後に試料室5の入口側のシャッター52を開放し、大気開放された前処理室4から減圧雰囲気の試料室5に所定量の選別対象物1の一部1aを減圧吸引して移送する。
なお、前記前処理においては、前処理の種類に応じて前処理室4内を減圧状態或いは大気開放状態とすることが可能であり、例えば前処理室4を乾燥室とする場合には、乾燥室内を減圧状態にして乾燥を早めることができる。制御部9は、前処理室4のセンサー43の検知情報から前処理室4の選別対象物1が無くなったことを検出した際には、試料室5の減圧部51による減圧を停止させ、試料室5の入口側のシャッター52を閉じる。
【0039】
その後、減圧状態の試料室5において、蛍光X線計測部6の計測窓61を試料室5の底面に密接して選別対象物1の一部1aに近接した状態で、制御部9の制御により蛍光X線計測部6で蛍光X線を計測すると共に、排出路7の減圧部71を稼動し、排出路7を減圧にする。制御部9の記憶部に設定されている所定時間が経過すると、制御部9の制御により蛍光X線計測が終了し、その計測結果が判定部8に出力され、判定部8から特定元素の含有レベルの判定結果が制御部9に出力される。制御部9は、その判定結果に応じて選別部10の選別経路を設定或いは切り替え、搬送部2にて制御部9の記憶部に設定されている所定距離だけ搬送し、選別対象物1の残部1bを選別部10に排出する。
【0040】
また、制御部9の制御により、試料室5を大気開放して減圧状態を解除すると共に、排出路7の入口側(試料室5の出口側)のシャッター72が開き、排出路7に蛍光X線の計測が終了した選別対象物1の一部1aが吸引され、試料室5に備えられたセンサー53が試料室5の選別対象物1が排出路6に全て排出され、無くなったことを検知したら、その検知情報が制御部9に出力される。これに応じて制御部9は、排出路7の減圧部71を停止させ、排出路7の入口側(試料室5の出口側)のシャッター72を閉じると共に、排出路7の出口側のシャッター73を開け、選別対象物1を選別部10に排出し、排出路7に設けられたセンサー74が排出路7に選別対象物1の一部1aが無くなったことを検知したら、排出路7の出口側のシャッター73を閉じる。これらの工程は、全ての選別対象物1の選別が終了するまで繰り返し行われる。
【0041】
本実施形態の自動選別装置或いはその自動選別方法は、所定間隔を開けて配置されている複数の吸入口32から選別対象物1を採取し、選別対象物1の状態に応じて適切な前処理を施し、その選別対象物1の一部1aに対して蛍光X線計測部6を近接して蛍光X線を計測することにより、選別対象物1に含まれる特定元素の含有レベルを非常に正確に判定することが可能であり、特定元素の含有レベルの高い選別対象物1と特定元素の含有レベルの低い選別対象物1に正確に選別し、異なる搬送経路に搬出することができる。従って、効率の良い選別が可能となり、選別された選別対象物1に対してそれぞれの特定元素の含有レベルに応じた管理及び利用ができる。また、人手による乾燥、粉砕、混合という前処理や人手によるサンプリングが不要となり、選別工程の効率化を図ることができる。
【0042】
また、蛍光X線計測部6の計測窓61を選別対象物1の一部1aに直接押し当てずに、近接させて計測を行うことにより、蛍光X線計測部6の計測窓61に選別対象物1の一部1aが付着することを防止でき、選別対象物1中の特定元素の含有レベルを長期的に且つ迅速に計測することができる。また、減圧部41、51、71と、シャッター42、52、72等から構成される減圧機構で選別対象物1の一部1aを移送することにより、低コストで装置を構成し、効率的に選別対象物1の一部1aを移送することができる。また、選別対象物1の一部1aと残部1bを全て選別するので、選別対象物の一部1aを選別しない場合に必要となる保管場所や保管コストを不要にすることができる。
【0043】
また、選別対象物1を減圧吸引する場合にだけ吸入口32を下降し、吸引しない場合に吸入口32を上昇させて選別対象物1或いは搬送部2から離間させることにより、選別対象物1と吸入口32やその周辺領域との意図しない接触を防止でき、サンプリング部3の損傷等を未然に防止できる。また、蛍光X線計測時に試料室5を減圧状態にすることができるので、蛍光X線計測時における蛍光X線の強度の減衰を低減することができる。また、前処理室4を乾燥室とする場合には、前処理室4内を減圧下にして乾燥処理を施すことができ、選別対象物1の一部1aの乾燥を早めることができる。
【0044】
[実施形態の変形例等]
本明細書開示の発明は、各発明や実施形態の構成の他に、適用可能な範囲で、これらの部分的な構成を本明細書開示の他の構成に変更して特定したもの、或いはこれらの構成に本明細書開示の他の構成を付加して特定したもの、或いはこれらの部分的な構成を部分的な作用効果が得られる限度で削除して特定した上位概念化したものを含み、下記の変形例等も包含する。
【0045】
例えば上記実施形態では、蛍光X線計測部6の計測窓61を選別対象物1の一部1aに近接して、蛍光X線を計測する構成としたが、試料室5内に昇降可能に蛍光X線計測部6を設け、制御部9の制御により、蛍光X線計測部6の計測窓61を選別対象物1の一部1aに押し当てるようにして略当接し、その状態で選別対象物1の一部1aにX線を照射し、その照射によって発生する蛍光X線を計測する構成とすることも可能である。前記略当接で計測窓61に選別対象物1が付着した場合にも、試料室5から排出路7に減圧吸引する際に、付着した選別対象物1を減圧吸引で除去することが可能であり、長期的に安定且つ正確な計測を行うことができる。
【0046】
また、上記実施形態の如く、サンプリング部3の吸入口32は所定間隔を開けて複数個設ける構成とすると好ましいが、吸入口32が単数のサンプリング部32を用いることも可能である。また、サンプリング部3は1基のみを用いる構成の他に、搬送部2の搬送方向に複数基のサンプリング部3を配列する構成、或いは搬送部2の搬送方向と直角方向に複数基配列する構成としてもよく、好適には複数の吸入口32を有するサンプリング部3を搬送方向と直角方向に複数基設置する構成とするとよい。前記構成により、広い範囲の計測が行えるため、選別対象物の正確な代表計測値をより得易くなる。
【実施例】
【0047】
[実施例1]
図1の自動選別装置により、粉末状になった使用済みのPt触媒とNi触媒の選別試験を実施した。
触媒は、石油化学、石油精製、排ガス処理、脱臭装置など様々な分野で使用されており、使用済み触媒中には種々の有価金属元素が含有されている。もしこのような使用済み触媒を残存する含有元素毎、或いは特定元素の含有濃度毎に選別することができれば、使用済み触媒からの有価金属元素の回収の効率化を図ることができ、金属資源リサイクルの推進に貢献することができる。
【0048】
選別試験は、選別対象物1としてPt触媒及びNi触媒を各100kgずつ用意した。選別する単位は4kg、即ちPt触媒及びNi触媒を各25個口とし、搬送部2の上にランダムに載置し、搬送した。サンプリング部3の直下に触媒の1個口が搬送されてきたら、搬送部2を停止し、サンプリング部3により触媒のサンプル採取を行った。サンプリング数はその1個口の中から5箇所について行った。
前処理室4には、触媒が粉末状であるため混合室を採用し、各触媒中のPt及びNi含有濃度の均一化を図った。
蛍光X線の計測時間は1個口当り10秒とし、判定部8には今回はPt含有基準値のみを記憶させ、蛍光X線計測結果が基準値より上であればPt触媒、下であればNi触媒として選別することとした。
以上のようにして選別試験を行った結果、予め用意した200kgの試験用使用済み触媒をPt触媒とNi触媒とに選別することができた。
【0049】
[実施例2]
図1の自動選別装置により、粗鉱になった低品位Ni鉱石と高品位Ni鉱石の選別試験を実施した。
製錬分野においては、従来は品位の低さから製錬は困難とされていた水準の鉱石であっても、ある一定の水準以上の品位があれば、精錬技術の向上により現在は商業用として利用することが可能となってきている。こういった状況下において、鉱石を含有元素毎、或いは特定元素の含有濃度毎に選別することができれば、資源をより一層効率的に利用することができる。
【0050】
選別試験は、選別対象物1として低品位Ni鉱石及び高品位Ni鉱石を各500kgずつ用意した。選別する単位は10kg、即ち低品位Ni鉱石及び高品位Ni鉱石を各50個口とし、搬送部2の上にランダムに載置し、搬送した。サンプリング部3の直下に前記鉱石の1個口が搬送されてきたら、搬送部2を停止し、サンプリング部3により前記鉱石のサンプル採取を行った。サンプリング数はその1個口の中から5箇所について行った。
前処理室4には、前記鉱石が粗鉱であるため粉砕室を採用し、各鉱石の粒径及び鉱石中のNi含有濃度の均一化を図った。
蛍光X線の計測時間は1個口当たり10秒とし、判定部8にはNiの含有基準値のみを記憶させ、選別を行った。
以上のようにして選別試験を行った結果、予め用意した1000kgの試験用鉱石を低品位Ni鉱石と高品位Ni鉱石とに選別することができた。
【0051】
[実施例3]
図1の自動選別装置により、清浄な土壌とPb及びSeで汚染された重金属汚染土壌の選別試験を行った。
土壌修復分野においては、オンサイトで土壌修復の必要性の有無をより迅速に得られる方法が望まれる。また、セメント製造分野においては、汚染土壌も重金属の含有濃度によっては原材料として利用されている。このため、汚染土壌を含有元素毎、或いは含有濃度毎に選別することができれば、土壌修復コストを削減し、汚染土壌を資源として有効活用することができる。
【0052】
選別試験は、選別対象物1として清浄土壌及び重金属汚染土壌を各10tずつ用意した。選別する単位は200kg、即ち清浄土壌及び重金属土壌を各50個口とし、搬送部2の上にランダムに載置し、搬送した。サンプリング部3の直下に土壌の1個口が搬送されてきたら、搬送部2を停止し、サンプリング部3により土壌のサンプル採取を行った。サンプリング数はその1個口の中から10箇所について行った。
前処理室4には、土壌が含水状態で粒径が不均一であったため乾燥室及び粉砕室を併用したものを採用し、乾燥室で各土壌から水分を除去した後、粉砕室で各土壌の粒径及び土壌中の重金属含有濃度の均一化を図った。
蛍光X線の計測時間は1個口当たり10秒とし、判定部8にはPb及びSeの含有基準値を記憶させ、選別を行った。なお、判定については、Pb或いはSeのどちらか一方でも記憶させた含有基準値を超えてしまったら、その土壌を重金属汚染土壌とすることとした。
以上のようにして選別試験を行った結果、予め用意した20tの試験用土壌を清浄土壌と重金属汚染土壌とに選別することができた。
【0053】
なお、本発明の自動選別装置における選別単位、サンプリング数、蛍光X線計測の時間は、実施例1〜3に記載した条件のみに限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、原材料、製品、廃棄物などを特定元素の含有レベルに応じて選別する際に利用することができる。
【符号の説明】
【0055】
1…選別対象物 1a…選別対象物の一部 1b…選別対象物の残部 2…搬送部 3…サンプリング部 31…移送路 32…吸入口 33…センサー 4…前処理室 41…減圧部 42…シャッター 43…センサー 5…試料室 51…減圧部 52…シャッター 53…センサー 6…蛍光X線計測部 61…計測窓 7…排出路 71…減圧部 72、73…シャッター 74…センサー 8…判定部 9…制御部 10…選別部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉状若しくは粒状の選別対象物を搬送する搬送部と、
前記搬送部の選別対象物の一部を採取するサンプリング部と、
前記選別対象物の一部が移入される試料室と、
前記試料室に密接して前記選別対象物の一部に近接することにより、若しくは前記試料室内の前記選別対象物の一部に略当接することにより、前記選別対象物の一部にX線を照射し、前記照射によって発生する蛍光X線を計測する蛍光X線計測部と、
前記蛍光X線計測部の計測結果から前記選別対象物の一部の特定元素の含有レベルを判定する判定部と、
前記判定部の判定結果に応じて、少なくとも前記搬送部の前記選別対象物の残部を選別する選別部と、
を備えることを特徴とする自動選別装置。
【請求項2】
前記サンプリング部が、前記搬送部の選別対象物の複数箇所から採取することにより前記選別対象物の一部を採取することを特徴とする請求項1記載の自動選別装置。
【請求項3】
前記サンプリング部を、移送路と、所定間隔を開けて設けられ前記移送路に通じる複数の吸入口を有する構成とし、
少なくとも前記移送路内を減圧可能な減圧部を設け、
前記移送路内を減圧することにより、前記複数の吸入口から前記選別対象物の一部を採取することを特徴とする請求項2記載の自動選別装置。
【請求項4】
前記試料室内の前記選別対象物の一部を前記選別部に排出する若しくは前記選別対象物の残部と合わさるように排出する排出路を備え、
前記選別対象物の残部と共に前記選別対象物の一部も選別することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の自動選別装置。
【請求項5】
前記サンプリング部で採取した前記選別対象物の一部が前記試料室に移入される前に移入される前処理室を備え、
前記前処理室を、
前記選別対象物の一部を加熱して含有水分を除去する乾燥室、
若しくは前記選別対象物の一部を粒径を均一化するために粉砕する粉砕室、
若しくは前記選別対象物の一部を均一化するために混合攪拌する混合室、
若しくは前記乾燥室と前記粉砕室と前記混合室の少なくとも2つの組み合わせとすることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の自動選別装置。
【請求項6】
粉状若しくは粒状の選別対象物を搬送する工程と、
前記搬送された選別対象物の一部を採取する工程と、
前記選別対象物の一部を試料室に移入する工程と、
蛍光X線計測部を、前記試料室に密接して前記選別対象物の一部に近接することにより、若しくは前記試料室内の前記選別対象物の一部に略当接することにより、前記選別対象物の一部にX線を照射し、前記照射によって発生する蛍光X線を計測する工程と、
前記蛍光X線計測部の計測結果から前記選別対象物の一部の特定元素の含有レベルを判定する工程と、
前記判定部の判定結果に応じて、少なくとも前記搬送部の前記選別対象物の残部を選別する工程と、
を備えることを特徴とする自動選別方法。
【請求項7】
粉状若しくは粒状の選別対象物を搬送する工程と、
前記搬送を停止すると共に、移送路と所定間隔を開けて設けられ前記移送路に通じる複数の吸入口とから構成されるサンプリング部における前記複数の吸入口を下降して前記選別対象物に近付ける工程と、
前処理室及び前記前処理室に通じる前記移送路を減圧して、前記選別対象物の一部を前記複数の吸入口から前記前処理室内に移送する工程と、
前記前処理室及び前記移送路の減圧を停止すると共に、前記複数の吸入口を上昇する工程と、
前記前処理室で前記選別対象物の一部に対して乾燥、粉砕、混合若しくはこれらのうちの少なくとも2つを組み合わせである前処理を施す工程と、
試料室を減圧して、前記前処理を施した前記選別対象物の一部を前記前処理室から前記試料室内に移送する工程と、
前記試料室の減圧を停止する工程と、
前記蛍光X線計測部を、前記試料室に密接して前記選別対象物の一部に近接することにより、若しくは前記試料室内の前記選別対象物の一部に略当接することにより、前記選別対象物の一部にX線を照射し、前記照射によって発生する蛍光X線を計測する工程と、
前記蛍光X線計測部の計測結果から前記選別対象物の一部の特定元素の含有レベルを判定する工程と、
前記判定部の判定結果に応じて選別部の選別経路を設定して、前記選別対象物の残部を搬送して前記選別部に排出して選別すると共に、前記試料室から前記選別対象物の一部を前記選別部に排出して選別する工程と、
を備えることを特徴とする自動選別方法。
【請求項8】
粉状若しくは粒状の選別対象物を搬送する工程と、
前記搬送された選別対象物の一部を採取する工程と、
前記選別対象物の一部を試料室に移入する工程と、
蛍光X線計測部を、前記試料室に密接して前記選別対象物の一部に近接することにより、若しくは前記試料室内の前記選別対象物の一部に略当接することにより、前記選別対象物の一部にX線を照射し、前記照射によって発生する蛍光X線を計測する工程と、
前記蛍光X線計測部の計測結果から前記選別対象物の一部の特定元素の含有レベルを判定する工程と、
前記判定部の判定結果により前記特定元素の含有レベルが所定基準を充足する場合に、少なくとも前記搬送部の前記選別対象物の残部を資材として取得する工程と、
を備えることを特徴とする資材の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−41903(P2011−41903A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−191574(P2009−191574)
【出願日】平成21年8月21日(2009.8.21)
【出願人】(000183303)住友金属鉱山株式会社 (2,015)
【Fターム(参考)】