説明

自動食器洗浄機用洗浄剤組成物

【課題】 自動食器洗浄機による洗浄において、洗浄時の消臭効果が高く、且つ洗浄後の残香性が低い洗浄剤組成物を提供する。
【解決手段】 (A)20℃における蒸気圧が0.8Pa以上である香料素材を60質量%以上含有する香料組成物1〜30質量%、(B)吸油担体、(C)水溶性バインダーを含有し、(B)/(C)=7/1〜2/1(質量比)である香料粒子を、自動食器洗浄機用洗浄剤組成物に所定量配合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、香料粒子を含有する自動食器洗浄機用洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、洗浄剤組成物には、洗浄剤組成物元来の匂いのマスキング、香り付け、洗浄時の消臭、香り付け等を目的として、さらには洗浄後の対象物の消臭、香り付け(以降残香性という)等を目的として香料が配合されている。
【0003】
一般に香料素材は、例えば、非特許文献1や非特許文献2に記載されているように、蒸気圧により、トップノート(比較的高蒸気圧)、ベースノート(比較的低蒸気圧)及びミドルノート(両者の中間)に分類される。通常、香料にはこれらの香料素材をバランスの良い比率で混合したものが用いられる。ところが、洗浄時あるいは洗浄後の対象物に、十分な消臭性能や芳香性能を付与するためには、香料素材の洗浄剤に対する賦香率を高めることが必要であった。しかしながら、そうすると洗浄剤組成物そのものの香りが強くなりすぎて却って不快感を与えるといった問題があった。これらを防ぐ目的で、香料を粒子化する方法が数多く提案されている(例えば特許文献1〜8参照)。
【0004】
一方、洗浄対象物が食器や調理器具等である自動食器洗浄機に用いる洗浄剤の場合、洗浄後の対象物への香り付け(残香性)は一般には不要であるが、運転中に発生する蒸気や、運転後の庫内に食材臭が発生する場合があり、これらを低減させるため植物の水抽出エキスを含有する自動食器洗浄機用洗浄剤組成物や、酸素系漂白剤を特定量含有し、香料の含有量を少なく抑えた自動食器洗浄機用洗浄剤組成物が提案されている(特許文献9、10参照)。
【非特許文献1】「香料と調香の基礎知識」、中島基貴編著、1996年、産業図書株式会社
【非特許文献2】「香料の化学」、日本化学会編、産業化学シリーズ、赤星亮一著、昭和58年、大日本図書株式会社
【特許文献1】特表2001−521058号公報
【特許文献2】特開2002−121583号公報
【特許文献3】特開2000−239692号公報
【特許文献4】特開平10−60482号公報
【特許文献5】特表2001−516372号公報
【特許文献6】特許第3420670号公報
【特許文献7】特表平8−506991号公報
【特許文献8】特許第1571385号公報
【特許文献9】特開2003−183695号公報
【特許文献10】特開2003−213295号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記のように、不快臭を低減しつつ賦香率を高めるために、香料を粒子化する技術は知られているが、洗浄後の対象物への残香性を必要としない洗浄剤の用途、例えば自動食器洗浄機用では、洗浄後に過度の香りを食器に付与することはかえって好ましくない。その一方で、自動食器洗浄機では、洗浄、濯ぎ、乾燥中の排気の臭いを低減するために、洗浄、濯ぎ、乾燥中は消臭効果が高いことが望まれる。
【0006】
従って、本発明はこのような自動食器洗浄機による洗浄に用いられる洗浄剤組成物において、組成物そのものの香りを強くし過ぎずに、洗浄、濯ぎ、乾燥中の消臭効果を高め、且つ洗浄後の食器や調理器具等への残香性を低減できる香料粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
(A)20℃における蒸気圧が0.8Pa以上である香料素材を60質量%以上含有する香料組成物1〜30質量%
(B)吸油担体
(C)水溶性バインダー
を含有し、(B)/(C)=7/1〜2/1(質量比)である香料粒子を含有する自動食器洗浄機用洗浄剤組成物に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物は、洗浄時には良好な消臭効果を発現し、かつ洗浄後の洗浄対象物への残香性が低い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物が含有する香料粒子には、香料素材1種以上より構成される香料組成物を含有する。ここで用いられる香料素材とは、天然香料素材又は合成香料素材であり、調香して用いても良い。本発明に係る香料組成物では、洗浄後の洗浄対象物への残香性を少なくする目的から、20℃における蒸気圧が0.8Pa以上、更に2.0Pa以上である香料素材の含有量が60質量%以上であり、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上が特に好ましい。また、残香性を少なくするには、20℃における蒸気圧が0.13Pa未満である香料素材の含有量を、香料組成物中10質量%未満になるよう調整することが好ましく、5質量%以下に調整することが特に好ましい。
【0010】
また、該香料粒子は、粒子強度、香りのバランス及び洗浄対象物への残香性を少なくする目的から、含有される香料組成物は1〜30質量%であり、1〜20質量%が好ましく、3〜10質量%がより好ましい。
【0011】
該香料粒子に使用される20℃における蒸気圧が0.8Pa以上である香料素材は、さらに20℃における蒸気圧が150Pa未満であることが好ましく、100Pa未満であることがより好ましく、80Pa未満であることが特に好ましい。該香料粒子に使用される20℃における蒸気圧が0.8Pa以上である香料素材としては、例えば、1,4−シネオール、1,8−シネオール、アネトール、酢酸ベンジル、ボルネオール、カンファー、カルバクロール、シトラール、シトロネラール、ジペンテン、d−リモネン、ゲラニオール、酢酸ゲラニル、イソシクロシトラール、イソメントン、酢酸ラバンジュリル、l−カルボン、リナロール、酢酸リナリル、l−メントール、l−メントン、桂皮酸メチル、メチルヘプテノン、ネロール、フェランドレン、ピペリトン、イソプレゴール、オイゲノール、ターピネオール、及びターピノレン等が挙げられ、中でも、リナロール、イソメントン、l−メントール、l−メントンが好ましく、イソメントン、l−メントール、l−メントンが特に好ましい。また、本発明に係る香料組成物中の比率を10質量%未満とすることが好ましい20℃における蒸気圧が0.13Pa未満である香料素材としては、バニリン、セドロール、プレゴン等が挙げられ、これらの中でもプレゴンの比率は5質量%未満、更に3質量%未満であることが好ましい。本発明の20℃における蒸気圧が0.8Pa以上である香料素材は、さらに20℃における蒸気圧が150Pa未満であることが好ましく、100Pa未満であることがより好ましく、80Pa未満であることが特に好ましい。本発明に係る香料組成物としては、20℃における蒸気圧が0.8Pa以上(好ましくは150Pa未満)である香料素材を60質量%以上含有するもの、更には20℃における蒸気圧が0.13Pa未満である香料素材の比率が10質量%未満ものであれば、天然由来のオイル、精油等をそのまま使用することもできる。天然由来の香料組成物としては、例えば、タイムオイル、バジルオイル、ペパーミントオイル、ハッカオイル、ローズマリーオイル、ユーカリプタスオイル、マジョラムオイル、ラベンダーオイル、レモンオイル、レモングラスオイル、及びオレンジオイル等が挙げられ、中でも、タイムオイル、バジルオイル、ペパーミントオイル、ハッカオイル、マジョラムオイル、ラベンダーオイル、レモングラスオイル、セージオイル、クローブオイルが好ましく、特にハッカオイルが好ましい。天然由来の香料組成物ないし香料素材は、それぞれの植物の全草又は花、葉、果実、果皮、種子、根、樹皮もしくは茎等を原料として、圧搾法、水蒸気蒸留法、溶剤抽出法によって得られる。
【0012】
これらの香料素材を用いる場合、製造条件によっては加温によって揮発し、香料粒子中の残存率が少なくなる。従って、20℃における蒸気圧が150Pa以上である香料素材の含有量は、香料組成物中の50質量%以下であることが好ましく、特には30質量%以下であることが好ましい。20℃における蒸気圧が150Pa以上である香料素材としては、1,8−シネオール、d−リモネン等が挙げられる。
【0013】
本発明に用いられる香料粒子は吸油担体を含有するが、吸油担体としては、ホワイトカーボン、デキストリン、芒硝等から選ばれる1種以上を用いることができる。
【0014】
ホワイトカーボンとしては、特開昭62−191417号公報第2頁右下欄第19行〜第5頁左上欄第17行(特に初期温度は15〜60℃の範囲が好ましい)、特開昭62−191419号公報第2頁右下欄第20行〜第5頁左上欄第11行に記載されている非晶質アルミノシリケートや、特開平9−132794号公報、特開平7−10526号公報、特開平6−227811号公報、特開平8−119622号公報に記載されている非晶質アルミノシリケート(吸油能:285mL/100g)等を挙げることができる。具体的には、トクシールNR(徳山ソーダ(株)製、吸油能:210〜270mL/100g)、フローライト(徳山ソーダ(株)製、吸油能:400〜600mL/100g)、TIXOLEX 25(韓仏化学社製、吸油能:220〜270mL/100g)、サイロピュア(富士ディビソン(株)製、吸油能:240〜280mL/100g)等の吸油担体を用いることができる。
【0015】
デキストリンは、デンプンの部分加水分解によって得られるものである。デンプン分子は加水分解によって次第に小分子となり、最終的にグルコースになるが、その加水分解程度によって、各種糖類の混合物が製造される。例えば、本発明で用いられるデキストリンは、水溶性デンプン、化工デンプン又はこれらの誘導体であって、エステル化デンプン(リン酸デンプン等)、エーテル化デンプン(カルボキシメチル化デンプン等)、酵素変性デキストリン(マルトデキストリン等)、焙焼デキストリン等が挙げられる。好ましくは酵素変性デキストリン(マルトデキストリン等)、焙焼デキストリンである。更に、下記式で定義されるデキストロース当量値(以下D.E.値という)が、0〜8の非還元末端デンプンと、水溶性デンプン、化工デンプン又はこれらの誘導体であって、水素添加によりグルコース末端を還元末端としたデンプンを所定の割合で混合して作製したデンプンを用いるのが好ましい。非還元末端デンプンとは両末端が非還元末端である(還元末端を有しない)デンプンのことである。
【0016】
D.E.値=[直接還元糖(グルコースとして表示)/固形分]×100
特に、デキストリンとして、D.E.値が0〜8の範囲でかつ水素添加処理を施されているものが好ましく、更にD.E.値が0〜3の範囲で水素添加処理を施され、グルコース末端を還元末端としたデンプンを混合したデンプン担体を含むものが好ましい。
【0017】
デンプンの加水分解は、酸触媒法または酵素触媒法のような標準法によって行なうことができる。デキストリンの具体例としては、特開平8−143603号公報記載の製造方法等によって製造されたもの等が挙げられる。又、これらのデキストリンの中でも、デキストリンへの吸油能から、比容積が5〜10m2/gであるものが好ましい。また、デキストリンのガラス転移温度は、高温での安定性の観点から200℃以上が好ましい。
【0018】
芒硝としては、一般市販品を用いることができる。例えば、四国化成(株)製のA6芒硝等を用いることができる。これら市販品の中でも溶解性の観点から、具体的には、粒径20μmm以下の粒子が90質量%以上であるものが好ましい。
【0019】
香料粒子中の吸油担体の含有量は50質量%以上が好ましく、60〜75質量%が更に好ましい。また、香料粒子中には吸油担体としてデキストリンを含有することが好ましく、香料粒子中のデキストリンの配合量は、香料粒子が硬くならず、溶解性や生産性(造粒性)を低下させず、又、粒子強度を低下させない等の観点から、3〜30質量%、特に5〜15質量%が好ましい。
【0020】
本発明に用いられる香料粒子は、水溶性バインダーを含有するが、水溶性バインダーとして、熱可塑性水溶性バインダー等を用いることができ、特にポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、及びポリオキシエチレンフェニルエーテル等からなる群より選択される1種以上が好ましい。また、該水溶性バインダーは、その融点又は軟化点が35〜80℃のものが好適に用いられるが、45〜70℃のものがより好ましく、50〜65℃のものが特に好ましい。なお、融点は、日本工業規格JIS−K0064(1192)記載の融点測定法等に記載される方法で測定される。
【0021】
水溶性バインダーが高分子化合物の場合、その重量平均分子量は、ポリエチレングリコールを標準としたGPC法で4000〜20000、更に6000〜13000、特に7000〜9000のものが、造粒する際の粘度の点で好ましい。本発明では、製造時のハンドリング性と粒子の均一性という観点から、上記のようなバインダーを溶融した溶融状態のものと固体状態のバインダーとを併用して用いることがより好ましく、溶融/固体(質量比)が、100/0〜20/80が好ましく、さらには80/20〜30/70が好ましく、特に70/30〜40/60であることが好ましい。
【0022】
香料粒子中の水溶性バインダーの配合量は、粒子の強度を保つという観点から5〜40質量%が好ましく、10〜30質量%がさらに好ましく、15〜30質量%が特に好ましい。
【0023】
本発明に用いられる香料粒子は、粒子強度や製造適性の点から吸油担体と水溶性バインダーとの質量比が(吸油担体)/(水溶性バインダー)=7/1〜2/1であり、特に5/1〜2/1であることが好ましい。
【0024】
本発明に用いられる香料粒子は、溶解性を更に向上させる為に、硫酸マグネシウム等の崩壊剤を含有することができる。硫酸マグネシウムの例としては、馬居化成製、赤穂化成製、和光純薬製、富田製薬製等の硫酸マグネシウムが挙げられる。これらのうち、溶解性の観点から、粒径200μm以下の粒子が90質量%以上であるものが好ましく、100μm以下の粒子が90質量%以上であるものがより好ましく、50μm以下の粒子が90質量%以上であるものが特に好ましい。
【0025】
本発明に用いられる香料粒子は、自動食器洗浄機用洗浄剤組成物に乾式混合した時の美観の為に、既知の顔料等の着色剤により着色されることが望ましい。
【0026】
具体的な着色剤は特に限定されないが、溶解もしくは分散性が高く、アルカリに強いものが好ましく、無機顔料、有機顔料、染料等が挙げられ、これらは1種以上が用いられるが、無機顔料を含有することが好ましい。無機顔料としては特に限定されないが、溶解もしくは分散性が高く、光や温度の影響で褪色しないものが好ましく、洗浄対象物への染着性が低いものが好ましい。具体的には、べんがら、群青等の無機顔料や、リオノールグリーンが好ましい。また、色調する為に、他の着色剤を混合させても良く、例えば、べんがら、群青、リオノールグリーンと組合せて使用する具体的な着色剤としては、赤色40号、赤色104号、赤色106号、赤色201号、赤色226号、赤色203号、赤色404号、赤色405号、青色1号、青色2号、黄色203号、黄色4号、黄色5号、緑色3号及びこれらのアルミニウムレーキ等が挙げられ、特に安全性やアルカリに強い観点から赤色106号、赤色226号、赤色104号、青色1号等が好ましい。
【0027】
香料粒子中における着色剤の含有量は、特に制限はないが、0.001〜1.0質量%が好ましく、美観の良さと褪色を抑制する観点から0.003〜0.5質量%がより好ましい。
【0028】
本発明に用いられる香料粒子は、前記各成分を実質的に乾燥工程を伴わずに混合、造粒して製造することが好ましい。
【0029】
本発明において、「実質的に乾燥工程を伴わず」とは、用いた原料中に「不純物」として存在する水を除き、実質的に水が存在しない状態で製造することであって、通常の乾燥工程において通常起こる揮発物質の放出も抑制できる為である。
【0030】
水溶性バインダーの添加順序は特に限定されないが、例えば、加熱された状態の香料と吸油担体の混合物に、予め溶融させた溶融状態の水溶性バインダーと固体状態の水溶性バインダーを添加し、その後、造粒を行なう方法が好ましい。
【0031】
溶融状態の水溶性バインダーの添加方法は、特に限定されないが、均一に添加する為にはスプレー法等が望ましい。しかし、水溶性バインダーの温度が低いと均一にスプレーすることが困難である為、溶融状態の水溶性バインダーの温度は80〜90℃が好ましい。必要とされる水溶液バインダーのうち、全量を溶融状態の水溶性バインダーとしてしまうと蓄熱や剪断等の発熱によって温度上昇しすぎ、香料が揮発されやすくなったり香りの変質のおそれが考えられるが、固体状態の水溶性バインダーを併用することによりその温度上昇を抑制することができる。また、水溶性バインダー添加後の混合物の温度は、香料揮散量を抑制する観点から60〜80℃が好ましく、特に60〜70℃が好ましい。
【0032】
本発明に用いられる香料粒子は、例えば、ヘンシェルミキサー(三井鉱山株式会社製)、ハイスピードミキサー(深江工業株式会社、ナウターミキサー(ホソカワミクロン株式会社製)等の周知の混合機を用いて予め充分に前混合し、次いで、得られた混合物をペレッターダブル(不二パウダル株式会社製)、ツインドームグラン(不二パウダル株式会社製)等の周知の押出機によって圧縮成形して得ることができる。また、エクストルードオーミックス(ホソカワミクロン株式会社製)のような混練押出装置も使用でき、この場合は前述の前混合が省略できる。
【0033】
得られる香料粒子の短軸粒子径としては、好ましくは0.3〜2.5mm、より好ましくは0.5〜2.0mm、更に好ましくは0.7〜1.0mm程度であり、円筒形もしくはヌードル状造粒物等の形状にて押出すことができる。
【0034】
前記のようにして得られる香料粒子は、既知の方法及び装置で粉砕又は整粒を行ってもよい。
【0035】
粉砕又は整粒する際に使用される機器は、特に限定されず、公知の粉砕機(あるいは破砕機)を用いることができる。例えば、ハイスピードミキサー(深江工業株式会社製)、マルメライザー(不二パウダル株式会社製)、スパイラーフロー(フロイント産業株式会社製)、フィッツミル(株式会社ダルトン製)、パワーミル(パウレック株式会社製)、コーミル(Quadro社製)等が挙げられるが、微粉発生量と生産性の観点から、ナイフカッターによるパワーミルやインペラー及びスクリーンに粒子を押し付けて粉砕するコーミルといった粉砕機を用いるのが好ましい。
【0036】
パワーミルは、例えば特開平5−96195号公報等に開示されている装置が挙げられる。この装置は、カッター羽根と円筒形のスクリーンを持つ機器であり、パワーミル入口に投入された粒子はパワーミル内を自由落下し、この自然落下中にカッター羽根に配設された粉砕刃により粉砕及び整粒される。
【0037】
コーミルは、例えば米国特許第4759507号明細書に開示されている装置が挙げられる。この装置は、インペラーとスクリーンを持つ機器であり、コーミル入口に投入された粒子は回転するインペラーによっておこされた遠心力でスクリーンに押し付けられる。小さな粒子は、瞬時にまた円錐型のために生じた渦巻流に乗って、上昇した粒子はインペラーで粉砕及び整粒される。
【0038】
本発明に用いられる香料粒子は、前記のように香料、吸油担体、及びバインダーを混合、造粒して得られるものであって、平均粒径が100〜1500μm、好ましくは200〜1300μm、より好ましくは500〜1000μmとなるように造粒されるのが良い。また、嵩密度に関しては、300〜1000kg/m3が好ましく、650〜850kg/m3が更に好ましい。
【0039】
なお、ここで、香料粒子の平均粒径及び嵩密度は以下の方法で測定した値である。
【0040】
<平均粒径の測定法>
平均粒径はメジアン径であり、JIS Z 8801に規定の篩を用いて求める。例えば、目開きが2000μm、1400μm、1000μm、710μm、500μm、350μm、250μm、180μm、125μmである9段階の篩と受け皿を用い、ロータップマシーン(HEIKOSEISAKUSHO製、タッピング:156回/分、ローリング:290回/分)に取り付け、100gの試料を5分間振動させた後、篩目開きのサイズによる重量分率から各粒径の粒子の割合を測定し、平均粒径を求める。
【0041】
<嵩密度の測定法>
嵩密度は、JIS K 3362により規定された方法で測定する。
【0042】
本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物は、上記のような香料粒子を含有するものである。この香料粒子を適量配合することで、液体香料を多量に賦香した場合のように、洗浄剤組成物そのものの香りが強くなりすぎて却って不快感を与えることを最小限に防ぐことが可能になる。なお、香料粒子を自動食器洗浄機用洗浄剤組成物に配合する方法としては、公知の方法であれば特に限定はない。
【0043】
本発明の自動食器洗浄機用洗剤組成物への香料粒子の添加量は、特に制限されず、香料粒子中の香料の種類や配合割合により異なり、適宜調整して用いる事ができるが、0.1〜10質量%が好ましく、0.3〜7質量%が更に好ましい。
【0044】
また、該香料粒子とは別に、洗浄剤組成物に香料組成物を液体状態で配合することができる。該香料組成物は、香料粒子の構成成分である香料組成物と同一であっても、それ以外であってもかまわない。
【0045】
自動食器洗浄機用洗浄剤組成物中の香料組成物の配合量、すなわち香料粒子中の香料組成物の量に洗浄剤組成物に配合した香料組成物を加算した合計量は、香り、消臭性能、残香性のバランスから、0.05〜3.0質量%が好ましく、特に0.1〜1.0質量%が好ましい。ただし、前記特定の香料粒子に由来する香料組成物の比率は、全香料組成物中、0.1〜100質量%、更に5〜100質量%が好ましい。
【0046】
本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物中に配合される、香料粒子以外の成分としては、特に限定されないが、通常の自動食器洗浄機用洗浄剤に一般的に用いられる洗浄成分を配合することができる。
【0047】
本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物に界面活性剤を配合する場合、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤を使用することができるが、特に低泡性ないし無泡性の非イオン界面活性剤を使用することが好ましい。好ましい非イオン界面活性剤として、アルコキシ化非イオン性界面活性剤(このアルコキシ部はエチレンオキサイド、プロピレンオキサイドもしくはその混合物からなる群から選ばれたものである。)が挙げられる。好ましい非イオン界面活性剤の具体例として、BASFジャパン社のPlurafac(登録商標)シリーズや、(株)日本触媒のソフタノールEPシリーズ(登録商標)等が挙げられる。本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物において、界面活性剤は0〜10質量%、特に0.001〜5質量%配合することが洗浄性能、低泡性の点で好ましい。
【0048】
また、本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物には、特許公報第2931571号公報記載のポリオキシプロピレンを配合することが好ましく、組成物中に0.001〜10質量%、特には0.005〜5質量%配合することが洗浄性能、低泡性の点で好ましい。
【0049】
また、本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物には、洗浄性能の点でアルカリ剤を配合することが好ましく、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ホウ砂、珪酸ナトリウム(層状珪酸ナトリウムを含む)等を挙げることができる。珪酸ナトリウムは金属腐食防止作用を有するので、これを他のアルカリ剤と併用することが望ましい。炭酸ナトリウム5〜70質量%と珪酸ナトリウム(SiO2/Na2O比が1/1〜4/1好ましくは2/1〜2.5/1)2〜15質量%とを併用するのが最も好ましい。
【0050】
本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物には、酵素を配合することが好ましい。酵素としてはアミラーゼ、プロテアーゼ、セルラーゼ、プルラナーゼ、イソプルラナーゼ及びイソアミラーゼからなる1種以上が挙げられる。酵素は組成物中に0.1〜10質量%配合することが好ましく、0.2〜5質量%が洗浄性能、コストの点で特に好ましい。
【0051】
また、本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物にはCa(カルシウム)捕捉剤を配合することが好ましく、ヒドロキシモノあるいは多価カルボン酸又はその塩、イミノ二酢酸構造を有するアミノカルボン酸又はその塩、珪酸化合物、アルミノ珪酸化合物、ポリアクリル酸塩、アクリル酸/マレイン酸共重合体の塩、マレイン酸とオレフィン類の共重合体の塩からなる1種以上を配合することが好ましい。Ca捕捉剤は、自動食器洗浄機用洗浄剤組成物中に5〜85質量%、特に5〜20質量%配合することが特に好ましい。
【0052】
また、本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物には、漂白剤を配合することができる。漂白剤としては酸素系漂白剤が挙げられ、アルカリ金属の過ホウ酸塩(1水和物又は4水和物)、過炭酸塩及び過珪酸塩等の水溶液中で過酸化水素を発生する過酸化物が挙げられる。漂白剤は組成物中に5〜25質量%含有することが好ましい。
【0053】
本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物には、更に色素、流動性向上剤(シリカ等)、水溶性無機塩(硫酸ナトリウム等)、消泡剤(シリコーン等)等を配合してもよい。
【0054】
本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物は、通常の樹脂ボトル、カートン、パウチ等に充填することができ、特にパウチに充填する場合は、これを構成するフィルム素材が多層であることが好ましく、特に無機金属酸化物の蒸着薄膜が形成された樹脂層を1層以上含む樹脂積層体であることが好ましい。
【実施例】
【0055】
(1)香料粒子の作成
表1に示す各香料組成物を用い、各香料粒子を作成した。なお、香料粒子は次のようにして作成した。
【0056】
各香料組成物650g、デキストリン(松谷化学株式会社製:パインフローKH)1560g、硫酸ナトリウム(四国化成工業株式会社製:粉砕A6芒硝)5720g、二酸化ケイ素(徳山ソーダ株式会社製:トクシールNR)1820g、食用三二酸化鉄(癸巳化成株式会社製)2.6g、赤色106号(アイゼン保土谷株式会社製)0.91gをナウターミキサー(ホソカワミクロン(株))に仕込み、ジャケット温度を75℃にして、混合して昇温した。次に、粉体の温度が60℃になった時点で、予め溶融させたポリエチレングリコール(花王株式会社製:KPEG−6000LA)2210gと固体状態のポリエチレングリコール(花王株式会社製:KPEG−6000LA)1040gを添加し、更に混合してから混合物を抜出した。この時の混合物の温度は、66℃であった。次に、得られた混合物を押出造粒機(不二パウダル株式会社製:ペレッターダブルEDX−60型)により孔径0.7mmのスクリーンを通して押出し、圧密化した。更に、押出造粒物を冷却した後、整粒機(パワーミルで1回粉砕し、更に、コーミルにて1回粉砕)で粉砕し、ピンク色に着色した香料粒子を得た。この時、何れの香料組成物を用いた場合ともに製造設備への付着はほとんどなく、製造適性は良好であった。
【0057】
【表1】

【0058】
・タイムオイル(ブランド名 Thyme White, メーカー 小川香料株式会社.)
・バジルオイル(ブランド名 Basil Oil Exotic, メーカー PLIPINAS KAO INC.)
・ペパーミントオイル(ブランド名 Pepper Madras RECT, メーカー I.P.CALLISON&SONS INC.)
・ハッカオイル(ブランド名 薄荷白油, メーカー 長岡実業株式会社)
・ローズマリーオイル(ブランド名 Rosemary oil Tunisiam, メーカー COMPAGNIE DARGEVILLE)
・ユーカリプタスオイル(ブランド名 Eucalyputus Oil Citriodora, メーカー CHARABOT&CIE)
・マジョラムオイル(ブランド名 Oil Marjoram Spanish FCC, メーカー GIVAUDAN -ROURE)
・サンダルウッドオイル(ブランド名 Oil Sandal Mysore, メーカー CHARABOT)
【0059】
(2)自動食器洗浄機用洗浄剤組成物の調製
表2の配合割合にて香料粒子を含有する自動食器洗浄機用洗浄剤組成物を作成し、消臭性能及び残香性を評価した。結果を表2に示す。
【0060】
(3)消臭性能及び残香性の評価方法
<洗浄条件>
使用洗浄機:松下電器株式会社製自動食器洗い機(機種NP−C10)を用い、標準コースで実施。この洗浄機は、15℃から55℃まで徐々に昇温して洗浄し、その後すすぎを2回(昇温しない)行い、最終すすぎ(15℃から70℃まで徐々に昇温してすすぎ)後、乾燥する形式のものである。
使用水:3.5°DHの水
洗浄時の循環水量:約2.5リットル
洗浄剤組成物濃度:0.2質量%
【0061】
<汚染皿の調製>
鰯油(シグマ アルドリッチ ジャパン株式会社製)2gを直径25cmの磁性の皿に塗布したものを3枚洗浄に供した。
【0062】
<消臭性能評価方法>
上記汚染皿を洗浄機にセットし、最終すすぎ中に発生する蒸気の匂いを30歳代の男性及び女性4人(各2人ずつ)のパネルに嗅いでもらい、鰯臭が感知されない場合を4点、ほとんど感知されない場合を3点、やや感知される場合を2点、はっきりと感知される場合を1点とし、パネル4名の平均点が3.5点以上を◎、3.0点以上、3.5点未満を○、2点以上、3点未満を△、2点未満を×として消臭性能を評価した。
【0063】
<残香性の評価方法>
乾燥終了後、約1時間放置した後、洗浄機の蓋を開け、洗浄機庫内の匂いを30歳代の男性及び女性4人(各2人ずつ)のパネルに嗅いでもらい、香料臭が感知されない場合を4点、ほとんど感知されない場合を3点、やや感知される場合を2点、はっきりと感知される場合を1点とし、パネル4名の平均点が3.5点以上を◎、3.0点以上、3.5点未満を○、2点以上、3点未満を△、2点未満を×として残香性を評価した。
【0064】
【表2】

【0065】
1)ポリプロピレングリコール、重量平均分子量約3000、平均縮合度約50(ジオールタイプ、和光純薬株式会社)
2)ソカランCP45(B.A.S.F.社)
3)ターマミル60T(ノボノルディスクバイオインダストリー株式会社)
4)サビナーゼ12.0T(ノボノルディスクバイオインダストリー株式会社)
5)リモネン/ハッカオイル/ペパーミントオイル/オレンジオイル/ユーカリプタスオイル/l−メントール/カンファー/クローブリーフオイル/セージオイル/バジルオイル=47/30/11/5/2/2/2/0.6/0.2/0.2(質量比)で混合したもの
【0066】
表2の結果より本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物は、洗浄時に良好な消臭効果を発現し、かつ洗浄対象物への残香性が発生しないことがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)20℃における蒸気圧が0.8Pa以上である香料素材を60質量%以上含有する香料組成物1〜30質量%
(B)吸油担体
(C)水溶性バインダー
を含有し、(B)/(C)=7/1〜2/1(質量比)である香料粒子を含有する自動食器洗浄機用洗浄剤組成物。
【請求項2】
20℃における蒸気圧が0.13Pa未満である香料素材の比率が、前記香料組成物中10質量%未満である請求項1記載の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物。
【請求項3】
前記香料素材の20℃における蒸気圧が、0.8Pa以上150Pa未満である請求項1又は請求項2記載の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物。
【請求項4】
前記香料粒子を0.1〜10質量%含有する請求項1〜3の何れか1項記載の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物。
【請求項5】
前記香料組成物が、20℃における蒸気圧が0.8Pa以上である香料素材を70質量%以上含有する請求項1〜4の何れか1項記載の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物。
【請求項6】
(A)20℃における蒸気圧が0.8Pa以上である香料素材を60質量%以上含有する香料組成物1〜30質量%
(B)吸油担体
(C)水溶性バインダー
を含有し、(B)/(C)=7/1〜2/1(質量比)である自動食器洗浄機用洗浄剤組成物のための香料粒子。

【公開番号】特開2006−45430(P2006−45430A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−231016(P2004−231016)
【出願日】平成16年8月6日(2004.8.6)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】