自己キャリブレーション装置および方法
【課題】ベクトルネットワークアナライザ(VNA)において、キャリブレーション標準試料、例えばネットワークアナライザ付きキャリブレーションキットを追加すること無く、自己キャリブレーションすることを可能にする方法を提供する。
【解決手段】RF電源、2つのケーブル、マルチステートインピーダンスモジュール、テストポートコネクタを有し、アンノウンスルー法を用いてSパラメータを取得してキャリブレーションを行う。
【解決手段】RF電源、2つのケーブル、マルチステートインピーダンスモジュール、テストポートコネクタを有し、アンノウンスルー法を用いてSパラメータを取得してキャリブレーションを行う。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
図1は、先行技術の1ポート反射率計を示す。典型的なネットワークアナライザのキャリブレーションのためには、系統誤差係数(transmission error coefficient)を決定するために測定プレーンでいくつかの標準試料を測定する必要がある(図2に示す)。その後、キャリブレーション装置を取り外しておいて、ネットワークアナライザによって対象のデバイスを測定する。電子キャリブレーション(ECal)は、キャリブレーション用のアナライザポート1つにつき単一の接続を設けることによって、キャリブレーションプロセスを簡素化する。誤差補正プロセスの完了後に、Ecal装置は取り外される。
【0002】
Adamienは、反射率計の向こう側で、ベクトルネットワークアナライザ(VNA)のテストポートの内部においてマルチステート電子的転送用標準試料を使用し、かつ「アンノウンスルー(unknown thru)」法によるキャリブレーション方法を適用してVNAの自動キャリブレーションを実行する。様々な先行技術の方法は、電子的に切替え可能な開放ショート負荷標準試料(open short load standards)により、テストポートの向こう側および反射率計の前の場所を自動的にキャリブレーションする。「アンノウンスルー」法は、全2ポートキャリブレーション(full 2-port calibration)を得るために使用することができる。いずれの方法も、追加キャリブレーション標準試料を用いずに、挿入可能装置および挿入不可能装置を測定するようにシステムを構成することができない。
【0003】
米国特許第6,417,674号においては、マルチポートキャリブレーションのための「アンノウンスルー」法("unknown thru" method)が拡張された。まず、従来の方法を使用して測定プレーンにおける初期キャリブレーションが実行される。次いで、内部電子キャリブレーション装置が測定され、初期外部キャリブレーションによって得た系統誤差係数を使用して補正される(図3に示す)。したがって、内部電子キャリブレーション装置を使用して測定ポートの自動キャリブレーションが実行される。残念ながら、伝送誤差係数は、全2ポートSOLTキャリブレーションを使用することによって得られる。動作環境条件、例えば温度、移動、老化のため、ケーブルおよび配線は精度を維持するためにしばしば周期的キャリブレーションを必要とする。この技術は携帯機器には適さない。
【発明の開示】
【0004】
ベクトルネットワークアナライザのキャリブレーションは、相異なる既知の反射状態を最低限3つ測定して、テストポートの向こう側の系統誤差を導出する必要がある。次いで、導出された系統誤差係数は、測定誤差を補正して測定精度を向上するために使用される。
【0005】
2ポート測定の場合、伝送系統誤差を得るためにはポート1および2間のスルー接続が必要であるので、時間およびコストを節約するためにこれらのキャリブレーションステップを外部キャリブレーションキットも標準試料をも用いずに機器によって実行する。これは、運搬することのできる可搬性装置に有用である。各テストポートの向こう側においてネットワークアナライザ内部にマルチステートインピーダンスモジュールを組み込み、次いで外部キャリブレーションをマルチステートインピーダンスモジュールに移すことにより、特徴付けされた内部のマルチステートインピーダンスモジュールを使用してネットワークアナライザの各ポートを自動的にキャリブレーションすることができる。ケーブルおよびアダプタの適切な組合せを使用することにより、追加のキャリブレーション標準試料を用いることなく、アンノウンスルー法によるキャリブレーション方法、挿入可能および挿入不可能なときの測定のための全2ポートキャリブレーション方法が可能である。マルチステートインピーダンスモジュールは、他のネットワークアナライザ用の外部電子キャリブレーション装置として、または装置測定用の可変インピーダンスの終端として、または検証装置として使用することができるように、テストポート用の可変インピーダンスの終端になるように構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明は、ベクトルネットワークアナライザ(VNA)がキャリブレーション標準試料、例えばネットワークアナライザのキャリブレーションキットを取り付けることなく、自己キャリブレーションすることを可能にする方法である。
【0007】
図4は、挿入可能および挿入不可能なテスト対象デバイス(DUT)を備えた典型的なVNAの自己キャリブレーション法を示す。RF源は、2つのケーブルの間において切り替えることができる。各ケーブルについて、スイッチ、マルチステートインピーダンスモジュール、およびテストポートコネクタの間に反射率計が介在する。
【0008】
この方法によって、挿入可能および挿入不可能なデバイスの全2ポート誤差補正測定が行われる。テストポートケーブルはいつでも特徴付けすることができ、従って、ケーブルドリフト誤差が排除される。機器は、内部標準試料を用いてリフレッシュすること、例えば再キャリブレーションすることがいつでもできる。
【0009】
ケーブルによる全2ポートキャリブレーションの代わりに、テストポート測定プレーンにおいて2回の1ポートキャリブレーションが実行される。図8を参照されたい。測定の柔軟性のために、テストポートコネクタは、同一のコネクタファミリの、同一のジェンダーのもの(つまり挿入不可能なもの)とする必要がある。挿入可能な組合せおよび混合コネクタファミリの組合せでは、自己キャリブレーションするという特徴がオスおよびメスコネクタの組合せの場合に制限される。
【0010】
図9〜13は、自己キャリブレーションステップおよび可能な装置コネクタの組合せを示す。
【0011】
図6は、本発明の別の実施形態を示す。簡単にするために、1つのポートだけが示されている。この実施形態では、マルチステートインピーダンスモジュールを反射率計側、またはテストポート側に切り替えることができる。スイッチは、反射率計をテストポートに直接接続することもできる。マルチステートインピーダンスモジュールが反射率計側に切り替えられるとき、マルチステートインピーダンスモジュールは内部キャリブレーション装置として機能する。それがテストポート側に切り替えられるとき、前記マルチステートインピーダンスモジュールは外部VNAキャリブレーション装置または検証装置として使用することができる。図7に示すように接続されたとき、マルチステートインピーダンスモジュールは装置特徴付けのための可変インピーダンスの終端として挙動する。
【0012】
[工場におけるキャリブレーション]
この機器は、ECalまたは機械的キャリブレーション標準試料を使用するテストポートの測定プレーンの工場キャリブレーション用に設計される。次いで、このキャリブレーションは、誤差補正をONにして内部マルチステートインピーダンスモジュールまたは各ポートを測定するために使用される。マルチステートインピーダンスモジュールは、インピーダンスの状態を検証する用途および/または可変の終端の用途に使用することができるように、VNAキャリブレーションに要求されるのに最低限必要な構成を有する。次いで、各インピーダンス状態の測定データは、機器の内部にある専用の工場メモリ空間に保存される。反射測定のためのテストポートキャリブレーションにより、パワー測定用の「a」および「b」受信器をキャリブレーションするための基準として、パワーセンサをテストポートに接続することができる。パワーキャリブレーション係数は、割り当てられた工場データメモリ空間に保存される。機器は、電力投入時の追加キャリブレーション無しで、誤差補正された1ポート反射測定およびパワー測定を行なうことができる。図17は、機器のデータメモリおよびプロセス制御関係の簡易ブロック図を示す。
【0013】
図5に示す機器構成の場合、テストポートと直列のマルチステートインピーダンスモジュール用の追加データセットを特徴付けし、キャリブレーションされたVNA(図14に示す通り)を用いて保存しなければならない。この特徴付けデータは、工場データメモリ空間に保存される。
【0014】
一部の低コストVNA設計は、前方向および逆方向測定の両方に1つの基準受信器だけを使用する。a1およびa2受信器を有する代わりに、むしろ1つのREF受信器が使用される(図15に示す通り)。この自己キャリブレーション方法を実行するために、米国特許出願10041403(適切な引用文献を含む)に教示されている「データマッチ」法を適用することができる。多機能スイッチ構成は、この配置のための他の自己キャリブレーションオプションを提供する。
【0015】
図16A〜Bは、ユーザキャリブレーションのプロセスフローチャートを示す。2ポート装置測定が必要である場合、テストポートをテスト対象のデバイス(DUT)に接続するために、ケーブルが必要である。以下の手順は、キャリブレーション標準試料無しで、測定プレーンをテストポートコネクタから全2ポートキャリブレーションのためのケーブルの端部に移動させる。
【0016】
ステップ100において、機器のポートと嵌め合い可能なコネクタおよび適切な長さを有する適切なケーブルをキャリブレーションポート間に接続し、「アンノウンスルー」法による全2ポートキャリブレーションを実行する。例えば、テストポートコネクタが両方とも「メス」コネクタである場合、ケーブルは両端に「オス」コネクタを有する(図9に示す通り)。
【0017】
ステップ102において、ケーブルを取り外すことなく、ケーブルのSパラメータを得る。表記上、便宜的にこれをケーブル1とする。
【0018】
ステップ104において、機器の内部専用ユーザメモリ空間にケーブルのSパラメータを保存する。
【0019】
任意選択的に、追加ケーブル、例えばケーブル1と同一構成を有するケーブル2について、ステップ102および104を繰り返す。
【0020】
ステップ106において、ケーブル1の1端をテストポートの1つから切り離す。
【0021】
ステップ108において、機器のテストポートおよびケーブル1の開放コネクタと嵌め合い可能なコネクタを有する適切な第2ケーブルタイプを、開放テストポートおよびケーブル1に接続する。テストポートコネクタはメスであり、ケーブル1の端部コネクタはオスであるので、このケーブルは1端にオスコネクタ、他端にメスコネクタを有さなければならない(図10に示す通り)。
【0022】
ステップ110において、第1および第2ケーブルタイプのSパラメータを測定する。
【0023】
ステップ112において、第1ケーブルのデータを複合測定値から取り出すことによって、第2ケーブルのSパラメータを算出する。データを機器の内部専用ユーザメモリ空間に保存する。表示上、便宜的にこれをケーブル3と呼ぶ。
【0024】
任意選択的に、追加ケーブル、例えばケーブル3と同一構成を有するケーブル4について、ステップ110および112を繰り返す。
【0025】
適切なケーブルを選択することにより、ケーブルの端部で全2ポート誤差補正測定を実行することができる(図11に示す通り)。
【0026】
追加の特徴付けケーブルにより、次のコネクタジェンダの組合せのいずれかで装置の測定が可能になる。
・ケーブル1およびケーブル3の組合せは、メス対オスとなる(図11に示す通り)。
・ケーブル3およびケーブル4の組合せは、オス対オスの装置測定となる(図12に示す通り)。
・ケーブル1およびケーブル2の組合せは、メス対メスの装置測定となる(図13に示す通り)。
【0027】
装置の測定は、ケーブルが測定されるステップのいずれかで実行することができる。ステップ2は、ケーブルを特徴付けするために使用された。それは、同様の特徴を有し、ポート1およびポート2の間で接続可能である、任意の2ポート装置を測定するのに使用することができる。同じことはステップ6についても言える。DUTをテストポートコネクタに直接接続することができれば、1つのケーブルだけが必要となる。
【0028】
単一の基準受信器システムの場合(図15に示す通り)、ケーブルが接続されている状態において、ポート1内部マルチステートインピーダンスモジュールをポート2用のキャリブレーション装置として使用することによって、2ポートキャリブレーションを達成することができる。機器のテストポートコネクタが同種である場合、以下の自己キャリブレーション手順において使用されるポート番号は相互交換可能である。機器の電源投入時に、1ポートキャリブレーションでテストポートは自動的にキャリブレーションされると仮定する。
【0029】
図17は、図16に示す単一基準受信器システム用のプロセスフローチャートを示す。ステップ200において、機器のポートに嵌め合い可能なコネクタおよび適切な長さを有する適切なケーブルを、キャリブレーションポート間に接続する。SOLT法を用いて全2ポートキャリブレーションを実行するポート、例えばポート1を選択する。機器のコントローラは以下のステップを、ユーザには見えないように実行する。最初に、機器の内部マルチステートインピーダンスモジュールを外部キャリブレーション装置として使用することによって、1ポートキャリブレーションがケーブルコネクタ嵌め合い面の端部において実行される(図18に示す通り)。次に、前方向および逆方向測定が行なわれる(図19に示す通り)。
【0030】
ステップ202において、12の誤差補正項を計算する。機器はこの時点で挿入可能2ポート測定を行なうように読み出される。
【0031】
ステップ204において、ポート1において実行された1ポートキャリブレーションからポート2における内部1ポートキャリブレーションを取り出すことによって、ケーブルのSパラメータを計算する。伝送トラッキング項および負荷整合項をポート2に転送する。
【0032】
1ポートVNAの誤差モデル(図20に示す)場合、3つの系統誤差は、方向性(directivity,Ed)、信号源整合(Es)、および反射トラッキング(Er)である。少なくとも3つの明確に異なる既知の装置を測定することにより、系統誤差を決定することができる。行列の最小2乗法の方程式の形態を用いると、次のようになる。
【数1】
4つ以上のインピーダンス状態をキャリブレーションに利用可能である場合、最小2乗解が使用される。
【数2】
図22に示す物理的セットアップを使用する。
【数3】
とする。ここで、[Tna]は、スイッチの向こう側のシステムの系統誤差の伝送パラメータである。
【数4】
また、[Tp]は、測定プレーンとスイッチとの間のシステムの系統誤差の伝送パラメータである。
【数5】
したがって、次のようになる。
【数6】
ここで、ΓSEは外部標準試料の反射である。
【数7】
内部キャリブレーション標準試料を測定するようにスイッチを設定すると、次のようになる。
【数8】
ここで、ΓSIは標準試料の実際の応答である。
誤差補正をONにして、[TO]を使用すると、次のようになる。
【数9】
標準試料の実際の応答は、フロントエンドの系統誤差が埋め込まれた状態の「誤差補正された」ΓSI’に等しい。各内部キャリブレーション装置の「誤差補正された」データΓSI’を1ポートキャリブレーション解に適用すると、次のようになる。
【数10】
【数11】
【0033】
これは、equation(4)と全く同じ形であり、equation(7)と矛盾しない。外部キャリブレーションは内部キャリブレーション標準試料に転送され、それによってそれらは測定プレーンにおいて測定されたように見えた。外部キャリブレーションは、機器の製造者によって、またはエンドユーザのキャリブレーションラボによって、またはエンドユーザによって実行することができる。
【0034】
機器は、電源投入時、およびいつでも希望するときに、各ポートにおいて内部特徴付け装置を使用してキャリブレーションを実行するように設計することができる。ポート1をポート2にケーブルによって接続することにより、測定プレーンにおける全2ポートキャリブレーションを今、アンノウンスルー法を使用して達成することができる。
【0035】
特徴付けされたケーブルおよびアダプタにより、装置の誤差補正測定が今、脱埋め込み技術または測定プレーンの移送技術を使用し、ケーブルおよびアダプタの全Sパラメータデータを使用して可能になる。どちらかの方法により同じ結果が達成される。
【0036】
全2ポート測定誤差補正の後、結果は各コンポーネントの伝送行列の行列積に等しくなる。2ポート脱埋め込み技術を適用することにより、次のようになる。
【数12】
行列[Tmc]は、誤差補正されたT行列に対応する。行列[TD]はDUTのT行列に対応する。行列[Tc1]、[Tc2]はそれぞれポート1およびポート2のケーブルのT行列に対応する。
【数13】
DUTのSパラメータは次のように解くことができる。
【数14】
2つの1ポートキャリブレーションからケーブルのSパラメータを取り出す場合、次の通りである。
【数15】
[TE2]は、ケーブルの端部における1ポートキャリブレーション誤差項の伝送パラメータである。[TC]は、テストポート側の入力によるケーブルの伝送パラメータである。[TE1]は、ケーブルの他端におけるテストポートの1ポートキャリブレーション誤差項の伝送パラメータである。
機器のテストポートの測定プレーンは、次の関係を認識することによって、ケーブルの端部に移すことができる。
【数16】
図23は、追加のキャリブレーション標準試料を必要としないベクトルネットワークアナライザの機能ブロック図を示す。
【数17】
ケーブル2、すなわち図16に示す通り特徴付けされた第2ケーブルについて、SパラメータはS22側をテストポートに接続して測定されることに注目されたい。
新しい負荷整合項および伝送トラッキング項は次のようになる。
【数18】
EL21、EL12は、ステップ1(図6に示す)において得られた前方向および逆方向負荷整合項である。
【数19】
ET21およびET12は、ステップ1(図6に示す)において得られた前方向および逆方向伝送トラッキング項である。測定プレーンをケーブルの端部からテストポートに移すことは、equation(13)〜equation(15)から[TE1]項、[TE2]項、EL21項、EL12項、ET21項、ET12項を解くことによって導出される。
測定プレーンをケーブルの端部から移すことにより、DUT測定誤差補正を標準的なVNA方式により処理することができる。適切なVNAソースおよび受信器パワーキャリブレーション法は文献に開示されている。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】先行技術の1ポート反射率計を示す。
【図2】測定プレーンをキャリブレーションするための先行技術の方法を示す。
【図3】内部電子キャリブレーション装置および外部2ポート全2ポートキャリブレーションを有する先行技術の2ポートベクトルネットワークアナライザを示す。
【図4】本発明に適した構成を示す。
【図5】本発明に適した別の構成を示す。
【図6】本発明に適した別の構成を示す。
【図7】本発明に適した別の構成を示す。
【図8】テストポート測定プレーンにおいて実行される2回の1ポートキャリブレーションを示す。
【図9】自己キャリブレーションステップおよび交互装置コネクタの組合せを示す。
【図10】自己キャリブレーションステップおよび交互装置コネクタの組合せを示す。
【図11】自己キャリブレーションステップおよび交互装置コネクタの組合せを示す。
【図12】自己キャリブレーションステップおよび交互装置コネクタの組合せを示す。
【図13】自己キャリブレーションステップおよび交互装置コネクタの組合せを示す。
【図14】入力側マルチステートインピーダンスモジュールキャリブレーションを示す。
【図15】単一基準受信器構成を示す。
【図16】ユーザキャリブレーションのためのプロセスフローチャートを示す。
【図17】単一基準受信器システムをキャリブレーションするためのプロセスフローチャートを示す。
【図18】機器のデータ空間および流れの簡易ブロック図である。
【図19】外部キャリブレーション装置としての内部マルチステートインピーダンスモジュールを示す。
【図20】自動SOLTキャリブレーションを示す。
【図21】1ポートベクトルネットワークアナライザを示す。
【図22】図21の物理的セットアップを示す。
【図23】追加のキャリブレーション標準試料を必要としないベクトルネットワークアナライザの機能ブロック図を示す。
【背景技術】
【0001】
図1は、先行技術の1ポート反射率計を示す。典型的なネットワークアナライザのキャリブレーションのためには、系統誤差係数(transmission error coefficient)を決定するために測定プレーンでいくつかの標準試料を測定する必要がある(図2に示す)。その後、キャリブレーション装置を取り外しておいて、ネットワークアナライザによって対象のデバイスを測定する。電子キャリブレーション(ECal)は、キャリブレーション用のアナライザポート1つにつき単一の接続を設けることによって、キャリブレーションプロセスを簡素化する。誤差補正プロセスの完了後に、Ecal装置は取り外される。
【0002】
Adamienは、反射率計の向こう側で、ベクトルネットワークアナライザ(VNA)のテストポートの内部においてマルチステート電子的転送用標準試料を使用し、かつ「アンノウンスルー(unknown thru)」法によるキャリブレーション方法を適用してVNAの自動キャリブレーションを実行する。様々な先行技術の方法は、電子的に切替え可能な開放ショート負荷標準試料(open short load standards)により、テストポートの向こう側および反射率計の前の場所を自動的にキャリブレーションする。「アンノウンスルー」法は、全2ポートキャリブレーション(full 2-port calibration)を得るために使用することができる。いずれの方法も、追加キャリブレーション標準試料を用いずに、挿入可能装置および挿入不可能装置を測定するようにシステムを構成することができない。
【0003】
米国特許第6,417,674号においては、マルチポートキャリブレーションのための「アンノウンスルー」法("unknown thru" method)が拡張された。まず、従来の方法を使用して測定プレーンにおける初期キャリブレーションが実行される。次いで、内部電子キャリブレーション装置が測定され、初期外部キャリブレーションによって得た系統誤差係数を使用して補正される(図3に示す)。したがって、内部電子キャリブレーション装置を使用して測定ポートの自動キャリブレーションが実行される。残念ながら、伝送誤差係数は、全2ポートSOLTキャリブレーションを使用することによって得られる。動作環境条件、例えば温度、移動、老化のため、ケーブルおよび配線は精度を維持するためにしばしば周期的キャリブレーションを必要とする。この技術は携帯機器には適さない。
【発明の開示】
【0004】
ベクトルネットワークアナライザのキャリブレーションは、相異なる既知の反射状態を最低限3つ測定して、テストポートの向こう側の系統誤差を導出する必要がある。次いで、導出された系統誤差係数は、測定誤差を補正して測定精度を向上するために使用される。
【0005】
2ポート測定の場合、伝送系統誤差を得るためにはポート1および2間のスルー接続が必要であるので、時間およびコストを節約するためにこれらのキャリブレーションステップを外部キャリブレーションキットも標準試料をも用いずに機器によって実行する。これは、運搬することのできる可搬性装置に有用である。各テストポートの向こう側においてネットワークアナライザ内部にマルチステートインピーダンスモジュールを組み込み、次いで外部キャリブレーションをマルチステートインピーダンスモジュールに移すことにより、特徴付けされた内部のマルチステートインピーダンスモジュールを使用してネットワークアナライザの各ポートを自動的にキャリブレーションすることができる。ケーブルおよびアダプタの適切な組合せを使用することにより、追加のキャリブレーション標準試料を用いることなく、アンノウンスルー法によるキャリブレーション方法、挿入可能および挿入不可能なときの測定のための全2ポートキャリブレーション方法が可能である。マルチステートインピーダンスモジュールは、他のネットワークアナライザ用の外部電子キャリブレーション装置として、または装置測定用の可変インピーダンスの終端として、または検証装置として使用することができるように、テストポート用の可変インピーダンスの終端になるように構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明は、ベクトルネットワークアナライザ(VNA)がキャリブレーション標準試料、例えばネットワークアナライザのキャリブレーションキットを取り付けることなく、自己キャリブレーションすることを可能にする方法である。
【0007】
図4は、挿入可能および挿入不可能なテスト対象デバイス(DUT)を備えた典型的なVNAの自己キャリブレーション法を示す。RF源は、2つのケーブルの間において切り替えることができる。各ケーブルについて、スイッチ、マルチステートインピーダンスモジュール、およびテストポートコネクタの間に反射率計が介在する。
【0008】
この方法によって、挿入可能および挿入不可能なデバイスの全2ポート誤差補正測定が行われる。テストポートケーブルはいつでも特徴付けすることができ、従って、ケーブルドリフト誤差が排除される。機器は、内部標準試料を用いてリフレッシュすること、例えば再キャリブレーションすることがいつでもできる。
【0009】
ケーブルによる全2ポートキャリブレーションの代わりに、テストポート測定プレーンにおいて2回の1ポートキャリブレーションが実行される。図8を参照されたい。測定の柔軟性のために、テストポートコネクタは、同一のコネクタファミリの、同一のジェンダーのもの(つまり挿入不可能なもの)とする必要がある。挿入可能な組合せおよび混合コネクタファミリの組合せでは、自己キャリブレーションするという特徴がオスおよびメスコネクタの組合せの場合に制限される。
【0010】
図9〜13は、自己キャリブレーションステップおよび可能な装置コネクタの組合せを示す。
【0011】
図6は、本発明の別の実施形態を示す。簡単にするために、1つのポートだけが示されている。この実施形態では、マルチステートインピーダンスモジュールを反射率計側、またはテストポート側に切り替えることができる。スイッチは、反射率計をテストポートに直接接続することもできる。マルチステートインピーダンスモジュールが反射率計側に切り替えられるとき、マルチステートインピーダンスモジュールは内部キャリブレーション装置として機能する。それがテストポート側に切り替えられるとき、前記マルチステートインピーダンスモジュールは外部VNAキャリブレーション装置または検証装置として使用することができる。図7に示すように接続されたとき、マルチステートインピーダンスモジュールは装置特徴付けのための可変インピーダンスの終端として挙動する。
【0012】
[工場におけるキャリブレーション]
この機器は、ECalまたは機械的キャリブレーション標準試料を使用するテストポートの測定プレーンの工場キャリブレーション用に設計される。次いで、このキャリブレーションは、誤差補正をONにして内部マルチステートインピーダンスモジュールまたは各ポートを測定するために使用される。マルチステートインピーダンスモジュールは、インピーダンスの状態を検証する用途および/または可変の終端の用途に使用することができるように、VNAキャリブレーションに要求されるのに最低限必要な構成を有する。次いで、各インピーダンス状態の測定データは、機器の内部にある専用の工場メモリ空間に保存される。反射測定のためのテストポートキャリブレーションにより、パワー測定用の「a」および「b」受信器をキャリブレーションするための基準として、パワーセンサをテストポートに接続することができる。パワーキャリブレーション係数は、割り当てられた工場データメモリ空間に保存される。機器は、電力投入時の追加キャリブレーション無しで、誤差補正された1ポート反射測定およびパワー測定を行なうことができる。図17は、機器のデータメモリおよびプロセス制御関係の簡易ブロック図を示す。
【0013】
図5に示す機器構成の場合、テストポートと直列のマルチステートインピーダンスモジュール用の追加データセットを特徴付けし、キャリブレーションされたVNA(図14に示す通り)を用いて保存しなければならない。この特徴付けデータは、工場データメモリ空間に保存される。
【0014】
一部の低コストVNA設計は、前方向および逆方向測定の両方に1つの基準受信器だけを使用する。a1およびa2受信器を有する代わりに、むしろ1つのREF受信器が使用される(図15に示す通り)。この自己キャリブレーション方法を実行するために、米国特許出願10041403(適切な引用文献を含む)に教示されている「データマッチ」法を適用することができる。多機能スイッチ構成は、この配置のための他の自己キャリブレーションオプションを提供する。
【0015】
図16A〜Bは、ユーザキャリブレーションのプロセスフローチャートを示す。2ポート装置測定が必要である場合、テストポートをテスト対象のデバイス(DUT)に接続するために、ケーブルが必要である。以下の手順は、キャリブレーション標準試料無しで、測定プレーンをテストポートコネクタから全2ポートキャリブレーションのためのケーブルの端部に移動させる。
【0016】
ステップ100において、機器のポートと嵌め合い可能なコネクタおよび適切な長さを有する適切なケーブルをキャリブレーションポート間に接続し、「アンノウンスルー」法による全2ポートキャリブレーションを実行する。例えば、テストポートコネクタが両方とも「メス」コネクタである場合、ケーブルは両端に「オス」コネクタを有する(図9に示す通り)。
【0017】
ステップ102において、ケーブルを取り外すことなく、ケーブルのSパラメータを得る。表記上、便宜的にこれをケーブル1とする。
【0018】
ステップ104において、機器の内部専用ユーザメモリ空間にケーブルのSパラメータを保存する。
【0019】
任意選択的に、追加ケーブル、例えばケーブル1と同一構成を有するケーブル2について、ステップ102および104を繰り返す。
【0020】
ステップ106において、ケーブル1の1端をテストポートの1つから切り離す。
【0021】
ステップ108において、機器のテストポートおよびケーブル1の開放コネクタと嵌め合い可能なコネクタを有する適切な第2ケーブルタイプを、開放テストポートおよびケーブル1に接続する。テストポートコネクタはメスであり、ケーブル1の端部コネクタはオスであるので、このケーブルは1端にオスコネクタ、他端にメスコネクタを有さなければならない(図10に示す通り)。
【0022】
ステップ110において、第1および第2ケーブルタイプのSパラメータを測定する。
【0023】
ステップ112において、第1ケーブルのデータを複合測定値から取り出すことによって、第2ケーブルのSパラメータを算出する。データを機器の内部専用ユーザメモリ空間に保存する。表示上、便宜的にこれをケーブル3と呼ぶ。
【0024】
任意選択的に、追加ケーブル、例えばケーブル3と同一構成を有するケーブル4について、ステップ110および112を繰り返す。
【0025】
適切なケーブルを選択することにより、ケーブルの端部で全2ポート誤差補正測定を実行することができる(図11に示す通り)。
【0026】
追加の特徴付けケーブルにより、次のコネクタジェンダの組合せのいずれかで装置の測定が可能になる。
・ケーブル1およびケーブル3の組合せは、メス対オスとなる(図11に示す通り)。
・ケーブル3およびケーブル4の組合せは、オス対オスの装置測定となる(図12に示す通り)。
・ケーブル1およびケーブル2の組合せは、メス対メスの装置測定となる(図13に示す通り)。
【0027】
装置の測定は、ケーブルが測定されるステップのいずれかで実行することができる。ステップ2は、ケーブルを特徴付けするために使用された。それは、同様の特徴を有し、ポート1およびポート2の間で接続可能である、任意の2ポート装置を測定するのに使用することができる。同じことはステップ6についても言える。DUTをテストポートコネクタに直接接続することができれば、1つのケーブルだけが必要となる。
【0028】
単一の基準受信器システムの場合(図15に示す通り)、ケーブルが接続されている状態において、ポート1内部マルチステートインピーダンスモジュールをポート2用のキャリブレーション装置として使用することによって、2ポートキャリブレーションを達成することができる。機器のテストポートコネクタが同種である場合、以下の自己キャリブレーション手順において使用されるポート番号は相互交換可能である。機器の電源投入時に、1ポートキャリブレーションでテストポートは自動的にキャリブレーションされると仮定する。
【0029】
図17は、図16に示す単一基準受信器システム用のプロセスフローチャートを示す。ステップ200において、機器のポートに嵌め合い可能なコネクタおよび適切な長さを有する適切なケーブルを、キャリブレーションポート間に接続する。SOLT法を用いて全2ポートキャリブレーションを実行するポート、例えばポート1を選択する。機器のコントローラは以下のステップを、ユーザには見えないように実行する。最初に、機器の内部マルチステートインピーダンスモジュールを外部キャリブレーション装置として使用することによって、1ポートキャリブレーションがケーブルコネクタ嵌め合い面の端部において実行される(図18に示す通り)。次に、前方向および逆方向測定が行なわれる(図19に示す通り)。
【0030】
ステップ202において、12の誤差補正項を計算する。機器はこの時点で挿入可能2ポート測定を行なうように読み出される。
【0031】
ステップ204において、ポート1において実行された1ポートキャリブレーションからポート2における内部1ポートキャリブレーションを取り出すことによって、ケーブルのSパラメータを計算する。伝送トラッキング項および負荷整合項をポート2に転送する。
【0032】
1ポートVNAの誤差モデル(図20に示す)場合、3つの系統誤差は、方向性(directivity,Ed)、信号源整合(Es)、および反射トラッキング(Er)である。少なくとも3つの明確に異なる既知の装置を測定することにより、系統誤差を決定することができる。行列の最小2乗法の方程式の形態を用いると、次のようになる。
【数1】
4つ以上のインピーダンス状態をキャリブレーションに利用可能である場合、最小2乗解が使用される。
【数2】
図22に示す物理的セットアップを使用する。
【数3】
とする。ここで、[Tna]は、スイッチの向こう側のシステムの系統誤差の伝送パラメータである。
【数4】
また、[Tp]は、測定プレーンとスイッチとの間のシステムの系統誤差の伝送パラメータである。
【数5】
したがって、次のようになる。
【数6】
ここで、ΓSEは外部標準試料の反射である。
【数7】
内部キャリブレーション標準試料を測定するようにスイッチを設定すると、次のようになる。
【数8】
ここで、ΓSIは標準試料の実際の応答である。
誤差補正をONにして、[TO]を使用すると、次のようになる。
【数9】
標準試料の実際の応答は、フロントエンドの系統誤差が埋め込まれた状態の「誤差補正された」ΓSI’に等しい。各内部キャリブレーション装置の「誤差補正された」データΓSI’を1ポートキャリブレーション解に適用すると、次のようになる。
【数10】
【数11】
【0033】
これは、equation(4)と全く同じ形であり、equation(7)と矛盾しない。外部キャリブレーションは内部キャリブレーション標準試料に転送され、それによってそれらは測定プレーンにおいて測定されたように見えた。外部キャリブレーションは、機器の製造者によって、またはエンドユーザのキャリブレーションラボによって、またはエンドユーザによって実行することができる。
【0034】
機器は、電源投入時、およびいつでも希望するときに、各ポートにおいて内部特徴付け装置を使用してキャリブレーションを実行するように設計することができる。ポート1をポート2にケーブルによって接続することにより、測定プレーンにおける全2ポートキャリブレーションを今、アンノウンスルー法を使用して達成することができる。
【0035】
特徴付けされたケーブルおよびアダプタにより、装置の誤差補正測定が今、脱埋め込み技術または測定プレーンの移送技術を使用し、ケーブルおよびアダプタの全Sパラメータデータを使用して可能になる。どちらかの方法により同じ結果が達成される。
【0036】
全2ポート測定誤差補正の後、結果は各コンポーネントの伝送行列の行列積に等しくなる。2ポート脱埋め込み技術を適用することにより、次のようになる。
【数12】
行列[Tmc]は、誤差補正されたT行列に対応する。行列[TD]はDUTのT行列に対応する。行列[Tc1]、[Tc2]はそれぞれポート1およびポート2のケーブルのT行列に対応する。
【数13】
DUTのSパラメータは次のように解くことができる。
【数14】
2つの1ポートキャリブレーションからケーブルのSパラメータを取り出す場合、次の通りである。
【数15】
[TE2]は、ケーブルの端部における1ポートキャリブレーション誤差項の伝送パラメータである。[TC]は、テストポート側の入力によるケーブルの伝送パラメータである。[TE1]は、ケーブルの他端におけるテストポートの1ポートキャリブレーション誤差項の伝送パラメータである。
機器のテストポートの測定プレーンは、次の関係を認識することによって、ケーブルの端部に移すことができる。
【数16】
図23は、追加のキャリブレーション標準試料を必要としないベクトルネットワークアナライザの機能ブロック図を示す。
【数17】
ケーブル2、すなわち図16に示す通り特徴付けされた第2ケーブルについて、SパラメータはS22側をテストポートに接続して測定されることに注目されたい。
新しい負荷整合項および伝送トラッキング項は次のようになる。
【数18】
EL21、EL12は、ステップ1(図6に示す)において得られた前方向および逆方向負荷整合項である。
【数19】
ET21およびET12は、ステップ1(図6に示す)において得られた前方向および逆方向伝送トラッキング項である。測定プレーンをケーブルの端部からテストポートに移すことは、equation(13)〜equation(15)から[TE1]項、[TE2]項、EL21項、EL12項、ET21項、ET12項を解くことによって導出される。
測定プレーンをケーブルの端部から移すことにより、DUT測定誤差補正を標準的なVNA方式により処理することができる。適切なVNAソースおよび受信器パワーキャリブレーション法は文献に開示されている。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】先行技術の1ポート反射率計を示す。
【図2】測定プレーンをキャリブレーションするための先行技術の方法を示す。
【図3】内部電子キャリブレーション装置および外部2ポート全2ポートキャリブレーションを有する先行技術の2ポートベクトルネットワークアナライザを示す。
【図4】本発明に適した構成を示す。
【図5】本発明に適した別の構成を示す。
【図6】本発明に適した別の構成を示す。
【図7】本発明に適した別の構成を示す。
【図8】テストポート測定プレーンにおいて実行される2回の1ポートキャリブレーションを示す。
【図9】自己キャリブレーションステップおよび交互装置コネクタの組合せを示す。
【図10】自己キャリブレーションステップおよび交互装置コネクタの組合せを示す。
【図11】自己キャリブレーションステップおよび交互装置コネクタの組合せを示す。
【図12】自己キャリブレーションステップおよび交互装置コネクタの組合せを示す。
【図13】自己キャリブレーションステップおよび交互装置コネクタの組合せを示す。
【図14】入力側マルチステートインピーダンスモジュールキャリブレーションを示す。
【図15】単一基準受信器構成を示す。
【図16】ユーザキャリブレーションのためのプロセスフローチャートを示す。
【図17】単一基準受信器システムをキャリブレーションするためのプロセスフローチャートを示す。
【図18】機器のデータ空間および流れの簡易ブロック図である。
【図19】外部キャリブレーション装置としての内部マルチステートインピーダンスモジュールを示す。
【図20】自動SOLTキャリブレーションを示す。
【図21】1ポートベクトルネットワークアナライザを示す。
【図22】図21の物理的セットアップを示す。
【図23】追加のキャリブレーション標準試料を必要としないベクトルネットワークアナライザの機能ブロック図を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1タイプのケーブルを特徴付けするステップと第2タイプのケーブルを特徴付けするステップとを含んでなる、N≧2としてN個のポートを有する機器についてのキャリブレーション方法であって、
前記第1タイプのケーブルを特徴付けするステップは、
2つのキャリブレーションポートの間に第1ケーブルを接続するステップと、
前記2つのポート間において、アンノウンスルー法による全2ポートキャリブレーションを実行するステップと、
第1ケーブルのSパラメータを取得するステップと、
前記第1ケーブルの前記Sパラメータを内部専用ユーザメモリに保存するステップと、
第1タイプの追加のケーブルについて、接続、実行、取得、および保存を繰り返すステップと、
第1タイプの前記ケーブルを2つのキャリブレーションポートのうちのいずれかから切り離し、測定プレーンをケーブルの接続端からケーブルの切り離された端に移すステップと
を含んでおり、前記第2タイプのケーブルを特徴付けするステップは、
前記2つのキャリブレーションポートのうちの第2のポートと前記第1ケーブルとの間に第2ケーブルを接続するステップと、
第2タイプのSパラメータを測定するステップと、
前記第2ケーブルの前記Sパラメータを前記内部専用ユーザメモリに保存するステップと
を含んでおり、前記第1および第2嵌め合いタイプが、メス対メス、オス対オス、およびオス対メスコネクタを含む群から選択されるものである、キャリブレーション方法。
【請求項2】
前記特徴付けされたケーブルを使用して該ケーブルに嵌め合い可能なコネクタを有する残りのN−2個のポートを、QSOLT法を用いてキャリブレーションする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記機器があるブロックに接続され、該ブロックが
信号源と、
前記信号源に接続され、前記N個のポートの各々に接続するように動作可能であるスイッチと
を含むものであり、前記N個のポートの各々が、
基準受信器に接続された入力検知アームとテスト受信器に接続された出力検知アームとを有するデュアル反射率計と、
反射率計に接続された第1端子と、マルチステートインピーダンスモジュールに接続された第2端子と、テストポートコネクタに接続された第3端子とを有する3端子スイッチと
を含むものである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
パワーキャリブレーション受信器ならびに特徴付けされたケーブルおよびアダプタを使用して不整合パワー測定値を補正することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
外部キャリブレーション標準試料を用いることなく前記キャリブレーションの状態を更新することができる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
N≧2としてN個のポートを有する機器についてのキャリブレーション方法であって、
信号源が第1ポート側に接続され、マルチステートインピーダンスモジュールが第2ポートに接続されている状態において、特徴付けされたタイプのケーブルを第1ポートと第2ポートとの間に接続するステップと、
第2ポートのマルチステートインピーダンスを使用してケーブルの端部において1ポートキャリブレーションを実行するステップと、
第2ポートを反射率計に切り替えてつなげるステップと、
スルー接続を測定して2ポートキャリブレーションを完遂するステップと
を含む、方法。
【請求項7】
前記機器が、信号源と前記信号源に接続され前記N個のポートの各々に接続するように動作可能である信号源スイッチとを含んでいる請求項6の方法であって、
前記N個のポートの各々があるブロックに接続されており、該ブロックは、
前記信号源に接続され、基準チャネル受信器に接続された第1スプリッタ出力を有するパワースプリッタと、
N投スイッチの単極の共通極に接続された前記パワースプリッタの第2スプリッタ出力と、
を含んでおり、該N投スイッチは、各投入が、
前記信号源スイッチに接続された入力ポートと、テスト受信器に接続された出力アームとを有する単一の反射率計と、
前記テストポートコネクタに接続された、前記単一反射率計の出力ポートに接続された3位置スイッチと、
前記3位置スイッチに接続されたマルチステートインピーダンスモジュールと
を含んでいる、方法。
【請求項8】
前記マルチステートインピーダンスモジュールが前記テストポートコネクタに電気的に接続されているときに、前記マルチステートインピーダンスモジュールが別のポートをキャリブレーションするために使用される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記マルチステートインピーダンスモジュールが前記テストポートコネクタに電気的に接続されているときに、前記マルチステートインピーダンスモジュールがテスト対象デバイス用の可変インピーダンスの終端として使用される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
信号源が第1ポート側に接続され、マルチステートインピーダンスモジュールが第2ポートに接続されている状態において、特徴付けされたタイプのケーブルを第1ポートと第2ポートとの間に接続するステップと、
第2ポートのマルチステートインピーダンスを使用してケーブルの端部において1ポートキャリブレーションを実行するステップと、
第2ポートを反射率計に切り替えるステップと、
スルー接続を測定して2ポートキャリブレーションを完遂するステップと
を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
内部において生成された第1ポートの1ポートキャリブレーションおよび第2ポートのケーブルの端部の1ポートキャリブレーションを使用して、ケーブルのSパラメータを計算するステップと、
第1特徴タイプの第1ケーブルのSパラメータを内部専用ユーザメモリに保存するステップと、
同じ嵌め合いタイプの追加ケーブルについて計算および保存を繰り返すステップと、
第2特徴タイプのケーブルについて、
第2ケーブルを2つのキャリブレーションポートのうちの第2ポートと、第1特徴タイプの第1ケーブルとの間に接続するステップと、
前記第2特徴タイプのケーブルのSパラメータを測定するステップと、
前記内部専用ユーザメモリ空間にデータを保存するステップと
を含み、前記第1および第2特徴タイプが、メス対メス、オス対オス、およびオス対メスコネクタを含む群から選択されるものである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
パワーキャリブレーション受信器ならびに特徴付けされたケーブルおよびアダプタを使用して、不整合パワー測定値を補正することを含む請求項6に記載の方法。
【請求項13】
外部キャリブレーション標準試料を用いることなく前記キャリブレーションの状態を更新することができる、請求項6に記載の方法。
【請求項14】
信号源と、
第2スプリッタ出力に接続された共通極を有する単極双投スイッチと
を備える、N≧2としてN個のポートを有する機器であって、
該単極双投スイッチは、各投によりあるブロックに接続され、
該ブロックは、反射率計に接続された第1端子と、マルチステートインピーダンスモジュールに接続された第2端子と、テストポートコネクタに接続された第3端子とを有する3端子スイッチを含むものであり、
前記反射率計がシングルおよびデュアル反射率計を含む群から選択されるものである、機器。
【請求項15】
前記反射率計がシングル反射率計であり、基準チャネル受信器に接続された第1スプリッタ出力を有する前記信号源に接続されたパワースプリッタをさらに含む、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記マルチステートインピーダンスモジュールが前記テストポートコネクタに電気的に接続されているときに、前記マルチステートインピーダンスモジュールが別のポートをキャリブレーションするために使用される、請求項14に記載のシステム。
【請求項17】
前記マルチステートインピーダンスモジュールが前記テストポートコネクタに電気的に接続されているときに、前記マルチステートインピーダンスモジュールがテスト対象デバイス用の可変インピーダンスの終端として使用される、請求項14に記載のシステム。
【請求項1】
第1タイプのケーブルを特徴付けするステップと第2タイプのケーブルを特徴付けするステップとを含んでなる、N≧2としてN個のポートを有する機器についてのキャリブレーション方法であって、
前記第1タイプのケーブルを特徴付けするステップは、
2つのキャリブレーションポートの間に第1ケーブルを接続するステップと、
前記2つのポート間において、アンノウンスルー法による全2ポートキャリブレーションを実行するステップと、
第1ケーブルのSパラメータを取得するステップと、
前記第1ケーブルの前記Sパラメータを内部専用ユーザメモリに保存するステップと、
第1タイプの追加のケーブルについて、接続、実行、取得、および保存を繰り返すステップと、
第1タイプの前記ケーブルを2つのキャリブレーションポートのうちのいずれかから切り離し、測定プレーンをケーブルの接続端からケーブルの切り離された端に移すステップと
を含んでおり、前記第2タイプのケーブルを特徴付けするステップは、
前記2つのキャリブレーションポートのうちの第2のポートと前記第1ケーブルとの間に第2ケーブルを接続するステップと、
第2タイプのSパラメータを測定するステップと、
前記第2ケーブルの前記Sパラメータを前記内部専用ユーザメモリに保存するステップと
を含んでおり、前記第1および第2嵌め合いタイプが、メス対メス、オス対オス、およびオス対メスコネクタを含む群から選択されるものである、キャリブレーション方法。
【請求項2】
前記特徴付けされたケーブルを使用して該ケーブルに嵌め合い可能なコネクタを有する残りのN−2個のポートを、QSOLT法を用いてキャリブレーションする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記機器があるブロックに接続され、該ブロックが
信号源と、
前記信号源に接続され、前記N個のポートの各々に接続するように動作可能であるスイッチと
を含むものであり、前記N個のポートの各々が、
基準受信器に接続された入力検知アームとテスト受信器に接続された出力検知アームとを有するデュアル反射率計と、
反射率計に接続された第1端子と、マルチステートインピーダンスモジュールに接続された第2端子と、テストポートコネクタに接続された第3端子とを有する3端子スイッチと
を含むものである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
パワーキャリブレーション受信器ならびに特徴付けされたケーブルおよびアダプタを使用して不整合パワー測定値を補正することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
外部キャリブレーション標準試料を用いることなく前記キャリブレーションの状態を更新することができる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
N≧2としてN個のポートを有する機器についてのキャリブレーション方法であって、
信号源が第1ポート側に接続され、マルチステートインピーダンスモジュールが第2ポートに接続されている状態において、特徴付けされたタイプのケーブルを第1ポートと第2ポートとの間に接続するステップと、
第2ポートのマルチステートインピーダンスを使用してケーブルの端部において1ポートキャリブレーションを実行するステップと、
第2ポートを反射率計に切り替えてつなげるステップと、
スルー接続を測定して2ポートキャリブレーションを完遂するステップと
を含む、方法。
【請求項7】
前記機器が、信号源と前記信号源に接続され前記N個のポートの各々に接続するように動作可能である信号源スイッチとを含んでいる請求項6の方法であって、
前記N個のポートの各々があるブロックに接続されており、該ブロックは、
前記信号源に接続され、基準チャネル受信器に接続された第1スプリッタ出力を有するパワースプリッタと、
N投スイッチの単極の共通極に接続された前記パワースプリッタの第2スプリッタ出力と、
を含んでおり、該N投スイッチは、各投入が、
前記信号源スイッチに接続された入力ポートと、テスト受信器に接続された出力アームとを有する単一の反射率計と、
前記テストポートコネクタに接続された、前記単一反射率計の出力ポートに接続された3位置スイッチと、
前記3位置スイッチに接続されたマルチステートインピーダンスモジュールと
を含んでいる、方法。
【請求項8】
前記マルチステートインピーダンスモジュールが前記テストポートコネクタに電気的に接続されているときに、前記マルチステートインピーダンスモジュールが別のポートをキャリブレーションするために使用される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記マルチステートインピーダンスモジュールが前記テストポートコネクタに電気的に接続されているときに、前記マルチステートインピーダンスモジュールがテスト対象デバイス用の可変インピーダンスの終端として使用される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
信号源が第1ポート側に接続され、マルチステートインピーダンスモジュールが第2ポートに接続されている状態において、特徴付けされたタイプのケーブルを第1ポートと第2ポートとの間に接続するステップと、
第2ポートのマルチステートインピーダンスを使用してケーブルの端部において1ポートキャリブレーションを実行するステップと、
第2ポートを反射率計に切り替えるステップと、
スルー接続を測定して2ポートキャリブレーションを完遂するステップと
を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
内部において生成された第1ポートの1ポートキャリブレーションおよび第2ポートのケーブルの端部の1ポートキャリブレーションを使用して、ケーブルのSパラメータを計算するステップと、
第1特徴タイプの第1ケーブルのSパラメータを内部専用ユーザメモリに保存するステップと、
同じ嵌め合いタイプの追加ケーブルについて計算および保存を繰り返すステップと、
第2特徴タイプのケーブルについて、
第2ケーブルを2つのキャリブレーションポートのうちの第2ポートと、第1特徴タイプの第1ケーブルとの間に接続するステップと、
前記第2特徴タイプのケーブルのSパラメータを測定するステップと、
前記内部専用ユーザメモリ空間にデータを保存するステップと
を含み、前記第1および第2特徴タイプが、メス対メス、オス対オス、およびオス対メスコネクタを含む群から選択されるものである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
パワーキャリブレーション受信器ならびに特徴付けされたケーブルおよびアダプタを使用して、不整合パワー測定値を補正することを含む請求項6に記載の方法。
【請求項13】
外部キャリブレーション標準試料を用いることなく前記キャリブレーションの状態を更新することができる、請求項6に記載の方法。
【請求項14】
信号源と、
第2スプリッタ出力に接続された共通極を有する単極双投スイッチと
を備える、N≧2としてN個のポートを有する機器であって、
該単極双投スイッチは、各投によりあるブロックに接続され、
該ブロックは、反射率計に接続された第1端子と、マルチステートインピーダンスモジュールに接続された第2端子と、テストポートコネクタに接続された第3端子とを有する3端子スイッチを含むものであり、
前記反射率計がシングルおよびデュアル反射率計を含む群から選択されるものである、機器。
【請求項15】
前記反射率計がシングル反射率計であり、基準チャネル受信器に接続された第1スプリッタ出力を有する前記信号源に接続されたパワースプリッタをさらに含む、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記マルチステートインピーダンスモジュールが前記テストポートコネクタに電気的に接続されているときに、前記マルチステートインピーダンスモジュールが別のポートをキャリブレーションするために使用される、請求項14に記載のシステム。
【請求項17】
前記マルチステートインピーダンスモジュールが前記テストポートコネクタに電気的に接続されているときに、前記マルチステートインピーダンスモジュールがテスト対象デバイス用の可変インピーダンスの終端として使用される、請求項14に記載のシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2008−261843(P2008−261843A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−41589(P2008−41589)
【出願日】平成20年2月22日(2008.2.22)
【出願人】(399117121)アジレント・テクノロジーズ・インク (710)
【氏名又は名称原語表記】AGILENT TECHNOLOGIES, INC.
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−41589(P2008−41589)
【出願日】平成20年2月22日(2008.2.22)
【出願人】(399117121)アジレント・テクノロジーズ・インク (710)
【氏名又は名称原語表記】AGILENT TECHNOLOGIES, INC.
【Fターム(参考)】
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