説明

自己フィブリン糊を調製するためのシステムおよび方法

【課題】生きている生物の組織を再生させるのに適する自己固体フィブリン網を調製するためのシステムの提供。
【解決手段】下記のシステム。分離媒質及び低密度高粘性液体を収容している密閉された第1の容器を含むシステムであり、分離媒質は、容器に血液が入り、遠心分離にかけられると血漿から赤血球を分離することができるものであり、上記第1の容器は、第1の圧力を有する。更には、カルシウム凝固活性化因子を収容している密閉された第2の容器を含むシステム。第2の容器は、第1の圧力よりも小さい第2の圧力を有する。該システムは、第1の末端及び第2の末端を有するカニューレを含む移動装置も含む。第1の末端及び第2の末端は、密閉された第1の容器及び第2の容器に穴を開けて、第1の容器と第2の容器との間に流体の行き来をもたらすことができる。第1の容器の低密度高粘性液体は、カニューレに侵入した際、それを通る流れを遮断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体フィブリン網または自己フィブリン糊を調製するためのシステム、キット、および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願は、1997年6月24日出願のイタリア国出願第MI97A001490号に対する優先権を主張している1998年6月24日出願の国際出願第PCT/IT98/00173号の米国特許法第371条の出願であり、この出願に対する優先権を主張している、米国特許第6,368,298号B1明細書として公開された2001年7月13日出願の米国特許出願第09/446,729号明細書の一部継続出願であり、この出願に対する優先権を主張するものである。本出願は、上述の各出願に対する優先権を主張する。
【0003】
フィブリン糊は、主に局所の外科用接着剤または止血剤として使用される血液誘導物質であることが知られている。異種性のフィブリン糊を得るには、ドナー由来の濃縮されたフィブリノーゲンと共にトロンビンやバトロキソビンなどのヒトもしくは動物起源のタンパク様(proteic)活性化因子を含む数種のキットが市販されている。
【0004】
そのような既知のキットは、ヒトもしくは動物起源の材料を使用するものであるが、その起源のために、ウイルスが混入する可能性を生じ、またフィブリン糊の受容者に重度の危険をもたらしかねない。過去には、当局は、ヒトもしくは動物起源の材料を使用して得た血液誘導物質の取引を強制的に停止し、あるいはそうしたものを禁止しさえもした。さらに、ヒトまたは動物のタンパク質を使用して製造されたフィブリンが患者に再移植された結果として生じる拒絶の症例も文献で知られている。そのような症例は実に、再移植しようとするシーラントタンパク質またはその調製に使用された何らかの成分の起源が、受容者の生物にとって異種であるためである。
【0005】
自己フィブリン糊、すなわち、患者自身の血液から自家性に得たフィブリン糊は、拒絶および/または感染の危険に関してはより信頼できる。自己フィブリン糊を即座に得ることについてはいくつかの手順がすでに記載されているが、関連した参照文献が特許文献中に若干見られるものの、「すぐに使用できる(ready-to-use)」キットは市販されていない。
【0006】
特許文献1は、血小板糊創傷シーラントを生成するためにフィブリノーゲン活性化因子と組み合わせる血漿バフィーコート濃縮物を開示している。この特許で開示されている方法によって、患者の血液を加工して自己フィブリン糊を得ることが可能になるが、この方法では、フィブリノーゲン活性化因子としてトロンビンまたはバトロキソビンを使用する。これらの活性化因子は、ヒトもしくは動物性であり、したがって、依然として患者に拒絶および/またはウイルス感染の危険が伴う。
【0007】
特許文献2は、組織シーラントとして使用される濃縮血漿を作製するための方法および装置を開示している。この方法は、全血から血漿を分離し、前記血漿を濃縮器と接触させて血漿から水を除去して濃縮血漿を得ることにあり、その後、トロンビンおよびカルシウムを含有する溶液を用いて濃縮血漿を凝固させることができる。この装置は、第1のチャンバー内の第1の遠心分離機、第1のチャンバーと通じた第2のチャンバーに含まれた濃縮剤(たとえば、デキストラノマーやポリアクリルアミド)、および第2の分離機を含む。この参照文献で開示された方法は、後続の自己フィブリン糊の調製に必要な血漿濃縮物を得るのに長い時間を要し、またこの装置は高価であり、使い捨てができない。この方法は、カルシウム凝固活性化因子の使用を開示しておらず、また予備濃縮ステップを要する。
【0008】
多くの方法およびシステムでは、流体をある容器から別の容器へと移す必要がある。たとえば、多くの化学装置および医療装置では、後から様々な試薬および特定の容量(volumetric)アリコートと反応させることになる、必要な体積の液体を移動させる必要がある。一般的な取扱法は、2個の容器の蓋を外し、一方の容器の液体をピペットで他方に移すことである。しかし、この取扱法では、サンプルが周囲の汚染物質に曝される。たとえば、この技術は、血液サンプル中で赤血球から分離された血漿を移すのに使用される。しかし、界面のメニスカスの血漿を取り出すには、特殊な技術が必要である。望ましくない下方画分の高密度な赤血球が、吸引されたサンプルを汚染することはたびたびある。この問題を回避するために、ピペットはしばしば、メニスカス(すなわち、血漿と赤血球の境界線)から安全な距離に保たれ、それによってサンプルの移動が不完全になる。望ましい画分の移動が不完全であると、収量が最適な容量よりも少なくなり、サンプル試薬と第2の容器に入った試薬の比率が化学量論的でなくなる。この2番目の状況は、製品の性能がばらつく深刻な原因になりかねない。事実、反応速度がある化学量論的な比率で最高となり、それよりも高いまたは低い比率で急速に減速する酵素反応は多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5,733,545号
【特許文献2】米国特許第5,555,007号
【特許文献3】米国特許第5,560,830号
【特許文献4】米国特許第5,736,033号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
全体として、生きている生物の組織を再生させることのできる自己フィブリン糊または固体フィブリンを調製するための方法およびシステムが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施形態を詳細に説明する前に、本発明が、その出願において、以下の記載事項で述べ、または図面に示す細部の構造および成分の取合せに限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態でもよく、様々な方法で取り扱い、または実施することができる。また、本明細書で使用する用語および術語は、説明の目的のためにあり、限定するものではないとみなすべきである。
【0012】
一態様では、本発明は、生きている生物の組織を再生させるのに適する自己固体フィブリン網を調製するためのシステムを提供する。このシステムは、分離媒質および低密度高粘性液を含む密閉された第1の容器を含む。容器に血液が入って遠心分離にかけられると、分離媒質は血漿から赤血球を分離することができ、第1の容器は第1の圧力を有する。このシステムはさらに、カルシウム凝固活性化因子を含む密閉された第2の容器を含む。第2の容器は、第1の圧力よりも低い第2の圧力を有する。このシステムは、第1の末端および第2の末端を有するカニューレを含む移動装置も含む。第1の末端および第2の末端は、密閉された第1の容器および第2の容器に穴を開けて、第1の容器と第2の容器間に流体の行き来をもたらすことができる。第1の容器の低密度高粘性液は、第1の容器へ侵入すると、そこを通る流れを遮断することができる。
【0013】
別の態様では、本発明は、生きている生物の組織を再生させることのできる固体フィブリン網を調製するためのもう1つのシステムを提供する。このシステムは、血液をその中に引き込むことのできる第1の圧力を有する密閉された第1の容器を含む。このシステムはさらに、第2の圧力を有し、カルシウム凝固活性化因子を含む密閉された第2の容器を含む。第2の圧力は、第1の圧力よりも低い。このシステムは、第1の末端および第2の末端を有するカニューレを含む移動装置も含む。第1の末端および第2の末端は、密閉された各容器に穴を開けることができ、移動装置は、圧力の差によって、第1の容器に引き込まれた血液の一部を第2の容器に移動させることができる。このシステムは、移動装置によって第1の容器から第2の容器へと移され、カルシウム凝固活性化因子と接触した血液部分の遠心分離と凝固を同時に行って、生きている生物の組織を再生させることのできる固体フィブリン網を形成するための遠心機も含む。
【0014】
別の態様では、本発明は、生きている生物の体組織を再生させるための固体フィブリン網の調製方法を提供する。この方法は、患者の血液を第1の容器に引き込むステップと、前記第1の容器中の血液から血漿を分離するステップとを含む。第1の末端および第2の末端を有するカニューレを含む移動装置を使用して、第1の容器の血漿を、カルシウム凝固活性化因子を含む第2の容器へと移動させ、血漿とカルシウム凝固活性化因子とを接触させる。血漿およびカルシウム凝固活性化因子は、第2の容器中で凝固反応と遠心分離に同時にかけられて、固体フィブリン網を形成する。その固体フィブリン網は、生きている生物の体組織を再生させるのに適する。
【0015】
別の態様では、本発明は、生きている生物の組織を再生させるのに適する固体フィブリン網を調製するためのもう1つのシステムを提供する。このシステムは、内腔部を有し、分離媒質を含む密閉された第1の収集装置を含む。第1の収集装置は、血液を内腔部に引き込むことができ、第1の収集装置に血液が入って、遠心分離にかけられると、分離媒質は赤血球から血漿を分離することができる。このシステムはさらに、チャンバーと、それと液体が行き来できる導管とを備えた貯蔵器を含む。チャンバーは、その中にカルシウム凝固活性化因子を含んでおり、導管は、周囲の条件下で活性化因子がチャンバーの外へ流出するのを防ぐために、少なくとも部分的にブロック用媒質で満たされている。
【0016】
別の態様では、本発明は、生きている生物の組織を再生させることのできる固体フィブリン網のもう1つの調製方法を提供する。この方法は、患者の血液を、シールを備えた第1の収集装置に引き込むステップと、チャンバーと、チャンバーと液体が行き来できる導管とを含む貯蔵器を用意するステップとを含む。チャンバーは、少なくとも部分的にカルシウム凝固活性化因子で満たされており、導管は、この活性化因子が周囲の条件下でチャンバーの外に流出するのを防ぐために、少なくとも部分的にブロック用媒質で満たされている。ブロック用媒質が存在しない場合には、チャンバー、導管、および収集装置は液体が行き来できるように、貯蔵器が第1の収集装置に連結されている。次いで、第1の収集装置を第1の速度で遠心分離にかける。第1の速度は、血液から血漿を分離するのに十分であるが、それでも導管中のブロック用媒質を第1の収集装置に移動させる程でない。次いで、第1の収集装置を第2の速度で遠心分離にかける。第2の速度は、ブロック用媒質の少なくとも一部を導管から第1の収集装置へと移動させるのに十分であり、それによってカルシウム凝固活性化因子が第1の収集装置に流入し、血漿と接触できるようになり、それによって、生きている生物の組織を再生させるのに適する固体フィブリン網が形成される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態の透視図である。
【図2】図3は、図1に示した第1の実施形態の第1の容器の横断面図である。
【図3】図3は、図2の第1の容器の異なる実施形態の横断面図である。
【図4】図4は、図2の第1の容器の異なる実施形態の横断面図である。
【図5】図5は、密閉された第1の容器に穴を開けかかっている移動装置の第1の末端を示す、図1の第1の実施形態の一部の拡大部分横断面図である。
【図6】図6は、密閉された第1の容器に完全に穴を開けている移動装置の第1の末端および密閉された第2の第1の容器に完全に穴を開けている移動装置の第2の末端を示す、図5に示したものと同様の図である。
【図7】図7は、逆さにした第1の管およびその中身を示す図2と同様の図である。
【図8】図8は、図1に示した第1の実施形態の平面図である。
【図9】図9は、かみ合った第1の容器、第2の容器、および移動装置、ならびに第2の容器に移される第1の容器の中身を示す、図8の部分横断面図である。
【図10】図10は、本発明の実施形態であるキットの平面図である。
【図11】図11は、本発明の第2の実施形態の透視図である。
【図12】図12は、図11に示した本発明の第2の実施形態の横断面図である。
【図13】図13は、第1の収集装置に穴を開けている貯蔵器および第1の収集装置を示す、図12と同様の横断面図である。
【図14】図14は、第1の収集装置に穴を開け、中身を第1の収集装置に空けている貯蔵器を示す、図12と同様の横断面図である。
【図15】図15は、本発明の第3実施形態の透視図である。
【図16】図16は、図15に示した本発明の第3実施形態の横断面図である。
【図17】図17は、本発明の実施形態である移動装置の透視図である。
【図18】図18は、図17の線18--18に沿って切った横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本出願は、1997年6月24日出願のイタリア国出願第MI97A001490号に対する優先権を主張している1998年6月24日出願の国際出願第PCT/IT98/00173号の米国特許法第371条の出願であり、この出願に対する優先権を主張している、米国特許第6,368,298号B1明細書として公開された2001年7月13日出願の米国特許出願第09/446,729号明細書の一部継続出願であり、この出願に対する優先権を主張するものであり、これらのそれぞれは、参照により全体が本明細書に援用される。
【0019】
したがって、本発明の目的は、外科手術で使用する際に、自己フィブリン糊を速やかに得ることを可能にし、ウイルス感染および/または拒絶症例をもたらさないすぐに使用できるキットを提供することである。
【0020】
この目的は、ヒト起源でも動物起源でもなく、無機化合物であり、したがって汚染する可能性もなく、また拒絶をもたらさない凝固活性化因子を使用することによって達成される。
【0021】
本発明による「すぐに使用できる(ready-to-use)」キットは、凝固活性化因子として塩化カルシウムを含む密閉容器を含む。塩化カルシウムは、密閉容器に導入される際に、患者血漿中に存在するフィブリノーゲンを活性化する。
【0022】
本発明によるシステムおよびキットは、ウイルス感染または拒絶症例の危険を伴わずに使用することのできる自己フィブリン糊の調製を可能にするという大きな利点をもつ。本発明によるキットのもう1つの利点は、患者の血漿から自己フィブリン糊を非常に短時間で調製することに加え、血餅もしくは膜またはスプレーの形態にして調製することも可能にする点である。本発明によるすぐに使用できるキットのさらに別の利点は、自己フィブリン糊を既知のシステムよりも比較的低いコストで得られるようにする点である。
【0023】
本発明によるキットの更なる利点は、以下で述べるそのいくつかの実施形態の詳細な説明から、当業者に明らかとなろう。
【0024】
本発明によるキットに適する容器としては、以下の実施例1で記載するように、抗生物質用のガラス製容器が含まれる。ガラスまたはプラスチック製の試験管が使用可能である。容器の好ましい容量は、5 mlから15 mlである。試験管は、直径が12 mmから16 mmの範囲であり、高さが75 mmから100 mmの範囲であることが好ましい。容器は、排気されたときにその内側の空間と大気との圧力差によって生じる応力に耐えるために、適切な厚みを持たなければならない。底が半球形または円錐形の管は、厚さ0.7 mmであることが好ましく、平底管は厚さ1 mmであることが好ましい。プラスチック製容器は、製造後少なくとも12カ月間確実に真空を保つために、透明なポリエステル樹脂製で、厚さ0.2〜0.8 mmであることが好ましい。調製後、プラスチック製試験管は、使用日まで完全な気密性を確実に保つために、ヒートシールされた内側ポリエチレン層を備えたスズ箔製真空気密容器に挿入することが好ましい。
【0025】
容器または試験管を真空にすることを推奨するが、しかし、本発明を実施する上で必須ではないことを留意されたい。
【0026】
容器または試験管は、ゴムまたはケイ素製の穴あけ可能なキャップによって密閉されており、容器の完璧な気密性を確実にし、また化学成分の導入後で、かつ蒸気もしくは放射線による滅菌ステップ前の真空施栓を可能にするのに適する。
【0027】
密閉後、容器は、121℃の蒸気中で30分間滅菌することができる。γ線または電子ビームを照射して滅菌を実施してもよい。
【0028】
フィブリンの安定剤であるトラネキサム酸を使用することができるが、純粋で結晶性のεアミノカプロン酸も適している。用量は、20 mlの血漿量に適する25 ml容器を使用するとき、約1 gとなる。時にはフィブリンの安定剤を使用する必要がないこともある。
【0029】
凝固活性化因子として、固体のCaCl2・2H2Oまたは液体のカルシウム含有溶液を本発明によるキットに使用するが、(以下で挙げる)他の凝固活性化因子を使用することもできる。たとえば、汚染性の外来成分が導入されるのを防ぐために、精密な薬量計(最大誤差:1〜2 mg)を使用して、5 ml容器に11.76 mgのCaCl2・2H2Oを導入する。
【0030】
血漿量12 ml用の15 ml容器の場合、導入すべき固体の脱水した塩化カルシウムの量は、35.28 mg程度の高さとなり、トラネキサム酸の量は、それに比例して結晶300 mg程度の高さとなる。
【0031】
血漿量20 ml用の25 ml容器の場合、導入すべき脱水した塩化カルシウムの量は、58.8 mg程度の高さとなり、トラネキサム酸の量は、それに比例して結晶500 mg程度の高さとなる。
【0032】
塩化カルシウムは、実施例で使用した脱水した形態以外にも、市販されている他の適切なあらゆる形態、たとえばCaCl2・2H2Oでもよい。また、実施例1で記載するように、この塩の溶液を使用することもできる。
【実施例】
【0033】
実施例1
真空中で密閉可能な、透明な白色ガラス製の、不活性で厚さが1 mmの抗生物質用5 mlガラス容器に、フィブリンの安定剤として働くトラネキサム酸100 mgを導入した。純度が98%より高い合成トラネキサム酸が、米国の会社Sigma Inc.によって市販されている。これとは別に、精密な天秤で同じ米国の会社Sigma Inc.のCaCl2・2H2O(純度>99%)147.0 gを秤量して、CaCl2の1 M溶液を調製した。
【0034】
この塩を、ちょうど1リットルの発熱性でない超高純度の蒸留水に、すばやく撹拌しながら室温で数分間かけて溶解させた。分注精密度が±5%である精密なピストン形分注装置(エッペンドルフ様)を使用して、活性化因子の溶液80μLをガラス製容器に導入した。この段階では、分注と同時に、0.22μmのMillpore滅菌フィルターを使用して、あらゆる種類の粉体またはフィラメントによる起こり得る汚染を注意深く防ぎながら濾過を行った。最後に、後続の真空施栓、および場合によってはガスを使用する更なる滅菌が可能になるよう、容器に完全に栓をしないように注意しながら、真空中で、ガラス製容器に穴あけ可能かつ施栓可能なゴム製キャップで栓をした。次いで、大気中の固体粒子による起こり得る汚染を防ぎながら、真空施栓に適する装置に容器を導入した(無菌チャンバー中でのULPAもしくはHEPA濾過)。真空膜ポンプおよび微調整制御装置を使用して、装置の内部大気を4 ml程度の高さの真空にした。内部大気の真空度を制御するために、精密な真空ゲージを使用した(精密度#1 mbar)。最後に、装置を解放せずに真空中で容器に栓をし、その後回収して、以下の実施例に記載するとおりに使用した。
【0035】
実施例2
臨床分析のための定性的な基準の規定に従って、たとえば、クエン酸ナトリウムの0.106 M溶液を加えたBecton-DickinsonのVACUTAINER(登録商標)無菌試験管を使用して、患者から10 mlの静脈血を採取した。この目的のために、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウムもしくは二カリウムを加えた試験管を使用することもできる。採血の間、サンプルは注意深く無菌状態に保った。最後に、サンプルを穏やかに振盪して、成分を十分に混合して、クエン酸ナトリウムの抗凝固作用を確実なものにした。次いで、遠心機が損傷を受けないようにするため、ローターの重量を慎重に釣り合わせながら、その試験管を適切な遠心機に導入した。蓋にシールをして、サンプルを3500 rpmで15分間の遠心分離にかけ、それによってクエン酸処理血漿(上清)から赤血球(より濃厚)を分離した。この場合では、血漿の収率は、主としてドナー血液の特性に応じて変わるが、55%程であった。分離した血漿を含む試験管は、血漿そのものを回収するために、無菌条件下で栓をしたままにし、試験管立てに垂直に置いたが、この段階では、遠心分離の際に分離した2つの相が混ざるのを防ぐために、試験管を振らないように注意を払った。次いで、変性アルコールを使用して試験管キャップの外側部分を滅菌し、無菌シリンジに連結されている無菌針を試験管キャップに挿入した。針は、2つの相の境界メニスカスから3〜4 mm離れたところまで挿入し、4 mlの血漿を引き込んだ。同じ針を使用して、実施例1に記載したように調製しておいた本発明による容器の、アルコールを使用して滅菌しておいたキャップに穴を開けた。針でキャップに穴を開けるとすぐに、シリンジに含まれているクエン酸処理血漿が容器に完全に引き込まれた。これを穏やかに振盪し、37℃で2分間経過後、いつでも直ちに使用できる一塊の無菌自己フィブリン糊が得られた。
【0036】
実施例3
Becton-Dickinsonの5 mlクエン酸ナトリウムVACUTAINER(登録商標)試験管を使用して、49才の健常な(normotype)患者から約18 mlの静脈血を採り、サンプル採取直後に穏やかに振盪するようにした。そのように採取した血液を直ちに遠心分離(2500 rpmで15分間)にかけて、血漿を分離した。トラネキサム酸を使用しない以外は実施例1に記載のとおりに調製しておいた、120μLのCaCl2(10 g/100 ml)をそれぞれ含む2本の10 ml容試験管に、血漿(12 ml)を慎重に移した。血漿と活性化因子を混合した後、試験管を3000 rpmで30分間の遠心分離にかけ、最終的に2塊のフィブリンサンプルを得、それを、無菌に保つあらゆる予防措置を取りながら、調製してから2〜3時間以内に、衝撃を与えた左犬歯および右第二門歯を摘出することによって、並びに、門歯の中央部位に存在する嚢胞を切断することによって現れる大きな小胞性の下顎骨の空洞に挿入した。最後に歯肉の縁を8針で閉じた。15日後のX線撮影検査では、フィブリンがまだその位置にあり、見たところ無傷であることが示された。7カ月後の組織像によって、フィブリンが骨組織に完全に入れ替わったことが実証され、同じ結果を得るのに12カ月以上を要する従来の方法よりも術後経過が良好であった。自己フィブリンの調製に抗線維素溶解剤が使用されていなかったので、この場合では、前記添加剤が特定の目的に有用であったと言うことができる。
【0037】
実施例4
接着性のフィブリン糊を作製するために、実施例3のように得た血漿12 mlを、無菌性を保つためのあらゆる処置を施しながら、実施例1に記載のとおりに準備した本発明による20 ml容器に移した。
【0038】
慎重に撹拌した後、混ざった血漿を、化学実験室で使用されるような無菌のガラス製スライド上に注ぎ、そこで血漿を無菌かつ非常に純粋なサンゴ炭酸カルシウム(BIOCORAL(商標)・NOTEBS S.A. France)、またはフッ化カルシウム(>98% Sigma Inc.)と混合した。これらのカルシウム塩は共に、線維芽細胞の刺激因子として当業者によく知られている。
【0039】
血漿1部と炭酸カルシウム1部とを混合して(たとえば、2 mlと500 mg)、展性のある無菌の接着性ペーストを得、感染した粘液を含む嚢を切断した後の歯肉下の空間または別の空洞の充填剤として使用した。空の空間を埋めるように置かれたペーストは、止血栓として働く固体フィブリン網を数分間で形成し、粘液の縁を正しい位置で支える自己生物基板を生じ、その後結合に適した細胞の遊走が始まった。
【0040】
実施例5
フィブリン糊の膜を得るために、実施例3のように得た血漿20 mlを、実施例1のように準備した本発明による25 ml容平底容器に入れた。通常どおりに慎重に撹拌した後、スイングアウトローターを用い、容器を40分間にわたり4000 rpmでの遠心分離にかけた。遠心分離操作が終了した時点で、白色になった試験管の底から、大きさが試験管の底と同じであり(直径24 mm)、厚さが3 mmの非常に緻密かつ引張り強さのある膜が回収された。この自己由来の膜は、緻密で丈夫であるために、多孔性の合成膜の代用品として、歯科手術および一般手術の保持および分離用の膜として使用した。得られた膜は、4℃で数日間、無菌状態で保蔵することができる。
【0041】
実施例6
大きなサイズのフィブリン糊の膜を得るために、約200 mlのクエン酸処理血漿を患者から採血し、収集し、2袋式輸液バッグ内で分離した。-80℃で12時間凍結させ、4℃で一晩かけて解凍することによって、血漿を寒冷沈降反応にかけた(この手順は、当業者によく知られている)。その朝、この手順によって得た血漿を4℃で15分間、5000 rpmでの遠心分離にかけて、約20 mlの寒冷沈降物を得た。圧縮装置(たとえば、Jouan S.A. France社のXP100)を使用して上清を慎重に除去した後、寒冷沈降物を同じ患者の全血漿20 mlと合わせた。実施例1のように適量の活性化因子を含む、本発明による直径35 mmの無菌平底ポリプロピレン容器に、得られた40 mlを入れた。慎重に振盪した後、容器を40分間5000 rpmでの遠心分離にかけて、実施例5のようであるが、フィブリン含有量がより多いためにより緻密かつ引張り強さのある膜が得られた。前記の膜も、4℃で数日間、無菌形態で保蔵することができる。
【0042】
実施例5に記載の方法によって得た膜は、実施例4に記載の利用法と合わせて、非常に深刻な火傷の症例において移植する移植片を得るために、同じ患者の真皮細胞のin vitro培養基質として使用することができる。
【0043】
上述の目的に有用な良質な膜は、本発明による容器に直接に移された分離された全血漿から得ることもできる。得られた膜は、上述のものよりも薄くなるが、それでも外科用途に、また細胞増殖用培養基質として有用である。
【0044】
実施例7
スプレー式フィブリンを得るために、実施例5のように寒冷沈降物から出発して、20 mlの寒冷沈降物を10 mlの全血漿と室温で合わせ、穏やかに振盪して、溶解を完了させた。得られた血漿を実施例1のように調製した本発明による50 ml容器に慎重に移し、穏やかに振盪して、成分を十分に混合した。室温で120秒経過後、試験管を当業者に知られているヴェンツーリ型無菌空気圧縮機に連結して、外科手術(肺、心臓、脾臓、動脈吻合)が施されている出血した臓器の表面に均等に分散させた。濃縮されたフィブリノーゲン、トロンビン、カルシウムイオン、および他の凝固酵素を含有する濃縮血漿は、組織全体に分散し、防御性の止血機能を有するフィブリンフィルムを生じながら、患者の内皮に存在する組織凝固活性化酵素の力も借りて数秒以内に凝固した。したがって、外科手術は、内出血が低下した状態で終わったので、更なる輸血または合併症が回避された。
【0045】
本発明は、生きている生物の組織を再生させることのできる固体フィブリン網または自己糊を生成するためのシステムおよび方法も提供する。これらの方法およびシステムでは、血液サンプルを遠心分離にかけて抗凝固血漿を得る。安定で高密度な自己フィブリンと血小板の網目を得るために、本明細書に記載の装置は、血漿がカルシウム凝固剤を含む第2の容器に移され、次いで直ちに遠心分離にかけられるようになっている。本明細書に記載の移動装置は、他の適用例で他の液体を移動させるのに使用してもよい。換言すれば、本明細書に記載の移動装置およびシステムによって、遠心分離と凝固が同時に行えるようになる。このようなシステムおよび方法を使用することによって、いくつかの利点が達成される。すなわち1)無菌性が維持される方式でサンプルが操作され、2)血漿の全体積が移されて、血餅の全収量が最大になり、3)抗凝固因子とカルシウム凝固剤の化学量論比が狭い範囲に保たれて、凝固時間が最小に抑えられ、4)移動がすばやく完了し、5)通常はこのような操作を行っていない医療従事者(たとえば、歯科医師)が、このような方法を容易に実施し、システムを操作し、6)再利用を防止し、血液がもたらす病原による汚染の可能性を防ぐため、装置は使い捨てである。
【0046】
概して、本発明は、生きている生物の組織を再生させるのに使用できる固体フィブリン網または自己糊を調製するための統合されたシステムおよび方法を提供する。一実施形態(図1に示す)では、このシステムは、第1の容器10、第2の容器14、および移動装置18を含む。好ましくは、第1の容器10および第2の容器14は、管、より好ましくは試験管であるが、流体または液体を保持し、遠心分離にかけることのできるどんな容器も、本発明の使用に適する。容器10および14は、ガラスまたはプラスチック製であることが好ましい。
【0047】
第1の容器10は、標準の静脈穿刺法を用いて、血液をそこに引き込むことができなければならない。第1の容器10は、汚染を防止するために、血液が引き込まれる間シール22で密閉されていることが好ましいが、容器10をそのすぐ後に密閉してもよい。第1の容器10を密閉するには、様々なシール22、たとえば、ゴム栓、キャップ、発泡体、エラストマー、または他の複合材を使用することができる。シール22は、貫通または穴開け可能にすべきであり、したがって、ゴムおよびケイ素樹脂がシールを作製する好ましい材料となるが、シールになり、かつ貫通可能などんな材料も使用できる。第1の容器10は、抗凝固液25を含んでいてよい。溶液の抗凝固剤25は、カルシウム結合剤を含むことが好ましい。より詳細には、抗凝固剤25は、クエン酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩、エチレンジアミン四酢酸二カリウム塩および三カリウム塩、およびこれらの混合物を含んでよい。第1の容器10は、クエン酸ナトリウムの溶液を含んでいることが好ましい。抗凝固剤25は、第1の容器10に集まった血液を薄くして、遠心分離の条件に合わせる傾向がある。さらに、第1の容器は、密度勾配分離媒質26、空気27、ならびに高粘性低密度流体28を含む(以下でさらに述べるキットを示す図10を参照のこと)。
【0048】
濃度勾配分離媒質26は、第1の容器10中の異なる密度を有する特定の液体または流体の種々の画分を分離することができなければならない。分離媒質26は、液体の不必要な高密度画分が遠心分離によって分離され、その後除去されるのを可能にする。たとえば、分離媒質26は、血液サンプルが遠心分離される際、血小板に富む血漿34から赤血球30を分離することができる。ある例では、分離媒質26は、第1の容器10の底にあってよい。他の例では、分離媒質26は、第1の容器10の内側を取り巻く環として適用してもよく、または内側の他の適切などんな位置で適用してもよい。遠心分離の際に異なる密度の液体を分離することができれば、どんな密度勾配分離媒質26も本発明での使用に適するが、媒質26はゲル、より好ましくは揺変性のゲルであることが好ましい。図2は、血液サンプルの遠心分離を実施した後の第1の容器10を図示し、ゲルの分離媒質26も示す。揺変性ゲルは、ゲルが通常の周囲条件では第1の容器10中で流動も移動もしないが、遠心分離中に受けるようなより強い遠心力では流動するような、十分な降伏点を有することが好ましい。最も好ましくは、不必要な赤血球画分30の高い密度よりも低いが、所望の血漿画分34の密度より高い密度を有するゲルが好ましい。換言すれば、最も好ましいものは、血液サンプルを遠心分離にかけた後、血漿34から赤血球30を分離することのできるゲルまたは他の媒質である。そのような媒質26は、遠心分離中に容器内を移動または流動するが、その後は流動せず、それによって、遠心分離完了時には、分離された画分間に半永久的なバリアが生じる。
【0049】
図3に示すように、第1の容器10の中に用いることのできるもう1種の適切な密度勾配媒質26は、画分の分離に所望される密度を有する多数のプラスチックビーズ26である。このビーズは、後に移動装置38に封をするのに必要な高粘性低密度流体に懸濁させてもよい。遠心分離の際、ビーズ26は、2つの画分30と34間の界面に移動し、まさしく焼結のように圧縮されて、密度の異なる画分(すなわち、赤血球30および血漿34)間に安定なバリアを形成する。ペレットを覆う残りの高粘性低密度流体は、圧縮された層の安定性に寄与する。
【0050】
他の適切な密度勾配分離媒質には、参照により本明細書に援用される、Colemanの公開された特許文献3および特許文献4に開示されているものなどの高分子浮遊デバイスが含まれる。図4は、高分子浮遊デバイス26を示す。
【0051】
第1の容器中の低密度高粘性の不混和性流体28(「LDHV流体」)は、一般に不活性な油を含む。LDHV流体は、ポリエステル、ケイ素樹脂、または他の不活性な流体であり、置換または圧力ポンプによってゲルの上側位置で、第1の容器に加えることが最も好ましい。LDHV流体は、以下でさらに述べるように、移動装置18のカニューレ38に侵入後、そこを通る流れを遮断または除去することができなければならない。
【0052】
第2の容器14(特に図1および図10に示す)は、特定の反応に必要な化学試薬を含んでいる。第2の容器14は、第1の容器10と同様の要領でシール24によって、すなわちゴム栓、キャップ、発泡体、エラストマー、または他の複合材によって密閉する。以下で述べるような本発明の一適用例では、第2の管は、カルシウム凝固活性化因子36を含んでいてよい。適切なカルシウム凝固活性化因子の例には、それだけに限らずに、塩化カルシウム、フッ化カルシウム、炭酸カルシウム、およびこれらの混合物が含まれるが、しかし、カルシウムを含有するどんな塩もカルシウム凝固活性化因子として十分である。さらに、他の活性化因子として、グルコン酸カルシウム、フマル酸カルシウム、ピルビン酸カルシウム、および水溶性であり、かつ人命に適合性のある他の有機カルシウム塩が挙げられる。凝固活性化因子は、血漿との接触時に血漿を凝固させる。第2の容器14は、完全に真空にして、内圧を実質的に0とした。第2の容器14を真空にすると、移動装置18を通した第1の容器10から第2の容器14への流体の移動が促進される。移動の間第2の容器14が満たされるとき、気体分子は存在しないので、結果として生じる圧力の増大によって残留気体が圧縮されることはない。その結果、流速が最大になり、完全な移動が助長され、ガス抜きの必要が省かれて無菌性が保たれ、さらに所望の反応に所望される化学量論比が維持される。
【0053】
もう1つの実施形態では、第2の容器は、抗生物質、鎮痛剤、癌治療剤、血小板増殖因子、および骨形態形成タンパク質のうちの1種または複数を含んでいてもよい。局所投与することのできる他の治療薬剤が含まれていてもよい。抗生物質の例には、アンピシリン、エリスロマイシン、およびトブラマイシンが含まれるがこれに限らない。鎮痛剤には、アスピリンおよびコデインが含まれるがこれに限らない。癌治療剤には、5-フルオロウラシルが含まれるがこれに限らない。
【0054】
移動装置18は、たとえば図1に示すように2部分を含んでいてもよく、あるいは、たとえば図17〜18に示すように一体型でもよい。一体型単一成形型の移動装置18が好ましい。図5〜6および図17〜18に最もよく示すように、移動装置18は、第1の開口部46を有する第1の末端42および第2の開口部54を有する第2の末端50を備えたカニューレ38を含む。カニューレ38の末端42および50は、第1の容器10および第2の容器14のシール22または24に穴を開け、またはそれを貫通できるように、鋭利であるか、または尖っている(またはそこに斜めの面さえもつ)。カニューレ38は、容器を操作する際に誤って指を刺すのを防ぐために、ハウジング58内で凹所に隠すか、同軸に取り付ける。ハウジング58は、カニューレ38に沿って中央かつ軸方向に配向された、円筒形の2本の対向したガイド62および64を有する。ガイド62および64は、第1の容器10および第2の容器14を移動装置18の第1の末端42および第2の末端50へと誘導する働きをする。図5および図6は、容器10および14を第1の末端42および第2の末端50に誘導しているガイド62および64を示す。
【0055】
カニューレ38の末端42および50は、気密シールをなしている安全弁、さや、またはエラストマースリーブ68および72によって包囲され、または覆われていてよい。安全さや68および72は、第1の開口部46および第2の開口部54も覆っている。第1の末端42および第2の末端50がエラストマースリーブ68および72に穴を開けるとき、スリーブ68および72はそれに応じて縮む。図5は、第1の容器10のシール22に穴を開け始めている第1の末端42、およびそれに応じて縮んでいるスリーブ68を示しているが、スリーブ72は第2の末端50をまだ完全に覆っている。末端42および50は、シール22および24に完全に穴を開けるのに大いに足りる長さであるが、容器10および14の方へあまり先には及ばない(図6に示すとおり)。これによって、逆さにした第1の容器10の液体体積の最大限の体積を第2の容器14へと移動させることができるようになる。図6はまた、第1の容器10および第2の容器14のシール22および24に完全に穴を開けた第1の末端42および第2の末端50、ならびに完全に縮んでいるスリーブ68および72を示す。エラストマースリーブ68および72は、穴が開いていないとき、気体または液体の流れを妨げる。スリーブ68および72に適する材料には、ゴムの類および熱可塑性エラストマーが含まれるがこれに限らない。
【0056】
ここで、第1の実施形態の操作に移るが、標準の静脈穿刺法を使用して、第1の容器10に血液を採取したなら、血液は、その中の抗凝固剤25による抗凝固作用を受ける。通常、第1の容器10は、密閉された状態で血液が採取されるが、しかし、その後に密閉してもよい。第1の容器10を密閉すると、その中身の汚染が防止される。その後、第1の容器およびその中身10(すなわち、血液、抗凝固剤25、分離媒質26、およびLDHV流体28)を遠心分離にかける。許容される遠心分離は、900から3,500×Gの範囲の重力加速度で5から15分間実施することができる。好ましい実施形態では、第1の容器を、約1,000×Gの重力加速度で約10分間の遠心分離にかける。この最初の遠心分離によって、第1の容器の中身または画分が分離されて、たとえば図2に示すように複数の層になる。各層は、大気と等しい圧力で、(遠心分離後の第1の容器10の底から該容器の上部へと順に)赤血球層30、分離媒質26、血小板に富む血漿層34、LDHV流体層28、および最後に残留気体27の体積を含む。これらの層の比率は、適用例毎に様々でよく、ここでは例示する目的のためだけの比率で示してある。遠心分離の後、密閉された第1の保持器10を逆さにしてから、移動装置18を使用してシール22に穴を開ける。言い換えれば、図7に示すとおり、密閉された開口部が最も低い垂直位になるように第1の容器10を逆さにする。第1の容器を逆さにすると、層が配置される順序が変わる。シール22の上は、底から上部へと順に以下の層、すなわち、血小板に富む血漿34、不混和性の高粘性低密度流体28、残りの気体27、分離媒質26、および赤血球30の層となる。
【0057】
次に、図8に最もよく示すように、その密閉された開口部24を最上位にして、第2の容器14を垂直位に置く。これによって、第2の容器14が、第1の保持器の中身をその中に移すのに適する場所に配置される。図8は、移動に適した位置にある第2の容器14の上方にある移動装置18上に逆さに位置する遠心分離済み第1の容器10を図示する。次いで、移動装置のガイド64が上に置かれ、第2の容器14をその中に誘導し、その間に、逆さになった第1の容器10が他方のガイド62へとかけられる(またはこの逆)。つまり、カニューレ38の末端42および50のどちらかを使用して、シール22および24のどちらかに穴を開けることができる。移動装置18は、各々の末端について対称であるので、使用者には、ある程度のフールプルーフが働く。次いで、使用者は、容器を同時に押し込んで、両方のシール22および24に、それぞれカニューレの各末端42および50で穴を開ける。末端42および50を覆っている2個の弁スリーブ68および72によって、フールプルーフの働きがさらに強化される。第一に、第1の末端42で第1のシール22に穴を開けると(ここでも、どちらかのシールに穴を開けるのにどちらの末端も使用できる)、他方の末端50を覆っている穴の開いていないスリーブ72が流体を含むことになり、それによって流体のこぼれが防止される。一方、他方の末端50で他方のシール24(およびそれに応じてスリーブ72)に最初に穴を開けると、第1の末端42を覆うスリーブ68によって真空が維持される。
【0058】
図6および9に示すように、末端42および50によって両方のスリーブ68および72と、シール22および24に穴が開けられると、圧力差によって、所望の流体が第1の容器10から第2の容器14へと移動する。つまり、第2の容器14内の圧力は0になっているので、第1の容器10の中身(より詳細には、血漿34)が第2の容器14に流入する。もともとは大気圧である第1の容器10の圧力は、液面の高さが低下して、気体の体積が膨張するにつれて低下する。しかし、圧力はどの時点でも0に等しくない。第2の容器14は、0に等しい圧力まで完全に排気されているので、その中の圧力は、圧縮される気体が存在しないために、管が満たされるにつれて増大することはない。したがって、装置18は、一方の管から別の管へと広範な液体および溶液を移動させるのに使用することができ、血液の移動だけに限定されないと解釈すべきである。
【0059】
第1の容器10では各層が連続した特定の配置をとっているために、血小板に富む血漿34が容易に移動する。さらに、第1の容器10も真空レベルにあるので、第1の容器は、採血後に部分的にしか満たされない。これによって、移動する間「頭部の空間」中の気体は0を大きく上回ったままとなり、その際その体積が膨張し、それによって第2の容器14への急速かつ完全な移動が可能になる。これは、理想気体の法則およびポアズイユ-ハーゲンの式によって決まる。
【0060】
第1の容器の中身または断片(すなわち、血小板に富んだ血漿)の移動は、LDHV流体28がカニューレ38に侵入するまで続く。LDHV流体の高い粘性のためにカニューレ38の狭い管腔が塞がり、それによって流れが停止することになる。このことは、移動装置18の再利用を妨げるが、これは、汚染された血液移動装置を取り外そうとする際に特に重要であり、以前に別の患者に使用し、または別の患者が使用したことによって、誤って血液由来の病原で汚染されることも防ぐ。
【0061】
血漿画分34が第2の容器14へと移動し終わり、それによって収率が最大になり、試薬が適切な化学量論比に保たれる。次いで、血漿34が第2の容器14中で凝固活性化因子36と接触し、それによって混合物60が生じ、これを直ちに遠心分離にかけて、固体フィブリン網を生成することができる。第1の容器10と第2の容器14の圧力差は、移動する間じゅう実質的に維持され、急速な移動が可能になる。移動装置18は、管がかみ合っても影響を受けず、このシステムを実質的にフールプルーフにする。最後に、移動がガス抜きなしで行われるので、サンプルが無菌かつ汚染されずに保たれる。
【0062】
全体として、移動装置18は、血漿34とカルシウム凝固活性化因子36を接触させ、その後直ちに、血漿の凝固および遠心分離を同時に実施して固体フィブリン網を生成する、迅速かつ効率的な方法を提供する。固体フィブリン網は、生きている生物の体組織を再生させるのに適する。このような方法では、血漿をカルシウム凝固活性化因子36と接触させる前に、水を除去して血漿を最初に予備濃縮する必要性が低まる。さらに、移動装置18は、様々な種類の適用例で血液または他の流体の移動に使用できる。
【0063】
本発明は、図10に示すようなすぐに使用できるキットも提供する。このキットは、第1の容器10、第2の容器14、および移動装置18を含む。キットの一実施形態では、キットは、パッケージの外側へ持ち上げる2枚のトレー70および74を備えていてよい。第1のトレー70は、ステップ1に必要な構成材料をすべて備えており、第2のトレー74は、ステップ2に必要な構成材料をすべて備えている。当然、部品は、様々な様相で配置することができる。
【0064】
ステップ1は、血液を第1の容器10に収集した後、遠心分離にかけて、血小板に富む血漿を得るステップを含む。第1のトレー70の構成材料は、静脈穿刺部位を清潔にするためのアルコール綿棒78、多端子のサンプル血液収集針82(21ゲージ×1″)、安全保持器86;抗凝固剤(たとえばクエン酸塩)、ゲル、LDHV流体を含む第1の容器10、および静脈穿刺部位を覆うための帯具90を含む。静脈穿刺部位を無菌アルコール綿棒78で清潔にする。針カートリッジ84を開け、安全保持器86にねじ込む。次いで、針82を患者の静脈に挿入し、容器10を保持器86に連結する。次いで、血液が容器を満たしたら、針82を抜き、保持器86に引っ込める。保持器の末端を、ヒンジ式フラップで閉じる。静脈を帯具90で塞ぐ。容器10を約1000×Gで約10分間の遠心分離にかけ、赤血球から血漿を分離する。
【0065】
第2のトレーの構成材料は、ステップ2に使用する構成材料であり、AFTube(自己フィブリン管)もしくは第2の容器14と移動装置18とを含む。ステップ2は、第1の容器10を逆さにした体勢で移動装置18に入れるステップを含む。第2の容器14は凝固剤を含んでおり、移動装置の他方の末端によって穴が開けられる。容器10および14をつなぐと、血小板に富む血漿が第1の容器10から第2の容器14へと流れる。次いで、第2の容器を直ちに2300×Gで約30分間の遠心分離にかけて、血小板を含む高密度なフィブリン、または固体フィブリン網を得る。
【0066】
本発明の第2の実施形態では、図11〜14に示すような、固体フィブリン網を調製するためのもう1つの一体型のシステムを提供する。このシステムは、第1の実施形態の第1の容器10と非常に類似した第1の収集装置10を含む。収集装置10は、(上述のような)密度勾配細胞分離媒質26と抗凝固剤(図示せず)、ならびに第1の収集装置10に連結し、またはそれと合体させることのできる貯蔵器94を含んでいてよい。本発明の第1の実施形態、より詳細には分離媒質26に関係する上記の議論は、本発明の第2の実施形態に当てはまる。つまり、同じ材料を分離媒質26に使用することができ、同じ材料が好ましい。たとえば、分離媒質26は、その降伏点によって、もともとの周囲条件でのゲルの流動が妨げられるが、遠心分離中に受けるより強い遠心力ではゲルが流動できるようになる揺変性のゲルを含むことが最も好ましい。分離媒質26は、図11に示すように第1の収集装置の底(すなわち、開口部と反対の末端)に配置されていてよい。あるいは、分離媒質は、第1の収集装置の内側を取り巻く環を形成していてもよい。第1の収集装置10は、第1の収集装置が高密度低粘性流体を含んではいけない点を除き、上述の第1の容器10と本質的に同じである。第1の収集装置10は、(上述のように)ゴム栓やキャップなどのシール22を備えていることが好ましい。
【0067】
貯蔵器94は、チャンバー96と、それと流体が行き来できるカニューレ100とを含む。チャンバー96は、液体試薬104、最も好ましくはカルシウム凝固活性化因子を含んでいる。カルシウム凝固活性化因子は、塩化カルシウム、フッ化カルシウム、炭酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、フマル酸カルシウム、ピルビン酸カルシウム、またはこれらの混合物であることが好ましい。カニューレ96は、第1の収集装置10のシール22に穴を開けることができなければならない。好ましい実施形態では、カニューレは、周囲条件下でチャンバー96中の試薬104がカニューレ100の外へ流出するのを防ぐ降伏点ゲルなどのブロック用媒質108を含んでいる。他の適切なブロック用媒質には、バネに載った球(balls on spring)、弁、バネを積んだ弁(spring-loaded valves)、貫通可能な膜、アンプル(すなわち、流体または粉体を満たした中空膜)などの、力によって作動する機械系が含まれるがこれに限らない。ゲル108の降伏点は、特に強い重力加速度で遠心分離にかけると、チャンバー96と第1の収集装置10がかみ合うときに、ゲル108が移動して2者間を行き来できるようになるものである。貯蔵器94は、貯蔵器を収集装置10へと誘導するのに使用されるガイドハウジング110を備えていてもよい。カニューレ100は、カニューレ100の無菌性を保つために、エラストマースリーブ112によって包囲され、または覆われていてよい。スリーブ112については、第1の実施形態に関して上述してある。
【0068】
もう1つの実施形態では、チャンバー96は、抗生物質、鎮痛剤、癌治療剤、血小板増殖因子、および骨形態形成タンパク質のうちの1種または複数を含んでいてもよい。局所投与することのできる他の治療薬剤が含まれていてもよい。抗生物質の例には、アンピシリン、エリスロマイシン、およびトブラマイシンが含まれるがこれに限らない。鎮痛剤には、アスピリンおよびコデインが含まれるがこれに限らない。癌治療剤には、5-フルオロウラシルが含まれるがこれに限らない。
【0069】
実施に際しては、上述のように従来の静脈穿刺法によって、患者の血液116を第1の収集装置10に収集する。遠心分離の前に、第1の収集装置10中の抗凝固因子によって血液が薄まる。その次に、図13および14に示すように、貯蔵器94のカニューレ100を第1の収集装置10のシール22に貫通させることによって、貯蔵器94を第1の収集装置10に結合させる。スリーブ112は、カニューレ100がシール22を貫通するときに縮む。カニューレ100の長さは、シール22に穴を開けるのに足りているが、カニューレは、それができるとしても、収集装置10の方へあまり先には及ばないことが好ましい。
【0070】
次いで、収集装置10および貯蔵器94を遠心分離にかける。管に働く遠心力は、式F=ωmr2(式中、F=力、m=システムの質量、r=ローターの中心からの半径、ω=角回転速度である)で表される。貯蔵器では、第1の管のゲルよりもrが小さくなるので、貯蔵器のカニューレ中のゲルは、生じるずれ応力が不十分であるために移動することができない。第1の管10は、図13に示すように細胞が分離され、ゲル26が細胞/血漿の界面に移動するまで、弱い重力加速度で回転させられる。言い換えれば、第1の実施形態と同様に、分離媒質26が、約1000×Gで約10分間の最初の遠心分離にかけられた後、血小板に富む血漿34から赤血球30を分離する。約900〜1500×Gの遠心力で約5分から15分間の遠心分離も、最初の遠心分離向けに許容される。
【0071】
その後、遠心速度を増大させ、図14に示すように、カニューレ100中のブロック用媒質108が第1の収集装置10に移り、液体試薬108(たとえば、カルシウム凝固活性化因子)が貯蔵器から残らず出る強さの重力加速度を貯蔵器にかける。その後、中身を約2300〜6000×Gで約15〜40分間の遠心分離にかけることができる。カルシウム凝固活性化因子が第1の収集装置中の血漿と接触すると、サンプルはまだ遠心分離にかけられているので、凝固と遠心分離が即座にかつ同時に行われる。これによって、組織の再生に適する固体フィブリン網が形成されることになる。第1の管の細胞を分離し、その後液体凝固剤を正しい化学量論比で加える操作は、移しかえせずに1本の管で行う。遠心分離の速度および期間をプログラミングすることによって、本発明は、簡単かつフールプルーフな方法を提供する。
【0072】
代替実施形態では、図15〜16に示すように、単一の収集装置10が内部区画119および貯蔵器94を備えている。貯蔵器94は、第1の収集装置10と一体化し、またはそれに連結されており、内部区画と液体が行き来できるようになっている。管、導管、または開口部120は、区画119と貯蔵器94間に流体の行き来をもたらすものであり、ブロック用媒質108で封じられている。ここでも、ブロック用媒質108は、上述のように、特に強い重力加速度に曝されたときに活性化され、移動させる降伏点を有し、貯蔵器94と第1の収集装置10間の行き来を可能にする。ゲルまたは媒質の降伏点は、血漿から血液細胞を分離する最初の遠心分離の間にはゲルが移動しないものである。第3実施形態では、この装置の各末端は開口部を有し、また各末端は、ゴム栓、キャップ、発泡体、エラストマー、または他の複合材など、取外し可能または取外し不可能なシール22または122によって密閉されている。栓122を備えた貯蔵器94は、収集装置のシール22および開口部の反対側の末端に位置する。
【0073】
もう1つの実施形態では、貯蔵器94は、抗生物質、鎮痛剤、癌治療剤、血小板増殖因子、および骨形態形成タンパク質のうちの1種または複数を含んでいてもよい。局所投与することのできる他の治療薬剤が含まれていてもよい。抗生物質の例には、アンピシリン、エリスロマイシン、およびトブラマイシンが含まれるがこれに限らない。鎮痛剤には、アスピリンおよびコデインが含まれるがこれに限らない。癌治療剤には、5-フルオロウラシルが含まれるがこれに限らない。
【0074】
別の実施形態は、第2の実施形態について上で述べたのと同じようにして使用される。すなわち1)赤血球から血漿を分離するのに十分な力を第1の力とし、2)貯蔵器と装置内部の間にある管、導管、または開口部120中のブロック用媒質108を本体に移動させるのに十分な力を第2の力とする2種の異なる遠心力によって遠心機を制御する。結果として、カルシウム凝固活性化因子が装置の内側に侵入できるようになる。これによって、血漿の遠心分離と凝固が同時に実施できるようになり、第2のより強い重力加速度で遠心分離が続行されているときに固体フィブリン網が生成する。シール122は、固体フィブリン網または自己糊を得るために取り外すことができる。好ましい実施形態では、シール122は、図16に示すように、差し込まれており、ひねって装置10から外すことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生きている生物の組織を再生させるのに適する自己固体フィブリン網を調製するためのシステムであって、
分離媒質および低密度高粘性液体を含有する密閉された第1の容器であって、前記分離媒質は、前記容器が血液を含み、遠心分離にかけられたときに、血漿から赤血球を分離することができ、前記第1の容器は第1の圧力を有する第1の容器と、
カルシウム凝固活性化因子を含有する密閉された第2の容器であって、前記第2の容器が前記第1の圧力よりも小さい第2の圧力を有する第2の容器と、
第1の末端および第2の末端を有するカニューレを含む移動装置であって、前記第1および第2の末端は、前記の密閉された第1の容器および第2の容器に穴を開けて、前記第1の容器と第2の容器との間に流体の行き来をもたらすことができ、前記第1の容器の低密度高粘性液体は、前記カニューレに侵入して、そこを通る流れを遮断することができる移動装置と
を含むことを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記分離媒質が、ゲル、ビーズ、および浮遊デバイスのうちの少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第2の容器が排気されることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記カルシウム凝固活性化因子が、塩化カルシウム、フッ化カルシウム、炭酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、フマル酸カルシウム、ピルビン酸カルシウム、およびこれらの混合物から選択されることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記第1の容器が抗凝固剤をさらに含んでいることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記第1および第2の末端がそれぞれ、エラストマースリーブによって覆われており、前記エラストマースリーブが、前記第1または第2の末端が前記第1または第2の密閉された容器に穴を開けるときに縮むことができることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
生きている生物の組織を再生させることのできる自己固体フィブリン網を調製するためのシステムであって、前記システムが、
第1の圧力を有する密閉された第1の容器であって、前記第1の容器は血液をその中に引き込むことのできる第1の容器と、
第2の圧力を有する密閉された第2の容器であって、前記第2の容器はカルシウム凝固活性化因子を含有しており、前記第2の圧力は前記第1の圧力よりも小さい第2の容器と、
第1の末端および第2の末端を有するカニューレを含む移動装置であって、前記第1および第2の末端は、前記密閉容器に穴を開けることができ、前記移動装置は、圧力の差によって、前記第1の容器に引き込まれた血液の一部を前記第2の容器に移動させることのできる移動装置と、
前記移動装置を介して前記第1の容器から前記第2の容器に移され、前記カルシウム凝固活性化因子と接触された血液の部分を遠心分離と凝固を同時に行って、生きている生物の組織を再生させることのできる固体フィブリン網を生成するための遠心機と
を含むことを特徴とするシステム。
【請求項8】
前記移動装置が、前記第1の末端を覆う第1のスリーブと、前記第2の末端を覆う第2のスリーブとをさらに含むことを特徴とする請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記カルシウム凝固活性化因子が、塩化カルシウム、フッ化カルシウム、炭酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、フマル酸カルシウム、ピルビン酸カルシウム、およびこれらの混合物から選択されることを特徴とする請求項7に記載のシステム。
【請求項10】
前記第1の容器が、分離媒質、高粘性低密度流体、および抗凝固剤を含有することを特徴とする請求項7に記載のシステム。
【請求項11】
前記分離媒質が、ゲル、ビーズ、および浮遊物のうちの少なくとも1種であることを特徴とする請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記移動装置がハウジングをさらに含み、前記ハウジングは、使用者の指に刺さるのを防ぐために、前記カニューレの長さよりも先に伸びていることを特徴とする請求項7に記載のシステム。
【請求項13】
生きている生物の体組織を再生させるのに適する固体フィブリン網を調製するための方法であって、前記方法が、
患者からの血液を第1の容器に引き込むステップと、
第1の容器中の前記血液から血漿を分離するステップと、
第1の末端および第2の末端を有するカニューレを含む移動装置を使用して、前記第1の容器からカルシウム凝固活性化因子を含んでいる第2の容器へ血漿を移動させて、前記血漿と前記カルシウム凝固活性化因子とを接触させるステップと、
前記第2の容器中で前記血漿およびカルシウム凝固活性化因子の凝固と遠心分離を同時に行って、その中に固体フィブリン網を形成させるステップであり、前記固体フィブリン網が生きている生物の体組織を再生させるのに適しているステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項14】
前記第1および第2の容器がその中身の汚染を防ぐために密閉されており、前記第1の容器が第1の圧力を有し、前記第2の容器が前記第1の圧力よりも低い第2の圧力を有することを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の容器から前記第2の容器へ血漿を移動するステップが、特に順序を定めずに、前記の密閉された第1の容器に前記カニューレの末端を貫通させ、前記の密閉された第2の容器に他方の末端を貫通させることによって実施され、それによって血漿が前記第1の容器から前記第2の容器に流出できるようにすることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の容器中の血液から血漿を分離するステップが、分離媒質、粘性の液体、および抗凝固剤を含む前記第1の容器を用意するステップと、前記第1の容器およびその中身を遠心分離にかけるステップとを含むことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の容器を遠心分離にかけることが、その中に遠心分離された中身を形成し、前記の遠心分離された中身が、前記第1の容器の底からその容器の上部へと順に以下の層、すなわち、血液、分離媒質、血漿、粘性の液体、空気、およびシールを形成していることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記移動装置をその中に挿入する前に、第1の容器を逆さにして、前記第1の容器中の遠心分離された中身が、逆さの容器中で、順に以下の層、すなわち、前記シール、血漿、粘性の液体、空気、分離媒質、および血液を形成するようにするステップをさらに含むことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
カニューレの一方の末端が、特に順序を定めずに、逆さになった前記の密閉された第1の容器に挿入され、他方の末端が前記の密閉された第2の容器に挿入されて、前記血漿を、カニューレを通して前記第1の容器から移動させること、ならびに移動中に前記の粘性液体が前記カニューレに侵入して、前記の粘性液体が、前記第1および第2の容器間の行き来を遮断することを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
生きている生物の組織を再生させるのに適する固体フィブリン網を調製するためのシステムであって、前記システムが、
内腔部を有し、分離媒質を含有する密閉された第1の収集装置であって、前記第1の収集装置は前記内腔部に血液を引き込むことができ、前記分離媒質は、前記第1の収集装置が血液を含有し、遠心分離にかけられると、赤血球から血漿を分離することができる収集装置と、
チャンバーと、それと液体が行き来する導管を有する貯蔵器であって、前記チャンバーは、その中にカルシウム凝固活性化因子を含み、前記導管は、少なくとも部分的にブロック用媒質で満たされて、前記活性化因子が周囲条件下で前記チャンバーの外へ流出しないようになっている貯蔵器と
を含むことを特徴とするシステム。
【請求項21】
前記導管がカニューレであり、前記カニューレが、前記の密閉された第1の収集装置に穴を開けることのできる末端を有することを特徴とする請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記末端は、この末端が前記の密閉された第1の容器に穴を開けるときに縮むことのできるエラストマースリーブによって覆われていることを特徴とする請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記ブロック用媒質が、前記システムが約900から約1500×Gで遠心分離にかけられたときには移動しないが、前記貯蔵器のカニューレが前記貯蔵器のシールを貫通し、前記システムが約2300から約6000×Gでの遠心分離にかけられたときには前記第1の収集装置へ移動する降伏点を有することを特徴とする請求項20に記載のシステム。
【請求項24】
前記カルシウム凝固活性化因子が、塩化カルシウム、フッ化カルシウム、炭酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、フマル酸カルシウム、ピルビン酸カルシウム、およびこれらの混合物の少なくとも1種であることを特徴とする請求項20に記載のシステム。
【請求項25】
前記収集装置および前記貯蔵器が一体化しており、前記導管が、唯一前記収集装置内部と前記貯蔵器間の流体の行き来をもたらすことを特徴とする請求項20に記載のシステム。
【請求項26】
生きている生物の組織を再生させることのできる固体フィブリン網の調製方法であって、前記方法が、
患者からの血液を、シールを有する第1の収集装置に引き込むステップと、
チャンバーと、このチャンバーと液体の行き来する導管を含む貯蔵器であって、前記チャンバーが少なくとも部分的にカルシウム凝固活性化因子で満たされており、前記活性化因子が周囲条件下で前記チャンバーの外へ流出するのを防ぐために、前記導管が少なくとも部分的にブロック用媒質で満たされている貯蔵器を用意するステップと、
前記チャンバー、導管、および収集装置が、ブロック用媒質が存在しない場合に液体が行き来するように、前記貯蔵器を前記第1の収集装置に連結するステップと、
第1の速度で、前記第1の収集装置を遠心分離にかけるステップであって、前記大地の速度が血液から血漿を分離するには十分であるが、それでも前記導管中の前記ブロック用媒質を前記第1の収集装置に移動するには不十分であるステップと、
第2の速度で前記第1の収集装置を遠心分離にかけるステップであって、前記第2の速度が、前記ブロック用媒質の少なくとも一部を前記導管から前記第1の収集装置に移動させるのに十分であり、それによって前記カルシウム凝固活性化因子が前記収集装置に流入し、前記血漿に接触するのを可能にするステップと、
前記の第2の速度で前記装置を遠心分離にかけ続け、それによって生きている生物の組織を再生させるのに適する固体フィブリン網を生成するステップと
を含む方法。
【請求項27】
前記第1の収集装置を第2の速度で遠心分離にかけるステップが、前記血漿および活性化因子の遠心分離と凝固とを同時に行ない、前記フィブリン網を形成するのに十分な時間実施されることを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記カルシウム凝固活性化因子が、塩化カルシウム、フッ化カルシウム、炭酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、フマル酸カルシウム、ピルビン酸カルシウム、およびこれらの混合物の少なくとも1種であることを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記導管が、鋭利な末端を有するカニューレであることと、前記貯蔵器を前記第1の収集装置へ連結するステップが、前記カニューレの前記末端で前記シールに穴を開けることによって実現されることを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記カニューレの前記末端が、前記末端が前記シールに穴を開けるときに縮むことのできるエラストマースリーブによって覆われていることを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記第2の容器が、抗生物質、鎮痛剤、癌治療剤、血小板増殖因子、および骨形態形成タンパク質のうちの1種または複数を含んでいることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項32】
前記第2の容器が、抗生物質、鎮痛剤、癌治療剤、血小板増殖因子、および骨形態形成タンパク質のうちの1種または複数を含んでいることを特徴とする請求項7に記載のシステム。
【請求項33】
前記チャンバーが、抗生物質、鎮痛剤、癌治療剤、血小板増殖因子、および骨形態形成タンパク質のうちの1種または複数を含んでいることを特徴とする請求項20に記載のシステム。
【請求項34】
前記チャンバーが、抗生物質、鎮痛剤、癌治療剤、血小板増殖因子、および骨形態形成タンパク質のうちの1種または複数を含んでいることを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項35】
血漿から赤血球を分離するためのシステムであって、前記システムが、
分離媒質および低密度高粘性液体を含有する密閉された第1の容器であって、前記分離媒質は前記容器が血液を含有し、遠心分離にかけられたときに、血漿から赤血球を分離することができ、前記第1の容器は第1の圧力を有する第1の容器と、
前記の第1の圧力よりも小さい第2の圧力を有する密閉された第2の容器と、
第1および第2の末端を有するカニューレであって、前記第1および第2の末端は、前記の密閉された第1および第2の容器に穴を開けて、前記第1および第2の容器との間に流体の行き来をもたらすことができるカニューレを含む移動装置であり、前記第1の容器の高粘性液体が、前記カニューレの前記第1および第2の末端が前記の密閉された第1の容器および第2の容器に穴を開けるときに、前記カニューレの中に侵入してそれを詰まらせ、それによってそこを通る流れを妨げることができることを含むことを特徴とするシステム。
【請求項36】
前記第2の容器がカルシウム凝固活性化因子を含んでいることを特徴とする請求項35に記載のシステム。
【請求項37】
前記カルシウム凝固活性化因子が、塩化カルシウム、フッ化カルシウム、炭酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、フマル酸カルシウム、ピルビン酸カルシウム、およびこれらの混合物の少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項35に記載のシステム。
【請求項38】
前記の第1および第2の末端がそれぞれ、エラストマースリーブで覆われており、前記エラストマースリーブが、前記の第1または第2の末端が前記の密閉された第1または第2の容器に穴を開けるときに縮むことができることを特徴とする請求項35に記載のシステム。
【請求項39】
血漿から赤血球を分離する方法であって、前記方法が、
第1の圧力を有する密閉された第1の容器であって、前記第1の容器が分離媒質および高粘性液体を含有する第1の容器を用意するステップと、
前記第2の圧力よりも小さい第2の圧力を有する密閉された第2の容器を用意するステップと、
第1および第2の末端を有するカニューレを含み、前記第1および第2の末端が、前記の密閉された第1および第2の容器に穴を開けて、前記第1および第2の容器との間に流体の行き来をもたらすことのできる移動装置を用意するステップと、
前記第1の容器に血液を引き込むステップと、
前記血液、分離媒質、および高粘性流体を含有する前記第1の容器を、前記分離媒質が前記血漿から前記赤血球を分離するように遠心分離にかけるステップと、
前記の密閉された第1および第2の容器に前記移動装置で穴を開け、それによって前記血漿が前記カニューレを通って前記第2の容器に流出できるようにするステップと、
前記カニューレを前記高粘性液体で詰まらせるステップと
を含む方法。
【請求項40】
前記第2の容器がカルシウム凝固活性化因子を含んでいることを特徴とする請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記カルシウム凝固活性化因子が、塩化カルシウム、フッ化カルシウム、炭酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、フマル酸カルシウム、ピルビン酸カルシウム、およびこれらの混合物の少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項40に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2009−185056(P2009−185056A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−97789(P2009−97789)
【出願日】平成21年4月14日(2009.4.14)
【分割の表示】特願2003−559565(P2003−559565)の分割
【原出願日】平成15年1月15日(2003.1.15)
【出願人】(504272464)
【出願人】(504272198)
【Fターム(参考)】