説明

自己免疫疾患の治療および/または予防のための薬剤、ならびに制御性T細胞形成のための薬剤

本発明は、自己免疫疾患の治療および/または予防のための薬剤、生物体における制御性T細胞(TReg)形成のための薬剤、ならびに本発明の薬剤の種々の使用方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己免疫疾患の治療および/または予防のための薬剤、生物体における制御性T細胞(TReg)形成のための薬剤、ならびに本発明の薬剤の種々の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自己免疫疾患は、免疫系が自己の組織に対して過剰反応を示すことを特徴とする。免疫系が自己の組織を排除すべき異物と誤認することにより、激しい炎症反応が起こり、その影響によって臓器が損傷を受ける。
【0003】
自己と非自己の構造を識別する上で重要な役割を担っているのは、Tリンパ球、すなわちT細胞である。T細胞は、自己の細胞表面分子、いわゆるMHC分子に結合はするが、自己の構造に対して寛容に働くように胸腺で「教育」を受ける。この過程が、「クローン除去」および「クローン選択」と呼ばれるものである。胸腺で行われる第一の選択で、上記のようなT細胞、すなわち自己の細胞膜上のMHC分子を認識する能力を持つT細胞のみが生き残る。しかし、その結合は、T細胞を活性化させるほど強力なものではない。ここで、自己のMHC分子に対して結合も認識も全くできないT細胞は排除される。さらに胸腺で行われるクローン除去において、自己のMHC分子を「的確」に認識して強力に結合する能力があるT細胞は、自体が活性化されて結果的に自己の細胞を破壊する恐れがあるため排除される。以上の過程は、免疫系が「自己」の防御と「非自己」の排除を実現するためにとる手段の1つである。
【0004】
自己免疫疾患においては、あるT細胞の集団が異常な作用を示す。このT細胞は、非自己の分子や生物体に対する防御機能を維持しつつ、さらに自己の構造に対しても攻撃を行う。臓器や組織が非自己として認識されているため、様々な影響が生じ得る。生命維持に関与する構造に影響が及んだ場合、自己免疫疾患は命取りになる。そのような構造に対する防御を免疫系が指示すると、細胞性や体液性の防御反応が始まり、自己抗体が形成され、その結果、被害を受けた臓器はやがて機能を失う。最も一般的には、生体の免疫系が弱まり、あらゆる種類の疾患にかかりやすくなる。場合によっては非自己の認識にも混乱をきたし、その結果、変性した癌細胞の拡散を効果的に阻止することができなくなり、患者はより一層感染症にかかりやすくなる。自己免疫疾患の進行の過程において、生体の修復機構は損傷を受けた臓器の再生を可能な限り試みるが、その間も、免疫系の細胞が自己の構造を破壊していく。一般に、治療を行わなければ、防御システムによるこのような誤った攻撃は、生涯を通じて、または標的となった構造が完全に破壊されるまで継続する。
【0005】
鋭意研究が行われているにもかかわらず、自己免疫疾患のはっきりとした原因はいまだに分かっていない。現在一般に受け入れられている仮説は、遺伝性素因(例えば、特定のMHC分子型の存在に起因するもの)と外部からの影響とが組み合わさって自己免疫疾患が発症するという仮定に基づいている。このような遺伝的要因を患者が抱えている場合、これに加えて、激しいストレス、感染症、妊娠などの不利な環境要因が生じると、自己免疫疾患を発症する恐れがある。
【0006】
免疫系は、体内に侵入した感染病原体を排除する能力を持った種々の細胞から構成される。免疫応答のメカニズムは、特殊化細胞の活性化、および特定のT細胞(このT細胞は、いわゆるCD8膜貫通糖タンパク質を発現することから、CD8T細胞と呼ばれる)が有する細胞毒性に代表されるようなエフェクター機能の獲得を含む。
【0007】
以前はサプレッサーT細胞とも呼ばれていた制御性T細胞(TReg)は、T細胞の中の特殊化したサブグループの1つである。制御性T細胞は、免疫系の活性化を抑制する機能を有し、それにより免疫系の自己寛容の調節を行う。したがって、健康な生物体においては、制御性T細胞によって、自己免疫疾患の発症が抑制される。種々のTReg集団がこれまで報告されており、一例として、タンパク質CD4、CD25およびFoxp3を発現することからCD4CD25Foxp3T細胞と呼ばれる細胞集団が挙げられる。さらに、CD4およびFoxp3を発現するが、CD25を発現していない、いわゆるCD4CD25Foxp3T細胞と呼ばれるTRegも報告されている。
【0008】
Lan et al.(2005),Regulatory T cells:development,function and role in autoimmunity,Autoimmun.Rev.4(6),p.351−363には、CD4CD25制御性T細胞の欠如により自己免疫疾患を自然発症するマウスモデルが記載されている。
【0009】
Chatila T.A.(2005),Role of regulatory T cells in human diseases,116(5),p.949−959には、タンパク質Foxp3をコードする遺伝子の変異によって起こるCD4CD25制御性T細胞の先天性欠損が、自己免疫疾患の発症の一因となることが報告されている。
【0010】
2005年3月に出版されたジャーナル「Nature Immunology」には、制御性T細胞に関する総説が掲載されている。
【0011】
自己免疫疾患は、被害を受けた臓器に応じて治療が施される。この治療における原因療法の基本原理は、免疫抑制剤(例えばコルチゾン)の投与により免疫系の活性化を抑制することである。免疫抑制剤には、複数の全身性の副作用や相互作用が生じるという特徴があることから、自己免疫疾患のイベントに関与するメカニズムに対して特異的に作用する新薬を開発するために、これまで多くの試みがなされてきた。このような薬としては、ナタリズマブおよびインフリキシマブが例として挙げられる。ナタリズマブは、IgG4(白血球の細胞表面に存在する接着分子)のモノクローナル抗体で、IgG4の選択的阻害薬である。ナタリズマブは、炎症病巣への白血球の遊走を阻害し、プラーク進行性多発性硬化症の中でも特に進行性の病態の治療に使用される。インフリキシマブは、自己免疫性の炎症反応で重要な役割を担う腫瘍壊死因子α(TNFα)に対するキメラモノクローナル抗体である。インフリキシマブは、関節リウマチ、クローン病、ベヒテレフ病および乾癬に使用される。
【0012】
Ehrenstein et al.(2004),Compromised function of regulatory T cells in rheumatoid arthritis and reversal by anti−TNFα therapy,J.Exp.Med.,Vol.200,No.3,p.277−285において、TNFαのモノクローナル抗体として、インフリキシマブが関節リウマチの治療を改善できることが報告されている。
【0013】
同様の示唆が、Nadkarni et al.(2007),Anti−TNFα therapy induces a distinct regulatory T cell population in patients with rheumatoid arthritis via TGF−β,JEM Vol.204,p.33−39にも見られる。
【0014】
Bresson et al.(2006)では、抗CD3ε特異的抗体とプロインスリンペプチドとの併用投与によるI型糖尿病の治療が示唆されている。
【0015】
Vandenbark et al.(2008),Therapeutic vaccination with a trivalent T−cell receptor(TCR) peptide vaccine restores deficient FoxP3 expression and TCR recognition in subjects with multiple sclerosis,Immunology Vol.123,p.66−78には、多発性硬化症患者に特定のTCRペプチドをワクチン接種すると、該疾患における自己反応性反応の制御に改善が見られることが記載されている。
【0016】
これらの新しい薬剤は、極めて特異的に作用するが、重い副作用(例えば進行性多巣性白質脳症の発症など)が起こる場合がある。こういった理由から、ナタリズマブは、米国での最初の登録からわずか3か月後に、市場から回収された。また、これらの新規活性物質の価格は非常に高く、現在、ナタリズマブ300mgは、2,000.00ユーロより高く、インフリキシマブ200mgは、約1,700.00ユーロである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
このような背景から、本発明の目的は、当技術分野で見られる欠点を可能な限り回避した、自己免疫疾患の治療および/または予防のための新規の医薬組成物を提供することである。具体的には、十分な忍容性と低毒性とを特徴とする医薬組成物を提供する必要がある。
【0018】
本発明のさらなる目的は、生物体における制御性T細胞(TReg)形成のための薬剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
これらの課題は、野生型ヒトインターロイキン2(hIL−2)のアミノ酸番号に基づいて、第20位、第88位および第126位のアミノ酸のうち少なくとも1つが置換されているhIL−2変異タンパク質またはそのセクションもしくはフラグメントを提供することにより達成される。
【0020】
本発明者らは、このようなhIL−2変異タンパク質またはそのフラグメントが、意外にも、自己免疫疾患の治療および予防に用いる治療薬としての可能性が高いことを見出した。例えば、本発明者らは、hIL−2変異タンパク質が、生物体において、CD4CD25Foxp3およびCD4CD25Foxp3などの制御性T細胞の形成を選択的に誘導することを様々な実験で実証することができた。
【0021】
意外にも、本発明のhIL−2変異タンパク質の制御性T細胞に対する作用は、野生型hIL−2よりはるかに優れている。これは、高濃度において特に顕著である。
【0022】
本発明のhIL−2変異タンパク質に関しては、WO99/60128に、2つの鎖からなるIL−2受容体(IL−2Rβγ)よりも3つの鎖からなるIL−2受容体(IL−2Rαβγ)に強く結合することが記載されている。この度初めて本発明者らによって証明されたように、本発明のhIL−2変異タンパク質は、IL−2受容体のαサブユニット(CD25)を持たない制御性T細胞(CD4CD25Foxp3)の形成を誘導し、また意外にもその作用は野生型hIL−2より強い。さらに、このサブポピュレーションは、免疫系の活性化を抑制し、それにより免疫系の自己寛容を調節する働きを担う。その結果、本発明のhIL−2変異タンパク質は、自己免疫疾患治療のための活性物質として、野生型hIL−2より際立って高い効力を示すことになる。
【0023】
また本発明者らは、hIL−2変異タンパク質が、CD3CD4CD25Foxp3およびCD3CD4CD25Foxp3などの、自己免疫疾患の抑制に決定的な役割を担うCD8陽性制御性T細胞の形成を誘導することを実証することができた(データ示さず)。
【0024】
さらに、本発明のhIL−2変異タンパク質は、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)とは正反対の機能を有するT細胞を選択的に活性化するため、野生型hIL−2よりも低い毒性プロファイルを示しかつ治療指数が高いというさらなる利点を有する。その結果、本発明のhIL−2変異タンパク質は、野生型hIL−2より、際立って高い忍容性を示す(WO99/60128を参照のこと)。
【0025】
さらに、野生型hIL−2とは対照的に、本発明のhIL−2変異タンパク質は、意外にも、CD8陽性の細胞傷害性T細胞(ナイーブCD8T細胞、セントラルメモリーCD8T細胞、初期分化CD8T細胞、および後期分化CD8T細胞ともいう)の増殖に対して全く影響を及ぼさない、及ぼしてもわずかに過ぎないことが、細胞傷害性CD3CD8CD45ROT細胞に基づいて初めて示された。このことは、CD8細胞傷害性T細胞が自己免疫疾患における慢性的な持続性の炎症過程を引き起こす原因であるとするならば、有利であると言える(Liu et al.(2007),Multiple Sclerosis,13,p.149,and Haegele et al.(2007),Neuroimmunol,183,p.168参照)。従って、野生型hIL−2とは対照的に本発明のhIL−2変異タンパク質は、CD8T細胞に起因するこのような炎症反応がさらに激化するのを防ぐ。このことも本発明のhIL−2変異タンパク質の忍容性が高いという利点を示す。
【0026】
また、本発明者らによって証明されたように、本発明のhIL−2変異タンパク質は、免疫細胞の抗原特異的な活性化も刺激する。このことは、hIL−2変異タンパク質により疾患特異的な免疫細胞が選択的に賦活されて免疫療法による全身性の作用が抑えられるという利点を有する。その結果、hIL−2変異タンパク質の投与が原因で他の疾患が誘発されることも抑制される。
【0027】
さらに本発明者らは、本発明のhIL−2変異タンパク質の投与により、自己免疫疾患の発症を抑制できることを、マウスI型糖尿病モデルに基づいて示すことができた。
【0028】
従って、本発明の基礎をなす課題は完全に達成される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
添付の図面は下記の通りである。
【0030】
【図1】健康な被験者において、プロロイキンの用量以下の濃度でも、hIL−2−N88Rにより誘導される制御性のCD4CD25Foxp3T細胞の増加量は、プロロイキンによる増加量を上回ることを示す。
【図2】健康な被験者において、プロロイキンの用量以下の濃度でも、hIL−2−N88Rにより誘導される制御性のCD4CD25Foxp3T細胞の増加量は、プロロイキンによる増加量を上回ることを示す。
【図3】メラノーマ患者において、プロロイキンの用量以下の濃度でも、hIL−2−N88Rにより誘導される制御性のCD4CD25Foxp3T細胞の増加量は、プロロイキンによる増加量を上回ることを示す。
【図4】メラノーマ患者において、プロロイキンの用量以下の濃度でも、hIL−2−N88Rにより誘導される制御性のCD4CD25Foxp3T細胞の増加量は、プロロイキンによる増加量を上回ることを示す。
【図5】多発性硬化症患者において、プロロイキンの用量以下の濃度でも、hIL−2−N88Rにより誘導される制御性のCD4CD25Foxp3T細胞の増加量は、プロロイキンによる増加量を上回ることを示す。
【図6】多発性硬化症患者において、プロロイキンの用量以下の濃度でも、hIL−2−N88Rにより誘導される制御性のCD4CD25Foxp3T細胞の増加量は、プロロイキンによる増加量を上回ることを示す。
【図7】多発性硬化症患者において、プロロイキンの用量以上の濃度でも、hIL−2−N88Rにより誘導される細胞傷害性CFSElow/CD3CD8CD45ROT細胞の増加量は、プロロイキンによる増加量を下回ることを示す。
【図8】健康な被験者において、プロロイキンの用量以上の濃度でも、hIL−2−N88Rにより誘導される細胞傷害性CFSElow/CD3CD8CD45ROT細胞の増加量は、プロロイキンによる増加量を下回ることを示す。
【図9】マウスI型糖尿病モデルにおいて、hIL−2−N88RによるCD4細胞中のFoxP3細胞のパーセンテージの増加は、野生型hIL−2による増加より大きいことを示す(A)。さらに、hIL−2−N88Rによって誘導されるCD4FoxP3細胞は、CD25発現量も野生型hIL−2の場合より高い(B)。
【図10】マウスI型糖尿病モデルにおいて、hIL−2−N88Rは野生型hIL−2とは対照的に糖尿病の発症を抑制することを示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明において、ヒト「野生型」インターロイキン2(野生型hIL−2)とは、133個のアミノ酸からなる天然ヒトIL−2のアミノ酸配列(N末端の20アミノ酸からなるシグナルペプチドは含まない)を有するポリペプチドまたはタンパク質を意味する。野生型hIL−2は、天然でも発現するが、組換えにより発現させることもできる。野生型hIL−2のアミノ酸配列として、N末端のメチオニン(大腸菌体内で細胞内画分として発現させたタンパク質には必ず存在する)が付加された配列およびそれが付加されていない配列のいずれもが、Fujita et al.(1983),PNAS USA 80,p.7437−7441に記載されている。野生型hIL−2のアミノ酸配列を、添付の配列表の配列番号1に開示する。hIL−2をコードするcDNAのヌクレオチド配列を、添付の配列表の配列番号2に開示する。
【0032】
本発明において、ヒトインターロイキン2の「変異タンパク質」(hIL−2変異タンパク質)とは、野生型hIL−2において特定の置換を施したポリペプチドまたはタンパク質を意味する。置換を施した位置の識別は、野生型hIL−2のアミノ酸番号に基づき、例えば配列番号1における番号に基づいてもよい。この場合、第1位はアラニン(A)、第2位はプロリン(P)、第133位はトレオニン(T)となる。第20位のアスパラギン酸残基(D)(「D20」)は、例えばイソロイシン残基(I)またはヒスチジン(H)に置換することが可能で、それによってそれぞれhIL−2−D20IまたはhIL−2−D20Hとして表記されるIL−2変異タンパク質が形成される。
【0033】
当然のことながら、自己免疫疾患の治療または制御性T細胞の誘導に特に適した組み合わせ変異体を形成するために、本発明のhIL−2変異タンパク質において、先に述べた第20位、第88位および第126位のうち複数箇所のアミノ酸を置換してもよい。
【0034】
本発明において、hIL−2変異タンパク質は、修飾されたポリペプチド、例えば糖化hIL−2変異タンパク質も包含する。糖化hIL−2変異タンパク質としては、例えば米国特許出願09/310,026および10/051,657に開示されているものが挙げられ、これらは参照により本明細書に組み込まれる。
【0035】
本発明において、hIL−2変異タンパク質の「セクション」または「フラグメント」は、hIL−2変異タンパク質のN末端および/またはC末端において1以上のアミノ酸が欠失しているポリペプチドを意味するが、自己免疫疾患の治療および/または予防のために用いられる本発明のhIL−2変異タンパク質の生物活性を十分に示すものである。前記セクションまたはフラグメントの制御性T細胞の誘導活性が、hIL−2変異タンパク質の活性の、少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%である場合、その生物活性は十分であるとみなされる。このhIL−2変異タンパク質の活性は、当業者に公知の方法により容易に測定できる。そのような方法は、例えばWO99/60128の実施例3〜5に開示されている。この文献は参照により、本発明に組み込まれる。
【0036】
本発明において、上述したアミノ酸番号における置換は、あるアミノ酸が生化学的に同等の特性を有する別のアミノ酸に置換されるような保存的置換でないことが好ましい。
【0037】
この点から、第20位の置換は、アスパラギン酸(D)からグルタミン酸(E)への置換でないことが好ましい。第88位の置換は、アスパラギン(N)からアラニン(A)、プロリン(P)、グリシン(G)、グルタミン(Q)、セリン(S)またはトレオニン(T)への置換でないことが好ましい。さらに、第126位の置換は、グルタミン(Q)からアラニン(A)、プロリン(P)、グリシン(G)、アスパラギン(N)、セリン(S)またはトレオニン(T)への置換でないことが好ましい。このような置換では、野生型hIL−2の生物活性は全く変化しないか、変化したとしてもごくわずかにすぎない。
【0038】
さらに、上述したアミノ酸番号において、分子間の架橋結合または不適切なジスルフィド架橋結合が形成される場を提供するような置換を施さないことが好ましい。従って、本発明のhIL−2変異タンパク質において、第20位の置換は、アスパラギン酸(D)からアルギニン(R)、アスパラギン(N)、アスパラギン酸(D)、システイン(C)、グルタミン酸(E)、グリシン(G)、ロイシン(L)、リジン(K)、フェニルアラニン(F)、プロリン(P)、トレオニン(T)またはトリプトファン(W)への置換でないことが好ましい。第88位の置換は、アスパラギン(N)からアスパラギン酸(D)、システイン(C)、グルタミン(Q)、トリプトファン(W)またはプロリン(P)への置換でないことが好ましい。さらに、第126位の置換は、グルタミン(Q)からアラニン(A)、ヒスチジン(H)、トリプトファン(W)、システイン(C)、グルタミン(Q)、グルタミン酸(E)またはリジン(K)への置換でないことが好ましい。
【0039】
本発明のhIL−2変異タンパク質は、当技術分野において公知の適切な方法であればいずれの方法によっても製造できる。そのような方法は、本発明のIL変異タンパク質をコードするDNA配列(例えば配列番号2のヌクレオチド配列が挙げられる)を構築すること、および該配列を適切な宿主において発現させることを含み、それにより本発明の変異タンパク質を組換体として得ることができる。しかし、本発明の変異タンパク質は、化学合成、または化学合成と組換えDNA技術との組み合わせにより製造することもできる。本発明の変異タンパク質の製造については、WO99/60128の実施例1および2に詳細に記載されており、これらは参照により本発明に組み込まれる。
【0040】
本発明の特に好ましいhIL−2変異タンパク質として、第88位のアスパラギン(N)がアルギニン(R)に置換された変異タンパク質(hIL−2−N88R)が挙げられ、当業者は、BAY50−4798として入手することができる(Shanafelt et al.(2000),A T−cell−selective interleukin 2 mutein exhibits potent antitumor activity and is well tolerated in vivo,Nat.Biotechnol.Vol.18,p.1197−1202を参照のこと)。hIL−2−N88Rのアミノ酸配列を、添付の配列表の配列番号3に開示する。
【0041】
当技術分野においては、IL−2変異タンパク質の上記した活性を示唆するものが何ら存在しないことから、本発明者らの発見は特に驚くべきものである。
【0042】
例えば、WO99/60128には、変異タンパク質hIL−2−N88Rは、NK細胞とは正反対の機能を有するT細胞を選択的に活性化することができ、肺の転移形成を抑制する能力があることが記載されている。
【0043】
WO02/00243には、アルブミンを含まずヒスチジンを含む、変異タンパク質hIL−2−N88Rの安定な製剤が記載されている。
【0044】
米国特許出願公開公報2002/0164300には、変異タンパク質hIL−2−N88Rの糖化変異体が記載されている。
【0045】
しかし、本発明のhIL−2変異タンパク質を、本発明の目的である自己免疫疾患の治療および/または予防のために使用すること、および生物体において制御性T細胞を選択的に活性化するために使用することについては、当技術分野においてこれまで報告されておらず、自明のことともされていない。
【0046】
ヒト野生型IL−2に関してさえも、これと同様の発見はこれまでなされていない。
【0047】
Van der Vliet et al.(2007),Effects of the administration of high−dose interleukin−2 on immunoregulatory cell subsets in patients with advanced melanoma and renal cell cancer,Clin.Cancer Res.Vol.13,p.2100−2108には、高用量のIL−2を投与すると、腫瘍治療におけるIL−2の治療効果が低減することが報告されている。
【0048】
Ahmadzadeh and Rosenberg(2006),IL−2 administration increases CD4CD25hiFoxp3 regulatory T cells in cancer patients,Blood,Vol.107,p.2409−2414では、腫瘍患者から制御性T細胞を除去することによりヒト野生型IL−2の治療効果を向上させることが提案されている。しかし、この方法には期待できないことが後に判明した(Powell et al.(2007),Inability to mediate prolonged reduction of regulatory T cells after transfer of autologous CD25−depleted PBMC and interleukin−2 after lymphodepleting chemotherapy,J.Immunother.Vol.30,p.438−447を参照のこと)。
【0049】
Antony and Restifo(2005),CD4CD25 T regulatory cells,immunotherapy of cancer,and interleukin−2,J.Immunother.Vol.28,p.120−128では、IL−2の免疫治療薬としての評価はむしろ低く、IL−2の投与により自己免疫が誘導される恐れがあるとさえ報告されている。
【0050】
Knoechel et al.(2005),Sequential development of interleukin 2−dependent effector and regulatory T cells in response to endogenous systemic antigen,JEM Vol.202,p.1375−1386でも、同様の見解が示されており、初期段階の自己免疫疾患の治療のためにIL−2拮抗作用(すなわちIL−2メカニズムの阻害)を用いることさえ示唆されている。
【0051】
従って、当技術分野において、本発明の解決法が自明であると示唆するものは存在しない。
【0052】
以上のことから、さらに本発明者らは、hIL−2変異タンパク質の治療効果が、適用する疾患や使用する濃度に応じて異なる可能性を見出した。高濃度のhIL−2は、自己免疫疾患の治療には有利でも、腫瘍疾患の治療においては禁忌である可能性がある。
【0053】
本発明の使用において、第88位の置換により、アスパラギンがアルギニンに置換されている(hIL−2−N88R)、グリシンに置換されている(hIL−2−N88G)、またはイソロイシンに置換されている(hIL−2−N88I)こと、および/または第20位の置換により、アスパラギン酸がヒスチジンに置換されている(hIL−2−D20H)、イソロイシンに置換されている(hIL−2−D20I)、またはチロシンに置換されている(hIL−2−D20Y)こと、または第126位の置換により、グルタミンがロイシンに置換されている(hIL−2−Q126L)ことが好ましい。
【0054】
この場合、本発明のhIL−2変異タンパク質として、NK細胞とは正反対の機能を有するT細胞を特に選択的に活性化するような、治療薬としての可能性が高く毒性が低いものを用いることになり、有利である。本発明の好ましいhIL−2変異タンパク質のこのような特性は、WO99/60128に記載されており、この文献は参照により本発明に組み込まれる。
【0055】
本発明において、hIL−2変異タンパク質またはそのフラグメント(hIL−2変異タンパク質またはそのセクションもしくはフラグメントとは、野生型hIL−2において第20位、第88位および第126位のアミノ酸のうち少なくとも1つは置換されているが、それ以外には置換が施されていないものをいう)において、第20位、第88位、第126位のいずれでもない任意の位置におけるアミノ酸のうち少なくとも1つがさらに置換されており、このさらなる置換が施されたhIL−2変異タンパク質、またはさらなる置換が施されたhIL−2変異タンパク質のセクションもしくはフラグメントのアミノ酸配列が、元のhIL−2変異タンパク質またはそのセクションもしくはフラグメントのアミノ酸配列に対して、少なくとも80%、好ましくは85%、より好ましくは90%、より好ましくは95%、最も好ましくは99%の相同性を有することが好ましい。
【0056】
この場合、第20位、第88位および第126位のアミノ酸のうち少なくとも1つは変異しているがそれ以外は野生型hIL−2と同一の配列を有するhIL−2変異タンパク質より、場合によっては容易に合成できる別の一次構造が提供されるという利点を有する。hIL−2変異タンパク質またはそのセクションの生物活性を有するポリペプチドを得るために、ひいては自己免疫疾患の治療および/または予防のための薬剤を得るために、本発明のhIL−2変異タンパク質またはそのセクションのアミノ酸配列と100%同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドを提供することは必ずしも必要ではない。正確に言えば、必然的に生じる多少の活性低下が許容範囲であるなら、適度な相同性があれば事足りる。とは言え、本発明のhIL−2変異タンパク質またはそのセクションの生物活性の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%または99%が保持されていることが好ましい。上述した相同性は、10以上のアミノ酸を有する、本発明のhIL−2変異タンパク質のセクションを基準にする。相同性の程度は、例えばBLAST分析などの、当業者に公知の方法により容易に求めることが可能であり、またDNAStar社のLasergeneプログラムのMegAlignモジュールを使用して求めることもできる。
【0057】
本発明において、第20位、第88位、第126位のいずれでもない任意の位置におけるさらなるアミノ酸の置換は、アミノ酸の保存的置換であることがさらに好ましい。
【0058】
この場合、本発明のhIL−2変異タンパク質のさらなる変異体として、自己免疫疾患の治療および/または予防、または生物体における制御性T細胞の誘導において十分に高い効果を示すものが提供されることになり、有利である。当業者には公知であるが、保存的置換においては、変異タンパク質の二次構造や三次構造に対する影響は全くないか、あっても最小限に抑えられる。このような保存的置換としては、Dayhoff in “The Atlas of Protein Sequence and Structure.Vol.5”,Natl.Biomedical Researchに記載のものが挙げられる。例えば、下記の個々のグループに属するアミノ酸同士は交換可能である、すなわち保存的交換を成立させる。
− アラニン(A)、プロリン(P)、グリシン(G)、アスパラギン(N)、セリン(S)、トレオニン(T);
− システイン(C)、セリン(S)、チロシン(Y)、トレオニン(T);
− バリン(V)、イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、アラニン(A)、フェニルアラニン(F);
− リジン(K)、アルギニン(R)、ヒスチジン(H);
− フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)、ヒスチジン(H);および
− アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)。
【0059】
生物体における制御性T細胞の形成誘導のための本発明の薬剤は、好ましくは、薬学的に許容される担体を含む医薬組成物である。
【0060】
この場合、前記薬剤が生物体に、好ましくはヒトに直接投与できる形態で既に提供されており、有利である。
【0061】
前記薬学的に許容される担体は、当技術分野において広く記載されているものである(Row et al.(2006),Handbook of Pharmaceutical Excipients,5th Edition,Pharmaceutical Press and American Pharmacists’ Association;Bauer et al.(1999),Lehrbuch der pharmazeutischen Technologie,Wissenschaftliche Verlagsgesellschaft mbH Stuttgartを参照のこと)。特に好ましい製剤として、WO02/00243に記載のものが挙げられ、この文献は、参照により本発明に組み込まれる。この製剤は、アルブミンを含まず、製剤中のhIL−2変異タンパク質またはそのセクションがヒスチジンにより安定化されている。最終的な薬剤は、hIL−2変異タンパク質またはそのセクションを0.1〜5mg/ml;ヒスチジンを0.08〜1.6重量%;NaClを0〜0.9重量%;ショ糖を1〜10重量%;グリシンを0〜0.3重量%含有し、かつpHが約5〜6.5であることが好ましい。
【0062】
特定の一実施形態において、前記医薬組成物はさらに免疫抑制剤を含む。
【0063】
本発明のhIL−2変異タンパク質が特別の効能を有することから、前記医薬組成物は、このまま単剤としても、自己免疫疾患の治療および/または予防に使用できる。そのような単剤は、本発明のhIL−2変異タンパク質を唯一の活性物質として含む。この場合、薬学的に許容される担体、溶媒(緩衝剤、水など)、添加剤などは活性物質ではない。
【0064】
上記実施形態は、一般的な免疫抑制剤を配合することにより、本発明の薬剤の治療指数がさらに向上するという利点を有する。
【0065】
前記免疫抑制剤は、デコルチン、プレドニゾール(prednisol)を含むグルココルチコイド;アザチオプリン;シクロスポリンA;ミコフェノール酸モフェチル;タクロリムス;抗Tリンパ球グロブリン、例えばムロモナブを含む抗CD3抗体;バシリキシマブおよびダクリズマブを含む抗CD25抗体;インフリキシマブおよびアダリムマブを含む抗TNF−α抗体;アザチオプリン;メトトレキサート;シクロスポリン;シロリムス;エベロリムス;フィンゴリモド;セルセプト;マイフォーティック;およびシクロホスファミドからなる群より選ばれることが好ましい。
【0066】
このような一般的な免疫抑制剤を配合することは、自己免疫疾患に対する効果が明白でありかつ当技術分野において十分に入手可能な免疫抑制剤が使用されるという点で有利である。
【0067】
さらに、前記自己免疫疾患は、I型糖尿病、関節リウマチ、多発性硬化症、慢性胃炎、クローン病、バセドウ病、ベヒテレフ病、乾癬、重症筋無力症、自己免疫性肝炎、自己免疫性多腺性内分泌不全症(APECED)、チャーグ・ストラウス症候群、潰瘍性大腸炎、糸球体腎炎、ギラン・バレー症候群、橋本病、硬化性苔癬、全身性エリテマトーデス、小児自己免疫性溶連菌関連性精神神経障害(PANDAS)、リウマチ熱、サルコイドーシス、シェーグレン症候群、全身硬直症候群、強皮症、ウェゲナー肉芽腫症、白斑、自己免疫性腸症、グッドパスチャー症候群、皮膚筋炎、多発性筋炎、自己免疫性アレルギー疾患、喘息および臓器移植後の自己免疫反応からなる群より選ばれることが好ましい。
【0068】
前記自己免疫疾患が前記の群より選ばれることは、最も重要な自己免疫疾患の治療および/または予防に使用できる薬剤が提供されるという点で有利である。
【0069】
本発明のさらなる主題は、本発明のhIL−2変異タンパク質またはそのフラグメントを含む、自己免疫疾患の治療および/または予防のための医薬組成物に関する。
【0070】
本発明の使用に関して記載した特性、利点および定義は、本発明の医薬組成物にも同様に適用される。
【0071】
本発明のさらなる主題は、本発明のhIL−2変異タンパク質またはそのフラグメントを含む、生物体における制御性T細胞(TReg)形成のための薬剤に関する。
【0072】
本発明の使用に関して記載した利点、特性および定義は、本発明の薬剤にも同様に適用される。
【0073】
本発明のさらなる主題は、生物体における自己免疫疾患の治療および/または予防のための方法、ならびに生物体における制御性T細胞(TReg)の形成方法に関し、これらの方法はそれぞれ、
(a)ヒトインターロイキン2変異タンパク質(hIL−2変異タンパク質)またはそのフラグメントを準備する工程、
(b)前記hIL−2変異タンパク質またはそのセクションを生物体へ投与する工程、および
(c)必要に応じて、工程(a)および(b)を繰り返し行う工程
を含み、
前記hIL−2変異タンパク質またはそのセクションは、本発明のhIL−2変異タンパク質またはそのセクションである。
【0074】
前記生物体としては、哺乳動物が好ましく、より好ましくはヒトである。
【0075】
本発明の使用に関して記載した特性、利点および定義は、上述した本発明の方法、すなわち生物体における自己免疫疾患の治療および/または予防のための方法、ならびに生物体における制御性T細胞(TReg)の形成方法にも同様に適用される。
【0076】
本発明のさらなる主題は、in vitroにおける制御性T細胞(TReg)の形成方法に関し、該方法は、
(a)ヒトインターロイキン2変異タンパク質(hIL−2変異タンパク質)またはそのフラグメントを準備する工程、
(b)前記hIL−2変異タンパク質またはそのフラグメントを末梢血単核球(PBMC)に接触させる工程、および
(c)必要に応じて、工程(a)および(b)を繰り返し行う工程
を含み、
前記hIL−2変異タンパク質またはそのフラグメントは、本発明のhIL−2変異タンパク質またはそのフラグメントである。
【0077】
hIL−2またはそのフラグメントのPBMCへの接触は、PBMCの培養に適した任意の培地中で行うことができる。
【0078】
本発明の使用に関して記載した特性、利点および定義は、上述した本発明の方法、すなわちin vitroにおける制御性T細胞(TReg)の形成方法にも同様に適用される。
【0079】
本発明のさらなる主題は、生物体における自己免疫疾患の治療および/または予防のための方法に関し、該方法は、
(a)ヒトインターロイキン2変異タンパク質(hIL−2変異タンパク質)またはそのフラグメントを準備する工程、
(b)前記hIL−2変異タンパク質またはそのフラグメントを第1の生物体由来の末梢血単核球(PBMC)に接触させる工程、
(c)前記hIL−2変異タンパク質またはそのフラグメントを前記PBMCとインキュベートして、制御性T細胞(TReg)を含む細胞集団を得る工程、および
(d)前記細胞集団を第2の生物体へ導入する工程
を含み、
前記hIL−2変異タンパク質またはそのフラグメントは、本発明のhIL−2変異タンパク質またはそのフラグメントである。
【0080】
前記第1の生物体と前記第2の生物体は同一の血液型を有することが好ましく、前記第1の生物体と前記第2の生物体は同一の生物体または個体であることが特に好ましい。
【0081】
この場合、前記細胞集団の導入または自家移植に際し、これらの細胞に対する望ましくない免疫反応が起こらないため、前記方法における副作用の発生率が特に低くなるという利点がある。
【0082】
本発明の使用に関して記載した特性、利点および定義は、上述した本発明の方法、すなわち生物体における自己免疫疾患の治療および/または予防のための方法にも同様に適用される。
【0083】
当然のことながら、上述した特徴および以下に説明する特徴については、明記した特定の組み合わせだけでなく、本発明の範囲から逸脱しない限りは、他の組み合わせまたは単独でも利用可能である。
【0084】
以下、実用的な実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、これらの実施例は、単に例示目的であり、本発明の範囲を限定するものではない。実施例においては、添付の図面を参照する。
【実施例】
【0085】
1. 材料および方法
1.1 in vitroで使用するPBMCの全血からの分離
健康な被験者、メラノーマ患者または多発性硬化症患者の末梢血単核球(PBMC)を、リンパ球分離溶液(ヒストパック、シグマ・アルドリッチ社製)を用いて血液から分離する。そのために、同一の被験者または患者から採取したチューブ2本分の血液(7mlまたは10ml)を、50mlの滅菌チューブに移し、RPMI 1640(インビトロジェン社製、#14190−69)を加えて全量を30mlにする。次いで、この希釈した血液30mlを、15mlの密度勾配溶液(密度=1.077;ヒストパック、シグマ・アルドリッチ社製、#10771)に重層する。
【0086】
20℃にて、400gで40分間ブレーキなしで遠心分離を行い、生じた2つの「白血球リング」を採取して、50mlの滅菌チューブに移し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS;インビトロジェン社製、#14190−169)で2回洗浄する。赤血球が混入している場合には、以下のようなRBC(「赤血球」)溶解を行う。得られた細胞ペレットに2mlのRBC溶解液を加え、これを穏やかに混和しながら、室温で2分間インキュベートした後、大量の完全培地(10%ウシ胎仔血清含有RPMI 1640)で洗浄する。
【0087】
白血球の生細胞数は、トリパンブルー(インビトロジェン社製、#15250−061)で染色されない細胞を血球計数器(FisherBioblock社製、A2759B)で計数して求める。
【0088】
1.2 CFSE標識
計数後、細胞をPBSで2回洗浄し、1×10cell/mlの濃度になるようにPBSに再懸濁する。これにCFSE(インビトロジェン社製、#C1157)を終濃度0.5μMで添加し、暗所で37℃、10分間のインキュベーションを行う。その後、CFSEで標識された細胞を4℃の新しい完全培地で3回洗浄し、1×10cell/mlの濃度になるように完全培地に再懸濁してプレートに播種する。
【0089】
1.3 in vitroにおけるPBMCの刺激
PBMCに対する処理は、刺激を加えないか、または合成ペプチドプール添加もしくは非添加で、野生型hIL−2(プロロイキン)もしくはhIL−2−N88R(BAY 50−4798;ロット#PR312C008)によって刺激を加える。合成ペプチドプールは、メラノーマに特異的なタンパク質である、gp100、TRP−2、MART−1およびチロシナーゼ、または多発性硬化症(MS)に特異的なタンパク質MOGから構成されている。これらのペプチドをそれぞれ、終濃度2.5μM(メラノーマペプチド)または30μg/ml(MSペプチド)で添加する。
【0090】
刺激物質およびペプチドの添加は、以下の23種類の条件で行う。
【表1】

【0091】
次いで、上記の細胞を、CO濃度5%の環境下、37℃で6日間培養した。
【0092】
1.4 FC500フローサイトメーターによる増殖アッセイおよび表現型解析
細胞表面分子に対する蛍光標識抗体で細胞を染色することにより、リンパ球の特定のサブグループの増殖を調べることができる(記憶マーカーおよび活性化マーカーについては表2を参照のこと)。刺激物質の存在下で行う6日間の培養の前後に、蛍光色素(PE:フィコエリトリン、ECD:PE−テキサスレッド、APC:アロフィコシアニン、PC7:PE−Cy7)で標識した抗体を用いて免疫染色を行う。
【0093】
6日目に染色を行うが、下表の最初の2つ(1および1iso)ではCFSE(カルボキシフルオレセインジアセテート サクシニミジルエステル)で標識していない細胞を使用し、それ以外ではCFSEで標識した細胞を使用する。
【表2】

【0094】
CD25−PE、Foxp3−APCおよびラットIgG2a−APCはebiosciences社製である。CD25−APC、CD45RA−APCおよびCD45RO−APCはBDバイオサイエンス社から購入した。他の抗体はすべてベックマン・コールター社(フランス)製である。
【0095】
1.5 マウスI型糖尿病モデル
12週齢のNOD(「非肥満型糖尿病」)マウスに、hIL−2変異タンパク質または野生型hIL−2を毎日投与する。ネガティブコントロールのマウスには、生理食塩水を同様に投与した。各投与群は3〜5匹のマウスで構成されていた。0〜15日目は、hIL−2変異タンパク質または野生型hIL−2を、5Kまたは25Kユニットの用量でマウスに投与した。17日目以降、5Kユニット投与群においては、用量を100Kユニット(=6.112μg)に増量した。25Kユニット投与群の投与は、変更することなくそのまま行った。31日目に最後の投与を行った。これらの実験と平行して、0日目から31日目まで25Kユニットの固定用量で投与を行った。糖尿病の判定は、尿中のグルコース量をモニターすることにより行った。17日目および30日目にマウスから採血し、抗CD4抗体、抗CD25抗体および抗FoxP3抗体による染色により血液サンプルをFACSで分析して、CD4T細胞中のFoxP3細胞のパーセンテージ、およびCD4FoxP3細胞上のCD25の発現量を示す蛍光強度の平均値(MFI)を求めた。
【0096】
2. 結果
2.1 hIL−2−N88Rによる制御性T細胞の誘導
本発明の変異タンパク質の効果を調べるのに適したin vitroの系として、末梢血単核球(PBMC)を用いた。PBMCは、T細胞(〜75%;CD4陽性細胞およびCD8陽性細胞)、ならびにB細胞およびNK細胞(〜25%;陽性)を含むことから、免疫系を十分に表す細胞集団を構成していると言える。
【0097】
健康な被験者6名のPBMC(10cell/ml)を、10−11〜10−6Mの野生型IL−2(プロロイキン)またはIL−2−N88R[BAY 50−4798、ロット#PR312C008(「BAY#C008」)]で刺激した。また、ポジティブコントロールとして、非特異的マイトジェンであるフィトヘマグルチニン5μg/mlで刺激したもの(「PHA」)を用意し、それとは別に培地のみを加えたもの(「Med」)も用意した。刺激開始後0日目および6日目に、CD3リンパ球中の制御性CD4CD25Foxp3T細胞の含有量を測定した。結果を図1および下表3に示す。
【表3】

【0098】
この実験から、hIL−2−N88Rは、10−7Mおよび10−6Mの濃度で制御性T細胞CD4CD25Foxp3のサブポピュレーションを顕著に誘導することが分かる。これらの濃度における誘導量は、野生型hIL−2でPBMCを刺激した場合の誘導量を顕著に上回っている。
【0099】
次の実験では、野生型hIL−2刺激と比較して、hIL−2−N88R刺激後の制御性T細胞CD4CD25Foxp3のサブポピュレーションの増加量を検討した。結果を図2および下表4に示す。
【表4】

【0100】
この実験でもまた、hIL−2−N88R刺激によって、制御性T細胞CD4CD25Foxp3のサブポピュレーションが顕著に増加しており、10−6Mの濃度における増加量は、野生型hIL−2刺激による増加量を大幅に上回っていることが分かる。
【0101】
2.2 hIL−2−N88Rはメラノーマ患者において制御性T細胞を誘導する
次に、本発明のhIL−2変異タンパク質であるhIL−2−N88Rが、免疫細胞の抗原特異的な活性化も刺激するかどうか調べた。そのために、メラノーマ患者3名のPBMC(10cell/ml)を、メラノーマ関連ペプチドプールの存在下または非存在下において、10−11〜10−6MのhIL−2−N88R(BAY 50−4798、ロット#PR312C008)または野生型hIL−2(プロロイキン)で刺激した。また、5μg/ml PHAで刺激したもの、および培地のみを加えたものも用意した。次いで、制御性T細胞CD4CD25Foxp3およびCD4CD25Foxp3のサブポピュレーション量をそれぞれ求めた。それぞれの結果を、図3および表5ならびに図4および表6に示す。
【表5】

注:Peptはペプチドを表す。
【0102】
【表6】

【0103】
この実験から、hIL−2−N88Rで処理することにより、メラノーマ患者においても制御性T細胞が顕著に増加することが明らかになった。CD4CD25Foxp3のサブポピュレーションの場合には10−7Mおよび10−6Mの濃度における増加量が、CD4CD25Foxp3のサブポピュレーションの場合には10−6Mの濃度における増加量が、同じ濃度の野生型IL−2(プロロイキン)刺激による増加量を大幅に上回っている。
【0104】
2.3 hIL−2−N88Rは多発性硬化症患者において制御性T細胞を誘導する
次に、本発明のhIL−2変異タンパク質であるhIL−2−N88Rが、免疫細胞の抗原特異的な活性化も刺激するかどうか調べた。そのために、多発性硬化症患者2名のPBMC(10cell/ml)を、多発性硬化症関連ペプチドの存在下または非存在下において、10−11〜10−6MのhIL−2−N88R(BAY 50−4798、ロット#PR312C008)または野生型hIL−2(プロロイキン)で刺激した。また、5μg/ml PHAで刺激したもの、および培地のみを加えたものも用意した。次いで、制御性T細胞CD4CD25Foxp3およびCD4CD25Foxp3のサブポピュレーション量をそれぞれ求めた。それぞれの結果を、図5および表7ならびに図6および表8に示す。
【表7】

【0105】
【表8】

【0106】
hIL−2−N88Rで処理することにより、多発性硬化症患者においても制御性T細胞が顕著に増加することが明らかになった。CD4CD25Foxp3のサブポピュレーションの場合には10−8Mおよび10−7Mの濃度における増加量が、CD4CD25Foxp3のサブポピュレーションの場合には10−6Mの濃度における増加量が、同じ濃度の野生型IL−2(プロロイキン)刺激による増加量を大幅に上回っている。
【0107】
2.4 多発性硬化症患者および健康な被験者においてhIL−2−N88Rは細胞傷害性CD8T細胞の増殖をほとんど誘導しない
さらに、細胞傷害性CD8セントラルメモリーT細胞の賦活化実験を行った。そのために、健康な被験者または多発性硬化症患者のPBMCに対して、2.3と同様の処理を行った。CFSElow/CD3CD8CD45ROT細胞のパーセンテージを分析により求めた。結果を、図7および表9ならびに図8および表10に示す。
【表9】

【0108】
【表10】

【0109】
野生型hIL−2とは対照的に、多発性硬化症患者においても、健康な被験者においても、hIL−2−N88Rに起因するセントラルメモリーCD8T細胞の増殖はわずかであり、これは検討したすべての供試濃度において共通している。
【0110】
2.5 hIL−2変異タンパク質の投与は動物モデルにおいてI型糖尿病の発症を抑制する
NODマウスにhIL−2−N88Rを投与した場合のCD4細胞中のFoxP3細胞のパーセンテージの増加は、野生型hIL−2を投与した場合よりも大きい(図9(A))。さらに、このCD4FoxP3陽性細胞は、CD25の発現量も野生型hIL−2を投与した場合より高い(図9(B))。図10に示す通り、マウスI型糖尿病モデルにhIL−2−N88Rを投与すると、野生型hIL−2とは対照的に、投与群のすべてのマウスの糖尿病の発症が抑制される。
【0111】
3. 結論
本発明者らが行った実験により、制御性T細胞(TReg)を誘導する能力を有する本発明のhIL−2変異タンパク質およびそのセクションは、自己免疫疾患の治療および/または予防、または生物体におけるTRegの誘導およびin vitroにおけるTRegの形成に適した物質であることが明確に示された。このことは、本発明者らにより、in vitroのみならずin vivoでも実証されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
野生型ヒトインターロイキン2(hIL−2)のアミノ酸番号に基づいて、第20位、第88位および第126位のアミノ酸のうち少なくとも1つが置換されているhIL−2変異タンパク質またはそのフラグメントの、自己免疫疾患の治療および/または予防のための薬剤を製造するための使用。
【請求項2】
第88位の置換により、アスパラギンがアルギニンに置換されている(hIL−2−N88R)、グリシンに置換されている(hIL−2−N88G)、またはイソロイシンに置換されている(hIL−2−N88I)ことを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
第20位の置換により、アスパラギン酸がヒスチジンに置換されている(hIL−2−D20H)、イソロイシンに置換されている(hIL−2−D20I)、またはチロシンに置換されている(hIL−2−D20Y)ことを特徴とする、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
第126位の置換により、グルタミンがロイシンに置換されている(hIL−2−Q126L)ことを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載の使用。
【請求項5】
hIL−2変異タンパク質、すなわち野生型hIL−2において第20位、第88位および第126位のアミノ酸のうち少なくとも1つは置換されているがそれ以外には置換が施されていない変異タンパク質、またはそのフラグメントにおいて、第20位、第88位、第126位のいずれでもない任意の位置におけるアミノ酸のうち少なくとも1つがさらに置換されており、このさらなる置換が施されたhIL−2変異タンパク質、またはさらなる置換が施されたhIL−2変異タンパク質のセクションのアミノ酸配列が、元のhIL−2変異タンパク質またはそのセクションのアミノ酸配列に対して、少なくとも80%、好ましくは85%、より好ましくは90%、より好ましくは95%、最も好ましくは99%の相同性を有することを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
第20位、第88位、第126位のいずれでもない任意の位置における少なくとも1つのさらなる置換が、アミノ酸の保存的置換であることを特徴とする、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
前記薬剤が、免疫抑制剤をさらに含むことを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
前記免疫抑制剤が、デコルチン、プレドニゾール(prednisol)を含むグルココルチコイド;アザチオプリン;シクロスポリンA;ミコフェノール酸モフェチル;タクロリムス;抗Tリンパ球グロブリン、例えばムロモナブを含む抗CD3抗体;バシリキシマブおよびダクリズマブを含む抗CD25抗体;インフリキシマブおよびアダリムマブを含む抗TNF−α抗体;アザチオプリン;メトトレキサート;シクロスポリン;シロリムス;エベロリムス;フィンゴリモド;セルセプト;マイフォーティック;およびシクロホスファミドからなる群より選ばれることを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載の使用。
【請求項9】
前記自己免疫疾患が、I型糖尿病、関節リウマチ、多発性硬化症、慢性胃炎、クローン病、バセドウ病、ベヒテレフ病、乾癬、重症筋無力症、自己免疫性肝炎、自己免疫性多腺性内分泌不全症(APECED)、チャーグ・ストラウス症候群、潰瘍性大腸炎、糸球体腎炎、ギラン・バレー症候群、橋本病、硬化性苔癬、全身性エリテマトーデス、小児自己免疫性溶連菌関連性精神神経障害(PANDAS)、リウマチ熱、サルコイドーシス、シェーグレン症候群、全身硬直症候群、強皮症、ウェゲナー肉芽腫症、白斑、自己免疫性腸症、グッドパスチャー症候群、皮膚筋炎、多発性筋炎、自己免疫性アレルギー疾患、喘息および臓器移植後の自己免疫反応からなる群より選ばれることを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載の使用。
【請求項10】
前記薬剤が、薬学的に許容される担体を含むことを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載の使用。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の使用におけるhIL−2変異タンパク質またはそのフラグメントを含むことを特徴とする、自己免疫疾患の治療および/または予防のための医薬組成物。
【請求項12】
野生型ヒトインターロイキン2(hIL−2)のアミノ酸番号に基づいて、第20位、第88位および第126位のアミノ酸のうち少なくとも1つが置換されているhIL−2変異タンパク質またはそのセクションの、生物体における制御性T細胞(TReg)形成のための薬剤を製造するための使用。
【請求項13】
第88位の置換により、アスパラギンがアルギニンに置換されている(hIL−2−N88R)、グリシンに置換されている(hIL−2−N88G)、またはイソロイシンに置換されている(hIL−2−N88I)ことを特徴とする、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
第20位の置換により、アスパラギン酸がヒスチジンに置換されている(hIL−2−D20H)、イソロイシンに置換されている(hIL−2−D20I)、またはチロシンに置換されている(hIL−2−D20Y)ことを特徴とする、請求項12または13に記載の使用。
【請求項15】
第126位の置換により、グルタミンがロイシンに置換されている(hIL−2−Q126L)ことを特徴とする、請求項12〜14のいずれか1項に記載の使用。
【請求項16】
hIL−2変異タンパク質、すなわち野生型hIL−2において第20位、第88位および第126位のアミノ酸のうち少なくとも1つは置換されているがそれ以外には置換が施されていない変異タンパク質、またはそのフラグメントにおいて、第20位、第88位、第126位のいずれでもない任意の位置におけるアミノ酸のうち少なくとも1つがさらに置換されており、このさらなる置換が施されたhIL−2変異タンパク質、またはさらなる置換が施されたhIL−2変異タンパク質のセクションのアミノ酸配列が、元のhIL−2変異タンパク質またはそのセクションのアミノ酸配列に対して、少なくとも80%、好ましくは85%、より好ましくは90%、より好ましくは95%、最も好ましくは99%の相同性を有することを特徴とする、請求項12〜15のいずれか1項に記載の使用。
【請求項17】
第20位、第88位、第126位のいずれでもない任意の位置における少なくとも1つのさらなる置換が、アミノ酸の保存的置換であることを特徴とする、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
前記薬剤が、医薬組成物であって、薬学的に許容される担体を含むことを特徴とする、請求項12〜17のいずれか1項に記載の使用。
【請求項19】
前記医薬組成物が、免疫抑制剤をさらに含むことを特徴とする、請求項18に記載の使用。
【請求項20】
前記免疫抑制剤が、デコルチン、プレドニゾール(prednisol)を含むグルココルチコイド;アザチオプリン;シクロスポリンA;ミコフェノール酸モフェチル;タクロリムス;抗Tリンパ球グロブリン、例えばムロモナブを含む抗CD3抗体;バシリキシマブおよびダクリズマブを含む抗CD25抗体;インフリキシマブおよびアダリムマブを含む抗TNF−α抗体;アザチオプリン;メトトレキサート;シクロスポリン;シロリムス;エベロリムス;フィンゴリモド;セルセプト;マイフォーティック;およびシクロホスファミドからなる群より選ばれることを特徴とする、請求項19に記載の使用。
【請求項21】
請求項12〜20のいずれか1項に記載の使用におけるhIL−2変異タンパク質またはそのフラグメントを含むことを特徴とする、生物体における制御性T細胞(TReg)形成のための薬剤。
【請求項22】
(a)ヒトインターロイキン2変異タンパク質(hIL−2変異タンパク質)またはそのフラグメントを準備する工程、
(b)前記hIL−2変異タンパク質またはそのフラグメントを生物体へ投与する工程、および
(c)必要に応じて、工程(a)および(b)を繰り返し行う工程
を含む、生物体における自己免疫疾患の治療および/または予防のための方法であって、
前記hIL−2変異タンパク質またはそのフラグメントが、請求項1〜10のいずれか1項に記載の使用におけるhIL−2変異タンパク質またはそのセクションであることを特徴とする方法。
【請求項23】
(a)ヒトインターロイキン2変異タンパク質(hIL−2変異タンパク質)またはそのフラグメントを準備する工程、
(b)前記hIL−2変異タンパク質またはそのフラグメントを生物体へ投与する工程、および
(c)必要に応じて、工程(a)および(b)を繰り返し行う工程
を含む、生物体における制御性T細胞(TReg)の形成方法であって、
前記hIL−2変異タンパク質またはそのフラグメントが、請求項12〜20のいずれか1項に記載の使用におけるhIL−2変異タンパク質またはそのフラグメントであることを特徴とする方法。
【請求項24】
(a)ヒトインターロイキン2変異タンパク質(hIL−2変異タンパク質)またはそのフラグメントを準備する工程、
(b)前記hIL−2変異タンパク質またはそのフラグメントを末梢血単核球(PBMC)に接触させる工程、および
(c)必要に応じて、工程(a)および(b)を繰り返し行う工程
を含む、in vitroにおける制御性T細胞(TReg)の形成方法であって、
前記hIL−2変異タンパク質またはそのフラグメントが、請求項12〜20のいずれか1項に記載の使用におけるhIL−2変異タンパク質またはそのセクションであることを特徴とする方法。
【請求項25】
(a)ヒトインターロイキン2変異タンパク質(hIL−2変異タンパク質)またはそのフラグメントを準備する工程、
(b)前記hIL−2変異タンパク質またはそのフラグメントを第1の生物体由来の末梢血単核球(PBMC)に接触させる工程、
(c)前記hIL−2変異タンパク質またはそのフラグメントを前記PBMCとインキュベートして、制御性T細胞(TReg)を含む細胞集団を得る工程、および
(d)前記細胞集団を第2の生物体へ導入する工程
を含む、生物体における自己免疫疾患の治療および/または予防のための方法であって、
前記hIL−2変異タンパク質またはそのフラグメントが、請求項1〜10のいずれか1項に記載の使用におけるhIL−2変異タンパク質またはそのフラグメントであることを特徴とする方法。
【請求項26】
前記第1の生物体と前記第2の生物体が同一の生物体であることを特徴とする、請求項25に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2011−519882(P2011−519882A)
【公表日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−507816(P2011−507816)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【国際出願番号】PCT/EP2009/003076
【国際公開番号】WO2009/135615
【国際公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(510249472)アイクリス ゲーエムベーハー ウント コー.カーゲー (1)
【Fターム(参考)】